Comments
Description
Transcript
スマート通訳ポン
経営 談話室 Vol.120 東京ベイ通信株式会社 代表取締役社長 安藤 久 “あったらいいな”を、 技術開発で叶える 「スマート通訳ポン」 「スマート旅友ポン」開発 2 夢シティちば 2013年 7月号 英語が苦手でも、外国人と自由にコミュニケーションがで きたら…。そんな夢を叶える情報端末・ポケット音声翻訳機 「スマート通訳ポン」が登場。さらにプライベートネットワー ク化で団体旅行を変える「スマート旅友(たびとも)ポン」の レンタルを開始した東京ベイ通信株式会社は、来年創業 20周年を迎えます。安藤久社長にお話を伺いました。 「スマート通訳ポン」は、端末に話しかけると外国語に翻訳された音声(文字) がかえってくる。 人の声を認識し、認識言語を翻訳した結果を音声で出力する技術は人工知能にも通じる追求で、 終わりなき闘いが続いている。 自動翻訳機「スマート通訳ポン」の誕生 ポケット翻訳機との出会い たものの、翻訳のたびにサーバーと 通信するため時間がかかり、ユーザー やがて地上系携帯電話が普及し、 には多大な通信料負担を強いるため、 当社は通信会社からの依頼でインフ 疑問が残りました。 ラ整備業務に携わりました。とにか 私がイメージしていたのは、通信 く県内にもっと基地局(アンテナ)を 料がかからずに端末が音声認識・翻 と、土地確保のための地権者との交 訳・音声出力を瞬時に行えること。こ 渉から設計、工事、施工管理、完成 れを開発したい一心で調査を続けて 検査までを引き受けました。10年後 いたところ、千葉大学の黒岩眞吾教 には、電力会社の子会社から業務委 授が研究する「音声認識」に出会いま 託による調査や折衝の仕事を行いま した。 した。地元密着で業務を進めていた 当初、黒岩教授は「端末内で全ての 通信事業の技術畑を経験 おかげで、実にさまざまな企業とご 処理を行うスタンドアロン型の実用 縁があって現在に至ります。本当に 化には膨大なコストがかかり、ビジ 私はもともと電電公社の社員とし ありがたいことだと思っています。 ネス化は不可能」という反応でした。 て、通信にまつわる技術系業務を担 翻 訳 機 との 出 会 いは2006年、幕 「おやめなさい」 「いや、できるはず」 当していました。1984年に先輩から 張メッセで開催された国際展示会 の応酬が続きました。その出会いか 声をかけられ、第二電電に移り通信 「CEATEC JAPAN 2006」を訪れたと ら4年、多くの技術協力のもと実現 会社立ち上げに係わる貴重な経験を きです。ある国内メーカーが参考展 可能となり、一昨年12月に、当社でス させていただきました。 示していた「ポケット通訳機」に、目 タンドアロン型の音声・翻訳機能を 転 機 は1994年、43歳 のときです。 を奪われました。それまでも電子辞 スマートフォンに実装した「スマート 携帯電話が普及し始め“これからは移 書などは普及していましたが、端末 通訳ポン」のレンタルを開始できるこ 動体通信の時代”と会社設立を決断し 上端のマイクに日本語を吹き込むと、 とになったのです ました。 端末が人の声を認識して英語に翻訳 最初はツーカーセルラー(現au)の するという画期的なものでした。ぜ 代理店として、携帯電話ショップを ひ当社でも販売したいと申し出ると、 千葉市と船橋市に開業。やがて1998年、 発売時期は未定とのこと。 地球規模のイリジウム衛星携帯電話 ならば自分たちで開発しようと、 が誕生。地球の周りに66基の周回型 技術者魂が頭をもたげました。 衛星により、大海原でも砂漠の真ん 通信料不要の翻訳機を 中でも衛星携帯電話が使えるという ものです。当社はこれを空港で受け 翌年の2007年、国際電気通信基礎 渡し可能とし、レンタルサービスを 技術研究所(ATR)で、外部サーバー 開始しました。イリジウム衛星携帯 を通じて翻訳文が表示される「分散型 電話の保有台数は国内1、2を争う 〈東京ベイ通信株式会社〉 所 在 地:千葉市中央区新町17-16 音声認識・翻訳方式」の翻訳機を手に までになりました。 業務内容:モバイル機器を主要空港にてレンタル、 しました。これはすごい、と感心し 利用者の多くは海外で水も電気も 各種教育事業の企画・運営、 「スマー ないへき 地 での 利 用 ト通訳ポン」 「スマート旅友ポン」など IT情報機器開発・販売・レンタル が多く、簡単に持ち http://www.tokyobay.co.jp/ 運べる衛星携帯電話 あんどう ひさし は 必 需 品 となりまし 1949(昭和24)年生まれ、 長野県飯田市出身。 た。250台用意しても 電電公社(現NTT)入社後、 電話交換機・デー ニーズに追いつかな タ通信など技術系業務に携わったのち、 電気通 信研究所にて大型汎用コンピュータ関係の開 いほどでした。 会社のあるビル玄関 発、 日本初「パケット交換機」商用1号機導入 業務に従事。1984年、第二電電(現KDDI) に転職、幅広い業務を経験したのち1994年に 東京ベイ通信株式会社を設立、 社長に就任。 夢シティちば 2013年 7月号 3 「スマート旅友ポン」アプリ画面(左) 。 点呼不要で常に全員 の状況把握が可能なため、集合時間通りに出発できる。わ かりやすいインターフェイスとなっている。右はガイド画面。 オフィス風景。「少数精鋭で全員創造的な仕事を懸命に行っています」 (安藤社長) 常に3つの事業同時展開をめざして 進化し続ける翻訳機、全国区へ 英語・中国語に対応し、地球上のど こでも通信料を一切気にせずに音声通 訳ができる “夢の翻訳機” の登場に、テレ ビ局、全国紙をはじめ海外メディアから も取材が相次ぎ、全国各地の観光業界 関係者からの問い合わせや引き合いが 殺到しました。 「スマート通訳ポン」は現在、成田・関 西・中部の各国際空港のカウンターでレ ンタル利用可能、大手旅行会社や全国 各地の旅館・民宿などでの利用が広がっ ています。千葉市観光協会や千葉市国 際交流協会で性能アップのためご協力 をいただいています。多くの方々に使っ ていただくほど音声認識率と翻訳精度 を向上させることができ、さらなるブラッ シュアップと他言語でのサービスを実現 させていきたいと考えています。 今年は団体旅行のイノベー ション「スマート旅友ポン」 がデビュー 修学旅行など団体旅行に「スマート 旅友ポン」を開発実用化し、サービス を開始しました。 昨年11月の第11回ベンチャーカッ プCHIBAでは一般部門準グランプリ を受賞することができました。外部 サーバーを使用しない非クラウド型 で、親機と子機間に「イヤホンガイド 機能・集合人員確認機能・緊急時一斉 通報機能」などを備え、説明書不要の シンプル設計で幅広い年代層に対応 できます。従来の団体旅行を大きく 変えるトラベルツールとしてお薦め しています。これを旅のスタンダー ドにしていくことが、当面の目標です。 クラスター経営を意識 「スマート旅友ポン」のPRチラシ。 4 夢シティちば 2013年 7月号 多くの企業と同様、 リーマンショッ クと東日本大震災のダメージは大 きく、昨年8月の尖閣問題でさら なる苦境に立たされました。当社 の空港でのレンタル業務はイリ ジウム衛星電話に始まり、通常 の地上系携帯電話、近年はWi-Fi ルーターのレンタルも、中国で そのまま使える機器を取り揃え ていましたが、 それがぱったり途絶え たのです。いかに利用者の多くが中国 と行き来するビジネスマンであった かを思い知らされました。しかしこの 春より少しずつビジネスユースが回 復してきました。 当社は来年4月で20周年を迎えま すが、いままで「ク ラ ス タ ー(ぶど うの房)経営」を意識し、常に最低3 つの事業を同時展開する経営に努め てきました。今後も中小企業の使命 として、まだ世の中にない隙間産業 の中から、皆様に喜んでいただける ものを次々に作り出していきたいと 思っています。 安藤社長 Q&A Q 1日の平均的なスケジュールは? 朝5時起床、愛犬と散歩。8時出社、 8時30分朝礼。取引先などと打合せ や各部署とミーティング、月1回は出 先部門へ訪問。夜は22時就寝。 Q よく読む新聞は? 朝日、日経、日刊工業、千葉日報。 Q 仕事以外でハマっていることは? Q 座右の銘(好きな言葉)は? ラジコンヘリコプター、海釣り。 松下幸之助の「どんなに悔いても過去 は変わらない。どれだけ心配したとこ ろで未来もどうなるものでもない。い ま、現在に最善を尽くすことである」 。 当たり前を当たり前に、全力で! Q とっておきのストレス解消法は? スポーツ観戦、旅行 (国内外名所旧跡 めぐり) 、温泉につかること、愛犬と 散策、映画・音楽鑑賞。 Q「やる気の源」は? 常に創造的な仕事を行い、 「今日を悔 いなく生きれば、明日が見える」 。