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大江橋駅 - エネルギー有効利用のご提案

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大江橋駅 - エネルギー有効利用のご提案
── 実 施 例 ──
京阪電鉄中之島線(大江橋駅)における
河川水利用氷蓄熱式空調システムの計画と評価
㈱日建設計総合研究所 丹 羽 英 治
■キーワード/氷蓄熱・未利用エネルギー
1.はじめに
京阪電鉄中之島駅舎
(大江橋駅)
では,河川に平行する
立地条件を生かして,
未利用エネルギーの有効利用,ヒー
トアイランド対策,駅舎に隣接する中之島遊歩道の環境
向上などを目的に,空調システムの冷却水に河川水を全
面的に利用する計画とした。また,負荷平準化と駅舎へ
の供給安定性確保の観点から,内融式氷蓄熱システムに
よる空調システムを採用した。平成20年10月の開業後,
夏季の運転実績データをもとに,当該システムの性能評
価を実施し,計画意図の検証を行った。また,あわせて
プラットホームの熱環境などについて実測を行い,評価
写真-1 ラッチ外コンコース(大江橋駅)
と検証を行った。
2.中之島線の概要
京阪電鉄中之島線は,中之島を縦断する延長約2.9km
の地下路線で,4つの新駅が誕生した。平成15年度に着
工,平成20年10月に開通した。図-1に中之島線の概要
を示す。
大阪大学中之島センター
キャンパス
イノベーションセンター
地下
御 堂 鉄 水晶橋
筋線
天神
駅
町橋
堀川
堺筋
筋
御堂筋
松屋
北浜駅
東横
御堂
橋駅
写真-2 プラットホーム(大江橋駅)
中之島公園
天満橋駅
橋
北浜
橋駅
大江
大阪市立東洋陶磁美術館
なにわ橋駅
難
波
橋
鉾流
橋
裁判所
淀屋橋駅
中央公会堂
線
つ橋
筋線
鉄四
路
御堂
地 下 高速道
鉄
地下
阪神
四ツ橋筋
中之島図書館
日本
土佐堀川 銀行 大阪
市役所
淀屋
道
高速
阪神
高速路
道
阪神
四ツ 橋 筋
駅
辺橋 路
中之島線
京浜本線
大江橋駅
堂島川
フェスティバルホール
なにわ筋
渡
肥後橋駅
)
島駅
議場
中之 際会
阪国
渡辺橋
国立国際美術館 な に わ
筋
な にわ 筋 線
︵ 計 画 ︶
池筋
あみだ
中之島 住友病院
センタービル
堀通
土佐
大阪市立科学館
筋
新なにわ
橋
津
船
橋
上
津
船
橋
大
島
堂
朝日新聞
リーガロイヤル
ホテル
大江
橋
中之島
ガーデン
ブリッジ
地下鉄
四つ 橋 線
関電ビルディング
橋
玉江
田養橋
大阪中之島
合同庁舎
大阪国際会議場
(大
渡辺橋駅
線
筋
堺
鉄
下
地
中之島駅
(大阪国際会議場)
大 川
京浜
駅
わ橋 線
路
なに 鉄 堺筋 高 速 道
地下
堺筋
阪神
天神橋
土佐堀川
本線
4.河川水利用システムの計画
至出町柳
地域熱供給を利用している渡辺橋駅を除く3つの駅で
天
駅
満橋
は,未利用エネルギーの有効利用とヒートアイランド対
策,遊歩道の環境向上を目的として,冷房設備に河川水
が利用されている。河川に接する中之島の立地条件を最
大限に生かし,図-2に示すように,河川上流で取水,
駅舎内で冷却水として熱的利用をした後,下流側に放水
図-1 京阪電鉄中之島線の概要
3.駅舎の概要
(大江橋駅)
所
在
する計画とした。図-3〜4に取放水設備の断面および
計画留意事項を示す。
地 大阪市北区中之島二丁目
堂島川
構 造 地下3階
遊歩道
各階主用途 地下1階 コンコース,電気室等
図−1 京阪電鉄中之島線の概要
地下2階 機械室
駅舎
地下3階 プラットホーム
(島式)
延 床 面 積 7,507㎡
完 成 2008年10月
ヒートポンプとその応用 2012.3.No.83
図-2 河川水利用システム概念図
─ 34 ─
取水口
放水口
冷凍機
── 実 施 例 ──
取放水配管
中之島遊歩道
取放水口
スクリーンバー
遮断弁
写真-4 氷蓄熱槽とブラインチラー,ポンプ
水冷式ブラインチラー
オートストレーナ
▼ 護岸計画水位
▼ 常水位
→
蓄熱運転
緊急時の遮断措置
遊歩道 ▼ ・緊急遮断弁
・サイフォン防止弁
既設護岸への
構造的影響
腐食・生物付着対策
・スクリーン
・ストレーナ
・配管・熱交換器材質
護岸計画水位 ▼
既存埋設配管
との調整
取水口
機械室
ブロア
図−3 取放水設備断面図
熱交換器
取水ポンプ
オートストレーナ
常水位 ▼
→
放熱用熱交換器
内融式氷蓄熱槽
蓄熱運転
放水口
水冷式ブラインチラー
ブライン
ポンプ
追いかけ用熱交換器
ブライン
ポンプ
放熱用熱交換器
取・放水ショート
サーキットの防止
河川水系への影響
・水温
・流況
・生態系
追いかけ運転
ピークカット
時間帯設定
7:00∼ 9:00
13:00∼16:00
(設定変更可)
図-4 取放水設備の計画留意事項
表-1 河川水使用許可条件
(大江橋駅)
日最大水量
時間最大水量
秒最大取水量
ブライン
ポンプ
蓄熱時間帯設定
0:00∼6:00
(設定変更可)
▼ 遊歩道
緊急
遮断弁
緊急
遮断弁
追いかけ用熱交換器
冷凍機
図-3 取放水設備断面図
運行船舶への
影響
ブライン
ポンプ
放熱運転
内融式氷蓄熱槽
追いかけ・放熱運転
4,074m / 日
194m3/h
0.054m3/s
3
図-6 氷蓄熱システムの運転フロー
その冷却水に河川水を直接利用している。図-5および
写真-3 取放水口
図-6にシステムの概要を示す。図-7に氷蓄熱システ
ムの計画運転パターンを示す。列車の運行上,蓄熱時間
5.氷蓄熱システムの計画
は0:00〜6:00の6時間,ラッシュ時およびピーク負荷
冷房熱源システムとしては,負荷平準化と供給安定性
時間帯を中心に放熱運転を行う。昼間の追いかけ運転パ
図−4 取放水設備の計画留意事項
確保のため,河川水利用氷蓄熱システム
(内融式)
を採用
ターンは季節や負荷に応じて変更され,できる限り蓄熱
した。
熱源機として水冷式ブラインチラーを2基設置し,
を使い切る計画とした。
表−1 河川水使用許可条件(大江橋駅)
空気配管
水冷式
水冷式
ブラインチラー ブラインチラー
NO.1
NO.2
放水口へ
取水口
積算
流量計
INV
INV
P2
取水配管
河川水取水ポンプ
T1
T2
T2
INV
INV
P1
放水配管
ブロア
T1
T3
オートストレーナ
(自動逆洗)
図-5 河川水利用氷蓄熱システムの概要
冷却水
ポンプ
NO.1
冷却水
ポンプ
NO.2
6.プラットホームの空調計画
プラットホームの空調方式は,図-8に示す単一ダクト
全空気方式
(定風量)
を採用し,外気冷房が可能な方式と
した。プラットホームの空調方式決定にあたっては,基
本設計段階において,CFD
(数値流体力学)
を用いた環境
解析モデルを作成し,給気口,吸込口の配置の異なるケー
スについて,温度分布,エネルギー消費量の違いなどの
検討を行った
(図-9)
。また,図-10に示すように,環境
解析モデルを用いて,ホーム端部に発生する列車風の予
測を行い,端部の遮風壁やバイパス流の効果を検討した。
─ 35 ─
ヒートポンプとその応用 2012.
3.
No.83
── 実 施 例 ──
最大負荷
(100%)
日
(GJ)
15
蓄熱量
中負荷
(50%)
日
5
0
5
0
0
(GJ/h)
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
0 2
冷熱需要
熱源出力
熱量
熱量
ピークカット時間帯
8 10 12 14 16 18 20 22
時 刻
(時)
5
4
6
(GJ/h)
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
0 2
冷熱需要
熱源出力
熱量
(GJ/h)
4.0
冷熱需要
3.5
熱源出力
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
0 2 4 6
軽負荷
(25%)
日
(GJ)
15
蓄熱量
10
蓄熱量
10
蓄熱量
蓄熱量
(GJ)
15
蓄熱量
10
8 10 12 14 16 18 20 22
時 刻
(時)
4
6
8 10 12 14 16 18 20 22
時 刻
(時)
図-7 氷蓄熱システムの運転パターン
対策前
線
路
ホーム
レタンファン
空調機
SAダクト
RAダクト
SAダクト
軌道部
車両
吸込
給気
プラットホーム
下部吸込口
軌道部
車両
線
外気
導入
車
両
⇒
車
両
⇒
遮風壁
対策後
外気冷房制御
排気と外気を比較
線
路
図−7 氷蓄熱システムの運転パターン
ホーム
給気
線
下部吸込口
チャンバ
路
路
列車下部高温熱だまり
図-8 プラットホームの空調計画
Y Z
流速 X 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
図-10 プラットホーム端部の列車風予測
Fi l e : trnc2_4200.fld
Cycle :4200
Time :420.016418
Y
CASE-2
C断面 Z
A断面
A断面
B断面
B断面
B断面
図−8 プラットホームの空調計画
C断面
C断面
C断面
C断面
A断面
A断面
B断面
図−10 プラットホームの端部の列車予測
CASE-1
CASE-2
CASE-2
CASE-1
CASE-1
Fi l e : trnc2_3500.fld
Cycle :3500
Time :350.012146
CASE-1
X
Y
X
CASE-2
B断面
A断面
列車下部
高温熱だまり
C断面 Z
B断面
列車到着前
A断面
列車到着時
図-9 プラットホームの熱環境解析
7.河川水利用氷蓄熱式空調システ
ムの評価
負荷に応じて昼間の放熱と追いかけ運転が制御され,
計画時の運転パターンとよく対応している。その結果,
軽負荷日においても氷がおおむね使い切られているこ
⑴ 代表日の性能評価
図-11に,最大負荷日
(8月13日㈭)
,中負荷日(7
ヒートポンプとその応用 2012.3.No.83
月18日㈯),軽負荷日(7月12日㈰)の運転状況を示す。
─ 36 ─
とが分かる。
図−9 プラットホームの熱環境解析
── 実 施 例 ──
(℃)
40
外気温度
河川水取水温度
(℃)
40
河川水放水温度
2009 年8月13日
放水温度
35
3:00
6:00
9:00
12:00
15:00
18:00
30
蓄熱槽NO.1
21:00
40
0
12:00
15:00
18:00
冷房負荷
15:00
18:00
21:00
最大負荷日
(8月 13 日
(木))
30
20
21:00
冷凍機出力
3:00
6:00
9:00
12:00
15:00
18:00
蓄熱槽NO.1
21:00
蓄熱槽NO.2
0:00
3:00
(GJ/h)
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
0:00
6:00
9:00
12:00
冷房負荷
15:00
18:00
21:00
冷凍機出力
3:00
6:00
9:00
(%)
100
12:00
15:00
18:00
蓄熱槽NO.1
21:00
蓄熱槽NO.2
80
40
20
9:00
12:00
60
0
6:00
9:00
80
20
3:00
6:00
蓄氷量
蓄氷量水位
蓄氷量
60
0:00
3:00
(%)
100
着氷率
80
0:00
(GJ/h)
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
0:00
蓄熱槽NO.2
河川水放水温度
2009 年7月12 日
熱量
(%)
100
河川水取水温度
25
熱量
熱量
(GJ/h)
冷房負荷
冷凍機出力
4.0
3.5
冷房負荷
冷凍機出力
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
0:00
3:00
6:00
9:00 12:00 15:00 18:00
20
21:00
外気温度
35
25
取水温度
0:00
(℃)
40
河川水放水温度
2009 年7月18 日
温度
温度
温度
30
20
河川水取水温度
35
外気温度
25
外気温度
60
40
20
0:00
3:00
6:00
9:00
12:00
15:00
18:00
0
21:00
0:00
3:00
中負荷日
(7月 18 日(土))
6:00
9:00
12:00
15:00
18:00
21:00
軽負荷日
(7月 12 日(日))
図-11 2009年夏季代表日の運転状況
(℃)
34
データ欠測 8/1∼8/4
32
30
(GJ/日)
40
データ欠測 8/1∼8/4
35
平均外気温度
平均河川水温
30
熱量
25
温度
28
20
26
10
22
20
7/1
蓄熱運転
5
7/8 7/15 7/22 7/29 8/5 8/12 8/19 8/26 9/2
0
9/9図−11 2009年夏季代表日の運転状況
9/16 9/23 9/30
7/1 7/8 7/15 7/22 7/29 8/5 8/12 8/19
図-12 日平均外気温度と河川水温度
8/26 9/2 9/9 9/16 9/23 9/30
図-14 日積算ブラインチラー出力
(GJ/日)
8月13日
40
(−)
5
データ欠測 8/1∼8/4
4
35
7月18日
7月12日
図−14 日積算ブラインチラー出力
30
熱量
成績係数
3
追いかけ運転
15
24
25
20
図−12 日平均外気温度と河川水温度
1
0
7/1 7/8 7/15 7/22 7/29 8/5 8/12 8/19 8/26 9/2
追いかけ運転
15
2
10
蓄熱のみ
蓄熱+追いかけ
蓄熱運転
5
0
9/9 9/16 9/23 9/30
図-13 日平均ブラインチラー成績係数
蓄熱運転ライン(製氷能力×6h)
1
11
21
31
41
51
日数
61
71
81
91
(日)
図-15 日積算ブラインチラー出力デュレーションカーブ
⑵ 期間性能評価
行されている。期間夜間移行率(全出力に対する蓄熱
図-12〜15に期間性能評価結果を示す。ブラインチ
ラーの成績係数は,河川水温度に応じて2.5〜3.5を推
運転出力の比率)は65%であった。
図−15 日積算ブラインチラー出力デュレーションカーブ
移し,
期間平均COPは3.0であった。ブラインチラーは,
期間を通じて蓄熱出力が維持され,計画どおり夜間移
図−13 日平均ブラインチラー成績係数
─ 37 ─
ヒートポンプとその応用 2012.
3.
No.83
── 実 施 例 ──
風速測定点1
風速測定点3
上り軌道部
風速測定点2
ポンプ室
分電盤室
プラットホーム
(西系統)
プラットホーム
(東系統)
信号制御盤室
下り軌道部
西系統還気ダクト
東系統還気ダクト
西系統
N
東系統
図-16 プラットホーム平面図
(kg/kgDA) プラットホーム
(東系統)7月9日−9月30日 6:00-23:00 飽和蒸気
0.036
0.034
(m/s)
0.032
80%
10
0.03
0.028
8
0.026
0.024
60%
0.022
6
0.02
0.018
4
0.016
40%
0.014
2
0.012
0.01
20%
0
● 7月
0.008
● 8月
0.006
○ 9月
0.004
0.002
設定温度
1
0
14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36
(℃)
乾球温度
図−16 プラットホーム平面図
下り電車進入時
列車風風速
絶対湿度
東側プラットホーム端部
(測定点3)
階段部
(測定点2)
進入後
2
分経過
1
分経過
分前
図-17 プラットホーム(還気)の温・湿度状態
進入後
進入開始
︵終端突入︶
進入 秒前
列車進入
30
図-18 列車風風速の実測結果
によって変動し,おおむね40〜80%の範囲に分布してい
8.プラットホーム環境の評価
る。図-18に示すように,ホームの列車風風速は,最大
完成後,熱環境および風環境の実測評価を行った。図
で7.2m/s,階段部で3.1m/sであった。これは,計画時の
-16に対象プラットホームの平面図を示す。図-17に示
予測性状とおおむね一致し,階段部においても,良好な
すように,プラットホームの温度は,おおむね設定温度
風環境が維持されていることを確認した。
図−17 プラットホーム
(還気)の温・湿度状態
(27℃)
に維持され,相対湿度は給気温度や外気条件など
期間電力消費量
0
参照システム
(水冷式)
50
100
150
ブラインチラー
(蓄熱運転)
200
図−18 列車風風速の実測結果
(MWH)
250
300
ブラインチラー
冷却水
(追いかけ運転)
ポンプ
冷却塔
河川水取水ポンプ
本システム
(河川水利用)
ブラインチラー
ブラインチラー
冷却水
(蓄熱運転)
(追いかけ運転)
ポンプ
蓄熱運転
追いかけ運転
冷水ポンプ
取水ポンプ
【計算条件】
・比較対象期間:夏季
(6月1日∼9月30日)
・参照システム:同等のブラインチラー+冷却塔による水冷式氷蓄熱システム
(成績係数は, 追いかけ運転時3.0, 蓄熱運転時2.5とした)
・比較方法:熱源出力
(実測値)
を与えて, 参照システムの電力消費量を算定した。
・河川水取水ポンプ, 冷却水ポンプ, 冷却塔は, 運転時間×運転台数×定格電力消費量により算定した。
図-19 河川水利用システムの省エネルギー効果の推定
ヒートポンプとその応用 2012.3.No.83
─ 38 ─
約5%低減
冷却塔
── 実 施 例 ──
大気へ
680MWH
遊歩道の暑
遊歩道の暑
大江橋駅
熱環境緩和
熱環境緩和
大江橋駅
冷却塔
冷却塔
ヒートポンプ
排熱
河川へ
663MWH
電力
ヒートポンプ
排熱
排熱
電力
冷房負荷
冷房負荷
494MWH
494MWH
冷房負荷
冷房負荷
494MWH
494MWH
参照システム
(水冷式)
本システム
(河川水利用)
図-20 河川水利用システムによるヒートアイランド負荷抑制・暑熱環境緩和効果
9.まとめと効果の推定
⑴ 省エネルギー効果の推定
図-19に河川水利用による省エネルギー効果の試算
結果を示す。実績値の一部に計算値を加えた比較では
あるが,河川水利用による省エネルギー効果は,標準
【各駅舎の設計者・施工者】
設計監修:建築/安井建築設計事務所 設備/日建設計
設 計:梓設計(なにわ橋駅),大建設計(大江橋駅),共同設計
(なにわ橋駅),内藤建築設計事務所(中之島駅)
施 工:ダイダン(なにわ橋駅),テクノ菱和(大江橋駅),新日
本空調(渡辺橋駅),朝日工業社(中之島駅)
的な水冷式システムに対して約5%と推定される。
【関連発表論文】
⑴ 丹羽英治,奥宮正哉,尹奎英:地下鉄道駅舎のホーム温熱環
境と冷房負荷に関する研究-シミュレーションによる給気/吸
図−20 河川水利用システムによるヒートアイランド負荷抑制・暑熱環境緩和効果
水冷システムの場合,冷却塔を介して,遊歩道に排
込口設置位置と還気/排気制御方法の検討-,空気調和・衛生
熱が放出される。これに対して本システム
(河川水利
工学会学術講演会論文集,2004年8月
⑵ 丹羽英治,薮下文廣:京阪中之島線新駅舎の設備計画,空気
用)の場合には,大気へ放出する空調排熱がゼロであ
調和・衛生工学会近畿支部研究発表会,2009年2月
るため,ヒートアイランド負荷抑制効果があるととも
⑶ 丹羽英治:駅舎における河川水利用氷蓄熱システムの計画と
に,遊歩道の暑熱環境緩和に貢献しているものと考え
運転性能評価-システムの計画概要と2009年夏季運転性能評価,
空気調和・衛生工学会大会論文集,2010年9月
られる。
⑵ ヒートアイランド負荷抑制・暑熱環境緩和効果
10.おわりに
京阪電鉄中之島線駅舎の河川水利用氷蓄熱式空調シス
テムの計画と評価においては,
京阪電気鉄道㈱をはじめ,
各駅舎の設計者,施工者など,多くの関係者のご協力と
ご支援をいただきました。また,氷蓄熱システムのデー
タ収集に関しては,関西電力㈱関係者のご協力をいただ
きました。この場を借りて謝意を表します。
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ヒートポンプとその応用 2012.
3.
No.83
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