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総合的な学習の時間への発展を見通した生活科カリキュラムの作成

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総合的な学習の時間への発展を見通した生活科カリキュラムの作成
総合的な学習の時間への発展を見通した生活科カリキュラムの作成
美土里町立本郷小学校
山平
弥生
【要約】
本研究は,総合的な学習の時間に発展する内容を明確にした生活科のカリキュラムの創造である。
充実した生活科学習が展開されれば,第3学年から始まる総合的な学習の時間もさらに広がりや深
まりが出てくるであろうと考えた。まず,所属校における生活科と総合的な学習の時間の課題を整
理し,児童の実態や地域の実態を把握した。次に,総合的な学習の時間に発展する内容を設定し,
実態や目指す子ども像を念頭におきながら生活科カリキュラムを作成した。
このことにより,生活科と総合的な学習の時間との関連が明確になった。このようにしてつくら
れたカリキュラムに基づいて生活科の学習を展開することで,子どもたちに自立への基礎を養い,
生きる力を育てることにつながると考えた。
【キーワード】 生活科,カリキュラム開発
Ⅰ 主題設定の理由
「具体的な活動や体験を通して自立への基礎を
育てる」ことを目指して生活科が導入されて,12
年が経過した。新学習指導要領の改訂の前に,子ど
もたちが楽しそうに活動しているとか,時間をかけ
てたくさん活動したとか等の表面的なことだけで
なく,活動を通して子どもたちの気付きが豊かにな
ってきているか,追究する力が育ってきているか等,
その質的な面が問われている。
また,生活科と同じように,児童の主体的な学び
を大切にしていく総合的な学習の時間が来年度か
ら第 3 学年以上で完全実施される。総合的な学習の
時間を視野に入れた生活科学習は具体的にどのよ
うな取組みをしていけばよいのか,これまでの取組
みを整理し直し,総合的な学習の時間への発展を見
通した生活科カリキュラム作成は,今この時期に求
められる課題であると考えた。
Ⅱ 研究の基本的な考え方
1 生活科について
生活科の現状と課題について,教育課程審議会の
中間のまとめにおいて「児童の学習状況については,
直接体験を重視した学習活動が展開され,おおむね
意欲的に学習や生活をしようとする態度が育って
いる状況にあるが,一部に画一的な教育活動がみら
れたり,単に活動するだけにとどまっていて,自分
と身近な社会や自然,人にかかわる知的な気づきを
深めることが十分でない状況も見られる。」と指摘
されている。
(注 1)このような現状と課題を踏まえ,
今回の改訂にいたった。
生活科の改善の基本方針として,文部省(現文部
科学省)「小学校学習指導要領解説 生活科編」に
おいて,「改善の基本方針の第1は,児童が身近な
人々や社会,自然と直接かかわる活動や体験を重視
すること,第2は,直接かかわる活動や体験の中で
生まれる知的な気付きを大切にする指導が行われ
るようにすること,第3は,各学校において,地域
の環境や児童の実態に応じて創意工夫を生かした
教育活動や,重点的・弾力的な指導が一層活発に展
開できるようにすること」と示されている。(注 2)
高浦勝義は,身近な人々とのかかわりについて
「地域には様々な境遇の人々が生活をしているが,
児童は学習活動の中でこれらの人々とかかわりを
もつことによって共生の大切さを学び,そして地域
への愛着を深め,自分への気付きを深めていくこと
が求められている。」と述べている。(注 3)また,嶋
野道弘は,実態に応じた指導について,「生活科は
地域に根ざし,子供の生活に根ざす教科である。学
習の対象や場である地域の人や社会,自然などの実
態をよく把握し,一人一人の子供の実態や願いをよ
く理解した上で教育活動を行うことが,今求められ
ている。」と述べている。(注 4)このような考えに立
って,地域の環境や児童の実態に応じて,創意工夫
した教育活動を弾力的に展開していくことが必要
である。
このことから,生活科はこれまでの教科理念や特
- 49 -
質をかえるのではなく,それらを一層生かすことを
意味していると考えられる。具体的な活動や体験を
する中で,熱中し,没頭し,一喜一憂し,驚いたり
感動したりする時間をもつことは,自分にとって価
値ある時間をつくる力をはぐくむことにつながる。
この力は,子どもたちの生きる力の基礎をつくって
いくものだと考える。
2 生活科と総合的な学習の時間の関連につい
て
教育課程審議会答申において,総合的な学習の時
間は,低学年において総合的な学習の性格をもつ生
活科が設定されていることや,生活科を中核とした
他教科との合科的な指導が進められていることな
どを考慮して,第3学年以上に設定された。
文部省「小学校学習指導要領解説 生活編」の中に
は,生活科と総合的な学習の時間との関連について,
次のように示されている。(注 5)
第1章 総説 2 生活科改訂の趣旨(2)改善の具体的事項(エ)
○ 「総合的な学習の時間」との関連に配慮し,児童が一層自分の思いや願いを生かし,主体的に活動することがで
きるようにするため,内容の取扱いにおいて,国語,音楽,図画工作などをはじめとした他教科との合科的・関連
的な指導を一層推進する。
第4章 指導計画の作成等 第1節 5 授業時数の適切な割り振り
○ なお,低学年の授業時数の編成や時間配当の在り方の問題は,単に生活科の授業時数の割り振りの問題にとどまら
ず,学校運営全体に影響を与えるものである。このことについては,第3学年以上に設定される「総合的な学習の時
間」との関連にも十分配慮して,小学校教育全体の改善と充実を図る観点から検討し,工夫する必要がある。
第2節 指導計画作成上の配慮事項
○ 今回の改訂によって,第3学年以上に「総合的な学習の時間」が設定される。生活科においては,児童が一層自分
の思いや願いを生かし,主体的に活動することができるようにすることや,他教科との合科的・関連的な指導を一層
推進することが大切である。こうした学習が第3学年以降の「総合的な学習の時間」においてさらに発展するように
したい。
また,高浦は,生活科の発展としての総合的な学
習の時間について「総合の時間と生活科のねらいは
同質的であり,その特質は,子どもが自己の生き方
(=生活)を考え,より望ましい生き方を実践でき
るようになることをめざし,そのために必要な問題
解決の資質や能力,学び方やものの考え方,主体
的・創造的な探究の態度を育成することにある。」
と述べている。(注 6)さらに,嶋野は,生活科と総合
的な学習の時間との関連について「低学年の生活科
によって,どんな学び方が育っているかを吟味し,
実態を把握することによって,どんなタイプの総合
的学習を3年生以上で考えていくかの目安にする
ことができる。このように考えると生活科学習を充
実させていくことで,総合的な学習の時間を充実し
たものにしていくことができる。」と述べ (注 7),育
てようとする力に視点を当て,表1のように表して
いる。(注 8)
表1
情緒面
態度面
能力面
知識・理解
生活科や総合的な学習の時間によって育てようとする力
生
活
科
総合的な学習の時間
学ぶ楽しさ,意欲,興味・関心や知的好奇心など
主体的に追究する態度,問題解決的な態度,ねばり強さなど
自分の生活に生かそうとする態度・自分で判断して行動する
社会に働きかける行動力や態度
かかわる力(コミュニケーション能力,対象に合わせてかかわれる力など)
追究する力(問題発見力,学習企画力,情報収集・選択・処理能力など)
考える力(豊かな発想やアイディア,思考力や判断力など)
伝える力(表現力,情報発信能力など) 修正する力(自己評価力など)
生活上必要な習慣や能力
活動や体験の中で納得して自分自身と一体的にとらえてわかったこ 社会や自然,生活と自分とのかかわりを総合的に理解
と
生きて働く知恵・態度化につながる確かな理解
これらのことから,生活科で培った,生活の中
から見いだした気付きを体験を通して実感を伴い
ながら自ら学んでいく力が,自分を取り巻く様々
な環境や自分の生き方を追究する総合的な学習の
時間につながっていくと考える。総合的な学習の
時間への発展を見通した生活科カリキュラムを作
成するにあたっては,生活科と総合的な学習の時
間の関連性を十分に配慮していく必要がある。
- 50 -
3 カリキュラムについて
(1) 生活科カリキュラムについて
カリキュラムとは,学校教育の目標に即して,
児童生徒の学習活動を指導するために,各学校が
計画的・組織的に編成した教育内容の全体計画で
ある。カリキュラムの類型としては,教科カリキ
ュラム,経験カリキュラム,統合的なカリキュラ
ムなどがある。
天野正輝は,統合カリキュラムについて「硬直
した学校教育に柔軟性をもたせ,子供を知識の教
授の対象としてではなく学習の主体として位置づ
け,現代的課題にも主体的に立ち向かう能力を育
もうとするもの」と述べている。(注 9)また,佐々
木昭は,カリキュラムの統合について「カリキュ
ラムにおける諸活動を関連づけながら全体として
まとめていくもので,そのため,各教科の関連す
る内容を明らかにし,そこからカリキュラムをま
とめていくことである。それは教科群の統合を意
味するものではなく,児童の経験の統合というこ
とである。」と述べている。(注 10)
このことから,自立への基礎を養うことを目標
とした生活科においては,児童の活動や体験,学
習内容,児童を取り巻く地域社会や自然環境など
をあらゆる角度から検討して,特色ある統合的な
カリキュラムを作成していく必要があると考える。
(2) 生活科カリキュラムから総合的な学習の時
間への発展
文部省小学校学習指導要領の総則では,指導計
画の作成等に当たって配慮すべき事項に「各教科
等及び各学年相互間の関連を図り,系統的,発展
的な指導ができるようにすること」
「 児童の実態等
を考慮し,指導の効果を高めるため,合科的・関
連的な指導を進めること」と示されている。(注 11)
また,文部省小学校学習指導要領解説生活編の改
善の具体的事項にも,総合的な学習の時間との関
連に配慮し,これまでの生活科の中にも言われて
きた他教科との合科的・関連的な指導を一層推進
することが改めて強調されている。
これからの生活科のカリキュラムについて嶋野
は「生活科と他教科の指導が合科的におこなわれ
るようになれば,生活科の学習は一層総合性が強
まり,生活科の発展上に『総合的な学習の時間』
が位置付くようになると考えられる。また,その
ことによって,子供が一層自分の思いや願いを生
かし,主体的に活動することができるようになる
ものと期待される。」と述べている。(注 12)
これらのことから,他教科等との関連を図るこ
とはもちろんのこと,児童の興味・関心等に基づ
く活動の工夫や,問題の解決や探究活動等,学び
方や考え方を育てるという点で関連のある総合的
な学習の時間への発展が明らかにされた,所属校
独自の生活科カリキュラムづくりを進めていく必
要がある。
Ⅲ 所属校の実態
所属校は,全校児童 53 名の小規模校である。学
校の周りには田畑が広がり,近くにはオオサンシ
ョウウオなどが生息する川が流れる。四季の変化
を身近に感じることのできる,自然環境に恵まれ
た地域である。
第 1 学年及び第2学年には生活実態を,第3学
年から第6学年には生活科に対する思いをたずね
るアンケートを実施した。
第 1 学年及び第2学年では図1のように,木登
り,山での遊びなどは 50%以上の児童が「あまり
しない」
「しない」と回答した。また,近所の人と
出会ったとき,図2のように,ほとんどの児童は
挨拶を交わすことができているが,話をするとい
う日常的なつながりについては,1/3 の児童が「し
ない」「あまりしない」と回答した。
このことから,子どもたちの行動範囲は狭く,
その活動内容も,児童を取り巻く豊かな自然や地
域の人とのつながりを生かしたものではなく,家
の中や周辺で既製の遊び道具で遊んでいる子ども
たちの姿が浮かび上がってくる。
木登りをする
39%
6%
川で遊ぶ
22%
山で遊ぶ
17%
虫をつかまえる
17%
- 51 -
草花で遊ぶ
よくする
図1
33%
22%
20%
50%
5%
17%
22%
40%
60%
ときどきする
17%
28%
11%
39%
33%
0%
44%
11%
あまりしない
39%
28%
80%
100%
しない
第1学年及び第2学年の遊びの実態
あいさつをする
60%
33%
話をする
0%
よくする
図2
33%
20%
40%
ときどきする
28%
6% 6%
17%
17%
ていなかったり,他教科・領域との関連が明確に
できなかったりという,カリキュラム構成上の課
題も残った。
60%
80%
100%
あまりしない
しない
近所の人とのかかわり
第3学年から第6学年では,生活科をやってで
きるようになったこととして,図3のように自分
の考え,自信,協力という項目では 80%以上の児
童ができるようになったと感じているが,計画性,
伝える力,他の学習への広がりについて約 40%の
児童ができるようになったとは思っていない。
このことから,児童は,自分なりの考えをもち,
自分に自信をもって友だちと協力し,活動を進め
てきたことが分かる。しかし,計画を立てる力や
思いをまわりの人に伝えていく力,他の学習に生
かす力については課題があるので,活動の中で重
点的に取り組む必要があると考える。
他の学習に生かす
6%
48%
14%
計画を立てる
0%
とても
9%
66%
14% 0%
37%
23%
自分なりの考え
14%
31%
49%
友達と協力する
14% 0%
68%
20%
40%
少し
Ⅴ 具体的なカリキュラムづくり
1 全体構想図
所属校においては,図4に示すように「ふるさ
とを見つめる」を総合的な学習の全体テーマに挙
げ,地域や地域の人との出会いから,体験的な活
動を通して地域のよさや課題に触れ,自己の生き
方につなげていくことをねらいにしている。
6%
26%
49%
20%
自信がもてる
図3
46%
11%
思いを伝える
40%
Ⅳ カリキュラムづくりの視点
これまでの文献研究及び所属校や地域における
実態調査などから,生活科カリキュラムを作成す
るにあたって次のことを考えた。
① 学校教育目標と生活科の位置付け
② 総合的な学習の時間への発展性の明確化
③ 新教育課程の改善に沿った内容
④ カリキュラムの評価について
60%
あまり
6% 3%
80%
100%
ぜんぜん
生活科でできるようになったこと
所属校では,昨年度「主体的に活動に取り組む
児童を目指して」を研究主題とし,生活科と総合
的な学習の時間に視点をあて取組みを進めてきた。
その結果,子どもたちは課題解決に向かって,意
欲的に取り組む態度が見えてきた。しかし,6年間
という見通しのもとでの系統だった活動が仕組め
- 52 -
図4
全体構想図
2
生活科から総合的な学習の時間へのつなが
り及び学ぶ力から見た発展
生活科で培われた力が総合的な学習の時間でさ
らに強化されていくためには,まず生活科の学習
そのものが充実されていなければならない。そこ
表2
科
年
総 合 的 な 学 習 の 時 間
中 学 年
高 学 年
自分を取り巻く社会生活との
とかかわる中で,自分の
かかわりの中で,様々な事象
調べたいことを見つけ
に関心をもち,自分の解決す
る。
べき課題を見つける。
自分を取り巻く社会生活
課題解決に向けて,活動内容,
とのかかわりの中で,
方法,時間設定などを考える。
力
様々な事象に関心をも
物事を関連づけて考え,全体
熱中し,何でも自分でや
ち,解決のための見通し
的に考え判断する。
ってみる。
をもつ。
のやりたいことや不思
議に思うことを見つけ
る。
いつ,どこで,どのよう
な活動をするかを考え,
自分がやりたいことに
企
意 欲・行 動 力
計画を立て行動に移す力
地域の人々や社会,自然
画
不 思 議 を 見つ け る 力
町たんけんなどで,自分
課題発見力
活
学
学ぶ力から見た発展
学ぶ力
学ぶ力
生
低
で,児童や地域の実態を踏まえ,総合的な学習の
時間を意識し,生活科で身に付いた力が,総合的
な学習の時間にどのように役立っていくかを,学
年の発達段階や実態を踏まえながら,表2のよう
に設定した。
を工夫し,自分の思いを
絵や言葉,動作等で表現
表 現 力
表 現 力
自分なりに遊びや生活
やる気をもって積極的に
めあてをもって最後まで粘り
人とかかわったり,自分
強く取組み,自分が考えたこ
で工夫して調べたりす
とを実践に移す。
る。
相手や目的を考えなが
相手や目的を意識しながら,
ら,伝えたいことを分か
多様な方法で,自分の考えを
りやすく表現する。
的確に表現する。
集めた情報の中から自分
様々な方法で収集したものの
に必要なものを選び出
中から必要なものを取捨選択
し,それを活用する。
し,加工し,自ら情報を創り
する。
分の思いを話したり,相
手の話を聞いたりする。
情報活用能力
情報を交換して,コミュ
ニケーションを楽しむ。
上げ,情報を発信する。
コ ミュニ ケ ー シ ョン 力
コミュニケーション力
様々な人とふれあい,自
相手のことを考えながら
自分の考えをはっきりさせ,
自分の意見を分かりやす
目的に沿って的確に相手に伝
く話したり,相手の意見
える。
や考えを理解しながら聞
人の意見を尊重し,積極的に
いたりする。意欲的にコ
コミュニケーションを図ろう
ミュニケーションを図ろ
とする。
うとする。
自分や友達のよさを見
つける。
自 己 評 価 力
活動を振り返る力
自分の活動を振り返り,
自分の活動を振り返り,
自分の活動を振り返り,学習
学習方法や進み具合を考
の方法や追究の仕方が適切で
え,次の活動に生かす。
あったかを検討し,次の活動
子どもや地域の実態をふまえ総合的な学習の
- 53 -
に生かす。
3
生活科と各教科,道徳の時間及び特別活動
との関連付け
低学年の中での関連として,特に国語,音楽,
図画工作等の教科とのつながりが深い。国語では
作文や音声言語領域,音楽や図画工作では多様な
表現活動にかかわる部分で,互いに児童の活動の
広がりに配慮しながら関連を図っていくことが大
切であると考えた。そこで,表3のように,学習
指導要領のねらいから各教科,道徳の時間,特別
表3
生活科と各教科,道徳の時間および特別活動との関連付け
キーワード
国語科
項目
感性的認識と結びつ
いた言語の学習
必要感に基づく学習
活動との関連を明らかにしていき,年間計画の中
にも各単元と関連のある教科を明確にしていった。
低学年から中高学年への関連については,社会
では観察・調査や体験を,理科では自然体験を取
り入れ,児童の生活との関連を図ることが重視さ
れている。どちらの教科も地域を活動場面にした
第3学年の学習で,生活科との関連に配慮するこ
とが求められている。このことから,表4のよう
に,第2学年の生活科単元からの発展を考えた。
生
話すこと
活
科
と
の
関
連
・疑問に思うことをたずねたり応答したりする。
・自分が体験したことを,話す。
・大事なことを落とさないように最後まで聞く。
・相手や目的を考えながら書く。
・書こうとすることを選んで,楽しんで表現する。
・いろいろな読み物を楽しんで読む。
・身近な話題に沿って話し合う。
・具体的体験を通して,数についての感覚を豊かにする。
・量とその測定の理解の基礎となる経験を豊かにする。
・図形の理解の基礎となる経験を豊かにする。
聞くこと
書くこと
読むこと
話し合うこと
数と計算
量と測定
図形の利用等
算数科
生活の中から生まれ
る算数
音楽科
豊かな表現
環境の中の音楽
表
鑑
現
賞
・楽しい音楽活動を通して,歌遊び・リズム表現をしながらまわりの人と交流し,生活を明るく潤
いのあるものとする。
・リズム遊び,ふし遊びなどを工夫し,音楽表現の楽しさに気づく。
・音楽の楽しさを感じ取って聴き,様々な音楽に親しむ。
豊かな表現
豊かな発想
表
鑑
現
賞
・表したいこと,つくりたいものを自分の表現方法でつくりだす喜びを味わう。
・豊かな発想をし,体全体の感覚や技能を働かせる。
・自分や友達の作品を見ることに関心をもつ。
体育科
自然の中での遊び
ルール
基本の運動
ゲーム
道徳の
体験的支援
子どもの発達段階
自分 自身 ・他 の人
との かか わり ・自
然や 崇高 なも の・
集団や社会
学級 活動 ・児 童会
活動・学校行事
図
画
工作科
時
間
特
別
活
動
望ましい集団
生活の向上と適応
表4
具体的
視 点
活
・基本の運動やゲームを,簡単なきまりや活動を工夫して,楽しくできるようにするとともに,体
力を養う。
・誰とでも仲よくし,健康・安全に留意して運動する態度を育てる。
・健康や安全に気をつけ,よいと思うことを進んで行う。
・気持ちのよいあいさつをし,身近にいる人に温かい心で接し,親切にする。
・身近な自然に親しみ,命を大切にする心をもつ。
・郷土の文化や生活に親しみ,愛着をもつ。
・学級における生活上の諸問題の解決,組織づくり,仕事の分担についての話し合い活動をする。
・異年齢集団による自発的,自治的な活動を効果的に展開する。
・様々な人間関係の中で協力し協働することによって,よりよく豊かな集団生活を築いていく自主
的・実践的な態度を育成する。
第2学年
生活科単元からのつながり
ア健康で安全な生活 イ身近な人々との接し方 ウ公共の意識とマナー エ生活と消費 オ情報と交流
カ身近な自然との接し方 キ時間と季節 ク遊びの工夫 ケ成長への喜び コ基本的な生活習慣と技能
動
内
容 基本 具 体 的 視 点
コ
学習内容項目
ア健康で安全 ③地域と生活
な生活
イ身近な人々 ④公共物や公
との接し方
共施設の利
ウ公共の意識 用
とマナー
オ情報と交流
⑤季節の変化
カ身近な自然
と生活
との触れ合
い
⑥自然やものを
キ時間と季節
使った遊び
ク遊びの工夫 ⑦動植物の飼
育栽培
自
分
ケ成長への喜 ⑧自分の成長
び
生
自
身
力
各教科内容,総合的な学習の時間への発展
〇校区を探検するためにどんな
ことをするか考え計画を立て
る。
〇その場に応じた挨拶ができる。
〇自分以外の人のことを考えて
対応ができる。
〇要件を正しく伝える。
〇調べたことをまとめてマップ
に書き込む。
〇人との安全な接し方,安全な遊
び方や場所の使い方,危険を予
測した行動が分かる。
〇全感覚を働かせて観察する。
〇様々な角度から観察する。
〇自然のものを使って,友達と工
夫しながら遊ぶ。
〇うまくできたことや自分の活
動を振り返る。
〇徒歩通学ができている自分に
気づき,希望をもって学校生活
を送ろうと意欲的になる。
活
国:A(1)ア 伝えたいことを選び,
自分の考えが分かるように道筋を
立てて,相手や目的に応じた適切
な言葉遣いで話す。
社:(1)自分たちの住んでいる身近な
地域について観察,
調査したり白
地図にまとめたりして調べ,
地域
の様子は場所によって違いがあ
ることを考えるようにする。
理:A(1)ウ 身近な昆虫や植物を探し
たり育てたりして昆虫には植物を
食べたり,それをすみかにしたり
して生きているものがいること。
道:2(1)礼儀 (4)尊敬感謝
3(1)自然・動植物愛護
4(1)規則の尊重・公徳心
総:自然への関心,コミュニケーショ
ン能力,地域や学校における遊び
の課題と創造,環境問題
など
- 54 -
科
で
学
ん
だ
第 三 学 年 へ
基 本 的 な 生 活 習 慣 と 技 能
自分 と 自 然 と のか か わ り
〇自分や友達の住んでいる所に関
心をもち自分の周りを見直す。
〇学校までの道のりを歩いて登下
校する自分に気づく。
○自分の活動を振り返る。
自 分 と 人や 社会 と の か か わ り
こ こ を と お っ て く る ん だ よ
〇通学路を実際に歩いて,どんな
ものがあるか見つける。
〇道で出会った人にあいさつをし
たり話をしたりする。
〇まわりの様子を観察する。
〇たんけんマップをつくりながら
様々な発見をする。
〇おすすめスポットを見つける。
〇道の周りにある自然に触れる。
〇川や田んぼの様子に関心をも
ち,四季の変化を発見する。
〇まわりにいる動植物に興味をも
つ。
〇おすすめスポットを見つける。
4 生活科の年間計画
年間計画作成にあたっては,新教育課程の改善
の趣旨を考慮し,表5のように学習活動を学年単
位で考えるだけでなく,2年間の見通しで見ると
いうことで合同で活動する場面を設定した。第1
表5
学年は地域の自然環境を十分に生かすこと,第2
学年は人とのかかわりに重点をおいた。自分と身
近な自然や社会,人々にかかわり,活動をする中
で,互いを認め合い児童自身の生活を豊かにして
いくことができると考えた。
生活科年間活動計画(2学年分)
5 評価について
(1) 学習活動における評価の観点
生活科の評価は,①具体的な活動や体験の広が
りや深まりを評価すること②一人一人のよさなど
に着目して評価すること③実践的な態度を評価す
ることの 3 点が挙げられ,表6のように,生活科
の目標に照らし合わせながら,指導要録に示され
た三つの観点から評価することになる。この三つ
の観点は密接に関連している。
これらのことを踏まえながら,各単元ごとに評
価規準を設定し,表7のような評価計画表を作成
することで,児童一人一人のよい点や可能性,進
歩の状況などが評価できると考えた。
(2) カリキュラムの評価
児童や地域の実態に即したカリキュラムを作成
するには,点検・評価が計画的・効果的に実施さ
れ,フィードバック情報,フィードフォワード情
報を有効に機能させることが大切になってくる。
実践―点検・評価―改善というプロセスの繰り返
しを,表8で示す観点で行っていきたい。
- 55 -
表6
観
点
生活への関
心・意欲・態
度
活動や体験
についての
思考・表現
身近な環境
や自分につ
いての気づ
き
評価の観点及び評価観点の具体化
趣
旨
身近な環境や自分自
身に関心をもち,進ん
でそれらとかかわり,
楽しく学習や生活を
しようとする。
具体的な活動や体験
について,自分なりに
考えたり,工夫したり
して,それらを素直に
表現する。
具体的な活動や体験
をしながら,自分と身
近な社会や自然との
かかわり及び自分自
身のよさに気づいて
いる。
評価観点の具体化
ア学習の過程を評価
する。
(子どもの活
動の様子を,子ど
もに寄り添って理
解する。)
イよい点や可能性を
見出して評価す
る。
(次の活動での
広がりや深まりが
期待できるような
事実。)
ウ評価方法や記録簿
の 工 夫 。( 自 己 評
価,相互評価,観
察や作品による評
価などの積み重
ね。)
表7
単元名
こ
自分や友達の住んでいる地区を進んで探検し,地域の自然や人々,施設などに関心をもち,多くの人々とかかわりをもつことに喜びを味わうこ
とができる。
生活への関心・意欲・態度
活動や体験についての思考・表現
身近な環境や自分についての気づき
評価規準
・校外での安全に気をつけ,集団
・通学路探検で見つけたことや思っ
・豊かな自然に囲まれ,いろいろな
活動の過程
行動の大切さを身につける。
たことを,絵や文に書いたり大き
施設があり,様々な人々が暮らし
な声で発表したりする。
ていることに気づく。
こ
を
と
おっ
て
く
る
ん
だ
よ
①通学路探検の計画を立てる。
・自分や友達の通学路に関心をも
・ルールやコースを決める。(塩瀬・小
ち,意欲的に計画を立てる。
谷・橋上・上河内コース)
・始点と終点を決める。
②通学路を楽しく探検する。
・ルールを守って探検する。
・通学路にある色々なものを発見する。
・出会った人に挨拶をしたり,話をし
たりする。
③発見したことなどを生活科マップに
かき込む。
・様々な角度から発見したことをかき
込む。
④体験して分かったことや思ったこと
・恥ずかしがらずに大きな声で発
をまとめる。
表したり,友達の発表をしっか
・おすすめスポットを友達に知らせる。
り聞いたりする。
・絵や文などに表し発表する。
※②∼④の活動をコースごとに繰り返
す。
⑤自分の活動を振り返る。
表8
観 点
学習内容に
かかわって
学校運営に
かかわって
地域・家庭に
かかわって
Ⅵ
1
○
評価計画表
ねらい:
カリキュラム評価観点表
検 討 の 視 点
・学習指導要領に示された生活科のねらいが達成され
るものであるか。
・育てたい能力や態度が身についているか。
・基本的な考え方に修正はないか。
・計画に時間的,空間的,心理的ゆとりがあるか。
・教職員間の連携や協働体制はどうか。
・地域の学習材は適当だったか。
・理解や協力は得られたか。
研究の成果と課題
研究の成果
生活科から総合的な学習の時間への発展を,
さまざまな角度から考え,系統立てることによ
って生活科の学習内容が整理され,ゆとりのあ
るカリキュラムを作成することができた。
○ 実態調査を基に,児童の実態や地域の実態,
特色を生かした本校独自の生活科カリキュラム
を作成することができた。
2 今後の課題
○ 各教科領域のそれぞれがもつ基礎・基本が定
着する取組みが日常的に展開されていないと,
相乗効果は望まれない。全教職員が今一度目指
す子ども像を具体的に思いえがき,様々な場で
実践し,修正していく必要がある。
○ 学習活動とカリキュラムの評価の観点や方法
は作成したが,学習活動の展開の中での具体的
な評価の実践ができていないので,授業実践に
よる評価の検証が必要である。
・計画表に探検計画を工夫して書く。
・通学路の近くにある施設に気づく。
・地域にはいろいろな人が暮らして
いることに気づく。
・生活科マップの中に体験したこと
を工夫して表す。
・施設が集まっているところ,昆虫
などがたくさんいる場所など,地域
の特徴に気づく。
・自分の紹介したいことを絵や文な
どで表す。
・友達の発表を聞いて,地域にたく
さんの素敵な場所があることに気
づく。
・学校までの道のりを歩いて毎日登
校している自分や友達に気づく。
【引用文献】
(注 1) 文部省『小学校学習指導要領 生活編』日
本文教出版株式会社 平成 12 年 pp.2-3
(注 2) (注 1)上掲書 pp.3-4
(注 3) 高浦勝義・佐々木利夫『生活科の理論』黎明
書房 2001 p.65
(注 4) 嶋野道弘『改訂小学校学習指導要領の展開生
活編』明治図書 1999 p.45
(注 5) 文部省『小学校学習指導要領 生活編』日本
文教出版株式会社 平成 12 年 p.5 , p.47,
p.56
(注 6) 高浦勝義・佐々木利夫『生活科の理論』黎明
書房 2001 p.129
(注 7) 嶋野道弘『改訂小学校学習指導要領の展開
生活編』明治図書 1999 p.137
(注 8) 嶋野道弘『新しい教育課程と学習活動の実際
生活』東洋館出版社 2000 p.173
(注 9) 天野正輝『総合的な学習のカリキュラム創
造』ミネルヴァ書房 1999
p.87
(注 10) 佐々木昭『生活科教育の研究と実践』教育開
発研究所 1992
p.267
(注 11) 文部省『小学校学習指導要領』大蔵省印刷局
平成 11 年 p.4
(注 12) 嶋野道弘『実践からつくる生活科の新展開』
東洋館出版社 2000 p.185
【参考文献】
(1) 天野正輝『総合的な学習のカリキュラム創
造』ミネルヴァ書房 1999
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