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A-1 イヌ陰茎海綿体における内皮依存性弛緩作用 安屋敷 和秀、篠崎
A-1 イヌ陰茎海綿体における内皮依存性弛緩作用 ○安屋敷 和秀、篠崎 一哉、岡村 富夫 (滋賀医科大学・薬理) 【目的】我々は NO 作動性神経が陰茎海綿体平滑筋を拡張性に調節しており、 勃起機能に重要な役割を果たすことを報告してきた。今回は、アセチルコリン による陰茎海綿体弛緩の機序を解析した。 【方法】実験には、雄性ビ−グルより陰茎海綿体を摘出し、作成した標本を好 気的条件下で栄養液中に懸垂し、薬物の適用により生じる標本の等尺性張力変 化を記録した。また、界面活性剤であるサポニン処置の海面体内皮に与える影 響を、機能的ならびに電子顕微鏡を用いて形態学的に検討した。 【結果】フェニレフリンで前収縮させた海綿体標本にアセチルコリン(ACh)な いしニトロプルシド(SNP)を適用すると、用量依存性の弛緩が観察された。界 面活性剤であるサポニンの処置により、ACh 弛緩は消失したが、SNP 弛緩は影 響されなかった。電子顕微鏡による検討から、サポニン処置による海綿体内皮 細胞の変性が確認された。ACh 弛緩は、NO 合成酵素阻害薬である L-ニトロアル ギニン(L-NA)処置により部分的に抑制され、L-アルギニン添加により回復した。 L-NA 抵抗性の ACh 弛緩は、可溶性グアニル酸シクラーゼ阻害薬である ODQ を追 加処置してもそれ以上の抑制はなく、高濃度のカリウム処置により消失した。 L-NA 抵抗性の ACh 弛緩は、ATP 依存性カリウムチャネル阻害薬であるグリベン クラミド、中および高コンダクタンスのカルシウム依存性カリウムチャネル阻 害薬であるカリブドトキシンおよびイベリオトキシン処置では影響されず、低 コンダクタンスのカルシウム依存性カリウムチャネル阻害薬であるアパミンな らびにシラトキシン処置により収縮に転じた。ATP 依存性カリウムチャネルの 開口薬であるレブクロマカリムによる弛緩は、グリベンクラミド処置により消 失したが、アパミンおよびシラトキシン処置では影響を受けなかった。 【考察】イヌ陰茎海綿体平滑筋は、内皮由来の NO および低コンダクタンスの カルシウム依存性カリウムチャネル開口によって拡張する。したがって、勃起 の発現に必要と考えられる NO 作動性神経機能に加えて、内皮由来の NO ならび にカリウムチャネル開口による海綿体弛緩作用は勃起の維持に必要かもしれな い。