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シャシダイナモメータによる 燃費測定実習について
シャシダイナモメータによる 燃費測定実習について 愛知県立小牧工業高等学校 自動車科 1 百瀬 正美 はじめに 近年、自動車業界を始め、さまざまな所で「省燃費 」「環境 」「地球温暖化」などという言葉を 盛んに聞くようになった。そこで、自動車実習では、構造や整備方法を生徒に教えるだけでなく、 自動車が抱えている環境問題を身近に知ってもらい将来自分で所有するであろう自動車の燃費とい うものも深く考え、地球環境に貢献できるようになればと考えた。また、「安全運転」と「自動車 の取扱い」も含めて学習できるように燃費測定実習を実施することにした。 2 本校のシャシダイナモメータについて 昭和46年に設置され長年使用して来たシャシダイ ナモメータが老朽化し、消耗品の入手やメンテナンス が困難になって来たため平成16年に更新された。新 しく設置されるシャシダイナモメータの選定にあたり 比較的容易で安全に生徒自身が自動車を運転して測定 できる項目のあるものということを重点に機器を選定 した。数社を検討した結果、バンザイ製の機器を第一 希望とし、入札により希望通りのバンザイ製に更新さ れた。 シャシダイナモメータの仕様 【 動力部 】 【 PC 部 】 3 『車両試験』実習について 【図1】シャシダイナモ全体図 本校自動車科3年生は、2学期に「車両試験」という実習 を実施している。その中にシャシダイナモメータでの実習が あり、そこで「モード走行テスト」と題して燃費測定を行っ ている。実習を実施するにあたり、シャシダイナモメータ上 では、生徒が自分一人で自動車を運転して測定することから まず自動車の運転がある程度できることが条件である。幸い 1学期に「試運転」という実習を実施しているので何とか自 【図2】走行練習 動車を走行させることはできる。しかし、実習時間が限られているためギヤチェンジをしての走行 は練習していない。よって 、「モード走行テスト」を実施するために最初にシャシダイナモメータ 上で、ギヤチェンジの走行練習を行った。生徒たちは初めて操作をするため、殆どの生徒は腕に力 が入ってスムーズに動かすことができなかった。また、クラッチとシフトレバー操作のタイミング が上手く行かず車両がギクシャクしてしまうことがある。短時間だが、一人一人ギヤチェンジを行 いながら加速、定速、減速を繰り返して運転に慣れてから「モード走行テスト」を実施した。 4 モード走行テスト(燃料消費率測定) (1) 燃料消費率測定要領 測定車両のフューエルホースに流量計を接続し、 シャシダイナモ上で各種モード走行した距離と燃料 の消費量によって燃料消費率を測定している。今回 測定する車両では、図3のようにフューエルフィル タからの燃料をイン側の流量計で全流量を計測し、 プレッシャレギュレータのリターンパイプから燃料 【図3】流量計の接続 タンクに戻される燃料をアウト側の流量計で計測す る。そして、イン側の全流量とアウト側の燃料タン クに戻される燃料の差を計算し、それを燃料消費量 としている。実際にシャシダイナモローラー上を走 行した距離と計測した燃料消費量から、測定車両の 燃費が求められるようになっている。 (2) モードの種類 1)10モード走行燃費 2)11モード走行燃費 3)15モード走行燃費 4)10・15モード走行燃費 【図4】流量計の取付け状態 5)60 km/h 定地走行燃費 現在は、燃料消費率をカタログ表示する場合、10・15モード走行燃費を表示することにな っている。今回実習で測定しているモードは、測定車両のカタログデータが10モード走行燃費 で表示されているため10モード走行燃費で測定している。なお、本来ならば10モードを6回 走行し、そのうち後の5回のデータを測定値とすることになっているが、授業時間の関係で一人 の生徒に付き1回の測定としている。 (3) 10モード走行燃費について 昭和50年頃から平成3年10月迄の車両に適用さ れた燃費測定モードで、0∼40km/hまでの速度で 暖機運転後、アイドリング・加速・定速走行・減速・ 停止などの10種類(モード)の走行パターンがあり 市街地走行を想定した走行テストのことを「10モー ド」といい、10モードを6回走行し、そのうち後の 5回のデータを測定値としている。 (4) 測定方法 申告スイッチを押すとディスプレイ画面がスクロー ルし始めるので、10モード基本走行パターンに従っ て車両をドライブする。なお、基本パターン領域を外 れるとエラー時間が累積されるので領域から外れない ようにアクセル、ブレーキ操作を慎重に行う。 【図5】メニュー画面 【図6】テスト開始画面 【図8】測定中 【図7】テスト終了画面 【図9】測定中 (5) 測定結果 測定値は、個人の能力に大きな差があり5.3km/l ∼11.2km/l というデータだが、今回の実習の 目的は、どのように燃費を測定するかということなので特に数値は気にしていない。 5 問題点・注意点など 問題点として、古い車両なのでカタログデータ値は10モード測定である。そのため現在表示さ れている10・15モードで測定していない。ディスプレイが右横の上部にあるため運転しながら だとディスプレイが確認しにくい。ギヤチェンジをする余裕がなく、殆どの生徒は変速ができない。 実習で最も注意している点は、車両が飛び出す恐れがあるため急激なアクセル操作、急ブレーキ には特に注意をするように指導して来た。 生徒の感想として、「停止が難しい」、「何事もなく終われて良かった」、「運転する人によって測 定結果が全然違うことが分かった 」、「ギヤチェンジの余裕がなかった 」、「クラッチを上手に繋ぎ たい」、「急アクセル、急ブレーキになってしまった」などである。 6 まとめ 測定結果は、運転操作の未熟や不慣れ、そして何よりギヤチェンジができていないためカタログ データとは誤差が大きいが、生徒たちなりに納得しているようだ。生徒の中には緊張してしまい、 なかなか発進ができず何度もやり直しをすることがあるが、自動車科ならではの実習で生徒たちも 『ヤル気』を出して真剣に取り組んでいる。何より生徒自身が自分で車両を運転し測定を行うので、 楽しい実習ができている。 限られた時間内に、12名程度の生徒を安全に測定させるには苦労するところであるが、事故や 怪我をさせないように指導して来た。 最後に、生徒たちの自動車の燃費についての意識付けと環境問題に目を向けてもらうことができ た。また、燃費の測定方法と正しい自動車の運転操作や危険性、安全意識の再確認ができた。今後 は課題研究などでしっかり時間を取って、どのように測定すれば真の値に近い数値を出せるように なるか検討して指導したい。 7 備考 測定車両について