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1 - 白井第二小学校
第2学年C組 研究主題 1 主題名 「心を耕す集団作り 内容項目名 (資料名 2 道徳指導案 ~自己表現できる生徒の育成~」 生きることの喜び ( 内容項目番号 3-(3) ) 「今という瞬間を大事に生きる」) 主題設定の理由 (1)価値について 学習指導要領の内容項目3-(3)は,「人間には弱さや醜さを克服する気高さが あることを信じて,人間として生きることに喜びを見出すように努める。」ことをね らいとしている。 ありのままの人間は,決して完全なものではない。人間は,総体として弱さは持っ ているが,それを乗り超え次に向かっていくところに素晴らしさがある。ときとして 様々な誘惑に負け,易きに流れることもあるが,誰もが持つ良心によって悩み,苦し み,良心の責めと戦いながら,呵責に耐えきれない自分の存在を深く意識するように なる。そして,人間として生きることへの喜びや人間の行為の美しさに気付いたとき, 人間は強く,また,気高い存在になりうるのである。ここで言う人間としての喜びと は,自己満足ではなく,人からほめられたり,認められたりするという喜び,人間と しての誇りや深い人間愛,崇高な人生を目指し,同じ人間として共に生きていくこと への深い喜びである。 中学生の時期は,人間が内に弱さや醜さをもつと同時に,強さや気高さを併せて持 っていることを理解することができるようになってくる。しかし,なかなか自分に自 信がもてないでいるだけに,劣等感にさいなまれたり,人をねたみ,恨み,うらやま しく思ったりすることもある。また,一方では,崇高な人生を送りたいという人間の 持つ気高さを追い求める心もある。したがって,自分を含め,人はだれでも人間らし いよさを持っていることを認めるとともに,決して人間に絶望することなく,誰に対 してもその人間としての良さを見いだしていく態度を育てることが大切である。 そのためには,まず自分だけが弱いのではないということ,人間がもつ強さや気高 さを十分に理解させる必要がある。また,いたずらに,弱さや醜さだけを強調したり, 弱い自分と気高さの対比に終わったりすることなく,自分を奮い立たせることで目指 す生き方,誇りある生き方に近付けるということに目を向けられるようにすることが 大切である。それらを通して,内なる自分に恥じない,誇りある生き方,夢や希望な ど喜びのある生き方を見出してほしいと考え,本主題を設定した。 (2)生徒の実態について 明るく,他人の気持ちを考えて行動することができる生徒が多い。行事等で活動する際 もそれぞれの良さを認め合い,温かい雰囲気で活動することができる。年2回実施してい るQUのいごごちの良いクラスにするためのアンケートでは,「クラスの人から無視され ることがある」の項目では,1が20人,2が8人,3が1人(1がまったくない,5が その通りの5段階評価),「クラスの人から悪ふざけをされることがある」の項目では, 1が28人,3が1人となっている。その結果,1年次,級友の目を気にしてあまり自己 開示ができなかった生徒が,安心して生活している姿が見られる。ただし,いろいろな場 面で不必要に他人と比較し過ぎてしまうところがある。そのため,自分の良さを自覚でき ていない生徒も多く,道徳の授業において自分の意見を進んで発表できる生徒は,数名に 限られている。 (事前アンケートの結果) 質 問 はい いいえ 1 自分の性格等で,好きなところはありますか。 9人 20人 2 自分の性格等で,嫌いなところはありますか。 25人 4人 3 夢はありますか。 19人 10人 4 病気や怪我等で入院したことはありますか。 4人 25人 5 道徳の授業は好きですか。 6 どんなとき幸せだと感じますか。 好き どちらかというと好き どちらかというと嫌い 嫌い 9人 19人 1人 0人 好きなこと(趣味,ゲーム等)をしているとき 16人 友達といるとき 8人 おいしいものを食べているとき 8人 寝ているとき 8人 家族と一緒にいるとき 4人 (部活や勉強等の)記録や成績が上がったとき 3人 休みのとき 2人 できなかったことができるようになったとき(勉強で新しい知識を身につけたときも含む) 2人 その他(1人) 感謝されたとき,みんなが笑顔でいるとき,何かをもらったとき テレビで自分と同じくらいの歳の子が病気等で苦しんでいるのを見たとき 今の自分の状況を考えたとき 以上の結果を見ると,3分の1程度の生徒は夢を持っていないことがわかる。また, 「嫌いなところがある」と回答した生徒に対して,「好きなところがある」と回答した 生徒の割合が圧倒的に低い。中学生は「好きなところがある」と回答することを「自慢」 と勘違いし,恥ずかしがって「はい」と答えない生徒もいる。しかし,自分に自信が持 てていないのと同時に,やはり自分の弱さを許せず,良いところに目を向けられていな い生徒も多いのではないかと考えられる。したがって,この資料を扱うことで,誰もが 弱い心を持ちながら,それを克服していける強さも併せ持っていることを伝えることは, 価値のあることだと考える。しかし,本校は比較的整った家庭環境で育っている生徒が 多いため,素直な半面,不幸な出来事は他人事ととらえてしまい共感を持てないことが 多い。映像や生徒にとっても憧れの存在である木村選手(現全日本女子バレーボールチ ームキャプテン)の言葉等を用いて,生徒の気持ちを本資料に引き込んでいくようにし たい。 (3)資料について 本資料は,マガジンハウスより出版されている「明日もまた生きていこう」という本 に書かれていることをもとにして作成した。この本は,21歳という若さでがんで亡く なったバレーボール選手,横山友美佳さんについて書かれた本である。横山さんは,中 学校時代からバレーボールのオリンピック有望選手に選ばれるなど将来を嘱望されてい た。現日本代表キャプテン木村沙織さんと同じ下北沢成徳高校入学後は,1年次に春の 高校バレーで準優勝。2年次には,全日本シニア登録選手としてワールドグランプリに 出場。彼女の人生は順風満帆のように思われた。しかし,その後3月にがんを発症。バ レーボール選手としてオリンピックに出場するという夢をあきらめる事になる。しかし, 彼女は早稲田大学に入学するという新たな夢を持ち,それを叶えるために,闘病生活を 送りながら受験勉強に励む。その結果,見事その夢を叶える。その後,がん再発のため 6ヶ月で早稲田大学を自主退学。2008年に21歳で永眠することになるが,なくな る直前まで夢を持ち,必死に生き続けた。 病気になったことで気づいたことをきっかけに絶望から抜け出し最後まで夢を追い続 けた横山さんの生き様は,まさに『人間は弱さや醜さをもつと同時に,強さや気高さを 併せ持っている』ことを教えてくれる。したがって,横山さんががん宣告を受けた際の 弱い自分から抜けだし,新しい夢を持つに至った過程に焦点を当て,理由を考えさせる ことが重要となる。ここを深く掘り下げることができれば,生徒自身が誇りある生き方, 夢や希望など喜びのある生き方について改めて考えるきっかけとなるであろう。 (4)指導観 本校は,「心を耕す集団作り~自己表現できる生徒の育成~」を研究テーマとして掲 げ,日々の教育活動に当たっている。お互いに心を耕していくことができる集団作りに は,自分自身を肯定的にとらえることができること及び他を思いやる心が不可欠である。 これが欠けていると妬みや恨みからお互いの足を引っ張り合う集団となってしまうこと がよくある。多くの学校で一番の問題となっているいじめやネットに関するトラブルも, これが原因のひとつと考えられる。その「他を思いやる心」の基盤となるものが,自分 を含め「人は誰でも弱さをもっていること」と同時に,「人は誰でも人間らしいよさを 持っていること」を理解する事である。 本時で扱う資料は,自分たちと同世代の人の実話であるからこそ,「人の持つ弱さ」 に共感できる部分が多い。健康で不自由のない生活を送っている生徒達は,生きている ことをあたりまえに思い,生きていることの有り難さ,喜びを痛感する機会が少ない。 生きることに苦しんでいる彼女が絶望から立ち上がり夢を追い続ける姿に触れること, さらに,そのきっかけとなった,横山さんが「病気になって気づいたこと」について考 えさせることで,生徒自身が人間の命の有限性を理解するとともに,人間として生きる 喜びについて深く考え,自分の生き方・行動を振り返る機会とさせたい。 3 本時の指導 (1)ねらい 人間には弱さや醜さを克服する強さや気高さがあることを信じて,人間として生きるこ とに喜びを見いだす態度を育てる。 (2)展開(○・・・発問、◎・・・中心発問、□・・・学習活動) 過 時 学習活動と主な発問 程 配 ・予想される生徒の反応 導 3分 1 支援の手立てと指導上の留 資料 意点 木村選手と横山選手の写真を掲示。 ・話題の焦点化を図る。 写真 資料1ページを教師が読む。 資料1 入 5分 2 3○(並外れた努力して活躍している) ・この発問は,ワークシー 展 横山さんどう思いますか。 開 トには書かせず,意見を □自分の考えを発表する。 発表させる程度にとどめ ・すごい。やっぱりオリンピックに出 る。 るような人はそれだけ努力している ・日本代表選手になった主 ことがわかった。 人公の並外れた努力に触 ・えらい。自分も真似したい。 れる事で,病気になった ・大変そう。自分にはできない。 ときの彼女の無念さを深 くとらえられるようにつ 12 4 資料2ページを教師が読む。 なげたい。 分 資料2 インターネット 5 実際の横山さんの映像を見る。 の映像 6○がんに冒された横山さんはどんな思 ・癌に冒された横山さんの いをしたと思いますか。また,自分 写真等を見ることで,今 がこうなったらどんな気持ちになり 後の発問へのイメージを ますか? 膨らませるようにさせる。 □ワークシートに記入する。 ・自分はこんなに頑張っているのに何 ・せっかく日本代表に選ば れたのに,がんに侵され で自分が。とても悲しい。 ・バレーボールができなくなって悲し い。 ・絶対に治してオリンピックに出てや る。絶対にあきらめない。 てしまいバレーボールが できなくなってしまった 主人公の無念さ・絶望感 と死への恐怖等,弱さに 共感させる。 ・絶望感。何もやる気にならない。 □自分の考えを発表する。 13 7 資料3ページを教師が読む。 資料3 分 8◎横山さんは,なぜ前向きな気持ちに ・価値追求の発問であるた なることができたのでしょうか? □ワークシートに記入する。 め,じっくり考えさせ, 記入させる。 ・得たものを考える前向きな気持ち。 ・なるべく多くの生徒に発 ・今自分にできることを大事にして どんな人生を送るかを考えることが 表させ,様々な考え方に 触れさせる。 有意義。 ・命の大切さ・健康の有り難さ。 ・周りの人の愛情,新しい人との出会 い,感謝の気持ち。 □自分の考えを発表する。 9分 9 資料4,5ページを教師が読む。 (途中木村選手のコメント等の映像を 見せる。) ・絶望感を克服するきっか 資料4, けとなった考え方に触れ 5 ることで,人間として生 インターネット きることの喜びについて の映像 考え直す機会とさせる。 ・今を大事にする事が大切 である事に共感させたい。 5分 10 ○授業を通して,感じた事,考えた ・自分の今の生活を振り返 ことをまとめよう。 □感想を記入する。 るよう助言し,今後の生 活の変容につなげる。 (感想は,全員分をまとめ,後日配布 する。) 終 3分 11 末 資料6,7ページを紹介する。 ・価値の確認を行う。 資料6, 7 (3)板書計画 ・絶望 とで,自分の夢を実現していくために困難を乗り越えていく態度を育てていきたい。 「 今 と い う 瞬 間を 大 事 に 生 き る 」 真 ・ な ぜ 私 が ? 他 に 悪 い 人は い る が ん に 冒 さ れ た 横 山さ ん 写 ・ バ レ ー ボ ー ル を あき ら め な い ○横 山 さ んは , な ぜ 前 向き な 気持ち に なるこ と が で きたのか? ・ 今 まで も 辛 い こ と を 乗 り 越 え て き た ・ 今 自 分 にで き る こ と を 大 事に して ど ん な 人 生 を送 る か を 考 え るこ と が 有意 義 ・ 命 の 大 切 さ ・ 健 康 の 有 り 難さ に 気づ い た ・ 周 り の 人 の 愛 情 , 新 し い 出 会 い , 感 謝 の 気 持ち バ レ ー ボ ー ル を あき ら め な い・ 大 学 受 験 助け を 求 めて いる 人 に 何か をで き る 人に な り た い 横 山 さ ん が 後輩 に 伝え た 3 つの こ と 一 , 今 と い う 瞬 間 を 大事 に 生 き る こ と 二 , 毎 日 元 気で バ レ ー ボ ー ル を で き る の は 当 た り 前 で は な く , 感 謝 の 気 持 ち を 忘 れ な いこ と 三 ,明日 に バレ ー ボー ル がで きな くなって も,後悔が残ら な い よ う に 毎 日 を 過 ご すこ と 他の教育活動との関連 4 白井市内では自覚・立志・健康というテーマを掲げ,毎年,中学校2年生において立春 式を行っている。本校でも昨年12月に行い,作文や立志の誓いの発表を通して,「どの ような大人になりたいのか」を考えさせた。生徒自身は「今まであまり考えたことがなか ったことを考えることができ,とても良い機会となった」,「他の生徒の意見を聞くこと ができ,とても参考になった」という感想を持っていた。そこで,本時の指導において, 人間は弱さとそれを乗り越えていくことができる気高さを併せ持つことを感じ取らせるこ