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J-REIT 不動産鑑定価格変化へのキャップレートの影響

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J-REIT 不動産鑑定価格変化へのキャップレートの影響
ニッセイ基礎研究所
(不動産投資):J-REIT 不動産鑑定価格変化へのキャップレートの影響
J-REIT の不動産鑑定価格の下落要因は、オフィスではキャップレート(CR)と NCF(ネッ
トキャッシュフロー)がほぼ同等だが、住宅や商業では CR の寄与度が高い。CR は日銀短観
の不動産業貸出態度 DI との関連が強く、2009 年下期~2010 年上期がピークと予測された。
J-REIT の保有不動産価格は、リーマンショックを機に大きく下落した。2009 年の上期は、前
期(2008 年下期)に比べ、オフィスで 6.5%の下落、住宅で 5.8%の下落、商業では 7.8%の
下落であった(図表 1)。2002 年下期を 100 とした指数でみると、2009 年の上期は、直近の
最高水準(2007 年下期~2008 年上期)から、オフィスで 8.5%の下落、住宅で 10.3%の下落、
商業で 11.5%の下落となっている。
このような不動産鑑定価格の下落は、どのような要因によるのだろうか。不動産価格の変化率
((NCF(ネットキャッシュフロー)の変化率)-(CR(キャップレート)の変化率))を要
因分解すると、2006 年下期以降のオフィスの価格変化に対して、CR と NCF の変化率が、ほぼ
半分ずつの寄与となっている(図表2)。一方、住宅と商業の不動産鑑定価格の変化は、その
ほとんどが CR の変化によるものである(図表3~4)。
図表1: J-REIT 不動産鑑定価格変化率
図表2: オフィスの価格・CR・NCF の推移
120
6.0%
4.0%
115
2.0%
110
0.0%
-2.0%
105
-4.0%
100
-6.0%
95
-8.0%
90
-10.0%
2009上期
2008下期
2008上期
2007下期
2007上期
図表3: 住宅の価格・CR・NCF の推移
110
CR
2006下期
鑑定価格
(出所)J-REIT決算データを基にニッセイ基礎研究所が推計
2006上期
商業
2005下期
2005上期
2004下期
2004上期
2003下期
2003上期
2002下期
09上期/08下期
08下期/08上期
08上期/07下期
住宅
07下期/07上期
07上期/06下期
06下期/06上期
06上期/05下期
05下期/05上期
05上期/04下期
04下期/04上期
04上期/03下期
03下期/03上期
03上期/02下期
オフィス
85
NCF
(出所)J-REIT決算データを基にニッセイ基礎研究所が推計
図表4: 商業の価格・CR・NCF の推移
125
120
115
105
110
105
100
100
95
95
90
85
90
2009上期
NCF
2008下期
CR
2008上期
2007下期
鑑定価格
2007上期
2006下期
2006上期
2005下期
年金ストラテジー (Vol.162) December 2009
2005上期
(出所)J-REIT決算データを基にニッセイ基礎研究所が推計
2004下期
2009上期
NCF
2008下期
2007下期
CR
2008上期
2007上期
2006下期
2006上期
2005下期
2005上期
2004下期
鑑定価格
80
(出所)J-REIT決算データを基にニッセイ基礎研究所が推計
4
ニッセイ基礎研究所
それでは、J-REIT の不動産鑑定価格の主要な変動要因であるキャップレートは、どのような
要因で変動してきたのであろうか。ここでは、各期の不動産データの相違に基づく特性の違い
(立地や規模、築年などの相違)を調整したキャップレート指数を用いる。この指数によると、
オフィス、住宅、商業のキャップレートは、2008 年上期を底に上昇に転じており、2009 年上
期までの一年間に、オフィスでは 25bp(ベーシスポイント、1%の百分の一)、住宅では 47bp、
商業では 51bp の上昇となっている。
オフィスのキャップレートは 2 半期あるいは 3 半期前の日銀短観における金融機関の不動産業
への貸出態度 DI との相関が高く、住宅のキャップレートは、半期前の貸出態度 DI との相関が
高いという結果が得られた。一方、商業のキャップレートは、オフィスのキャップレートとの
相関が高かった。また、日銀短観の不動産貸出態度 DI は、都心3区の大規模オフィス賃料変
化率との相関が高いという結果も得られた。
そこで将来のキャップレートを予測した結果、キャップレートのピークは、オフィスでは(不
動産貸出態度判断 DI から 2 半期遅れて反応する場合)2010 年上期(5.2%、2009 年上期と比
べ 93bp の上昇)となり、住宅では 2009 年下期(5.2%、同 13bp の上昇)、商業では 2010 年
上期(5.6%、同 108bp の上昇)になると推計された(図表5)。
これらを考慮すると、キャップレートは、セクターに関わらず、金融機関の融資姿勢に強く影
響を受けてきたと考えられる。また、住宅や商業の不動産価格およびキャップレートは、その
安定したインカム・ゲイン(NCF)よりも、むしろオフィス市場との関連が強く、オフィスビ
ル投資のサブセクターとして投資や価格づけが行われてきた可能性が高いように思われる。
本稿における要因分析は、単純かつ基本的なものであり、他の説明変数による分析も十分可能
である。一つの試論として参考にしていただければと考えている。
(竹内 一雅)
図表5: オフィス、住宅および商業キャップレートの将来予測
6.0%
予測
5.5%
5.0%
4.5%
4.0%
3.5%
2011下期
2011上期
2010下期
2010上期
2009下期
住宅CR(実績・予測)
2009上期
2008下期
2008上期
2007下期
2007上期
2006下期
2006上期
2005下期
2005上期
2004下期
2004上期
2003下期
2003上期
オフィスCR(実績・予測)
商業CR(実績・予測)
(出所)ニッセイ基礎研究所が推計
年金ストラテジー (Vol.162) December 2009
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