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3 生活系汚濁負荷の削減対策(案)
3 生活系汚濁負荷の削減対策(案) 竜串湾に流入する汚濁負荷(有機物・栄養塩)の削減については、発生源が特定でき、比較的対 策が容易であると考えられる生活系負荷(観光施設等も含む)の削減方法について検討を行いまし た。竜串地区において有効であると思われる浄化対策を分類すると図 3-1 のようになります。 対策(案) 対象 家庭(生活排水) 水切り袋の使用 廃油の適正処理 洗剤の適量使用 米のとぎ汁の利用 等 家庭(生活排水) 事業所(旅館・飲食店の排水) 公共施設(トイレ等の排水) 個別処理 ①浄化槽 ②土壌浄化 集合処理 ③下水道 ④四万十川方式による浄化 ⑤木炭浄化 ⑥植生(湿地)浄化 啓発パンフレットの配布 ニュースレターの活用 効果のモニタリング 環境学習への組み込み 図 3-1 竜串地区おいて有効であると思われる浄化対策 3−1 家庭からの負荷を削減する まず、各家庭で発生する汚濁物質の量を減らすことが、コストもかからず、誰でもできる浄化対 策といえます。具体的には以下のような取り組みが考えられます。 水切り袋を使用する 廃油は流さない 洗剤の使用量を減らす 米のとぎ汁は庭に捨てる 上記のことを徹底するためには、浄化対策をパンフレット等によって周知する必要があります。 パンフレットは竜串独自のものを作成してもよいですが、特に地域性の求められるものではないの で、すでに環境省が作成している「生活排水読本」 (図 3-2)を活用することも可能です。 住民が「家庭で行う浄化対策」と「サンゴの再生」を結びつけてイメージできるように誘導する ことが重要です。パンフレットのほか、ニュースレターも積極的に活用していきます。また、環境 学習の中にこのような取り組みを組み込むことでより効果的に対策が促進されるものと思われます。 さらに、継続して対策を行うためには、モニタリング等によって効果を目に見えるかたちで示す必 要があるものと考えられます。 8 資料 4(参考資料) 自然再生に有効と考えられる対策の内容(案) Mar.18,05 第 2 回竜串自然再生推進調整会議 図 3-2 生活排水読本(一部抜粋) 資料:環境省 9 3−2 個別処理方法を改善する (1)高度処理の導入 下水道が普及していない地域における生活排水対策の中で、もっとも一般的なものは浄化槽の設 置です。現在では、し尿と生活雑排水をあわせて処理する合併処理浄化槽が主流となっています。 但し、一般の合併処理浄化槽は有機物の除去を目的としているため、BOD(COD)は除去されます が、窒素・リンはほとんど除去されないという問題があります。汲み取りの世帯に比べて、合併処 理浄化槽を設置した世帯では BOD の削減は期待できますが、し尿による負荷も加わるため、窒素・ リンは逆に増加することになります。 現在は、窒素・リンの除去が可能な合併処理浄化槽も開発されているので、竜串周辺地域では、 浄化槽を設置する場合、このような浄化槽を推奨することが望ましいと考えられます。 図 3-3 高度処理型合併処理浄化槽の概要と有機物・栄養塩の減少過程 資料:三洋電機株式会社 (2)土壌浄化法の導入 土壌浄化は土壌の持つ浄化能力を利用したもので、低コスト、低エネルギー消費型であること、 有機物除去能およびリン除去能が極めて高いこと、維持管理が容易であることが特徴です。一口に 土壌浄化といっても、様々な方式があり、また、単一ではなく、複合的な処理プロセスの一部に土 壌浄化を組み込む例もあります。以下に主な土壌浄化の方式を示します。 写真 西南大規模公園内のトイレ(佐賀町) 写真 黒尊川流域のトイレ(西土佐村) NIT フォトライブラリー NIT フォトライブラリー 10 資料 4(参考資料) 自然再生に有効と考えられる対策の内容(案) Mar.18,05 第 2 回竜串自然再生推進調整会議 ① セピテックタンク+トレンチ法 セピテックタンク+トレンチ法は、セピテッ クタンク(腐敗槽)とトレンチ(素掘の側溝) に散水管を埋設したものを組み合わせた非常に 簡単な工法で、生活排水の個別処理システムと して、欧米諸国では伝統的な処理方法となって います。 図 3-4 セピテックタンク+トレンチ法 処理能力は 20∼50 l/m2・日で、1 家庭の排水 資料:松尾建設株式会社 を処理するのに土壌トレンチだけでも約 50m2 以上の敷地面積が必要となり、国土の狭い日本 ではほとんど採用されていない方式ですが、土壌浄化法の元祖といえます。 ② 毛管浸潤方式 毛管浸潤トレンチ工法は、1 次・2 次処理を施す前処 理装置と、図に示すような構造を持つ毛管浸潤トレン チを組み合わせたものです。 トレンチの底に敷かれた、両端に若干の立ち上がり を持つ不透水性の合成樹脂膜によって、汚水はそれ以 上下降できずに底でたまります。そこから周辺の自然 土壌に毛管上昇と誘導毛管水が起こり、汚水が浸潤し ていく過程で浄化作用を受け、汚水が処理されます。 現在日本で最も普及している土壌浄化法であり、建 図 3-5 毛管浸潤方式 資料:松尾建設株式会社 築基準法に基づく建設大臣認定を取得している方式で す。処理能力は 50∼70 l/m2・日で、セピテックタンク +トレンチ法の約 2 分の 1 程度の敷地面積で設置が可能です。また、以下のように嫌気性浄化槽な どの組み合わせたシステムもあります。 図 3-6 土壌トレンチを組み込んだ生活排水の高度処理 資料:稲森ほか(2003) 11 ③ 多段土壌層法 多段土壌層法は、1 次・2 次処理を施す前処 理装置と、図の断面図のような構造を持つ土壌 槽を組み合わせた方式です。他の土壌浄化法と 違う点は、その構造にあります。透水性の高い 通水層と、透水性は低いが浄化能力の高い混合 土壌で出来た処理土壌層の 2 種類の土壌をレン ガ状に組み合わせた構造を持つ土壌槽に、上部 から散水管によって汚水を下降浸透させながら 処理する方式です。処理能力は 1,500 l/m2・日以 図 3-7 多段土壌層法 上と非常に高く、小さい敷地面積での設置が可 資料:松尾建設株式会社 能です。 3−3 集合処理施設をつくる (1)下水道(特定環境保全公共下水道)事業に伴う処理方法の改善 一般に下水道の終末処理場では活性汚泥法と呼ばれる処理方法が用いられ、有機物の除去が主に 行われますが、通常の活性汚泥法だけでは窒素・リンなどの栄養塩は除去されません。従って、栄 養塩の除去が可能な処理施設にする必要があります。凝集剤添加活性汚泥法・嫌気-無酸素-好気法 (A2O 法) ・凝集剤併用型循環式硝化脱窒法などの処理方法が考えられます。 高知県の生活排水処理構想(平成 15 年 7 月)によると、竜串地区では、特定環境保全公共下水道 が計画されています。特定環境保全公共下水道は公共下水道のうち市街化区域以外において設置さ れるもので、以下の 3 つに分類されます。なお、特定環境保全公共下水道事業は国土交通省による 事業の名称であり、処理の方法を示すものではありません。 自然保護下水道 自然公園法第 2 条に規定されている自然公園区域内の水質保全のために施行するもの 農山村下水道 公共下水道の整備により生活環境の改善を図る必要がある区域において施行されるもの 簡易な公共下水道 処理人口が概ね 1,000 人未満で水質保全上特に必要な区域において施行されるもの 12 資料 4(参考資料) 自然再生に有効と考えられる対策の内容(案) Mar.18,05 第 2 回竜串自然再生推進調整会議 (2)水路での四万十川方式の設置 水田の水浄化機能を参考に、本来自然が持っている物質循環の自然浄化機能を活かした水処理シ ステムです。有機物のほかに、窒素・リン・界面活性剤等も除去されます。処理槽には数種類の充 填材を使用していますが、一部のプラスチック製濾材のほかは、木炭や鉱物などの自然素材が使わ れており、これらは使用後に土壌還元できます。また、化学薬品や大きな動力機器を必要とせず、 メンテナンスも容易であるため、ランニングコストが抑えられるという利点があります。 図 3-8 四万十川方式の模式図 資料:東洋電化株式会社 写真 十和村の四万十川方式浄化施設 NIT フォトライブラリー 13 (3)木炭浄化施設の設置 大きな表面積を持つ木炭を利用して、汚濁物質を吸収する微生物の生育と汚濁物質の吸着作用で 水質浄化を行います。 木炭の設置の方法にも様々なタイプがあるが、比較的容易に設置する方法としては、単にネット に木炭を入れて水路に置く方法、河道内に堰状の枠を設置しその中に木炭を充填し自然流下させる 方法などがあります。 しかし、溶存酸素の増加方法、流下してくるゴミ対策、木炭に対する比流量等、装置の設計には 検討すべき項目も多くあります。 また、 木炭は高濃度の汚濁に対してはそれほど有効ではないため、 生活排水を木炭のみで浄化するのではなく、浄化槽等で有機物をある程度除去した処理水をさらに 木炭で浄化するような複合的なシステムが望ましいと考えられます。 木炭は定期的に交換する必要がありますが、可能であれば流域の森林で作られたものを使用し、 使用済みの木炭も流域の農地に還元することで、資源の循環が図られると考えられます。なお、木 炭の農地還元の効果としては、透水通気性の改善・重金属等の吸着性の改善等が知られています(伊 達,1997) 。 写真 最も簡易な木炭浄化(南国市) 写真 木炭を用いた浄化施設(高知市) 木炭をネットに入れ水路に配置している 河道内に金属の枠を設置し、木炭を充填している NIT フォトライブラリー NIT フォトライブラリー (4)植生浄化施設(湿地浄化)の設置 植生浄化法は、植物を配した浄化施 設に排水や汚濁した河川水を導き、浄 化施設内での沈殿、土壌への吸着、植 物による吸収・分解機能により汚濁物 質を除去するものであり、有機物とも に窒素・リンの栄養塩の除去が期待で きるのが特徴です。図 3-9 に示すよう に湿地法、浮標植物法、水耕法に大き 図 3-9 植生浄化法の分類 くわけられます。植生浄化法は省エネ 資料:佐藤(2003) 14 資料 4(参考資料) 自然再生に有効と考えられる対策の内容(案) Mar.18,05 第 2 回竜串自然再生推進調整会議 ルギー的に施工、維持管理できる他、浄化施設自体が生物の生息・生育の場を提供することから、 わが国では環境教育場として位置づけられることもあり、近年植生浄化法の施工事例が多くなって います。また、ハナショウブ等、植栽する植物によっては、新たな観光資源としての位置づけも可 能と考えられます。 図 3-10 植生浄化法の原理 資料:佐藤(2003) 写真 休耕田を利用したビオトープ(野市町) 写真 水路内に水生植物を設置(高知市) 浄化目的ではないが、湿地法−表面流れビオトープ 方式の参考事例 水耕法−特殊基材方式の事例 NIT フォトライブラリー NIT フォトライブラリー 15