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有限会社お菓子工房やなぎや(むつ市)
代表取締役
栁 谷 一 雄さん(78)
Yanagiya Kazuo
洋菓子への転換で会社組織へ
父
が大湊でこの「やなぎや」を創業したのが
1929年。当時、海軍施設のそばで営業し
ていたため、
場所がら軍関係のお客さんが多かった
ことを覚えています。
その頃の海軍では昇任する
と、
職場や近所にお菓子を配る風習があり、
たくさ
んの和菓子を届けることも度々ありました。
その頃からずっとお菓子作り一筋です。高校
卒業と同時に家業に就いたため、他店での修業
経験はありません。時代とともに、冷蔵庫や調理
機器をそろえ、それまでの和菓子から量産が可
能な洋菓子へと業態も変化してきました。洋菓
子の作り方は専門書を読んで独学で覚えたんで
す。だから他にはない独特なお菓子になったの
だと思います。
こうして洋菓子への転換が功を奏し、むつ市内
に2号店を開店するまでに事業拡大することが
でき、従業員を増やし現在に至っています。
1934年むつ市生まれ。大湊高校を卒業と同時に、1953年から
家業の菓子店で菓子職人として働き始める。現在、下北食品衛生
協会副会長、下北物産協会理事を務める。
大切なのは互いに楽しく仕事ができること
従
業員たちには、私が作業場にいる間は「思う
ようにやってみなさい」と話しています。
その場に私がいる限り、分からないことがあれば
教えてあげられますし、失敗してもどこに問題が
あったのか、その場で説明もできます。
私の時代は、
“技術は教わるものではなく盗む
もの”と教えられ、父の仕事を食い入るように見
て覚えたものです。しかし、私の場合は従業員た
ちに、自身が覚えている全ての技術を隠すことな
く教えてきました。そうして早く覚えることで作
業が効率よく進みますし、本人も仕事が楽しくな
ります。私自身の負担も軽減され、新商品の試作
などに時間を割けるようになり、生産性、売り上
げともに向上しました。皆が楽しく仕事ができ
ケーキや焼き菓子、名物の「フライボール」が並ぶ店内
22 あおもり絆カンパニー 2013.3
る、これが一番大切なことだと考えています。
有限会社お菓子工房やなぎや(むつ市)─ お客様を大切に、笑顔あふれる老舗和洋菓子店
お
客
様
が
来
て
く
れ
る
喜
び
に
胸
躍
る
毎
日
職 変 毎日お客様が
わ 来てくれることの喜び
人ら
技ぬ こ
術味
をで
喜
教び
えを
伝与
え
え続
職け
場る
店
をで
楽あ
しり
くた
い
の仕事の最大の喜びは、お
客様が私たちの作ったお
菓子を買って笑顔で帰る姿を目
にすることに尽きます。そして、
常に心がけていることは“変わら
ぬ味”を作り続けること。変わら
ない味、同じ品質のお菓子を作り
続けるということは、簡単なよう
で非常に難しいことなんです。
むつ市で暮らす人たちには、日
常 に 溶 け 込 ん だ“い つ も の お 菓
子”を、むつ市を離れ、久しぶりに
帰って来た人には、
“安心と懐か
しさ”を届けられるお菓子をこれ
からも作り続けたい、変わらない
味がここにあることで喜びを与
えられる、そんなお店であり続けたいのです。
毎朝7時半には作業場へ入って仕事を始めています。毎日、看板商品のフ
ライボールを2000個ほど作るのが私の担当ですが、大変だと感じたこと
は一度もありません。本店は路面店ですから、ショッピングセンターなどの
テナント店とは異なり、買い物のついでに立ち寄るという「ついで買い」の
ようなことはほとんどありません。お店に来てくれるお客様は「やなぎやで
お菓子を買う」ということだけを目的にして、ここに足を運んでくれるわけ
ですから、こんなに嬉しいことはありません。そんなお客様が今日も来てく
れるかと思うと、この年齢になっても毎朝、胸が躍るんです。
あるお子様連れのお客様なんかは、
「ここ
ばなし
ならケンカしないで回せるでしょ」と2人
の子どもに話してガラポンを回させていま
した。その兄弟は仲よく何回かガラポンを
喜ぶ顔があふれる
ガラポン抽選会
年に3回(年末年始・GW・夏休み)ガラポ
ン抽選会を行っています。地元の商店会な
回して笑顔で帰っていきました。また、特賞
(5,000円の金券)を見事当てたお客様は、
「今までこのような抽選に当たったことが
ない。嬉しい」と、担当した従業員と一緒に
本当に喜んでいかれました。
どで行っている抽選会は10,000円の買い
特賞でも5,000円という小さな抽選会で
物に対して1回の抽選ですが、
「やなぎや」で
すが、お客様に喜んでもらっていることが
は10分の1の1,000円分の買い物で1回
目の前で実感できるので、これからも続け
抽選ができるので、お子様やお年寄りにも
ていこうと思っています。
喜ばれています。
(総括主任 中村真由美)
あおもり絆カンパニー 2013.3 23
人事担当者に聞く
人財観
わが社の
お客様の声を励みに
笑顔で応対できる人財
嬉しい出来事共有し合う
お客様を大切にする接客のために、
Q.どんなことに気を付けていますか?
A. 笑顔で応対できる人財を
面接時から求め、
勉強会も行っています。
有限会社お菓子工房やなぎや
統括主任
中 村 真由美さん(48)
むつ市でも大型店が増えてきて、本当にうち
のような小さな店舗は少なくなってきていま
す。当店に来てくださるお客様は、わざわざ「や
なぎや」のお菓子を買いに来てくれる方です。従
業員たちには、また来てもらえるように「お客様
を大切にし気持ちよく帰ってもらおう」という
企業理念を繰り返し話してきました。
採用面接でもこの理念と仕事の大変さを隠さ
ずに伝え、笑顔で応対でき、仕事に対する責任感や自分の非を認められる誠実さを持つなど、求める社
員像6項目を書面ではっきり示します。さらに「どこかで嫌な思いをしたことはないか」と必ず聞きま
す。そして「それを販売員になったときにお客様にしないでね」と言うと、自分が嫌なことは他の人にし
てはいけないと理解してくれます。採用後は3カ月目が継続の分岐点と考えて面談をし、この時点まで
頑張れた人は引き続き長く勤めてくれます。その後も私が従業員の相談役となって、よく話を聞くよう
にしています。
お客様が来てくださっての商売ですから、接客については商工会のマナー講習会に参加したり、年
1、2回、勉強会も社内で行って、よりよい接客ができるように心掛けています。
Q.どのように働きやすい職場づくりをしていますか?
A. 朝礼で情報共有し、楽しく仕事がスタートができるようにしています。
毎朝の朝礼では前日の業務報告をして情報共有します。最後に全員からひと言発表をお願いしてい
るのですが、
「 昨日こんなお客様が来店した」など、嬉しい出来事や思いがけない話題が出て、もり上
がって爆笑したりしています。皆さんの明るい笑顔で楽しく1日の仕事がスタートできます。
ほとんどが女性従業員ですが製菓工程ではミキサーやオーブンなど機械操作を担当して、職人で
ある社長の補助をしてきました。店舗が増えたころから、接客、商品の搬送、パッケージなど人手が必
要になり、正社員を採るようになりましたが、製菓担当者でも接客をすることもあるので、毎日の情
報共有が大事です。社員の休日は申告制で子どもの参観日や行事、地元の祭りなど、希望に沿って休
んでもらっています。それでも年間の有給休暇が消化しきれていない社員もいるので、多少余裕のあ
る 時 期 に シ フ ト 調 整 し て 有 休 を 取 れ る よ う に し た い と 思 っ て い ま す。そ う す る こ と で、例 え ば
24 あおもり絆カンパニー 2013.3
有限会社お菓子工房やなぎや(むつ市)─ お客様を大切に、笑顔あふれる老舗和洋菓子店
同業他社のお店に足を運んで研究するなど自分を磨く時間に余裕を持てるのではないかと考えてい
ます。
Q.折り込みチラシにアンケート用紙を付けているそうですが?
A. お客様の声を聞くことができ、従業員の励みになります。
年5回、折り込みチラシを出しています。お菓子屋が人気商品を値引きするチラシを出すのは県内
でも珍しいと言われますが、20数年前から始めました。お客様に喜んでいただきたいので、あえて、
看板商品のフライボールを儲けなしで半額にしています。さらにお客様の声、ご意見を聞きたいと思
い、9年ほど前からチラシの裏面に年3回アン
ケート用紙を付けました。
「い つ も 幸 せ の お す そ 分 け、あ り が と う」
「遠
方にいる家族に贈って喜ばれます」など嬉しい
声が多く寄せられ、従業員の励みになっていま
す。看板商品のフライボールは日持ちしないお
菓 子 で す が、以 前、お 土 産 に 送 り た い と い う お
客様の声を受けて改善策を考え、個別包装する
よ う に し ま し た。時 に は 厳 し い ご 意 見 も あ り、
いい勉強をさせていただいています。
オ タ カ ラ 社 員
喜び分かち合える
アットホームな職場
方でも休みやすく、働きやすいですよ。
お客様とのふれあいでも嬉しいことがた
く さ ん あ り ま す。よ く 来 店 す る お 客 様 が 私
店頭販売や商品の配
に「いつも笑顔で元気がいいね。あなたがい
送 を 担 当 し て い ま す。入
る か ら 買 い に く る ん だ よ」と 言 っ て く れ ま
社15年 目 に な り ま す
した。実はこの方、甘いものは全然食べない
が、み ん な 大 き な 家 族 か
親戚のように気がねな
け れ ど、お 土 産 に 持 っ て い く お 菓 子 を 買 い
チーフ
髙木知美さん(34)
に 常 連 客 に な っ て く れ た ん で す。ア ン ケ ー
く 何 で も 言 い 合 え る、楽
ト の 声 も 職 場 内 で 回 し て 読 ん で い て、お い
し い 職 場 で す。少 人 数 な の で 疑 問 に 思 っ た
しい幸せをお届けできる喜びをかみしめて
こ と を 聞 く と、周 り の 人 が す ぐ に 答 え て く
います。
れ ま す。お 互 い に 誤 解 や 行 き 違 い が あ っ て
一度でも当店のお菓子を食べてくれた方
も、話しあって解決してきました。休日は希
が、
「 また来たよ」と訪れてもらえるように、
望 に 合 わ せ て も ら え る の で、子 ど も が い る
これからも笑顔で頑張ります。
会社概要
有限会社お菓子工房やなぎや
所在地:〒035-0053 むつ市緑町 17-58
TEL:0175-28-2880
URL:http://o-yanagiya.jp
資本金:300 万円
設立:1929 年 7 月
従業員数:15 人
業務内容:和洋菓子製造、販売
あおもり絆カンパニー 2013.3 25
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