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薬剤に関するリスクマネジメント
6‐8: 薬剤に関するリスクマネジメント 6‐8‐1 ●医薬品使用における注意 医療安全対策 1)医薬品の使用方法 No.735 文書 医薬品の使用方法についての説明 医薬品にはいろいろな種類があります。それぞれに適した使用方法があります。こ こでは、医薬品の使用方法についてわかりやすく説明いたします。 語句 別の言い方 薬剤師が患者名・調剤日・用法・用量を記載し、調剤し た薬剤を入れて交付する袋. 薬袋 (ヤクタイ) 内用 説明 内服・経口・オー ラル 口から飲む薬. 錠剤・散剤・シロップなど 主に身体の外部に用いる薬. 軟膏・湿布・坐薬・うがい薬・テープ剤・点眼薬など 外用 一般薬 市販薬・売薬・ OTC 「医療用医薬品」ではなく、薬局・薬店・薬種商・ドラッ グストアー・配置販売(置き薬)などで入手できる医薬 品. OTC:Over the counter(英) 頓服 頓用・必要時 症状の強いときなど、必要に応じてのみ服用すること. 散薬 散剤 粉末・細粒・顆粒の薬. 坐薬 坐剤・ズポ・サ ポ 肛門に挿入して用いる外用剤. 点眼薬 目薬 眼に滴下して用いる外用剤. 点耳薬 耳の穴の中に滴下して用いる外用剤. 点鼻薬 鼻の穴の中に噴霧又は散布して用いる外用剤. 吸入薬 インヘラー 口から吸い込んで咽喉や気管に用いる外用剤. 眼に使用する専用の軟膏 眼軟膏 舌下 舌下錠 舌の裏側に錠剤を入れたりスプレーを噴霧して用いる 外用剤 抗生剤 抗生物質・抗 菌剤 カビや細菌によって作られ、他の微生物を抑制したり 制癌作用をもつ物質を製剤化したもの.実際にはほと んどの抗生剤は化学合成で製造される. < 6-8: p.1 > 語句 別の言い方 説明 調剤 薬剤師が処方箋に基づいて患者個々の薬剤を調製する こと 製剤 製薬会社や薬局において、医薬品を治療目的に応じて 調合・成型すること.およびその製品のこと. 特殊製剤 院内製剤 製薬会社が発売していない医薬品を医師の求めに応じ て病院や薬局で薬剤師が原料から製剤すること. 食後 n.d.e. 食後30分までを目安に服用する.nach dem Essen(独) 食前 v.d.e. 食事の30∼60分前に服用する.vor dem Essen(独) 食間 食後2時間 食事と食事の間に服用する.食事中の意味ではない. 寝る前 v.d.s. 就寝前に服用する.vor dem Schlafengehen(独) 語句 別の言い方 説明 ヒート シート・ブリス ター・PTP 錠剤やカプセルを包装する方法の一つ PTP:press through package(英) 分包 一包化・ワンドー ズ 錠剤や散剤を1回服用分ずつに分けて包装されたもの 疼痛時 痛いとき がまんできない痛みを感じるとき 発作時 けいれん、痛み、息苦しさなどの症状が急激に現れたと き 警告 特に注意を喚起する必要があること 禁忌 投与してはいけないこと 慎重投与 危険を伴うため、慎重に投与すべきこと 相互作用 薬と薬、薬と食物などが双方または一方に影響を与え ること < 6-8: p.2 > 医療安全対策 2)食品と薬剤の相互作用 No. 58 文書 食品と薬剤の相互作用に注意してください 下記の食品と薬剤の相互作用に注意してください。 グレープフルーツとカルシウム拮抗剤 ●当院で投与されているCa拮抗剤 アダラート10、アダラートL10, ヘルベッサー30, ヘルベッサーR100, ワソラン, ノルバスク2.5, ベプリコール100, ニバジール4, アダラートCR20, ペルジピンLA40 ●なぜ注意が必要なのか グレープフルーツジュースに含まれる苦味成分フラボノイドが肝臓ミクロ ゾームP-450の活性を抑制して代謝を阻害し、Ca拮抗剤の血中濃度を上昇さ せる。 ●対策 平成15年1月11日から「当院の患者給食ではグレープフルーツを使用しな い」ことになっています。 納豆とワーファリン ●なぜ注意が必要なのか 納豆菌が腸内でビタミンKを合成し、ワーファリンの抗凝固作用に拮抗す ることがある。 ●対策 ワーファリンを服用している場合、病棟での食事オーダーをするときに 「納豆禁」の指示を入れる。 ⇒栄養係では、「納豆禁」の指示がある場合は、「納豆」を他の食品(豆 腐等)で代用する。 < 6-8: p.3 > 3)配合変化 配合変化により白濁したら投与中止 医療安全対策 No.260 文書 白濁 配合変化により白濁し た薬剤は投与を中止し 廃棄してください ●複数の薬剤を混合すると、pHの変動、薬剤成分・添加剤同士の 反応などにより、混濁や分解が生じることがあります。これを配 合変化といいます。 ●配合変化を起こした薬剤を投与すれば、成分の変化によって本 来の薬効が期待できないばかりか、化学反応により発生した物質 により副作用が生じる可能性があります。 ●配合変化を起こした薬剤は原則として投与できません。 当院にある配合変化を起こしやすい薬剤 ラシックス、アレビアチン、レミナロン、フサン、 カルチコール、ネオフィリン、エレメンミック、 抗癌剤、ソルダクトン、ホリゾン、レペタン、ビソルボン、 ケイツーN、コントミン、抗生物質など 参考文献:JJNスペシャル、注射点滴エラー防止、p.45-47, 2001 < 6-8: p.4 > 4)単位でよばれる薬剤 医療安全対策 No.167 単位でよばれる薬剤 文書 薬剤の中には、投与量がmgやmlではなく、単位で使用される薬剤もあり ます。○○単位という指示のとき誤投与される可能性がありますので、注 意してください。 間違えな いこと ○○単位 ○○単位 その他に○○倍、○KEでよばれる薬もあります。 < 6-8: p.5 > 6‐8‐2 ●似ている薬剤 医療安全対策 1)見た目似ている薬 No.353 文書 見た目似ている薬(look-alike drugs)に 要注意:ラキソベロンと点眼液 滴剤型緩下剤の ラキソベロンを 点眼してしまっ た事例がありま す 投与前に 「眼で確認」、 「声を出し て確認」の こと 「目に(は)入れないこと」と注意書きがあるということは、目に入れた 事例があるということです。目に入れる可能性が高いということです。 目には 入れない こと ○○点眼 液 5mL ラキソベ ロン液 10mL 目に 入 れないこ と 目には 入れない こと リンデロンVGローショ ン 10mL タリ ビッド 耳科用 液 5mL 目には 入れない こと アズノー ルうがい 液 5mL ラキソベロン液 10mL リンデロン-VG ローション10mL タリビッド耳 科用液 5mL アズノールう がい液 5mL 滴剤型緩下剤、 大腸検査前処置 用下剤です。 皮膚(頭皮も含 む)に塗るもの です。「目に入 れないこと」と 記載されていま す。 点耳用です。 「目には入れ ないこと」と 記載されてい ます。 うがい薬です。 「目には入れ ないこと」と 記載されてい ます。 「目には入れな いこと」と記載 されています。 ローション剤としては他に次のものが採用されています。 耳科用としては他に ・ リドメックスローション ・ ワックスネート ・ フルメタローション ・ ホスミシンS耳科用 ・ アンテベートローション などがあります。 それぞれ「目にいれないこと」等の表示があります。 < 6-8: p.6 > 2)タキソールとタキソテール 注射抗癌剤処方(入院)の名称が H17年3月23日に変更されました。 タキソール は「パクリタキセル」 タキソテールは「ドセタキセル」 医療安全対策 No.465 文書 (No.444を改訂) タキソールとタキソテールは、名称が 類似しているためにミス・エラーを起 こしやすい代表的な薬です。 ●3月23日から「タキソール」、「タキソテール」と いうオーダーはコンピュータが受け付けていません。 ●下のように入力してください。 ●「★癌★」が「★化★」に変更されました。 タキソール注 ⇒ ★化★パクリタキセル注 (PC入力時にパクリタキセルと入力) タキソテール注 ⇒ ★化★ドセタキセル注 (PC入力時にドセタキセルと入力) その他の抗癌剤も頭に「★化★」がつきます。 < 6-8: p.7 > 6‐8‐3 ●使用上、特に注意を要する薬剤 1)排尿障害・緑内障を悪化させる薬剤 排尿障害・緑内障を悪化させる薬剤 (抗コリン剤) 医療安全対策 No.165 処方注意 文書 抗コリン作用を持つ薬剤は 膀胱の収縮を抑制させ、尿閉、 排尿障害を悪化させるので前 立腺肥大には禁忌である。ま た眼圧を上昇させるおそれが あるため、緑内障にも禁忌で ある。 ①副交感神経遮断剤 ブスコパン錠・注 コリオパンCap ロートエキス散 硫酸アトロピン注 メサフィリン末 ②抗うつ剤 トフラニール錠 ④不整脈治療剤 トレドミン錠 リスモダンCap・R錠・P注 トリプタノール錠 ピメノールCap ③抗ヒスタミン剤 シベノール錠・注 ポララミン錠・複効錠・注 ⑤気管支拡張剤 セレスタミン錠 テルシガンエロゾル タベジール錠 ⑥パーキンソン病治療剤 ゼスラン錠・DS・シロップ アーテン錠 ペリアクチン錠・散・シロップ アキネトン錠・細粒・注 ピレチア錠・細粒・ヒベルナ注 ⑦頻尿治療剤 PL顆粒・幼児用PL顆粒 ポラキス錠 ダンリッチCap バップフォー錠 < 6-8: p.8 > 2)リウマトレックス リウマチの患者は要注意:「リウマトレッ クス®」を内服していませんか。この薬は抗癌剤としても使われ る劇薬です。過量投与で死亡します。 ●下記の処方はⒶまたはⒷどちらの意味だ と思いますか 医療安全対策 No.486 文書 リウマトレックス 2C 分2 4日分 誤り ×(4週間で服用するものを4日間で服用。 A 過量になり、骨髄抑制、免疫抑制、死亡。) 1日 朝 夜 1日 朝 第2週 夜 1日 朝 第4週 夜 1日 朝 第3週 朝 夜 3日 朝 夜 4日 朝 夜 5日 朝 夜 6日 朝 夜 7日 朝 夜 正しい ◎ B 第1週 2日 夜 1日 朝 夜 2日 朝 夜 2日 朝 夜 2日 朝 夜 2日 朝 夜 3日 朝 夜 3日 朝 夜 3日 朝 夜 3日 朝 夜 4日 朝 夜 4日 朝 夜 4日 朝 夜 4日 朝 夜 < 6-8: p.9 > 5日 朝 夜 5日 朝 夜 5日 朝 夜 5日 朝 夜 6日 朝 夜 7日 朝 6日 朝 夜 7日 朝 6日 朝 夜 夜 夜 7日 朝 6日 朝 夜 夜 7日 朝 次ページに続く 夜 ● 慢性関節リウマチ(RA)は、自己免疫疾患であり、関節や筋肉に強い 炎症が起こります。 ● 「リウマトレックス®」は抗リウマチ薬であり、免疫系の亢進状態を 抑制し、炎症を鎮める作用があります。この薬の一般名は「メトトレキ サート」です。これは抗癌剤としても使われています。 ● 「リウマトレックス®」は、1週間のうち投与期間と休薬期間があるの です。しかも投与期間中の投与は「12時間間隔で」と添付文書に記載があ ります。また、この薬剤は連日内服するものではありません。連日で過量 投与されると、骨髄抑制、免疫抑制が生じ、患者は死亡します。 ● 処方するときは注意が必要です。例えば「1週間分の投与」 は「1日分」と入力してください。「4週間分の投与」は「4日 分」と入力してください。 ● 当院の整形外科ではコメント入力で工夫をしています。薬剤部ではコ メント入力時に「曜日指定」することをお願いしています。今後、処方時 に必ず曜日指定しなければいけないようにシステムを変更する予定です。 ● いずれにしても、 「リウマトレックス®」を服用している 患者は要注意です。添付文書には、「本剤について十分な知識 とリウマチ治療の経験をもつ医師が使用すること」とあります。 非専門医が処方する場合は、必ず専門医および薬剤部に相談し、 その指導のもとで処方してください。 ● 下に適切な投与方法を図示します。 ★ 1週間に2 capの場合:処方は⇒ 月曜朝1C夕1C 1日 朝 8:00 昼 2日 夜 20:00 朝 8:00 昼 3日 夜 20:00 4日 5日 6日 7日 休薬 ★ 1週間に3 capの場合:処方は⇒ 月曜朝1C夕1C 1日 朝 8:00 昼 2日 夜 20:00 朝 8:00 昼 3日 夜 20:00 4日 5日 6日 7日 休薬 ★ 1週間に4 capの場合:処方は⇒ 月曜朝2C夕1C 1日 朝 8:00 昼 2日 夜 20:00 朝 8:00 昼 火曜朝1C 3日 夜 20:00 < 6-8: p.10 > 火曜朝1C 4日 5日 6日 7日 休薬 医療安全対策 H17年7月7日から「リウマト レックス®」の入力方法が「曜 日指定」になります No.502 文書 ● 「リウマトレックス®」は、1週間のうち 投与期間と休薬期間が必要です。 ● H17年7月7日から、処方入力時に必 ず曜日指定しなければいけないシステム に変更されます。7/7業務開始前に必ず オーダリングシステムを立ち上げなおして ください 月 火 水 木 金 土 日 ● 不明時は、薬剤部または整形外科医 にご連絡ください。 ★ 1週間に2 capの場合 1日 朝 8:00 昼 2日 夜 20:00 朝 8:00 昼 3日 夜 20:00 4日 5日 6日 7日 休薬 ★ 1週間に3 capの場合 1日 朝 8:00 昼 2日 夜 20:00 朝 8:00 昼 3日 夜 20:00 4日 5日 6日 7日 休薬 ★ 1週間に4 capの場合 1日 朝 8:00 昼 2日 夜 20:00 朝 8:00 昼 3日 夜 20:00 < 6-8: p.11 > 4日 5日 6日 7日 休薬 3)アダラート(カプセル)の舌下投与は禁止 アダラート(カプセル)の 舌下投与は禁止 されています(H14.10月から用法削除) 医療安全対策 No.188 文書 × アダラート(カプセル) 内容液 血中濃度 アダラート cap10mg アダラート(カプセ ル)の舌下投与により 過度の血圧低下、反射 性頻脈をきたす例が あったため、アダラー ト(カプセル)の舌下 投与は平成14年10月に 禁止されました(添付 文書で明記)。本薬剤 はカプセルのまま内服 投与してください。 0 1 2 3 6 12 24 血中濃度 アダラート L錠10mg 0 1 2 3 6 12 24 血中濃度 アダラート CR錠20mg 0 1 2 3 < 6-8: p.12 > 6 12 24 6‐8‐4 ●医薬品の副作用 医療安全対策 No.378 1)キシロカインショック 文書 キシロカインショック ●歯科でキシロカインを麻酔薬として局所注射した後に患者が、気分不快、血圧低下、呼吸困難に陥ることが ある。このような異常は、キシロカイン(ポンプ)スプレーを喉頭・気管切開部に噴霧したときでも、キシロ カインゼリーを注入または塗布したとき(鼻腔内に注入、気管挿管チューブ、膀胱カテーテルに塗布、内視鏡 検査で器具に塗布)でも発生することがある。 ●これらは一般的にキシロカインショックといわれている。原因としては、 Ⓐアレルギー性ショック(キシロ カインおよび添加物に対するアナフィラキシー、アナフィラキシー様反応)、 Ⓑ中毒性ショック、 Ⓒ疼痛性 ショック(迷走神経反射、心因反応)の3つに分類できる。 ●これらの頻度は正確には不明。しかし、歯科麻酔のときにはⒸが最も多いといわれている。歯科だけでなく 一般的にはⒸを除くと、異常をきたした原因としてはⒷ局麻剤中毒が多く、Ⓐ過敏症によるショックはきわめ てまれ。 これらⒶⒷⒸにⒹ添加されているエピネフリンによる症状もあり、これらⒶⒷⒸⒹの見分け方を表 に示す。 ●ショックに対する治療としては、気道確保、酸素投与、十分な輸液です。昇圧薬はエピネフリンが第一選択。 アミノフィリン、ステロイド、抗ヒスタミン剤が使用されることもある。 ●各部署は、次の点検、検討を行ってください:局麻剤を使用するとき過量にならないこと、局麻剤を含まな いゼリーの使用、ショックが発生したときに対応できる体制(救急カートなど) 症状 重要ポイント ①皮膚が紅潮、発疹(しばしば膨疹状または 蕁麻疹状) ②血圧低下、脈拍触知不能、頻脈(循環抑制 が高度になると徐脈) ③気管支痙攣・上気道浮腫による呼吸困難 ④顔面浮腫 投与後数分以内に症状出 現 ★気管支痙攣が起こらな いことあり ●中等度過量 昏迷、多弁、不安、興奮 血圧上昇、頻脈、頻呼吸 嘔気、嘔吐、耳鳴 ●重度過量 ①意識消失、痙攣 ②血管拡張による血圧低下、 洞性徐脈から心停止・呼吸停止 局麻剤の血中濃度が中等 度レベル以上になってか ら症状出現 喉頭投与で5分、肋間神 経ブロックで10分、硬膜 外投与で20-30分 ★皮膚症状なし ★痙攣などの神経症状が 血圧低下より先行する Ⓒ 疼痛性 ショック 蒼白、発汗、頻脈、失神 (失神したとき:血圧低下、徐脈、瞳孔散 大) 歯科治療中の局麻剤投与 直後の異常反応として、 最も多い。 Ⓓ 添加エピネフ 頻脈、血圧上昇、不整脈、冠不全 Ⓐ アレルギー 性ショック Ⓑ 中毒性 ショック 重要 リンによる症状 ★田中和夫、日本医事新報、3951,109-110,2000 ★光畑裕正、局所麻酔薬によるアレルギー、ペインクリニック 20(7),989-1005,1999 ★斉藤和彦、局所麻酔薬過敏症はまれ、ショックが起きたら呼吸・循環の安定を目指す、LISA 6(9), 908-911,1999 < 6-8: p.13 > 2)横紋筋融解症を起こしやすい薬剤 横紋筋融解症を起こしやすい薬剤 薬 剤 横 紋 筋 融 解 症 急 性 腎 不 全 医療安全対策 No.216 文書 横紋筋融解症(ミオグロビン尿症)の原因として比較的頻度の高いものを列挙す ると、次のようになります。薬剤が原因となるものについては、表を掲載します。 このような薬剤を投与するときには、横紋筋融解症が発生する可能性も十分に考慮 してください(アンダーラインは比較的頻度の高い薬剤)。 ●外傷:圧挫症候群 ●虚血:急性動脈閉塞症 ●感染症:インフルエンザA、コクサッキーA9,B5、ブドウ球菌、マイコプラズマ ●毒素:破傷風 ●痙攣重積状態 ●薬剤性 ●その他:熱中症、悪性症候群 薬剤の種類 代表的薬品名 高脂血症治療薬 スタチン系薬、フィブラート系薬 メバロチン錠など 麻酔薬 吸入麻酔薬、サクシニルコリン セボフレンなど 高尿酸血症治療薬 コルヒチン、アロプリノール ザイロリック錠など 麻薬など ヘロイン、メタドン、アンフェタミ ン、コカイン、マリファナ 感染症治療薬 アムホテリシンB、キノロン系抗生 物質、ラミブジン、硫酸クロロキン クラビット錠、ガチ フロ錠など 気管支喘息治療薬 テオフィリン、アミノフィリン、硫 酸テルブタリン テオドール錠、ネオ フィリン注など その他 ε-アミノカプロン酸、向精神薬、制 吐薬、抗Parkinson薬、バルビツレー ト、硫酸ビンクリスチン、アザチオ プリン、甘草、トルエン、副腎皮質 ステロイド剤、ほか デパケン錠、ハイセ レニン細粒、デパス 錠、芍薬甘草湯、セ レネース錠・注など 参考:永山正雄、ミオグロビン尿症と悪性症候群のneuro-critical care、medicina 40,1764-1770, 2003 < 6-8: p.14 > 6‐8‐5 ●薬剤における法的な問題 1)医薬品の副作用等の厚生労働省への報告義務 医療安全対策 No.734 文書 医薬品・医療機器の副作用等の厚生 労働省への報告義務(No.603の改訂) 平成19年6月7日、当院に医薬品安全管理委員会と医療機器安全 管理委員会が設置されました。 医療機関からの副作用等の報告が薬事法で義務化されましていま す(平成14年7月30日に公布され、平成15年7月30日に施行)。 下記★★★を参考に医療安全管理室と薬剤部に 連絡してください。 新制度(医療機関からの副作用等報告制度) (平成15年7月30施行、17年7月6日改正) 医薬品安全 管理委員会 (H19.6.7設 置) 1) 医薬品の安全管理体制の確 保を目的として委員会を設置し、 責任者(委員長、副委員長)を置く。 2) 業務: 業務手順書作成とそ れに基づく業務の実施、職員研修 の実施、改善策の実施、その他 医療機器安 全管理委員 会(H19.6.7 設置) 1) 医療機器の安全管理体制の 確保を目的として委員会を設置し、 責任者(委員長、副委員長)を置く。 2) 業務: 職員研修の実施、保 守点検計画とその実施、改善策の 実施、その他 法制化 医療機関、薬局 厚生労働省 製造業者等 医療機関からの直接の副作用等報 告について法制化されました。 改正薬事法 第77条の4の2 (副作用等の報告) 第2項 薬局開設者、病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設者又は医師、歯科医師、薬剤師、獣医 師その他の医薬関係者は、医薬品又は医療機器について、当該品目の副作用その他の事由によるも のと疑われる疾病、障害若しくは死亡の発生又は当該品目の使用によるものと疑われる感染症の発生 に関する事項を知った場合において、保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するため必要があると 認めるときは、その旨を厚生労働大臣に報告しなければならない。 ★★★ ★★★ 厚生労働省に報告する義務がある例 1) 左のような事象が発生した とき、主治医・担当医等はまず 医療安全管理室と薬剤部にご 連絡ください(医療機器の場合 は薬剤部への連絡は不要)。 □ 重篤な副作用等 □ 死亡したとき、障害が発生したとき □ 死亡または障害につながるおそれがあるとき □ 治療のための入院またはその延長が起こったとき □ 上記に準じて重篤である □ 後世代における先天性の疾病又は異常の発生 □ その他の副作用等 □ 感染症が起こったとき(重篤度に関わらない) □ 添付文書に記載されていない事象が起こったとき < 6-8: p.15 > 2) 医療安全管理室と薬剤部で検討 し、手続きについて説明します。 3) ①「医薬品安全性情報報告書」ま たは②「医療機器安全性情報報告書」 を作成 4) 厚生労働省に報告 2)麻薬・向精神薬・覚せい剤に関する法律 麻薬・向精神薬・覚せい剤に 関する法律 医療安全対策 No.356 文書 法的RM ● 麻薬及び向精神薬取締法(昭和28年施行) 麻薬(ヘロイン、コカイン、モルヒネ、LSD、MDMAなど)は、不適切な使用により中毒・薬 物依存となり「魔薬」ともいわれている。向精神薬は向不安薬、抗うつ薬、睡眠薬などであ り、これらも不正使用される恐れがある。これらは「麻薬及び向精神薬取締法」により販売 や取り扱いが規制されている。 ● 覚せい剤取締法(昭和26年公布) 覚せい剤取締法により覚せい剤およびその原料の輸入、販売、所持、製造、譲渡およびそ の使用が規制されている。覚せい剤とは、フェニルアミノプロパン(アンフェタミン)、 フェニルメチルアミノプロパン(メタンフェタミン)およびこの両者と同様の覚醒作用をも つもので政令で定めたものなどをさす。エフェドリンは覚せい剤の原料となる。 ● 刑事訴訟法(第239条) 官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなけ ればならない。 ● 医師の届出義務 麻薬及び向精神薬取締法(第58条)で「医師は、診察の結果受診者が麻薬中毒者であると 診断したときは、すみやかに都道府県知事に届け出なければならない」となっている。 覚せい剤中毒者に関しては、法律上は医師の届出義務の規定はない。 ● 守秘義務と届出義務 刑法134条では、守秘義務について「医師は正当な理由なく職務上知り得たことを漏らし てはならない」となっている。ここでいう「正当な理由」とは、①第三者へ危害が及ぶ感染 症や犯罪、および②各種の届出義務の場合である。このことから正当な理由があるときは届 け出るということになる。 ● 以上より、医療従事者としては次のように考えておけばよい。 1)麻薬中毒者はすみやかに都道府県知事に届け出る(千葉県健康福祉部薬務課に届ける)。 2)覚せい剤中毒者については、届出義務はない。 3)ただし、第三者に危害が及ぶ犯罪である可能性があれば所轄警察に届け出る(社会的正 義のため、新たな犯罪を防止するため)。 参考:医療安全対策文書No.163「医師の義務」、No.203「すべての医療従事者には守秘義務がある」 < 6-8: p.16 >