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共感とミラーニューロン

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共感とミラーニューロン
目次
1. はじめに
2. ミラーニューロンとは?
共感とミラーニューロン
3. サルのミラーシステム
4. ヒトのミラーシステム
5. その機能とシミュレーション理論
6. 自己身体感覚との関係
Yoshihiro Miyake
7. まとめ
Tokyo Institute of Technology
E-mail: [email protected]
URL: http://www.myk.dis.titech.ac.jp
ⒸDominik Mentzos
はじめに
■主客二元論という立場
近代科学の基盤としての主客分離(デカルト)
主体と客体の断絶
■他者理解の問題
客体としてモノが主体(他者)として存在していること
他者にこころはあるのか?
他者のこころがわかるか?
■主客分離の限界を越える
主客非分離状態としての間主観性(フッサール)
身体を介する行為的カップリング(メルロー=ポンティ)
はじめに
主客分離の基盤を確立した近代の祖と言われるデカルトにおいてさえ、彼
はそのような考え方の限界を意識していた。彼の著書『哲学原理』には次
のように書かれている。
「真理を探究するためには、一生に一度は、あらゆる事項について、可能
なかぎり疑わなければならない。われわれは子供として生まれ、われわれ
の理性の完全な使い方を身につける以前から、感情的事物について、さま
ざまな判断をくだしてきたので、多くの先入見によって真の認識から遠ざ
けられている。そこで、そのような先入見から自由になるためには、その
うちにほんのわずかでも不確実さの疑念の認められるあらゆる事項につい
て、一生に一度は、疑うよう努める以外にはないように思われる。疑わし
いものは、誤っているものとさえみなすべきである。それだけでなく、何
が最も確実であり、認識にとって最も容易であるかを、よりいっそう明ら
かに見いだすためには、われわれが疑うであろうものを誤っているものと
みなすことが有益であろう。しかし、この懐疑を実生活におよぼしてはな
らない」
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はじめに
経済学の父と呼ばれるアダム・スミスにおいても同様である。彼が『国富論
』を書いたことは有名であるが、それと同時に彼は『道徳感情論』という本
を執筆している。そこでは同感(sympathy)の重要性を強調しており、以下
のように書いている。
「人間がどれほど利己的なものと考えられようとも、人間の本性にはあきら
かにいくつかの原理があって、それが他人の運命に関心をもたせ、他人の幸
福からは、それをみるよろこびのほかには、何も得られないのに、それを自
分にとって必要なものとするのである。この種のものとしては憐れみまたは
同情があるが、これはわれわれが他人の不幸をみたり、あるいは非常に如実
にそれを考えさせられるときに、それによって感じる情緒である。われわれ
がしばしば他人の悲しみから悲しみをひきだすことはあまりにも明白な事実
であって、それを証明するための例を必要としない。それというのも、この
感情は、人間本性の他のすべての本源的な情念とおなじように、けっして有
徳で人道的な人びとに限られないからである。もっとも、そういう人びとは
おそらくもっとも鋭敏な感受性でそれを感じるではあろうが。最大の悪人、
社会の法のもっとも無法な侵犯者でもまったくこの感情をもっていないこと
はないのである」
はじめに
■主客二元論という立場
近代科学の基盤としての主客分離(デカルト)
主体と客体の断絶
■他者理解の問題
客体としてモノが主体(他者)として存在していること
他者にこころはあるのか?
他者のこころがわかるか?
■主客分離の限界を越える
主客非分離状態としての間主観性(フッサール)
身体を介する行為的カップリング(メルロー=ポンティ)
↓
「幼児の対人関係」第1部 幼児における他人知覚の問題
はじめに
はじめに
古典心理学の前提条件
前提条件が生じさせる問題
心理作用とか心的なものとは、当人にのみ与えられているものだ、
ということです。実際、私の場合であれ他人の場合であれ、心理作
用を構成しているものは、他と交通し合えないものだということが、
もはやこれ以上吟味や議論をするまでもなく承認されることだと思
われていたわけです。私の中にある心的過程を捉えうるのは私だけ
であって、たとえば私の緑の感覚とか私の赤の感覚など、そういっ
た私の感覚は、それが私にわかるようにはあなたにはわからないし、
また私の代りにあなたがそれを体験するわけにはいかないだろう、
というのです。そこから、他人の心理作用は、少なくともその現実
存在そのものにおいては、私には全く接近できないものだという考
えが帰結します。他人の生活や他人の考えは、その仮定からして、
ただ一人の個人、つまり当事者の観察にのみ開かれるものである以
上、私はそれに到達できないことになります。
人間に良く似た人体模型を前にして、つまり或る特徴をもった身振
りをするこの物体を前にして、どうして私は、その物体が「心理作
用」によって住まわれていると思うようになるのか、と。いったい、
どうして私は、私の前にあるこの物体を或る心理作用の外皮だと考
えるようになったのでしょうか。どうして私は、言わばこの物体を
通して、他人の心理作用を知覚しうるのでしょうか。
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はじめに
はじめに
古典心理学の立場
この立場に伴う難題
私の面前で演じられる他人の身体的動作や話し振りを目撃しながら、
そのようにして与えられる記号の全体や、他人の身体が見せてくれ
る表情の全体を一つの機会にして、一種の<記号解釈>を行なうの
だ、という仮定です。他人の身体の後ろに、私自身が自分の身体に
ついて感じているものを、言わば投影するというわけです。とにか
く自分自身の身体について持っている内的経験を、他人に移し変え
るということになるのです。
私の<他人認識>や<他人経験>というものが一種の観念連合や
判断の作用に帰せられ、私が他人の中に私自身の内的経験の与件
を投影することにもとづくのだと見られる点です。ところが、他
人知覚は比較的に発生がかなり早いものなのです。幼児が<表情
を知覚する>というその事実は、きわめて早期に出現するのです。
幼児は、きわめて早い時期から、いろいろな顔の表情、たとえば
笑顔を感ずることができます。
はじめに
はじめに
この立場に伴う難題
古典的心理学の偏見の放棄
もし笑顔というものの全体的な意味を理解するようになり、そして
たとえば笑顔は大体好意を意味するものだということを理解するよ
うになるのに、今話したような複雑な操作が必要だとすれば、すな
わち他人の笑顔に対する視覚的知覚から出発して、その他人の視覚
的表情を、自分が嬉しいときや好意を感じたときに自分で行なう運
動と結びつけながら、他人の中に<好意>というものを投入するの
だとしたら、しかもその<好意>が、その経験を自分の中でするこ
とはあっても、他人のそれを直接に把握することはできないといっ
たものだとしたら、どうして右のようなことが起こりえましょうか。
こうした複雑な過程は、他人知覚が比較的早く起こるということと
両立できないように思われます。
放棄しなければならない根本的偏見とは、心理作用が当人にしか近
づきえないものであって、私の心理作用も私だけが近づくことがで
きて、外からは見えないとする偏見です。私の「心理作用」は、きっ
ちり自己自身に閉じこもって、「他人」はいっさい入りこめないと
いった一連の「意識の諸状態」ではありません。私の意識はまず世
界に向い、物に向っており、それは何よりも<世界に対する態度>
です。<他人意識>というものもまた、何にもまして、世界に対す
る一つの行動の仕方です。そうであってこそ初めて私は、他人の動
作や彼の世界の扱い方の中に、<他人>というものを見出すことが
できるわけでしょう。
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はじめに
はじめに
行為の模倣
行為の模倣
もし私が<物に向けられた意識>であるとすれば、私はその物のと
ころで、まさに他人のものである行為に出会い、その行為に或る意
味を見出すことができるはずです。なぜなら、他人の行為は、私自
身の身体にとっても活動の主題となる可能性を持っているからです。
いったい、ギョームの言うところによりますと、われわれは初め<
他人>ではなく他人への<行為>を模倣するものであって、他人と
いう<人>は、その行為の起源が問題になったときに見出されるに
すぎないそうです。幼児がまず真似るのも、人ではなくて動作です。
しかも、どうして或る動作が他人から私に移されうるかという問題
は、どうして私が自分にとって根本的に外的なものである或る心理
作用を想い浮かべうるかという問題よりも、はるかに解決の容易な
問題です。
たとえば他人が絵をかいているのを見るばあい、私は絵をかくこと
を一つの行為として理解することができますが、それというのも絵
を書いている動作がそのまま私自身の運動性に訴えかけてくるから
です。その際、絵の作者としての他人はもちろんまだ完全に人格に
はなっていませんし、また絵を書くことよりももっとはっきり彼が
人間であることを示してくれるような行為、たとえば言語行為など
も存在しないわけではありません。しかし大事なことは、私がその
ように他人や私自身を、世界の中で活動している行為として、ある
いはわれわれを取り囲む自然的・文化的世界への或る「身構え」と
して規定しさえすれば、他人へのパースペクティブが開けてくると
いうことなのです。
目次
ミラーニューロンとは?
1. はじめに
2. ミラーニューロンとは?
3. サルのミラーシステム
4. ヒトのミラーシステム
ミラーニューロンは,他者の動作の視覚的な表象と自己の運動が同じ
ニューロンの上に表現されるニューロンである.最近の高次脳機能研
究のトピックの一つであり,心の理論,コミュニケーション,社会的
行動,模倣,自閉症,ボディ・イメージなどを脳内システムと結びつ
けて研究する大きな糸口を提供した.
ミラーニューロンが記録されたのは,サルの腹側運動前野のF5 とい
う領域であり,Rizzolatti らのグループによって報告された.
5. その機能とシミュレーション理論
6. 自己身体感覚との関係
7. まとめ
4
ミラーニューロンとは?
ミラーニューロンとは?
1)他個体や実験者の手や口の動作を観察している時に活動する.最初
は手の動作について報告されていたが,最近口の動作についても報告
されている.
3)物体を対象とする動作でなければ反応しない.
2)観察した運動と同じ運動をサル自らが実行した場合でも反応する.
また暗室内での運動でも活動がみられ,運動の表出に関連していると
考えられる.ニューロンの反応を引き起こす手の右左差については,
観察している手と,サルが実際に動かす手が,ミラーイメージとなる.
目次
4)動作を視覚的に観察しているときだけでなく,動作に伴う音を聞い
ているときも反応する.たとえばピーナッツを割る動作に視覚的に反
応し,またその音を聞いたとき反応する.さらにその動作を行うとき
にも活動する.
5)一部のニューロンは,サルの
コミュニケーション動作に反応
する.餌を食べる動作とともに,
口によるコミュニケーション
動作(lip-smacking)に関連す
ると思われるニューロンが記録
されている.
サルのミラーシステム
1. はじめに
2. ミラーニューロンとは?
3. サルのミラーシステム
4. ヒトのミラーシステム
5. その機能とシミュレーション理論
6. 自己身体感覚との関係
7. まとめ
F5cは,頭頂葉のPF野と双方向に解剖学的結合を認めるが,このPF野
でもミラーニューロンが記録されている.この領域のミラーニューロ
ンは,F5のものとよく似た性質(上記の1,2,3 )を示す.
さらに,側頭葉の上側頭溝(STS)の前の方のSTSaという領域では,
biological motion(歩く姿や手の動作)に対して視覚的に反応する
ニューロン活動が記録される.ただし,この領域で記録されるのは,
感覚応答のみで運動に関連する活動ははっきりせず,ミラーニューロ
ンとは区別される.ただ解剖学的には,PF 野とSTSa は相互に結合が
あり,STSaがPF野のミラーニューロンの視覚反応のソースであるとい
われている.
以上の三つの領域,F5-PF-STSaの
ネットワークが,ミラーニューロン
システムと呼ばれている.
5
目次
ヒトのミラーシステム
1. はじめに
2. ミラーニューロンとは?
ヒトにおけるミラーニューロンの存在が,経頭蓋的磁気刺激(TMS)
の実験によって示唆されている.この実験では,被検者に他者の動作
のビデオを見せながら運動野のTMS を行い,筋肉に誘発される運動誘
発電位(MEP)を観察した.すると,動かない物体を見せている時の
MEPよりも大きくなることが明らかになった.
3. サルのミラーシステム
4. ヒトのミラーシステム
5. その機能とシミュレーション理論
6. 自己身体感覚との関係
7. まとめ
経頭蓋磁気刺激: Transcranial Magnetic Stimulation (TMS)
ヒトのミラーシステム
ヒトのミラーシステム
fMRI,PETや脳磁図(MEG)などのイメージングのテクニックによって,
ヒトのミラーニューロンシステムについての研究が盛んに行われてい
る.動作の観察に関しては,Broca野と下頭頂小葉や側頭葉の一部
(STS周辺)が活動していることがわかっている.たとえば,fMRI の
実験で,異なる体の部位(口,手,足)の動作を被検者に見せたとき
には,Broca野を含む運動前野と下頭頂小葉が,体部位局在性をもっ
て活動することが示されている.
模倣を行っているときにも,ただ単に手を視覚刺激に基づいて動かす
場合よりも,模倣する場合にBroca 野の活性が高いことがfMRI によっ
て示されている.そのとき頭頂葉においては,下頭頂小葉が活性化さ
れる.STS 周辺も模倣の方が動作の観察よりも活性が高いとの報告も
ある.
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目次
その機能とシミュレーション理論
ミラーニューロンの機能については,動作の認識,模倣,コミュニケー
ション,共感さらに言語システムとの関わりも指摘されている.
1. はじめに
2. ミラーニューロンとは?
3. サルのミラーシステム
4. ヒトのミラーシステム
5. その機能とシミュレーション理論
6. 自己身体感覚との関係
7. まとめ
Rizzolatti らは,相手の動作の視覚的表象と自分の運動の内的な表
象とをマッチングすることを,direct matching system と呼び,他
者の動作認識にとって重要なシステムであると主張した.
またGallese らは,direct matching systemと心の理論における
simulation theory とを結びつけ,相手の内的な状態を推測する役割
があると考えた.このsimulation theoryは,ミラーニューロンの核
になる概念であり,心の理論のみならず,模倣や共感などにも適応し
うる.
心の理論とは、他者の心の動きを類推したり、他者が自分とは違う信念を持っているということを理解する機能のこと。
サリーとアン課題
1.二人の登場人物を紹介する(サリー、アン)
2.サリーがボールをかごの中に入れる。
3.サリーが席を外している間に、アンがボールを別の箱の中に移す。
4.しばらくしてサリーが戻ってくる。
という内容の人形劇、紙芝居等を被験者に見せ、その後「サリーはボールを見つけるためにまずどこを探すかな?」と質問する。
その機能とシミュレーション理論
その機能とシミュレーション理論
このような相手の内部状態を推測する回路は,コミュニケーションの
回路としても働きうる.これに関連して,コミュニケーションの障害
の見られる自閉症では,模倣の障害も見られることが知られている.
共感もsimulation theory が適用可能なシステムであることが,実験
的に示されている.自分が不快な匂いをかいでいるときと,他者が不
快なにおいをかいでいるときの表情を観察しているときの脳活動を調
べると,帯状回や島皮質などが共通して活動することがわかっている.
他者の不快感や痛み,悲しみを感じている様子から,自らもそうした
感覚や情動を共有するには,ミラーニューロンと同様の他者の内部状
態を推測するようなメカニズムが考えられる.
MEG という神経活動に伴う磁場の変化をとらえる方法で,自閉症の一
つのサブタイプであるAsperger 症候群の症例のミラーニューロンシ
ステムの活動が調べられている.この実験では,模倣を行うときの
MEG の波形の潜時が,44野(Broca野)で正常例と比較して特に遅く
なっているのが明らかにされた.
この結果から,自閉症における模倣の障害が,ミラーニューロンシス
テムの障害によるものであることが示唆されるとともに,自閉症で見
られるコミュニケーションの障害も,ミラーニューロンシステムと結
びつけて考えることができる.
一方で,ミラーニューロンシステム(F5-PF-STS)だけでは,共感を
説明できないということも示している.これは,心の理論についても
いえることで,STS に加えて扁桃体や前部帯状回,眼窩前頭野など情
動に関わるシステムが活動するといわれている.
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目次
自己身体感覚との関係
1. はじめに
2. ミラーニューロンとは?
3. サルのミラーシステム
4. ヒトのミラーシステム
5. しの機能とシミュレーション理論
6. 自己身体感覚との関係
7. まとめ
自己身体感覚との関係
Murataはもともと頭頂葉のミラーニューロンが他者の動作だけでなく,
自己の動作にも視覚的に反応し,自己の動作をモニターし,自己の身
体感覚の形成に関わっているのではないかと推測している.
これを確かめるため,サルの手の運動をビデオカメラで撮ってモニター
画面に映し,サルにそれを見ながら物体をつかむ手操作課題を行わせ
た.また,この他にあらかじめ記録しておいたサルの同じ手操作運動
の動画を呈示し,それをサルに注視させる課題も設定した.これらの
課題遂行中に,サルの自分の手の運動に視覚的に反応していると思わ
れるニューロンがPF野に認められた.また,こうしたニューロンの多
くが,他者の手の運動をみているだけでも反応した.このことから,
PF野のミラーニューロンが自己の運動の視覚フィードバックに関わっ
ていることが考えられる.
自己身体感覚との関係
この結果は,遠心性コピーに基づき順モデルが予測した感覚フィード
バックと,運動による実際の感覚フィードバックとのマッチングが頭
頂葉で行われているという考えとも一致する.こうした感覚運動制御
のシステムでは,視覚フィードバックとして働くとともに,発達の過
程で,運動のプログラムと動作の視覚表現が強く結びつき,視覚表現
から運動のプログラムが立ち上がるミラーニューロンが形成されたの
ではないかと考えられる.
下頭頂葉では視覚フィードバックの他に,関節の動きなどの体性感覚
のフィードバックも入ってきている.視覚フィードバック,体性感覚
フィードバック,遠心性コピーの三つの要素は,自己の運動の認識に
とっては重要で,これらが頭頂葉内で運動に伴い時間的な同時性をもっ
て照合されることが考えられる.
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自己身体感覚との関係
自己身体感覚との関係
たとえば,手の受動的な動きについて,
視覚フィードバックが時間的遅延をもっ
てみえるようにして,体性感覚とのマッ
チングをとるような課題では,頭頂葉の
活動に変化が起こることが示されている.
体性感覚と視覚フィードバック,それに
加えて遠心性コピーの3 者の照合によっ
て運動感覚が意識され,運動の主体が誰
であるか認識され,ひいては自己と他者
の区別へと結びつく可能性がある.こう
した自己の運動の認識システムは,自己
の運動を常にモニターしながら,ボディ・
イメージの獲得にも関わるのではないか
と推測される.
自己身体感覚との関係
目次
さらに,自己と他者の運動を区別することは,模倣やコミュニケーショ
ンにとっても重要である.
子供の発達において,自他を区別した双方向の模倣の出現は,コミュ
ニケーションの発達の重要な要素であると考えられている.自分が模
倣するときには左の下頭頂葉が,他者が自己の運動を模倣しているの
を観察する場合では右の下頭頂小葉が活性化することが明らかにされ
ている.模倣や自他の区別が,コミュニケーションの能力へ発展して
いくその神経基盤として頭頂葉の関与が考えられる.
1. はじめに
2. ミラーニューロンとは?
3. サルのミラーシステム
4. ヒトのミラーシステム
5. その機能とシミュレーション理論
6. 自己身体感覚との関係
7. まとめ
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まとめ
まとめ
ミラーニューロンの機能については,いろいろな議論があるが,それ
を明らかにするためには,感覚運動制御に立ち返って探っていくべき
である.
もともと運動制御に必要な自己の運動の視覚フィードバックに関わる
ニューロン活動が,自己の運動の認識から自他の区別へ,さらに他者
の内部状態を推測するシステムへと進化・発達してきたのではないか
と推測される.
こうした運動制御の回路を介して,身体性を基盤にした自己の認識こ
そが,ヒトのミラーニューロンの機能や起源を探る手掛かりを与えて
くれると思われる.
Thank you for your attention!
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