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資料7(2)
9.2 財政政策:IS-LMのモデル 1.政府支出の拡大 • 図9.3は、財市場の均衡を示すIS曲線と貨幣市 場の均衡を示すLM曲線を描いたものである。 • 政府支出が変化すると、IS曲線がシフトする。 • 政府支出が拡大→利子率が同じなら財市場で超 過需要が発生→均衡を維持するために、国民所 得が増加→IS曲線が右シフト。(図9A2) • その結果、IS、LM両曲線の交点で与えられる均 衡点はE0→E1へ移動する。(図9.3) • すなわち、政府支出の拡大により、直接、総需要 が増加し、国民所得が増大し、利子率も上昇する。 経済学概論 第9章 マクロ政策(2) 吉川卓也 2 図9A2 政府支出の増加によるIS曲線のシフト 利子率r 図9.3 政府支出の拡大 利子率r 利子率r LM IS 投資関数 O IS’ 貯蓄S E1 r1 O 投資I+G 貯蓄S I=S 所得Y E0 r0 貯蓄関数 IS’ IS 45° O 投資I+G O Y0 O Y1 国民所得Y 所得Y 3 4 図8.3A MM曲線のシフトと貨幣市場の均衡 • 貨幣市場で利子率が上昇するのは、以下の理由 による。 • 政府支出の増加→財市場で超過需要が発生→ 生産が拡大→国民所得が上昇→貨幣の取引需 要が増加→利子率が同じなら貨幣の超過需要が 発生→貨幣供給は一定なので、利子率が上昇。 (図8.3Aを参照) 利子率r SS rE’ E’ rE E MM MM’ O 5 M 貨幣需要、貨幣供給 6 1 図9.4 クラウディング・アウト効果 2.クラウディング・アウト効果 • 利子率の上昇は、投資需要を抑制するので、財市場で総需 要を抑制する方向に働く。 • したがって、利子率が上昇しない場合より、政府支出乗数は 小さくなる。 • 図9.4のA点は、利子率が上昇しない場合の財市場の均衡 点である。(国民所得YAは、政府支出乗数が 利子率r LM E1 r1 のときの国 E0 r0 民所得の増加によるもの。) • しかし、利子率が上昇するので投資需要が抑制され、均衡 点はE1となる。 • このように、財政政策の拡張効果は、利子率の上昇により、 民間の投資需要が抑制され、小さくなる。 • これを政府支出のクラウディング・アウト効果という。 A IS’ IS Y0 O YA Y1 国民所得Y 7 8 図9A3 貨幣需要の利子弾力性が大きいときのLM曲線 2.1 極端なケース (1)クラウディング・アウト効果が生じないケース ① 流動性のわなのケース(貨幣需要の利子弾力性が 無限大のケース) • 貨幣需要の利子弾力性がきわめて大きい(利子率 のわずかな低下に対して貨幣需要が大きく増加す る)場合、LM曲線は水平になる。 • このとき、財政政策でIS曲線がシフトしても、利子率 はまったく変化しない。(流動性のわな) • したがって、国民所得の増大→貨幣の取引需要の 増大が起きても、利子率は上昇することなく貨幣市 場が均衡するので、クラウディング・アウトは起きな い。 利子率r 利子率r LM曲線 資産需要 O L2 L1 M O L1 所得Y 取引需要 M=L1+L2 O 9 45° M L2 O 所得Y 10 図9.5 流動性のわなのケース ② 投資が利子率に反応しないケース(投資の利子 弾力性がゼロのケース) 利子率r r0 E0 • 投資の利子弾力性がきわめて低い(利子率に対 して投資が反応しない)場合、IS曲線は垂直にな る。 E1 LM • このとき、財政政策によりIS曲線がシフトすると、 利子率は上昇するが、利子率が上昇しても投資 は減少しないので、クラウディング・アウトは起き ない。 IS’ IS O Y0 Y1 国民所得Y 11 12 2 図9A4 投資の利子弾力性が低い場合のIS曲線 利子率r 図9.6 投資が利子率に反応しないケース 利子率r 投資関数 IS曲線 利子率r IS IS’ r1 O 投資I+G O E1 所得Y r0 貯蓄S I=S 貯蓄S 投資I+G O E0 貯蓄関数 45° O LM O Y0 Y1 国民所得Y 所得Y 13 14 図9.7 貨幣需要が利子率に反応しないケース (2)完全なクラウディング・アウト効果が生じるケー ス 利子率r ① 貨幣需要が利子率に反応しないケース(貨幣需 要の利子弾力性がゼロのケース) • 貨幣需要の利子弾力性がきわめて小さく(貨幣 需要が利子率に反応しない)場合、LM曲線は垂 直となる。 • 拡張的な財政政策によりIS曲線がシフトしても、 利子率が上昇するだけで、投資が同額減少して、 国民所得はまったく増加しない。 LM E1 r1 r0 E0 IS’ IS O Y0 国民所得Y 15 16 図9.8 投資の利子弾力性が無限大のケース ② 投資の利子弾力性が無限大のケース 利子率r • 利子率のわずかな上昇で投資が極端に減少す る場合、IS曲線が水平になる。 LM • 拡張的な財政政策をとっても、IS曲線はシフトし ない。政府支出の増加は利子率を変化させるこ となく同額の投資を減少させて、財市場は均衡す る。 O 17 IS r0 Y0 国民所得Y 18 3 練習問題9.2.1 練習問題9.2.2 次のようなマクロモデルを想定する。 0.82 4 0.1 2 2 10 400 200 このとき、政府支出を2から3に1増加させる。 (1)IS曲線を求めよ。 (2)LM曲線を求めよ。 (3)均衡国民所得、均衡利子率は、どのように変化す るか。 (4)この政府支出の増加によるクラウディング・アウト 効果を乗数でみるとどれくらいになるか。 次の文章のうち、正しいものはどれか。 ① クラウディング・アウト効果が大きければ、政府支 出の拡大によって国民所得が減少する場合もある。 ② クラウディング・アウト効果が大きければ、政府支 出の拡大によって利子率が低下する場合もある。 ③ クラウディング・アウト効果が大きくても、政府支出 の拡大によって必ず国民所得は増加する。 ④ クラウディング・アウト効果が大きければ、政府支 出の拡大によって国民所得が増加するかどうかは 不確定となる。 ⑤ クラウディング・アウト効果が小さいと、政府支出の 拡大によって国民所得が減少する場合もある。 19 23 練習問題9.3.2 練習問題9.3.3 目標とするGDPが1600、現在のGDPが1200とする。 限界消費性向が0.6とすると、目標のGDPを達成す るには、どれだけ政府支出を増やせばよいか。 以下のマクロ経済モデルを考える。 80 0.6 10 30 (1)均衡GDPを求めなさい。 (2)政府支出が2倍に増加すると、GDPはどれだけ 増加するか。 25 27 4