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赤野井湾の在来魚復活

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赤野井湾の在来魚復活
2
現在の取組と成果 ~新戦略プラン 重点戦略より
(1)漁場と産卵繁殖場の整備・保全による自然生産力の向上
高度経済成長期以降、琵琶湖総合開発やその他の経済活動によって、湖岸の風景は大きく
変わりました。護岸化が進み、固有種をはじめ多くの在来魚が産卵繁殖の場とするヨシ帯な
どが姿を消しました。湖岸のみならず、湖底においても水質の悪化や湖中砂利の採取による
土砂の減少を原因として、水草の異常繁茂や湖底の泥化などが進行しました。こうした琵琶
湖の環境変化は在来種の産卵繁殖活動にダメージを与え、在来種減少の大きな一因となって
います。
赤野井湾の在来魚復活
〈赤野井湾の在来魚復活事業〉
事業費:6,700 千円
委託費:①2,300 千円(委託先:滋賀県漁業協同組合連合会)
②3,500 千円(委託先:(公財)滋賀県水産振興協会)
~事業の背景~
赤野井湾は、かつてはニゴロブナやホンモロコをはじめとする在来魚の優良な産卵繁殖場であ
り、漁場でした。しかし、現状では、外来魚が多数生息し、在来魚の漁獲は激減しています。
そこで、赤野井湾で、オオクチバスを中心とした外来魚の集中駆除とニゴロブナやホンモロコ
の種苗放流を実施し、在来魚の復活を目指します。
~事業の内容~
①外来魚の積極的な駆除
・電気ショッカーボート等により、オオク
チバスなど外来魚の産卵親魚を集中的に
駆除します。
・タモ網すくいによりオオクチバス仔魚
を駆除します。
②ニゴロブナやホンモロコの放流
・ニゴロブナやホンモロコ仔魚を赤野井湾
につながる水田に収容して育成し、赤野
電気ショッカーボートにより
駆除された外来魚
井湾に通じる水路へ放流します。
③混獲率等調査
・赤野井湾へ放流したニゴロブナやホンモロコの生残や成育状況を調査するとともに、
琵琶湖での捕獲状況から資源への寄与率を把握します。
- 16 -
ヨシ帯と砂地の造成
〈水産基盤整備事業〉
事業費:387,250 千円(うち国庫補助金:180,000 千円)
~事業の背景~
湖岸のヨシ帯のうち、平常時に水に浸かっている「水ヨシ帯」
は、二ゴロブナ等の様々な魚類の産卵繁殖、仔稚魚の成育の場と
して大変重要です。中でも奥行きが 30m以上ある「水ヨシ帯」
は稚魚の餌になる動物プランクトンが多く発生し、オオクチバス
やブルーギルが嫌う低酸素状態となるので、低酸素耐性のあるニ
ゴロブナ稚魚等にとって更に良い成育場であることが判ってい
ます。ところが、昭和 28 年には約 260ha あった「水ヨシ帯」は、
自然湖岸(天然ヨシ群落)
昭和 40 年代からの開発による湖岸の人工護岸化や内湖の干拓な
どの影響で、平成 15 年には約 68ha(造成ヨシ帯を除く)と 200ha
近く減少してしまいました。
一方、セタシジミやヨシ帯で生まれたホンモロコ仔魚等は湖底
(沿岸域)の砂地を生息・成長の場としていますが、セタシジミの
主な漁場であった南湖では、数年前まで行われていた建設材料と
人工的な湖岸形状
しての砂利採取や、河川からの砂の供給量の減少などの要因によ
り湖底の泥化が進んでいます。その結果、砂地の面積は昭和 44 年の 719ha から平成元年には
151ha にまで激減し、それに伴いセタシジミの漁獲もほとんど無くなっているのが現状です。
滋賀県では、このような漁場の環境を改善するために以下の2つの事業を進めています。
~事業の内容~
(1) 水ヨシ帯の造成
平成 27 年 5 月までに 30.4ha の「水ヨシ帯」を新たに造成
しました。造成は、以前に水ヨシ帯が広がっていた場所の周
辺で、現存するヨシ群落と連続するように行います。
また、二ゴロブナ等の産卵繁殖に適した 30m 以上の奥行き
とするとともに、水位低下時に卵が干上がらないよう、琵琶
湖の基準水位より△30cm~△50cm の高さで傾斜をつけて造
成します。周辺のヨシを採取して育成したヨシ苗を植栽します。
造成直後の水ヨシ帯
(2) 砂地の造成
湖底が泥化している南湖で、平成 27 年 3 月までに 51.0ha の「砂地」を造成しました。
造成は、泥化した湖底に繁茂している
水ヨシ帯と連続した砂地造成のイメージ
水草を除去した後、船上から重機で土砂
を投入し、30cm の覆砂を行う方法で行
います。
関係機関と連携して、ダムや河川での
浚渫(しゅんせつ)で発生した土砂を有
- 17 -
効活用しています。
指
~事業の実績と成果~
目 標 値
標
水ヨシ帯造成面積
平成 29 年度末
H23
(1) 水ヨシ帯の造成
平成29年度末までに34.2haを造成することを目標
実績値(ha) 26.7
進捗率(%)
に事業実施中です。
78
34.2ha
H24
H25
H26
26.7
27.9
29.2
78
81
85
今年度は高島市新旭町での造成を実施中です。
指
(2) 砂地の造成
標
目 標 値
平成 29 年度末までに 64ha 造成することを目標に、
砂地造成面積
平成 29 年度末
H23
平成 19 年度に事業着手しました。今年度は草津市下
実績値(ha) 24.8
笠町において 3.0ha の造成を実施中です。
進捗率(%)
38
64ha
H24
H25
H26
35.8
45.8
51.0
55
71
79
南湖の生態系修復
〈琵琶湖固有種ワタカで学ぶ南湖再生事業〉
事業費:3,800 千円 委託費:3,318 千円
*マザーレイク滋賀応援寄附充当事業(委託先:(公財)滋賀県水産振興協会、滋賀県漁業協同組合連合会)
~事業の背景~
琵琶湖、特に南湖では湖岸の改変や外来魚の爆発的増加、水草の異常繁茂等により豊かな恵
みをもたらしてきたその機能が大きく損なわれています。生態系の再生には、その主体である
生き物の多様性とつながりを取り戻す必要があります。そのためには、環境修復とあわせて、
著しく減少した在来魚介類の積極的な資源添加が不可欠です。そこで、琵琶湖固有種のワタカ
等を放流し、生態系の修復をはかります。
~事業の内容~
琵琶湖固有種のワタカは、かつて琵琶湖にたくさん
いた魚で、水草を盛んに食べ、繁茂を抑制するはたら
きがあります。一時は琵琶湖からほとんどいなくなっ
ワタカ
てしまったワタカを増やし、自然の力で水草の異常繁
茂を防ぐため、稚魚の放流を実施します。ワタカ稚魚
の生産は(公財)滋賀県水産振興協会と滋賀県漁業協
同組合連合会に委託し、平成28年春に28万尾を南湖に
放流します。
漁船に乗って水草調査体験
この放流事業にあわせ、一般県民を対象として、南
湖の現状を知り、在来魚介類の大切さとそれらを取り
戻すための事業への理解を深めていただくことを目
的に、体験型の環境学習会や放流体験学習会を開催し
ます。
ワタカ種苗の放流体験
- 18 -
南湖のホンモロコにぎわい復活
〈取り戻そう!南湖のホンモロコ復活プロジェクト〉
事業費:25,700 千円
~事業の背景~
琵琶湖固有種であるホンモロコは、かつて南湖を主要な産卵繁殖場とし、成長とともに北湖へ
移動し、産卵期に再び南湖へ帰ってくるという生活をしていました。しかし、現状の南湖は、水
草の異常繁茂によりホンモロコの生息環境が著しく悪化しています。
そこで、産卵繁殖場から北湖まで連続した水草刈取りと種苗放流により、ホンモロコのにぎわ
いを取り戻します。
~事業の内容~
①水草の刈り取り
・ホンモロコ稚魚の生息環境を改善するため、草津市
下笠地先に造成したヨシ帯の前面 150ha の水草根こ
そぎ除去(湖底耕耘)を行います。
・また、草津市志那沖~比叡辻沖までの 20ha で水草を
根こそぎ除去することにより、南湖西岸から東岸へ
の湖流を改善し、下笠ヨシ帯周辺で成育したホンモ
ロコ稚魚の北湖への移動経路を確保します。
②ホンモロコの放流
・標識を施したホンモロコ全長 20mm の稚魚 100 万尾を
草津市下笠地先の湖底耕耘区に放流します。
③効果調査
・上記で標識放流したホンモロコを追跡することによっ
て、ホンモロコの移動状況を明らかにします。
・ホンモロコは生まれてから1年で親となります。放流
したホンモロコの南湖への回遊状況や産卵状況につい
ても調査します。
全長20mmホンモロコ稚魚の放流
~事業の成果~
・平成 25 年度に水草根こそぎ除去を 5 月~6 月に行い、6
月下旬から 7 月上旬にかけて、ホンモロコ稚魚 118 万
尾を放流したところ、南湖で放流したホンモロコが北
湖で広い範囲で漁獲されました。
・また、放流場所付近では、平成 26 年の 4 月から 5 月に
かけて、ホンモロコの産卵が確認されました。南湖で
ホンモロコの産卵が確認されたのは、十数年ぶりでし
た。
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南湖で確認されたホンモロコの卵
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