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Title Studies of Vitamin E Deficiency on Protozoan Diseases( 内容の 要旨(Summary) ) Author(s) HERBAS COSTAS, Maria Shirley Report No.(Doctoral Degree) 博士(獣医学) 甲第293号 Issue Date 2010-03-15 Type 博士論文 Version URL http://repository.lib.gifu-u.ac.jp/handle/123456789/33605 ※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。 IIERBAS 氏名(本(国)籍) 主 指 導 教 員 COSTAS,Maria 名 帯広畜産大学 教授 学 位 の 種 類 博士(獣医) 学 位 記 番 号 獣医博甲第293号 日 平成22年3月15日 学位授与年月 Shirley(ボリビア多民族国) 鈴 学位授与の要件 学位規則第3条第1項該当 研究科及び専攻 連合獣医学研究科 木 宏 志 獣医学専攻 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 帯広畜産大学 Studies 目 Vitamin of E Deficiency on Protozoan Diseases (原虫感染症におけるビタミンE欠乏に関する研究) 審 査 委 員 論 主査 帯広畜産大学 教 授 河 津 信一郎 副査 帯広畜産大学 教 授 鈴 木 宏 副査 岩 手 教 授 板 垣 副査 東京農工大学 教 授 本 多 英 副査 岐阜 大 教 授 石 黒 直 内 容 文 の 大 学 学 の 要 匡 旨 原虫感染症の克服には多くの努力が払われてきたが,マラリアおよびトリパノソーマ感染症 を始めとする原虫感染は,未だにヒトおよび家畜の健康の脅威となっている。歴史的にこれら の感染症対策として,ベクターのコントロール,ワクチンあるいは治療・予防薬の開発が試み られてきたが,原虫感染症では,病原体の病原性や辿伝的背景および宿主の栄養状態や辿伝的 背景等が相互に作用するため,実効性の高い効果的な方法を見出すには至っておらず,新規な 戦略の展開が求められるところである。 過去の疫学的観察は,微量栄養素,特にビタミンEの欠乏が原虫感染に抵抗性を誘主音する可 能性を示唆していたが,ビタミンEは多くの食物に比較的多量に含まれることから,ビタミン E欠乏の誘導は困難であり,原虫感染の予防あるいは治療のためにビタミンE欠乏を利用する ことは非現実的と考えられていた。食餌から吸収されたビタミンEは,α-トコフェロール転 送タンパク質(α-TTP)の働きによって肝から循環中に放出される。すなわち,末梢のビタ ミンE状度はα-TTP活性によって規定されることから,α-TTP活性の抑制によって宿主の 血中ビタミンE濃度を制御することが期待できる。事実,α-TTP迫伝子欠損マウスの循環中 ビタミンE濃度は,検出限界以下であった。本研究は,α-TTP欠損マウスを用いて,原虫感 染におけるビタミンE欠乏の効果を検討し,宿主の生理的機能の修飾による原虫感染症の予 防・治療戦略の樹立の可能性を探索したものである。 α-TTP活性の抑制が貧血を惹起させるか否かを検証するために,α-TTP欠損マウスとビ タミンE欠乏食を給餌してビタミンE欠乏症を誘主拝した野生型マウスの赤血球性状を比較検討 した結果,遺伝子欠損マウスでは貧血を観察せず,さらに赤血球の物理学的性状および膜タン ー121- 志 一 隆 パク質の性状も正常であった。-一方,食餌性のビタミンE欠乏症を呈するマウス由来の赤血球 では,物理学的,生化学的な障害を認めた。 α-TTP欠損マウスに乃aβ皿0前日皿ムergムeJNK65を感染させたところ,野生型マウスと比 較して生存期間の有意な延長が観察された。また,α-TTP欠損マウスにビタミンE過剰食を 給餌して循環中のビタミンE濃度を上昇させた後にPムe曙ムeJNK65を感染させた結果,野生 型マウスと同様の生存曲線を観察したことから,α-TTP欠損マウスに認められたマウスマラ リア感染抵抗性は,循環中のビタミンE欠乏によるものであり,α-TTP遺伝子の破壊自身に よるものではないことが明らかとなった。α-TTP欠損マウスに感染した原虫の抗酸化酵素の mRNA発現は,野生型マウスに感染した原虫と比較して克進していることを観察するとともに, 酸化ストレスのバイオマーカー(8・OHdG)を用いた解析によって,α-TTP欠損マウスの感 染抵抗性は,酸化ストレスによる感染原虫のDNA障害に起因することを明らかにした。さら に,既存の薬物とα-TTP活性の抑制との併用効果を検討するため,Pムe融eゴNE65感染α -TTP欠損マウスと野生型マウスにクロロキンを投与したところ,α-TTP欠損マウスでは野 生型マウスで薬効を示す約1/2の用量で同等の効果を示した。これらの成績は,クロロキンと α-TTP活性抑制の併用は,クロロキンに認められる副作用の軽減,さらには薬物耐性原虫の 出現抑制に寄与することを示唆している。 マラリア感染で最も重要な病態である脳マラリアに対するα-TTP欠損マウスの抵抗性の 有無を検討するため,α-TTP欠損マウスにPムe融eJANEAを感染させたところ,野生型 マウスでは神経症状を主徴とする臨床症状および血液脳関門の崩壊を観察したが,α-TTP欠 損マウスではこれらを認めなかった。組織学的検索の結果においても,野生型マウスでは脳組 織の障害を観察したが,α-TTP欠損マウスにおいては異常を認めなかった。これらの成績は, α-TTP活性の抑制は脳マラリア抵抗性を誘導することを示してシ、る。 さらに,α-TTP欠損マウスに乃γpanOβ0皿aCO旦gOJe刀βeを感染させたところ,野生型マウ スと比較して,生存期間の延長および原虫増殖の抑制を観察した。また,α-TTP欠損マウス に感染したr スに認められたr coヱ】卯je刀βeの抗酸化酵素の発現は上昇していること,およびα-TTP欠損マウ col】gOJ和βe感染抵抗性は,マウスマラリアと同様に酸化的ストレスによる 原虫のDNA障害によるものであることが明らかとなった。これらの成績は,α-TTP活性の 抑制による宿主循環中のビタミンE欠乏に起因する酸化的ストレスによって,トリパノソーマ 原虫の増殖が抑制され,宿主に原虫感染抵抗性をもたらすことを示している。 宿主の原虫感染抵抗性に及ぼす他の抗酸化物質,水溶性の抗酸化物質であるビタミンCの寄 与を検討するため,ビタミンCの合成能を欠くL・gulono-γ-1actoneoxidase迫伝子欠損マウス にPムeヱ冨ムeゴNE65を感染させた結果,この辿伝子欠損マウスの生存曲線は,野生型マウスの それと同様の推移であったことから,マウスマラリアの増殖にビタミンC欠乏は影幣しないも のと考えられた。 以上,宿主の肝におけるα-TTP活性抑制は,原虫感染症の予防・治療に対する新たな薬物 標的となり得るものと考えられる。 審 査 結 果 の 要 旨 マラリアおよびトリパノソーマ感染症を始めとする原虫感染は,未だにヒトおよび家 畜の健康の脅威となっており,新規な戦略の展開が求められるところである。過去の疫 学的観察は,微塵栄養素,特にビタミンEの欠乏が原虫感染に抵抗性を誘導する可能性 を示唆していたが,ビタミンEは多くの食物に比較的多量に含まれることから,ビタミ -122- ンE欠乏の誘導は困難であり】原虫感染の予防あるいは治療のためにビタミンE欠乏を 利用することは非現実的と考えちれていた。しかしながら,末梢のビタミンE濃度はα -トコフェロール転送タンパク質(α-TTP)によって規定されることから,α-TTP 活性の抑制によって宿主の血中ビタミンE濃度を制御することが期待できる。本研究は, α-TTP欠損マウスを用いて,原虫感染におけるビタミンE欠乏の効果を検討し,宿主 の生理的機能の修飾による原虫感染症の予防・治療戦略の樹立の可能性を探索したもの である。 α-TTP欠損マウスにPね5皿Od血皿ムe∫gムeiNK65を感染させたところ,野生型マウ スと比較して生存期間の有意な延長が観察された。また,α-TTP欠損マウスに感染し た原虫の抗酸化酵素のmRNA発現は,野生型マウスに感染した原虫と比較して克進し ていること,α-TTP欠損マウスの感染抵抗性は,酸化ストレスによる感染原虫のDNA 障害に起因することを明らかにした。さらに,既存の薬物とα-TTP活性の抑制との併 用効果を検討するため,Pムer如eゴNX65感染α一TTP欠損マウスと野生型マウスにク ロロキンを投与したところ,α-TTP欠損マウスでは野生型マウスで薬効を示す約1/2 の用塵で同等の効果を示した。これらの成績は,クロロキンとα-TTP活性抑制の併用 は,タロロキンに認められる副作用の軽減,さらには薬物耐性原虫の出現抑制に寄与す ることを示唆している。 次に,野生型マウスではP占ergムeJANⅨA感染によって神経症状を主徴とする臨床症 状および血液脳関門の崩壊を観察したが,α-TTP欠損マウスではこれらを認めなかっ た。組織学的検索の結果においても,野生型マウスでは脳組織の障害を観察したが,α 一廿TP欠損マウスにおいては異常を認めなかった。これらの成緋は,α-TTP活性の抑 制は脳マラリア抵抗性を誘専することを示している。 さらに,α-TTP欠損マウスに7わpa刀0β0皿aCO刀gOJe刀βeを感染させたところ,野生 型マウスと比・陵して,生存期間の延長および原虫増殖の抑制を観察した。また,α-TTP 欠損マウスに感染したr coェIgOJeヱほeの抗酸化酵窮の発現は上昇していること,および α-TTP欠損マウスに認められたr co刀gOJeJ】βe感染抵抗性は,マウスマラリアと同様 に酸化的ストレスによる原虫のDNA障害によるものであることを明らかにした。これ らの成績は,α-TTP活性の抑制による宿主循環中のビタミンE欠乏に起因する酸化的 ストレスによって,トリパノソーマ原虫の増殖が抑制され,宿主に原虫感染抵抗性をも たらすことを示している。宿主の肝におけるα-TTP活性抑制は,原虫感染症の予防・ 治療に対する新たな薬物標的となり得るものと期待される。 以上について,審査委員全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合獣医学研究科の学位 論文として十分価値があると認めた。 基礎となる学術論文 1) 題 目:Theefftctofα-tOCOPheroltransftrproteindisruptiononTbpanosoma COngOlenseinfectioninmice 著 者 名:Herbas,M.S.,Thekisoe,0.M.,Inoue,N.,Xuan,X.,Arai,H.and Suzuki,H. 学術雑誌名:FreeRadicalBiologyandMedicine -123- 巻・号・頁・発行年:47(9):1408-1413,2009 2) 目:α-Tocopheroltransfbrproteininhibitioniseffectiveinthepreventionof 題 cerebralmalariainmice 著 者 名:Herbas,M.S.,Okazaki,M.,Terao,E.,Xuan,X.,Arai,H.andSuzuki,H. 学術雑誌名:TheAmericanJournalofClinicalNutritionandMedicine 巻・号・頁・発行年:91(1):1-8,2010 3) 題 著 目:VitaminCdeficiencyfailstoprotectofmalariainftctioninmice 者 名:Herbas,M.S.andSuzuki,H. 学術雑誌名:ExperimentalAnimals 巻・号・頁・発行年:発表予定 既発表学術論文 1) 題 目:Developmentoftaqman-basedreal-timePCRassaysfbrdiagnostic detectionofBabesiabovisandBabesiabigemina 著 者 名:Kim,C.,Iseki,H.,Herbas,M.S.,Yokoyama,N.,Suzuki,H.,Xuan,X., FujisakiK.andlgarashiI. 学術雑誌名:AmericanJournalofTropicalMedicineandHygiene 巻・号・頁・発行年:77(5):837-841,2007 ー124-