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7月号(No.299) - 京都大学生活協同組合

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7月号(No.299) - 京都大学生活協同組合
ていよう
綴葉
'11
7
No.299
あなたが創る生協の書評誌
▶
話題の本棚
スマイリーキクチ著
『突然、僕は殺人犯にされた ネット中傷被害を受けた10年間』
アーサー・クラインマン他著
『他者の苦しみへの責任 ソーシャル・サファリングを知る』
特集/革命
新刊コーナー/新書コーナー/私の本棚(小川洋子を読む・ファッションを考える)
〒606-8317 京都市左京区吉田本町
京大生協綴葉編集委員会
Tel:771-6211 / E-mail:[email protected]
綴葉HP: http://www.s-coop.net/about_seikyo/public_relations/000696.php
話題の本棚
年間
この事件が長く続いたのは、定期的な燃料投下とネットでデマの
存在が浸透したことが大きい。ネット上での匿名の悪意は、権威に
結局は権威に弱い
「インターネットを知らない」
人達
ネット中傷被害を受けた
突然、僕は殺人犯にされた
弱い。ほとんど何の根拠もないにも関わらず、本やテレビで語られ
たことが、まことしやかにソースとして語られる。結局のところ、
既存メディアの増幅器としてネットが働いたのだった。そして、ス
い。今でも一度検索をかけるだけで、デマの存在を確認できてしま
タートはそういった形でも、一度ネットに刻印された情報は消えな
ネットとの付き合い方は難しい。極端なところでは、ブログやツ
イッターでの失言から、クレームが入り退職に繋がる場合も聞く。
う。デマがデマを呼ぶという最悪の形が今も続いている。
う表現は本書にない。それにかわるものとして、「インターネット
ニュースでこの件を知っている方もおられるだろう。当人が書い
た記録ということで、本書は大変スリリングだ。読み手は、ネット
行った幾人かが書類送検された顛末までを描くのが、本書である。
知らないのは彼らだけだろうか。デマにのり、書類送検までされた
タルディバイドの実体が刻印されている。だが、インターネットを
警察がまったく動かないのも、インターネットを知らないからだ。
ネットで悪評を立てられる意味を解さず、「ブログをやめればいい
ネットに詳しい警察官との出会いから、名誉毀損として書き込みを
の匿名の悪意に怒り、門前払いを食らわせる警察に胸が悪くなり、
人たちは果たして「インターネットを知ってい」たのだろうか。巻
事実として鵜呑みにはしにくい。だが、ここから読み出せるものも
れているが、ネットでの対応は不十分だ。どうするべきなのか、そ
多い。この件が含む二つの問題、ネットで不特定多数の悪意にさら
されることとデジタルディバイドについて考えてみたい。
れはネットに触れる人々すべての課題となるだろう。 (道祖)
(二八四頁 税込一三六五円 月刊)
あまりにおもしろすぎる。客観的な記録ではないのはもちろんだが、 末に付された「ネット中傷対策マニュアル」は現実的な対応は書か
のでは?」とピントのずれた返事を繰り返す。そこには深刻なデジ
書類送検の末にたどり着いた結末には、肩を落とすだろう。ただ、
相手にされない。警察との押し問答と中傷はその後、一〇年間続く。 を知っている」と表現される。
警告、削除などで対応していたが、中傷は止まず、警察に訴えるも
〇年間の顛末
ジタルディバイド
一
デ
お笑い芸人スマイリーキクチは九九年からネットの掲示板などで、 先ほど「ネットに詳しい」という表現を使ったが、これはネット
ある事件の加害者であるというデマを流されるようになる。当時は
を日常的に使っている人間の言い回しだ。「ネットに詳しい」とい
不特定多数の悪意による被害、本書のケースは最悪に近いものだ。
スマイリーキクチ著
竹書房
10
3
2
話題の本棚
「苦しみ」と聞いて、「手を差し伸べる」ことを連想するのは容易
Social Suffering (A. い。しかし、それまでに当事者と当事者以外の間でどのようなやり
とりがあり、「手を差し伸べる」ということは何を隠蔽するのか。
必要であり、その過程で何が創られ、消えるか――。
であるなら苦しみが他者から承認されるためにはどのような過程が
社会から(何らかの対応をすることを)承認された苦しみか、そう
題のように社会の技術的変化によって作られる苦しみか。それとも、
貧困のように社会構造から慢性的に生み出される苦しみか。脳死問
「他者」の苦しみはいかにしてとらえ得るのか
他者の苦しみへの責任
ソーシャル・サファリングを知る
アーサー・クラインマン、ジョーン・クラインマン、
ヴィーナ・ダス、ポール・ファーマー、マーガレッ
ト・ロック、 ・ヴァレンタイン・ダニエル、タラル・
アサド著 坂川雅子訳 池澤夏樹解説 みすず書房
本 書 は、 一 九 九 七 年 に 出 版 さ れ た 論 文 集
れてしまった感がある。しかし、そうであっても本書に収められた
の中の六本の翻訳から成る本書は、原著にある多様性はかなり殺が
「集合的な苦しみ経験のバラエティを見せる」と書かれている。そ
様 々 な 分 野 の 人 間 が 一 五 本 の 論 文 を 寄 稿 し た も の で、 そ の 目 的 は
ワ ー ド に、 医 療 人 類 学 者、 文 学 者、 宗 教 学 者、 医 者、 活 動 家 な ど
どのように付き合い得るのか、ということではないだろうか。当事
どのように受け止めるのか、当事者は当事者以外の人々(社会)と
そうではなく、本書で問いかけているのは、苦しみを当事者以外は
して博愛主義的に手を差し伸べようという意図を感じさせるようだ。
しないと思われるからだ。「責任」という言葉も、他者のものに対
「他者の苦しみへの責任」という邦題には不満が残る。本書で議
論されている苦しみは「他者のものである」ということからは出発
の抄訳
Kleinman, V. Das, M. Lock eds. University of California Press)
である。原著は、「ソーシャル・サファリング」という言葉をキー
文章は、「苦しみ」について、重要な示唆を与えてくれる。
し、テレビ画面に映る異国の名も無き人かもしれない。
や
・
を経験した今日に生きる私たちにダイレクト
11
V. Das, A. Kleinman,
)で、こ
M. Ramphele, P. Reynolds eds. University of California Press
と Remaking a World
(共に
and Subjectivity 部作の第一作目である。本書に興味を持たれた方は、続く Violence
本書に「社会的苦しみ」の定義はなく、様々な現象を扱っている
種種の論文を貫く一つの見方としてしか現れない。原著は、実は三
者とは、あなたかもしれないし、あなたの身近な人物かもしれない
本書の文章は、九〇年代前半までの社会状況をふまえて書かれて
いる。クラインマンらの文章からはアフリカ大飢饉が全世界の注目
を集めた八〇年代の名残が、アサドの文章からはホロコーストの残
虐性をめぐって盛んに議論が交わされた九〇年代初頭の雰囲気が読
・
み取れ、その意味で確かに時代を反映している。しかしこれらの議
論は、
3
に投げかけられているようである。
の見方の行方を追ってみてはどうだろう。 (ゑりく)
(三〇四頁 税込三五七〇円 月刊)
3
E
11
「社会的苦しみ」とは、なんだろう。ホロコーストや権力闘争に
伴う虐殺といった、多くの被害者を生み出す劇的な事件のことか。
3
9
反応は敏感だった。アジア発の共和制国家の
その影響は全世界におよび、とりわけ日本の
利権の交錯するなかでの革命であっただけに
そして孫文、宋教仁らの指導した辛亥革命
は清朝を打倒して中華民国を樹立した。列強
の血が流される内乱状態が長く続いた。
革命勢力同士の闘争が繰り返され大量の国民
ち早く独裁政権は倒されたものの、反革命や
マデロ、ビリャ、サパタら英雄達の活躍でい
衆を描くことで、文学からの革命を起こす。
合 う。『 阿Q 正 伝・ 狂 人 日 記 』 や『 評論 集 』
(ともに岩波文庫)は、唾棄すべき愚かな民
革命のもたらした希望と幻滅にまっすぐ向き
えば魯迅は辛亥革命では人々も郷村社会の構 『悲劇週間』(文藝春秋)は、後に詩人となる
造もなにひとつ変わっていないことを指摘し、 サムライの息子、堀口大學の目から見たマデ
この領野に文学が果たす役割は大きい。例
されてもいいだろう。
離を取った側から革命をとらえる視点が強調
は、一方で革命から排除された側、革命と距
い》という印象的な一文から始まる矢作俊彦
いどのような年であったか誰にも語らせま
四五年、ぼくは二十歳だった。それがいった
またメキシコ革命も描かれる。中でも《明治
……そして百年。北アフリカ、中東と世界
では今も各地で革命が続いている。
(夏
太郎)
ロと革命の物語は秀逸。
誕生はのちの大正デモクラシーを用意する一
因となった。しかし革命は逆に袁世凱の独裁
け、半植民地に置かれた中国内外の社会状況
ここでは現代の革命思想を見てみよう。
権力を取らずに世界を変える
に叫ぶこと、あらゆる構造的な説明をふりき
自らの感情に素直であること、「 子供のよう
つ消え去ってはいない。だから必要なのは、
現代の革命思想 J・ホロウェイとA・ネグリ
が与えた革命の性格を分析する。
そもそもなぜ現実に抵抗し、革命を目指す
を 生 み 出 し て し ま う。 野 沢 豊『 辛亥 革 命 』
(岩波新書)では、列強諸国からの侵略を受
革命が政治権力をめぐる闘争の一形態であ
って叫びをあげること」(
‌)だという。
だが闇雲に拒絶するだけでは何も変わらない。
「この世界は何か間違っている」という違和
ければならない。
えるようなオルタナティブの提示を内包しな
叫びは、現実の否定とともに、現実を乗り越
るかぎり、闘争は明示的な外国敵や国内敵と
必要があるのか。『 権力を取らずに世界を変
の闘争だけでなく、革命党派間、革命党派内、 える 』(同時代社)でホロウェイは、それは、
指導者間とのせりあいでもある。革命主体間
感を現に私達がもってしまっているからだと
るのか? 従来の全
て の 革 命 思 想 は、
述べる。不満、怒りといった現状を否定する
た叫びを窒息させ、押し留めようとする力も
と答えた。しかし、
「 国 家 を 通 じ て!」
の闘争は政治革命の勝利によって止揚される
社会には溢れている。その囁きにつられて感
のではなく、革命後の過程へと連続していく
そして権力が人
的・文化的多数によ
情を押し殺し、現実に順応することもできる。
「叫び」は、なぜかこの社会に充満しており、 しかし、一体どうやったら世界は変えられ
p.
18
ことは、いつの時代にも共通に見られる。
る少数への抑圧・排
しかし、だからといって、怒りの原因は何一
それを否認することはできない。だがそうし
除を含むならば、革
党の結成であれ、革
命へのアプローチに
5
綴 葉
No.299
2011. 7. 11
綴 葉
それに同化し、権力の再生産に寄与するとい
たはずの資本主義=権力を自らの内に含み、
べての革命は、結局、自らが否定しようとし
によって国家権力の奪取を目指した過去のす
命組織の結集であれ、運動の軍事化と官僚化
識と戦略構想は非常に巧妙で卓越している。
の思想は、深みに欠ける面もあるが、時代認
代認識はややシンプルだ。それに対しネグリ
ホロウェイの思想は、その徹底した自問自
答ゆえに力強く共感できる部分も多いが、時
マルチチュードとグローバル民主主義
を創出し、共同活動
な連帯によって〈共〉
らも、しかし緩やか
を多様性のまま維持
う結果しか生まなかった、と彼は批判する。
を実現する。『未来派左翼』(日本放送出版協
会)で考察されているように、各地での反W
デモ、サパティスタ民族解放軍等
国〉」の具体的なプロジェクトを打ち立てた
を目指した書であるとすれば、『 マルチチュ
ー ド 』( 日 本 放 送 出 版 協 会 ) は「 対 抗 ‐〈 帝
秩序が成り立つ点にある。それは、特定の集
動に影響を与え、また緩やかな連帯によって
各人がバラバラに行動しながらも、全員が運
の近年の運動の特徴は、統一的な指針なしに
TO・G
し画一化を避けなが
権力を用いて非権力的な社会を作るのは不可
全世界に議論を巻き起こした『 帝国』(以
文社)が、抵抗すべき相手=〈帝国〉の記述
能なのだ。したがって反権力を徹底しなけれ
ば な ら な い。 彼 は 言 う。「 権 力 を 取 ら ず に 世
界を変えよう」。
資本主義に亀裂を入れよ
権力に対抗するには、それ自体中心のない運
つつあるという認識だ。そうした〈帝国〉的
張を目指した帝国主義とは根本的に異なる、
いだのが 続刊『 革命』(河出書房新社)であ
る。『資本論』(岩波文庫)の独自の解釈から、 脱領域的で中心をもたない分散型のネットワ
ーク権力としての〈帝国〉が、全世界を覆い
彼は、私達の生に介入し、搾取する貨幣=権
否両論はあるだろうが、彼らの否定と乗り越
確立する可能性を切り開くものだという。賛
という絶対的民主主義をグローバルな規模で
団による全体の統治に甘んじてきた従来の民
書である。ネグリの出発点は、国家主権の拡
力は、そもそも私達の加担なしには成立しえ
で本を読むといった行動にも重要な意味があ
云々。何を指しているのかよくわからないま
ワーク革命、はたまた行方不明のIT革命、
世の中に革命と称される現象はいくつもあ
る。曰くエネルギー革命、ソーシャルネット
火 力 と 原 子 力 が 占 め る( 関 西 電 力 サ イ ト よ
ても、未だに日本の電力供給は八九・八%を
まずはエネルギー革命。再生可能エネルギ
ーや代替エネルギーの技術が次々生み出され
(れくた)
主主義を乗り越え、「全員による全員の統治」
ないという洞察に至る。支配は被支配者の存
えの思想から学びうる点は多いように思う。
ュードとはまさにそれであり、人々の多様性
るという。日常生活のなかの多種多様な反資
ま、我々は日々さまざまに煽られている。
現代社会に溢れる
﹁革命﹂たち
本主義的な実践が、資本主義に亀裂を入れ、
発事故の只中にある世界について考える
原
それを下から掘り崩すのである。
うものではない。例えば、仕事を休んで公園
よう」。そ のような実践は、活動家だけが行
がって結 論は、「資本主義をつくるのをやめ
る私達自身に注意を向けることである。した
外部の敵ではなく、資本主義を作りあげてい
在なしには成り立たない。だから肝要なのは、 動ネットワークの創出が鍵となる。マルチチ
しかし一体どうやって? この点を引き継
8
6
り)。ここ に水力を加えると、その他の電力
電・情 報 通 信・住 宅・
兆円市場』
流通にまで波及する
代替エネルギーの紹介に終始している感があ
解説や原発事故・行政をめぐる議論の紹介と、
ノベーションは起こっているのだと実感する。
術が実用化されていたとは露知らず、日夜イ
に解説し ている。「振動発電」などという技
が望まれる再生可能エネルギーについて平易
は、原発の構造や政治的位置づけ、今後拡大
になる。選別にあたっては、大きな影響力を
溢れかえる情報の中では、情報を得ること
よりも不要な情報を得ないことのほうが重要
かということである。
グラフとはSNS上で誰と誰が繋がっている
ける時代がやってきた」という。ソーシャル
フ」であるといい、「商品がユーザーを見つ
(SNS)の革命的な点を「ソーシャルグラ
するソーシャルネットワーキングサービス
著者は学の側から、本書でこの「革命」性を
もったキュレーターと呼ばれる人々の発言や、
日本に限らず欧米諸国でも産官学を挙げて
身近な趣味の似通った人々の行動を参照する。 実用化に向けた試みがなされているという。
アップを行なうシステムだそうである。
不安定さを、相互に融通しあうことでバック
電力需要をコンピュータで管理する。天候な
らしい。小規模の発電設備を分散的に配置し、
電力の流れを制御する、次世代送電網」が鍵
「ICT(情報通信技術)を用いて双方向の
ートグリッド」なる、
( 日 経 B P )。「 ス マ
ド社)は、フェイスブック(FB)を初めと
ふくりゅう・山口哲一『ソーシャルネットワ
ーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモン
る。今後どうすべきかについての言及は前書
強く打ち出している。さらにこの技術におい
源はわずか数%である。漆原次郎『原発
と次
世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)
きの「すべての原発を停止して、その分を再
人々が商品をめぐってとる行動のステップは
て世界のエネルギー情勢を牽引する立場を確
というのは、電力の構成が一瞬で変わるはず
発が占めているから即時停止は非現実的など
れているということであろう。となれば直情
しかしながら、やはりこれはよく考えずに
簡単にお金を払ってしまうシステムに包囲さ
入、即発信という流れに最適化されている。
ターにしても、購買意欲を刺激されたら即購
ぶものである。えてして共産主義革命以外の
ある日本のリーダー的地位を回復せよ、と叫
であるのに対し、この「革命」は失われつつ
前節で扱った意味での「革命」が、社会の
階層構造を否定して資本の再配分を図るもの
える。
保し、世界市場における覇権を確立せよと訴
どの影響を受けやすい再生可能エネルギーの
生可能エネルギーにいますぐ代えようという
れているという。確かにFBにしてもツイッ
「共感」→「行動」→「共有」であるといわ
などないのだから当たり前で、それが今後イ
径行な購買行動を軸とする「革命」における
ェイスブックの
フ
何がそんなにすごい
点が貧弱なのは残念である。
ノベーションによってどう変わりうるかの視
主役は「民衆」たる消費者より相対的に情報
「革命」はこのように、既存の競争における
のか
(峰)
勝利を謳う、つまり競争構造を強く肯定する
という権力に近い人々なのではあるまいか。
述にとどまる。現在の電力シェアの
一方、「原発なしで日本はやっていけるの
か、徹底検証」と表紙にある割に、原子炉の
割を原
論は、まだ現実的とはいえません」という記
5
0
0
ものであるのは興味深い。 4
﹁ 革命﹂で技術立国日本の復権を
最後は柏木孝夫『スマート革命 自動車・家
続いてはソーシャ
ルネットワーク革命。
7
綴 葉
No.299
にする。
タノールが入った展開槽の中に置く。》
う。死はいつまでも許されないままに。
人の可能性を広げたかと思うと、突如荒れ狂
孤独と愛せない感覚にもがきもする。海は旅
化学薬品をこねくりまわし、構造式とにらめ
有機合成化学という超マニアックな分野を扱
でない人にとってもマニアックな非日常を体
学生にとっては共感できるものがあり、そう
石川雅之『 もやしもん 』(講談社 )といった
大学の研究室を舞台としたコメディは、理系
のお医者さん』(白泉社)、
佐々木倫子『動物
《おお 青春はつねに挫折するだろう
けれどもいつも青春は無傷のままだろう》
っこしながら複雑な分子をパズルのように組
新刊コーナー
三木卓は、長田弘の詩の特徴は「魂の共有
への欲望」である、と述べた。詩人が若けれ
それは苦しい旅である。旅人は愛する人を
持ち有頂天になるし、解り合えぬことを知り、
ば尚のこと強くそれを思う。彼の作品をまだ
われら新鮮な旅人
紙である。爽やか
み立てていく人々の生活を克明に描写してな
鮮やかなコンス
タンブルの雲が表
長田弘著 みすず書房
definitive edition
さと不安が同居し
読んだことのない人へ、一人の詩人の出発点
いるのが素晴らしい。
お、大衆に受け入れられるコメディになって
っている。実験室に籠りきりで昼夜を忘れて
感できるものであるが、本作品はその中でも
た、危うさと影が
へと誘いたい。 (満潮
)
(一四四頁 税込一八九〇円 月刊)
かにある。葛藤が言葉となって紡ぎだされる。
想のために死んでいった人々が常に頭のどこ
時代が若き詩人に落とす陰は大きい。一世
代前の戦争による死と、六〇年代に自由と思
急いで実験台に戻り、薄層クロマトグラフィ
け中身を吸い取る。
け、ほんの少しだ
溶液にちょんと浸
《 ガ ラ ス 製 の キ
ャピラリーを反応
けてしまい惜しいなあという面も。
コメとしては王道過ぎて、チープな印象を受
ストーリーについて言及すると、恋愛に興
味を持ったことがない化学一筋の大学院生が、
新しく研究室に来た美人秘書さんに一目惚れ
をしてしまう話。死神カロンと研究室の仲間
たちが主人公を応援し、ドタバタしながらも
そして、ふと立ち戻ると、生まれることすら
ー用のガラス板に、反応溶液をスポットする。
喜多喜久著
宝島社
ラブ・ケミストリー
ある。『深呼
吸の必要』(晶文社)などで著名
な詩人、長田弘の新作は、彼の二〇代を切り
取った definitive
つまり決定版だ。本書には、
表 題 作 を 含 め、「 ク リ ス ト フ ァ ー よ、 ぼ く た
ちは何処にいるのか」「夢暮らし」が収録さ
れている。いずれも六〇年代から七〇年代初
できなかった命の存在が現実に迫ってくる。
二人の仲は少しずつ進展していく、そして最
存在さえしなかった生という事実は、死をど
それをピンセットで挟み、クロロホルムとメ
(投稿・蓋し)
(三〇五頁 税込一四七〇円 月刊)
な死神。題材が題材なだけに、むしろ、ラブ
公、高嶺の花、どこかで見たことのあるよう
後のどんでん返し。うだつのあがらない主人
う意識するのかという苦悩を改めて浮き彫り
頭に出版された作品たちである。
2
3
2011. 7. 11
綴 葉
8
日本の素朴絵
日本のオリジナリティとしての「素朴」を指
ている。しかし、この本を読んだ限りでは、
術のオリジナリティについて研究を進められ
芸員を務めたあとに、大学教授として日本美
本書を読んで随分すっきりした。展示を軸
に据えて見ることが、そもそも誤っていたの
した興味だけは持ち続けてきた。
記憶に引きずられるような格好で、ぼんやり
く稀に優れた文学展というのはあって、その
摘すること自体はとても面白いものの、やは
絵地図や立体性に
近法が無茶苦茶な
あなたは博物館
に行った際に、遠
めの導入書として受けとめて、今後の研究の
本書を「素朴」を人びとに注目してもらうた
りする必要があるのではないか。そのため、
思われるので難しいと思われるが)を定めた
「素朴」さの基準(これには個人差もあると
これで目から鱗が落ちるのだから世話はない。
劣化から資料を守ることにある。何と明快。
自然状態に置かれた場合に想定される諸々の
われる種々の資料を蒐集し(散逸を防ぎ)、
矢島新著
ピエ・ブックス
欠けた建物が描か
りその根拠として世界との比較を提示したり、 だ。文学館の役割は、文学研究に資すると思
れた絵巻などを見たことはないだろうか。今
しかし、この本来の役割を充分に果たして
いる文学館は多くない、と著者は言う。収蔵
室の広さと設計、展示室の採光と展示資料の
までこのような日本の作品は歴史的な記録と
選択/管理、莫大な人件費と施設維持費、企
ムと対置されるものであり、それらの周辺に
あるヨーロッパや中国が重要視するリアリズ
学館というテーマ
中身も。何しろ文
地味な本である。
外観はもちろん、
己を含む制度批判の欠如である。枠組みは所
ある。要は始点にある設計の問題であり、自
画展との関係、等々。これら多岐にわたるト
ピックについて、それぞれの文学館の持つ経
験を分かち合い協力して、効果的な運営に資
する――これが著者にこの「素描」を書かせ
位置する日本だからこそ誕生した価値観では
からして、美術館
た動機である。端々に自身の苦い経験が滲み、
ないかと言うのだ。また、この「素朴」表現
や博物館に対する華やかな興奮から遠い。
中村稔著 青土社
文学館学序説のためのエスキス
文学館を考える
進展に期待したいと思う。 (ねこ
た)
(一九一頁 税込二六二五円 月刊)
して重要な地位を得てきたが、美術品として
はあまり注目されてこなかった。
ずばり本書では、このような美術的にはゆ
るく評価の定まらない日本のある作品群を
「素朴」という観点から再評価する試みを行
なっている。著者によれば、日本の美術作品
は今流行のゆるキャラや日本の文化を代表す
そもそも文学館とは何だろう? 文学展の
広告は確かに目にすることがあるが、見たい
常に問い直されるべきである。 (一升瓶)
(二〇五頁 税込一九九五円 月刊)
与のものではない。その妥当性は、本質的に、
デザイン
しかし本書最大の美点は、文学館批判が図
らずも、現代日本の行政批判に通じることに
本書の魅力をなしている。
るアニメや漫画などに繋がっているのではな
に見られる「素朴」さとは、文明の中心地で
3
と思ったことは、実は余りない。それでもご
9
いかということも示唆している。
著者の矢島氏は大学院卒業後、美術館の学
2
綴 葉
No.299
蜂起に発展する。その結果、ベンアリ大統領
を愛する詩人には精密で入念な観察が必要な
据えていたように、彼は逆説的に、不確定さ
」を意味するように、それは澄んだ明確
light
さでもある。軽さを称揚しながらも重さを見
二五日、青年グループがデモを呼びかけると、
命 」 の 熱 気 は、 エ ジ プ ト に 飛 び 火 し、 一 月
変動の序 曲に過ぎなかった。「ジャスミン革
出来事は、アラブ世界における大規模な社会
に終止符が打たれた。だが、チュニジアでの
は国外に逃亡し、二三年間にわたる独裁政権
ことを示し、無限定であることで潜在的な現
市民が続々とタハリール広場に結集し、各地
ま た「 正 確 さ 」。 軽 さ が 同 時 に「 明 る さ
実を浮かび上がらせる。同様に「多様性」で
で市民の蜂起が発生した。タハリール広場を
アメリカ講義
イタロ・カルヴ
ィーノはイタリア
はペレックを例に、厳格な規則こそが汲みつ
カルヴィーノ著 米川良夫、
和田忠彦訳 岩波文庫
新たな千年紀のための六つのメモ
の小説家。リアリ
くせないほど自由な創意の源泉となるという。
の攻防の末、ついに、三〇年間に及ぶムバラ
た。リビアでは、カダフィ大佐側と反政府組
ク、アルジェリアなどのアラブ諸国に波及し
の後、バーレーン、ヨルダン、リビア、イラ
ク政権は崩壊に追い込まれた。革命の火はそ
舞台とした一八日間にわたる民衆と治安部隊
絶妙な語り手が物語の秘密について惜しげ
もなく語る、軽妙洒脱という表現がもっとも
ズムから
‌、児
童文学までこなす
当てはまる文章読本。 (夏太
郎)
(三二〇頁 税込八八二円 月刊)
月臨時増刊号
織の衝突に対して米国及び欧州が軍事介入し、
ための自由が「軽さ」なのだ。ここでは限界
は生を圧し潰す力であり、新しい境地を開く
重さに捕らわれず認識を変えることだ。重さ
」。彼の言う「軽さ」
例えば「軽さ Lightness
とは、別の場所へ逃れるためのものではなく、
切れず、抗議の焼身自殺を遂げた。この出来
よる理不尽な商品の没収に怒りと絶望を抑え
い青年は、憲兵に
りをしていた貧し
南部の路上で物売
二〇一一年一月
四日、チュニジア
彫りにしてくれる点で、非常に参考になる。
革命を歴史の中に位置づけ、その意義を浮き
酒井啓子氏)による多角的な分析は、アラブ
現代思想 ‌ ‌ 年
‌
アラブ革命
総特集=
現在も大規模な戦闘が繰り広げられている。
を鮮やかに飛び越える想像力の作家として月
本書は、あの一連の歴史的な出来事が一体
何だったのか、どんな意味をもっているのか、
に向かうシラノが紹介される。彼にとって生
(れくた)
月刊)
(二七七頁 税込一四〇〇円 3
解を集約している。中でも中東専門家(特に
について、国内外の四〇名以上もの識者の見
これからどこに向かっていくのかということ
存の耐え難い重さの対極にあるファンタジー
こそ意識を自由にさせるものだったのだ。
事 は、 Facebook
などのソーシャルメディア
を通じて伝播し、首都チュニスにおける民衆
青土社
チュニジア・エジプトから世界へ
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多彩な作風で文学の魔術師とも称された。本
書は脳卒中で急逝した彼がハーヴァード大で
の講義に用意した草稿をまとめたものだ。
世界各地の神話や名作を、言葉のアルチザ
ンの手さばきで引用し、関係づけ、考察する。
そして紀元三千年までの文学に必要なものと
して「軽さ」「速さ」「正確さ」「視覚性」「多
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S
F
様性」「一貫性」を提示する。
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2011. 7. 11
綴 葉
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が取り上げられているようだ。
充実しているとさえ思われるが、とにかく大
り、活字の利点を大いに活かして内容はより
ドキュメンタリー番組を文章化したものであ
知れないが、心配は要らない。これは英国の
いった政治的な話題はもちろんのこと、テキ
統領選挙やグアンタナモ基地での捕虜虐待と
のか、具体的な例を挙げていく。合衆国の大
英国で著名なジャーナリストが、この出来
事が世界中の人々にどのような影響を与えた
中でも本作は評判が高い。
・
衆のためのエンターテイメントである。それ
サスのガソリンスタンド経営者が、マヨルカ
界でも
も終始わくわくどきどき。知的なエンタメを
のように聞くと敷居の高さが感じられるかも
作る彼国の力量には、本当に頭が下がる。
音楽史を変えた五つの発明
音楽史を語るに
際して、決定的に
ハワード・グッドール著
松村哲哉訳 白水社
時代を画した事柄
プルが、
の歴史は今とは確実に違ったものとなり、現
難しい難物なのだが、本書の記述はそこから
れがなければ音楽
在私たちが享受している音楽の姿もない。そ
A history of the world since 9/11
「 ・ 」 と い
えば、今や世界史
逃げない。言い難い感動がある。 (
一升
瓶)
(二七三頁 税込二七三〇円 月刊)
のような発明を著者は「ビッグバン」と呼ぶ。
新たな世界が、そこから現出したのだ。
本書が扱うビッグバンは次の五つ。物理的
に掴まえることのできない音を譜面に書き写
して具体化した記譜法の発明。大衆に訴えか
的出来事になりつ
著
Dominic Streatfeild
Atlantic Books
打立て、音楽の作り方を根本から覆した平均
つある(事件時の
・
によってそれぞれの人生を大
きく変えられた。文章の歯切れの良さや、読
者を驚かせる展開の持って行き方は、ジャー
ナリズムの醍醐味を味わせてくれる。少し牽
強付会なところもあるが、胡散臭さのなさや、
本の分厚さを感じさせない面白さは、本書が
丁寧な調査を下敷きにしていることを感じさ
せる。比喩でも言葉遊びでもなく、やはりあ
の時から、世界は変わったのだろう。
今 年 五 月、「 ・ 」 首 謀 者 と さ れ た ウ サ
ーマ・ビン・ラディンの殺害が報道された。
知る。
・
(大福)
(四〇八頁 七・四〇ポンド 月刊)
注:今後、書影が変更される可能性があり
ます。お買い求めの際はご注意ください。
」は終わるのか。それはきっと、神のみぞ
ないタイミングだった。彼の死を以て「
これも一〇周年企画の一環か、と思わなくも
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ける強大な力を音楽にもたらしたオペラの発
律の発明。演奏者の力加減によって奏でられ
明。自然界に在るのとは全く別の音の組織を
る音量の調整を可能にし、それにより豊かな
がバレる、という説もある)。言うまでもな
感情表現をもたらしたピアノの発明。そして、 記憶を語ると世代
音楽をコンサートホールから解放し、人々の
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島の飛行機おたくが、アフガニスタンのカッ
が幾つかある。そ
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なかでも読み所は平均律だろう。これは多
くの入門書で簡単な記述で済まされ、理解の
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イジャックされた飛行機が突入して炎上して
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からちょうど十年。そのせいか、今年は出版
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日常に欠かせないものにした録音技術の発明。 く、ニューヨークの世界貿易センターに、ハ
これら五つの誕生の経緯が、その本質的な
意義にまで踏み込んで、詳細に語られる。こ
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綴 葉
No.299
私の本棚
……。これらを標本にしようと人々は
くれた音楽、火事でできた火傷の傷跡
小川洋子――一人称の「生」
、
三人称の
「無」
小川洋子、お好きですか? 私の本棚に眠る小川洋子の数冊を起
こして紹介します。
記憶しか持たない数学者・博士との交流を描く。この人は利発な男
ことはできなくなった。とある家政婦、その息子ルートと八〇分の
の愛した数式』(新潮文庫)。第一回の本屋大賞と映
まずは『博士
画化で不動の地位を得た。もはや『博士~』をなくして小川を語る
されたいというマゾヒズムである。「生」が「無」くしたものを標
られる彼女の意識の果てにあるのは、その薬指を特別な人のものに
が標本室の事務員であった。いつの間にか欠けた薬指に強烈に向け
仕事をやめてしまってたどり着いた先
薬指の肉片を切り落とされた若い女性。
標本室を訪れる。『薬指の標本』(新潮
文 庫 )。 主 人 公 は 機 械 に 指 を 挟 ま れ て
の子が好きなようで、きっとルート君を描きたかったのだ。最も小
本にして、その想いも一緒に標本にする。そうすれば「無」から解
本屋大賞は毒にも薬にもなりません
川らしくない作品ではあるが、最初の一冊としてはよいだろう。
放される。
川賞は毒にしかなりません
芥
思いは、密やかな冷ややかさから生まれる。ゾッとしつつも、我々
「この中に、PWHはどれくらい溶け込んでいるのかしら」という
さ せ る 妹。 生 ま れ て く る 赤 ち ゃ ん の 染 色 体 を 破 壊 す る 防 か び 剤。
らに与えられる言葉の一張羅。
そんな『夜明けの縁をさ迷う人々』(角川文庫)。世界のほんの片隅
に、目的があるのかも定かでなく、決して朝を迎えることのない彼
その「生」は他人にとっては黙殺されるべき「無」もよい所である。
最後に紹介するのは風変りな人々。周りから見ると不自由に見え
て仕方ないその生き方に身を寄せ、そこに居場所を見つけている。
意識の裏の異常な人々︱︱一/三人称の転換
は常にこのような感覚と隣り合わせで生きている。それは自己愛の
彼女を文学界へ押し上げたのは、九〇年の芥川賞受賞作、『妊娠
カレンダー』(文春文庫)であった。出産を控えた姉にポストハー
裏側にある。自己=「生」であり、それ以外=「無」である。近親
ベストの毒薬が染み込んだグレープフルーツのジャムを作って食べ
者を題材に描くことでこの想いは増幅
あるはずのものがないとき、意識はそこに集中する。「生」とは
どれだけ精緻で危ういバランスの上に成り立っているものか。「死
は 生 に 含 ま れ て い る。 今 笑 っ て い る 自 分 の す ぐ 隣 に も 死 が あ る 」
された。
﹁ 無﹂くした﹁薬﹂指
(星の屑)
(短編集『海』(新潮文庫)著者インタビューより)。「無」とは必ず
しも「死」ではないが小川の求心力の陰に「無」がうごめいている
ことは間違いない。 きっと誰もが持っている取り出した
くはないけれど、忘れるのはイヤな思
い出。愛鳥の遺骨、昔の恋人が作って
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私の本棚
日常からファッションを考える
が、前者の方が初学者にも易しい文章で
何とか毎日をしのいでいるヤツもいる。
ト・ファッションは避けて通れぬ道。学生が安価でファッションが
お金のない学生にとって、ゼロ年代に
台頭したユニクロ、H&Mなどのファス
グローバル時代のファッション
書かれている。
大学生活の意外な落とし穴、毎日の衣服。「イカ京」も、お洒落
男子も、衣服をまとっている点は同じ。では「ファッションって何
楽しめるのも、こうしたグローバル企業と経済発展によるものが大
大学生になると、思い切り好きな服や流行りの服を着て楽しんで
いるヤツがいる。その一方、入学直前に慌てて買い足した洋服で、
だ?」って、大学時代をきっかけに考えてみるのはどうだろうか。
シャツが製
シャツはどこから来たのか』(東洋経済新報社)を
造され、売られ、リサイクルされる、この行程を追ったものである。
読んでみよう。本書はテキサスの綿花畑から、一枚の
リ『あなたの
きい。普段着がどう経済活動と繋がっているのか。ピエトラ・リボ
ファッションって何だ?
雑誌はともかく、男性向けのファッション本は、「この組み合わ
せで最低限はクリアした。上手くいけばモテるから安心しろ。」と
自身がグローバルな経済活動の一部となっているかを学ぶことがで
ばかり言う。女性向けの本とそもそも前提が違うことに驚く。女性
のそれは、肥大化した「カワイイ」という記号のヤリトリであり、
きる。本書はまた、好む好まざるに関わらず、安易なグローバル化
シャツの世界を巡る冒険を追体験することで、我々はいかに我々
衣服は「わたし」を代行して発信するもの。本書はファッションの
モテも個性も無限の可塑性を持つ。ではまず、高村是州『ファッシ
ョン・ライフのはじめ方』(岩波ジュニア新書)を読んでみよう。
T
T
批判のアンチテーゼでもある。
何はともあれ、服を探しに街に出てみよう。ただ、お店って中々
お店に向かってみよう!
概念から、具体的な服の買い方まで手ほどきしてくれる。
』
次 に、 ア ク ロ ス 編 集 室 編『 スト リ ー ト フ ァ ッ シ ョ ン 1945-1995
(パルコ出版)を紹介しよう。循環する流行をビジュアルで学べる
呼び起される身体感覚を、平易な文章
大丈夫!」というなら、鷲田清一『ちぐはぐな身体』(ちくま文庫)
に移行しよう。本書は、衣服によって
を歩けば、自分に合う販売員がどこかにいる。出会いを通して、新
また、コミュニケーションがベースになっていることが分かる。街
努力を理解するのはどうだろうか。本書を読むと、「売る」ことも
入り辛い。特に販売員の視線が痛い。そんな時は内藤加奈子『
﹁売
れ る ス タ ッ フ ﹂ に な る!』( フ ォ レ ス ト 出 版 ) を 読 ん で、 店 員 の
で解説する。本書を面白いと感じたら、
しい自分のルックが手に入る。中々素敵じゃありませんか。(満
潮)
本の中では、安価で写真も豊富である。もし、「この程度の本なら
同氏の『モードの迷宮』(ちくま文庫)
もおススメ。出版年は後者の方が早い
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T
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綴 葉
2011. 7. 11
当てよう!図書カード
編集後記
今年は辛亥革命100周年ということで、特
集「革命」をお送りしました。ほぼ同時期に
はじめまして、先月号から『綴葉』に参加さ
せていただきました、(あずき)と申します。
はロシアでも共産主義革命の嵐が吹き荒れて
います。では、ソビエト第二代最高指導者ヨ
シフ・スターリンの趣味として適当でないも
のを次のうちからひとつ選んでください。
1. 暖かい地方の植物の栽培
2. アメリカ映画の鑑賞
3. 日本の武道
4. グルジアのワインを飲むこと
(峰)
《応募方法》読者カードに答えを書いて、生
協のひとことポストにご投函ください(また
はe-mail:[email protected])。 正 解 者 の 中 か ら
抽選で 5 名の方に図書カードを進呈いたしま
す。締切りは 8 月15日です。
正直に言いますと、私は本を読むのが得意では
ありません。というのも、読むスピードが大変
遅いのです。しかし、不思議なことに本を読む
のが嫌いではありません(面白い本との出会い
はこの上ない楽しみです)。その性格に導かれ
て『綴葉』にやってきましたが、〆切りがくる
たびに、書き手としてまだまだ未熟な自分に気
付かされる今日この頃です。早く一人前になれ
るようこれからもがんばりますので、今後とも
よろしくお願いします。
(あずき)
みなさん、こんにちは。4 月から『綴葉』の
編集委員に参加させていただいております、
(れくた)です。主に社会学、政治思想、哲学
4月号の解答
系の本に興味がありますが、この機会に、普段
あまり読まない小説や趣味本などもたくさん読
4 月号「京都市に実在する『桜』のつく地
名」の正解は「 4 .櫻ノ坪(さくらのつぼ)」
で、右京区にある地名です。応募者12人中11
人の方が正解でした。図書カードの当選者は、
HeyBayさん、佐間瀬勉さん、しまださん、
じゅんの子さん、マッツーさんです。おめで
とうございます。これからもたくさんのご応
募お待ちしております。
(ねこた)
んでいきたいと思っています。リクエストなど
ございましたら、お教え下さい。
まだ参加して日が浅いですが、先輩方の書評
技術と『綴葉』への熱さには驚きを隠しきれま
せん。私も先輩方を見習って頑張りたいと思い
ます。それでは、今後ともどうぞよろしくお願
いいたします。
(れくた)
!!
読者からひとこと
○『のび太と鉄人兵団』読んでみたい
(工・ついむ)
○ドラえもん、ちょっと読んでみたいと思っ
た。 (理・
恵ミ)
○あえて小説版を読む利点が書いてあり、そ
(文・
アーセナル)
月 号 の「 興 味 を 持 っ た 書 評 」 に 対 し て
こで興味を持った。 (工・ヨシキ)
○藤子F不二雄ファンである自分の目を引く
には充分すぎるタイトルでありました。
―
方々が多数おられました。国民的アイドルで
『のび太と鉄人兵団』を挙げられた読者の
あるドラえもん初の小説版として高い関心を
窺わせます。話題の本棚で取り上げた甲斐が
あります。中にはこんな感想の方も……。
○ドラえもんは気に食わない。が、評者の愛
にはうたれる。しかし、そもそもドラえもん
の魅力は…? (三番目の旅人)
―ドラえもん自体の魅力についてもっと語っ
てほしいということでしょうか。なかなかク
リティカルですね。編集委員一同、襟を正し
(夏太郎)
て今後の書評に活かしていきたいと思います。
皆様からの叱咤激励お待ちしています。今後
もどしどしお寄せ下さい。
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