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鳥インフルエンザ
仮訳 鳥インフルエンザ 2006 年5月、RSPB(王立鳥類保護協会)、バードライフ・インターナショナル、WWT(水鳥湿 地トラスト)および BTO(英国鳥類保護協会)は、鳥インフルエンザに関する共同声明を改正した。 これには鳥インフルエンザそのものとその蔓延の背景、およびウイルスによるリスクと影響の指摘 が含まれている。 政府およびNGOは共同でこの件に関し討議しており、今後も継続して行う予定である。状況は 日々変化し、この疾病に対する我々の立場も提案された抑制のための手段も、新しいデータが明ら かになるにつれ変化していく。 共同声明: 背景 鳥インフルエンザウイルスには多くの型があり、多くは低病原性で野鳥の間を循環するが、水鳥 に頻繁に発生する。 野鳥個体群に潜むこのようなウイルスの大半は、比較的良性である。最近注目されている H5N1 型を含む高病原性鳥インフルエンザウイルスは、通常は家禽の集団で発症し、致死率が高い(最大 100%)が、野鳥で発症することは非常に少ない。 遺伝的調査によると、最近の H5N1 型は東南アジアの家禽の中で低病原性の型が突然変異するこ とにより進化したと考えられる。鳥インフルエンザの急速な蔓延は、鳥の密集や、その結果として ウイルスを運ぶ糞やその他の分泌物へ直接に接触することから、家禽集団で広まった。 H5N1 型は 1997 年に家禽で初めて発症したが、地理的に広範囲に蔓延したのは 2003 年以降であ る。この疾病は現在、東南アジア数カ所の鳥に特有のものと考えられているが、東南アジア、中央 および南アジア、中東、ヨーロッパ、北東及び西アフリカで記録されている。 家禽が自由に野鳥、特に水鳥と頻繁にごちゃ混ぜになるような東南アジアでの倹約的な方法は、 野鳥へのウイルスの伝染を容易にしている。 2005 年春、中国青海湖の野鳥の死亡は、最も深刻な野生生物への疾病流出例であろう。 それ以降この疾病は、病気になった野鳥や死亡した野鳥から、数多くの他地域、有名なところで はモンゴル、ロシア、黒海地域、最近では、イギリスでの死亡したオオハクチョウの死亡1例を含 めた、ヨーロッパの多くの国で、記録された。 この疾病を持つ健康な野生の水鳥は、僅かに報告されているのみである。 (例、中国、Poyang 湖の6羽のカモ、しかしこの件は、ほとんど書面に記録されていない。 ) 懸念されている理由 鳥インフルエンザ H5N1 型のアジアでの、そしてヨーロッパ、アフリカへの蔓延は、人間の健康、 家禽業界、野鳥の保護への問題を引きおこしている。 家禽へのリスク 鳥インフルエンザ H5N1 型は、主に家禽の疾病である。この疾病は多くの国で、家禽業界および 裏庭にいる集団に深刻な影響を及ぼしている。この疾病は地域経済に悪影響を及ぼし、家禽とその 卵をタンパク源及び収入源として依存している人々に対する食糧難の可能性を引き起こす。 イギリス国内では、主な脅威は家禽業界へのものであり、イギリス政府による対策は、最大限の 警戒、およびウイルスがやってきて、定着した場合の危機管理計画を整えることにより、リスクを 最小限にすることを目指している。 人間へのリスク 何年にもわたり鳥インフルエンザが家禽へと蔓延しているが、人間が感染した家禽と頻繁に接触 しているにもかかわらず、人間への感染例は比較的少ない。 ほぼ例外なく、200 に満たない H5N1 型の人間への感染は、感染した家禽との密接な接触を持っ た人に発生した。保健機関による確認はされていないが、トルコやアゼルバイジャンでの2,3の 例は死亡した野鳥の処理による感染であり、アゼルバイジャンでは、羽のために感染したハクチョ ウの羽を引き抜いた人が感染している。 イギリスでの野鳥からの人の健康へのリスクは非常に少なく、普通の基本の衛生状態を保ち、病 気にかかったあるいは死亡した鳥との接触を避ければ最小限にできる。 現在このウイルスは、鳥には感染しやすく、人には感染しにくい。しかしながら、ウイルスが人 から人へ簡単に感染したり、突然流行病を起こすような新型に突然変異、あるいは再構築されたり することは理論上可能である。もし起こりうるとすれば、それは人や家禽が密集している、たとえ ば、東南アジアやアフリカで発生する可能性が最も高い。 その状況が、H5N1 型でそもそも発生するかどうかを予想するのは難しい。なぜなら、次の流行 病は、H5N1 型とは無関係な鳥あるいは人のインフルエンザによってもたらされる可能性が高い。 もし、ウイルスが突然変異したら、人間の流行病は渡り鳥ではなく、海外旅行によって蔓延するだ ろう。鳥はではなく、人が感染源になるだろう。 野鳥へのリスク ウイルスがインドガンなどの数種の野鳥に対して高い致死率を持っているにもかかわらず、野鳥 個体群へのウイルスの影響は今のところ判明していない。 間接的な影響は出ている。疾病を制御するための誤った試みによる野鳥の殺生や妨害、巣や生息 地の破壊が報告されている。たぶんより大きな脅威となるのは、人が野鳥に対して否定的な認識を 持ち、誤った不安を抱くことであり、このことは保護に対して敵意に満ちた連鎖反応をもたらすか もしれない。 ウイルスの蔓延 H5N1 型ウイルスは、東南アジア、中央および南アジア、中東、および北東や西アフリカでの発 生しながら、地理的に広がっている。 ウイルスが広がる可能性のある、下記複数のルートがある; z 家禽および家禽製品の合法および違法な移動 z 飼育されている野鳥の合法および違法な取引 z 人の靴など無生物による機械的輸送 z 野鳥の近距離あるいは長距離の移動 これらすべてが、おそらくある程度かかわっている。 野鳥の役割 ウイルス移動の唯一のあるいは主要な経路として、メディアの注目はほとんど例外なく渡り鳥に 集中している。伝染病学的、遺伝学的研究から、ほとんどの家禽内での発症は家きんの移動で説明 されると指摘しているため、それは不当な扱いである。 しかしながら、いくつかの過去の事例では野鳥が役割を持っていたかもしれない。たとえば、黒 海周辺での発生は、ちょうど家きんに疾病が発症したシベリアからの渡りの時期と経路とに一致す る。2006 年2月以降に起こった、ヨーロッパを横断する渡り鳥の間での予想外の発生は、既に感染 していた黒海地方の寒さから鳥が逃げてきたことによる。これは感染した鳥は死亡する前に、少な くともある程度の距離を移動できることを示している。 このことは、野鳥が、フランス、ドイツおよびデンマークでの1件ずつの家禽の感染源であるこ とを証明している。フランスでの事例は、ほぼ確実にホシハジロが感染死した場所からの機械的輸 送によるものであり、産業用地のバイオセキュリティーの欠陥も原因であった。 家禽への同時発生は別として、いくつかのヨーロッパ諸国での死んだ野鳥の H5N1 型感染は、 H5N1 型は野鳥によって持ち込まれうることを示している。 野鳥は H5N1 型を、感染せずに持ち運び、それゆえに野鳥は感染拡大に効果的であると推測でき る。しかしながら、限られた科学的証拠の大部分が、飼育されているカモあるいは野鳥ではないも しくは飼育されている鳥による実験室内での感染、あるいは中国での渡り性でないスズメなどに関 するものであるため、未だこのことは証明されていない。 実験室での研究では、数種の鳥がウイルスの接種後も生き残り、臨床的徴候はほとんど示さず、 数日間ウイルスをまきちらすということを暗示している。しかしながら、野生の状況はまったく異 なり、ウイルスに感染した野鳥の数や、感染後の野鳥の生存期間、感染後の飛来距離、また伝染性 の保有機関等はほとんど知られていない。このような基本的な疑問に答えられるような、早急な調 査が必要とされている。 もし、野鳥がウイルスを蔓延させるとしても、ヨーロッパ中の生きている野鳥の広範囲の調査で もウイルスが発見されなかったことから、感染した野鳥の有病率(例:常にウイルスを運んでいる 個体数の全個体数に対する比率)は非常に低いように思われる。 家禽と家禽製品、無生物品、と野鳥の取引の役割 鶏は世界中広範囲に取引され、地球上で最も持ち運ばれる鳥である。家禽や家禽製品、取引のた めの飼育の野鳥の移動は、感染を拡大させる要因として知られており、無制限の家禽の移動(合法 および違法)が疾病の蔓延に大きな役割を果たしていることを疑う人はほとんどいない。その上、 多くの流行は野鳥の移動と一致していない。 鶏あるいはカモの糞が肥料としてあるいは魚の餌として使用されている、家禽と養魚場が統合さ れたシステムは、東南アジア中に広がっており、東ヨーロッパでも現れている。家禽の糞は、広く ヨーロッパで農業用の肥料として使用されている。このようなシステムは、疾病を伝染させる可能 性のあるメカニズムであるといえる。 米国の家禽業界での毒性の少ない H5N2 型鳥インフルエンザの経験から、生きているあるいは死 亡している鶏、汚染された機器や自動車、感染した卵、飼料、水、昆虫や人間の媒介の移動によっ てウイルスが伝染したことが明らかになった。実際、感染したものからの排出物と接触したものは 何でも潜在的な感染源となる。 発症を抑えたいのであれば、この感染経路に関しさらに注意を向ける必要がある。 疾病の抑制 感染源とは関係なく発症を抑えるには、野鳥及び家禽の調査の継続、バイオセキュリティーの向 上、適切な広報活動、効果的な国境管理、周囲の家禽の効率的な処分による発生の抑制の迅速な実 行が、最良の方法である。 FAO(国連食糧農業機構)、WHO(世界保健機構)およびイギリス政府を含む主要な組織すべて が、野鳥の処分は実行不可能であり、感染している可能性のある個体群を拡散させ、健康な鳥にス トレスを与え、より感染しやすくすることで、事態を悪化させるかもしれないと公表している。 抑制のために我々がしていること BTO(英国鳥類保護協会)、RSPB(王立鳥類保護協会)、WWT(水鳥湿地トラスト) 、および BASC (英国狩猟保護協会)は、野鳥の移動で引き起こされる潜在的リスクを評価し、調査を開催し、バ ードウォッチャーや狩猟者のための手引きを広めるために、政府の組織と共同している。 私たち及びバードライフ・インターナショナルは、一般人向けにウェブサイト(また RSPB(王 立鳥類保護協会)、WWT(水鳥湿地トラスト)のサイト)を通じて、情報を提供しており、野鳥の 調査が適切に行われ、かつ野鳥保全の義務を無視しないよう、EU レベルで働きかける。バードラ イフは世界中のパートナーに対して、科学的、政治的および調整についての支援をしている。 結論 鳥インフルエンザ H5N1 型は野鳥の死をもたらし、今年上半期ヨーロッパで最も目立つ事柄であ ったが、鳥インフルエンザは以前として主に家禽の疾病と考えられる。 疾病が広がった主な経路は以前として家禽の移動とその製品と考えられる。しかし野鳥も現在、 特に西ヨーロッパでは、感染拡大に関与している。 先進国における公衆衛生上のリスクはきわめて少ない。世界で僅かに発生している人間への感染 例は、すべて感染した飼育鳥(食肉処理されたあるいは感染した生きている鳥)への直接の接触に よるものである。疾病を抑制するための国民意識の向上および政府の能力の改善が、発展途上国に おいて人の健康リスクを減らす鍵となるだろう。 鳥インフルエンザ H5N1 型は、経済、公衆衛生及び保護に対する問題を引きおこしている。した がって、すべてのものにとっての利益のために疾病を抑制するには、政府組織、NGO、一般の人か らなる多くの専門分野にわたるチームの協力が必要である。