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橡 - 京都大学 大学院経済学研究科・経済学部
鯉i済 論 叢 第 パ十 三春 労 働 問 題 第 四號 と 社 会 政 策 ・・・・・・・・・・… … ・・… … 岸 ヒ ノγ フ ァ デ ィ ン グ 創 業 利 得 説 の 批 判 序 説 本 林 業 労 働 書 の 分 析 の 存 在 形 態 に つ い て … … … … 小 ㊨ 太 郎/ ω … … … … ・・・・・・… 岡 科 学 的 管 理 法 英 部 野 利 寺 良24 孝 … … … … … … 林 業 労 働 研 一so 究 班59 評 Sheldon,CharlesDりTheRiseo∫[heMerchantClass inTokugawa/apan1600一 一1868,N.Y.,1958 ・・… … … … … ・・・・… … 堀 江 昭和三十 四年 四月 篁 箔β大 學 繧 濟 學 魯 保 蔵75 ︽書 評︾ QDゴ①崔 oP Oげ帥二Φω P 甲 § ま ミ ー、。 。題 層Z・団こ ぎ. 霜焼 鴇 o、 ミ 鳴 § 曳き 貸ミ Q 合鴨 § ご ぎ ミ ミ蟄 ミ Hゆ㎝Qo. 堀 江 保 蔵 著 者 シ ェルダ ソ君が フルブ ライ ト奨 学生 とし て来 日 し、 十 カ 月 の予 定 で京 都 大 学大 学院 に籍 を 置 いた のは、 一九 五 三年 の初 秋 であ った 。研究 のテ ー マは ﹁江 戸時 代 におけ る町人 階級 の抬 頭 に ついて﹂ であ り 、そ の目 的 は、商 業 の発達 ならび に商 人 の 拾 頭 に関す る 一つの型 を得 よ う とす る にあ った 。け だ し、同 君 に よれば 、鎖 国下 の日本 は いわば 試験 管 の中 の状 態 と見 なす こ と ができ る から であ る 。もう 一つの目的 は、 この研究 の成 果 を 学位 論文 とし て提 出 し た い という こ とであ った。・ す でに カリ フ ォ ル ニア大 学 にお い て、ブ ラ ウ ン教授 の指導 の 下 に、 相当 深く 日本 史 を研究 して おり 、ま た 日本語 を 読む こと ㌔ 評 も 話す ことも堪 能 な同 君を 迎 え て、私 は同 君 に対 し て でき る だ .昌. 圭 け の ことを し た いと思 った。 しか し、 間も なく 私 は、経 済 学部 長 に選 ばれ て、 ほと ん ど研 究室 を空 け る こ とにな ったた め、同 君 の研 究 に ついて、 全く何 も な しえ なか った ことは、今 も って 遺憾 に堪 え な いと ころ であ る。 そ の償 い の意味 で 、本書 の内容 を紹 介 す る前 に、 同 君 のこと を 二、 三書 か せても ら うと 、まず 第 一は、 そ の歴史 家 とし て の 研 究 態度 であ る。英 語 で書 かれ た日 本歴 史書 に広く 眼 を通 し て いる ことは 、 い5ま でもな いとし て、 日本 語 の文献 に ついても 、 著書 ・論文 はも ち ろん 、 ﹁日本 経済 大典 ﹂ のよう な資 料も 、必 要 な限 り、 これ を お ろそ か にしな か った こと であ る、 ﹁必要 な 限 り﹂ と いう意 味 は 、駆け 出 し の日本 人学 者 のそれ とは少 し異. な る 。す なわ ち例 えば 、農 民 の階 層 分化 なら ば階 層分 化 だけ に 限 って、 それ 以外 には目 も ふれ な いと いう の と違 って、 町人 階 目を つけ ると いう 有 様 で、 いわば 文 化史 的方 法 に徹す ると いう 級 の拾頭 と いう 以上 、そ の周辺 、例 えば 文化 ・教 育 の点 にま で ことがあ った。 同 君が京 大 在籍 中 に、博 士候 補 者 た るた めに残 同 君 の研 究 態度 、 tれが 、 私が 挙げ た い第 二点 であ る。 こんな され た 一つの筆 記試 験 が行 われ た 。私 がそ の管 理者 とな った わ ﹁ヨー ロッパ史 に関 す る十 二の著書 を挙 げ て、簡 単 にそ の内容 げ であ るが 、送 ら れ てき た問題 を み ると、 そ の 一題 は、 たし か 第四号 七五 を 記 せ﹂ と いう の であ った 。 ﹁これあ る かな ﹂ と、 私は感 心 も 二九 二 したり 、教 え られ た りも し たも のであ る。 第 八十 三巻 第 八十 三巻 二九 四 第四号 七六 経済 力 を持 たせ る結果 に な った こと を説く 。 そ の経 済 力を安 固 第 三 の点 は、同 君 が、渉 猟 し た著 書 ・論 文 ・資料 に つい て、 と であ る 。 これ は、そ のま ま、 物を 書 く場合 、 話を す る場 合 の に維持 す る ため に、彼 ら の問 に仕組 まれ た商 取引 に関 す る諸 習 認め られず 、政 治 的勢 力 を持 ちえ な か った ことが 、逆 に彼 ら に 材 料 に供 せら. れ る仕 組 み であ った 、 これ は アメ リカ学 者 のふ つ であ って 、第 四章 で は、 ﹁商業 お よ び利貸 資本 の蓄 積 ﹂ に つい て、要 領 よく述 べら れ て おり 、第 五章 、 コ兀禄 時代 の圭﹁ 福 な社 慣 や仲 間 そ の他 諸 組織 を述 べた のが 、第 三草 、﹁安 全を求 めて﹂ 会 ﹂ にお い ては、 以上 のよ う にし て自 己安 全性 を確 立 し た商 人 う のや り方 な のだ ろう が、 私 が この ような やり 方 に直 か に接 し 以上 のよ 5 にし てま とめ られ た論 文 は、 五 四年 の夏 に タイプ 第 六章 、 ﹁幕 政 の行詰 り ﹂ は、享 保 から 天保 に 至 る間 の、封 の力 、暮 し方 、物 の考 え方 が 、当時 の文 化 ・社 会 に及ぼ し た影 建 的 支 配力 と町 人金 力 と の隆 替 を、 いわ ゆ る 三大改 革 なら び に 原稿 とし て完成 し た。 私は 、当 然 の義 務 とし て、直 ち に 一通 り め なか った 。そ し て聞 もな く カリ フ ォル ニア大 学 へ学 位 請求 論 そ の間 に はさま れ た田沼 時 代、 化政 時代 の それ ぞれ に斎 日 し て 響 を説 い. て いる 。 文 とし て提 出さ れ た。そ れが 無 事通過 した こと を告げ 知 ら され 検 討 し たも のであ って、封 建的 支配 力 が商 人 の金力 によ って徐 目 を通 した 。江 戸時 代 の特 殊 な用 語 の意 味 に つ いて、 二、 三 カ た私 は、 江 戸時代 の日本 を外 国人 にも っと よく 理解 し てもら い 徐 に打 崩 さ れ てゆく 過程 を 、動 く姿 にお いて興 味深 く描 いて い 観 を 見 る ことに よ って、商 人 の金 力 が封建 制 度 を動揺 さ せ つ つ あ. つた こと を い っそ う明 ら かに しょ う とし たも のであ る 。そ の 日田商 人 、加 賀 の銭屋 な ど に ついて 説明 し て いるのが 、第 八章 地 方商 人 が拾 頭 し てき た こ とを 、富 山売薬 行 商人 、近 江商 人 、 であ るが 、他方 、 そ. の間 に 、彼 等 の組 織 に対抗 す るも のとし て 金 力 と は、.要 す るに都 市 (主 として 大阪 ・江 戸 ) の商 人 の金力 ・社会 的 ・経済 的 諸事 情を 述 べる 。第 二草 、 ﹁江 戸時 代初期 の 背 景 と展開 ﹂。 こ こでば 、 商人 の抬 頭 を可 能な ら し めた政 治的 本書 は九 章 から成 る。第 一章 、 ﹁ 寛 永 の鎖国 令 に至 る歴 史的 = る。 第 七章 は、当 時 の学 者 (町 人学 者 を含 む) の商業 観 ・商 人 た いと いう 念願 から 、 この論 文が 、他 日、活字 にな る ことを希 快 に堪 え な いと ころ であ る。 学 会 の モ ノグラ フの 一冊 と し て、 本書 が 出版 され た こ とは、欣 望 して いた次 第 であ るが 、 いま その希 望 が実現 し、 ア ジ ア研究 所訂 正 を求 め たが、 論文 の内 容 に つ いては 、書 直し の 必要 を認 た のは 、 これが は じ めて であ った。 商 人階 級 の社会 的 ・政 治 的地 位﹂。 ここ では、 商 人 が社会 的 に 評 必 要な 個所 身 、英 訳 したが ら " 一つ 一つカ ード に書 き 抜 いた こ 7]元日 ﹁都 .市 商 人 への新 し い挑 戦 ﹂ であ る。 第九 章 は ﹁ 結 論﹂ で、 こ こで は、商 人階 級 の拾 頭が 日本 の文 化 ・社 会 ・経済 に対 し て持 つと ころ の意 義 が要 領 よく 述 べられ ている 。 (三) 土地経 済 と貨 幣 経済 と の矛盾 と いう 言葉 が よく使 わ れ とを挙 げ ねば な らな い。 るが、 武 士と商 人 とが 互 いに他 を 必要 ど した と いう意味 で、 こ の言葉 をそ の まま受 取 る こと は でき な い 。む しろ 、 ﹁不安 な共 存﹂( 目 ω霧嘱 oo ・ ω首ω 3蓉 ⑭)、す なわ ち共存 す る二 者 の力 の ア ン バ ラ ンスと埋解 す べぎ であ る 。 (四) 町人階 級 の拾 頭 が広 く 文 化 ・社 会 に 及ぼ し た影響 を軽 取扱 わ れ たた め、彼 ら は逆 に、武 士 により かか り つつ、 ま た武 に 対し て危 険物 となら 臓 よう、 な いし有 用 な道 具 であ るよう に エネ ルギ ー の捌 け 口を 国内 商業 に限 ら れる ととも に、封 建制 度 政 治的 ・経済 的 な力 を獲 得 し たの であ るが 、鎖 国 によ っ てそ の な か った朱 子学 の中 へ、自 然科 学 の精神 を織込 んだ こと は、 支 に つい ては、自 然 の理 を説 いて 、自 然 の克 服 また は利 用 を説 か 容 れ る態 度 が整 え られ た こと を注意 す べき であ る 。 こと に後者 の地 盤 と な った こと、都 市 の発達 に お いて西洋 の自然 科学 を 受 視 し ては ならな い。 とく に学問 の面 にお い て、都 市が 国学 発達 士 の気付 かな いうち に 、商 業 および 金 融の 制度 を自 ら の手 で作 入れ態 勢 があ る程 度整 え られ た のは 、新 し い ヒ ュー マ ニズ ムお 那 と比 べて日本 の重要 な特 色 であ るが 、 その 西洋自 然 科学 の受 き を異 にす るが 、武 士 の側 から み ても 、商 人 の重要 性 は高 ま る 引 であ り 、 この点 で ヨ 一 日Ψパ中世 の商人 階級 抬頭 の事 情 と趣 (二) 経済 力 を貯 え る こ とが でき た主な 道 は武 士階級 と の取 およ び家 父長 的恩 恵 と いう封建 的関 係 に置ぎ かえ るに、売 買 の 5 結果 が 生じ た 。身分 の混淆 は 、理論 的 に いえば 、 忠誠 と奉 仕 らに 、明 治維新 瑛 、重 要 た産 業 豪が武 士 の間 から 輩 出す る と い ら、 ひ いて いろ いろ の意 味 での身 分 の混 淆が 生じ 、 そ こから さ (五) 江戸時 代 後期 にな って 、商人 と 武士 の相 互 依存 関係 か よび リ アリズ ムを含む都 市文 化 の.発達 の賜物 であ った。 一方 であ った。 し かも武 士 階級 が商 人 に対 し て依然 たる態度 を 第四号 七七 関 係 を以 てす る と い5 こと であ って、そ れが 享保 以降 徐 々に進 二九 五 武 士の官 僚 的無 気力 、儒 教 の社会 構 造 論 と併 せ て、 彼 らが商 人 第 八十 三巻 行 し た ことは 、明 治 の改革 著 た ちに 、封 建的 政治 制 度を 廃棄 し 書 評 社会 へ飛込 むに は、 そ の仕 組み があ ま り に複雑 に な って い たこ とり、 経済 制度 をも と のま ま で維持 しょう とした の に つい ては、 てそ の経 済 力を 貯え て い った 。 り 上げ 、自 己 の経験 か ら、 商慣 習や 商 業道 徳を 築き あげ 、も っ (一) 商 人 は、室 町時 代 末 に、 はじ め て階級 とし て成 熟 し、 いて、 もう 一度書 ぎ 直 す と、 つぎ のよう に な る。 以上 のよ5 に分説 さ れ た本書 の内 容 を、 そ の特 徴 的な 点 に つ 三 許 第 八十 三巻 二九 六 第 四号 七八 に、わ れ われ自 身 でさ ら に検討 を進 める べき であ ろう 。 巻末 に人 名 一覧 表 、註 釈附 き用 語 一覧 表、 参考 文献 (和文 ・欧 な お本 書 には 、て いね いな脚 註 が施 され ているば かり でなく 、 実 業家 も多 く武 士 の間 から 輩出 し た 。し たが って、 商 人 の力 は って いる こ とを附 記 し、 最後 に、 いま国務 省 に勤務 す る著 者 の 文 ) 一覧 表、 お よび索引 を載 せ、 研究 書 とし て の体 裁 が よく整 . 健 康 を祈 り た い。 (一、 〇 六頁 ). 或 いは軽 視され るかも 知れ な いが、 変 革運 動 に積極 的 だ った地 いし 、 こ とに、 先 に掲げ た諸点 は、 本書 に述 べられ ている 以上 商 人 お よび都 市 の持 つ意 義 は、依 然高 く評 価 し なげ れば な らな 町人 にも 武 士に も同様 に大き な役 割 を認 め る立場 か らす れば 、 は、或 いは 、か 克り み るに値 し な いかも知 れな い。 けれ ども 、 が 学界 の風潮 か らすれ ば 、本書 にお ける よう な問 題 の取 上げ方 史 的発 展 の主 た る担 い手 を農村 およ び農 民 に求 めよ5 とす るわ 握 し よう とし た本 の であ る。封 建社 会 から 資本 主義 社会 への歴 の影響 を考 察 し 、も って、商人 階 級拾 頭 の全歴 史的 な意 義 を把 た、経済 ば か り でなく 、文 化各 方 面 に及ぼ し た商人 および 商業 極 面 と併 せ て消 極 面 に つい ても 釣 合 いの とれ た評価 を行 い、ま 時 代 の流 れ に添 う て生 き生 き と描く ととも に、 商人 の活 動 の積 以上 のよ5 に、本 書 は、 江戸時 代 に おけ る商 人拾 頭 の姿を 、 四 人 の中 に活気 を 取戻 し たの を看取 す る こと ができ る 。 は 、中 ご ろ たる んだ と は いえ 、決 し て死滅 せず 、後 期 の地 方商 す なわち 、江 戸時 代初 期 の商 人が持 ってい た才 能 と進 取 の気性 方 商人 の ことを考 え る と、 そ こ にば軽 視さ れ えな いも のが あ る。 ︹六) 明 治維 新 の変革 は 武 士によ って行 われ たし 、維 新後 の 資 本主 義 を奨励 せ し める上 に、 測 る べから ざ る価 値 を も った。 誼 目