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第2章 上越市の概況と特徴 [PDFファイル/1.64MB]

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第2章 上越市の概況と特徴 [PDFファイル/1.64MB]
第2章
上越市の概況と特徴
1 上越市の概況
上越市は新潟県の南西部に日本海に面して位置し、北は柏崎市、南は妙高市、
長野県飯山市、東は十日町市、西は糸魚川市に隣接し、東西に44.6km、南北に44.2km、
973.61k㎡の広大な面積を有しています。平成17年1月1日に、14の市町村(上越市、
安塚町、浦川原村、大島村、牧村、柿崎町、大潟町、頸城村、吉川町、中郷村、
板倉町、清里村、三和村及び名立町)が合併し、平成19年4月1日に特例市に移行
しました。
多様な自然を有する海・山・大地に恵まれた自然豊かな地域であり、四季の変
化がはっきりし、冬期には大量の降雪があり、海岸部を除いた地域は全国有数の
豪雪地帯となっています。
古くから交通の要衝として栄え、直江津港や北陸自動車道、上信越自動車道の
ほか、JR北陸本線、JR信越本線、ほくほく線などを有し、さらに、北陸新幹
線や上越魚沼地域振興快速道路などの建設も進行しています。
市の中央部には、関川、保倉川等が流れ、この流域に高田平野が広がっていま
す。この広大な平野を取り囲むように、米山山地、東頸城丘陵、関田山脈、南葉
山地、西頸城山地などの山々が連なっています。
土地利用を見ると、高田、直江津などの中心市街地とその周辺は土地区画整理
事業などにより、宅地化、商業地化が進んで都市的土地利用がなされており、他
地域では、農業を中心とした土地利用が進められています。中山間地は、農業生
産機能のほか、景観や環境機能を有しており、山地、潟湖、海岸線は県立自然公
園に指定されるなど、自然をいかしたレクリエーションの場として活用されてい
ます。
また、多くの工業団地があり、直江津港や高速自動車道など、交通ネットワー
クを利用した産業も展開されています。
2 人口構成
上越市の平成15年以降の人口動態は、出生数は減尐傾向に、死亡数は増加傾向
にあり、団塊世代の加齢などによりさらに高齢化が進行することが予想されます
(図2.1)。
また、昭和60年以降人口減尐が続いており、今後も出生数が死亡数を下回るこ
とや転入者が転出者を下回ることにより将来推計人口も減尐傾向で予測されてい
ます。
年齢3区分別人口についても年尐人口の割合が低下するのに対し、老年人口の割
11
合が上昇するなど、尐子化・高齢化がさらに進むことが予想されます(図2.2)。
図2.1
上越市の出生数と死亡数の年次推移
1,949
2,052
2,191
2,053
1,772
1,844
1,732
1,792
(人)
2,500
2,159
2,269
2,123
1,701
1,718
1,646
2,000
1,500
2,213
1,651
1,000
死亡数
出生数
500
0
平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 平成22年
資料:新潟県福祉保健部
図2.2
平成23年福祉保健年報
上越市の将来推計人口
(人)
250,000
老年人口
(65歳~)
200,000
150,000
生産年齢人口
(15~64歳)
100,000
50,000
年尐人口
(0~14歳)
0
※平成17年までは総務省「国勢調査」、それ以降は上越市で推計
※平成12年以前の人口は、合併前の市町村の人口の合算値
資料:上越市 上越市第5次総合計画7)基本計画
3 産業・経済
平成22年度の就業者数は99,617人で、平成7年の112,341人から12,724人(11.3%)
減尐しました。特に第1次産業が6,038人(53.4%)と大きく減尐し、第2次産業も
10,959人(26.9%)減尐しています。一方、第3次産業は1,566人(2.6%)増加し
ています。
産業構造の変化により、派遣労働者、パートタイム労働者等の非正規労働者の
増大傾向が顕著になると考えられます。
12
また、失業者数も年々増加しており、平成22年で4,898人(91.3%増)となって
います(図2.3)。非正規労働者や失業者は、自ら市の健康診査(以下「健診」と
いう。)を申し込まないと定期的に健診を受診する機会がないため、国民健康保
険(以下「国保」という。)加入時に健診の受診勧奨を行うなどの対策が必要で
す。
事業所数は、平成13年の11,774事業所から平成21年で10,542事業所と1,232事業
所(10.5%)減尐しています。従業員数の規模別では、従業員100人未満の10,431
事業所(98.9%)の従業員数が全体の80.2%を占めており、比較的小規模な事業
所の従業員が多いことが分かります(図2.4)。
一般に、小規模な企業の被用者保険13)においては、人員体制の問題から健診結
果に基づく保健指導を行うことが難しい状況にあります。労働災害の防止を目的
とした労働安全衛生法に基づく健康診断は行われていても、各医療保険における
特定健康診査14)(以下「特定健診」という。)・特定保健指導の実施率は低い状
況です(表2.1)。そのため、在職中に生活習慣病6)が進行していても適切な対処が
されず、退職後に重症化している事例が多く見受けられます。
上越市は国保加入率(人口に占める国保被保険者数の割合)が22.6%と全国の
30.6%に比べて低い状況にあります。しかし、国保加入者に占める退職者医療制
度15)加入者の割合は全国よりも多くなっています(p15・表2.2)。そのため、国
保加入者以外にも働きかけ、退職する前からの健康管理が重要です。
将来の社会保障費への影響も考え、全国健康保険協会16)(以下「協会けんぽ」
という。)をはじめとする各保険者と連携し、国保加入者以外についても健康管
理の現状把握を行います。
また、市として業種別組合や商工会と連携し、働き盛り世代への健康教育等の
働きかけを積極的に行うことも必要です。
図2.3
120,000
61
100,000
就 80,000
業
者
数 60,000
(
人
) 40,000
上越市の就業者数と失業者数の推移
234
4,898 5,000
4,688
474
61,802
60,205
2,768
4,000
3,492
62,902
2,561
40,766
61,771
38,640
20,000
11,309
33,538
29,807
7,466
7,569
5,271
平成12年度
平成17年度
平成22年度
0
完
全
3,000 失
業
者
2,000 数
(
人
)
1,000
分類不能
第3次産業
第2次産業
第1次産業
完全失業者数
0
平成7年度
資料:総務省
13
平成22年国勢調査
図2.4
7,000
上越市の規模別民営事業所数・従業員数
20,000
6,518
18,130
6,000
16,000
15,645
13,571
5,000
14,000
11,272
12,422
事 4,000
業
所 3,000
数
18,000
9,037
事業所数
1,901
2,000
従業者数
1,158
1,000
381
302
171
92
19
0
2,000
0
従業員規模別
(参考)
主
な
保加
険入
医
療
従
業
10,000
者
8,000 数
6,000 (
人
4,000
)
12,000
11,648
国保
国保、協会
けんぽ等
各被用者保険(多くは協会けんぽ16)
健康保険
組合
(従業員700
人以上)
資料:総務省 平成21年経済センサス
厚生労働省 加入医療保険種別
表2.1
医療保険別特定健診14)・特定保健指導実施率(平成22年度)
(単位:%)
13)
国保
被用者保険
市町村
国保
(再掲)
上越市
国保
組合
協会
けんぽ16)
船員
保険
組合
健保
共済
組合
全体
特定健診14)
32.0
44.9
38.6
34.5
34.7
67.6
70.9
43.3
特定保健指導
20.9
52.1
7.7
7.3
6.6
14.8
10.4
13.7
資料:厚生労働省
上越市
特定健康診査14)・特定保健指導の実施状況(速報値)
特定健康診査14)・特定保健指導の実施状況(確定値)
14
4 健康に関する概況
上越市の健康に関する概況は、表2.2のとおりです。
表2.2
上越市の健康に関する概況
国・県と比較し数値が高い傾向にあるもの
項 目
国
新潟県
人数
総人口
1
0歳~14歳
16,803,444 人
13.1%
301,708 人
12.7%
27,584 人
13.5%
81,031,800 人
63.3%
1,441,262 人
60.7%
120,754 人
59.2%
65歳以上
29,245,685 人
22.8%
621,187 人
26.2%
53,542 人
26.3%
14,072,210 人
11.0%
333,340 人
14.0%
29,102 人
14.3%
死亡原因
死亡原因
10万対
死亡原因
10万対
死亡原因
人数
10万対
1位
悪性新生物
279.7
悪性新生物
327.7
悪性新生物
638
312.9
2位
心疾患
149.8
心疾患
170.2
心疾患
357
175.1
3位
脳血管疾患
97.7
脳血管疾患
146
脳血管疾患
265
130.0
4位
肺炎
94.1
肺炎
105.6
肺炎
205
100.5
5位
老衰
35.9
老衰
52.5
不慮の事故
104
51.0
7位
自殺
23.4
自殺
28.6
自殺
55
17万6,549 人
14.7%
3,234 人
12.1%
262 人
11.8%
男性
11万9,965 人
18.9%
2,291 人
16.6%
187 人
16.3%
女性
5万6,584 人
10.0%
943 人
7.4%
75 人
7.0%
男性
79.44 歳
女性
85.90 歳
2
早世予防
から見た死亡
( 6 4 歳以下)
平成22年
人口動態調査
平均寿命
( 簡易生命表)
合計
要介護17)認定者
5,062,234 人
第1号被保険者18)の認定
4,907,439 人
第2号被保険者18)の認定
154,795 人
介護保険
79.50 歳
H23
113,573 人
16.9%
H17
86.50 歳
11,730 人
110,493 人
1.1%
②
27.0
78.80 歳
H22
87.06 歳
①
17.9%
3,080 人
21.4%
11,386 人
1.3%
2.0%
344 人
③
平成22年度
介護保険事業状況
1人当たり介護給付費
報告
(第1号1人当たり介護
給付・予防給付)
介護給付費総額
(第1号の介護給付費・予防給付)
後期高齢者医療
加入者
平成22年度
1人当たり医療費
後期高齢者
医療事業状況報告
医療費総額(概算)
国民健康保険中央会
平成23年度
229,006 円
268,196 円
291,550 円
6,663,722,853,870 円
165,787,212,875 円
16,256,565,803 円
14,341,142 人
342,241 人
904,795 円
733,880 円
12,975,788,972,052 円
医療費の状況
<医療費>
1人当たり医療費
×各被保険者数
による概算
特定健診
-
46,124 人
-
うち 65-74歳
11,543,944 人
29.5%
224,198 人
34.7%
18,535 人
40.2%
一般
37,193,268 人
94.9%
606,208 人
93.9%
42,283 人
91.7%
退職
1,997,443 人
5.1%
39,479 人
6.1%
3,841 人
8.3%
医療費総額
(概算)
30.6 %
医療費
27.2 %
医療費
1人当たり
1人当たり
医療費
県内
順位
10,452,864,654,100 円
289,885 円
184,431,817,297 円
299,501 円
15,979,798,172
346,453 円
4
9,755,910,459,792 円
285,399 円
181,676,125,722 円
295,026 円
14,454,570,399
341,853 円
5
退職
696,961,784,076 円
371,663 円
224,666,761,683 円
364,839 円
1,525,203,485
397,085 円
2
7,169,761 人
出生数
164,456 人
14,385 人
32.0 %
39.7 %
44.9 %
198,778 人
6,141 人
808 人
21 %
30 %
受診率
特定保健指導終了
人数
割合
1,071,304
人数
人数
割合
(%)
18,083
(%)
8.8
163
9.9
0.76
10
0.61
103,049
9.6
1,597
極出生低体重児82)
(1,500g未満)
8,086
0.75
138
15
⑤
52 %
割合
低出生体重児19)
(2,500g未満)
④
22.6 %
1人当たり
一般
出生
人口動態調査
23,165,558,475 円
645,687 人
実施率
平成22年
251,163,671,723 円
県内
3位
768,675 円
-
受診者数
平成22年度
特定健康診査・
特定保健指導
実施状況概況
30,137 人
全国
46位
39,190,710 人
加入率
5
※
被保険者数
国保の状況
7
割合
203,899 人
15歳~64歳
平成22年
人口動態調査
6
2,374,450 人
平成22年
国勢調査
死亡の状況
4
128,057,352 人
人数
割合
人口動態
(再掲)
75歳以上
3
上越市
人数
割合
1,651
(%)
⑥
健康に関する概況の各種データからは、
① 65歳以上人口割合が国・県と比較して多い。
② 死亡の状況では、3大死因のうち心疾患・脳血管疾患5)の人口10万対死亡
率がいずれも国と比較して高い。
③ 介護保険の要介護認定率が第1号・第2号被保険者18)ともに国・県と比較
して高い。特に、第2号被保険者18)の認定率は国・県と比較し2倍近く高く、
若いうちから介護保険の利用が必要になる人が多い。
※要介護認定率=要介護認定者数/被保険者数×100
④ 上越市国保の状況では、65歳から74歳までの被保険者数の割合が国・県
と比較して多い。また国保加入率は国・県と比較して低く、退職者医療制
度15)加入者の割合は国・県と比較して高い。
⑤ 一人当たり医療費は国・県と比較して高く、特に退職者医療制度15)加入
者の一人当たり医療費は県内2位と高い。
上越市の一人当たり医療費を国並みの水準まで下げることができると仮
定すれば、医療費総額を約26億円下げることができる。
※(上越市一人当たり医療費346,453円-国一人当たり医療費289,885円)
×上越市国保被保険者数46,124人=約26億円
⑥ 出生における低出生体重児19)の割合が多い。
等の状況が読み取れます。
(1)死亡統計から見た保健の状況
平均寿命及び死因の1位から3位までは国・県と同じ状況です。人口10万対死亡
率は、悪性新生物・心疾患・脳血管疾患5)のいずれも国と比較して高くなっており、
年次推移も高い状況で推移しています(表2.3)。
特に脳血管疾患5)は国と比較して高く、特に男性が高い状況です。標準化死亡比
(SMR)20)では(表2.4、図2.5)国を100とすると、虚血性心疾患4)は100を下回り、
国平均より低くなってきています(表2.5、図2.6)。しかし、脳血管疾患5)は下がっ
てきていないため、今後の経過を注視し、死亡統計以外にも介護保険や医療費デ
ータで動向を確認していく必要があります。
部位別がん標準化死亡比(SMR)20)の年次推移では、胃がんと大腸がんが高い
状況で推移しています(表2.6、図2.7)。また、平成22年は胃がんと乳がんが高
い状況にあるため、今後の動向を確認していく必要があります。
16
表2.3
年次別死因順位(人口10万対死亡率)
平成18年
平成19年
平成20年
平成21年
平成22年
順
位
死因
1
悪性新生物
261.0 293.8 266.9 331.3 272.3 322.9 273.5 325.2 279.7 312.9 33.2
2
心疾患
137.2 154.4 139.2 155.7 144.4 170.5 143.7 160.6 149.8 175.1 25.3
3
脳血管疾患
全国 上越市 全国 上越市 全国 上越市 全国 上越市 全国 上越市
101.7 151.0 100.8 139.7 100.9 149.1
97.2 125.9
差
97.7 130.0 32.3
資料:厚生労働省 平成22年人口動態統計
新潟県福祉保健部 平成23年福祉保健年報
脳血管疾患5)SMR20) 男女別年次推移
表2.4
年度
平成18年
平成19年
平成20年
平成21年
平成22年
全体
118
110
117
103
105
男性
115
113
120
99
111
女性
121
108
116
106
101
*国を100とする
図2.5
脳血管疾患5)SMR20)(平成22年)
120
111
110
105
101
100
90
全体
表2.5
男性
虚血性心疾患4)SMR20)
女性
男女別年次推移
年度
平成18年
平成19年
平成20年
平成21年
平成22年
全体
90
89
94
88
92
男性
98
97
95
84
103
女性
84
83
93
92
83
*国を100とする
図2.6
120
110
100
90
80
虚血性心疾患4)SMR20)(平成22年)
103
83
92
全体
男性
17
女性
部位別がんSMR20)年次推移
表2.6
年度
平成18年
平成19年
平成20年
平成21年
平成22年
胃がん
128
137
139
139
115
肺がん
81
81
79
90
83
大腸がん
86
112
112
106
96
子宮がん
98
68
57
-
65
乳がん
100
74
86
47
108
※子宮がんの平成21年SMR20)については死亡者がいなかったため数値なし
図2.7
120
110
100
90
80
70
60
部位別がんSMR20)(平成22年)
115
108
96
83
胃がん
肺がん
65
大腸がん
子宮がん
乳がん
表2.4~2.6、図2.5~2.7 資料:上越地域振興局健康福祉環境部
平成22年健康福祉環境の現況 より算出
18
(2)福祉制度から見た保健の状況
生活保護率や医療扶助21)率は、いずれも国・県と比較して低い水準にあります。
年次推移では、平成20年まで比較的緩やかでしたが、同年に発生したいわゆる
リーマン・ショック以降、受給者数が増加しています(図2.8)。
被保護世帯の類型別内訳(図2.9)では、第3位の「その他の世帯」が経済不況
の影響により平成21年度から急激に増えています。しかしながら、総数で最も多
いのは病気や障害により生活保護受給となる「傷病・障害者世帯」であり、年々
増え続けています。
実際に脳卒中患者や透析患者からの聞き取りでは、病気のために職を失い生活
保護の受給に至るケースも多く、脳血管疾患5)や透析対策が福祉制度維持の観点か
らも重要です。
図2.8
被保護人員と医療扶助21)人員
生活保護
(人)
1,200
1,084
1,000
722
800
894
744
744
735
600
被保護人員
619
552
545
400
医療扶助人員
544
200
0
平成18年度 平成19年度 平成20年度 平成21年度 平成22年度
図2.9
生活保護
傷病・障害者世帯数
(世帯)
350
300
250
200
258
257
231
215
192
220
50
245
231
傷病・障害者世帯
高齢者世帯
150
100
303
292
260
141
87
27
87
26
その他の世帯
87
母子世帯
32
25
38
0
平成18年度 平成19年度 平成20年度 平成21年度 平成22年度
図2.8~2.9
資料:上越市
19
上越市のふくし2011(平成23年)版
(3)要介護17)認定の状況
上越市の疾患別要介護17)認定割合(p22・表2.7)では、要介護状態となる原因
疾患は血管疾患が多く56.7%を占めています。
血管疾患の中でも特に脳血管疾患5)が多く、第1号被保険者18)(65歳以上)にお
いても、脳血管疾患5)が原因で要介護3~5の重度の要介護状態になる人が多い状況
です。
また、第2号被保険者18)(40~64歳)の認定者328人の原因疾患でも(p23・表2.8)、
脳血管疾患5)の割合が58.8%を占め、若い世代から脳血管疾患5)で倒れる人の割合
が多くなっています。さらに、第2号被保険者18)(40~64歳)の要介護認定率を見
ると、全国平均は1.1%にとどまるのに対し、上越市においては2.0%と高くなっ
ています(p15・表2.2)。
これらのことから、上越市においては若い年齢のうちから予防できる対象者を
明確化して対策を進めていく必要があります。
40~64歳の要介護認定者328人の要介護度を原因疾患別に分類すると(表2.8)、
脳血管疾患5)では要介護2以下の比較的軽度の人が多くを占めています。これは最
近の治療・診断技術やリハビリテーションの進歩等により、脳血管疾患5)を発症し
ても重度の要介護状態に至らない場合があり、そのことが背景として考えられま
す。
しかし、一度目の発症では後遺症や麻痺が残らなくても、二度目、三度目と発
症することもあります。その際に一度目の発症よりも重症化して、麻痺などの後
遺症が残る場合があるため、一度発症した人にも再度の発症予防のための働きか
けが必要です。具体的な方法については、第3章で述べていきます。
また、認知症による要介護認定者が48人おり、背景にどのような実態があるの
か(例えば多量飲酒との関連など)調査していくことが必要です。
同様に、40~64歳の要介護認定者328人のうち、膝痛・骨折等による要介護認定
者は35人おり、どのような原因で要介護・要支援17)状態に至ったのか、今後はロ
コモティブシンドローム22)の視点で、個別の事例を把握して、発症予防の対策を
講じていく必要があります。
現時点では健診・医療・介護の各データを結び付けて発症予防に役立てること
は、それぞれの制度の仕組み上、非常に手間を要する作業です。しかし、平成25
年10月から稼働予定の国保データベース(KDB)システム23)では、健診・医療・
介護のデータが連結され、上越市の健康問題の明確化が容易になることが期待さ
れています。認知症や膝痛・骨折等についても、集団のデータと個別の実態把握
を照らし合わせて原因を明らかにし、予防活動につなげていけるものと考えられ
ます。
さらに、40~50歳代で生活習慣病6)が原因で介護保険認定を受けた44人の背景に
ついては(p23・表2.9)、男女比は8:2と男性が圧倒的に多く、国保と被用者保
険13)の割合は、6:4と国保が多いです。
20
被用者保険13)加入者の健診受診状況は不明ですが、国保に関しては26人中24人
(92.3%)が健診を受診していませんでした(p23・図2.10)。
生活習慣に関する基礎疾患では(表2.9)、高血圧症が最も多く、44人中32人
(72.7%)が該当していました。基礎疾患である高血圧症により潜在的に血管が
傷み、動脈硬化を起こします。それがさらに脳血管疾患5)につながるまでに尐なく
とも10数年を要することを考えると、40~50歳代で倒れた人は、30歳代で遺伝的
素因等も含めて高血圧を発症していたことが予測されます。
また、男性の要介護認定者の中にはアルコールの摂取問題が背景にある人も5
人いました。飲酒と高血圧、脳卒中の関連性を注視していく必要があります。
実際に、個別の事例では働き盛りの男性が倒れて働けなくなり生活保護の受給
に至ったケースもあり、本人だけではなく家族や周囲に与える影響もより大きく
なります。
このような事態を防ぐには、健診等で早期に疾病を発見し重症化予防に向けた
取組が必要です。しかしながら、上越市は国保加入率が低く、特定健診14)受診者
に対する保健指導だけでは問題の解決にはつながりません。このことから、被用
者保険13)加入者も含め、若い世代のうちから地域や企業に積極的に働き掛け、健
康教育や保健指導を行っていく必要があります。
21
表2.7
疾患別要介護度割合(平成23年3月)
○脳血管疾患・認知症は介護度が重く、費用が高額にかかっています。
65歳以上の人口 53,166人 平成23年2月末現在
疾
患
年齢
要支援2
人
認
定
者
数
脳
血
管
疾
患
要支援1
介護1
人
介護2
人
介護3
人
介護4
人
介護5
人
合計
人
人
40~64
26
49
42
77
50
37
47
328
65~74
146
200
177
231
170
116
140
1,180
75~84
572
692
776
789
573
471
505
4,378
85~
385
628
825
1,114
986
797
869
5,604
合計
1,129
1,569
1,820
2,211
1,779
1,421
1,561
11,490
40~64
16
33
30
45
28
20
21
65~74
33
69
57
99
86
60
67
471
75~84
105
160
172
232
219
221
254
1,363
85~
70
137
204
271
267
270
409
1,628
合計
224
399
463
647
600
571
751
3,655
40~64
61.5%
67.3%
71.4%
58.4%
56.0%
54.1%
44.7%
58.8%
65~74
22.6%
34.5%
32.2%
42.9%
50.6%
51.7%
47.9%
39.9%
75~84
18.4%
23.1%
22.2%
29.4%
38.2%
46.9%
50.3%
31.1%
85~
18.2%
21.8%
24.7%
24.3%
27.1%
33.9%
47.1%
29.1%
合計
19.8%
25.4%
25.4%
29.3%
33.7%
40.2%
48.1%
31.8%
40~64
13
27
20
40
29
14
14
脳認
血定
管者
疾数
患に
の対
割す
合る
血
管
疾
患
高
血
圧
・
糖
尿
病 (
な 心
ど 疾
) 患
・
認定者に対する割
合
認
知
症
認定者に対する割
合
膝
痛
・
骨
折
等
認定者に対する割
合
193
157
65~74
80
95
88
116
93
67
60
599
75~84
325
399
438
466
318
249
228
2,423
85~
261
393
542
694
597
442
411
3,340
合計
679
914
1,088
1,316
1,037
772
713
6,519
合計
60.1%
58.3%
59.8%
59.5%
58.3%
54.3%
45.7%
40~64
1
0
6
9
13
11
8
56.7%
48
65~74
6
5
63
47
42
30
50
243
75~84
44
43
383
284
248
197
214
1,413
85~
36
46
305
437
504
421
503
2,252
合計
87
94
757
777
807
659
775
3,956
合計
7.7%
6.0%
41.6%
35.1%
45.4%
46.4%
49.6%
40~64
2
8
5
8
5
2
5
35
65~74
59
73
37
49
30
12
19
279
75~84
300
366
232
264
171
127
102
1,562
85~
200
371
379
498
381
307
244
2,380
合計
561
818
653
819
587
448
370
4,256
合計
49.7%
52.1%
35.9%
37.0%
33.0%
31.5%
23.7%
1人当 費用額
(年額)
万円
15
万円
37
万円
98
万円
142
万円
37.0%
万円
217 272 287
資料:上越市
22
万円
34.4%
介護認定審査資料より作成
表2.8
疾患別要介護度割合(40~64歳) (平成23年3月)
※重複あり
疾患
要支援1
要支援2
全体
26人
49人
42人
77人
50人
37人
47人
328人
16人
33人
30人
45人
28人
20人
21人
193人
61.5%
67.3%
71.4%
58.4%
56.0%
54.1%
44.7%
58.8%
13人
27人
20人
40人
29人
14人
14人
157人
50.0%
55.1%
47.6%
51.9%
58.0%
37.8%
29.8%
47.9%
1人
0人
6人
9人
13人
11人
8人
48人
3.8%
0%
14.3%
11.7%
26.0%
29.7%
17.0%
14.6%
2人
8人
5人
8人
5人
2人
5人
35人
7.7%
16.3%
11.9%
10.4%
10.0%
5.4%
10.6%
10.7%
脳血管疾患
5)
割合
血管疾患
割合
認知症
割合
膝痛・骨折等
割合
介護1
(表2.7を再掲)
表2.9
合計
男性
女性
な
し
・
不
明
あ
り
100%
81.8%
18.2%
介護3
資料:上越市
介護4
介護5
合計
介護認定審査資料より作成
40~50歳代で要介護認定を受けた人※の原因(平成22年2月)
健診受診
男
女
比
介護2
1
0
1
43
36
7
加入保険
国
保
26
21
5
被
用
者
保
険
18
15
3
脳血管疾患
脳
出
血
脳
梗
塞
19
16
3
生活習慣に関する基礎疾患
く
も
膜
下
出
血
13
11
2
高
血
圧
5
3
2
32
25
7
脂
質
異
常
症
12
9
3
糖
尿
病
13
10
3
ア
ル
コ
ー
ル
関
係
高
尿
酸
血
症
8
6
2
5
5
0
※40~50歳代の認定者のうち、生活習慣病6)が原因と思われる44人の状況
※被用者保険13)、脂質異常症24)、尿酸39)の詳細は用語解説
資料:上越市 介護認定審査資料より作成
図2.10
40~50歳代の要介護認定者のうち生活習慣病6)が背景にある
国保加入者の健診受診歴(平成22年2月)
過去に受診歴
あり
1人(4%)
不明
1人(4%)
未受診
24人(92%)
資料:上越市
23
介護認定審査資料より作成
(4)医療費の状況
① 医療費全体の状況
上越市国保の加入率は、全国平均と比べて低くなっています。しかし、一人当
たり医療費が高額である65歳以上の加入割合は、国・県と比較して多くなってい
ます(表2.10)。このことは、上越市の若い世代では全国と比較して国保ではなく
被用者保険13)に加入している人が多く、65歳以上になり重症化する頃に国保に加
入してくる人が多いということを意味しています。
表2.10
国保加入率の比較(平成23年度)
単位(%)
内容
国保加入率
(再掲)65歳以上割合
国
県
市
30.6
27.2
22.6
29.5
34.7
40.2
資料:国民健康保険中央会
国民健康保険の実態
上越市の推計人口(p12・図2.2)から推察すると、今後も65歳以上の人口が増
加する見通しであり、国保加入者についても増加していくと考えられます。その
ため適切な対策がなければ、今後、保険給付費は一層増額していくと見込まれま
す。実際に現在の推移では、上越市の保険給付費は年に3~5億円のペースで増え
ています(図2.11)。
図2.11
上越市国民健康保険給付費の推移
(億円)
143
145
138
140
134
135
130
130
127
125
120
115
平成20年度
平成21年度
平成22年度
平成23年度
平成24年度
※平成20~23年度までは決算額、平成24年度は予算額(平成24年9月現在)
資料:上越市
24
今後の国保財政の安定化を図るには、予防できる疾病数を減らし、重症化予防
に取り組むことが保険給付費の伸びの適正化のために重要な課題となります。
上越市は一人当たり医療費が一般・退職者医療制度15)ともに国・県より高い状
況にあります。例えば、上越市の一人当たり医療費を国並みの水準まで下げるこ
とができると仮定すれば、医療費は一般で約24億円、退職者医療制度15)で約1億円
下げることができます。このことから、一人当たり医療費の高さが保険給付費に
大きく影響していることが分かります(表2.11)。
表2.11
一人当たり医療費の比較(平成23年度)
(単位:円)
(参考値)
国
県
上越市
市と国平均の差額×被保険者数
⇒国平均まで一人当たり医療費を
下げた場合の差額
一般
退職者医療
制度15)
285,399
295,026
341,853
56,454円×42,283人⇒約24億円
371,663
364,839
397,085
25,422円× 3,841人⇒ 約1億円
※p15・表2.2より算出
中でも入院医療費は、件数が尐ないにも関わらず医療費全体では多くの割合を
占めているため(図2.12、2.13)、重症化して入院に至る前に適切な治療につな
げる必要があります。また、健診を受診しその後の保健指導を受けた人の方が、
1人当たりの外来医療費(高血圧・糖尿病)の平均単価が低くなるという結果があ
ります(表2.12)。
そのため、まずは健診を受診し、健診結果から各学会のガイドラインに照らし
合わせ重症化予防のための保健指導を行います。
今後も健診受診や保健指導利用の有無と医療費の関連を注視して、保健活動の
評価に活用していくとともに、健診未受診者にもこのようなデータを提供し、受
診勧奨に活用します。
25
図2.12
入院と入院外の件数・費用額の割合の比較(一般)
一 般 件数449,139件 費用額124.3億円(平成23年度)
0%
入
院
入
院
外
図2.13
50%
100%
11,412件
件
数
(2.5%)
費
用
額
59.2億円
(入院)
2.5%の件数で47.6%
の費用額を占めている。
(47.6%)
437,727件
件
数
(97.5%)
費
用
額
65.1億円
(52.4%)
入院と入院外の件数・費用額の割合の比較(退職者医療制度15))
退 職 者 医 療 件数50,467件 費用額11.8億円(平成23年度)
0%
入
院
入
院
外
件
数
50%
100%
946件
(入院)
1.9%の件数で40.7%の費
用額を占めている。
(1.9%)
費
用
額
4.8億円
(40.7%)
49,521件
件
数
(98.1%)
費
用
額
図2.12、2.13
7.0億円
(59.3%)
資料:新潟県国民健康保険団体連合会
26
疾病統計データ
表2.12
一人当たりの外来医療費を比較(平成24年5月)
高血圧で受診している人
平成22年度・平成23年度
健診受診等の状況
外来医療費
平成24年5月の
一人当たり平均単価
受診なし(未受診・途中加入等)
25,860円
どちらか1年で健診受診のみ
15,820円
2年とも健診受診のみ
13,179円
どちらか1年で説明会に参加
12,880円
2年とも説明会に参加
11,773円
どちらか1年で保健指導を受けた
13,716円
2年とも保健指導を受けた
11,784円
14,087円の差
14,076円の差
糖尿病で受診している人
平成22年度・平成23年度
健診受診等の状況
外来医療費
平成24年5月の
一人当たり平均単価
受診なし(未受診・途中加入等)
31,813円
どちらか1年で健診受診のみ
24,481円
2年とも健診受診のみ
19,171円
どちらか1年で説明会に参加
19,945円
2年とも説明会に参加
17,739円
どちらか1年で保健指導を受けた
21,558円
2年とも保健指導を受けた
18,216円
14,074円の差
13,597円の差
資料:新潟県国民健康保険団体連合会
新潟県国民健康保険疾病別分類統計表 より把握
また、上越市は県内の中でも一人当たり医療費が高く、65歳以上の加入割合が
多い(図2.14)という、医療費が高額になる条件が揃っています。
一方で、前述のとおり、65歳未満は被用者保険13)に加入している人が多い状況
です。今後、国保財政の安定化を図っていくためには、国保加入者だけではなく、
被用者保険13)における健診及び保健指導の在り方について状況を把握し、他機関
とも連携して働き盛り世代に向けた予防活動を行っていくことが必要です。
27
図2.14
国保加入者の一人当たり医療費と65歳以上の加入割合(分布)
65~74歳の加入割合(%)
50.0
糸魚川市
阿賀町
粟島浦村
妙高市
刈羽村
40.0
見附市
関川村
出雲崎町
上越市
佐渡市 柏崎市
小千谷市 田上町
村上市
長岡市
加茂市
十日町市 新潟県
燕市
三条市
新潟市
新発田市
胎内市
五泉市
津南町
魚沼市
全国
弥彦村
30.0
湯沢町
阿賀野市
聖籠町
南魚沼市
20.0
200,000
250,000
300,000
350,000
400,000
一人当たり医療費(万円)
資料:厚生労働省
平成21年度国民健康保険事業状況報告書 より作成
28
②
医療費が高額になる疾患の状況
「標準的な健診・保健指導プログラム26)(以下「確定版」26)という。)様式1-1
200万円以上となったレセプト25)一覧」
(厚生労働省健康局、平成19年)をもとに、
高額な医療費がかかる疾患の状況を分析すると、虚血性心疾患4)が83%と最も多く、
次いで脳血管疾患5)が33%となっています。特に割合の高い虚血性心疾患4)の基礎
疾患の背景には、高血圧症、糖尿病及び脂質異常症24)がありました(表2.13)。
そして、高額な医療費につながりやすい虚血性心疾患4)全体では、上越市国保
の被保険者48,703人中、虚血性心疾患4)があった人は3,920人(8%)でした。さら
に、虚血性心疾患4)があった3,920人の基礎疾患の内訳は、高血圧症が2,670人
(68%)、糖尿病1,095人(28%)、脂質異常症24)1,837人(47%)でした(表2.14)。
今後は、脳梗塞・脳出血、人工透析についても同様の分析を行い、各学会のガ
イドラインの危険因子に照らし合わせ、予防可能な対象者を抽出し、優先順位を
付けてよりリスクの高い人から保健指導を行っていきます。
なお、このレセプト25)データについて、現時点では集計のためにレセプト25)を1
枚ずつ確認する必要がありますが、平成25年10月稼働予定の国保データベース
(KDB)システム23)により一括集計ができるようになります。
年次比較や国・県・他地域との比較も容易になり、さらに虚血性心疾患4)や脳血
管疾患5)の個別の実態を把握することも可能になります。
今後は、それらのデータを活用し、重症化を引き起こす危険因子について、各
学会のガイドラインに照らし合わせ、なぜ重症化したのか、その危険因子(基礎
疾患)は何かを個別に調査し、保健指導に活用していきます。
また、レセプト25)の「転帰」には保険の異動の状況が記載されています。高額
な医療費を要した後で、死亡することや低所得世帯になってしまうこともあるた
め、早世予防や福祉制度維持の観点からも活用できるデータとして期待されてい
ます。
29
表2.13
一月当たり200万円以上のレセプト25) (平成18年5月分)
レセ件数
費用額(万円)
生活習慣病6)
あり
入院
入院外
計
42
0
42
41
0
41
98%
0%
98%
ひと月200万円以上の42件を疾
患別に見ると
疾患
合計
費用額
合計
500 万円台
400 万円台
300 万円台
200 万円台
件数
割合
件数
割合
件数
割合
件数
割合
件数
割合
42
100%
1
2%
7
17%
10
24%
24
57%
生活習慣病6)
なし
1
0
1
14
33%
0
0%
3
43%
5
50%
6
25%
12,954
0
12,954
2
5%
0
0%
0
0%
1
10%
1
4%
がん
3
7%
0
0%
0
0%
2
20%
1
4%
被保険
受診実 虚血性心疾患
者数
人数
数
割合
計
23,660 6,682 2,024
9%
20歳代以下
4,069
45
8
0%
30歳代
1,970
121
19
1%
40歳代
1,727
233
22
1%
50歳代
3,574
960
230
6%
60歳代
7,856 3,488 1,071
14%
70~74歳
4,464 1,835
674
15%
計
25,043 7,760 1,896
8%
20歳代以下
3,977
53
19
0%
30歳代
1,749
92
19
1%
40歳代
1,596
190
29
2%
50歳代
4,010 1,106
179
4%
60歳代
8,760 4,052
952
11%
70~74歳
4,951 2,267
698
14%
計
48,703 14,442 3,920
8%
20歳代以下
8,046
98
27
0%
30歳代
3,719
213
38
1%
40歳代
3,323
423
51
2%
50歳代
7,584 2,066
409
5%
60歳代
16,616 7,540 2,023
12%
70~74歳
9,415 4,102 1,372
15%
年代
男
性
再
掲
女
性
再
掲
男
女
計
再
掲
2%
0%
2%
28
80%
1
100%
5
83%
9
100%
13
68%
22
63%
0
0%
2
33%
6
67%
14
74%
16
46%
1
100%
3
50%
4
44%
8
42%
生活習慣病6)レセプト25)分析
虚血性心疾患4)の分析(平成18年5月分)
1か月の
性
別
なし
305
0
305
基礎疾患(再掲)
脂質異
高血圧 糖尿病
常症24)
資料:新潟県国民健康保険団体連合会
表2.14
98%
0%
98%
割合の高い虚血性心疾患の基礎疾患を見ると
虚血性
脳血管 人工透
心疾患
析
疾患5)
4)
35
83%
1
100%
6
86%
9
90%
19
79%
2%
0%
2%
あり
100% 12,649
0%
0
100% 12,649
高血圧症
数
割合
1,335
66%
0
0%
7
37%
19
86%
150
65%
694
65%
465
69%
1,335
70%
0
0%
7
37%
19
66%
150
84%
694
73%
465
67%
2,670
68%
0
0%
14
37%
38
75%
300
73%
1,388
69%
930
68%
資料:新潟県国民健康保険団体連合会
30
糖尿病
数
割合
587
29%
0
0%
4
21%
9
41%
72
31%
133
12%
369
55%
508
27%
1
5%
0
0%
13
45%
35
20%
269
28%
190
27%
1,095
28%
1
4%
4
11%
22
43%
107
26%
402
20%
559
41%
脂質異常症
数
割合
811
40%
0
0%
9
47%
14
64%
105
46%
446
42%
237
35%
1,026
54%
2
11%
8
42%
11
38%
87
49%
543
57%
375
54%
1,837
47%
2
7%
17
45%
25
49%
192
47%
989
49%
612
45%
生活習慣病6)レセプト25)分析
③ 透析医療費の状況
上越市の透析患者に要する1か月当たりの費用額は、患者274人で約1億3,700
万円、1年間では1人当たり約600万円と高額な医療費を要しています。新規透析患
者数の推移では、平成14~20年度までは年々増加しており、平成21~22年度は一
旦減尐しましたが、平成23年度は再び増加に転じています(図2.15)。
原因疾患別では、糖尿病腎症 27)による新規透析導入者が平成 23 年度で 13 人い
ました。さらに加入医療保険については被用者保険 13)加入者が大半を占めていま
す(表 2.15)。
また、糖尿病腎症27)による新規透析患者の年齢構成は、65歳未満が約半数を占
めることから、働き盛り世代に糖尿病の重症化予防のための健康教育を実施して
いく必要があります。加入医療保険の状況では、平成23年度の新規透析導入者30
人中29人が被用者保険13)から国保や後期高齢者医療保険への異動であることから、
企業や被用者保険13)と連携した予防活動が必要であると考えられます。
前述のとおり、透析には高額の医療費を伴うことから、社会保障制度維持の観
点からも透析導入となる前の段階での保健指導が重要です。
上越市の市民健康診査31)(以下「市民健診」という)、特定健診14)、後期高齢者
健康診査30)においては、腎機能を示すeGFR28)(イージーエフアール、推算糸球体
濾過量の略)を健診結果の血液中のクレアチニン値29)から算出し、重症化予防の
ための保健指導に活用しています。しかし被用者保険13)においては血液中のクレ
アチニンを測定していないことから、その活用による予防対策は現時点ではでき
ない状況にあります。
糖尿病の発症から糖尿病腎症27)による透析導入に至るまでの期間は、約20年間
と言われていることから、健診受診の勧奨とともに、他の医療保険者での保健指
導の在り方を検討していく必要があります。具体的には、地域保健と職域保健の
連携を推進するための「地域・職域連携推進会議」や上越市が開催する「健診・
保健指導検討会」などの活用を図っていきます。
31
図2.15
上越市の人工透析患者の推移
(上図:全数、下図:死亡者や治療終了者を除く新規導入者のみ)
全数(実人員)
(人)
300
274
235
250
217
191
200
166
150
99
112
123
133
0
196
148
175
183
163
148
100
50
250
原因疾患
糖尿病腎症
133
91
8
100
12
106
17
113
20
123
25
43
33
原因疾患
腎炎ほか
60
54
67
78
新規導入者のみ
(人)
35
30
30
25
26
25
17
20
18
18
15
15
15
15
13
11
10
10
10
12
10
9
5
5
原因疾患
腎炎ほか
15
6
7
2
3
10
8
4
原因疾患
糖尿病腎症
8
5
3
13
11
6
5
7
0
資料:上越市
32
更生医療申請書より把握
表 2.15
新規透析導入者の状況(平成 23 年度)
合計
男
女
%
人数
人数
30
100%
19
11
被用者保険13)
29
97%
18
11
国保
1
3%
1
0
被用者保険13)
6
20%
5
1
国保
11
37%
7
4
後期
13
43%
7
6
30歳代
2
7%
2
0
40歳代
0
0%
0
0
透析導入時
50歳代
5
17%
4
1
の年齢
60歳代
6
20%
4
2
70歳代
10
33%
5
5
80歳代
7
23%
4
3
糖尿病腎症27)
13
43%
8
5
(うち65歳以下)
(6)
(20%)
(3)
(3)
腎硬化症
6
20%
3
3
慢性腎炎
11
37%
8
3
人数
新規透析導入者
以前
加入
保険
現在
原因
疾患
※各項目の%は新規透析導入者30人に占める割合
資料:上越市
更生医療申請書より把握
④ 生活習慣病 6)全体の治療状況
国保加入者の治療状況では、高血圧症や糖尿病による治療者が多く、その保険
給付費の合計は平成22年度で約15億円になっています。
また、生活習慣病6)全体の保険給付費の合計は、平成21年度、平成22年度ともに
約21億円(表2.16)であり、保険給付費全体に占める割合では約16%前後で推移
しています。
さらに、主病名が生活習慣病6)以外の疾患で、高血圧症、糖尿病等を合併してい
る患者については、現時点で新潟県国民健康保険団体連合会が公表する統計デー
タ上で把握することは困難であり、実際にはその保険給付費はさらに多いと考え
られます。この点に関しては、今後国保データベース(KDB)システム23)導入に
33
より分析が可能になり、全国の市町村国保間の比較もできることから、データ活
用による分析や保健事業の評価に役立てていきます。
国保財政の安定化の面からも、今後も、引き続き高血圧症、糖尿病を中心とし
た生活習慣病6)に関する発症予防と重症化予防を進めていく必要があります。
表2.16
生活習慣病6)全体の保険給付費(平成24年7月)
(単位:万円)
平成20年度
順位
合計
平成21年度
平成22年度
199,100
211,300
208,400
1
高血圧
77,400
75,900
77,900
2
糖尿病
69,400
71,200
70,500
3
脳梗塞
20,400
25,600
27,300
4
虚血性心疾患4)
15,600
19,800
16,600
5
脳出血
13,800
11,400
9,300
6
血管性の認知症
2,500
7,400
6,800
※保険給付費は入院と外来の合計費用額
資料:新潟県国民健康保険団体連合会
疾病別分類別(中分類)統計
(5)健診・保健指導の状況
① 特定健康診査14)・市民健康診査31)の受診率
上越市の特定健診14)・市民健診31)の受診率は、60歳未満の受診率が低く、特に
18~39歳の市民健診31)受診率は男性3.2%、女性9.7%(平成22年度国保加入者の
み)と非常に低い状況です(図2.16)。
ただし、年次推移では、60歳未満を含め、全体的に受診率は伸びています。ま
た、平成22年度の特定健診14)受診状況では、男性に比べ女性の受診率が高い状況
にあります(図2.17)。
地区別の特定健診14)受診率は、30地区中11地区が市の目標値である60%(平成
23年度)を上回っていますが、合併前上越市の各地区の受診率が低い状況です(図
2.18)。
平成22年度の都道府県別特定健診14)受診率では、上越市の特定健診14)受診率は
全国や県より高い状況です。また、一般的に自治体の人口規模が大きくなるほど
受診率を向上させることが困難になりますが、同規模保険者(被保険者数5万人未
満の市)の中においては比較的高い状況です(表2.17)。
34
上越市の特定健診14)受診率の年次推移
図2.16
男性
市の目標値
女性
40.5%
36.4%
36.4%
49.0%
44.2%
46.3%
全体
(40~74歳)
51.2%
46.0%
48.7%
49.4%
46.1%
46.1%
70~74歳
46.1%
41.5%
42.9%
65~69歳
52.7%
48.1%
51.3%
60~64歳
55.2%
49.1%
51.1%
40.7%
34.5%
34.0%
28.9%
25.8%
25.2%
50%
40%
21.7%
19.4%
17.7%
45~49歳
22.6%
18.3%
19.8%
40~44歳
30%
35.2%
32.0%
32.9%
50~54歳
3.2%
2.0%
2.0%
60%
41.5%
38.3%
38.9%
55~59歳
25.9%
23.2%
20.8%
70%
市の目標値
20%
10%
29.9%
28.9%
29.3%
27.7%
24.9%
23.9%
平成22年度
9.7%
8.2%
8.2%
18~39歳
0%
-10%
-10%
0%
10%
20%
平成21年度
平成20年度
30%
40%
50%
60%
※市の目標値は平成23年度末現在
資料:上越市
35
特定健診14)受診結果
70%
特定健診 14)の受診状況(平成 22 年度)
図 2.17
女
男
2,081
2,035
2,195
1,877
1,846
1,269
70~74歳
2,307
65~69歳
2,400
(単位:人)
2202
2,157
2,132
60~64歳
1,727
425
1,048
668
55~59歳
226
289
648
531
50~54歳
201
161
581
471
45~49歳
683
男性
4000
40~74歳
3000
2000
6,192
健診受診者
0
0
40.5%
15,274
国保被保険者
健診未受診者数
512
40~44歳
1000
健診受診者数
196
199
5000
941
1000
女性
40~74歳
2000
3000
4000
5000
8,193
健診受診者
49.0%
16,734
国保被保険者
上越市の特定健診14)受診率地区別比較(平成23年度)
図2.18
(%)
80.0
60%(市の目標値)
73.6
70.7 70.0
70.0
69.1 69.0 68.4
65.3 65.2 64.8
62.3 61.5
60.0
56.9 55.6
53.9 53.1
50.0
51.7 50.0
49.6 48.4
47.9 46.7
48.6
45.5 43.5
43.2 42.8 42.4 42.1
40.0
38.0
36.6 36.1
30.0
20.0
10.0
0.0
大
潟
区
牧
区
大
島
区
清
里
区
名
立
区
桑
取
吉
川
区
安
塚
区
板
倉
区
中
郷
区
高
士
三
和
区
頸
城
区
諏
訪
浦
川
原
区
柿
崎
区
北
諏
訪
谷
浜
保
倉
八
千
浦
津
有
春
日
新
道
和
田
五
智
三
郷
金
谷
有
田
直
江
津
高
田
上
越
市
平
均
1%は
15 6 4 5 5 1 9 6 13 9 3 10 14 2 7 19 3 3 4 8 8 26 13 9 14 3 24 19 19 60 341
何人
人 人 人 人 人 人 人 人 人 人 人 人 人 人 人 人 人 人 人 人 人 人 人 人 人 人 人 人 人 人 人
か?
図2.17、2.18
36
資料:上越市
特定健診14)結果
表2.17
都道府県
1
宮
2
上
3
都道府県別特定健診14)の受診率(平成22年度・法定報告値)
平成22年度
対象者数
受診者数
受診率
城
395,223
178,707
45.2%
市
32,008
14,385
44.9%
東
京
2,221,782
944,206
42.5%
4
富
山
172,068
72,378
42.1%
5
山
形
208,672
85,711
41.1%
6
長
野
374,592
149,885
40.0%
7
岩
手
254,956
101,442
39.8%
8
新
潟
414,507
164,456
39.7%
9
越
大
分
208,220
79,953
38.4%
10 群
馬
383,303
146,042
38.1%
11 山
梨
165,239
62,087
37.6%
12 島
根
120,922
45,459
37.6%
13 石
川
190,960
70,771
37.1%
14 福
島
365,077
134,227
36.8%
15 香
川
167,688
60,354
36.0%
16 愛
知
1,208,603
430,087
35.6%
17 千
葉
1,150,803
402,338
35.0%
18 岐
阜
377,328
130,222
34.5%
19 沖
縄
261,469
89,999
34.4%
20 三
重
316,405
107,674
34.0%
21 長
崎
281,011
95,048
33.8%
22 佐
賀
144,856
48,458
33.5%
23 徳
島
128,170
42,407
33.1%
24 秋
田
208,992
68,967
33.0%
賀
207,184
68,250
32.9%
島
312,574
102,142
32.7%
25 滋
26 鹿
児
27 熊
本
345,858
112,166
32.4%
28 埼
玉
1,294,336
417,752
32.3%
29 茨
平成22年度 特定健診受診率別保険者数
(被保険者数5万人未満の市)
受診率別
保険者数
累積数
0
65%以上
参酌標準
60%以上65%未満
2
2
55%以上60%未満
6
8
50%以上55%未満
23
31
45%以上50%未満
50
81
40%以上45%未満
91
172
35%以上40%未満
111
283
30%以上35%未満
153
436
25%以上30%未満
112
548
20%以上25%未満
68
616
15%以上20%未満
34
650
10%以上15%未満
11
661
5%以上10%未満
0
661
5%未満
0
661
城
574,077
183,714
32.0%
国
22,419,244
7,169,761
32.0%
31 静
岡
696,076
210,854
30.3%
32 兵
庫
939,592
284,105
30.2%
33 栃
木
377,509
109,696
29.1%
34 青
森
301,682
85,021
28.2%
35 京
都
426,477
119,697
28.1%
36 鳥
取
102,072
27,943
27.4%
《参考》
37 福
井
126,048
34,445
27.3%
国の参酌標準(平成20~24年度、市町村国保) 38 宮
崎
226,321
61,819
27.3%
健診受診率65%、保健指導終了率45%
39 高
知
148,538
40,265
27.1%
40 大
阪
1,576,390
419,885
26.6%
41 福
岡
807,101
213,854
26.5%
30 ★
全
42 和
歌
山
213,089
54,849
25.7%
43 神
奈
川
1,510,105
358,898
23.8%
44 奈
良
245,449
58,519
23.8%
45 岡
山
310,819
73,614
23.7%
46 愛
媛
270,652
62,263
23.0%
道
964,786
218,140
22.6%
48 山
口
260,409
54,950
21.1%
49 広
島
461,254
86,042
18.7%
47 北
海
0
合計
資料:国民健康保険中央会
37
上越市
(44.9%)
661
保険者別特定健康診査14)受診率
②
未受診者対策
より予防効果の高い若い世代から定期健診受診を定着化し、将来的な重症化を
予防するためにも未受診者対策を強化していく必要があります。
具体的には、個別訪問により受診の意義や効果等を説明し、受診勧奨をしてい
ます(平成23年度の訪問者数5,182人)。個別訪問では、
「どこも悪くないから受診
しない」「仕事が忙しい」等の話が聞かれました。
しかし、受診勧奨の結果、初めて受診した人は有所見者の割合が非常に高く(表
2.18)、未受診者の中に潜在的な重症者が多くいることが推測されます。
また、地域ごとの未受診者の実態を把握するために、保健指導実施者が地区担
当制を採用し責任の明確化を図り未受診者対策に取り組んでいます(表2.19)。
表2.18
特定健診14)継続受診者と初めて受診した人の結果比較(平成23年度)
(重複あり)
受診勧奨値のうちガイドラインを踏まえた
継続受診者
平成23年度
受診勧奨対象者
過去1回以上受診
履歴がある人
初めて受診した人
受診者数
項目
(動脈硬
人数
割合
人数
割合
1,802人
19.1%
519人
22.6%
2,143人
22.7%
625人
27.2%
400mg/dl以上
82人
0.9%
36人
1.6%
34mg/dl以下
104人
1.1%
39人
1.7%
126mg/dl以上
145人
3.9%
44人
4.5%
6.5%以上
268人
2.8%
95人
4.1%
349人
3.7%
113人
4.9%
女性90cm以上
中性脂肪33)
HDL コ レ ス テ ロ
ール34)
血管が
む
19.6%
男性85cm以上
腹囲
痛
2,301人
25以上
身体の大きさ
脂肪
80.4%
基準値
BMI32)
内臓
9,450人
空腹時血糖
インスリン
血
HbA1c37)
抵抗性36)
糖
(JDS値)
化の危
計
険因子)
血管を
血
傷つける
圧
収縮期
160mmHg以上
449人
4.8%
138人
6.0%
拡張期
100mmHg以上
492人
5.2%
203人
8.8%
733人
7.8%
254人
11.0%
160mg/dl以上
620人
6.6%
216人
9.4%
9.0g/dl以上
41人
0.4%
21人
0.9%
計
その他の
LDL コ レ ス テ ロ
動脈硬化危険因子
ール38)
腎機能
尿酸39)
37)
※空腹時血糖・HbA1c ・尿酸
施者数を分母に割合を算出
39)
については検査実施者数が異なる場合、検査実
資料:上越市
38
特定健診14)結果
表2.19
目
上越市の未受診者対策
的
若年者の特定健診14)
受診率を上げる
内
容
・自営業者(理美容業、菓子店及び飲食店など)への受
診勧奨
・自営業者の健康管理の実態把握(産業振興課と連携)、
勤労者福祉サービスセンター及び商工会議所・13区商
工会と連携
・認定農業者40)等の健康管理の実態把握及び受診勧奨
(農業振興課と連携)
・自営業者各業種別の組織への働きかけ
・学校、保育園及び幼稚園との連携(小中学校・保育園
及び幼稚園での健康教育の充実と受診勧奨)
・未受診者への健診案内文書送付等による受診勧奨
各年代の特定健診14)
・国保の加入手続きの際に健診受診勧奨(途中加入も含
受診率を上げる
めて)
・各種団体への健診受診の働きかけ(町内会、健康づく
りリーダー、地域協議会等)
・町内会主催の健康講座での健診受診の働きかけ
・健康づくり推進活動チーム研修会での健診受診の働き
かけ(市内30地区・年2回開催)
健診リピーター率を上
・特定健診14)結果説明会の内容充実(平成22年度348回
げることで特定健診14)
実施)
受診率向上を目指す
・健診後の各種保健指導の充実
・科学的根拠に基づく保健指導の質の向上
39歳以下の市民健診31) ・乳幼児健診での健診受診勧奨
受診率を上げ、長期的 ・乳幼児健診・保育園・幼稚園及び学校での健康教育を
な特定健診14)受診率向
通じて健診受診の働きかけ
上を目指す
・すくすく赤ちゃんセミナー41)等で妊娠中の健康管理か
ら生涯を通じての健康管理の重要性について働きかけ
③
健診結果から見た健康状況
市民健診31)・特定健診14)の結果からは、肥満の有無に関わらず、血中脂質、血
糖値、血圧値の有所見者が多くなっています。また、年齢が上がるに伴いその割
合が増え、複数の有所見項目の重なりを持つ人が多くなっています。特に血中脂
質の中でもLDLコレステロール38)高値の人の割合が、他地域と比較し高い状況で
す。LDLコレステロール38)高値、血糖値、血圧値、内臓肥満等の複数の有所見項
目の重なりは、血管障害から動脈硬化症を引き起こし、心筋梗塞64)や脳梗塞など
上越市の課題となっている心血管病につながる危険が大きいと言えます。
39
加えて空腹時血糖が正常であっても、インスリン初期分泌低下80)があり食後高
血糖につながるパターン、あるいは内臓肥満や運動不足等により起こるインスリ
ン抵抗性36)から耐糖能異常43)が引き起こされ、血管障害につながっています。そ
のためインスリン35)分泌状態を確認し、インスリン35)に着目した健康教育が必要
です。
また、腎機能を示すeGFR28)(イージーエフアール)について血液中のクレアチ
ニン値29)から計算し、健診結果に示しています。これは、市民に自分の腎機能の
状態を分かりやすく知ってもらうために導入しており、腎機能の重症化予防のた
め健康教育で活用しています。
eGFR28)は90以上が正常範囲ですが、平成23年度の健診結果では、eGFR9028)未満
(腎機能が正常範囲以外)の人が71.9%を占めており、その内訳はeGFR60~89(腎
機能正常または軽度低下)の人が61.8%、eGFR28)45~59(腎機能軽度~中等度低
下)の人が8.5%、eGFR30~44(腎機能中等度~高度低下)の人が1.3%です。
今後も、このeGFR28)を活用し自分の腎臓の状態を知ってもらい、重症化予防の
ための健康教育を行っていくことが必要です。また、eGFR2928)以下の重症者には
医療機関と連携し適切な疾病管理を行っていくことが重要です(表2.20)。
年代別eGFR28)有所見の状況(平成23年度)
表2.20
eGFR
区分
受診者
ステージ1
ステージ2
ステージ3a
ステージ3b
ステージ4
ステージ5
正常または高値
正常または
軽度低下
軽度~
中等度低下
中等度~
高度低下
高度低下
末期腎不全
90以上
60~89
45~59
30~44
15~29
15未満
有所見
割合
有所見
割合
有所見
割合
有所見
割合
有所見
割合
有所見
割合
39歳以下
1,307
915
70.0%
388
29.7%
3
0.2%
1
0.1%
0
0.0%
0
0.0%
40~49歳
709
276
38.9%
422
59.5%
11
1.6%
0
0.0%
0
0.0%
0
0.0%
50~59歳
1,242
455
36.6%
715
57.6%
67
5.4%
3
0.2%
2
0.2%
0
0.0%
60~69歳
5,887
1,825
31.0%
3,613
61.4%
401
6.8%
41
0.7%
3
0.1%
4
0.1%
70~74歳
3,557
806
22.7%
2,394
67.3%
303
8.5%
45
1.3%
9
0.3%
0
0.0%
75歳以上
4,575
584
12.8%
3,144
68.7%
684
15.0%
138
3.0%
23
0.5%
2
0.0%
計
17,277
4,861
28.1% 10,676
61.8%
1,469
8.5%
228
1.3%
37
0.2%
6
0.03%
資料:上越市
市民31)・特定14)・後期高齢者健診30)結果
さらに、市民健診31)・特定健診14)以外の現状として、平成21年度の39歳以下の
職域健診42)の結果からは、受診者12,385人中2,220人(17.9%)から糖尿病が発
見されており、若い人からも糖尿病が重症である人が発見されています(図2.19)。
10歳代~20歳代前半で血糖値の指標であるHbA1c37)(ヘモグロビンエーワンシー)
40
が10%以上の重症例も数例見つかっており、糖尿病の進行速度を考慮すると生活
習慣の改善と適切な治療がなければ、20歳代~30歳代で合併症の発症が想定され
ます。若い時期からの発症を抑えるためには、産業保健44)と連携して早期からの
保健指導を進めていくとともに、母子保健や学校保健と連携し、生活習慣病6)予防
の視点を取り入れた健康教育を進めていくことが重要です。
図2.19
39歳以下の職域健診42)受診者のうち糖尿病発症者の内訳(平成21年度)
17人 45人
43人
糖尿病境界域(HbA1c(JDS値)5.2~6.0%)
糖尿病域(HbA1c(JDS値)6.1~6.9%)
2,115人
糖尿病域(HbA1c(JDS値)7.0~7.9%)
糖尿病域(HbA1c(JDS値)8.0%以上)
※平成21年度受診者12,385人中、糖尿病境界域及び糖尿病域の2,220人の結果か
ら作成
資料:上越地域総合健康管理センター 職域健診42)結果
④ 保健指導実施状況
健診結果から自分の体、とりわけ血管にどのような変化が起きているのか具体
的にイメージした上で、将来的な自分の体の状態を予測し、日常の生活習慣と結
び付けて改善の方策を考えてもらう必要があります。そのため、健診受診者全員
を対象に健診結果説明会を実施し、年間348回、9,422人(平成22年度)の参加を
得ています。
上越市国保の特定保健指導実施率は52.1%(平成22年度)であり(表2.21)、国
の参酌標準45%を上回り、全国や県より高い状況です(表2.22)。引き続き実施率
を上げていくとともに、厚生労働省が定める特定保健指導対象者以外にも、複数
の有所見項目を持つ人が重症化する傾向にあるため、市独自の基準で対象者を明
確化し(表2.23)、訪問指導を5,105人(平成23年度)に行っています。訪問指導の
結果、最も重点課題としている血糖高値者では、66.0%の人のデータが改善しま
した。今後も対象者を確実に選定して実施します。
生活習慣病6)予防のためには、生涯を通じた取組が重要であることから(表2.24)、
保育園・学校とも連携した取組を行っています。また、乳幼児健診等でも生活習
慣に着目し健康教育を進めています。
被用者保険13)加入者については、特定保健指導対象者以外は保健指導を受ける
機会が尐ないことから、39歳以下の市民健診31)受診者にも保健指導を行っていま
す。また、40歳以上の医療保険者が行う特定健診14)受診者については、市が行う
41
結果説明会に参加を促し、国保加入者と同じく、生活習慣病6)予防のための保健指
導を行っており、143人(平成23年度)が参加しています。
高齢者の医療の確保に関する法律では、市町村においては国保加入者を対象と
して特定健診14)、保健指導を行うこととされていますが、上越市においては、保
健・医療・福祉の現状から早期に予防のための介入が必要です。そのため市民の
健康づくりとして、加入する医療保険に関わらず、各ライフサイクルで幅広く生
活習慣病6)予防を中心とした保健指導を行い(表2.25)、重症化への移行を阻止し
ていきます。
表2.21
特定保健指導実施率
(単位:%)
年度
平成20年度
平成21年度
平成22年度
率
53.8
50.3
52.1
資料:上越市
42
特定保健指導実施率
表2.22
都道府県別特定保健指導の終了率(平成22年度・法定報告値)
平成22年度
平成22年度 特定保健指導終了率別保険者数
1
都道府県
徳
島
2
上
3
沖
縄
4
佐
賀
6,603
3,194
48.4%
5
福
岡
29,581
14,070
47.6%
6
山
梨
7,610
3,589
47.2%
7
長
野
18,064
8,180
45.3%
8
長
崎
12,797
5,630
44.0%
9
鹿
島
14,348
5,891
41.1%
10 宮
崎
9,359
3,537
37.8%
11 山
形
11,234
4,199
37.4%
12 青
森
10,089
3,771
37.4%
13 岐
阜
15,929
5,921
37.2%
14 熊
本
16,608
5,972
36.0%
15 新
潟
20,519
7,201
35.1%
16 愛
媛
9,640
3,328
34.5%
17 栃
木
15,171
5,197
34.3%
18 北
越
児
終了者数
3,136
実施率
54.3%
市
1,551
808
52.1%
17,173
8,567
49.9%
道
30,499
10,182
33.4%
19 石
川
8,612
2,867
33.3%
20 福
井
4,757
1,562
32.8%
21 大
分
12,252
3,790
30.9%
22 静
岡
24,339
7,097
29.2%
23 広
島
12,974
3,406
26.3%
24 ★
海
対象者数
5,778
全
終了率別
保険者数
累積数
65%以上
93
93
60%以上65%未満
38
131
55%以上60%未満
66
197
50%以上55%未満
76
273
45%以上50%未満
71
344
上越市
(52.1%)
参酌標準
40%以上45%未満
95
439
35%以上40%未満
123
562
30%以上35%未満
149
711
25%以上30%未満
148
859
20%以上25%未満
158
1,017
15%以上20%未満
209
1,226
10%以上15%未満
223
1,449
5%以上10%未満
200
1,649
5%未満
190
1,839
国
953,535
242,911
25.5%
25 茨
城
30,727
7,615
24.8%
26 兵
庫
35,759
8,591
24.0%
27 滋
賀
8,676
2,077
23.9%
28 高
知
7,003
1,656
23.6%
29 千
葉
54,199
12,787
23.6%
30 岩
手
16,349
3,474
21.2%
31 島
根
5,107
1,070
21.0%
32 埼
玉
54,610
11,309
20.7%
33 鳥
取
3,488
720
20.6%
34 山
口
6,364
1,275
20.0%
※市町村国保保険者ベース
35 東
京
114,089
22,834
20.0%
(保険者番号を保有する政令市行政区は個別にカウントしている)
36 宮
城
29,356
5,842
19.9%
山
9,655
1,912
19.8%
《参考》
山
7,602
1,460
19.2%
国の参酌標準(健診受診率65%、保健指導終了率45%)両方クリアしている保険者
39 秋
田
10,704
2,007
18.8%
40 福
島
18,249
3,409
18.7%
41 奈
良
7,881
1,376
17.5%
42 京
都
14,566
2,519
17.3%
43 香
川
8,977
1,495
16.7%
44 岡
山
10,123
1,588
15.7%
45 群
馬
19,642
3,020
15.4%
46 愛
知
54,690
8,358
15.3%
47 大
阪
54,833
8,003
14.6%
川
43,400
6,270
14.4%
重
13,550
1,957
14.4%
37 富
38 和
48 神
49 三
歌
奈
合計
1,839
8保険者
資料:国民健康保険中央会
43
保険者別特定保健指導受診率
表 2.23
訪問指導対象者(平成 24 年度)
区 分
年
齢
対
象
次の項目に1つ以上該当している人
・HbA1c37)(JDS値)10%以上
・中性脂肪33)1000mg/dl以上
至急訪問 年齢制限なし ・LDLコレステロール38)30mg/dl未満または250mg/dl以上
・GOT・GPT45)300IU/l以上
・γ-GT46)700IU/l以上
・クレアチニン値29)1.8mg/dl以上(eGFR28)30未満)
優先度1
特定保健 特定保健指導 1-①積極的支援47)(~64歳)
指導
対象年齢
1-②動機づけ支援47)
2-①最高血圧180mmHg以上又は最低血圧110mmHg以上
優先度2
重症化
予防訪問
年齢制限なし
2-②HbA1c37)(JDS値)8%以上10%未満
2-③LDLコレステロール38)160mg/dl以上
2-④心房細動・心房粗動48)あり
3-①最高血圧160mmHg以上180mmHg未満又は
最低血圧100mmHg以上110mmHg未満
優先度3
重症化
予防訪問
~74歳
3-②HbA1c37)(JDS値)7%以上8%未満
3-③尿酸39)9mg/dl以上
3-④eGFR28)45未満
(腎臓をまもるための学習会49)参加者以外)
4-①最高血圧140mmHg以上160mmHg未満又は
最低血圧90mmHg以上100mmHg未満
4-②HbA1c37)(JDS値)6.1%以上7%未満
優先度4
重症化
予防訪問
~69歳
4-③中性脂肪33)300mg/dl以上
4-④LDLコレステロール38)140mg/dl以上160mg/dl未満
4-⑤尿酸39)8mg/dl以上9mg/dl未満
4-⑥eGFR28)45以上60未満
(腎臓をまもるための学習会49)参加者以外)
44
表 2.24
生涯を通じた健康づくりの推進(各期の課題)
発育・成長期
疾病管理
介護予防
時期
胎児期
乳児期
幼児期
尐年期
青年期
壮年期
高齢期
対象者
妊婦
1,600人
0歳
1,600人
1~6歳
9,000人
小中高校生
18~39歳
47,500人
40~64歳
68,000人
65歳以上
55,000人
関係
法律
学校保健
安全法
母子保健法
器官の
成長・発達
身体の
特徴
24,000人
成長発達には臨界期があり、
年齢に合った育児環境が必要
次の世代を生
み育てるため
の健康な体づ
くりの準備
成長・発達(脳が指令)
健康増進法
高齢者の医療の確保に関する法律
脳卒中による若年の要介護認定者が多い
代
謝
体
活
の
動
完
を
成
行
う
死
生活習慣により健診データが変化する
老 化
→ 体の障害
生涯にわたる一貫した健康づくりのための生活習慣病予防の健康学習(後天的障害予防)
各期の
学習
課題
母体を通し
て器官が成
長・発達
生活習慣の獲得
次の世代を生み育てるための
健康な体づくり
重症化予防の健康学習(健診データの安定化)
発育・発達を支える健康学習
妊婦健診
保健
事業
乳幼児健診
保育園・学校健診
市民健診
特定健診
後期高齢者健診
保健指導・訪問指導(対象者を明確にした重症化予防の視点)
各期の学習課題を達成するための健康学習・健康教育 (インスリンを守る視点での学習)
職域との連携(退職後の重症化予防)
資料:上越市
45
46
表2.25
各ライフサイクルにおける生活習慣病6)予防を中心とした
保健指導の方向性
対象者
保健指導の方向性
会社等に勤務
している人
医療費分析の結果から、退職者医療制度15)加入者の医療費が高
い状況にあります。また、会社等を退職した後に健康状態が悪化
し重症化しています。
そのため、健康寿命2)の延伸と将来の国保財政安定化に向け、
企業と連携した健康教育を実施しています。
今後も企業に働きかけを行いながら拡大して実施します。
被用者保険13)
の被扶養者
多くの被用者保険13)が、国保加入者と同じく市が実施する健
診会場で健診受診できるため、健診会場において市が実施する結
果説明会参加を勧めています。
今後も引き続き同様の方法で保健指導を受ける機会を設けて
いきます。
65歳以下の
国保加入者
特定健診14)の受診率が向上するよう未受診者への訪問や啓発
等に努めます。
受診者には確実に保健指導を行い、生活習慣病6)予防と重症化
予防対策を進めるとともに、翌年以降の健診受診につなげます。
65歳以上の
高齢者
今後、脳卒中や生活習慣病の重症化から重い介護状態になる危
険性の高い人を、健診データやレセプト25)データから選定し、平
成22年度から高齢者健康支援訪問事業を実施しています。
具体的には、脳卒中の既往がある人、糖尿病と高血圧の重なり
がある人、重症の高血圧や糖尿病の人、心房細動48)のある人など
に定期的に訪問しています。
その結果、高血糖などのリスクが悪化しない、もしくは改善し
たという人の割合は73.8%(平成23年度)でした。定期的に介入
した効果と考えられます。
また、平成24年度から脳卒中の予防を目的として、後期高齢者
健康診査30)で心電図検査を実施しています。これは、国の健診
制度改正により、平成20年度から75歳以上の人の健診項目から削
除されていた心電図検査を再度導入したものです。そして、検査
結果から心房細動48)の所見があった人に、適切な治療につなげ
るための訪問指導を実施しています。
今後は、介護事業所や地域包括支援センター50)と連携しなが
ら訪問し、働きかけを行うことで介護予防51)を図ります。
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