...

口蹄疫防疫体制整備に向けての取り組み

by user

on
Category: Documents
13

views

Report

Comments

Transcript

口蹄疫防疫体制整備に向けての取り組み
口蹄疫防疫体制整備に向けての取り組み
上越家畜保健衛生所
安野僚太郎
丸山幹夫
石田秀史
中林
大
市、妙高市、糸魚川市の3市、2農協、NOSAI、
はじめに
平成22年4月20日、宮崎県で10年ぶりに口蹄
大 動 物 診 療 獣 医 師 に は 、 4月 22日 か ら 6月 25日
疫が発生した。終息までにワクチン接種を含
まで口蹄疫新規発生の度に、畜産課が発信す
め 牛68,266頭、 豚 220,034頭 、そ の 他343頭 が
る口蹄疫関連情報と農林水産省のプレスリリ
殺処分対象となった。
ースなどを情報提供した。農場には同様の情
この発生を踏まえ、新潟県は口蹄疫発生時
報を4月22日から24まで毎日、5月7日以降は一
における防疫対応を迅速かつ円滑に実施する
週間の情報をまとめ 、毎週金曜日に提供した 。
ため、口蹄疫発生時対応指針を作成した。こ
の指針では県内で口蹄疫が発生した場合、知
3
小学校等への注意喚起
6月30日、上越農業共済組合定期理事会で理
事を本部長とする「新潟県口蹄疫対策本部」
事 30名 に 対 し 口 蹄 疫 発 生 の 状 況 及 び 防 疫 対 応
が設置されることとなった。
上 越 家 畜 保 健 衛 生 所 (以 下 当 所 )で は 上 越 地
について説明した。また、市の教育委員会の
域の口蹄疫防疫体制整備に向けて以下の対応
要望を受け、管内の動物飼育小中学校関係者
を行ったのでその概要を報告する。
を対象に上越市では6月1日に、妙高市では6月
10日 に 口 蹄 疫 と そ の 予 防 対 策 に つ い て 説 明 し
上越家畜保健衛生所の対応
1
た。畜産関係者以外にも正しく理解されるよ
うに、各小学校には炭酸ソーダを配布すると
農場聞き取り調査及び指導
宮崎県の口蹄疫の発生を受け、当所では管
内 の 清 浄 性 を 確 認 す る た め 、 管 内 全 73戸 の 偶
ともに、口蹄疫に対する注意喚起を促すチラ
シを配布した(図2)。
蹄 類 飼 養 農 場 (以 下 農 場 )の 聞 き 取 り 調 査 ま た
は立ち入り調査を行い、全農場において飼養
家畜に異常のないことを確認した(表1)。さら
に、予防措置として畜舎入り口の踏込消毒槽
の設置、車両の消毒、農場専用の作業着の使
用、外来者の立ち入り制限、異常畜の早期発
見早期通報、発生地や観光牧場への旅行自粛
等を指導した。また、全ての農場に畜舎踏込
消毒のため炭酸ソーダを緊急配布した。
表1
管内偶蹄類飼養農場の聞き取り調査
管内の偶蹄
類の家畜の
飼養農場数
緊急調査等
終了農場数
73戸
2
73戸
異常が確認
された農場
数及びその
対応状況
0戸
調査等実施
方法
電話連絡
68戸
農場立入
5戸
情報提供
口蹄疫に対する注意喚起を促すため、上越
図2
4
学校関係者へ配布したチラシ
上越子牛市場での対応
上越子牛市場が6月 、9月 、12月に開催され 、
当所は、6月市場では来場する畜産関係車両
こととし、作成後各地域振興局ごとに関係機
に対し、動力噴霧機を使い入退場時車両全体
関に対してマニュアル運用について説明会を
の消毒を実施した。全農にいがたは市場内の
開催した。当所では管内の地域振興局及び各
消石灰散布及びせり会場への踏込消毒槽を設
市版のマニュアル作成に協力した。上越地域
置した。9月市場では口蹄疫の発生は終息して
振 興 局 で は 5月 31日 に マ ニ ュ ア ル が 完 成 し 、 7
いたが、動力噴霧機により全入退場車両底面
月1日に自衛隊、農政局、警察署、東日本高速
を 消 毒 し た 。 12月 市 場 で は 車 両 消 毒 槽 で の 入
道路株式会社、新潟県建設業協会等関係機関2
退場車両消毒とした(写真1)。
1機関、59名を参集し、説明会を開催した。糸
魚川地域振興局では5月31日のマニュアル完成
後 、 6月 17日 、 18日 の 2回 に 渡 り 説 明 会 を 開 催
した。各市版マニュアルは6月中に完成した。
3
地域防疫演習
ア
車両消毒
写真1
12月 20日 に 防 疫 マ ニ ュ ア ル を 基 に 振 興 局
市場内
車両消毒及び市場内の様子
上越地域振興局
と連携し上越市、妙高市、警察、自衛隊な
ど83名が参集し(図3)防疫演習を実施した 。
体制整備に向けての取り組み
1
防疫マップデータの点検、整理
上越市内で口蹄疫を否定できない牛が発見
されたという想定で、当所、上越地域振興
上越管内での口蹄疫発生時に備え、管内全
局、各機関へと一連の情報伝達及び現地連
域の農場住所及び飼養規模のデータベース内
絡会議の開催訓練を行った。次に当所がス
容を点検、整理した。また、地図ソフト(プロ
ライドを用いて口蹄疫発生時の防疫業務の
アトラス、(株)アルプス社)を用い、各農場ご
内容を説明し、各機関の代表が想定に沿っ
とに口蹄疫発生時の移動及び搬出制限区域を
たシナリオに基づくシミュレーションを行
示 し た 防 疫 マ ッ プ を 作 成 し た (図 1 )。 現 在 通
った 。最後に防疫服の着脱訓練を実施した 。
行遮断、消毒ポイントを盛り込んだ地図を作
図3
成中である。
通行遮断
移動制限及び搬出制限区域
関係機関組織図
上越市
上越市
上越地域振興局
上越地域振興局
関係部
動衛研
企画振興部
上越家保
病鑑課
消毒ポイント
設置市町村
第1報のみ
地域振興局
自衛隊
全家保
全地域
振興局
農林水産省
図1
関係団体
(JA、
JA、NOSAI、
NOSAI、
酪農協)
畜産課
危機対策課
庁内連絡会議メンバー
警察
北陸地方
整備局
NEXCO
地図ソフトを用いた通行遮断場所と移
動制限及び搬出制限区域作成例
イ
糸魚川地域振興局
11月 26日 に 90名 が 参 集 し 同 様 の 演 習 を 実
2
地域防疫対応マニュアルの作成
施した。まず、当所が防疫シミュレーショ
新潟県では地域の実状に合わせた各地域振
ンを説明した。次に、振興局が口蹄疫発生
興局版口蹄疫防疫対応マニュアルを作成する
時の防疫業務を確認し、防疫服の着脱訓練
を行った。最後に糸魚川市内で口蹄疫が発
らの応援体制をシミュレートしておく必要が
生したとの想定で、情報伝達訓練、現地連
ある。
絡会議開催訓練を実施し、総務調整班、家
畜防疫班、環境対策班、経営支援班及び交
対策班等に分かれ、それぞれの担当業務の
2
迅速かつ適確な防疫作業の実施
防疫対応マニュアルを確実に機能させるた
めには、防疫訓練を通じて作業者の役割分担
訓練を行った。
を明確にし、実際の作業イメージを習得して
4
もらうことが、有効な手段と思われる。今回
県境防疫会議
11月5日、例年開催されている県境防疫会議
の防疫訓練は上越では防疫シミュレーション
が長野県松本家畜保健衛生所において松本家
のみで各担当業務の作成する資料作りは行わ
畜保健衛生所、長野家畜保健衛生所、富山県
れなかったので、次回は資料作りを盛り込ん
東部家畜保健衛生所、岐阜県飛騨家畜保健衛
だ防疫訓練を行っていく必要があると思われ
生所、東濃家畜保健衛生所及び当所が参集し
た。糸魚川では、各担当業務の資料作りは盛
開催された。会議では各県の口蹄疫対策の各
り込まれていたが 、所要時間が約2時間かかり 、
県の問題点及び口蹄疫防疫マニュアルの内容
さらなる時間短縮が必要と思われた。
について意見交換が行われた。また、県境付
近の農場で口蹄疫が発生した場合に備え、対
まとめ
象の農場の情報交換をすることが確認された 。
4月20日、宮崎県での口蹄疫の発生に伴い、
資材及び機材の調達では建設業やホームセン
管 内 の 清 浄 性 確 認 の た め 偶 蹄 類 飼 養 農 場 全 73
ターなどとは災害協定を結んでいない県があ
戸に聞き取り調査又は立ち入り調査を行い、
ったり、防疫対応時に中心となって動く機関
異常のないことを確認した。また、定期的に
が各県ごとに様々である等、対応状況に相違
口蹄疫関連情報を提供することにより農場の
点が見られた。その他、個々の事例として農
防疫意識の向上が見られた。
場が国道に面しているため交通遮断が難しい 、
長 野 県 、 富 山 県 、 岐 阜 県 、 当 所 の 4県 6家 畜
埋却地の特定が出来ていない、ミニブタなど
保健衛生所が集合し、県境防疫会議が開催さ
の愛玩偶蹄類の飼養状況の把握が出来ていな
れ、県境付近の農場での口蹄疫発生時の防疫
い等、各県が抱える様々な課題が浮上した。
対応、協力体制について検討し、互いに情報
交換することとした。
今後の課題
口蹄疫発生時の迅速な防疫対応を可能にす
家畜防疫の基本は、発生予防、早期発見・
るためには、防疫従事者自身が、作業内容を
早期通報、迅速かつ適確な初動対応の3つであ
よく理解し、直ちに従事できる体制作りが大
る。口蹄疫対応では特に迅速かつ適確な初動
切と思われることから、防疫訓練を今後とも
対応が重要であることから今後の課題として
繰り返し実施していくことが必要と考えられ
以下のことが挙げられる。
た。
1
迅速に防疫計画を作成できる体制作り
口蹄疫発生時には迅速な初動対応が必要で
あるが 、当所は家畜防疫員が少ないことから 、
予 め 上 越 管 内 全 73戸 の 殺 処 分 方 法 、 埋 却 地 等
の防疫計画書の作成に必要な資料を完備する
ことが重要と思われた。また、不足人員を充
足するため、農場規模に対応した他の家保か
Fly UP