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マルチモダリティ脳機能画像を用いた精神疾患の病態解明および診断

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マルチモダリティ脳機能画像を用いた精神疾患の病態解明および診断
臨床研究中核病院整備事業 群馬大学医学部附属病院
マルチモダリティ脳機能画像を用いた
精神疾患の病態解明および診断ツールの開発
プロジェクト責任者 群馬大学大学院医学系研究科神経精神医学
武井雄一, 福田正人
MEG で評価される表情に対する反応は
月経周期で変化する可能性がある
精神医療の困難-臨床検査の未確立
精神疾患の病態研究は、 脳機能画像分野で盛んであるが、 未だ精神疾患
診断のために保険診療が可能な脳機能画像はなく、 主に除外診断としての
今後 MEG を用いて精神疾患の診断 ・ 病態生理を電気生理学的な側面から
Magnetic resonance imaging (MRI)、 脳波、 血液検査などが行われているのみ
検討する予備的検討として、 健常者を対象に表情認知課題を用いて、 特に
である。 このため現状ではほとんど問診により疾患診断を特定している。
月経周期に着目して検討を行った。
対象は健常被検者 8 名 (年齢 25.1 歳、 男性 5 名、 女性 3 名)
現在の臨床 ・ 研究の現状と問題点
症状の変化
治療反応性
問診
症状
診断
女性の検査スケジュール
診断 ・ 治療
の変更
卵胞期
黄体期
エストロゲン
プロゲステロン
精神症状の出現しやすい時期
月経周期
除外診断としての MRI、
血液検査、 脳波
0
医師間で診断が一致しない
薬剤選択に治療プロセスを必要とすることが多い
新たな症状の出現による診断、 治療の変更
早期発見、 治療遷延化の防止、 再発予測などが困難
研究面では生物学的に不均一な集団を検討することになる
月経
8
12
14 排卵
26
MEG
(卵胞期後期)
28 日
30
MEG
(黄体期期後期)
全被験者のチャンネルレベルでの総加算平均データ
全チャンネル表示
右後頭部の magnetometer の拡大表示
客観的な診断の確立へ向けて
将来の臨床 ・ 研究
左
マルチモダリティ脳機能画像
右
grandaverage (fT/cm)
前
問診
症状
診断
治療終結
再発予防
除外診断としての MRI、
血液検査、 脳波
医師間の診断の不一致の解消
治療開始から適切な診断、 最適な薬剤選択、 治療の効率化
治療終結、 再発予防への寄与
生物学的に均一な集団を対象にした研究が可能に
神経生理 (Magnetoencephalography; MEG)、 脳血流 (Near-infrared
spectroscopy; NIRS)、 脳構造 (MRI)、 神経伝達物質 (Magnetic Resonance
Spectroscopy; MRS) それぞれのレベルを評価できるマルチモダリティ脳機能
画像を同一対象で評価することにより、 病態の理解、 診断ツールの開発を
行い、 保険適応拡大を目的とする。
本年度は、 NIRS では語流暢性課題を用いた抑うつ症状の鑑別診断の保険
収載に向けた取り組みを行った。 また MEG では、 精神疾患検討のための
事前の検討として、 女性の生理周期に伴う表情刺激に対する反応を評価した。
語流暢性課題を用いた NIRS による評価は、
「抑うつ症状の鑑別診断の補助に使用するもの」
として、 保険収載
恐怖
中立
家
-100
0
100
170 200
300
400
time (ms)
後
チャンネルレベルの各条件の総加算平均波形では、 脳の深部の信号を良く
反映する magnetometer で、 右後頭部の 170ms における反応が家条件より
表情条件 (恐怖 ・ 中立) で明らかに大きかった。
各群の M170ms のソースレベルデータの加算平均表示
すべて
右FFA
男性
女性
女性(卵胞期後期)
女性(黄体期後期)
恐怖 - 家
中立 - 家
すべての群で、 右紡錘状回内の顔認識領域 (右 fusiform face area; FFA) の
反応が家条件より表情条件 (恐怖 ・ 中立) で明らかに大きかった。
右 FFA におけるソースレベルデータの加算平均波形
全被験者の加算平均波形(右 FFA)
恐怖
中立
全被験者
男性
女性
女性(黄体期後期)
女性(卵胞期後期)
170
全被験者
男性
女性
女性(黄体期後期)
女性(卵胞期後期)
170
170
各被検者群の反応は、 中立条件では各群に差を認めなかったが、 一方で、
恐怖表情では、 女性の黄体期後期の反応が卵胞期後期の反応よりも低下。
情動刺激に対する情報処理の早期の段階においても、 月経周期の影響が
あることが示唆される。
まとめ
健常者、 うつ病、 双極性障害、 統合失調症を対象に大規模共同研究を
行い、 光トポグラフィ―検査は、 2014 年 4 月 1 日より、
「抑うつ症状の鑑別診断の補助に使用するもの」 として、 保険診療となった。
また、 国立精神 ・ 神経医療研究センターにおいて光トポグラフィーの判読の
技術を普及するため定期的に講習会を行った。
本年度は、 NIRS の保険収載に向けた取り組みを行い、 2014 年 4 月 1 日より
「抑うつ症状の鑑別診断の補助に使用するもの」 として、 保険診療となった。
また、 MEG では、 表情認知課題を用いて健常者の事前検討を行い、
月経周期との関係を調べ、 情動処理の早期の段階から変化している可能性を
示唆することが出来た。
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