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発言要旨(PDF形式:406KB)

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発言要旨(PDF形式:406KB)
「デザイン都市・神戸」
推進シンポジウム2008
~ 新 た な 魅 力 と 活 力 の 創 造~
第2部
日
時
「ま
ち」
平成20年3月17日(月)
14時30分~17時00分
場
主
所
神戸市立博物館
1階ホール
催:神戸市/(財)神戸都市問題研究所/神戸商工会議所
開会挨拶
神戸市副市長
石井陽一
・ 本 日 は 『 「 デ ザ イ ン 都 市 ・ 神 戸 」 推 進 シ ン ポ ジ ウ ム 2008』 に お 集 ま り い た だ き ま し て 、
誠にありがとうございます。
・当シンポジウムは、2日間にわたって開催しております。第1部は、先週の金曜日(3
月 14日 ) に 「 く ら し 」 と 「 も の づ く り 」 を テ ー マ と し て 、 そ し て 本 日 の 第 2 部 は 「 ま
ち」をテーマに開催させていただきます。
・この3つのテーマ、「くらし」「もの」そして「まち」は、神戸のすばらしい財産であ
り、魅力でございます。神戸市では、これらをもう一度デザインの視点で見つめなお
し、さらに磨きをかけていくことで、「ザイン都市・神戸」実現しようと取り組んで
いるところでございます。
・ 昨 年 は 、 神 戸 港 が 開 港 し て 140年 の 記 念 す べ き 年 で し た 。 港 を 中 心 と し た ウ ォ ー タ ー フ
ロントと、そのウォーターフロントに隣接し、そして六甲の緑に囲まれた都心は、神
戸の近代の発展を牽引してきた地域であると考えています。
・本日の会場である市立博物館が建つ旧居留地は、都心の中核として、港とともに生まれ、
港とともに発展し、今なお生まれた当時の風情を残しつつ、一方で進化を続けている
地域です。
・現在、神戸市では、この都心とウォーターフロントを「デザイン都市・神戸」の象徴的
な地域の一つとして、市民の皆さまや神戸を訪れられる皆さまに、みなとまち神戸の
すばらしい魅力と美しい景観を感じていただくため、都心とウォーターフロントの中
長期的なグランドデザインを描きたいと考えております。
・本日は、神戸大学の安田先生のから基調講演をいただいた後、パネラーの皆さまにご議
論をしていただく予定でございますが、本日ご参集の皆さまもぜひご一緒に考えてい
ただければと期待をしているところでございます。
・はなはだ簡単ではございますが、開会の挨拶とさせていただきます。
-1-
基 調 講 演 「まちづくりとデザイン都市」
神戸大学大学院工学研究科
教授
安田丑作
はじめに
・本日は「まちづくりとデザイン都市」と題して、事例に学びながら、「都市デザイン」
とは何か、またその果たす役割とは何か、について皆さまとともに考えてみたいと思
います。
1.都市再生のための都市戦略
・ 1990年 代 か ら 本 格 化 し た 先 進 諸 国 で の 脱 工 業 化 社 会 を 背 景 に し て 、 都 市 の 再 生 の た め 都
市戦略の再構築が大きな課題になっており、現在もその途上であると考えられます。
・都市再生のための都市戦略として、「持続性」「創造性」「個性あるいは多様性」の3
つのキーワードがあげられます。
・ 「 持 続 性 ( Sustainability) 」 と は 、 環 境 分 野 や も と も と は 生 態 学 的 な 分 野 で 使 わ れ て
い た 言 葉 で す が 、 1992年 に リ オ で 開 催 さ れ た 国 連 地 球 環 境 サ ミ ッ ト で 使 わ れ た こ と に
より、急速に広まりました。
・ こ の 92年 の 地 球 環 境 サ ミ ッ ト は 、 先 進 諸 国 と 発 展 途 上 国 と の 利 害 対 立 が 非 常 に 鮮 明 に
あらわれた会議でもあったわけですが、「持続的発展」が合意を取り結ぶキーワードと
なったのです。
・すなわち、経済か環境かのトレードオフ的な思考に陥っていた、あるいは陥りがちなも
のをどう克服できるのかを、この言葉に託したのだと思います。
・もっとも、決してこの言葉だけで克服できたわけではなく、その後のサミットや、ある
いは現在でも、様々な形でこの問題が話題になっておりますし、その合意がなかなか
難しいということは昨今のテレビ報道などでも報じられています。
・ ま た 、 こ の 「 持 続 性 」 と い う 言 葉 は 92年 に 広 ま り ま し た が 、 環 境 問 題 に 取 り 組 む 先 進 的
な国々が集まっているEUでは、都市再生の政策シナリオを描く際のキーワードとし
て以前から使われていました。
・ 二 つ め は 、 最 近 よ く 使 わ れ る 「 創 造 性 ( Creativity) 」 、 あ る い は 「 創 造 都 市 」 で す 。
・デザイン都市の目標の一つが「創造都市」であり、芸術・文化による産業振興や価値創
造を目指すということ、そうした意味がこの「創造性」という言葉にあります。
・価値創造とは、必ずしも知的価値創造だけではなく、感性を重視するという、これまで
の工業化社会における“ものづくり”からの脱却の意味が込められていると思います。
-2-
・三つめの「個性あるいは多様性」については、都市の将来像あるいは都市のあり方を考
えた場合、総合型と専門型の都市が考えられます。
・総合型の都市とは、百貨店型あるいはゼネラリスト型といった、あらゆる分野をカバー
できるような都市の意味です。専門型の都市とは、百貨店に対する専門店で、スペシ
ャリストな都市の意味です。
・総合型の都市の代表は、東京、ニューヨーク、ロンドンなど、いわゆる世界都市を標榜
する都市がそれに当たるだろうと思います。ただ、すべての都市が総合型にはなれま
せん。多くの都市は専門型としてどう生き延び、どう再生していくのかを問われてい
ます。このこととデザイン都市が非常に深くかかわっていると思います。
2.「デザイン都市」実現のための3つのアプローチ
・都市活動を支える「文化」「経済」「生活」といったものの中で、「経済」「生活」に
ついては都市活動を支えるものとして誰しも疑わないものですが、「文化」はこれま
でそれほど取り上げられてこなかったと思います。
・「文化」とは付随的なもの、すなわち「経済」「生活」の余力として「文化」がある、
と 思 わ れ て き ま し た が 、 実 は そ う で は な い と い う の が 90年 代 以 降 に 先 進 諸 国 の 主 要 都
市で取り組まれている動きです。
・つまり、「経済」対「文化」といったように対立的、対比的に捉えられてきたものを、
どうつないでいくのかがデザイン都市です。
・ 連 続 シ ン ポ ジ ウ ム と し て 先 週 金 曜 日 ( 平 成 20年 3月 14日 ) に 開 催 さ れ た シ ン ポ ジ ウ ム は 、
「もの(プロダクト・デザイン)」「くらし(ライフスタイル・デザイン)」の論点
からデザイン都市に触れたものであり、本日は「まち(アーバン・デザイン)」の論
点からデザイン都市に触れたいと思います。
・都市というのは、とりわけあの震災を経験した神戸の街にとって、安全・安心・健康な
どボトムアップの重要性は十分わかるわけですが、同時に、魅力・活力といったバリ
ューアップを忘れてはなりません。このボトムアップとバリューアップのバランスが
重要なのです。
・それから、デザインは「経済」「生活」「文化」をより強く関連づけていくための触媒
であり、デザイン自身が目的ではないことも申し上げておきます。
スペイン
ビルバオ市-重工業都市から文化都市への転換
・スペインのバスコ州の中核都市ビルバオは、市の真中を流れるネルビオン川沿いの工業
-3-
地 域 が 発 展 し て 栄 え た 都 市 で す 。 鉄 鋼 や 造 船 が 主 要 産 業 で し た が 、 1980年 代 か ら の 重
工業衰退の中で都市の再生が大きな議論になり、その後、重工業都市から文化都市へ
華々しく転換しました。
・ 港 湾 機 能 が 移 っ た ア バ ン ド イ バ ラ 地 区 ( 34.8ha) の 跡 地 再 開 発 と し て 、 美 術 館 、 国 際 会
議場、コンサートホール、博物館、ホテル、ショッピングセンターといった複合施設
を建設しました。
・ 数 あ る 施 設 の 中 で 、 特 に 建 築 の 世 界 で 有 名 な の が 「 グ ッ ゲ ン ハ イ ム 美 術 館 」 - 1997年
のフランク・ゲーリーの作品です。余談ですが、このフランク・ゲーリーは、中突堤
の入口にあるスチールの網でつくった魚「フィッシュダンス」の設計者でもあります。
・このグッゲンハイム美術館はあまりにも有名で、「鉄のタコ」とも呼ばれるチタンでで
きた外壁など、建築家が大きな力を発揮した例だと言われております。ただ、名前か
らもわかりますように、ニューヨークに本部があるグッゲンハイム美術館のコレクシ
ョンが運営を支えています。コンテンツの豊かさもこの美術館を成功に導いた大きな
要因であり、建築デザインとコンテンツがうまくマッチして成功した例といえます。
パリ-グラン・プロジェ
・ グ ッ ゲ ン ハ イ ム 美 術 館 に は 先 行 事 例 が あ っ た 、 と 私 は 考 え て い ま す 。 そ れ は 、 1989年 の
フ ラ ン ス 革 命 200周 年 記 念 を 機 に 、 国 家 的 文 化 改 造 事 業 と し て 1970年 代 の 初 め か ら 着 々
と進められていたパリのいわゆる「グラン・プロジェ」です。
・その一例として、ルーブル美術館のガラスのピラミッド、オルセー美術館の修復型の改
造、ジャン・ヌーベルのアラブ世界研究所など、お馴染みのものが次々と手がけられ
ていきました。
ポンピドゥ・センター
・グラン・プロジェにも実は先行事例がありました。イギリス人の建築家リチャード・ロ
ジャースとイタリア人のレンゾ・ピアノ(関空の設計者)の作品で、当時の大統領の
名 前 を つ け て 1977年 に 開 館 し た 「 ポ ン ピ ド ゥ ・ セ ン タ ー 」 で す 。
・ポンピドゥ・センターは、完成時から賛否の議論が渦巻いたことでも有名です。特に、
まるで石油コンビナートの工場群ではないか、という酷評がありました。しかし、建
物はさておき、今ではパリを代表する先進的な芸術活動の拠点になっています。
・建っている地区はパリの中でも最も古い歴史を持つマレー地区です。ただ、よく誤解さ
れていますが、決してそこにあった建物を潰してポンピドゥ・センターを建設したわ
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けではなく、長く空き地のままであったところに建設したものです。
・パリで最も古い歴史を持つ地区の、街並みに溶け込んでいるとは言いがたいものがあり
ますが、非常にインパクトのあるものです。いまだに酷評するパリっ子も少なくない
ということです。
・こういうことに踏み切った背景には、自他共に認める文化都市であり世界を代表する歴
史 都 市 で あ る パ リ で さ え も 、 1970年 代 当 時 の ニ ュ ー ヨ ー ク な ど に お け る 現 代 美 術 の 台
頭に押されぎみであったことに対する危機感があったと言われています。
・ 最 近 で は 、 シ ラ ク 大 統 領 時 代 の 2006年 に オ ー プ ン し た 「 ケ ・ ブ ラ ン リ ー 美 術 館 」 が あ り
ます。これは、アジア・オセアニアやアフリカの原始美術を展示する美術館で、フラ
ンス人のスター建築家ジャン・ヌーベルがコンペを制し、非常に前衛的な建築がエッ
フェル塔の手前にできました。
・街並みとしてどう評価するかは、非常に難しいところです。建築線が揃っているのがパ
リの街並みの特色ですが、それに対してガラスの壁面をあえて境界に建てるという非
常に挑発的なデザインであると思います。
・ ジ ャ ン ・ ヌ ー ベ ル は 、 1994年 ご ろ に も カ ル チ ェ 財 団 の 本 社 ビ ル で 同 様 の 手 法 の 提 案 を し
ています。これも街並みがずっと連続しているところに、あえてガラスのスクリーン
を持ち込んだものです。
保全・修復型の地区整備
・ビルバオやパリは、現代アートや前衛的な表現を受け入れ、創造的デザインの持つ力を
使うと同時に、保全・修復型の地区整備も着々と進めています。彼らに言わせると、
100年 に 一 度 こ う い う こ と を や る ん だ 、 だ か ら 規 制 を 緩 め て 何 で も あ り で や っ て い る わ
けではない、という言い方をします。事実、ビルバオは旧市街地で保全・修復型のま
ちづくりに取り組んでいますし、パリのマレー地区も厳しい保存政策をとっています。
いわば、車の両輪としてやっているということを申し上げておきたいと思います。
3.神戸市-都市景観
・都市デザインとは、簡単にいうと都市景観をどうするかにつながってくるわけですが、
その都市景観にはさまざまなものがあります。
・広域的な景観として、「街並み景観」-街の中を歩く視線で人々が享受する景観-
と、「眺望景観」―山の上あるいは海からながめる景観―の大きく2つがあります。
・景観が扱う領域は、住宅地におけるプライベートな領域も含みます。住宅の中までと言
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っているわけではないですが、道路などの公的領域と住宅などの私的領域の境界領域
である塀、屋根、庭木なども都市景観であり、個人の勝手気ままな利用にゆだねるだ
けでは決していい街並みにはならないということです。
(1)街並み景観
・ 街 並 み 景 観 を 考 え る 場 合 、 建 築 ・ 都 市 デ ザ イ ン と し て 、 「 街 並 み 建 築 ( Street
Architecture ) 」 「 記 念 碑 建 築 ( Monumental Architecture ) 」 「 街 角 建 築 ( Corner
Architecture) 」 の 3 つ の タ イ プ が あ り ま す 。
・「街並み建築」とは、京都の町屋の並び、奈良の町屋の並びなどがそれにあたります。
神戸の中にも、二、三十年前まで、あるいは震災前までは、例えば、兵庫区の平野な
どにそのような家並みが並んでいました。
・「記念碑建築」とは、神戸を代表するものとして例えば兵庫県の公館などがそれにあた
ります。パリのオペラ座もその代表例であり、シャンゼリゼ通りからオペラ座通りに
入りますと正面にオペラ座が見え、見事なアイストップをつくっています。
・「街角建築」とは、街並み建築と記念碑建築との中間的な性格を持つもので、旧居留地
の海岸ビルなどの近代洋風建築などがそれにあたります。北野にも随分凝ったデザイ
ンの建築物があり、それらを見て楽しむことができるのも街歩きの楽しみの一つです。
街並み建築のあり方
神戸・栄光教会の例
・神戸における街並み建築のあり方の一例として、震災で瓦れきとなってしまった「栄光
教会」があげられます。
・再建にあたり、信者の方々を含めて何度も議論をされて、新しい時代にあった新しい表
現のものをつくることで決まりかけましたが、コンペを行った結果、以前のものを復
元・再生させることに決定しました。
・私自身もこのコンペの審査員として加わりましたが、この決定は英断であったと思いま
す 。 震 災 を 受 け て ほ ぼ 10年 近 く た っ て 完 成 し ま し た が 、 い わ ば 記 憶 の 残 像 と い う も の
が持っている力といいますか、そうしたものがこの再建に大きな力になったのではな
いかと思いますし、出来上がったとき、我々は何となくほっとした思いを持ったもの
です。
・海外ではこのような事例が数多くあります。第2次世界大戦後のワルシャワでは、写真
や図面をもとに、多くの建物を瓦れきから復元させています。このような思いは、我
が国では非常に希薄だと言われてきましたが、栄光協会の例はそうしたものが持って
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いる力というものを、我が国で確認した珍しい例ではないかと思います。
・ウィーンの景観保全論争も街並み建築のあり方の事例としてあげられます。この街のデ
ザイン構造は、周囲の街並みに揃えるあるいは調和させることだったのですが、これ
に対して新たな提案が持ち込まれました。世界遺産になっている有名なステファン寺
院 の す ぐ 近 く に あ る 、 ハ ー ス ハ ウ ス と 呼 ば れ る も の で 、 1980年 代 後 半 の 現 代 建 築 家 ハ
ンス・ホラインの作品です。ハースハウスのデザインについては賛否が分かれたとこ
ろですが、この賛否が分かれた議論について、ウィーンの都市デザイン審査委員会と
いうのがコミットをして実現したということです。
・ そ れ よ り さ ら に 100年 前 、 建 築 家 ア ド ル フ ・ ロ ー ズ に よ る ロ ー ス ハ ウ ス と 呼 ば れ る も の
があります。装飾が施された建物が並ぶ周囲の街並みの中に、装飾を一切排除する形
で建設され、出来た当時は非常に批判を浴びました。
・ 今 見 ま す と 、 彼 は 街 並 み 建 築 ( Street Architecture) と し て ど う あ る べ き か と い う こ
とをきちっと踏まえた上で、新しい提案をしたということがわかります。例えば、軒
の線をそろえていく点などは、きちっと踏襲されています。このことの重要性を学ぶ
べきではないかと私は思います。
(2)眺望景観と都市デザイン
・眺望景観については大きく2つのタイプがあると考えています。
・ 一 つ は 「 パ ノ ラ マ ( 見 晴 ら し ) 型 」 で す 。 ビ ュ ー コ ー ン ( Viewcones) と い い 、 「 視 点
場」と呼ぶ広場・公園などから仰ぎ見る、あるいは見下ろすもので、いわば写真や絵
はがきによくある眺望のことです。
・もう一つは「ビスタ(見通し)型」です。通りをずっと見通していける、ビューコリド
ー ル ( Viewcorridor( 眺 望 路 ) ) と 呼 ば れ る も の で す 。
・パリのパノラマ景観規制は、フュゾー規制と呼ばれています。ある視点場から見える世
界遺産などのモニュメントに対する眺望を遮らないように、建物などの最高高さ・壁
面線を規制するもので、その結果、景観を遮るものがほとんどない状況になっていま
す。
・眺望路の例としては、ニューヨークのロウアー・マンハッタン地区における取り組みが
あげられます。これはバッテリパークシティの開発にあわせて、街中からハドソン川
のウォーターフロントに向かっての視線の抜けを確保していこうとするものです。
・神戸の姉妹都市であるシアトルでも、眺望景観に取り組んでいて、特に眺望路の確保が
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行われています。神戸に比べますと非常に坂のきついところですから、坂道から水面
が見える眺望路を大切にしていこうとしています。
・シアトルでは、都心で眺望路を各通りごとに設定し、加えてビューコリドール・セット
バックと呼ばれる、ウォーターフロントに向かってセットバックし高さも抑えていく、
といった取り組みがなされています。
・神戸の坂道はシアトルよりも緩やかですから、水面が見えるまでにはなりません。しか
し、海へ向かっているとか、海への開放感を持つ、あるいは逆に山への開放感を持つ、
などがこれから非常に大きなテーマになっていくだろうと思っています。
・もう一つは、超高層ビルが林立する背景に山が見える、香港の眺望景観です。超高層ビ
ルの似合う都市ですが、山を背景としたパノラマ景観を何とか保全できないかと考え、
ある視点場から街を見たとき、山の稜線を切らないようにビルの高さを稜線の大体8
割ぐらいまでにしましょう、といった取り組みです。背景に山がない超高層ビル群だ
けでは香港の景観は語れないので、調和を見出そうという動きです。
神戸における眺望景観
・現在、神戸においても、都心ウォーターフロントと眺望景観の議論が、神戸市都市景観
審議会の中で行われています。
・昨年、ウォーターフロントにおいて都市景観形成地域が指定され、例えば屋外広告物を
掲げないようにするなどの地域景観形成基準が設定されました。
・また、眺望点や神戸版眺望路といった具体的な景観政策のあり方についても、議論が行
われているところです。
・例えば、夜景は神戸の誇るべき眺望と言えますし、新しい視点場を提供することになっ
たポートアイランド西側のポーアイしおさい公園などもあります。
・また、旧居留地の浪速花町筋、明石町筋、京町筋などにおいても、海の方を見たときに
どのような景観を形成していくべきかを考える必要があります。現在は高速道路が海
への視界を遮っていますが、これも未来永劫ずっとあるわけではないでしょうから、
街の景観を育てていくことによって、神戸版眺望路として今後変わっていってもいい
のではないでしょうか。
・振り返ると山が見えるのも神戸の魅力の一つです。神戸は海と山の両方に恵まれていま
すが、広告物がそれを阻害していたり、あるいは電線が阻害しているという例がたく
さんあります。そうしたこともやはりこれから取り組むべき課題であろうと思います。
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4.都市デザインの5つのポイント
・都市デザインには、いろいろな課題や取り組み方があります。しかし、強いていうなら
ば5つのポイントがあるのではないかと私は考えています。
(1)ハイブリッドな街の魅力
・一つは、ハイブリッドな街の魅力を引き出していくことです。つまり、「多様性」と
「共生」が重要であり、街を全体的に統一してしまう、またはある方針で全部街をや
り変えてしまうのではなく、いろいろなものが混ざり合った街の魅力を大切にするこ
とで、街それぞれの魅力を引き出していくことです。
(2)地域景観資源の活用
・2番目に、街それぞれの魅力を引き出すため、地域景観資源を活用していくことです。
・地域景観資源の一つとして、身近な自然である緑と水があります。神戸のような大都市
で、水と緑が身近にあるのは珍しいことです。六甲山や神戸港だけではなく、街中に
息づいている小さな自然も大切にしたいと思います。
・また、数々の歴史的な遺産についても、文化財としての観点だけではなく、地域の資源
として考えていくことも必要です。ウォーターフロントにおいても、例えば神戸税関
や保存問題が少し議論になりかかっている旧生糸検査所、また古くからの倉庫などが
あります。これらを全部やり変えしまうということは決してないだろうと思いますが、
このような資源を活かしていくことが必要です。
(3)楽しく歩ける町
・3番目は、何よりも楽しく歩ける街を実現するということです。車で通り過ぎるだけで
は印象深い街にはなりません。テキサスのダラスは、超高層ビルが林立していて遠く
から見ても車で通ってもすごい街ですが、歩こうとは決して思わない街です。楽しく
歩ける街というのは、歩行者の視点を大切にした、すなわちヒューマンスケールを大
切にした街ということになります。
(4)自然(景観)を体感できる街
・4番目は、2番目ともかかわりますが、自然環境を体感できる街です。何よりも光と風
が感じられる街、これから風薫る季節を迎えようとしておりますが、そのような季節
の変化が本当に感じられるような街が素晴らしい街だと思います。
(5)関係のデザイン
・5番目には、関係のデザインです。先ほど個人の住宅の領域と道路の領域について、そ
-9-
の中間の境界領域が大事だと言いましたけれど、最も大事なのはその双方を関係づけ
る デ ザ イ ン で す 。 も っ と 直 接 的 な 言 い 方 を し ま す と 「 Open to Public」 、 す な わ ち そ
れぞれの住宅は街と関係を持つような形で建っていただきたいということです。
おわりに
・ 「 空 間 ( Space) か ら 場 所 ( Place) へ 」 と 言 わ れ て い ま す が 、 つ ま り 都 市 の デ ザ イ ン と
は目に映るものだけを対象にしているのではない、ということです。人々の生活や活
動、あるいは昼と夜や季節などの時間、これらが感じられる“場所の持っている力”
と、さらには歴史を含めた“場所の記憶”といった資源を見出して、磨いていくこと
だと思います。
・都市デザインとは、そういった意味で、美容術でも化粧術でもなく、市民意識や市民文
化が街のマナーとして反映され定着していくと同時に、眺望のようなまちの景観構造
の骨格や方針をつくっていく、その両方の役割が期待されているのではないかと思い
ます。
-10-
パネルディスカッション
○コーディネーター
加藤
恵正
兵庫県立大学経済学部 教授
○パネリスト
安田
丑作
氏(神戸大学 名誉教授【当時:神戸大学大学院工学研究科 教授】)
車
和久
氏(旧居留地連絡協議会 都心(まち)づくり委員会 委員長
南株式会社 取締役営業部長)
土井
勉
南部真知子
氏(神戸国際大学経済学部 教授)
氏(神戸商工会議所 観光集客委員会 副委員長
株式会社神戸クルーザー・株式会社コンチェルト 代表取締役社長)
松下
麻理
氏(神戸メリケンパークオリエンタルホテル 広報室 室長)
【神戸のまちと都心ウォーターフロント】
●加藤恵正氏
・安田先生の基調講演では、都市の変わる部分と変わらぬ部分の組み合わせと、調和をど
のようにするのか、といった点が大変印象的でした。最後にお話いただいた「都市デ
ザインの5つのポイント」-「ハイブリッドな街」「地域景観資源」「歩ける街」
「 自 然 」 「 関 係 の デ ザ イ ン 」 を キ ー ワ ー ド に し て 、 こ れ か ら 90分 、 議 論 し て い き た い
と思います。議論をわかりやすくするため、「都心」と「ウォーターフロント」に焦
点を当てることとします。
・「都心」は、経済的な観点で言うと、いわば都市経済のエンジンであるオフィスが様々
な企業の中枢管理業務を担ってきたエリアですが、阪神・淡路大震災の後、この都心
も大きく変わりました。また、経済のグローバル化、人口減少といった情勢の中で、
都心のあり方は根本的に変わりつつあると認識しています。そういった意味では、こ
れから神戸の都心をどのように変えていくのかは、挑戦的な課題であると考えていま
す。
・ 「 ウ ォ ー タ ー フ ロ ン ト 」 に 関 し て は 、 1970年 代 初 頭 の 世 界 的 な コ ン テ ナ 革 命 に よ り 、 港
湾 の あ り 方 が 大 き く 変 わ っ て き ま し た 。 こ の 30年 、 40年 の 間 に 、 世 界 の 港 湾 都 市 は そ
の様相を大きく変えつつあり、現在でも変わり続けています。
-11-
・神戸のウォーターフロントも変貌を遂げつつありますが、世界のウォーターフロントの
変化に比べれば、まだまだその余地は残されていると感じます。そういった意味でも、
21世 紀 の 神 戸 に お い て 、 ウ ォ ー タ ー フ ロ ン ト の 変 化 は ま す ま す 加 速 し て い く 可 能 性 が
あります。
・神戸は、「都心」と「ウォーターフロント」といったこれからの大きな変化が予見され
る、いわば都市の重要な核の部分が合体する形で存在している、世界でも珍しい都市
です。これから大きく変わろうとしている「都心」そして「ウォーターフロント」に
ついて、これから皆様のお話を伺っていきたいと思います。
●土井
勉氏
・まちづくり、公共交通、都市のにぎわいなどを主な研究テーマとしており、実務にも携
わっています。持続可能なまちをいかにつくっていくかという点で考えますと、都市
の魅力は、その多様性にあると思います。また、歩いて街を楽しんでもらうという点
は、安田先生の講演と非常に重なるのかなと思っています。
・私の大学は六甲アイランドにあり、大きなコンテナ船がタグボートに曳かれて、音もな
く通り過ぎていくのが研究室の窓から見え、すごく感動します。このような風景が、
誰もが近づくことができ、かつ都心に本当に近いところで見ることができるのは、日
本の都市の中でも珍しく、こういった特徴を何とか活かしていきたいと思っています。
・大阪の都心、キタやミナミでは、これから百貨店が随分増えて、トータルすると百貨店
の 床 面 積 が 1.5倍 ぐ ら い に な っ て い く と 想 定 さ れ ま す 。 岡 山 ぐ ら い ま で を 商 圏 の エ リ ア
として考えないとこれだけの床面積は成立しない、とある鉄道会社の方から聞きまし
た。こうした広域的な状況を考えると、神戸の都心の生き残る道がどこにあるのかを、
真剣に考えなければならない時期に来ているのではないかと考えられます。ただし、
単に危機があるということではなく、神戸のまちが持っている特徴、まちの持ち味な
どを最大限活かしたまちづくりに取り組むチャンスではないかと思います。
・それでは、神戸のまちの魅力とは一体何かということですが、都心があり、山があり、
海があり、それらが歩いて行ける距離にあることが、神戸のまちの特徴です。百貨店
は基本的には室内ですから、百貨店型のキタに対抗するためには、まちを歩いて楽し
んでもらうことにより、このような特徴をより強めることで、神戸が独自の魅力を発
揮することが重要ではないかと思います。
・今は、百貨店型の都市のように「あれもこれもまちに要るよ」といったことではなく、
-12-
「あれ」か「これ」かを選ばなければならない時代になりつつあると思います。「山、
都心、海が一つのまちにあり、歩いて回れる」、これが神戸の最大の魅力と思ってい
ます。
・「持続可能なまち」といった点も、これからは考えていかなければなりません。品格、
すなわち「エコノミーとエコロジーの不都合でない関係」です。
・ J .ジ ェ イ コ ブ ズ と い う 、 一 昨 年 お 亡 く な り に な ら れ た 女 性 の ジ ャ ー ナ リ ス ト の 方 が 、
都市の魅力について、次の4つを挙げています。①直線ではない街路・小さなブロッ
クが集まっている街区(大きな街路がドーンと直線でつながっているものではない)。
②人口密度が高いこと。③用途の混在(住んでいる人、商業をしている人などが一緒
に集まって住むほうがいい)。④古い建物を活かすこと。
・神戸の中で4つの条件が当てはまる魅力あるまちはどこか、大学の授業でいつも学生に
探させています。学生たちは、いろいろ地図を見ながら、いつも旧居留地、南京町、
元町と答えます。まさに、ジェイコブズが述べた都市の魅力が神戸のまちの構造の中
にあります。こうした魅力を大事にしなければならないと思います。
・ J .ジ ェ イ コ ブ ズ は 、 ゆ っ く り と 歩 い て 、 人 々 が ま ち の 中 で 話 を し な が ら ま ち を 楽 し む
ことが魅力あるまちだと考えています。
・これから、まちや都心を魅力的なものにするためには、環境問題が追い風の一つである
と思います。環境を考えるとき、私達は加害者でも被害者でもあります。便利な生活
をすればするほどCO 2 がたくさん出ます。ですから、私達自身が便利さを控えること
も 必 要 で す 。 例 え ば 、 冷 暖 房 を 1 ℃ 緩 め る と 、 C O 2 の 排 出 を 年 間 38キ ロ グ ラ ム ぐ ら い
抑えられます。また、コープこうべなどが一生懸命取り組んでいるレジ袋の削減によ
り 、 C O 2 を 全 国 平 均 で 年 間 53キ ロ グ ラ ム ぐ ら い 減 ら す こ と が で き ま す 。 し か し な が ら 、
1 日 に た っ た 10分 間 だ け 車 の 使 用 を 控 え れ ば 、 な ん と 約 588キ ロ グ ラ ム も の 大 量 の C O
2
を減らすことができるのです!自動車に乗ってはいけないのではなく、適切な自動車
利用をすることがこれからのまちには非常に大事です。
・まちの主役は誰かと考えると、自動車がぶんぶん走っていくようなまちではなく、人々
がゆっくり歩き、お互いに楽しめるようなまちをつくっていくことが、望まれていま
す。今までは、便利さ、快適さ、効率の良さなどが重視される時代が続いてきました
が、それらに加えて、環境、人口の変化、高齢社会に対応することなどが必要な時代
に流れが変わってきたのではないかと思います。
-13-
・一般の人々の環境に対する考え方は保守的と私達専門家は思っていましたが、専門家だ
けが環境を大事に考えているわけではないことが、今年の1月7日に掲載された朝日
新 聞 の 世 論 調 査 結 果 で わ か り ま し た 。 昨 年 の 11月 に 日 本 全 国 を 対 象 と し て 実 施 さ れ た
この調査では、自分で車を運転する人に対し、マイカーでの都心乗り入れを少しは控
え ら れ ま す か と い う 質 問 に つ い て 、 76% の 人 が 自 動 車 の 都 心 乗 り 入 れ 規 制 が あ っ て も
我慢できると回答しています。環境やまちのにぎわいを考えると、8割弱の人たちが
少しぐらい車を控えてもいいと考える時代になってきているということです。実際に
そう行動されるかどうかは別ですが、そういう意識を持ってきたということです。
・ こ う い っ た こ と を ベ ー ス に 、 昨 年 、 神 戸 市 で 「 KOBEST」 に 取 り 組 み ま し た 。 「 EST」 は 、
「 Environmentally Sustainable Transport( 環 境 的 に 持 続 可 能 な 交 通 シ ス テ ム ) 」 の
頭 文 字 を と っ た も の で あ り 、 「 神 戸 を 最 高 な ま ち に し て い こ う ( KOBE+BEST) 」 と い う
意味もあります。
・神戸のまちで、歩いてまちを楽しむために不足している点が幾つかあります。例えば、
山側に行くのに登り坂はしんどいことや、回遊して楽しむところが少しずつ離れてい
ることなどです。そこで、皆さんがまちを歩くことを補うため、「水平方向のエレベ
ーター」として、北野工房や旧居留地などを循環ルートで結ぶ「ちょいのりバス」の
実験を実施しました。
・また、神戸のまちにすばらしいところはたくさんありますが、まだまだ知られていない
ところもたくさんあります。そのため、まち歩きツアーを実施することになり、神戸
市民、私の大学の学生、神戸市職員の人も含めて、多くのツアーを組みました。この
ツアーと「ちょいのりバス」の組み合わせは、評判が非常に良かったです。
・ も う 一 つ 評 判 が 良 か っ た の は 、 「 KOBEST」 と ロ ゴ が 書 い て あ る エ コ バ ッ グ で す 。 500円
で販売しましたが、あっという間になくなりました。おしゃれなものをつくると、神
戸市民の反応は非常に良いようです。
・最後になりますが、まちづくりの目的は、まちを魅力的にしていくことです。その手段
として、公共交通や歩いてもらうという仕組みが大事になってくると思います。
・それを実現するためには、行政だけでも、企業だけでも無理であり、様々な人達や地元
の皆様の協力が不可欠です。
・他の誰かが率先して変っているということではなくて、“私がまず変われば、神戸のま
ち は も っ と 魅 力 的 に な る ” と い う の が 、 KOBESTの メ ッ セ ー ジ と し て 皆 さ ん に お 伝 え し
-14-
たいことです。
●加藤恵正氏
・環境的な観点も含めて、公共交通の重要性、「歩けるまち」というのが重要なキーワー
ドだというお話でした。
●南部真知子氏
・私は観光に携わっていますので、観光の点からウォーターフロントの話をしたいと思い
ま す 。 18年 間 、 鳥 取 で 育 ち 、 大 学 入 学 と 同 時 に 神 戸 の ほ う に 参 り ま し た 。 大 学 は 大 阪
ですが、神戸は大変魅力的なまちなので気に入り、それからずっと東灘区に住んでい
ます。
・ 震 災 が な け れ ば 、 私 は 船 の 事 業 に 関 わ る こ と は あ り ま せ ん で し た 。 1997年 、 海 の 復 興 を
目指して、「コンチェルト」を就航させてからの船とのつき合いになります。
・毎朝車で出勤をしていますが、山の高いところにある自宅から車でずっと降りてきて海
が見えるところに出ますと、うわっ!と心が叫ぶのを感じます。毎朝、季節・光の具
合・周りの景色によって、海はいろいろな顔を見せてくれるので、いつも新鮮に、う
わっ!と感激します。私だけではなく、皆様も、海が見えるところに出られたら、思
わず、うわっ!と心が叫ぶのを感じることがあるのではないでしょうか。人に海を恋
う気持ちがあることが、ウォーターフロントの大変大きな強みではないかと思います。
・反面、夜に山の方に帰るときは、まさに布団の中に潜り込むような感じがあります。先
ほど安田先生の講演で「振り返ったら山がある」とありましたように、海と山が近い
ところにあって、体の五感として海と山を感じることができるのが、神戸市民のすご
い強みで、精神のバランスを保つことにも大いに関係しているのではないかと思いま
す。海ばかりでなく、山が視界に入ってくることで、気持ちがゆったりする部分があ
るのだろうと思います。
・私は大阪に行くと、山がないため本当に迷子になります。坂とともに川が流れていない
状況が方向感覚を麻痺させてしまうこともさることながら、山が見えないことにすご
く不安感があります。ですから、まちも含め山と海はすばらしいファクターだと、先
ほどの安田先生の講演を伺いながら改めて思った次第です。
・船については、私どもはお客様の命をお預かりしていますので、大変なプレッシャーで
すし、責任感でもあります。また、昨今の原油の高騰とそれに派生した食材の原材料
価格の高騰など、本当に様々な負荷がかかってきます。
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・しかし、「船」「海」はやはり大変魅力的な観光の素材です。事務所で仕事をしていま
すと、待合室のお客様のざわめき、華やぎが聞こえてきますし、「これから船に乗る
んだ!」と高揚したお気持ちが伝わってくると、もう何とも幸せなことだと感じます。
また、船から降りてこられるお客様が満面の笑顔で、ありがとう!と言って降りてこ
られるときの幸せは、本当にいろいろな負荷を凌駕するものと思っています。
・このような中で、ウォーターフロントのまっただ中で観光の事業に携わりながら、いろ
いろ思うことがありますので、そんなことを今日お話できたらと思っています。
●加藤恵正氏
・精神のバランスといったところまでお話いただきました。海と山が近い神戸について、
ぜひとも次のところで、観光の立場からの様々な思いをお話しいただければと思いま
す。
●車
和久氏
・建築基準法、景観条例、地区計画などは最低限の規制だと考えていますので、旧居留地
内で新しく建てられるビルやマンション、店舗、また増改築される建物に対して、ま
ちづくり委員会では、旧居留地らしい建物を造って欲しいとお願いしています。
・「居留地らしい」とはどういったことかと申しますと、震災後、協議会において将来ど
のようなまちにしていくのかを話し合った結果、4つのキーワードを考えました。
「にぎわい」「伝統」「風格」「もてなし」です。
・「にぎわい」とは、各ビルの1階・2階はできるだけ商業店舗にして、まちをにぎやか
にしていただきたいということです。
・「伝統」とは、このまちがつくってきた街並みをできるだけ守っていただきたいという
ことです。
・「風格」とは、近代建築物が石造りですので、重厚な雰囲気として皆様の目に映るよう
に、建物の1・2階の壁面は石を使っていただきたいということです。
・「もてなし」とは、例えば、ビルの1階部分にポルティコなどの通路を設けたり、ビル
のエントランスをバリアフリーにすることなどです。昔は旧居留地では浸水の危険性
がありましたので、ビルのエントランスには階段状の段差を設けていました。
・以上のようなことでもって、旧居留地に来られる皆様にゆっくりと、そして安心して歩
いていただけるまちになるよう、新しく建物をつくられる皆様にお願いしているとこ
ろです。また、単に昔の古い形をそのまま引き継いでほしいということではなく、古
-16-
い中に新しいものをどんどんつけ加えていただきながら、一方でまちにとって違和感
のない建物であることを求めています。
・ 先 ほ ど か ら 「 海 」 の お 話 が 出 て い ま す が 、 旧 居 留 地 か ら 南 側 へ 80メ ー ト ル か ら 100メ ー
トルぐらい行けば、国道をはさんですぐ海があります。ただ、神戸の方は恐らくご存
じですが、観光客で旧居留地にいらっしゃる方はすぐ近くに海があることをほとんど
ご存じありません。ですから、何とか海がすぐ近くにあることが認識できるようにな
らないかと考え、昨年、大丸東北角の時計台の時報を汽笛に変えました。少しでも皆
様が「近くに海があるんだな」と感じてもらえればと思っています。
・また、これからウォーターフロントのことを考えていく場合に、旧居留地のまちから、
例えば明石町筋や、浪速町筋などから直接海が見えるようなウォーターフロントにぜ
ひともしていただくよう、神戸市や兵庫県に提案していきたいと思っております。
●加藤恵正氏
・居留地をずっと見ておられるお立場からのコメントをいただきました。また後ほどご発
言いただきたいと思います。
●松下麻理氏
・私が勤めるホテルは、三方を海に囲まれた、まさにウォーターフロントの中でも最先端
の中突堤先端に位置しており、ほとんど毎日海に囲まれて過ごしています。お客様に
は、海を見ながらゆったりとプライベートな時間を過ごしたいと思っていらっしゃる
方 が 非 常 に 多 く 、 宿 泊 さ れ る 方 で も 52% が 近 畿 圏 内 か ら と い っ た 不 思 議 な 実 績 が 毎 年
出ております。これは、もしかすると日帰りでも帰られるところからいらっしゃって
いるにもかかわらず、あえて「水辺でゆっくりしたい」といったお気持ちの方が多い
のではと思います。いかに水辺が人の心をひきつけるのか、疲れたときに心が癒され
る水の存在がどれだけ大事なのかということを、日々感じながら仕事をしています。
・私がしている仕事は、広報という、マスコミの方などホテルの外の方にホテルのことを
知っていただくことです。東京の出版社などにも2カ月に1回ぐらいキャラバンでホ
テルのご紹介に行くことがありますが、いきなり「うちのホテルに来てください」と
言ってもなかなか難しくて、まず「神戸に来てください。神戸をぜひ取材してくださ
い」といったことからお話を始めます。
・神戸のまちは、特に女性雑誌を編集される方にとって、非常に魅力的とよく言われます。
もちろん本が売れなくて困ったときの京都頼みと言われるぐらい、特集として組まれ
-17-
るのは京都が一番多いですが、神戸の特集でも非常に本が売れると言われます。です
から、できるだけ新しく、あまり人に知られていない情報についてよく聞かれます。
特に女性誌なら、食べ物・ファッション・雑貨などの新しい店や、今流行っているも
のについてよく聞かれます。
・ある雑誌の東京の編集者の方々が、昨年神戸に取材に来られたときのテーマは、「神戸
の雑貨屋さんめぐり」でした。最近、乙仲通り、栄町のあたりにたくさん雑貨屋さん
ができています。ここの雑貨屋さんは、ビルの小さな一角の一部屋の狭いところに、
1店舗ずつが自然発生的に集まったような所が多いのですが、それぞれのお店の品ぞ
ろえが本当におもしろく、例えば、古いアンティークなボタンだけを扱っているお店
や、フランス産の園芸素材を中心に扱っているお店など、気に入れば何回も通ってし
まうようなお店がたくさんあります。
・取材を終えた編集者の方々に感想を聞くと「すごくおもしろかった。東京は何でもある
けど、探すのにとても時間がかかり、すべてのものが画一化されている。今日回った
神戸の店は、狭いエリアにたくさんのお店が集まっていて回りやすいし、それぞれの
お店のオーナーさんのこだわりや、大事にしていることがすごくよくわかった。例え
ば、今が春であれば、夏になったらどんな商品を仕入れているのかを、また見に来た
くなるような店が多かった」と言っていました。
・ 神 戸 は 、 開 港 140年 と い う 古 い 歴 史 を 誇 る 港 町 な ら で は の 気 質 を 持 っ た ま ち で あ り 、 外
部から入ってくるものをうまく取り入れ、自分たちなりにアレンジして、すてきなも
のをつくってきたまちだと思います。皆様もご存じのとおり、神戸が発祥のものは数
限りなくあります。そう考えると、神戸とは巨大なセレクトショップではないかとい
う気がします。神戸の人のセンスがいいということは、神戸の人が選んだものや、神
戸の人のライフスタイル自体が良いということだと思います。つまり、私は、港町神
戸の財産は人であって、こうべっ子のライフスタイルそのものではないかと思います。
これらをいかにうまく発信していくかが、これからのウォーターフロント、ひいては
神戸のまち自体が活性化していく一つの大きなキーポイントになるのではないかと思
っています。
●加藤恵正氏
・何か最後の結論をお話いただいたようで…。乙仲通りなども、私も学生を連れて時々歩
きますが、なかなか魅力的ですね。
-18-
●安田丑作氏
・皆さんのお話で共通していることは、都市が大きく変わるということは、今までにない
ものをどんどんつくって変えていくことだけではなく、むしろこれからの時代は、今
持っているものが、実は気がついてないけれども非常に大切な財産だということであ
ると思います。これらをみんなで共有できるようにすることが、まずはスタートライ
ンになるだろうと思います。
・例えば、今日のテーマである「都心ウォーターフロント」ですが、神戸のように「都心
ウォーターフロント」と言えるような恵まれた条件を持っている都市はそれほど多く
はないけれども、神戸市民にはごく当たり前になってしまっていて、そのことにあま
り気がついていないのではないか、という思いを持っています。
・首都圏は文字どおり東京一極集中で日本の中心ですが、関西は「京都・大阪・神戸」と
いう言い方に表されるように、それぞれの個性が相互に磨き合ってきた地域です。し
かしながら、この3つの都市はどうもそれほど差がなくなってきているかもしれない、
とかねがね思っています。
・先程、セレクトショップのお話がありましたが、例えば、ある人が大阪・神戸・京都の
それぞれで何か買い物をしたときに、その話を聞いた人の反応が随分違うという話を
聞いたことがあります。神戸の場合は「きっといいものを探し当てたんでしょうね」、
京都の場合は「どんな日本的なものなのでしょうかね」、大阪の場合は「きっと安か
ったんでしょう」という反応であり、そういった反応で比較された方がいました。
・これからの都市の向かうところは、いかに自分のまちのバリューアップを図っていくか
ということであり、「安かったでしょうね」と言われるような戦略は絶対にとっては
いけないと思います。しかし、皆様もよくご承知のように、大阪には伝統芸能などい
いものが随分ありますが、そのことがあらわれてこないのは、都市の戦略として間違
ってきたのではないかというような気がしています。神戸はその轍を踏まないように
していきたいというのが思いです。
●加藤恵正氏
・安田先生のお話は、全体を見渡していただいたキーワードとして大変貴重だと思います。
私自身は産業論に取り組んでいますが、産業のイノベーションを図る上でも、今持っ
ているものをどのようにバリューアップしていくのか、すなわち、そこの固有資源を
どのようにうまく使いこなしていくのか、あるいは別のものと組み合わせながら、ど
-19-
うバリューアップしていくのか、といったことに尽きるとまで言われているわけです
が、都市もやはり同じだと安田先生はコメントされたと思います。
・南部さんは、先ほど、海から見た神戸というものをずっと考えていらっしゃるというこ
とで、思うところもありますというお話でしたが、そのあたりを含めて何かコメント
がありましたらお願いします。
●南部真知子氏
・このシンポジウムの会場である神戸市立博物館は、いつも本当にすばらしい展示が行わ
れています。インカ帝国の展示や、大英博物館展、つい最近では浮世絵展などが開か
れ、大変多くのお客様をお迎えになったと聞いております。
・バリューアップの意味でいうならば、このすばらしい神戸市立博物館へのお客様を、
我々が持っているいろいろな観光資源と連携、連結できないだろうかといつも思って
います。ただ、やはりバランスの問題があるのだろうなとも感じています。海だけで
はいけないし、海と連携すれば、やはり山やまちとも連携しないといけないとなって
くると、結局はわい雑になってくるので、なかなか難しいのかなと思います。しかし
ながら、ぶつ切れになってしまっている集客をうまく回遊させる仕組みがないともっ
たいない、といつも私は思っています。
●加藤恵正氏
・これは、ぜひ土井先生にお伺いしたいと思います。鉄道会社ご勤務の経験も含めて、ぶ
つ切りになっている集客を、いかに回遊していただくかという観点から、何かコメン
トをいただければと思います。
●土井
勉氏
・ 私 は 、 阪 急 電 鉄 に 13年 間 勤 務 し て い ま し た と き も 、 鉄 道 の こ と だ け で は な く て 、 集 客 を
どうしたらいいのかと随分考えました。今のお話は、神戸にはたくさんいろいろなす
ばらしいものがあるけれども、その間の結びつきがあまりないということだと思いま
す。おそらく、これまではそういうことが必要でなかったので、なかなかつながらな
かったのだと思います。
・もう一つは、先ほど「ちょいのりバス」の話をしましたが、神戸に来られる方は、ある
いは神戸市民の方も含めて、これまでのまちの歩き方・楽しみ方とは、目的地に行く
ことだったと思います。ただ、先ほどのお話のように、もっといろいろな楽しみ方が
あることに気づいてもらうことが少なかったことと、「それどうやって行ったらいい
-20-
の」という情報と手段があまりなかったと思います。
・百貨店へ行くと、無料で垂直方向の移動をサポートする乗り物であるエレベーターがあ
って、行きたい階にシュッと行けます。そういったものをまちの中に水平方向に張り
めぐらせたものが「水平方向のエレベーター」であり、実はこれが公共交通です。こ
ういったものを、阪急の小林一三は昔考えたわけです。
・電車は、人々を水平方向に運ぶものです。人々が交通を行うというのは、ある目的を持
って動くものなので、それをどのように快適に楽しくサポートしていくかがすごく大
事だと思います。そういったことで、去年の秋に「ちょいのりバス」の運行実験を行
ったところ、結構好評で、たくさんの方に乗っていただきました。
・ただ、実験期間が短かったことと、お金が少なかったこともあって普通の市バスにラッ
ピングしたのですが、これがもう少し今はやりの、例えば東京の武蔵野のムーバスと
い う 14人 乗 り の チ ョ ロ Q み た い で 低 床 式 の 乗 り や す い 車 両 に す れ ば 、 人 々 の 見 方 も 随
分変わるのかな、と思います。
・北野のあたりに行くと、道路が狭くなって、なかなか大型のバスが入れないですが、小
型のタクシー型にすることによって、人々が動きやすくなります。
・また、そのルートをはっきりさせることによって、そのルートをベースにいろいろなバ
リエーションを組み立てることができるといったような、幾つかの装置・仕組みとい
うのが当然要るような時代になってきたのかなと思います。
・それらが、結果的には、歩いて楽しむことをサポートする装置になっていけばよいと思
っており、そういったことをさらにさまざまな形で実験できれば、そしてゴールを目
指していければいいなと考えています。
●加藤恵正氏
・「ちょいのりバス」というのは、走らせたら儲かりそうですか。
●土井
勉氏
・バス単体で儲ける考え方もありますが、先ほどの百貨店では、垂直方向のエレベーター
があることによって売り上げが上がるため、エレベーターは無料になっています。で
す か ら 、 例 え ば 1 回 100円 で も 地 域 全 体 で そ う い う も の を 支 え る 仕 組 み を つ く れ ば 、 儲
かる、儲からないではなく、運行を続けることは可能になるかもしれません。
●加藤恵正氏
・一つ一つの単体の魅力はもちろんありますが、ある場合には若干の負担もしながら、い
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ろいろな人に見てもらうことで、全体として「儲かる」という構図をつくることがで
きると思います。また、そうやって知ってもらうことも、地域のバリューアップにつ
ながるのかもしれません。
・車さん、今、旧居留地を中心に、違和感のない建物、デザインについてお話がありまし
たが、旧居留地という、もともといいものを持っていらっしゃるところを、さらにバ
リューアップするようなことについて、何か今お考えのことがありますでしょうか。
●車
和久氏
・旧居留地としては、現在、大丸東側の「明石町筋」の歩道を広くして、車線を1車線に
することを考えており、2年ぐらい前から神戸市と議論を重ねています。もともと旧
居留地は業務地ですから、車がたくさん通っていて車でちょっと乗りつけるようなと
ころでないとまちは発展していかない、と言われる方もいます。しかし、現在、旧居
留 地 連 絡 協 議 会 会 員 の 恐 ら く 90% く ら い の 人 は 、 あ の 道 が 駐 車 違 反 も な く ス ッ と 流 れ
る道であって、また歩道が広くて皆さんが歩きやすいまちにすれば、居留地全体の価
値がもっと上がるという結論に達しました。
・この道路が出来上がるのはおそらく2年ぐらい先になると思うので、果たして成功か問
題があるかというのは、ちょっと先にならないとわかりませんが、旧居留地としては
日本一の道路にしたいと思っています。
●加藤恵正氏
・松下さん、「巨大なセレクトショップ」というのは非常に衝撃的な言葉ですが、神戸を
セレクトショップに見立てるとすれば、そのマーケット、顧客といったことも松下さ
んの頭の中では想定されていると思いますが、そのあたりを含めて少しお話しいただ
けませんでしょうか。
●松下麻理氏
・神戸の魅力的な商品というのは、衣食住に絡むものが非常に多く、その衣食住に絡むも
のに興味を持っているのは断然女性が多いと思います。自分の価値観をしっかり持っ
ていて、センスのいい生活にあこがれの強い女性がメインターゲットになるのではな
いかと思います。
●加藤恵正氏
・お仕事の上でそういうのを感じられるところはありますか。
●松下麻理氏
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・ございます。特に、女性のお一人様利用の方、母娘でお泊まりになってゆっくり神戸を
楽しまれる方、京都に住んでいるけれども1カ月に1回息抜きに神戸で買い物をする
のが楽しみという女性の方などがたくさんいらっしゃいます。もっとたくさんの人に
神戸を楽しんでいただくためには、もう少し上手にPRをしていかなければと思いま
す。
・特に、神戸の人は情報発信が少し下手だなと思っています。なぜかというと、神戸の人
は神戸のことが大好きで、「神戸、最高!」と思っていますが、「じゃ、何がいい
の?」と質問しますと、「だって、神戸、最高やん」みたいに、うまく言えないけれ
ども神戸いいやん!といった感じになってしまうからです。「じゃ、何が、どういう
ふうに、何がおいしいの、どうなの?」と聞くと、「全部!」みたいな感じになって
し ま い ま す 。 も っ と も っ と 具 体 的 に 、 今 の 旬 の 神 戸 の 情 報 ・・・神 戸 の 人 た ち が 食 べ て い
るもの、身につけているもの、買っているものなどを上手に発信していけないか、と
いつも思います。
●加藤恵正氏
・なるほど。このあたりは、南部さんにも一言コメントをいただければ。
●南部真知子氏
・私もその通りだと思います。我々は当たり前だと思っている、まち、山、海などの貴重
な財産を再評価して、発信することだと思います。
・それとあわせて、先ほどのバリューアップにもかかわってきますが、観光の観点から申
し ま す と 、 日 本 に 来 ら れ る 外 国 の お 客 様 が 、 2007年 ( 暦 年 ) の 1 年 間 で 史 上 最 高 の 834
万 人 と な り ま し た 。 こ れ は 私 の 記 憶 が 正 し け れ ば 、 2006年 と 比 べ て 約 14% と 大 幅 な 増
加 で あ り 、 こ の ペ ー ス で 増 え て い く と 、 1,000万 人 の 目 標 は 結 構 難 し く な い の で は と 思
います。
・そんな中で、神戸にもいろいろな国の方が来られます。神戸だけではなく、兵庫県全体
では、欧米からの方も増えてきていますが、中国、台湾、タイなど、アジアからの方
が多いです。
・このウォーターフロントのシンポジウムに出るということもあり、いろいろな情報を自
分自身で体感してみようと思い、昨日、舞子や須磨に行ってみました。舞子駅で降り、
橋の科学館、橋の上にあります海のプロムナード、移情閣をまわり、アジュール舞子
からマリンピアまで歩きました。エレベーターに乗りますと、中国語ばかりが聞こえ
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てくるくらい、各施設で中国の方が非常に多くいらっしゃいました。私達は、やはり
アジアや中国の方をターゲットにして観光を考えていかなければならないと、ひしひ
しと感じました。
・ 「 日 本 に 来 ら れ る 台 湾 ・ 中 国 の 方 々 が 好 ま れ る 場 所 」 と し て 、 1 位 か ら 20位 ま で の デ ー
タが観光経済新聞に出ましたが、神戸は入っていませんでした。1位は東京の浅草、
2位が大阪であり、共通していえるのは、わい雑感のあるところです。このデータか
らは、多少ごちゃごちゃしていて、エネルギーがもらえそうな感じのところが好まれ
ているように思います。
・神戸は、大変素敵なまちで、おしゃれで、いわゆるご贔屓にしたいお店が本当にたくさ
んあるところですが、でも、何かわい雑感があって、パワーみたいなものを感じさせ
る部分も必要だろうと思います。神戸の中で、そのようなところというと、高架下の
商店街はどうだろうと思います。今まで高架下の商店街が観光の素材としてPRされ
たことはあまりないと思いますが、そういったところをターゲットとして、一つの素
材として考えるということも面白いのかなと思っています。
●加藤恵正氏
・土井先生は、「歩けるまち」「歩いて楽しいまち」を主張されているわけですが、今の
南部さんのお話も含めて、どんなまちが歩いて楽しいまちなのか、何かございました
らお願いします。
●土井
勉氏
・今までのお話を伺っていますと、日本の中での神戸の役割、といった広い視点で皆さん
がお話しをされていましたが、それらと関連づけた話では、「第3の場所」といった
ことをアメリカの社会学者オルデンバーグが言っています。それをうまく商品化した
のがスターバックスコーヒーで、ハワード・シュルツが「スターバックスは第3の場
所だ」と言ってカフェをつくりました。
・第1の場所は「家庭」、第2の場所は「働く場所」、第3の場所は「心を休める場所」
です。都市で生活していると、どうしても家と職場の往復だけではなく、人間の本質
的な願いのようなものとして、心を休める場所が欲しいと感じるようになると言われ
ています。神戸は、働く場所としてすばらしい場所もたくさんありますが、大阪に比
べると、はるかに第3の場所として魅力があります。「文化のまち」というよりも、
まさに「生活文化のまち」だと思います。もちろん文化もすばらしいものが多くあり
-24-
ますが、基本的には人々が生活を非常に楽しんでいるまちだということを考えると、
「第3の場所的なまち」といったことをうまくアピールできると、世界的にインパク
トがあるような気がします。
・これまでのお話では、今まで神戸には「都心」と「ウォーターフロント」があるという
ことでしたが、よくよく考えてみると、都心とウォーターフロントの間の結びつきと
いう点で、歩いてはなかなか行きにくいといった課題も現実にあると思います。であ
れば、都心とウォーターフロンとをうまく結びつける、まさに回遊コースをつくるこ
とで、さらにインパクトを持った歩き方をしていただけるのかなと思います。
・楽しく歩くためには、それなりの仕掛けが要ります。これからのまちづくりの流れは、
都心の中で自動車が走りやすいまちをつくっていくのではなく、むしろ人々が都市の
中で主人公になる方向です。そのためには、「車に気をつけて歩きましょう」といっ
た交通安全の考え方ではなく、車のほうが歩いている人に気をつけてもらって人々は
伸び伸びと歩く、あるいは、ベンチが置いてあって、そこで休めるような空間を拡大
していくといったことです。最終的には、トランジットモールとして、公共交通が走
り歩行者が歩けるようなまちにしていくことが考えられます。
・「ちょいのりバス」の実験時、トアロードでトランジットモールの実験を行いましたが、
意外に混乱がなく、もしかしたら実現できるかもしれないと思いました。そうすると、
南北方向と東西方向のトランジットモール、あるいは旧居留地の中にも広げていくこ
とを考えると、ネットワークができます。ネットワークができると、今まで線であっ
たものが面的に、すなわちまち全体に広がっていきます。このようにして神戸が歩い
て楽しめるまちに近づいていくのです。
・また、歩いているとゴミなどの汚いものが目につき、きれいにしなければならないと思
うことで、まちのグレードがどんどん上がっていくと思います。
●加藤恵正氏
・松下さんの地域のバリューアップから始まって、これはライフスタイルと関係している
といったところを引き金にして、皆様のお話を伺いました。松下さん、いつも宿泊の
お客さんと接しておられる中で、一体何が神戸にとって一番魅力的なのでしょうか。
●松下麻理氏
・「何が」というのがないところが、神戸の魅力的なところだと思います。宿泊とは少し
ずれるかもしれませんが、私が勤めるホテルで結婚式を挙げてくださるカップルに
-25-
「どうしてこのホテルを選んでいただいたのですか」とお聞きすると、ほとんどの方
が「この辺をよくデートしていて、見ていて、ぜひここで結婚したいと思っていた」
とか、「思い出の場所だから」といったことをおっしゃいます。もちろん、神戸同士
の方とか、どちらかが神戸の方ということもありますが、大阪同士のカップルの方で
も、そのように思ってくださる方がたくさんいらっしゃいます。
・結婚式というのは、非常に集客効果があり、すそ野の広い産業ですので、経済効果も非
常に期待できると思います。さらに、よい思い出を神戸でつくっていただくことによ
って、コアな神戸ファンを増やしていけるという、非常にいいことづくめのものだと
思います。
・神戸で結婚式を挙げていただくためには、デートにふさわしい場所であるような、また
水辺をそぞろ歩きできるような、そこで楽しい思い出をつくれるような環境であるこ
とが、集客効果に大きく結びつくのではないかと思います。
●加藤恵正氏
・南部さんからは、わい雑さが、パワーがどうも神戸のまちには欠けているのではないか
というお話をいただき、もう一方で、松下さんからは、デートに魅力的な場所に、と
いったことになると、あまりパワーとわい雑さばかりでもいけないのかなとの気もし
ます。そこで安田先生にお伺いしたいのですが、都市のわい雑さも魅力的な部分です
し、デザインできれいな街並みもこれまた魅力的ですが、その組み合わせについては、
都市としてどうすればいいのでしょうか。
●安田丑作氏
・整った街が都市デザインの目標ではなくて、「空間から場所へ」という言い方を引用し
ましたが、すなわち場所性といったことです。わい雑なのは空間だけではなく、そこ
でのアクティビティと相まって出てくるわけであり、それが人によっては第3の場所
になっていく可能性もあります。
・即地的な議論でいえば、神戸のウォーターフロントが最初に変わり出したのは、メリケ
ンパークができ、その後にハーバーランド、HAT神戸とできていった頃です。そし
て、ハーバーランドとHAT神戸の間の一番おいしいところが、今、残っているわけ
で、これからの神戸の生命線だと思います。この神戸の都心とウォーターフロントの
グランドデザインをどう描いていくかが、これから非常に大切であろうと思います。
・いま一つ、都心のオフィス街の変貌があります。例えば、東京駅をはさんで全く違うま
-26-
ちだと思っていた丸の内と銀座が、丸の内が変わったことで銀座-丸の内の流れが出
てきました。しかしながら、そのはるか前に、同じように神戸の旧居留地も大きく変
わりました。オフィス街である旧居留地は、ウィークデーの昼間は大変にぎわってい
ますが、夜や日曜日になると閑散としているまちでした。それが、当時の大丸が店舗
展開を進めたことにより、アフターファイブや休日も人でにぎわうまちに大きく変わ
りました。
・ただ、旧居留地も決してスムーズにいったわけではありません。大丸が駐車場をつくる
際、神戸市の景観アドバイザー制度により、私もアドバイザーとして、まちに駐車場
だけのビルは良くないのでせめて通りに面しているところはお店かショーウインドー
にして下さいと言いましたが、当時の大丸の担当者は、1台でも減らせない、1台で
も惜しいと言っていました。今ではその駐車場がファッションビルに変わっています
が、やはり新しいことに取り組むことは非常に難しいことです。
・もう1点、まちと大学とをもっともっとつなげていかなければならないと思います。こ
れは都心とも無関係ではありません。震災直後のころ、加藤先生にもお世話になりな
がら、三宮南の磯上地区に大学のサテライトキャンパスを置くことを考えていました。
それこそが都市を復興させる力になり得るだろうと、非常に強く確信していますので、
ポートアイランドにあれだけの3大学のウォーターフロントキャンパスができたこと
は、非常に喜ばしいと思います。
・それから、一つ心配なのは、都心における超高層の住宅です。都心の住宅自体は良くな
いとは思いませんが、超高層で下から上まで住宅の建物が数多く建ってしまうことが、
本当にいいのかという気がしてなりません。都心はみんなのものですから、分譲して
細切れの所有関係にすることは避けなければという思いを持っています。
●加藤恵正氏
・先ほど、南部さんが、この博物館もこのような使い方(当シンポジウム)ができるのか
とおっしゃったように、いろいろな顔を持たせることができる資源を、都市はもとも
と持っているんですね。安田先生が、丸の内の例を出されて、実は神戸のほうがずっ
と先行していて、休日でもアフターファイブでも人が動けるような空間をつくろうと
していたとのお話でしたけれども、「都心はオフィス街」といった画一的なことでは
なくて、もっと混ざり合った魅力を都心ウォーターフロントに組み込んでいく必要が
あるということですね。
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・土井先生のご指摘ですが、実は近いけれども離れている都心とウォーターフロントをつ
なぐことで、シームレスとは言わないまでも、歩ける空間というのが神戸の都心ウォ
ーターフロントにできるということですね。
・最後に、神戸の都心ウォーターフロントへの思い、展望や課題、あるいは都心ウォータ
ーフロントにかかわらず、都市としての神戸の展望といったことでも結構ですので、
お話しいただければと思います。
●土井
勉氏
・現在は、まさに都市がどんどん変化している時代だと思います。環境のことを考えるこ
と と 、 2008年 を ス タ ー ト に し て 、 こ の 5 年 間 で 日 本 は 温 室 効 果 ガ ス 、 C O 2 を 6 % 削 減
することを目標にしており、これを実現するために、もちろん神戸も頑張らなければ
な り ま せ ん 。 5 月 23日 か ら 環 境 大 臣 会 合 が 神 戸 で 開 催 さ れ ま す が 、 ま さ に 時 代 が 大 き
く変わっていくときに、神戸が何を発信できるのかがすごく大事なことだと思ってい
ます。環境を考えて、でも、とても魅力的なまちをつくっていくことは、少し前まで
は全く別のことでしたが、環境にやさしいライフスタイルをとりながら、しかし、ま
ちをすごく楽しめることを神戸のまちで実現することは十分可能だと思います。
・今日のこういった形(博物館でのシンポジウム開催)のように、まちの中にあるいろい
ろな資源をできるだけうまく使っていくことが、これからはすごく大事なことではな
いかと思いました。
●南部真知子氏
・ 大 き く 3 点 申 し 上 げ ま す 。 去 年 の 12月 の 初 め か ら 8 日 間 ほ ど 、 ハ ー バ ー ラ ン ド の 皆 様 と
まちづくりを考えるため、ジェノバからバルセロナまで、ウォーターフロントの視察
をしてきました。世界遺産にも登録されているジェノバでは、建物そのものが本当に
芸術であると思いました。大変古いまちですから、交通については、本当に不便なま
ちではあります。ただ、不便かもしれないけれども歩いていくなど、「変えないも
の」がしっかりしていることが大いに学ぶところだったと思います。一方、ポルト・
ア ン テ ィ コ と 呼 ば れ る 昔 の 港 は が ら っ と 変 え て 、 年 間 300万 人 と い う 集 客 を し て い る よ
うに、変えるところはしっかり変えています。ですから、変えるものと、大事にしな
いといけないもの、変えてはいけないものと、一つのポリシーを確定するのが必要か
なと思ったのが1点目です。
・2点目は、「民活」つまり、民間の人間おひとりお一人も含めて活かすシステムが大事
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だと思います。例えば、まちをきれいにするにしても、何か腕章やベレーのように美
化に協力している印があると一生懸命拾えるが、そういう印がないと物拾いと思われ
てしまうとか、そんなことを言う人がいます。ひとり一人を活かすシステムづくりと
いうものがあると、まちも、もっともっときれいになって、活力も出てくるのかなと
思います。民間のいろいろな施設をウォーターフロントに築くという意味での民活と
いう部分もあるでしょう。また、まちを歩かれる方のために例えば「移民坂を歩く」
や「宗教施設を見て歩こう」といったテーマがあって、それらを説明してくださるボ
ランティアの方がいらっしゃるなど、民間の活力をうまく引き出すようなシステムが
大事なのかなと思いました。
・最後に、先ほどポイントとポイントをつなげる回遊という話をしましたが、近く始まる
姫路の菓子博などは大変いい例で、菓子博だけではなく周辺の観光施設も見てもらう
ため、菓子博のチケットがあれば入場料が半額や何十パーセントオフになるといった
連携をするそうです。そういったことはここ(神戸市立博物館)でも使えるのかなと
思いました。
●車
和久氏
・ー昨年、長崎のさるく博に行ってきました。あの長崎の狭いまちで歩くコースを示し、
それぞれにガイドがついて、きちっと歴史を話しながら案内していただけました。神
戸でも、ルミナリエ、神戸まつり、花火大会など大きなイベントがありますので、イ
ベント前の時間に神戸のまちをどんどん歩いていただける、そういったコースが恐ら
く長崎以上につくれるのではないかと思います。ボランティアの方々の力をもっと借
りて、すばらしいまちにしていけたらいいと思います。
・ 特 に 、 開 港 5 都 市 会 議 や EST( Environmentally Sustainable Transport、 環 境 的 に 持 続
可能な交通システム)の関係で、学生たちに旧居留地を歩いていただきましたが、私
達が知らない魅力を次々と見つけていただけます。例えば、神港ビルの木製の回転扉
は、私達はもう慣れてしまって何ともなく思っていますが、学生やよそから来られた
方達は非常に珍しがられて、「いいのがありますねえ!」と言われます。そういった
私達が気づかないものをどんどん見つけていただくためにも、まち歩きをどんどんし
ていただきたいと思っています。
●松下麻理氏
・2点お話をさせていただきます。まず1点は、ウォーターフロントというのは、水際ま
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でではなく、やはりその先の海も含むものだと思います。ウォーターフロントまで来
たのはいいけれども、そこにある海が、ごみがいっぱい浮いていたり、濁っていたり
ということであれば、魅力は半減してしまうと思います。例えば、私のホテルの前の
水辺を見ていると、小さな魚が岸壁のところで草をはんでいる光景を見ることができ
ます。そういった海の生き物やカモメなど、生きている海の近くにいるという印象を
持てることは非常に大事だと思います。去年、神戸空港の人工海水池で、傷ついたウ
ミガメを放流して、しばらく養生させてから外海に放すといったプロジェクトが成功
したと聞いています。ウミガメの体重測定や甲羅を洗うお手伝いといった体験をした
子供達は、一生その神戸の海を忘れないと思います。そういった体験ができるような
場所や、何かプログラムのようなものがもっと必要ではないかなと思います。
・もう一点は、先ほどお話しましたように、神戸の人は情報発信が非常に下手だというこ
とで、もっともっと自慢していいと思います。実現可能かどうかわかりませんが、例
えば、神戸市のホームページなどで、神戸の人が選んだすてきな建物、景色、お店や、
デザインがすばらしいものなどを、どんどん神戸の人の生の言葉として伝えていくよ
うな取り組みがあってもいいではないかと思います。そうやってどんどん神戸を外の
世界の人に自慢することが、今一番必要ではないかなと思っています。
●安田丑作氏
・最後に1点だけ申し上げます。先ほど、都心とウォーターフロントのグランドデザイン
をぜひ、と申し上げましたが、まちのデザインは、編集する力、コーディネートする
力が非常に大事だということです。旧居留地はエリアマネジメント、つまり自分たち
のまちを自分たちでマネジメントしていく力を備えていることが認められ、個人では
なく初めて団体に日本都市計画学会の石川賞が贈られたわけですが、都心ウォーター
フロントのグランドデザインをつくる、そして、それをきちんとコーディネートして
いく、そして、実際にマネジメントしていく、そういったことをぜひ進めていただき
たいというふうに思います。
●加藤恵正氏
・「歩いて楽しいまち」が、土井先生から最初に提案され、今回のディスカッションの重
要なキーワードになったわけですが、まちというのは、歩きながら常に驚きがあって
初めて、まちらしいまちであるわけですよね。それをどのように仕組んでいくのか、
行政あるいは地域の皆様の大きな役割かと思います。
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・車さんは、長崎ではフットパス(歩くことを楽しむための道)がきちんと観光客にも案
内されている、神戸にもそれこそひとつ一ついろいろなストーリーがまちの中に埋め
込まれているはずなので、そういったものをもう一度引き出してフットパスの案内と
一緒に来られた方に見ていただく、あるいはボランティアの皆さんに紹介してもらう
といったことも大事なのでは、とのお話でした。
・今日は、南部さんもおっしゃいましたように、大きくは「変わらぬ神戸」「変わる神
戸」の議論であったと思います。土井先生は、J・ジェイコブズの説に代表されるよ
うに、都市の多様性、都市のわい雑さ・活気といったことが重要だというお話でした。
J・ジェイコブズは、元ジャーナリストで、単調なゾーニングを批判し、都市の活気
に重点を置いたことで有名です。
・これに対して、最近、ピータ・ホールが『ソーシャブル・シティ』という本を書きまし
た。これは、計画がまずあって、きちんとした都市をつくることによって人々の高い
生活が維持できる、といったアプローチをしています。
・そういった意味では、経済産業的なアプローチと都市計画的なアプローチの接点をどこ
に見出すのか。すなわち、神戸が、これからどこを変えて、どこを守っていくのか。
このあたりは、市民の皆さんと一緒に、事業者の方、あるいは、計画をしている行政
と議論しながら進んでいくことになるだろうと思います。
・冒頭に申し上げましたけれども、都心とウォーターフロントは、世界に冠たるこれから
の神戸の資源であって、これを上手に展開していくことで、都市としての競争力を持
つことができるのだろうと思っています。
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