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研究活動季報 - 東海大学工学部 航空宇宙学科 航空宇宙学専攻

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研究活動季報 - 東海大学工学部 航空宇宙学科 航空宇宙学専攻
東海大学工学部
航空宇宙学科航空宇宙学専攻
水書研究室
ENTHALPY
研究活動季報
2008年 秋 号
Vol . 1, N o. 2
CONTENTS
【巻 頭 言】 折り返し地点
【研究状況】 小型衝撃波管(3x 4S T)の基礎特性
【 小特集 】「卒業研究発表会(中間)を終えて」(学部4年生)
【参加報告】 (1)日本流体力学会「年会 2008」
(2)ESHP Workshop2008
(3 )デトネーション研究会「若手夏の学校 20 08 」
【連絡先】
〒 259-1292
神奈川県平塚市北金目1117
東海大学湘南校舎 工学部航空宇宙学科
准教授
水書稔治
電 話:0463-58-1211(内 4457)
ファクス:0463-50-2060
電子メール: [email protected]
-表紙写真-
マッハ数 2.0 で飛行する円柱物体周囲
に生じた衝撃波を方向指標型カラーシュ
リーレン法で可視化計測したもの。円柱
頭部と衝撃波はわずかであるが離れてお
り,この距離はマッハ数が増加すると小
さくなる。この距離は衝撃波離脱距離と
呼ばれている。鈍頭物体の超音速飛行で
特徴的な衝撃波である。
※本小冊子のカラー版が当研究室のホームページ(http://www.ea.u-tokai.ac.jp/mizukaki/)から入
手できます。
2
【巻頭言】 - 折り返し地点-
東海大学工学部
航空宇宙学科航空宇宙学専攻
准教授 水書稔治
本
年度も半分が過ぎ(本稿が印刷された
ころには年末の足音が聞こえているか
も),慌ただしい日々が近づきつつあります.本
今年度からは,当研究室の専門分野を衝撃波・
高速流体限定から徐々に広げていくことをはじめ
ました.現在,当研究室は,圧縮性流体に関する
年度前半の自らの行いを振り返る時期です.
夏休み前に行われた4年生の中間発表会では,4
年生にとっては,はじめて人前に立って自分の主
張すべき点を要領よくまとめることの大変さが分
研究を行っています.しかし,この分野の学問的
特質を考えると単独の研究室ができる範囲は限ら
れています.すなわち,研究を意義ある内容とす
るためには外部研究機関・他大学関係研究室との
かってもらえたと思います.発表で最も大事なこ
とは「主張すべきこと」を「明りょうかつ端的に」
説明することであり,そのためには自分の研究課
題の社会的意義と学術的新規性について熟考し,
連携が重要です.そのため,筆者の出身大学・出
身研究機関との研究連携および情報交換活動は以
前から行ってきたところです.この関係は,これ
からも当研究室の基幹的対外関係であり,連携強
発表内容はもとより,しゃべり方を含めた発表方
法を時間をかけて洗練していくことが必要不可欠
な過程となります(自分に対する戒めも含めて書
いています).自分が当事者である研究ですので,
化を図ってゆきます.さらに本年度からは,学術
的守備範囲を広げることを目的として爆轟(デト
ネーション)関係を研究されている組織とのつな
がりを広めていこうと考えています.このため,
苦労した点,工夫した点,研究の重要性をあれも
これもと盛り込んでいくと,支離滅裂になる傾向
があります.しかし,自分が説明したい内容で
あっても泣く泣く割愛しなければならないこと,
夏休み期間中の8月末にデトネーション研究会の
合宿に参加しました.この合宿については,学生
による参加報告を本冊子に掲載しました.研究会
での話題の中心は次世代のジェットエンジンと見
一方的な見方ではなく多角的な見地で自分の研究 なされているパルス・デトネーション・エンジン
を俯瞰しなければ研究の重要性・必要性を主張で (PDE)です.来年度からは,砲内弾道関係の基礎
きないこと,などを理解してもらえたと思いま
研究に加え,PDE も含めたデトネーション関連の
す.プレゼンテーションの指南書では,「専門用 テーマを加えることを考えています.興味のある
語の羅列でしか,自分の研究内容を説明できない
者は,自分の研究を十分に理解していない証拠
だ.自分の研究を十分に理解しているかどうか試
すには,妻やこどもが理解できるように説明でき
学生の積極的な参加を望みます.
さて,年度も半ばを過ぎ,来年 3 月に卒業・修
了予定の学生は,卒業・修士論文をまとめはじめ
る時期がももなく到来します.年を越してしまう
るかである.」などと説明されます.現在は,筆者
の学生時代に比べると多種多様なプレゼンテー
ション指南書が出版されています.この機会に自
分にあった本を購入し,次回の発表会の参考にし
とあっという間に卒業・修了式です.時間はある
ようでありません.各自の研究の進捗状況と達成
すべき水準との差を確認し,研究のペースを調整
してください.また,これらの成果は,来年 3 月
てください.プレゼンテーション能力の向上は, の衝撃波シンポジウムでの発表(学部生はポス
就職し,社会に出て行く学生にとっても重要なこ ター)を計画しています.他機関の方にアピール
とです.
するに値する成果と努力を期待しています.
3
【研究状況】-小型衝撃波管(3x4ST)の基礎特性-
可視 化 計 測に よ る 熱気 流 持 続時 間 の 確認
航空宇宙学科
図 1 に 3x4ST を示します.3x4ST は,筆者が着任
以来整備を進めている実験装置のひとつです.一
昨年度(着任年度)に圧力計測系,可視化計測系,
および破膜装置の整備・修理を学科の予算的協力
を得て行い,衝撃波管として最低限の機能を整備
しました.昨年度は衝撃波背後流れ(熱気流)を
超音速流れとするため,研究室の少ない予算を使
い真空および高圧配管系を整備しました.遅々と
して進みませんが必要最低限の状態になりつつあ
ります.今年度は,3x4STの衝撃波管としての基礎
特性を精度良く取得することを卒業研究課題のひ
とつとしており,ゆっくりではありますが技術資
水書稔治
・隔膜-測定部間距離:
2.75 m
・気温(駆動気体,試験気体):25.0℃
衝撃波管の単純理論では,初期圧力比 P4/P1 に
対し,発生する衝撃波の Mach 数 Ms は,式(1)で与
えられます.
2
p4 2 1M s   1  1   4  1 a1 
1 


 1 
   M s 
p1
1 1
M s  
  1  1 a4 




2   2

ます.ただし,熱気流持続時間(試験時間)は,測
定部への衝撃波到達後,冷気流の到達もしくは高
圧室壁面から反射した膨張波の到達のいずれか早
いほうの時刻で制限されます.試験時間を大きく
これらの値と隔膜-測定部間距離から,
衝撃波
Mach 数 Ms,熱気流 Mach 数 M2,試験時間 t の単純
理論値は次の通りです.
するには,低圧室の隔膜-測定部間距離を長大化
による冷気流到達時刻の遅延,高圧室の大型化に
よる測定部への反射膨張波到達時刻の遅延が有効
です.当研究室では,熱気流を利用した研究課題
・衝撃波 Mach 数 Ms(-): 2.85
・熱気流 Mach 数 M2(-):
1.32
・試験時間 t(ms):
1.05
さらに,Mach 数 M2 の気流中に頂角  のくさびに
を計画しており,試験時間および流れの安定性の
確認が急務です.以下に先日測定した熱気流継続
時間を可視化計測で確認した概要を示します.
よる斜め衝撃波の衝撃波角 の関係は,以下の式
(3)で表されます.
図 1.の小型衝撃波管を使い,次の条件で衝撃波
を発生させました.また,測定部には頂角  = 5
°のくさびが壁面に設置されています.
【試験条件】
・初期圧力比 P4/P1:
406
(P4 = 1.50 MPa,P1 = 3.7 kPa)
・駆動気体/試験気体:
窒素/空気
・くさび角 :
5.00 deg.
4
(1)
ここで,1,4,a1,a4,はそれぞれ試験気体,駆
動気体の比熱比  及び音速 a です.
また,衝撃波 Mach 数 Ms と熱気流 Mach 数 M2 と
料が調いつつあります.
衝撃波管は衝撃波を発生させるだけではなく, の関係は,式(2)で与えられます.
1
初期圧力比(P4/P1)を高めて熱気流速度を超音速


 1 1    1 1 2  2
2
2
とすることで,間欠式超音速風洞として利用でき
M 2  M s  1    1M s 
M s  1 
 
1.
実験条件と衝撃波管単純理論
2 4
 4 1
tan 


2 cot   M 2 sin2   1
2
M 2    cos 2   2
2
(3)
式(3)に  = 5°,M 2 = 2.85 を与えると  =
58.1° が求まります.したがって,くさびから
生じる斜め衝撃波の衝撃波角は 58.1°と推定で
きます.
圧力変換器(図1.のPT1,PT2)で取得した圧力履
歴から,衝撃波 Mach 数 Ms は,Ms = 2.73 ± 0.01
であることがわかりました.この値は,単純理論
で得られた 2.85 と比較すると 4.21% 低い値とな
りました.
(2)
図 1.
図 2.
小型衝撃波管(3X4ST)(単位:mm)
くさびによる斜め衝撃波可視化画像(Ms = 2.73, M2 = 1.27,  = 5.00°,  = 63.0°)
5
2.実験結果と考察
図 2 に,入射衝撃波(ISW)が測定部に到達後700
sまでの流れ場をシュリーレン法で可視化測定し
た結果を示します.
入射衝撃波背後には熱気流(Hot gas)が続きま
す.入射衝撃波はくさび(Wedge)表面で反射し,反
射衝撃波(RSW)を生じます.反射の形態には正常
反射と Mach 反射があります.本実験条件では正
常反射です.ISW 到達後 75 s 程度で,くさび先
端から斜め衝撃波が形成されています.図から斜
め衝撃波角度がくさび近傍では 63°,上方で 53
°となっています.これは,くさび近傍では式(3)
一般に,衝撃波 Mach 数 Ms と熱気流持続時間 t
が単純理論と異なる原因として,
a). 隔膜開口時間の有限性による減衰
b). 破膜後に発達する境界層による減衰
があげられます.本実験の衝撃波管は等価直径
が D = 34.3 mm です.この等価直径では a). は大
きな影響を与えないと報告されています.そこ
で,b). について Mirels の理論に基づき,結果を
考察します.
Mirels によると境界層による衝撃波 Mach 数 Ms
の減衰の最大値は,式(5)で与えられます.
n
1 n
 P   x
M S
 M S*  st   
MS
 P1 D   D 
(5)
を満たす流れ場であるのに対し,上方では,Mach
波に遷移しているためです.実験で得られた値Ms
ここで,Pst:標準大気圧(101 kPa),P1:衝撃波
= 2.73を式(2)に代入し,相当するM2を求めると,
前方の初期圧,n:層流境界層 =1/2,乱流境界層
M2 = 1.27 となります.また,Mach 波の角度は,
=1/5,Ms* :Msの関数として与えられる減衰係数,
式(4)で与えられます.
D:等価直径,x:隔膜からの距離です.本実験で
1
*
(4) は,P1 = 3.7 kPa,n = 1/5,Ms = 5.82,D =
  sin 1
M2
38.4 mm,x = 2250 mm (2カ所の圧力変換器の中
式(4)から  = 51.9°となり,実験結果とほぼ
一致します.300 s 後程度からは,くさびから伸
間)となります.これにより,Ms/Ms = -0.0422
すなわち,4.22%減となり,実験で得られた4.21%
びた斜め衝撃波の測定部上面での反射形態がMach
反射に移行しています.そのため,三重点(T),滑
り面(SL),反射衝撃波(RS)が生じています.これ
は,測定部下流の圧力( 背圧) が上昇したため,
と同一となります.
さら に ,熱気 流 持 続 時間 の 減 衰 に つい て の
Mirels の理論を適用すると,今回の実験条件で
は,単純理論で得られる持続時間の 0.632 倍とな
Mach反射で流れ場の圧力バランスを調整している
ためです.さらに時間が経過すると Mach Stem の
長さが大きくなり,さらなる背圧上昇が読み取れ
ます.600 s 経過で冷気流(Cold gas)が測定部
ります.単純理論で得られた値が 1.05 ms でした
から,約 650 s となり,可視化実験で得られた
結果と一致します.熱気流持続時間の減衰につい
ての Mirels の理論の詳細については,参考文献
直前に到達しました.700 s後には冷気流が測定
部を通過しています.また,流路の中心部に冷気
流が集中しています.これは,単純理論では,冷
気流の伝播は「接触面」を形成しますが,現実の
に譲ります.
以上から,今回の実験で取得した衝撃波Mach数
と熱気流持続時間について,Mirelsの理論を適用
したところ,当研究室の衝撃波管に対してもよく
流れの多くでは,「接触領域」として3次元的に
伝播するためです.くさびから伸びた斜め衝撃波
のうち,冷気流中の部分の角度が18°であること
が読み取れます.
一致することが確認できました.
可視化の結果から,熱気流持続時間t は600 +
 s となり,単純理論で推算された 1.05 ms と
は大きく異なります.
6
-参考文献-
生井武文,松尾一泰:衝撃波の力学,コロナ社(1983)
Mirels, H. and Mullen, J. F., Physics, Fluids, Vol. 7, No.8, p.
1208 (1964)
Mirels, H., AIAA Journal, Vol. 2, No. 1, p.84 (1964)
【小特集】-卒研発表会(中間)を終えて-
7月30日に行われた卒業研究発表会(中間)を終えての学生の感想を掲載します.
紀平朋樹
【研究テーマ】3x4ST衝撃波管によ
渡部俊輔
【研究テーマ】3x4ST 衝撃波管によ
るノズル流れの基礎研究-衝撃波管
の基礎特性-
るノズル流れの基礎研究-ノズル始
動過程の可視化計測-
月の下旬に,卒業研究の中間発表とい
うものがあった.卒業研究における一
応の節目という感じのものだと思い,取り組ん
だ.今までもパワーポイントを使ったプレゼンを
いもので空は梅雨のじめじめとした雲
から立ち昇るような夏の積乱雲へと変
わり,卒業研究中間発表がやってきました.研究
室に所属し研究テーマを決めてからの今まで,研
したことは何度もあったが,今回のように専門性
の強い内容で発表を行うのは初めてだった.7 分
という恐ろしく短い時間の中で,自分の言いたい
ことをまとめて,人に伝えねばならなかった.そ
究というよりも環境になれ,実験・解析を行うた
めの技術や方法を学ぶことやこれから先への選択
をすることで精一杯でした,気が付けば研究はあ
まり前へ進んでおらず焦りを感じながら中間発表
七
早
ういう意味で大変だった.私は,卒業研究として を迎えました.
小型衝撃波管の基礎特性について調べているのだ
今回の中間発表で重要なことは,如何に自分の
が,発表に臨むうえで,なるべく分かりやすく, 研究について理解しているのかどうかです.研究
少しでも興味をもってもらえるようにという意味 発表において多種多様な人々に自分の研究を理解
で,発表の中では,衝撃波管自体の説明,特に,
構造及び作動原理などにかなり時間を割いた.そ
のため,実験で取得したデータに対する考察など
にあまり触れることが出来なかった.その点に関
してもらうには研究の当事者より一歩下がった客
観性を持ったわかりやすい説明,例えば視覚的に
文字だけを並べるのではなくわかりやすい図を入
れることやなるべく簡潔に述べることなど,が必
しては少々心残りではある.結果として,上手く
伝わったかどうかは定かではないが,限られた時
間の中で,それなりに,なんやかんやと予定どお
りにできたのではないかと感じている.それなり
要です,また同時に研究分野のバックグラウンド
を知る人にも満足のいくものでなければいけませ
ん.この条件を満たすには研究テーマの目的や内
容について表面ではなく 深い理解が必要です.
に納得のいくものだったと,自分では思う.次回 「なるべく簡潔で理論だった発表でなおかつ意味
が最後の発表となるわけだが,実験で得られた のあるもの」を目指して今回中間発表に望みまし
データを上手くまとめ,パワーポイントもより見 た.しかし頭で考えるよりも現実は難しく,作れ
やすく,分かりやすいものにして,この大学生最 ば作るほど本当にこの内容で理解してもらえるの
後のまとめとして満足のいく発表にしたい.とり
あえず,今後も引き続き,渡部君と協力して実験
や数値解析を行って必要なデータの取得を行って
いく予定である.
か,わかりやすい発表なのか疑心暗鬼に陥り,研
究テーマへの理解の浅さと発表能力の低さを痛感
しました.その状態のまま発表当日を向かえ,結
局伝えたいことを強調して言うことができず,満
足のいく発表を行うことができませんでした.
そんな卒業研究中間発表を通して研究内容を伝
えることの難しさを学び,自分の研究に対する理
解度を知り,今後の予定の整理をつけることがで
きたと考えています.また今後の研究に対する意
欲をあげることができました.卒業研究最終発表
においては行ってきた研究を理解してもらうた
め,日々理解を深め,定めた計画通りに研究を一
7
太田光優
【研究テーマ】無隔膜衝撃波管に
塚田祐貴
【研究テーマ】無隔膜衝撃波管に
よる高レイノルズ数渦輪の生成・崩
壊過程の基礎研究-衝撃波管の基礎
特性 -
よる高レイノルズ数渦輪の生成・崩
壊過程の基礎研究-生成・崩壊過程
の可視化-
月 30 日に東海大学湘南キャンパスで行わ
れた卒業研究中間発表会にて,私の卒業
研究のこれまでの経過について中間報告を致しま
した.今回の発表会では,卒業研究で使用してい
は無隔膜衝撃波管を用いた渦輪の可視
化実験を卒業研究のテーマにしていま
す.今回の中間発表では無隔膜衝撃波管の特徴や
可視化法を中心に発表を行いましたが,私にとっ
る実験装置「無隔膜衝撃波管」の構造や原理,何
故,隔膜式衝撃波管より発生する衝撃波 Mach 数
の繰り返し性が高いのか,そして,本研究を進め
ることで,どのような問題が解決するのかについ
て大勢の前で発表する初めての機会であったた
め,本番が近づくにつれて不安は増す一方でし
た.しかし,発表本番では次に話す言葉が自然に
口から出るほど,余裕を持って発表することがで
て報告させて頂きました .
無隔膜式の衝撃波管を隔膜式の衝撃波管と比較
してみた場合に,実験の繰り返し性が高いことや
実験精度の高くなっていることなどについて,ど
きました.これは,本番を迎えるまでに発表のス
ライドを何度も練り上げ,さらに自分の気づかな
い間違いをリハーサルにて先生に指摘を頂いて作
り上げたことが大きな要因だったと思います.ま
のように聴講されていた方々に理解しやすく説明
するか工夫を凝らしました.また,私の卒業研究
で用いるD50ST無隔膜衝撃波管についての構造や
原理,最大の特徴である任意の時間に衝撃波を発
た,一人で何度も練習を重ねて時間配分を本番内
でうまく調節することができたことも要因の一つ
だと思います.しかし,初めての発表ということ
で先生や研究室の先輩からの助言,自分自身での
7
私
生することができる,二重隔膜式の作動原理につ 発見で多くの反省すべき点が浮彫りになりまし
いては特に時間を割いて詳しく説明致しました. た.そのひとつが質疑応答への対応の仕方です.
実感としても,聴講されていた方々にも理解して
私は発表を終えて質問を受けたのですが,口頭
頂けたかと思います.
のみでの説明となってしまい,どうしても自分の
時間遅れなく衝撃波を発生することができる,
二重隔膜式の採用している理由というのは,衝撃
波の発生に必須となる高圧室と低圧室のデータに
加えて,作動する際の時間・気温・大気圧のデー
言葉だけでは相手にうまく伝わりませんでした.
これは限られた時間内で,5 人まとめての質疑応
答であったため,図を用いた分かりやすい説明と
いう意識が欠けてしまったことも原因ですが,そ
タを取得することができるため,より奥深い無隔
膜衝撃波管の基礎特性が解明されることになると
考えているためです.
今後も引き続き,この D50ST 無隔膜衝撃波管の
れ以上に発表ばかりに気をとられて,質疑応答へ
の準備を何もしていなかった甘さ,そして相手へ
の配慮の無さが問題だったと反省しています.
今回の発表では良いことも悪いことも収穫の多
基礎特性についての詳細なデータを取得し,どこ
が重要になってくるか見極めながら,卒業研究を
進行させていきたいと考えております.
かった発表でした.どんな発表が分かりやすく,
どのようなスライドが見やすいのか.自分が発表
を経験したことだけでなく,逆の立場になって,
他人の発表を聞いたからこそ客観的に自分を見つ
めて,反省することもできました.次回の発表で
はこの貴重な経験を活かし,さらに良い発表をす
るためには何が必要なのかをもう一度よく考え
て,また新しい問題が発見できるように取り組ん
でいきたいと思います.
8
松田竜太
【研究テーマ】ハイブリッド・ロ
竹内 仙
【研究テーマ】レーザ・ブレークダ
ケットの基礎研究
中
ウン法による球状衝撃波の発生と伝
播特性
卒
間発表では前回に記した内容を具体的
に,かつ多少細かく説明しました.元々
人前で発表するのはそれほど苦手では無かったの
ですが,手応えというのはあまり感じられません
業研究の中間発表を終えて現在私は実
験に必要な器具や計測装置,実験装置
の操作マニュアルの手配,数値解析を行うために
UNIXの勉強や論文調査による基礎式の情報収集な
でした.しかし質問を一つ頂きましたがその場で
は答えられず,自分の勉強不足な点を再発見する
ことができ良い経験となりました.中間発表以後
は大学院試験が控えていたため,研究に専念でき
ど実際に実験・数値解析を行うための準備を始め
ている.
中間発表は主に「私の研究は何に生かされるの
か」「私の研究で利用される現象は何なのか」ま
ていませんでした.大学院の試験は学部のそれと
は違い専門的な内容が出るため準備が必要で,特
に英語は継続的な勉強が必須でかなり苦労し,お
世辞にもできたとは言えないものでした.私は化
た「なぜそのような現象が起こるのか」という事
について詳しく説明し最後に今後の展望を述べる
という形で行った.実験原理や研究背景の説明で
は自分なりに理論や類似研究の例を調べ理解した
学の学科を志望しました.
航空宇宙学科では燃焼工学や流体工学がありエ
ンジン等のシステム全体を見られるのですが,化
学推進剤は化学反応を行いながら燃焼を行うので
上でのぞみ,私の研究の必要性や原理について
しっかりと説明できたと思う.しかし見落として
いた項目,理解が不完全な項目があったため他の
研究者の方からの質問にうまく答えられなかった
化学的な視点が必要だと考えた結果でした.独学
で触媒の働き,化学反応操作,化学工学などを学
びました.先輩は忙しそうでも私の質問に答えて
頂いて大変お世話になりました.
という反省が残った.この反省をもとにこれから
は自分の研究に関係のありそうな技術や最新の研
究など幅広く情報を集めながら実験を進めていき
たいと思った.
九月になり院試も終わったため,これからの研
究となってしまい水書研究室の中では,若干遅れ
てしまっているとさえ思います.
私の研究は大学院での内容も含め,HAN 系液体
さて,中間発表を終えてこれから具体的な実験
を行っていくのだが,現在問題は山積みである.
具体的には実験装置に関わるものである.私の研
究で用いるレーザ装置はとても古いものであるた
推進剤の基礎研究と,それを用いた衛星向けの姿
勢制御用スラスタへの応用を目指した基礎実験で
す.学部生のうちは比較的容易である基礎実験に
よるデータの集積を行いたいと思っています.
めマニュアルが手元になく,メーカーに問い合わ
せなければならない事,またメーカーにもマニュ
アルがもう存在しない可能性もある.他にもマ
ニュアルが無事手に入ったとして,実際に装置を
しかし実験を行う上で必要な,基礎的な HAN 系
液体推進剤の特徴,パラメータ,挙動を把握し尽
くしている訳ではありません.また来年度からは
この研究テーマを継続して研究を行う学生は私し
操作してみたら思うように動作しない事も十分考
えられる.このような問題点があるため実験を行
えないという事も有り得る.そのため,例えばも
し実験が行えなくなった場合は数値解析を軸にし
かいなくなるため,早急に先輩方からノウハウを
学ばなければならず一つの研究内容に専念できる
か不安ではあります.今後は HAN 系液体推進剤に
ついて総合的な見解を持てるように研究を進めて
て研究を進めていく,または他の研究室に実験装
置の貸し出しを依頼するなど,常に複数の選択肢
を考慮に入れて研究を進めていきたいと思う.
いきたいです.
9
高橋悠輔
牧野
【研究テーマ】ランプドパラメー
タを用いた飛しょう体加速装置用固
体発射薬の燃焼計算
卒
仁
【研究テーマ】極超音速空力加熱
の数値解析手法- SPRADIAN-
卒
業研究中間発表を終えて,一番感じた
ことは自分の卒業研究内容の把握が完
全では無かったということです.
業研究中間発表会では,先生方の指導
のおかげで,少し緊張しましたが,良い
発表ができたと思います.ここでは,これまでの
どのような理由でこのような研究をしようと
思ったのか,また,どのような結果が予想される
のか,どのような研究内容に沿って行うのか,な
ど数え上げたら切りがありません.私自身,文献
研究の反省と,後期の研究の抱負について述べて
いきたいと思います.
自分の卒業研究のテーマは,電磁ヒートシール
ドに関する研究というもので,大気圏再突入時に
や先生の御教示によって,どのようにしたら良い
のかなど自分なりに考えていたのですが,今回の
卒業研究中間発表を行ったことにより,その考え
が浅はかであり,更に“つもり”になっていただ
電離した機体周りのプラズマに磁場を印加させる
ことにより,機体からの衝撃波離脱距離を大きく
するものです.今回の研究では,再突入環境を模
擬した衝撃波管を用いて,再突入機体を模擬した
けでした.しかしながら,発表を行ったことに
よって自分のその悪い部分を自己認識することが
できたことは良い経験となりました.また,他の
方々の発表の仕方,スライドの使い方,表現力や
永久磁石周りの衝撃波離脱距離を高速度カメラを
用いることにより観察するというものです.実験
では,気流条件を変化させたり磁場強度を変化さ
せた時の,衝撃波離脱距離における磁場効果の検
時間配分の仕方など参考になる点を発見できたこ
とも良い経験となりました.例えば,基本的こと
を言ってしまえば,自分は何をどのように発表し
証を行いました.このときに最も苦労したこと
は,一定の気流条件で磁場を変化させた時や,一
定の磁場強度で気流条件を変化させた時の,衝撃
たいのか,ということです.それが前述でも述べ
た通り自分の研究内容を把握しなければ,そのよ
うなことは出来ません.
以上のように,自分の不甲斐なさを再確認させ
波離脱距離の変化を比較する際に,それぞれのオ
ペレーションでの再現性のあるデータを得ること
です.衝撃波管を用いて衝撃波を一回打つのに一
時間程度時間を要し,60回以上衝撃波を打つこと
られ,改善すべく努力しなければならないと思い となったので,体力的に大変でした.
知らされました.
後期の研究では,実験を続けると同時に,解析
中間発表を終え,夏期長期休暇となりますが, も進めていき,磁場強度と衝撃波離脱距離の関係
その経験を踏まえ悪い点を改善しようと思ってい を評価していきたいと考えています.また,衝撃
ます.また,先生のお薦めによりデトネーション
研究会に参加出来ることとなりました.そこで他
大学の方々と研究の仕方,発表の仕方など様々な
点で切磋琢磨できると思いますので,今後の卒業
波管についてや,極超音速流れで起こっている現
象,衝撃波と磁場の干渉についての理論などにつ
いて,より深く勉強し,理解していきたいです.
また,これから卒業論文を書くようになるので,
研究に向けて糧にしていきたいと思います.その
ためにも日々,勉学に努めて目標に向かっていか
なければなりません.自分の能力の底上げと努力
を惜しまないようにしよう努めていきたいと思う
多くの論文に触れ,論文とはどのようなものであ
り,どのように書いていくのかということも知っ
ておくべきだと考えています.
と同時に,今後の予定を修正し詳細に計画してい
こうと思います.
10
高橋康太
うものである.与えられた課題を行うのと自分で
【研究テーマ】水中衝撃波フォー
カシングの数値計算
作った課題を自分なりに研究することには大きな
違いがあった.
そして,今回のような研究をすることによっ
て,自分が自分の研究に対しての理解度が明確に
回の卒研の発表の私の率直な感想は,
今までとは「まったく違う」というも
のだった.様々な先生方や学科の友人が聴いてい
なってきた.まず,私の研究は数値解析が主なも
のであるが,数値解析ソフトを理解し,効果的に
使用するためにすべきことの多さ,数値解析手法
の理解などの具体的な課題を得ることができた.
る中で,大きなスクリーンに投影した私の卒研に
ついての内容を発表し,それについての質問を受
けるというものには大変緊張した.今まででは多
少理解していない部分があっても,質問などを受
実験については未だにどのように行うかは決定し
ていないので,今回の卒研の発表をすることはで
きなかったが,実験のまったくない研究は信用性
や具体性がない研究になってしまうと考えられる
ける機会がなかったのでやり過ごすことができた
が,今回はそうはいかないので事前の準備を通常
よりも行った.また,今まで授業で行った発表と
いうのは与えられた課題を自分なりに理解し,そ
ので,9月中には実験装置や実験方法を考えてい
くべきだと改めて感じた.
今後は,より研究に具体性を持ち,より高い研
究をするための知識を磨き,学生生活の集大成を
れを聴衆にきいてもらうというものであった.し
かし,今回行った卒研の発表は自分で研究テーマ
を決め,自分で課題を作り,研究背景・研究目的・
実験・数値解析・考察・今後の課題を自ら文献を
飾ることができるような研究に発展できるよう努
力していこうと考えている.そして,はじめに考
えた研究目的に対して道を外さずに結果・考察を
し,より完成度が高く,目標により近づいた卒業
調査するなどして,理解し,目標を達成するとい
研究にしていきたい.
今
写真. 卒業研究発表会
(中間)
での発表風景
11
【参加報告】
日本流体力学会「年会2 0 0 8 」
航空宇宙学科
水書稔治
9 月 4 日から 7 日にかけて神戸大学工学部(兵
庫県神戸市灘区)にて日本流体力学会「年会2008」
が開催され,筆者が講演発表「レーザ誘起熱音響
波による非定常温度場計測法」を行いました.
日本流体力学会は,我が国における流体力学研
究の代表的学会です.学会誌「ながれ」が有名で
す.今回の年会では,発足40周年記念行事も同時
に行われ,記念講演会および記念パーティーが神
戸大学百年記念館で 8 月 5 日に行われました.
神戸大学工学部は,阪急六甲駅から徒歩20分程
度のところに位置しています.この地区(六甲台
地区)は工学部の他,理系学部(理・農)と文系
学部が同居しており,天気の良い日は神戸の街を
一望できるすばらしいロケーションです.神戸大
学は,総合大学で・り,この地区の他に医学部(楠
地区)および海事科学部(深江地区,2003 年に神
戸商船大学と合併)を有しています.
筆者が発表したセッションは大会初日の午後に
開かれた「流体計測」でした.今回は,圧縮性流
れを研究対象にしている発表が少なく,筆者以外
は,千葉大学の前野先生の研究室(前野研)の発
表のみでした.前野研では,当研究室と同様に圧
縮性流れを主たる研究テーマとして取り組んでお
り.衝撃波や関連現象の三次元CT干渉計測や極
超音速流れの分光計測を得意としています.今回
は,強い衝撃波背後の気体温度をコヒーレント・
アンチ・ストークス分光法(CARS)で計測した結
果を報告され,気体分子の回転温度振動温度の励
起・緩和過程に関する新知見について説明されて
いました.他の発表は渦関連のものが目立ちまし
た.渦関連現象は流体力学の永遠のテーマですの
で,多くの研究者が取り組んでいます.
会期中に,神戸大学海事科学部阿部研究室を訪
問しました.阿部晃久教授は東北大学流体科学研
究所高山研究室のご出身で,衝撃波研究がご専門
12
写真. 神戸大学工学部
です.海事科学(かつての商船学科)と衝撃波研
究は直接結び付かない印象が・ります.阿部教授
は,船のバラスト水に含まれる微生物を水中衝撃
波を利用して殺菌する研究をされています.貨物
船が積み荷を目的港で降ろした後,帰路,空荷で
は船のバランスが悪くなるため,降ろした積み荷
と同じ重さの海水を船内のタンクに入れて航行し
ます.船のバランスを取るために積み込むこの海
水をバラスト水と言います.積み込むバラスト水
は港の海水をそのまま使うので,海水中の微生物
や海生生物の幼生などが混じります.このバラス
ト水は,別の港で貨物を積み込む際にそのまま排
水されます.すなわち,外国の生物が海水中に放
出されることになり,場合によっては生態系に影
響を与えます.近年,このバラスト水による生態
系破壊や防疫問題が問題になっているとのことで
す.阿部教授はバラスト水を安価かつ確実に殺菌
する方法に衝撃波の利用を研究されています.
来年の年会は東洋大学白山キャンパス(東京都
文京区)で開催される予定とのことです.近い場
所での開催ですから,当研究室から学生の発表を
多数行いたいと考えています.
ESHP Workshop 2008
航空宇宙学科
9 月 10 日から 12 日にかけて熊本大学工学部に
てInternational Workshop on Explosion, Shock
wave and Hypervelocity Phenomena 2008 (ESHP
Workshop 2008) が開催され,特別企画パネル
ディスカッション「実験技術の難しさ-失敗が教
える成功の秘訣-」のパネリストの一人として参
加依頼がありましたので,講演発表と併せて参加
しました.
水書稔治
本大学),赤星教授(九工大),久保田博士(産総
研),Thadhani 教授(米国ジョージア工科大学)が
参加しました.各パネリストからそれぞれの研究
分野における実験手法と失敗例ならびに失敗から
何を学びどう克服したかを 15 分程度説明し,聴
衆,パネリストを交えたディスカッションが行わ
れました.
本国際会議は,衝撃工学の産業応用を主たる討
論課題としており,2006 年の第 1 回開催以来,毎
年開催されています.羽田から熊本空港までのフ
ライト時間は約 1 時間半,往路帰路とも晴れて快
適なフライトでした.特に往路では,羽田出発後
直ぐに眼下に湘南キャンパスを確認することがで
きました.筆者は,今回初めての熊本大学訪問
だったため,楽しみにしていた学会参加でした.
熊本大学工学部(黒髪地区)は,熊本の中心市
街からバスで15分程度の郊外にあります.熊本大
学工学部は旧制第五高等学校から百年以上の歴史
を有する我が国屈指の伝統校であり,南九州地区
写真. 衝撃・極限環境研究センター内の爆発チャンバ内を
計測する高速度ビデオカメラ;壁の反対側が爆発チャンバ内
部. 三つ の 窓越し に爆 発現象 を画 像計測 す る .
の工学研究・教育の拠点です.また,衝撃関連の
研究では,衝撃・極限環境研究センターが設置さ
れており,我が国の大学では唯一,大型爆発チャ
ンバ(爆薬を使用した実験が安全に実施可能な金
パネルディスカッションで筆者は,高速飛しょ
う体実験の可視化計測ならびに野外でレーザ光を
用いた高速飛しょう体速度計測実験の概要につい
属製密閉空間)による研究を行っています.また, て説明し,野外で精度良く計測することの困難さ
本年から,グローバル COE プログラム「衝撃エネ について説明しました.野外では,季節により降
ルギー工学グローバル先導拠点」に採択され,研 雪や強風といった環境下で計測を実施せねばなら
究者,設備のさらなる充実が図られる予定です. ず,実験室のような管理された環境下では想像の
付かない擾乱が計測を阻みます.どのようにして
学会では,熊本大学衝撃・極限環境研究セン
ター所属の研究者を中心とした日本の衝撃,材料
物性の研究者,米国,欧州,中国,韓国などから
外的擾乱に抗堪性のある計測系とするかは,経験
に基づいたアイデアが重要です.
参加した研究者,総勢50名程度が研究発表を行い
ました.
学会行事として,前述の衝撃・極限環境研究セ
今回の特別企画であるパネルディスカッション
では,パネリストとして,筆者以外,藤原教授(熊
ンター内の見学会も行われました.また,パー
ティーでは,はじめて訪れたセンターの研究者,
教員と親睦を深め,今後の情報交換の継続を依頼
しました.
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デトネーション研究会「若手夏の学校2 0 0 8 」
学部4年
高橋悠輔
道大学,横浜国立大学,九州大学,東京大学,東
第 3 回デトネーション研究会「若手夏の学校」 京工業大学ならびに今回の夏の学校の主催大学で
(以下,夏の学校)が平成 20 年 8 月 29 日から 31 ある広島大学の総勢 11 校が参加され,参加人数
日まで,長野県茅野市北山白樺湖のホテルにおい は,学生(学部・修士・博士)だけで 57 名と大変
賑やかなものとなりました.また,研究機関及び
て開催されました(写真 1.参照).
企業で研究をなされている方の参加もあり,各々
この夏の学校は,デトネーション(衝撃波に先 が,研究員の方々と交流を含め,講義内容の質問
導される火炎伝ぱ;爆ごう波)の基礎理論を始め, や自分の研究の結果及び疑問点などについて相談
1. はじめに
デトネーションの基礎実験及び計測方法,数値解
析,さらにそれらの技術を応用した実験(パルス
デトネーションエンジン)等について,学生を対
象として講義をするものです.また,学生間での
交流の促進を目的としています.この夏の学校は
毎年学生の夏期長期休暇を利用し,参加大学の学
生らが中心となって執り行い,今回が第 3 回目と
なりました.第 1 回及び第 2 回においては関東甲
信越地区国立大学共同利用施設の山中共同研修所
にて夏の学校が行われてきました.筆者は今回が
初参加ということもあり,またデトネーションに
ついても初心者であるため,どのようなレベルの
講義であるか少々不安でした.
する場面も見受けられました.
今回の夏の学校は,2 つの部屋に分かれ同時進
行で 1 時間の講義を行われ,講義数は 3 日間で計
14 つの講義(表1.参照)が行われました.聴講
に関しては大学または研究室単位でどの講義を聴
くというわけではなく,各々が自分の研究の糧と
なる講義へ参加するというスタンスのものでし
た.筆者が参加する頃には初日の No.1 ~ No.3 の
講義が既に終わっており,デトネーションについ
て初心者である筆者が一番聞きたかった No.1 を
聞き逃してしまったというのが非常に悔やまれる
ところです.
東海大学湘南校舎から白樺湖に向かうには,高
速バス及び電車の2通りの交通手段があげられま
す.まず高速バスの場合,新宿から中央道茅野に
行き,下車後徒歩で JR茅野駅まで向かいます.次
に電車の場合は,八王子から中央本線の電車に乗
り,茅野駅に向かいます.その後,茅野駅から白
樺湖行きのバスに乗り,白樺湖へと向かいます.
筆者の場合,出発前日に大雨が降ってしまいその
影響で中央本線の高尾~大月駅間で運行が出来な
い状態になってしまいました.そのため遅刻覚悟
で急遽,前日に予約していた切符を払い戻し,高
速バスで茅野駅に向かうこととなりました.
2. 夏の学校について
今回参加された各大学は,当大学と,青山学院
大学,慶應義塾大学,筑波大学,徳島大学,北海
14
写真 1. 白樺湖を背景に参加者全員が集合 (撮影 : 産業技
術総合研究所 田中克己博士)
さて,参加した頃には懇談会が行われており, デトネーションの数値解析などに必要な代表的な
自己紹介と各研究室が今まで研究してきた内容を ソフトの紹介及び使用法 の講義でありました.
参加者に発表する場でした.懇談会において,筆
者は初参加のため研究の発表ではなく少々場違い
な感じではあったものの自校の紹介と所属研究室
についての発表をさせて頂きました.筆者はこれ
AISTJANの解析コードの説明が産総研の田中克己
博士によって行われましたが,一方,STANJAN 及
びZNDのツールについて使用方法の説明に時間が
割かれてしまったのか,ツール内のスキームの説
までこのような場を借り,他大学の方々の前で発
表するということがありませんでした.発表内容
の詳細については割愛いたしますが,発表内容に
対して様々な方々から質疑を頂いたことに大変あ
明が殆どなされていなかったので残念に思われま
した.
りがたく思います.
2 日目の最終講義には日本工機(株)の取締役
である加藤幸夫博士の特別講義(No.10)が行われ
ました.筆者の卒業研究の内容に直結するため,
一声ももらさず,また企業での研究内容について
聴講させて頂きました.また,日々どういった研
究がなされているのかということを筆者はよく分
かっていないため,非常に参考になりました.加
藤博士は火薬・爆薬の可能性をより多岐に応用で
きる技術の集約化が今後の命題であるとし,興味
のある学生は数値シミュレーションを身につけて
欲しいと仰っていました.その晩のフリーディス
カッションでは,運良く加藤博士と慶応義塾大学
で発射薬の燃焼計算などを研究なさっている三浦
啓晶助教の隣に座ることができ,お二人の研究に
対する真摯なお話を聞くことができたため大変勉
強になりました.
3. おわりに
3日間という非常に短い時間にデトネーション
について完全に理解するというのは大変難しいこ
とです.しかし,今回の夏の学校に参加したこと
で現在のデトネーションの研究動向というものを
垣間見ることができ,さらに,デトネーションに
ついて研究している同年代の方々と様々な情報を
会場となったホテル「信濃プリンスシラカバ」 共有することができました.また,学生によるデ
は,建物の外見は普通のホテルと変わりありませ トネーションの研究に対する質の高さも感じるこ
んが,ホテルというよりはペンションに近いもの とができ,そのような方々と出会うことができた
でした.しかしながら,大浴場は広く,部屋も 5 ため,大変貴重な体験をすることができました.
人で利用するには比較的広いものでした.また, 現在はまだデトネーションのみでの学会というの
各部屋からは白樺湖が一望できるので,その日そ
の日の様子を観察でき,宿泊料も格安であるた
め,合宿にはもってこいの宿泊場所だと感じまし
た.
はありませんが,P D E などによって将来はデト
ネーションという現象が一つの学会として成り立
つと信じています.来年の夏の学校では,自らの
研究成果を発表したいと考えています.
最終日の 3 日目には,1 日目及び 2 日目の天候
とはうって変わり暑いくらいに晴れ渡っており,
それまで一望が困難だった白樺湖の快晴の姿を一
望できそれまで雨によって憂鬱にさせられていた
気持ちも一気に晴れました.3 日目の講義は主に
15
東海大学工学部
航空宇宙学科航空宇宙学専攻
水書研究室
研究活動季報 2 0 0 8 年秋号 Vol. 1, No. 2
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