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羽田空港を利用した農林水産物等の輸出促進に係る方向性

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羽田空港を利用した農林水産物等の輸出促進に係る方向性
Ⅳ.羽田空港を利用した農林水産物等の輸出促進に係る方向性
1.マクロでみた生鮮貨物の航空輸出経路の変化
・図表4−1に示すように、今後、羽田空港の国際化によって同空港を利用する農林水産
物等の輸送過程や流通経路等が変化する可能性がある。
・利用の中心となるのは、これまで成田空港を利用していた生鮮貨物で、首都圏や関東地
域周辺を産地、または水揚地とするものであるが、これらの産品ついては、成田空港と
羽田空港における路線便数の拡大による利便性の向上と競争激化による価格低減効果を
受けて、航空輸送が拡大することが考えられる。
・また、東日本を中心に、全国から成田空港及び羽田空港へ集まってくる生鮮貨物が拡大
することも想定される。このような輸送形態の変化の理由として下記の点があげられる。
・羽田空港を中心に国内線と国際線の接続が強化されること
・路線の集約効果により価格低減が期待されること
・地方空港における機材の小型化や便数の減少が進む可能性が高いこと
・大田市場や築地市場と羽田空港との近接性を生かした輸送形態が拡大する可能性が
あること
・しかし、これらの航空輸出経路が効果的に利用されて、実際の輸出促進につながるため
には、生産物を商品としてまとめる JA、輸出手続きや決済等に関わる貿易事業者や卸売
り事業者、陸上輸送と通関等の手続きを担当するフォワーダー、空港内のハンドリング
と生鮮上屋等を運営する貨物ターミナル事業者、実際に輸送を行う航空会社などのサプ
ライチェーンの担当者におけるそれぞれの課題への取組や相互の連携が必要となる。
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図表4−1
航空利用による生鮮貨物の輸送経路の変化
北海道・東北
首都圏
(1都3県)
新千歳空港
成田空港
北 米
太田市場
築地市場
中部空港
アジア
関東近県
関西空港
九州・西日本
福岡空港
北海道・東北
新千歳空港
首都圏
(1都3県)
成田空港
太田市場
築地市場
北 米
羽田空港 中部空港
アジア
関東近県
関西空港
九州・西日本
福岡空港
その他地方空港
(注)矢印の太さは、流動量の規模をイメージしたもの。点線で示した線は、少量ながら流動が
あると想定されるもの。あくまでイメージを示している。
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2.フォワーダーにおける輸出貨物の流れ
・深夜早朝時間帯においてはペリメータールール対象外となるため、フレーター便などが
香港、台湾、北京などの都市へ運航する可能性が高いが、欧米・欧州路線については、
羽田空港の滑走路長の制約により、直行便の運航はむずかしい。したがって、再拡張後
においてもこれらの路線は設定されない可能性が高いため、成田空港における既存の路
線を含めて、2空港を使い分けることが必要となる。生鮮貨物においても、1日を通し
て路線を利用する場合は、2空港利用を使い分けることが求められる。
図表4−2
想定される基本的な輸出経路
拠点間転送
周辺地域(芝山等)
成田空港
新砂地区
北米・欧州等の長距離路線
昼間時間帯のベリー、フレーター
(深夜早朝時間帯は運航不可)
原木地区
平和島周辺
物流拠点の集積地区
周辺地区
川崎地区
羽田空港
アジアを中心とする昼間時間帯のベリー
海外各地への深夜早朝時間帯のフレーター
(ただし、長距離路線は滑走路長により「制約)
想定される輸出経路の基本パターン
①空港場内上屋へ直行するケース
②各社の物流拠点を経由(インタクト含む)するケース
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3.羽田空港を活用した輸出促進に係る方向性
(1)物流の効率化に係る4原則と輸出促進に係る方向性
①羽田空港活用により目指すべき方向
・既存の物流拠点が数多く立地していることや、大田市場・築地市場といった中央卸売市
場が豊富な食材が集まる拠点が近隣に位置し、かつ全国からの輸送ネットワークのハブ
となっている点など、首都圏という市場性等と羽田空港国際化の方向性を踏まえると、
羽田空港活用によって目指すべき方向は、
航空利用による農林水産物等の高付加価値サプライチェーン(ハイバリュー化、ハイク
オリティ化)を構築し、羽田空港の特性を生かしてアジア市場を中心とした生鮮エクス
プレス流通拠点の形成を目指すこと
であり、そのためには
航空物流に関わる関係事業者間においてトータルな輸送機能の向上を図ることが重要
である。
②物流の効率化に係る4原則
・一般に、輸出促進に必要となる航空物流の効率化は、概ね下記の4項目が重要である。
●コスト縮減
(大ロット化・共同化等による輸送コストの削減、既存施設の有効利用、貨物取扱手
数料等の軽減化等)
●スピードアップ
(空港までの直送化、物流拠点や空港上屋での一時保管・蔵置時間の短縮等)
●高い輸送品質
(鮮度管理に優れた施設・機器の整備と利用、緩衝材・梱包の充実、直送化・積み替
え回数の削減等)
●高い利便性
(主要路線の就航、通関手続き利便性の向上、現地での植物検疫の実施、空港内動線・
処理の効率化等)
③生鮮品の輸出促進のための具体的な検討項目
・輸出促進のためには、下記の点についての方策を検討することが必要である。
・物流コストの縮減に係る取組
・貨物取扱や物流業務の効率化・荷傷み防止に係る取組
・物流施設の整備等に係る取組
・路線・便数の拡充に係る取組
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(2)想定される方策
①物流コストの縮減に係る取組
●大ロット化、共同化による単位当たり輸送コスト等の削減
・生鮮貨物はロットのまとまり方が小さく、輸送単価を引き下げることがむずかしいこと
が大きな課題であり、物流事業者にとってもビジネスとしてのメリットが小さい状況に
ある。物流コストを構成する要素は、輸送コスト、倉庫や保管料に関するコスト、仕分
け・荷分けに関するコストであるが、特に課題なのは、1荷主あたりの1回の輸出量の
単位が小さいことである。したがって、多くの荷主のロットを取りまとめることが重要
である。また、物流拠点や空港までのトラック等の利用において、それぞれの事業者間
で横持ち輸送コストがかかることから、割高となることも課題である。
・大ロット化による単位コストの削減のためには、産地や複数の産地間における荷量の集
約や、羽田空港周辺のフォワーダーの物流拠点における荷量の集約を図ることが求めら
れる。そのためは、産地、貿易事業者、フォワーダー間等におけるパートナーシップの
形成を積極的に促していくことが必要である。
・また、中央卸売市場とフォワーダーの物流拠点、羽田空港とのそれぞれの間における横
持ち輸送の効率化と利便性の向上も課題である。したがって、産地及び貿易事業者とフ
ォワーダー等の物流事業者に対して、輸送の多頻度化や効率化を実現するために、今後、
輸送等の共同化に係るモデル構築を働きかけていくことが必要である。
・具体的には、
a)大田市場や築地市場の場内あるいは近隣のフォワーダーの物流拠点において共同の
集荷場を設置し、そこから羽田空港までの生鮮貨物に特定した共同配送の可能性を探
ること
b)生鮮品の取扱を得意とするフォワーダーや運送事業者に、産地間の巡回による一括
した集荷を委託することにより、運送コストの低減と安定した輸送システムを構築す
ること
などを方策として検討することが考えられる。
【想定される対象品目】
・航空利用実績の多い生鮮品である「いちご」や、輸出促進事業の対象品にもあげられて
いる「桃」や「ぶどう」などが、対象品目として想定される。
・いちごの場合、1パック 300g×4パック詰めの単位で、1回当たり 400∼500kg が現状の
出荷単位となっているが、航空輸送において特殊コンテナ等の利用を想定すると、輸送
の効率性やコスト低減化のためには、少なくとも 600∼700kg 以上のまとまりとすること
が望ましい。ある程度のまとまりとすることにより、輸送コストの低減化が促進される
とともに、特殊コンテナの利用も行いやすくなり、鮮度維持に大きく貢献することとな
る。
・また、産地からの空港までのトラック輸送を考慮すると、1回の輸送単位が3トン未満
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ではトラックの手配がむずかしいのが現状である(ただし、品質レベルの高い大手フォ
ワーダーに委託する場合)。大型トラック利用を想定すると5∼7トン単位での仕立てが
理想的であるが、単一品での利用がむずかしいと考えられる。その場合は、荷主におい
て多様な品目を詰め合わせることにより、1回当たりの輸送量を増やすなどの工夫が必
要となる。
・1 回当りの輸送量および定期的な取引の輸送料金への影響についての事例を以下に示す。
《事例》栃木県佐野市または山梨県山梨市で集荷、羽田空港まで輸送(冷蔵車輌利用)
■物量による kg 単価の変動
50kg の場合
240 円
100kg の場合
180 円
500kg の場合
60 円
1000kg の場合
50 円
■頻度による kg 単価の変動
スポットの場合
上記料金どおり
週 1 日の定期の場合
上記料金の 10%割引
週 3 日の定期の場合
上記料金の 15%割引
週 5 日の定期の場合
上記料金の 20%割引
【具体化に当たっての検討課題】
・フォワーダー大手3社などの生鮮品の取扱実績と既存の物流拠点を有している事業者等
と、大田市場へ出荷する産地側の農協や仲買との間において取りまとめ方法や輸送方法
等の研究を行うことが必要である。
・そのためには、産地代表者、主要なフォワーダー、仲買等を交えた国際航空利用に係る
研究会を開催し、関東近郊の産地からの効率的な直送化の体制づくりや、中央卸売市場
とフォワーダーの物流拠点、羽田空港とのそれぞれの間における横持ち輸送の効率化な
どについての研究を行うことが必要である。また、必要に応じて、関係機関に参加を働
きかけることも考えられる。
・羽田空港の国際化は 2010 年 10 月に予定されているため、今後2∼3年間をかけて具現
化に向けての調整、協議を進めることが必要である。
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図表4−3
羽田空港を利用した輸出促進に係る全体イメージ図
首都圏近郊
の産地
首都圏近郊
の産地
小ロットによる集荷
または持ち込み
首都圏近郊
の産地
主要なフォワーダー
等の物流拠点
首都圏近郊
の産地
共同集荷便
*通関手続き
*植物検疫検査
*ULDビルドアップ
特定産地間
集荷便
空港
連絡便
首都圏近郊
の産地
中央卸売市場
場内でピックアップ
*場内集荷
場の設置
市場経由
の集荷便
*交通混雑からの回避
*インタクトULD化
首都圏近郊
の産地
空港直行便
*構内動線の最適化
フォワーダー上屋
チャーター車利用等
による持ち込み
関東地域にある
大口出荷の産地
*産地で通関手続き
*産地で植物検疫検査
*産地でULDビルドアップ
生鮮上屋
CIQ
植物
検疫
大ロットでの
空港直送
航空会社上屋
*インタクトULD化
羽田空港国際
貨物ターミナル
*取扱手数料
の低減化
航空機搭載
*場内動線
の確保
国内貨物ターミナル
全国各地
(注)CIQ:税関(Customs)、出入国管理(Immigration)、検疫(Quarantine)を執り行う機関または施設。
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②貨物取扱や物流業務の効率化・荷傷み防止に係る取組
●物流事業者や航空会社間で一体となった鮮度管理や荷傷み防止への取組
・生鮮品の輸送は、荷崩れの防止から一般貨物のような単純な積み重ねによる組み付けが
難しく積載効率が低くなる傾向にあるとともに、緩衝材や保冷剤などの荷造り材料が必
要となる場合が多い。したがって、積載効率を良くするとともに、取扱いの手間や荷傷
みへの管理負担を軽減できるように工夫することが重要であり、生鮮管理に適した緩衝
材、輸送用容器などを開発して利用することが望ましい。具体的には、物流事業者や航
空会社等と一体となって、事業者間で共通の仕様をもった安価で使いやすい緩衝材や輸
送容器を企画することが考えられる。その場合、特にフォワーダーへの働きかけが重要
である。
・海外の航空会社等は運賃面で利用しやすいといわれる一方で、一部では海外の空港での
取扱いに問題があることも指摘されている。そこで、当該国での実情を知る荷主やフォ
ワーダー等への空港取扱い実態を調査し、必要に応じて海外の航空会社や貨物上屋事業
者などに対して、荷傷み防止への取組を働きかけていくことも考えられる。
・また、生鮮貨物の鮮度を維持することができる特殊コンテナ等の導入促進を航空会社や
フォワーダーへ働きかけることが必要である。現在、日本航空が開発した光触媒装置を
有する特殊コンテナ(LD-3タイプ)が国内線において利用されており、2008 年度より
国際線への利用が予定されている。このような機器の積極的な活用を促進していくこと
が重要であり、設備費用のかかる特殊コンテナの利用拡大に係る支援を検討していくこ
とも考えられる。
図表4−4
光触媒装置装着が可能な特殊コンテナ
(資料)JALCARGO 資料より転載
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(注)内部に光を浴びると付着物質を分解する酸化チタンのフィルターを装備。コンテナ内の空気
を循環させ、蛍光灯の光を当てたフィルターを通過させて空気中のエチレンガスと浮遊菌を
分離する技術。光触媒装置メーカーの盛和工業(横浜市)などと国内輸送用に共同開発。そ
の後、スウェーデンの温度管理コンテナメーカー、エンバイロテイナーの協力を得てバッテ
リー容量を3倍化(最長 24 時間)し、国際輸送利用へ対応。
・羽田空港においては、内際乗り継ぎによる地方空港からの生鮮品の転送貨物も増加する
ことが考えられる。一方、国内線貨物ターミナルから国際線貨物ターミナルまでの貨物
の移動には、制限区域外(場外)を通る場合は約 4.5∼5km 程度のトラック輸送、制限
区域内(場内)のでも約 3.5km 程度のドーリー輸送(時速 15km/h)が必要となり、生鮮
貨物にとっては特にこの間の輸送をスピーディに行うことが重要となる。そのためには、
他の転送貨物とともに、車両動線が確実に確保されることが必要である。具体的には、
空港連絡道路及びこれに沿って設置されている GSE11用横断道路の拡充整備等を関係機関
に働きかけていくことが必要である。
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GSE(Ground Service Equipment の略):地上搬送用機器の総称。
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図表4−5
国内線貨物ターミナルと国際線貨物ターミナルの位置関係
(制限区域外を通行する場合)
国内線貨物ターミナル
国際線貨物ターミナル
0 1 km
(制限区域内を通行する場合)
国内線貨物ターミナル
国際線貨物ターミナル
0 54
1 km
●貨物ターミナル内における適切な荷役取扱及び検査及び手続き等の処理動線等の効率化
・ターミナル事業者やフォワーダー、CIQの間において、必要書類の受け渡し、検疫申
請・検疫立会、生鮮貨物の搬出・積込などの一連の流れが、スムーズに実施されるよう
に、動線の最短化、構内作業・手続きの効率化・円滑化について検討していくことが必
要である。具体的には、関係事業者及びCIQ関係機関との間で設置が予定されている
関係者の連絡会議のテーマとして、生鮮貨物取扱に係る円滑化を取り上げて、相互の協
力のもとに考えられる方策等について協議してもらうよう働きかけていくことが必要で
ある。
図表4−6
生鮮施設とCIQ施設の平面動線関係
生鮮エリア
航空上屋
(予定)
航空上屋
(予定)
フォワーダー上屋
(予定)
CIQ施設
貨物の動線
CIQ手続きの動線
0 100m
(注)計画されている生鮮上屋の配置は、植物検疫や通関手続きを行う CIQ 合同庁舎には約 130
∼150m程度の歩行距離にあると想定される
・生鮮貨物の温度管理は、生鮮上屋及び輸出共同上屋において必要な施設が整備されるこ
ととなっているが、利用促進の観点から、施設利用料の低廉化が望まれる。特にロット
が少なく一時蔵置時間も短い場合は、輸出共同上屋を利用することが多くなると考えら
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れるが、その場合はハンドリング料金とは別に施設利用料を加算されることなく、温度
管理設備が利用できることが望ましい。具体的には、今後予定されている料金設定(平
成 20 年度以降)において、関係事業者に働きかけていくことも必要である。また、生鮮
上屋利用については、大ロットの場合の割引料金の設定などについても同様に働きかけ
ていくことも考えられる。
③物流施設の整備等に係る取組
●フォワーダー等の既往物流拠点の有効利用
・羽田空港の 10km 圏には、大井埠頭及び南部流通業務団地(京浜二区、通称「平和島流通
業務団地」)等があり、トラック事業者の輸配送拠点や物流拠点、ドライ関係の食品関連
の物流センター等が数多く立地している。現時点では、これらの多くの施設では、生鮮
貨物を取り扱う機会は少なく、必ずしも生鮮貨物を取り扱うのに適した環境とはなって
いないのが現状である。
・また、エクスプレス貨物(宅配貨物)を取り扱う物流拠点では、一般に冷蔵庫等の鮮度
管理に役立つ施設を有しているが、簡易なもので、多様な生鮮貨物やまとまった量を取
り扱うスペースは確保されてはいない。
*医薬品やケミカル関連製品を取り扱う物流事業者においては、冷蔵庫等を保有してい
る場合が多く、これらの施設の活用も考えられる。
・しかし、東京湾臨海部や都心地区での新たな物流拠点を確保することは、土地価格が高
いことから容易ではなく、当面は限られたスペースの既往の施設を有効に活用して、羽
田空港再拡張後の航空需要に対応していくこととなる。したがって、これらの物流拠点
を有効に活用して、生鮮貨物の取扱を促進していくことが必要であり、そのための環境
作りを支援していくことが必要である。具体的には、生鮮貨物の一時保管等を行うため
の温度管理施設(電源コンテナ等)の設置を支援することの検討などが考えられる。
●道路交通動線の確保と交通混雑等による影響回避
・スピードが勝負である生鮮貨物の品質管理や輸送時の荷痛みを防止する観点からも、道
路交通における混雑などによって、物流拠点からの輸送時間が必要以上のものとならな
いように、適切な道路交通動線を確保することが必要である。
・空港場外においては、近隣の物流拠点や卸売市場からの動線における時間短縮が図られ
るように、関係機関に交通処理や道路整備等を働きかけていくことが必要である。特に、
羽田空港再拡張後の貨客双方の航空需要の大幅な増加によって、交通混雑が懸念される。
大田市場などの羽田空港との距離面での近接性を生かすためには、交通混雑による搬入
時間の遅延をできるかぎり回避するようにしなければならない。
・また、空港内においては、生鮮上屋や航空上屋への搬入がスムーズに行うことができる
ように、場内の車両動線及び駐車スペース等を適切に確保されるように、ターミナル事
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業者へ働きかけていくことが必要である。
●中長期的な視点での生鮮貨物専用上屋、取扱拠点の整備
・生鮮貨物の取扱には品質管理に優れた施設の立地を促していくことが必要である。物量
としては輸入品が中心となることが想定されるが、今後の生鮮品の輸出の増加を考慮し、
中長期的な視点で輸出入双方に適切に対応できる物流拠点の立地を促していくことが必
要である。
・特に大手のフォワーダーにおいては、羽田空港の国際化を大きなビジネスチャンスとと
らえて、中長期的な視点から、空港周辺の新たな物流拠点の整備を検討する動きもでて
いる。したがって、これらの新たな物流拠点の整備に際して、農林水産物等を積極的に
取り扱うことができる機能を整備してもらうように働きかけていくことが必要である。
その一手法として、生鮮貨物の一時保管等を行うための温度管理施設(電源コンテナ等)
の設置を支援することの検討が考えられる。
・また、一事業者による生鮮施設等の整備は、コスト負担面からも限界があり、実際に整
備できるのは大手フォワーダー等に限られる可能性が高い。そこで、既存の公共物流拠
点等の再整備にあわせて、共同利用が可能な生鮮施設等を整備することが考えられる。
具体的には、大田市場に隣接している南部流通業務団地の再整備を視野に入れることが
考えられる。1968 年に開業した南部流通業務団地には多くの事業者が入居しているが、
一部の施設では老朽化と時代変化による役割の変化(公共トラックターミナルの使い方
など)に対応できていない。しかし、再整備によって施設を高度利用することは可能で
ある。具体的には、南部流通業務団地における再整備を実現するために、関係機関へ働
きかけるとともに、入居している事業者を中心に、今後の施設利用に係る検討を行うこ
とが必要となる。
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図表4−7
南部流通業務団地の位置図
南部流通業務団地
大田市場
羽田空港
(注)地図は国土地理院 1/25,000 地形図
・なお、羽田空港跡地、神奈川口構想地区などの今後、開発が予定されている地区や、昭
和島や京浜島等の羽田空港周辺部などの空港直近の地区も、今後、立地や再開発すべき
物流拠点候補地としての可能性を有している。
・また、大手フォワーダーの総合物流拠点の立地に加えて、生鮮品の取扱に長けた専門の
物流事業者を羽田空港周辺地区へ立地誘導していくことも重要である。そのためには、
都市計画決定を行う関係機関に対して物流拠点立地が可能となるよう、働きかけること
が必要である。
【事例】大手フォワーダーAは成田空港隣接地区の野毛平工業団地内の成田空港物流セ
ンターに、延床面積約 11,000 ㎡の大規模な生鮮棟(1997 年3月竣工)を保有し
ている。施設規模に余裕のあることで、生鮮貨物の集約も進み、また貨物が集
まってくることにより施設の効率的な運用も可能となっている。なお、別途に
大規模な生鮮施設を羽田空港周辺に整備することについては、設定される路線
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便数次第であり、いまところ未定である。
【事例】一般貨物の輸送や輸出入保税業務を手がける中堅物流事業者Bは、成田空港周
辺に物流拠点(延べ床面積約 3,300m2、19℃低温荷捌場等を整備)を有している。
このような事業者においては、多様な温度管理機能を用意するとともに配送と
一体となったサービスを得意としている。いまのところ、羽田空港周辺にはこ
のような施設は立地していない。しかし、羽田空港の路線便数によっては、こ
のような形態の拠点立地も考えられる。
④路線・便数の拡充に係る取組
●輸出促進に係るターゲット市場への国際航空路線の充実
・現時点で羽田空港における再拡張後の昼間時間帯における国際航空路線の開設条件とし
て、昼間時間帯におけるペリメータールールの導入が予定されており、この条件である
と、昼間時間帯においては羽田空港路線では香港などの巨大市場は含まれてこないこと
となる(ただし、深夜早朝時間帯においては設定可能)。
・したがって、昼間時間帯における利便性向上のために、大規模な消費が期待できる香港、
北京、台北などの主要アジア都市への路線設定が可能となるように関係機関に対し、働
きかけていくことも必要である。
図表4−8
輸出促進ターゲット品目・市場とベリー便設定の可能性
対象国
ロシア
航空利用が想定される関心品目
果実、切花、水産物・水産加工品
香港
台湾
ベトナム
シンガポール
EU
果実、豚肉・鶏肉
果実
切花
メロン、いちご
水産物・水産加工品
カナダ
牛肉
中国
いちご、メロン、牛肉
UAE
果実、花き等
エジプト
水産品・水産加工品
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ベリー便設定の可能性(昼間時間帯)
ウラジオストク、ハバロフスクなど日本海側の
一部都市のみ
ペリメーター範囲対象外
ペリメーター範囲対象外
ペリメーター範囲対象外
ペリメーター範囲対象外
ペリメーター範囲対象外
*機材が制限される
ペリメーター範囲対象外
*機材が制限される
上海、青島など沿岸部を中心とする
一部都市のみ
ペリメーター範囲対象外
*機材が制限される
ペリメーター範囲対象外
*機材が制限される
平成19年度農林水産物貿易円滑化推進事業 海外貿易情報収集等基礎調査
農林水産物等の航空輸出物流に関する調査報告書
発 行
委託先
平成20年3月
株式会社日本総合研究所
〒102-0082 東京都千代田区一番町16番
電 話 03-3288-4330
FAX 03-3288-5540
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