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神戸健康科学(ライフサイエンス)振興ビジョン

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神戸健康科学(ライフサイエンス)振興ビジョン
神戸健康科学(ライフサイエンス)振興ビジョン
∼クラスターの将来像∼
平成19年3月
神戸健康科学(ライフサイエンス)振興会議
はじめに
神戸市では、ポートアイランド第2期において先端医療技術の研究開発拠点を整備し、産学官
の連携により、21世紀の成長産業である医療関連産業の集積を図る「神戸医療産業都市構想」
を推進している。
平成11年3月に「神戸医療産業都市構想懇談会」が報告書をとりまとめてから、8年が経過
する。この間、報告書に位置づけられた「先端医療センター」「メディカルビジネスセンター」「ト
レーニングセンター」といった3つの中核機能も概ね整備が進み、医療関連企業の集積も順調に
進んでいるところである。
また、本構想の研究成果を活かして、市民の健康増進とまちの魅力の向上、地域経済の活性化
をめざす「健康を楽しむまちづくり」の取り組みも始まっている。
一方で、我が国においても「クラスター」の形成に向けた取り組みが開始されたことをはじめ、
ヨーロッパやアジアにおけるバイオクラスターの発展とグローバル化の進行、国立大学の法人化
(平成16年4月)や第3期科学技術基本計画の閣議決定(平成18年3月)、新中央市民病院基
本構想の策定(平成16年11月)
、神戸空港の開港とポートライナーの延伸(平成18年2月)
など、構想を取り巻く環境は大きく変化しつつある。
そこで、本構想の新たな展開をめざして、平成17年8月に「神戸健康科学(ライフサイエン
ス)振興会議」を設置し、
①クラスター形成の目標である10年後及び20年後の「グランドデザイン」
②クラスターの中核となる「新たな研究・技術開発」の推進方策
③「クラスター」形成の持続的な推進を支える仕組みづくり
といったクラスターの形成戦略やその実現に向けた取り組みについて、本会議や各ワーキンググ
ループにおいて、活発な議論を行ってきた。
このたび、本会議での検討を「神戸健康科学(ライフサイエンス)振興ビジョン」として取り
まとめ、提言を行うものである。
今後、本ビジョンを踏まえて、関西の産学官の連携と市民の参画のもと、高度医療サービスを
提供する「メディカルクラスター」の形成や、市民の科学的な健康づくりを支援する「健康を楽
しむまちづくり」の具体化、さらには、優秀な臨床医や研究者等の集積によりイノベーション創
出を加速する「メディカルイノベーションシステム」の強化が進められることにより、神戸経済
の活性化、市民の健康・福祉の向上、国際社会への貢献が促進されることを期待する。
神戸健康科学(ライフサイエンス)振興会議
座長
1
井村 裕夫
目
次
1.神戸健康科学(ライフサイエンス)振興ビジョンの背景
(1)神戸医療産業都市構想の概要(コンセプト)・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
(2)構想のこれまでの成果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
(3)構想策定(平成11年3月)からの環境変化・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
(4)構想を取り巻く今後の環境変化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
2.神戸におけるクラスター形成戦略
(1)「神戸医療産業集積形成調査」におけるクラスター戦略・・・・・・・・・・・・・9
(2)神戸クラスターの現状(平成17年度)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
(3)神戸における今後のクラスター形成戦略・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15
3.クラスター形成に向けた取り組み
(1)トランスレーショナルリサーチの強化とメディカルイノベーションシステムへの展開
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
(2)高度医療サービスの提供(メディカルクラスターの形成)・・・・・・・・・・・ 21
(3)科学的な健康づくりの支援(健康を楽しむまちづくり)・・・・・・・・・・・・ 25
(4)基礎研究機能の強化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29
(5)市民や事業者の参画の仕組み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31
4. クラスターの将来像
(1)経済効果の予測・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33
(2)今後のロードマップ
①研究・技術開発のロードマップ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35
②グランドデザインの実現に向けての誘導方策・・・・・・・・・・・・・・・・36
③実現にあたって・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40
参
考
(1)「神戸健康科学(ライフサイエンス)振興会議」委員名簿・・・・・・・・・・・41
(2)神戸健康科学(ライフサイエンス)振興会議の開催経過・・・・・・・・・・・・ 42
2
1.神戸健康科学(ライフサイエンス)振興ビジョンの背景
(1)神戸医療産業都市構想の概要(コンセプト)
・ 神戸医療産業都市構想は、ポートアイランド第2期において先端医療技術の研究開発拠点を
整備し、産学官の連携のもと、21世紀の成長産業である医療関連産業の集積を図ることに
より、雇用の確保と神戸経済の活性化、先端医療技術の提供による市民福祉の向上、および
アジア諸国の医療水準の向上による国際貢献を目的としている。
・ そのための中核機能として、神戸医療産業都市構
【トランスレーショナルリサーチ】
想懇談会報告書(平成11年3月)に基づいて、
大学等において、アカデミア(研究
トランスレーショナルリサーチ(基礎から臨床応
者・医師)が主導し、基礎研究の成果に
用への橋渡し研究)を行う先端医療センター、起
ついて、シーズの発掘から人への応用を
業支援を行うメディカルビジネスサポートセン
目指した前臨床研究、人を対象に行う臨
ター、人材育成を行うトレーニングセンターの構
床研究(非臨床試験を含む)の一部など、
想を定め、その整備を進めてきた。
最終的には実際の医療に用いることを
・ また、本構想で取り組むべき研究分野として、画
目指し、製薬企業等が研究開発に参画す
像診断を中心とする医療機器等の研究開発、医薬
るなど、実用化の見通しが立つまでの橋
品等の臨床研究支援(治験)、および再生医療等
渡し研究
の臨床応用の3つを掲げている。
科学研究の臨床への応用の推進に関す
<出典:文部科学省「先端医
る懇談会」検討報告書>
図
神戸医療産業都市構想のコンセプト
研究分野
◆ 医療機器等の
研究開発
◆ 医薬品等の臨床
研究支援(治験)
◆ 再生医療等の
臨床応用
中核機能
目 的
次世代医療システム
の構築
先端医療センター
トランスレーショナル
リサーチ
(実用化に向けた
研究開発)
メディカルビジネス
サポートセンター
起業支援
◆ 雇用の確保と神戸
経済の活性化
◆ 先端医療技術の
提供による市民 福祉の向上
トレーニング
センター
人材育成
・京都、大阪、神戸大学等との連携
・民間企業の参画
・発生・再生科学総合研究センターの誘致
3
◆ アジア諸国の医療
水準の向上による
国際貢献
・ さらに、本構想の実現にあたり、京都大学、大阪大学、神戸大学などの関西の大学や国立循
環器病センター等との連携、民間企業の参画を推進してきた。
図
産学官の連携による関西圏でのライフサイエンス産業の集積
・ 本構想は、このような高度な臨床研究機能・医療提供機能を有する中核機能の整備、研究分
野の設定、関西の産学官との連携などを通じて、
「次世代医療システム」を構築し、神戸のポ
ートアイランドを中心に、研究機関や医療産業を誘致・集積するだけでなく、関西圏全体で
のライフサイエンス分野の研究開発や事業化を促進しようとする考え方である。
(2)構想のこれまでの成果
①中核機能の整備
・トランスレーショナルリサーチについては、基礎から臨床応用への橋渡し研究を行う「先端
医療センター(IBRI)」、臨床研究情報の拠点である「神戸臨床研究情報センター(TR
I)」を整備するとともに、文部科学省の「知的クラスター創成事業」を通して、先端医療振
興財団を中核機関とし、複数の大学の研究者による研究体制を整備した。
・起業支援については、バイオベンチャー等の新事業を支援する「神戸バイオメディカル創造
センター(BMA)」、実験機器・健康福祉関連企業等の進出拠点となる「神戸健康産業開発
センター(HI−DEC)」を整備するとともに、研究機関や研究開発型企業等の集積に向け
た様々な活動を行う「クラスター推進センター」の設立や、
「神戸バイオメディカルファンド」
及び「神戸ライフサイエンスIPファンド」の創設を行い、組織面・資金面からの起業支援
を促進した。
・人材育成については、トレーニング機能を一部具体化する施設である「神戸バイオテクノロ
4
ジー研究・人材育成センター/神戸大学インキュベーションセンター」
、医療機器のトレーニ
ング及び研究開発支援を行う「神戸医療機器開発センター(MEDDEC)」を整備するとと
もに、医学分野と工学分野の双方に精通する人材を育成する「神戸バイオメディカルエンジ
ニアリング講座」や、神戸大学と連携して先端的な融合領域の人材を育成する「クリニカル・
ゲノム・インフォマティクス人材養成ユニット」などの講座を開催している。
②研究分野の進捗
・
「映像医療研究センター」として提案されたME(医学・工学)連携研究事業などの医療機器
等の研究開発については、先端医療センター(IBRI)の映像・画像機器を活用した研究
開発が進み、機器開発などに一定の成果があった。また、
「分子イメージング研究開発拠点」
が整備され、イメージング技術の治験等への応用も期待されている。当初は画像診断機器が
中心だったが、神戸医療機器開発センター(MEDDEC)の完成を契機とし、患者のニー
ズが高まっているカテーテルや内視鏡などの低侵襲治療用具の開発も進み始めている。
・
「臨床研究支援センター」として提案された医薬品等の臨床研究支援については、先端医療振
興財団により治験コーディネータの養成・派遣が行われるとともに、神戸市医師会とともに
地域協同型治験が実施されている。また、全国で初めて大学等での臨床研究を支援する「神
戸臨床研究情報センター(TRI)
」が開設され、生物統計やデータマネージメント等の専門
分野の人材の活躍により、「医師主導の臨床試験」については、全国的な拠点となっている。
・再生医療等の臨床応用については、理化学研究所の「発生・再生科学総合研究センター(C
DB)」が整備され、先端医療振興財団がCDB等と共同して文部科学省の「神戸市地域結集
型共同研究事業」や経済産業省の「微細加工技術利用細胞組織製造技術の開発に係る研究開
発事業」に取り組んでいる。また、先端医療センターでは、生命倫理審議会が定めた倫理指
針を遵守しながら着実に臨床研究を進めており、日本有数の再生医療ベンチャー企業の集積
も進んでいるが、薬事法による規制やES細胞の利用規制などにより全国的に再生医療のビ
ジネス化は進まず、理化学研究所の研究シーズの実用化には至っていない。
③構想の目的に関する成果
・
「雇用の確保と神戸経済の活性化」という目的に関して、これまでに101社(平成19年1
月現在)の医療関連企業が進出済み又は進出決定し、中核機関とあわせて1,900人(平
成18年12月現在)を超える雇用が創出された。企業の進出理由を見ると、「賃料補助など
インセンティブ」、「中核施設・機能を評価」、「再生医療の推進を評価」、「企業・医療機関・
研究機関の集積を評価」となっており、中核機能や研究分野を評価しての進出が多い。
・現状では研究ラボを賃借して進出する研究開発型企業が多く、事業所の規模も大きくないが、
今後の研究開発活動の進捗を通じて、さらなる雇用や事業規模の拡大が期待される。また、
地元中小企業の参画について、神戸市機械金属工業会において医療用機器開発研究会の組織
化が進み、研究開発から試作や販売をしている製品もあるが、今後、薬事法の承認手続をは
じめとする支援の強化により、本格的なビジネス化の加速が望まれる。
・
「先端医療技術の提供による市民福祉の向上」という目的に関して、先端医療センターで開発
したPET検診や放射線治療が実施されている。さらに、少子・高齢化社会の到来と市民の
健康づくりへの関心の高まりを踏まえて、市民の健康増進とまちの魅力の向上、健康関連産
5
業の誘致・育成を目指した「健康を楽しむまちづくり」の8つのプログラムが提案されてお
り、その具体化に一部着手したところである。
・
「アジア諸国の医療水準の向上による国際貢献」という目的に関して、国際的な研究者の集積
は理化学研究所を中心にある程度進み、アジア諸国との研究交流や企業も含めたクラスター
交流が始まっており、今後、アジア諸国の医師や医療従事者の教育など、臨床面の国際交流
を進めていく必要がある。
・本構想は、日本で初めて、先端医療分野のイノベーション創出を目指し、高度な臨床研究機
能・医療提供機能を有する「次世代医療システムの構築」を目標に掲げた。現在は、研究開
発分野での企業・研究者の集積が始まったところであり、これを実現するには、今後さらに
各種の戦略とその具体化に向けた取り組みが必要となる。
(3)構想策定(平成11年3月)からの環境変化
①神戸市における環境変化
・神戸医療産業集積形成調査(平成12年9月)
神戸での医療産業集積形成の戦略策定および経済波及効果の試算を行い、その後の指針と
した。
・新中央市民病院基本構想の策定(平成16年11月)
今後の中央市民病院が担っていくべき役割や、そのために必要な施設内容等が検討され、
平成22年を目途にポートアイランド第2期に新中央市民病院を整備する方針が示された。
・「健康を楽しむまちづくり懇話会」報告書の提言(平成17年7月)
健康をテーマにした新しいまちづくりに向けた報告書が取りまとめられた。
・神戸空港の開港、ポートライナーの延伸(平成18年2月)
・ポートアイランドへの大学の進出(平成19年4月)
既に立地している神戸女子大学・神戸女子短期大学に加え、新たに神戸学院大学、兵庫医
療大学、神戸夙川学院大学が進出予定。
②関西地域における環境変化
・関西バイオ推進会議の設置(平成13年8月)
関西圏のバイオ産業プロジェクトを推進させるため、産・官・学により設置された。
・都市再生プロジェクト「大阪圏におけるライフサイエンスの国際拠点の形成」の決定(平成13年8月)
大阪北部地域の創薬分野に対して、神戸地域を再生医療等の基礎・臨床研究と先端医療産
業の集積地とするため、研究機能の強化、起業化支援等に必要な施策を集中的に実施する
ものとして閣議決定された。
③国内における環境変化
・国におけるミレニアムプロジェクトの実施(平成11年12月)
・厚生労働省「健康日本21」の策定(平成12年3月)
・経済産業省「産業クラスター計画」の実施(平成13年4月)
6
近畿経済産業局において「近畿バイオ関連産業プロジェクト」が開始された。
・文部科学省「知的クラスター創成事業」の実施(平成14年4月)
大阪北部(彩都)地域とともに「関西広域クラスター」として採択された。
・構造改革特区の指定(平成15年4月)
・改正薬事法による医師主導の治験の導入(平成15年7月)
・大学知的財産本部の設置(平成15年7月)
、国立大学の法人化(平成16年4月)
④世界における環境変化
・医薬品開発の国際化
国際標準化を目指す日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)の設置や欧米における医
薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)の改訂などを受けて、国際化の動きが加速した。
・医療機器規制国際整合化会議(GHTF)の設置を受けた医療機器開発過程の統一化の進展
・ヒトES細胞の樹立(1998年 [平成10年] 11月)とバンク設立に向けた検討
・ヒトゲノムの解析の完了(2003年 [平成15年] 4月)
・アメリカをはじめヨーロッパやアジアにおけるバイオクラスターの発展
バイオポリス(シンガポール:2000年 [平成12年])
新竹バイオメディカルパーク(台湾:2005年 [平成17年]) など
(4)構想を取り巻く今後の環境変化
①先端医療技術に関する今後の環境変化
・1990年代のゲノム情報解析やたんぱく質構造の解析などライフサイエンス分野の科学技
術の大幅な発展により、これまでの経験的な薬剤開発から、ゲノム創薬への移行が見られる。
また、個人の遺伝的特性に基づくテーラーメイド医療や、再生医療への期待が高まっている。
・このような期待に反し、新規医薬品等の承認申請数はむしろ減少傾向にあることから、米国
食品医薬品局(FDA)では2004年(平成16年)3月に、基礎研究の成果をより速や
かに臨床現場への応用や医薬品などの製品開発につなげるための「クリティカルパス・イニ
シアティブ」を提唱している。
・これに伴い、有効性や安全性の予測能力が高いバイオマーカーなど新たな技術の開発が求め
られており、大手企業だけでなく中小企業やベンチャー企業が連携し、産学官が一体となっ
た技術開発の体制が世界的に求められている。
・我が国では、1998年(平成10年)に策定されたICHガイドライン(外国臨床データ
を受け入れる際の指針)により欧米で許可された新薬について日本国内での治験が緩和され
たことなどから、日本の大手製薬企業の多くが治験を海外で実施し、これが日本に先行する
動きが出てきた。また、国際共同治験(Grobal Study)の動きの中で国内における治験の空
洞化が進んでおり、中国をはじめとしたアジア経済の成長を受けて、それに対処するための
新しい臨床試験の仕組みを構築することが求められている。
・また、医療機器や再生医療の分野でも、研究者・医師が主導する臨床試験は依然として困難
であることなどから、国内での医療機器の開発が進まず、輸入額も年々増加して1兆円に近
7
づきつつある。そこで、実用化を視野に入れたトランスレーショナルリサーチの重要性が指
摘されており、国において、その推進のための環境整備のあり方について検討されている。
②制度面における今後の環境変化
・我が国では、少子高齢化が世界に類を見ない速度で進行しており、そのために高齢者の健康
をどう守るのかが、差し迫った課題となっている。
・平成18年6月に成立した「医療制度改革関連法」により、平成20年度から、都道府県が
生活習慣病患者とその予備軍の減少率などの数値目標を掲げるとともに、国民健康保険や健
康保険組合に対して40歳以上の加入者本人と扶養家族を対象に健康診断や保健指導を義務
付けるなど、
「予防重視」の方針が明確に打ち出されている。
・予防重視の考え方から、今後は、がん、生活習慣病、認知症などの疾患の診断・治療に関す
るものや、リハビリテーション、抗加齢、食などの健康増進・予防に関するものの重要性が
高まると考えられる。
・また、治療においては、対症療法より科学的な成果に基づく根本的な治療法が重視されてい
る。そして、それ以上に重要なことは予防であり、治療及び予防の現場に速やかに科学的成
果がもたらされる仕組みづくりが強く求められている。
・医療保険制度の財政的制約、テーラーメイド医療の進捗、さらには健康志向の増大など個人
の選択により、健康増進・予防に関する投資なども含めた新たなヘルスケアビジネスの市場
が形成されることも予想される。
③国際化の一層の進行による環境変化
・ 医療技術の開発プロセスの国際的な統一化(ハーモナイゼーション)が一層進み、世界同時
臨床試験が増加するのみでなく、開発プロセスの海外への移転も進むものと考えられる。
インターネットの普及により、医療に関する情報提供が進み、臓器移植やがん治療など高度
医療のみならず、より快適でより安全な医療を求める患者の国を越えた移動も増加する傾向
にある。
④国における今後の科学技術政策
・第3期科学技術基本計画では、ライフサイエンスなどの重点推進4分野及び推進4分野に加
えて、「国家基幹技術」として次世代スーパーコンピューティング技術などをあげるとともに、
「イノベーション創出」の強化が重視されている。
・また、分野別推進戦略では、臨床研究及び臨床への橋渡し研究が最重要課題の一つとして取
り挙げられており、平成19年度政府予算も大幅に拡充され、科学技術振興機構の研究開発
戦略センターからは、臨床疫学研究、基礎研究、及び臨床研究のプロセスを統合的に進め、
迅速に実用化するための戦略「統合化迅速研究(ICR:Integrative Celerity Research)」
の必要性も提言されている。
・このような最新の技術開発動向を踏まえて、今後も我が国における新たなライフサイエンス
分野の施策の具体化を先導するとともに、活用可能な技術の積極的な導入を図り構想を推進
することが重要である。
8
2.神戸におけるクラスター形成戦略
(1)「神戸医療産業集積形成調査」におけるクラスター戦略
・神戸医療産業都市構想懇談会報告書(平成11年3月)の提案後、我が国においても、
「クラ
スター」の形成に向けた取り組みが開始された。これは、大学・研究機関や研究開発型企業
等による「イノベーション」のための集積を形成し、新しい医療技術の開発・普及や、研究
者・企業のさらなる集積を図ることを目標としたものである。
・神戸におけるクラスター形成について、平成12
年に米国ベクテル社をはじめとする調査チーム
に依頼した「神戸医療産業集積形成調査」におい
て以下の戦略が提案されている。
【クラスター】
大学等の研究機関、特定分野における
関連産業、専門性の高い供給業者、サー
ビス提供者、関連業界に属する企業、関
¾ 「クラスター」という言葉はビジネスの地域
連機関(規格団体、業界団体など)が地
的集中を意味するが、クラスターの成功に
理的に集中し、競争しつつ同時に協力し
必要な要素をすべて一ヶ所に集中して存在
ている状態を指し、これらの機関と企業
させることはできない。
は、共通性や補完性によって結ばれてお
¾ 本構想をポートアイランド第2期だけに限
り、クラスター全体として個々が持つ機
定してしまうならば、成功を収めることは
能価値を高め、イノベーションの創出に
できない。また、大規模インフラ開発だけ
効果的に機能する。<出典:文部科学省
では持続的な発展は達成できない。
「知的クラスター創成事業」パンフレッ
¾ 本構想の実現には、神戸市と関西一円を対象
ト>
とした広範な開発計画、誘致促進計画、マ
ーケティング戦略との連携が不可欠である。
¾ 本構想においては、特に、大学コンソーシアム、神戸空港、投資インセンティブの3点
に戦略上の重点を置く。
¾ 戦略を段階的に、「基盤ブロック(中核施
設)」
、「支援システムブロック(主要投資家
【イノベーション】
へのサービス)」、「神戸の成長のための起
これまでのモノ、仕組みなどに対し
動力(投資家の活動)」の3つに分ける(次
て、全く新しい技術や考え方を取り入れ
項)。
て新たな価値を生み出し、社会的に大き
な変化を起こすこと
・このクラスター戦略と神戸の現状を比較すると、
支援システムブロックのうち「ビジネスサービ
<出典:首相官邸
「イノベーション25戦略会議」ホーム
ページ>
ス・NIRO(新産業創造研究機構)」と「神戸
科学的発見や技術的発明を洞察力と
空港」ができ、「大学の連携」も進みつつあるが、
融合し発展させ、新たな社会的価値や経
「投資インセンティブ」はこれからの課題であり、 済的価値を生み出す革新
それをもとに「神戸の成長のための起動力(投資
家の活動)」を生み出していく段階と言える。
9
期科学技術基本計画>
<出典:第3
図
クラスター成功のための構成ブロック
・神戸の構想の成功の鍵は、「神戸の成長のための機動力」つまり、投資家の活動をいかに醸成
していくかにかかっていると言える。本構想における「投資家」としては、神戸医療産業集
積形成調査で想定されている医療関連企業に加え、研究者や臨床医、さらには市民や事業者、
自治体の参画が必要となる。
(2)神戸クラスターの現状(平成17年度)
・前出「神戸医療産業集積形成調査」では、ノースカロライナのリサーチトライアングルをは
じめとした米国クラスター事例を基礎として、20年間にわたるクラスター形成による経済
効果を推計している。
・本ビジョンでは、神戸医療産業集積形成調査の手法に準じて、平成17年度における神戸医
療産業都市構想による経済効果の推計を、野村総合研究所に委託して行った。
①経済効果の推計方法
・経済効果は、ポートアイランド(PI)第2期に進出した医療関連企業と先端医療振興財団、
理化学研究所、神戸大学バイオテクノロジー研究・人材育成センターといった中核機関によ
る効果をはじめ、構想と関連の深い市内(PI2期以外)の主な医療関連企業、さらに波及
効果として構想開始後にPI2期内に進出した一般企業(物販・物流等を除く)も対象にし
ている。
・PI2期に進出した医療関連企業については、医療・バイオ関連の「研究開発」、「医薬品・
10
医療機器製造」、「病院・ヘルスケア」、「サービス」の4業種に区分し、雇用数を基数として
給与や物品・サービスの購入額を推計し、神戸市内への経済効果を推計している。
・推計の基礎情報を得るために、平成18年秋現在で進出している全企業を対象にアンケート
調査を実施している。PI2期医療関連企業については、平成18年3月末時点で75社(市
外からPI2期へ進出後、市内へ移転した企業1社を含む)が操業しており、このうち、経
済効果推計に必要な精度の回答は38社と中核機関3者から得られ、残りの37社について
は回答の精度が不十分であったため38社の回答をもとに業種ごとに雇用数あたりの原単位
(給与・発注額)を設定して推計している。
・市内(PI2期以外)の医療関連企業とPI2期内の一般進出企業についても、アンケート
調査を実施したが、経済効果の推計に十分な精度の回答が得られなかったため、平成12年
神戸市産業連関表を用いて雇用数あたりの原単位を設定して推計している。
・経済効果は、給与による就労者の消費と貯蓄、物品・サービス購入による企業の消費、賃貸
料、企業の利益を直接効果として推計し、平成12年神戸市産業連関表を用いて個人消費、
個人貯蓄、企業消費の市内の間接効果を推計している。
・税収効果として、固定資産税・都市計画税、市民税(個人市民税・法人市民税)、事業所税を
対象にしており、固定資産税・都市計画税は先端医療振興財団や理化学研究所などの中核機
関について個別調査を行い得られた雇用数あたりの税額(多いケース)からの推計と、市全
体での納税額から得られた雇用数あたりの税額(少ないケース)を用いた推計とを行った。
市民税は直接効果と間接効果の総合計をもとに、神戸市の市内生産額と市民税の回帰式を用
いて推計している。また、事業所税は、過去の実績より市民税に対する比率を用いて推計し
ている。
図
経済効果の推計方法
経済効果(市内)
経済効果(PI2期内)
波及効果
PI2期医療関連企業75社(市内移転企業
1社含む)
中核機関(先端医療振興財
団・理研・神大BTセンター)
市内(PI2期外)の主な医
療関連企業( H13以降の
雇用増分)
PI2期一般進出企業
38社
アンケート回答積上げ
アンケート回答積上げ
H12神戸市産業連関表よ
り原単位推計(市内発注
額・給与・企業利益)
H12神戸市産業連関表
より原単位推計(市内
発注額・給与・企業利
益)
37社
38社回答値からの
原単位推計(市内
発注額・給与)
市内在住雇用者の給与総額
実収入に占める消費支出の
割合68%
市内個人消費
市内消費率127%
企業市内発注総額
実収入に占める金融資産増の
割合19%
市内個人貯蓄
市内貯蓄率140%
就労者による神戸消費総額
就労者の神戸での貯蓄
市
内 直
接 効 果
神戸市産業連関表
市
内 間
接 効 果
神戸市税収
市民税:市内生産額に対する回帰係数より推計
固定資産税:積み上げ+推計
事業所税:市民税に対する比率により推計
11
②推計結果
・PI2期医療関連企業75社により593人の正規雇用が発生し、37.0億円の直接効果
と18.9億円の間接効果、1.7∼1.8億円の税収効果が推計された。
・中核機関3者により610人の正規雇用が発生し、105.2億円の直接効果、53.4億
円の間接効果、5.1億円の税収効果が推計された。
・上記の医療関連企業75社と合わせると、PI2期内では雇用1,203人、直接効果
142.2億円、間接効果72.3億円、両者を合わせた総合計214億円、税収効果
6.8∼6.9億円と推計された。
・なお、神戸市の「2 万人の雇用創出」計画による平成 14 年からの構想の雇用者数 1,551 人と、
それ以前の構想の雇用者数 206 人を合わせると、平成 17 年度末で 1,757 人となっているが、
上記の1,203人との差はパート・アルバイトや人材派遣の人数、人件費の対象とならな
い中核的な建物の保守管理・警備の職員等の人数である。
・さらにPI2期を除く市内への経済効果として、構想との関係が深いと考えられる主な医療
関連企業による効果を把握しており、構想の本格的な開始(平成13年度)以降、平成17
年度までにおいて、これらの企業で719人の雇用が増加したことから、直接効果・間接効
果を合わせ124億円の経済効果が推計された。
・これと上記のPI2期内での効果を合わせると、市内では雇用1,922人、直接効果
233億円、間接効果106億円、両者を合わせた総合計339億円、税収効果10.1∼
10.8億円と推計された。
・構想開始後のPI2期でのインフラ整備等の影響による波及効果として、PI2期内の一般
進出企業の効果も推計した。その結果、768人の雇用と直接効果・間接効果を合わせ
70.7億円の経済効果が推計された。
・これと上記の市内での効果を合わせると、波及効果も含めた経済効果は雇用2,690人、
直接効果281億円、間接効果128億円、両者を合わせた総合計409億円、税収効果
12.4∼13.2億円と推計された。
・以上は平成17年度を対象とした経済効果の推計結果であり、その後平成18年度に入って、
理化学研究所の分子イメージング研究開発拠点といった新たな中核機関も開設され、また、
世界的な大手医薬品メーカーの研究所の進出が決定する他、用地取得型の企業進出も増えつ
つある。さらには、「健康を楽しむまちづくり」に呼応して大手食品メーカーが市内に進出す
るなどの新たな動きも見られることから、平成18年度は上記の推計結果以上の効果が出て
いるものと思われる。
・一方、医療産業都市構想の建設投資による効果として、中核施設の平成17年度分までの建
設費累計320億円(用地費は含まない)をもとに、平成12年神戸市産業連関表の建設部
門逆行列係数(開放型)1.27を乗数係数としてかけ合わせると、406億円の経済効果
が推計され、平成13年度以降の構想の経済効果の累計は市内で約1,400億円以上と推
計される。
12
表
クラスター形成による経済効果(平成17年度)
(野村総合研究所に委託)
(単位:百万円)
経済効果(PI2期内)
経済効果(市内)
神戸医療
産業集積 ①PI2期の医
ベクテル推計
療関連企業 ②中核機関
3年度
形成調査
(市内への移転
3年度
企業含む)
市
内
直
接
効
果
市
内
間
接
効
果
③市内(PI2期
以外)の主な
医療関連企業 ①+②+③
H17年度末時
点増分
①+②
④PI2期の
一般進出企業
①+②
+③+④
a
民間企業数(社)
15
75
3
78
11
89
83
172
b
正規雇用数(人)
430
593
610
1,203
719
1,922
768
2,690
c
就労者の個人消費
1,717
1,394
3,149
4,543
1,711
6,254
1,480
7,734
d
就労者の個人貯蓄
528
429
970
1,399
527
1,926
456
2,382
e
企業の消費
1,730
1,291
5,873
7,164
5,076
12,240
2,071
14,311
f
賃貸料
1,676
588
525
1,113
g
企業の利益
2,064
-
合 計(c∼g)
7,715
h
間接個人消費
1,286
I
間接個人貯蓄
j
k
税
収
効
果
波及効果
1,113
-
1,113
-
1,735
1,735
844
2,579
10,517
14,220
9,048
23,269
4,851
28,119
1,140
2,575
3,714
1,399
5,113
1,210
6,323
396
351
793
1,144
431
1,575
373
1,948
間接企業消費
1,250
401
1,968
2,369
1,548
3,917
632
4,549
合 計(h∼j)
2,932
1,892
5,336
7,228
3,378
10,605
2,214
12,820
総 合 計
10,647
5,595
15,853
21,448
12,426
33,874
7,065
40,939
3,703
-
-
少ないケース
-
46
153
199
45
244
79
323
多いケース
-
53
153
206
111
317
83
400
固定資産税等
l
市民税
-
117
333
450
261
711
148
860
m
事業所税
-
8
23
32
18
50
10
60
神戸市税収
(k+l+m)
171
509
681
325
1,005
238
1,243
n
178
509
687
390
1,078
242
1,320
(参考)
少ないケース
734
多いケース
パート・アルバイト・非常勤雇用
人数(b 雇用数に含まず)
-
193
361
554
k 固定資産税<少ないケース>: 市全体での従業員数一人当たりの税額により推計
<多いケース> : PI2期の中核機関での従業員数一人当たりの税額により推計
l 平成10年度∼平成15年度の市民税(Y)と市内生産額(X)の回帰式 Y=-118,059+0.021X (r=0.902) の傾き0.021に
経済効果または波及効果の「総合計」をかけて市民税を推計。
M 平成12年度∼平成16年度の市民税と事業所税の比率をもとに市民税の7%と設定。
13
③クラスター形成による定性的な効果
・経済効果を推計するためのアンケート調査では、クラスターを評価するための17項目の重
視度と満足度も調査している。
・「重要である(満足している)」を4点、「重要でない(不満である)」を1点とする4段階の
回答率に各得点(4、3、2、1)を重みとして集計した結果を、横軸に重視度、縦軸に満
足度をとって表記したものが下図である。
・下図では、重視度と満足度の平均値を中心軸としており、平均値以上の重視度と満足度を示
す右上の象限にある項目がクラスターの強みと認識されるものであり、「⑭空港等の交通ア
クセス」、「⑬最新情報の入手しやすさ」などが強みと言える。
・逆に左下の象限は弱みと認識されるものであり、特に満足度が低い「⑯食事や買い物などの
都市環境」と「⑧資金の集まりやすさ」がクラスターの弱みと言える。
・なお、下図では「①人脈や人的ネットワークのつくりやすさ」もクラスターの強みとして考
えられるが、PI2期の医療関連企業・中核機関において医学博士(MD)号取得者94名、
その他の博士(Ph.D)号取得者337名、合計431名が活動している。これはほぼ3
名に1名が博士号取得者であり、単なる産業の集積だけではなく、神戸のクラスターを特徴
づける「知の集積とネットワーク」が形成されつつあることがわかる。
表
クラスター形成による定性的な効果
重視度と満足度の散布図
3.30
⑭
重視度×満足度
⑭空港等の交通アクセス※
⑮
強み
⑪
②
①
満
足 2.75
度
⑥
⑤
⑦
⑩
④
⑰
⑨
2.50
弱み
⑯
2.20
2.58
⑫
③
満足
不満
⑬
課題
⑧
10.78
⑬最新情報の入手しやすさ※
9.45
①人脈や人的ネットワークのつくりやすさ※
9.20
⑪当地にいることによる知名度の向上※
8.96
⑫行政の支援※
8.92
②研究環境(RI施設・動物実験施設等)の整備状況
8.70
③研究をサポートする施設・設備、企業の多さ
8.66
⑮カンファレンス・セミナー・会議等の開催しやすさ※
8.36
⑦ビジネスパートナーの得られやすさ※
8.33
⑨人材確保のしやすさ※
7.86
⑩社員の人材育成のしやすさ※
7.65
④公的研究費の得られやすさ
7.54
⑥特許申請に関する支援
7.44
⑤薬事申請に関する支援
7.22
⑰緑の豊かさなどのアメニティ環境※
7.07
⑧資金の集まりやすさ
6.93
⑯食事や買い物などの都市環境※
6.44
注) ※印は、PI2期内の一般企業13社の回答も含めた項目
2.98
重視度
3.38
注)集計は、平成18年秋現在で進出していた企業を母集団とし、本設問に回答のあったPI2期医
療関連企業74社、中核機関2者、市内(PI2期以外)の医療関連企業4社、PI2期内の一
般進出企業13社を対象として行っている。なお、PI2期内の一般進出企業は設問項目が一部
異なるため、共通の11項目(上記図中の※印)のみを加味している。したがって、集計対象は
※印の項目は93社、それ以外は80社である。
14
(3)神戸における今後のクラスター形成戦略
①神戸クラスターの特色である「トランスレーショナルリサーチ(TR)
」機能の強化
・神戸医療産業都市構想では、当初コンセプトに基づいて、中核機能として起業支援、人材育
成とともに、我が国ではじめて地域としてTRに取り組んできた。
・一方、世界的には、基礎研究の科学的成果を速やかに臨床の場にもたらす「クリティカルパ
ス・イニシアティブ」が課題となっている。クリティカルパスは、分子イメージング技術な
どの新たなツールを開発し、医薬品等の前臨床から承認申請までのステップを短縮して、実
用化・事業化までのプロセスを効率化することが狙いであり、従来のTRよりもさらに実用
化に近い段階を重視している。
・そこで今後は、ヘルシンキ宣言(世界医師会が定めるヒトを対象とする医学研究の倫理的原
則)や我が国の指針等を踏まえながら、これまで構築してきたハード、ソフト両面の資産を
活かした新たな研究開発のツールを神戸が提案することにより、TR機能を本構想の「圧倒
優位にある独自領域(コアコンピタンス)」として推進していくものとする。
図
神戸における今後のクラスター形成戦略
−トランスレーショナルリサーチ機能を核とした持続可能なクラスターの形成−
起業支援 (メディカルビジネスサポートセンター)
次世代医療
システムの構築
企業
研究開発・起業
投資
基礎研究
基礎研究
基礎研究
機能の強化
機能の強化
大学
大学
((研究者)
研究者)
研究者)
臨
基礎から臨床への
橋渡し研究
トランスレーショナル
リサーチ
床
高度医療サービスの提供
高度医療サービスの提供
(メディカルクラスター)
(メディカルクラスター)
イノベーション創出を
イノベーション創出を
加速する仕組み
加速する仕組み
病院
病院
(臨床医)
(臨床医)
(メディカルイノベーションシステム)
(メディカルイノベーションシステム)
治療
治療
(消費)
(消費)
市民への
市民への
効果
効果
科学的な健康づくりの支援
科学的な健康づくりの支援
(健康を楽しむまちづくり)
(健康を楽しむまちづくり)
医療従事者など
研究者
人材
人材育成 (トレーニングセンター)
構想の中核機能
クラスター形成に向けた新たな機能
15
雇用
雇用
予防
予防
(投資)
(投資)
神戸市による
基盤整備
②TR機能の強化を核とした持続可能なクラスターの形成
・先端医療センター(再生医療)、神戸臨床研究情報センター(基礎研究成果の臨床応用支援)、
神戸医療機器開発センター(医療機器)、分子イメージング研究開発拠点(創薬支援)を中心
に、「TR機能」を強化し、大学等の研究シーズの臨床研究への橋渡しを進める。
・TR機能の強化に伴い、そのシーズを生み出す「基礎研究機能」を強化するため、理研CD
Bだけでなく神戸大学医学部をはじめとした大学・研究機関の集積を図る。
・TR機能と相互に支え合う機能である「臨床機能」を強化するため、標準医療を実施する新
中央市民病院との連携のもと、国内外の患者に対して高度医療サービスを提供する「メディ
カルクラスター」の形成を図り、専門分野の臨床医を集積させることにより、新しい医薬品
や医療機器の治験が実施できる環境を整備する。
・TR機能を市民の健康づくりにつなげるために、予防重視の観点から、食事・運動・睡眠な
どに関わる生活支援アドバイスや健康サービスの提供を行い、市民の科学的な健康づくりを
支援する「健康を楽しむまちづくり」を推進する。
③クラスターにおけるイノベーション創出を加速する「メディカルイノベーションシステム」
・ベクテル調査で示されたように、新しい医療技術は、
「研究」-「治験」-「製造」-「医療サ
ービス」の各過程を通じて産業化され、これがクラスターの成長の起動力となる。特に「研
究」-「治験」の過程には、何回かのフィードバックが必要であり、そのプロセスが長いほど
投資額は巨額になる。
・そこで、②の各機能の整備により研究者と臨床医を集積させ、また臨床疫学の研究を進める
ことで、「研究者の仮説」と「臨床医のニーズ」のフィードバックを効率化することが可能と
なる。このように、TR機能を、安全性や科学性に立脚しつつ「研究」と「治験」のプロセ
スを短縮する「メディカルイノベーションシステム」として強化する。
・このメディカルイノベーションシステムは、民間企業にとって、クラスターに関係するプレ
イヤーの集中と研究開発の流れのスピードアップをもたらし、投資コストの引き下げにつな
がることから、大きな投資インセンティブとなるものである。
④クラスター形成による市民への効果と新産業の創出
・このようなクラスター構造により、大学や病院と、企業、人材(研究者・臨床医)が、特定
の大学に依存しない オフキャンパス型
でコンパクトなエリアに集積し、相互に刺激しあ
ってイノベーションを生み出すサイクルを形成する。
・メディカルイノベーションシステムが神戸で実現することにより、市民にとっては、例えば
難治性疾患に対する新たな治療法の開発や、専門医による高度医療サービスの提供、健康を
楽しむまちづくりの推進による生活習慣病の予防などの効果が享受できる。さらには、この
ような新たな医療・健康予防サービスは、新たな雇用創出にもつながる。
・また、企業に対しては、治療に伴う「消費」の効率化だけでなく、健康への「投資」という
流れの拡大をもたらし、新たな産業の創出につながる。
・このような戦略により、市民や事業者の理解と協力のもと、できるだけ公的な資金に依存せ
ずに民間企業の投資により持続的に発展するクラスターを整備する。
16
3.クラスター形成に向けた取り組み
(1)トランスレーショナルリサーチ(TR)の強化とメディカルイノベーションシステムへの展開
・TRは神戸クラスターの「圧倒優位にある独自領域(コアコンピタンス)」であり、これまで
TR実施に必要不可欠な施設整備に主眼をおいてきた。また、国においても、TRの支援機
関の強化や人材の育成、必要な研究費の確保、臨床研究の推進などの環境整備のあり方につ
いて検討されている。
・今後も、神戸の特徴であるTR機能をより一層強化することが重要であり、例えば以下のよ
うな臨床への橋渡し研究を推進する。
¾
分子イメージング、バイオマーカーの開発
¾
薬物ゲノム学、一塩基多型(SNPs)などを用いた薬剤開発の支援
¾
再生医療の実用化に向けた研究
¾
新しい医療機器開発
【臨床研究】
医療における疾病の予防方法、診断方
・一方、FDAの「クリティカルパス・イニシアテ
法及び治療方法の改善、疾病原因及び病
ィブ」により世界的にも認識されているように、
態の理解並びに患者の生活の質の向上
進歩する基礎科学技術に対して、医療製品(医薬
を目的として実施される医学系研究で
品、生物製剤、医療機器など)の開発段階での評
あって、人を対象とするもの(個人を特
価法にはその変化が反映されておらず、依然とし
定できる人由来の材料及びデータに関
て古典的手法が用いられているため、多くの医療
する研究を含む)。<出典:厚生労働省
製品予備軍が臨床試験段階でドロップアウトし
「臨床研究に関する倫理指針」>
ている。これに対して我が国でも、ICR
(Integrative Celerity Research)が提言され、
開発ツールの研究、制度改革、基盤整備が進めら
れつつある。
【臨床試験】
臨床研究のうち、統計的手法を用い
て、病気の成因、病態、診断、治療効果
・今後、医療製品の開発成功確率を向上させるには、
などを解析する分析的研究の一つであ
TRが実施しやすい環境を整備するだけではな
り、薬物などの治療を行って効果を見る
く、倫理的原則を踏まえながら多様な医療製品に
介入研究。<出典:井村裕夫「臨床研究
対応した臨床試験が実施できる「国際的水準の試
イノベーション」>
験施設および支援体制の構築」が必要となる。
・本構想では、取り組むべき研究・技術開発分野と
【治験】
して掲げている「再生医療等の臨床応用」「医療
新しい医薬品等の承認のためには、薬
機器等の研究開発」「医薬品等の臨床研究支援」
事法に基づく当該医薬品等の有効性・安
の多様な治療手法(モダリティ)による新しい医
全性等に関する科学的な見地からの審
療技術を中心に、従来注力してきた大学・研究機
査が必要であり、このための実証データ
関の研究成果のTR支援体制を強化し、医師主導
の収集を目的として、ヒトで臨床試験す
による臨床試験の環境を整えることに加えて、産
ること。<出典:文部科学省・厚生労働
業化の担い手である企業のニーズを踏まえて
省「全国治験活性化3カ年計画」>
17
マーケティングも含めた新たなビジネスモデルの創造を促進する「メディカルイノベーショ
ンシステム」を構築する。
図
メディカルイノベーションシステムのイメージ
基礎研究機能
【先端医療分野】
【健康・福祉分野】
研究者
国内外の
大学・研究機関の
研究シーズ
TRI (基礎研究成果の臨床応用支援)
トランスレーショナル
リサーチ機能
分子イメージング拠点 先端医療センター
【創薬支援】
創薬支援】
(細胞培養センター)
【再生医療】
再生医療】
化
強
国内外の
企業の
技術シーズ
地域の
大学・研究機関の
研究シーズ
神戸医療機器開発
センター【
センター【医療機器】
医療機器】
クラスター推進センター
国際交流の窓口機能
国際交流の窓口機能
異分野の
大手企業の
要素技術
(神戸ライフサイエンス・ゲートウェイ)
(神戸ライフサイエンス・ゲートウェイ)
バイオビジネスの支援組織
の支援組織
バイオビジネス
バイオビジネスの支援組織
国際ファンド、経営人材の斡旋等
国際ファンド、経営人材の斡旋等
新たな治験施設
新たな治験施設
国際共同治験の実施
国際共同治験の実施
メディカル
イノベーションシステム
異分野の技術の
異分野の技術の
融合機能
融合機能
患者
臨床医
関連企業
メディカルクラスター
メディカルクラスター
高度医療サービスの提供
かかりつけ医
市民
地域産業
企業の集積
・
産業化
健康を楽しむまちづくり
科学的な健康づくりの支援
①メディカルイノベーションシステムによる企業支援の仕組み
・これまで、大学・研究機関の研究成果の実用化や進出企業等の事業化を支援する機能として、
先端医療振興財団に、様々な分野の専門人材を配置した「クラスター推進センター」を設置
した。
・今後、メディカルイノベーションシステムを支える組織として、クラスター推進センターや
地域の大学・TLO・自治体・NPOなどが参画する「バイオビジネス・ディベロップメン
ト組織」の設立を図り、ビジネスとして、専門人材によるサポートや資金の投入を含めたサ
ービスを提供することにより、自立的なクラスターの発展を目指す。
・この組織は、公的機関の政策的な側面と私企業の経営の自由度を併せ持つ、産官学の共同体
であるLLP(有限責任事業組合)等としての設置を検討し、効率的な資金の確保と優秀な
専門人材(知的財産、マーケティング、ファンド、薬事法など)の確保を目指す。
18
図
バイオビジネス・ディベロップメント組織のイメージ
大学、研究機関の技術シーズ
医療機関、健康・福祉施設等のマーケット
技術評価(目利き)
国内外の専門人材
◇知的財産
◇マーケティング
◇ファンド
◇研究開発
◇薬事法
◇情報発信
◇国際連携
参画
マーケットの情報収集
バイオビジネス・
ディベロップメント
組織(LLPなど)
プランニング
コーディネーション
コンサルティング
プロモーション
投資事業組合
サービス提供
先端医療振興財団
クラスター推進センター
参画
大学
TLO
自治体・NPO
投資
(ビジネスプラン作成等)
大学・研究機関
進出企業 等
ベンチャー企業
新技術・新製品
の開発
②メディカルイノベーションシステムを支える人材の育成
・
「メディカルイノベーションシステム」の具体化に向けて必要となる以下のような人材につい
て、大学・研究機関を中心とした推進組織により、講座・セミナーの開催や、クラスター内
の研究者・企業・臨床医のネットワークを活用したOJT(on the job training)プログラ
ムによって育成する。
¾
民間企業との交流によって研究シーズの目利きができる研究者
¾
TRを支援する臨床試験指導医師や生物統計家、医療経済・統計の専門家、公衆衛生や
疫学の研究者、データマネジャー、リサーチナース等
¾
実用化・事業化支援のための世界的なネットワークを持ったバイオの世界を理解できる
人材(商社経験者など)
¾
複数の専門知識を習得している人材
¾
ベンチャー企業や公的支援機関で必要となる経営の基礎知識(会計、マーケティング、
ファイナンス、知的財産等)と医療・バイオテクノロジー分野の基礎知識を双方とも理
解している人材
・特にベンチャー企業は、研究成果の実用化や大手企業の橋渡しなど、イノベーション創出に
おいて重要な役割を担っているが、OJT機能がないことから、大学・研究機関や大手企業
からの人材の再配置が進まず、人材が不足しているのが現状であり、OJTによって専門知
識を習得させる再教育システムを構築する必要がある。また、このOJTの体制を活用し、
ポスドクのインターンシップ受け入れも可能となるよう検討する。
・さらに、異なる職種への転出を目指す人材の受け入れ支援システムを構築することにより、
人材の流動化と新しい技術の創出を図る。
19
図
イノベーションを担うベンチャー企業等の人材育成のイメージ
【現状】
現状】
人材が豊富
ベンチャー企業にはOJT機能がないため、人材の再配置が進まない。
人材が不足
人材が豊富
人材の流動化
人材の流動化
ベンチャー企業
大学・研究機関
理研・大学
クラスター内でのOJTに
よる専門知識の習得
大手企業
企業
研究成果の実用化と大手企業への橋渡し
研究者・
ポスドク
経営者・
管理職
【推進組織】
推進組織】
大学を中心とした
コンソーシアム
大学を中心としたコンソーシアム
研究者
公的支援組織
コーディネーター
目利き人材
人材の流動化
人材の流動化
【ベンチャー企業等で新たに必要となる知識の再教育(講座・セミナー・OJT)】
ベンチャー企業等で新たに必要となる知識の再教育(講座・セミナー・OJT)】
◆経営の基礎知識(会計、マーケティング、ファイナンス、知的財産等)
◆医療、バイオテクノロジー分野の基礎知識
③メディカルイノベーションシステムの構築に向けた戦略
・個人の特性に応じた医療が進展し、従来の市場規模を対象とした製品開発が困難になる、い
わゆるポストビッグファーマ時代に向け、中堅企業ならびにイノベーションを目指すバイオ
ベンチャーが重要となることから、これらの企業が国内外で製品開発を行うための総合的な
支援を行う。特に、国際共同治験や分子イメージング等に対応できる新たな治験施設の設置
を検討し、多様な治療方法の臨床試験フェーズが一貫して実施できる環境を整備するととも
に、例えば医師主導の臨床研究の実施などの新しい医療技術について、ビジネス化までを視
野に入れて研究成果の臨床応用を支援する受託臨床試験機関(CRO)として「アカデミッ
クCRO」の設立を検討する。
・また、大学・研究機関や企業における臨床研究を加速するため、優先審査や規制緩和を含め
た新たな提案を行う。
・さらに、臨床研究の早い段階で医療経済の専門家がコスト・ベネフィットを推計するなど、
バイオビジネス・ディベロップメント組織による新しい医療技術の評価の仕組みを構築する。
20
(2)高度医療サービスの提供(メディカルクラスターの形成)
・基礎研究やTRの成果は、臨床の場にスムーズに移行させ、速やかに製品もしくは標準的な
治療として普及させることにより、はじめて民間企業の投資や市民福祉の向上につながる。
逆に、臨床医のニーズを速やかに研究の現場に反映することにより、TRが加速される。こ
のように、TR機能と相互に支え合う機能である「臨床機能」について、より一層の強化が
望まれる。
・平成22年度には先端医療センターに隣接して新中央市民病院が完成する予定であるが、医
療技術の進歩は著しく、その全てを新中央市民病院で行うことは困難である。そこで、同病
院を臨床部門の核として、その周辺に「高度専門医療分野(がん、移植再生医療等)に特化
した医療機関」と優秀な臨床医を集積させることにより、国際的に見て標準化された医療で
あっても高度の熟練を要するものの一部をこれらの専門病院群で行い、連携して市民をはじ
めとする国内外の患者に対して高度専門医療サービスを提供するとともに、医薬品・医療機
器メーカーの新たな事業機会を創出する「メディカルクラスター」の形成を図る。
・これら医療機関が人的交流等により相互に連携を図ることにより、治療技術の進歩が目覚し
い臨床現場のレベル向上を図り、神戸発の新しい医療システムを国内外へ発信することが可
能になり、さらには神戸地域の自立的なクラスターの発展を促すこととなる。
図
高度医療サービス提供のイメージ
より幅広く
Goal 2:必ずしも保険診療とは
ならない多様な患者ニーズに応
える先進的・選択的医療の提供
国内外から
の患者
Goal 1:高度・先端的医療をいちは
やく標準医療として神戸市民に提供
選定療養
一般保険診療
早く・より多 く
有 効 性 ・安 全 性 の確 立
(快適性・利便性や選択に
係わるもの)
いわゆる自由診療
(標準医療)
中央市民病院
高度専門病院群
臨床研究
医療イノベーション
の創出~実用化
評価療養
(保険導入のための評価を
行うもの 例 先進医療、医
薬品・医療機器の治験等)
先端・高度医療を支え
る標準診療基盤の提供
先端医療センター
先端的臨床研究
保険診療外
企業からの研究
開発投資
保険外併用療養
21
保険診療
①メディカルクラスターの形成による企業への新たな事業機会の提供
・フェーズⅡ以降の医薬品や医療機器の治験を実施する企業にとって、専門分野の優秀な臨床
医の存在は不可欠であり、このような臨床医や高度医療機関との連携は大きな魅力である。
・例えば、アメリカのテキサス・メディカル・センターのMDアンダーソン病院では、250
以上の新薬の臨床試験を実施し、そのために550以上のプロトコル(治験実施計画書)を
用意している。民間企業からの助成・受託は約22億円で、そのかなりの部分がこの臨床試験
によるものと考えられる。(2001年(平成13年)数値、ホームページ調べ)
・このように、海外では、企業が大学病院や高度専門医療機関とともに、共通のテーマについ
て、実態は寄附に近い出資を行いながら、治験を含めた共同開発を行っている。
・メディカルクラスターの形成により、大手医療機器・医薬品メーカーの治験への参画が進み、
同時に、高度専門医療機関には企業から治験収入が入ることとなる。
・現在、日本の医薬品や医療機器関連の企業の大半が、アメリカやEU域内で治験を実施して
おり、近年では東欧、南米、アジアに拡がっている。メディカルクラスターを形成すること
により国内での治験拡大に寄与することが可能である。
図
メディカルクラスター形成による企業への新たな事業機会の提供
国からの資金
大学等
理化学研究所
(CDB、分子イメー
ジング)
TRI
先端医療
センター
次世代の優秀な
臨床医の集積
企業からの資金
メディカルイノベーションシステム
治 験
大手医薬品・ 医療
機器メーカーの参画
神戸医療機器開発センター
(MEDDEC)の支援
高度医療
の集積
市民の健康福祉の向上
大学病院・
市内医療機関
新中央市民病院
国公立病院の誘致
の移転・高度化
の整備
(がん
合
センタ
医 療融 )
ー
(先端
ど
など)
な
ー
高度専門医療の実施(消費)
センタ
国内外からの患者の集積
22
企業のビジネス
フィールドの拡大
アジア等の医療
水準の向上
②メディカルクラスターを支える人材の育成
・「メディカルクラスター」の具体化に必要となる以下のような人材について、医師、看護職、
技術者などを対象に、神戸医療機器開発センターの中型実験動物やコンピュータによるシミ
ュレーション等を活用して育成する。
¾
移植等の高度な手術や、カテーテル等の低侵襲治療、放射線画像診断機器・治療装置の
活用などに関する専門医(神戸で開発された新しい医療機器や治療技術の普及)
¾
臨床医のニーズを具体化するために必要となる医工連携(化学、機械など)の研究者
¾
高度専門医療機関で医療に従事する人材(臨床医、技師、外国人看護師など)
・また、地域として必要な医療分野(小児科、麻酔、放射線治療医など)や新しい医療分野に
おける医師を確保・育成するための新たな支援方策を国に提案する。
図
高度な医療技術に関する国際的な専門医の養成
欧米の
アジアの
専門病院・
研究機関
研
専門病院・
究
ネ
ット
ワ
新ラ
しいイ
医
人 セ療シ
(IC 材育 技ン
術
Tの 成 グ
の
活
用
)
ー
ク
理 研
先端医療センター
高度専門病院群
中央
市民病院
ス ク
ネ
ジ ワー
ビ ト
ッ
ネ
研究機関
術
技
療
医 及
)
しい 普
用
新 の
活
Tの
(IC
高度専門病院群
国際トレーニング機能
神戸医療機器開発センター(メデック)
国内の専門病院・研究機関
③メディカルクラスターの形成に向けた戦略
・市の基幹病院として地域医療を担う新中央市民病院には、患者に最適な標準医療を提供する
ため、急性期医療を重点として、心臓や脳卒中、がん、移植再生等の分野において「高度専
門医療センター」が設置される構想である。地域の医療計画との調和を図りつつ、将来的に、
①新中央市民病院の高度専門医療センターのサテライト化、②国立病院・大学病院の誘致、
③市内医療機関の移転・高度化、などにより高度専門医療機関を集積させることを目指す。
・新中央市民病院と高度専門医療機関は互いに連携を図ることが不可欠である。例えば、国内
外から専門分野の治療を目的に訪れる現在の患者の中には、合併症を持つことが多く、高度
23
専門医療機関単独では対応が難しい場合でも、近接した新中央市民病院と連携を図ることに
より、適切な医療の提供を行うことができる。また、地域医療においても、かかりつけ医を
通じて新中央市民病院に訪れる市民に対して、高度専門医療サービスを円滑に提供できる。
・その連携を円滑に継続していくために、地域医療機関との連携を前提に、新中央市民病院と
高度専門医療機関とのマネジメントの調整を行うオーガナイザー機能を整備する。特に、個々
の患者に対する最適な医療提供のための病院間の調整や病院相互間の医療技術向上のための
人的交流を支援する機能が大切である。
・また、複数の高度専門医療機関や国立病院、大学病院、さらには患者団体や臓器バンク等と
のネットワークを整備するとともに、患者の紹介等により、各医療機関が経済的に自立し、
継続的に事業を展開していくための支援を行う、コーディネータの配置、育成も必要となる。
コーディネータは、患者への複数の治療方法の説明とその選択にあたっての助言、宿泊・転
院の手配、さらには患者やその家族の「こころの問題」への対処などの支援も行う。
・さらに、この基盤をより安定したものとするため、市民に対して高度医療をわかりやすく説
明するとともに、高度医療を支える寄付制度の創設や市民ボランティアの導入、加えて、構
造改革特区の活用等による新たな医療システムの開発や、高度専門医療機関の移転・高度化
を図るための規制緩和策も検討する。
・また、アジアを中心とした海外からの患者・家族の来訪や、海外の医療従事者のトレーニン
グを拡大するために、宿泊施設などの整備や、地域の大学での語学教育をはじめとするホス
ピタリティの向上を促進する。
図
メディカルクラスターの形成に向けた戦略
国立病院・大学病院の誘致
オーガナイザー機能
<地域医療>
(救急・高度・急性期医療に重点)
病院トップ間での連携についての
合意(定期的なトップ会談)
神戸大学
神戸大学
国外
外か
から
らの
の患
患者
者
国
・ 感染症
大阪大学
大学
大阪
大阪大学
国内
内の
の患
患者
者
国
・ 成育医療
(国内外の患者を対象)
国内
内外
外の
の医
医療
療機
機関
関
国
先端医療
先端医療
センター
センター
・ 移植・再生
京都大学
大学
京都
京都大学
コーディネーター
・ 脳卒中
病 院 群
高度専門医療センター構想
︵
標準医療︶
地域
域医
医療
療機
機関
関
地
かか
かり
りつ
つけ
け医
医
か
市民
新中央市民病院
・ 心臓
・ がん
<高度専門医療>
高度専門
病院間で最適な治療方法や人材育成
などに関して調整する機能
兵庫医科
兵庫医科
大学
大学
新中央市民病院の高度専門医療
センターをサテライト化
他大学
他大学
市内医療機関の移転・高度化
24
(3)科学的な健康づくりの支援(健康を楽しむまちづくり)
・平成17年6月に策定されたこれからの神戸づくりの指針である「神戸2010ビジョン」
では、重点テーマである「安心で健やかな地域社会の実現」を具体化するためのアクション
プランのひとつに「健康まちづくりプラン」が定められており、その重点事業として「市民
の健康づくりの促進とその基盤づくり」、「スポーツクラブを軸としたスポーツの振興」、「医
療・健康関連産業の活性化」に加えて「健康を楽しむまちづくりの推進」が位置づけられて
いる。
・平成16年4月に「健康を楽しむまちづくり懇話会」が設置され、「市民の健康増進」、
「地域
産業の活性化」、「都市魅力の向上」を目標として、個人の自発的な健康づくりとともに、そ
れを市民生活の豊かさやまちの魅力の向上に結びつけ、市民や来訪者が健康を実感し、楽し
むことのできるまちづくりの仕組みである8つのプログラムを中心とした報告書が平成17
年7月に提出された。
・平成18年7月認定された地域再生計画「こうべ『健康を楽しむまちづくり』構想」は、神
戸のまちの特性や医療産業都市構想の研究基盤を生かし、
「健康を楽しむまちづくり懇話会」
で提案された8つのプログラムの実現を図るための行動計画である。
・これらを踏まえ、神戸大学や、ポートアイランドに進出する神戸学院大学、兵庫医療大学、
神戸夙川学院大学、神戸女子大学などの「地域の知の拠点」を中心にして、医療機関、研究
機関、NPO、民間企業などによる「ヘルスケア・コンソーシアム」の形成を図り、これを
推進母体として、「地域の知の拠点再生プログラム」など地域再生計画に基づく国の支援策を
活用しながら、「健康を楽しむまちづくり」の取り組みを進めていく。
図
こうべ「健康を楽しむまちづくり」構想(地域再生計画)のイメージ
神戸2010ビジョン
健康を楽しむまちづくり
懇話会報告書
然
の自
六甲
こうべ「健康を楽しむ
こうべ「健康を楽しむ
まちづくり」構想
まちづくり」構想
(地域再生計画)
(地域再生計画)
「こうべ健康回廊」
「こうべ健康回廊」
「健康安心配食サービス」
「健康安心配食サービス」
「地域の食育拠点づくり」
「地域の食育拠点づくり」
健保組合
医療機関
NPO
「地域の運動拠点づくり」
「地域の運動拠点づくり」
スポーツ施設
民間企業
「歩く健康づくり」
「歩く健康づくり」
神戸大学
ヘルスケア
コンソーシアム
「健康づくりの小径」
「健康づくりの小径」
健診事業者
地域の大学・
研究機関
「喫煙被害防止プログラム」
「喫煙被害防止プログラム」
神戸学院大学
兵庫医療大学
神戸夙川学院大学
神戸女子大学
神戸女子短期大学
医療産業都市構想
の中核施設
「健康づくり支援システム」
「健康づくり支援システム」
:地場産業
:食
:環境整備
:動
:インフラ
:眠
「健康を楽しむまちづくり」基本プログラムの凡例
神戸空港
25
・現在、地域再生計画を活用したモデル事業として、例えば以下のような取り組みを推進して
いる。
¾
足に適合した靴の選択や正しい歩行指導といった歩行支援プログラムの科学性検証とこ
れを踏まえた「歩行指導システム」や、食生活情報を科学的に分析評価する「栄養指導
システム」の基盤構築(厚生労働省:高齢者活力創造プロジェクト)
¾
NPO法人神戸アスリートタウンクラブの「ICウォーキングシステム」を活用した、
市民の健康意識向上・実践における有効性と地域商店街の活性化策としての適用の検証
(内閣府:地域再生に資するNPO等の活動支援)
①健康を楽しむまちづくりへの地場産業・異分野企業の参画を促す仕組み
・健康・福祉分野を中心に、異分野の大学・大手企業の要素技術を神戸に導入し、地域におけ
るイノベーションを加速することを目的として、神戸大学などが中核となり、地域の研究機
関や中小企業・異業種企業が参画する「技術融合機能」の仕組みづくりを進め、以下の事業
を行う。
¾ ヘルスケア・コンソーシアム(神戸大学やポートアイランドへの進出大学、地域の大学・
研究機関など)の仲介による異分野の大学・大手企業の新技術の導入
¾ 神戸健康産業開発センター等を活用した試作品開発のため「テストラボ」の運営
¾ 医療機関や健康・福祉施設などのニーズ情報や、研究者・臨床医とのマッチング
¾ 健康効果の科学的な検証をはじめとしたトータルサポート
図
市民
医療機関
技術融合機能のイメージ
健康・福祉・医療・介護等のマーケット
健康・福祉施設
ニーズ情報の収集
ネットワーク形成
テストラボ
健康効果の評価
神 戸大学 など
市 民・NPO等 による
モ ニタリン グシ ステム科学性の
健康機器
医療・福祉・介護機器
健康食品・飲料
健康管理ソフトウェア
医療・介護ロボット等
(MEDDEC、HI-DEC等)
検証
TRI
新技術の導入
試作品開発
ヘルスケア
コンソーシアム
バイ オビジ ネス
ディベロップ メント
組織
トータル
サポート
分子
イメージング
26
異業種の
大手企業
異分野の
大学
新製品の開発
認証制度の取得
【関西全域】
参画
京 阪神の
大 学・研究機 関
新事業への
展開
地 元中小 企業
異業種の
大手企業の
コミットメント・
プレゼンス
②健康を楽しむまちづくりを支える人材の育成
・
「健康を楽しむまちづくり懇話会」から提案された8つのプログラムの具体化に向けて必要と
なる以下のような人材を、地域の大学と連携して育成する。
¾
市民の健康増進のために、生活習慣(食・運動)の改善に関する具体的個別指導や集団
指導によって市民の自発的な健康づくりを支援する「健康こうべプロモーター」
¾
地域産業の活性化のために、機械・金属製造業をはじめとした地元の中小企業を対象に、
産学官の連携体制により、医療・福祉機器等の開発・製造を中心とする新産業創造人材
の育成を図るとともに、
「食の安全・安心」「歩行・運動」「環境づくり」等に関する新た
な健康商品(価値)を創造する「健康こうべクリエーター」
・さらに、神戸大学やポートアイランドへの進出大学を中心とした健康分野に関する市内の大
学で形成される「ヘルスケア・コンソーシアム」を活用し、さまざまな学問・産業領域につ
いて複数大学にわたって就学でき単位認定も可能な「バーチャル大学」の制度を整備して、
健康関連企業の即戦力となる人材の育成と、大学・研究機関の最新技術をもれなく産業で活
用する体制をつくる。
図
ヘルスケア・コンソーシアムによる人材育成のイメージ
地域再生
ヘルスケアコンソーシアム
「健康こうべプロモーター
健康こうべプロモーター」
市民の
市民の
自発的な
自発的な
健康づくり
健康づくり
の支援
の支援
2つの養成コース
市民の健康増進
市民の健康増進
都市魅力の向上
都市魅力の向上
「健康こうべクリエーター
健康こうべクリエーター」
新たな
新たな
健康商品
健康商品
(価値)の
(価値)の
創造
創造
市内の大学・研究機関
地域産業の活性化
地域産業の活性化
健康を楽しむ
まちづくり
③「健康長寿プログラム」の検討
・健康長寿都市を実現するための総合的な都市戦略、要介護率の低減を具体化するための市民
運動として「健康長寿プログラム」の具体化を検討する。
・例えば60歳の市民を対象に、
「健康カード」を配布し、かかりつけ医等による健康診断(尿
糖・血圧・BMI)やヘルシーアドバイスを受けてもらい、以後、概ね1年に1回の受診を
促進する。
・一方、がん・認知症・関節障害の発症前診断の機会を提供すると共に、ICTを活用して「食・
動・眠」に関わる生活支援アドバイスや健康サービスの開発・提供(ナイスエイジングアド
バイス)を行う「健康づくり支援システム」の仕組みを構築し、クリーン・グリーン・バリ
アフリーなまちづくりとともに、健康に関連する地域産業の活性化につなげていく。
27
・かかりつけ医等による年1回の健診結果や「健康づくり支援システム」などによる健康づく
りへの取組み状況(健康ポイント化)、「入院、脳卒中、がん、認知症、死亡」等の転帰情報
等を、個人情報保護に十分配慮しながら、
「健康カード」を活用してデータセンターへ記録す
る。匿名化された情報を収集・分析し、疾病統計や死亡統計、要介護認定資料等により、5
年後、10年後のアウトカムを評価する。
図
健康長寿プログラムのイメージ
かかりつけ医等
かかりつけ医等
一次スクリーニング
ヘルシー
アドバイス
尿糖
血圧
年1回健診
BMI
先端医療振興財団
先端医療振興財団
健康カード
健康カード
5年後・10年後
アウトカム
TRI
評価
key
key
健康ポイント
健康ポイント
若年層へ
ウォーキング・エクササイズ
健康づくり支援システム
健康づくり支援システム
ナイスエイジング
アドバイス
食・動・眠
5年ごと診断
発症前診断
(がん・認知症・関節障害)
PET
CT
MR
健康を楽しむまちづくり
(クリーン・グリーン・バリアフリー)
28
要介護率の低減
60歳
健康長寿都市の実現
健診データ
健診データ
(4)基礎研究機能の強化
・トランスレーショナルリサーチ(TR)を推進するためには、より多くの研究シーズを発掘
する必要があり、基礎研究機能のさらなる強化が望まれる。
・平成19年4月には、新たに神戸学院大学、兵庫医療大学、神戸夙川学院大学が進出し、神
戸女子大学を含めて4大学が集積する。
・京都大学、大阪大学、神戸大学などに加えてこれらの大学の参画のもと、将来的には、特定
の研究分野や大学に限定されない「オフキャンパス型」という神戸クラスターの特徴を活か
して、健康・福祉分野や、今後必要とされるロボットやコンピュータ技術との融合を含めた
先端・融合領域(医工・医薬・医農など)の研究や人材育成を推進する。
・そのために、まず、理化学研究所、神戸大学BTセンター、進出大学や企業など、ポートア
イランドにおける既存研究機能のネットワークを強化する。
・また、国の研究機関(SPring−8、理化学研究所横浜研究所など)、全国の大学(東京
大学など)、海外研究機関など、既存の基礎研究機能を活用する。
・さらに、以下のような新たな基礎研究機能の誘致を図る。
¾ 大学融合型研究センターの誘致
理化学研究所と各大学の連携や大学間のネットワークにより、各組織の得意分野を生
かした横断的な組織である大学融合型の研究センターの誘致
¾ ポートアイランド内への新たな大学の誘致(臨床研究大学院大学など)
¾ ライフサイエンスに関する国立研究機関の誘致
図
基礎研究機能の強化のイメージ
医学
国立大学
理研(CDB、
分子イメージング)
薬学
生命科学
工学
情報科学
共同研究
人材交流
私立大学
共同研究
資金提供
企 業
大学融合型
研究センター
神戸医療機器
開発センター
(MEDDEC)
臨床研究情報
センター
(TRI)
先端医療センター
(IBRI)
バイオメディカル
創造センター
(BMA)
神戸医療産業都市構想中核施設群:研究インフラの提供
理研横浜研究所
SPring-8
国家的な研究基盤:研究インフラの提供
29
【神戸において大学融合型の研究体制で推進する先端・融合領域研究の具体例】
・がんや糖尿病等の疾病の原因として細胞膜(バイオメンブレン)の異常に着目し、神戸大学
が、他大学・理化学研究所・企業等との連携により、バイオシグナル研究と連携したバイオ
メンブレン研究を開始した。
・また、第3期科学技術基本計画において国家基幹技術として位置づけられた「次世代スーパ
ーコンピューティング技術」を活用した細胞・生体シミュレーションや、SPring−8
及びⅩ線自由電子レーザーと連携したたんぱく質の構造解析、さらにはゲノム医療などのバ
イオインフォマティクス分野の研究・人材育成を促進する。
・特に、バイオインフォマティクスの活用による生命現象のより深い理解と再現、個人の遺伝
的特徴と病気の関係、環境因子のゲノム機能への影響のみでなく、新薬や医療技術の開発を
進める。
・さらに、メディカルインフォマティクスの活用により、患者のプライバシーを守りながら臨
床統計を充実させ、病気の実態とその数を把握して、将来の医療技術の開発に役立てる。
・また、高齢化社会の到来と市民の健康づくりへの関心の高まりを踏まえ、現代のライフサイ
エンス研究と伝統的な医療を融合した統合医療分野についても、イメージング技術や免疫分
野の研究ネットワークなどを活用した研究・人材育成の推進を検討する。
30
(5)市民や事業者の参画の仕組み
①市民や事業者へのアカウンタビリティ
・先端医療分野は専門性が高く理解が難しいことから、例えば、新たな医療サービスの提供に
あたり、患者と医師の情報格差が問題となるほか、研究者や医療関連企業やバイオベンチャ
ーとそれを支援する一般企業や投資家との情報格差もイノベーションの阻害要因になる。
・このため、神戸市において、先端医療研究に関するわかりやすい情報提供を行い、これらの
情報格差を是正することにより、患者の理解を深めるため、安全で有効な臨床研究を推進す
るとともに、市民や事業者の参画を促進する。
・既に再生医療について、「研究者」、「医師」、
「企業」、「市民」がインターネット上で交流する
「TRC(トランスレーショナルリサーチコミュニティ)
」が、市民の生活習慣病予防や健康
増進については、研究者や医師会、地元企業、健康保険組合の参画により立ち上げた「はつ
らつ神戸健康クラブ」等の実績があるが、今後は、これらの情報提供の必要性や有効性につ
いて、受け手である市民サイドから評価して意見を述べることができるような仕組みづくり
が必要である。
・メディカルクラスターの形成に向けて、コーディネート機関を中心に、国内外から神戸に集
まる患者に対して、医療機関や滞在施設などの情報提供をするとともに、必要な送迎サービ
スやボランティア紹介などを実施する。また、患者が安心して「先端医療」を受け入れられ
るための正しい知識の普及のため、例えば以下のような取り組みを推進する。
¾ 医療関連学会との併催をはじめとした専門医による市民向けセミナーの開催
¾ 教育関係者や中高生への先端ライフサイエンス知識の普及
¾ がん情報サイトや医療機関別(診療科・治療内容別)の治療成績等のインターネットに
よる情報発信
¾ 高度医療サービスの普及(例:PETによるがん検診、CTリニアックによる肺癌など
の放射線治療)
・健康を楽しむまちづくりの具体化に向けて、
「健康づくり支援システム」などのウェブサイト
や、「こうべ健康ウォーク」などのイベントを通じた個人の健康づくりのための情報発信を行
う。また、健康長寿プログラムの一環として、例えば以下のような取り組みを推進する。
¾ 科学性の検証された健康食品・機器・サービス等の健康関連情報を市民と共有する仕組
みづくりを検討
¾ 市民の検診データの収集とフィードバックにより、本人による健康状況の把握を支援
¾ かかりつけ医等による高齢者へのヘルシーアドバイス
¾ がん・認知症・関節障害の発症前診断や「食事・運動・睡眠」に関するアドバイス
・メディカルイノベーションシステムの構築に向けて、先端医療のサービスを提供する側(臨
床医や技術保有企業など)と受ける側(患者・市民)の情報格差を是正するとともに、クラ
スター形成による効果について、国やクラスター関係企業、研究者、臨床医に加えて、市民
に対しても積極的に情報発信を行うため、例えば以下のような取り組みを行う。
31
¾ 先端医療の推進における個人情報保護の重要性と、ポートアイランドで実施している研
究・技術開発における情報のチェック体制(神戸臨床研究情報センターでの遺伝子情報
の取り扱い、各機関における倫理審査体制など)をわかりやすく説明
¾ 進出企業への定期的なヒアリングにより、医療産業都市構想による経済効果や、「個別の
アクティビティがあがったかどうか(研究開発のスピードアップやコストダウン)
」など
のクラスター効果を把握して説明
②市民や事業者からの新たな資金協力
・神戸医療産業都市構想の立ち上げにあたっては、中核施設の整備、基礎研究、トランスレー
ショナルリサーチ、事業化の支援などにおいて経済産業省、文部科学省、厚生労働省など国
からの資金が大きな役割を果たしていた。
・今後は、平成17年度の構想の経済効果を踏まえて、引き続き国とともに自治体がこれらの
活動を支援するための基盤整備を推進するとともに、研究者、臨床医、民間企業、さらには
市民・事業者や患者団体などの資金面での協力が必要となる。
・特に、個人の特性に応じた医療(テーラーメイド医療、再生医療など)や大量生産では対応
困難な医薬品・医療機器の研究推進や治療の実施については、財団法人やNPO法人の参画
が不可欠となる。このため、「市民や患者団体からの寄附等による研究費提供の仕組み(例:
JDRF:Juvenile Diabetes Research Foundation International(若年性糖尿病財団))」
や、「臨床研究への参加を促すためのコーディネータの配置」が必要となる。
・このように、先端医療の臨床研究に関する企業や研究者のインセンティブを高め、市民や患
者団体が安心して参画できる環境を整備するだけでなく、市民、事業者さらには国や自治体
が積極的に資金協力などの支援を行う仕組みづくりを提案し、具体化に努める。
¾
先端医療の臨床研究や事業化のために、市民が個人でベンチャービジネスと同じスキー
ムで事業に参画できるLLPやLLCの組成に対して、参画を呼びかける。
¾
企業のほか、市民や患者団体が公的機関への寄付を積極的に行えるように、
「特定公益増
進法人制度」や「認定NPO法人制度」の改善を国等に要望する。
¾
研究資金や医師主導による臨床試験の資金を確保するために、市民を対象にした「住民
参加型ミニ市場公募債(メディカル・パブリック・ボンド(仮称))」の発行を検討する。
¾
難治性疾患やがん等に対する先端医療の臨床研究や、医師主導の治験に対して、患者団
体や市民、事業者などの篤志者からの寄付ととともに国や自治体が出捐する「先端医療
ボランティアファンド」の設立を検討する。
¾
市民の科学的な健康づくりへの取り組みを促進するために、
「健康づくりの小径」などの
都市環境の整備を進めるとともに、
「ウォーキングマイレージ」など、市民や事業者に新
たなインセンティブを与える仕組みを検討する。
32
4.クラスターの将来像
(1)経済効果の予測
①予測方法
・経済効果の現状推計を行ったPI2期医療関連企業、中核機関、市内(PI2期以外)の医
療関連企業、PI2期の一般進出企業について、平成22年度と平成27年度の経済効果の
予測を野村総合研究所に委託して行った。
・PI2期医療関連企業については、
「研究開発」
、「医薬品・医療機器製造」、「その他」(病院・
ヘルスケア及びサービス)の3業種別に、企業数、1社あたりの雇用数、雇用一人あたりの
生産原単位(給与・発注額・企業の利益)を推計し、これらをもとに現状推計と同じ項目に
ついて行っている。
・企業数はこれまでのPI2期への進出と退出の状況をもとに、1社あたり雇用数もPI2期
進出企業のこれまでの趨勢をもとに、一人あたり生産原単位は企業の成長のスピードを考え、
10年間で該当業種の全国平均値になるものと設定している。
・中核機関については、生産原単位は平成17年度値で一定と仮定し、雇用数については16
年度からの3ヵ年の平均から、毎年度9.2%ずつ増加すると仮定して推計している。
・PI外の医療関連企業については、中核機関の活動に応じて増加・成長するものと仮定し、
雇用数を中核機関の雇用数に比例して設定し、生産原単位は平成17年度値で一定と仮定し
推計している。
・PI2期内の一般進出企業については、生産原単位は平成17年度値で一定と仮定し、雇用
数を平成13年度から平成17年度までの5年間と同程度の伸びと仮定して推計している。
②予測結果
・PI2期医療関連企業の企業数は平成22年度で約200社、27年度で約300社、雇用
数は平成22年度で2,000人、27年度で4,200人、直接と間接を合わせた経済効
果は平成22年度で約240億円、27年度で約730億円、税収効果は平成22年度で約
7億円、27年度で約21億円と予測された。
・中核機関は雇用数が平成22年度で950人、27年度で1,500人、直接と間接を合わ
せた経済効果は平成22年度で約250億円、27年度で約380億円、税収効果は平成
22年度で約9億円、27年度で約14億円と予測された。
・このPI2期医療関連企業と中核機関の効果に、市内(PI2期以外)の医療関連企業とP
I2期内の一般進出企業の効果を合わせ、雇用数は平成22年度で約5,600人、27年
度で9,700人、直接と間接を合わせた経済効果は平成22年度で約820億円、27年
度で約1,600億円、税収効果は平成22年度で約27億円、27年度で約51億円と予
測された。
33
表
経済効果の予測結果
(野村総合研究所に委託)
(単位:社、人、百万円)
効果
企業数
内訳
①PI2期医療関連企業
②中核機関
③市内(PI2期以外)の
医療関連企業
-
④PI2期の一般進出企業
推計方法
75
203
311 H16年度∼18年度の進出・退出状況から設定
3
― ― 11
― ― ― ― 311
①PI2期医療関連企業
593
1,999
②中核機関
610
947
③市内(PI2期以外)の
医療関連企業
719
1,116
1,734 中核機関の伸びと同程度と仮定
④PI2期の一般進出企業
768
1,536
2,304 H17年度までの5年間と同程度の伸びと仮定
83
4,237 H16年度∼18年度の1社あたり雇用の伸びから設定
1,471 H16年度∼18年度の対前年伸び率から設定
2,690
5,599
3,703
17,018
53,883 一人あたり原単位を全国平均をもとに設定
10,517
16,331
25,359 一人あたり効果をH17年度と同値と仮定
③市内(PI2期以外)の
医療関連企業
9,048
14,050
21,817 一人あたり効果をH17年度と同値と仮定
④PI2期の一般進出企業
4,851
9,701
14,552 一人あたり効果をH17年度と同値と仮定
①PI2期医療関連企業
②中核機関
合計
市内間接効果
H27年度
203
合計
市内直接効果
H22年度
172
合計
雇用
H17年度
9,745
28,119
57,101
①PI2期医療関連企業
1,892
7,177
19,215 直接効果に波及係数をかけて推計
②中核機関
5,336
8,285
12,865 一人あたり効果をH17年度と同値と仮定
③市内(PI2期以外)の
医療関連企業
3,378
5,245
8,144 一人あたり効果をH17年度と同値と仮定
④PI2期の一般進出企業
合計
115,611
2,214
4,429
12,820
25,136
46,867
6,643 一人あたり効果をH17年度と同値と仮定
5,595
24,195
73,097
総合計
①PI2期医療関連企業
(直接効果+間接効果)
②中核機関
15,853
24,616
38,224
③市内(PI2期以外)の
医療関連企業
12,426
19,295
29,961
④PI2期の一般進出企業
合計
7,065
14,130
21,195
40,939
82,236
162,477
税収効果
①PI2期医療関連企業
176
744
(市税)
②中核機関
509
893
2,066
1,387 固定資産税等はH17年度は少ケースと多ケースの平
③市内(PI2期以外)の
医療関連企業
358
571
886 市民税・事業所税は総合計(直接効果+間接効果)
④PI2期の一般進出企業
239
482
723
1,282
2,689
5,062
合計
34
均を用い、H22年度と27年度は雇用をもとに推計。
に一定比率をかけて推計。
(2)今後のロードマップ
①研究・技術開発のロードマップ (野村総合研究所による
提案)
(野村総合研究所による提案)
5年後
現在
医療基盤
の整備
先端医療センター臨
床棟開設(H15)
10年後
創薬を促進する医師主導の治験の推進(臨床医、患者団体、ボランティア、企業資金助成による治験実施ネットワークの構築)
国内製薬企業、関西圏の連携によるリガンドバンクの構築
(スクリーニング担当:大手製薬企業、データ利用者:ベンチャー企業、医師)
先端医療センター診療所の開設︵
臨床研究支援センター
分子イメージング・新たな治験施設等による創薬ベンチャーの創出・支援
新たな診断マーカー・イメージングプローブの開発
新たなリガンドを活用した
イメージング治験の開始
文科省
RR2002の実施
(H14∼18)
既存のリガンド・イメージング技術を
活用した薬効評価システムの開発
文科省
がんTRの実施
(H16∼)
12
)
臨床試験︵
治験︶
/臨床研究支援
z 患者の選択による先端医療
受診システムの構築
●標準医療の革新
●新たな医療の構築
●QOL向上のための医療
z 中央市民病院を核としたメ
ディカルクラスターにおける
優秀な臨床医の確保
新中央市民病院移転計画(一元的な医療実施施設整備)
治験ネットワークの構築(H13∼)
海外ベンチャーの創薬候補の新たな治験施設
での認可試験実施
コンピュータ上での生体シミュレーション・
生体モデルの構築
分子イメージング結果を活用した
薬物動態シミュレーションの実施
マイクロドージング試験の実施
(C14を利用した安全性・薬効評価)
薬剤評価手法
の確立
中型動物モデル・イメージング等による新たな
前臨床試験実施
神戸臨床
研究情報
センター
設立(H15)
【全体】
細胞・
遺伝子治療/再生医療
CPC設立
(先端医療センター
研究棟)H13
「再生医療」の再定義による、治療・管理の考え方の再考
●細胞治療/サイトカイン投与的治療 ●人工臓器的治療
心筋、神経、膵島への展開(先進医療)
皮膚、骨、軟骨、角膜、血管再生の
高度専門病院群での臨床応用(先進医療)
【Allo】
NEDO:
微細加工技術プロ
ジェクト(H14∼17)
高度専門病院群における治療
多能性をもつ幹細胞(ESも含む)からの分化誘導・分配
【培養システム・機器・移植用デバイス等の開発】
皮膚、骨、軟骨、角膜等について
各組織の最適な培地や細胞・組織移植用デバイスの開発
再生医療ベンチャーの集積
硬膜・腱・血小板・軟骨・骨・歯等
幹細胞技術を活用した生体材料の作製技術開発
心筋、神経、膵島等の最適培地、移植用デバイス開発
幹細胞研究の創薬支援への応用
イメージング技術を活用した再生医療の評価
CT-ライナック治療事業
医医 療療 機機 器器
映像医学センター
PET診断サービスの実施
医療用機器開
発研究会設立
(H11)
4Dリニアックの実用化
神戸バイオメディックス設
立(H15)
理研
分子イメージング
研究開発拠点
設立
PMDAとの連携による、関西におけ
る薬事承認支援体制の構築
(新規生体材料開発企業等向け)
超音波等、新しいイメージングガイド下の低侵襲治療の実現
新たなマーカーに対する診断用分子イメージング装置の開発支援
異業種の革新的テクノロジーを組
み込んだ健康機器開発支援 (工
学部主導のイメージ)
地域新生コンソーシアム研
究開発事業 (H14∼
16)
MEDDEC
設立(H17)
理研
発生・再生科学総合研
究センター開設
細胞ソース探求(科学的根拠の追
求) 「細胞に強い神戸」
幹細胞研究の国際的ネットワーク
拠点の構築
Alloでの再生医療を実現するための
CPCや、公的細胞バンキングシステムの整備
デバイスの開発により細胞採取・培養・細胞導入までの
一連の作業のパッケージ化(CPC不要の機器)
文科省
知的クラスター創成事業の
実施(H14∼18)
NEDO:
医学工学(ME)連
携事業
(H11∼15)
予防・健康づくり・介護予防技術の
科学的開発を行うための社会シス
テムの構築
(データ収集、検証、市民への啓
発)
臍帯血・脂肪細胞等からの血液(赤血球)・血小板の培養
文科省:
研究用幹細胞バンク整
備(H15∼)
先端医療センター医
療機器棟開設(H12)
様々なライフサイエンス分野の革
新的な医療技術に対応した、新た
な治験システムの構築
(患者・市民の参画型)
●培養「組織」の移植
【Auto】
文科省:
地域結集型共同事業(H12∼17)
研究基盤
の整備
医療産業都市の今後
z 専門医トレーニングの仕組みを活用した学会との連携による(学会主催の)機器の
性能評価・比較評価の実施
z MEDDECのMRI等を活用した新たな治療デバイスの開発支援
新たな機器の承認・事業化支援システムの構築
イメージング技術を活用した、低侵襲の新たな治療装置・デバイスの開発
研究者・臨床医の連携による新たなマーカーに対する診断ソフトウエアの開発
臨床医の機器アイディアを形にする
中小/ベンチャー企業の創出支援
海外製品の国内治験支援・事業化のスキーム作り
大企業とのマッチング支援
(製品化=大企業)
臨床医と企業の密な連携による新
たな機器の開発・承認・事業化支
援システムの構築
提言
省庁横断的な新たなライフサイエンス
技術の支援・審査体制の構築
35
②グランドデザインの実現に向けての誘導方策
a)ポートアイランド地区における誘導方策
・本ビジョンで提言するクラスターの将来像(グランドデザイン)の実現に向け、本構想の拠
点であるポートアイランド地区において、研究機関・企業の誘致方針ならびに必要な都市環
境の整備指針などを示すことにより、産学官民連携による自立的なクラスター形成のために
必要となる機能の集積を図る。
1)研究開発エリア:先端医療センターや理化学研究所等、構想の中核的な役割を担う施設を
配置するとともに、医療関連企業や研究機関等の集積を図るエリア
・先端医療センターや理化学研究所等の周辺には研究者らの交流活動を促進する環境整備を図
る。
例)2階レベルのスムーズな歩行者動線の確保、交流活動の場の設置(公開空地)
まちのにぎわいを作る施設の誘致(レストラン、コーヒーショップなど)
・ポートライナー沿いの南北軸を核として緑豊かな広場や遊歩道を設けるとともに、海や緑と
親しめる親水空間を整備するなど、研究者等が憩い安らげる空間を創出する
・託児所や飲食店などの生活利便サービス機能や、フィットネスクラブなどの健康増進・リフ
レッシュ機能の導入・拡充を図り、働きやすい職場環境を創出する。
2)医療エリア
:新中央市民病院を核にその近接地に高度専門医療機関等の集積を図るこ
と等により、患者の選択に応じた高度医療サービスを提供するエリア
・患者や家族等が安心して往来できるような動線を確保するとともに、ユニバーサルデザイン
にも配慮する。
・公園・緑地などのオープンスペースを核に、患者や家族が憩い安らげるアメニティー空間を
創出する。
・患者家族向けの手ごろな料金の宿泊施設を誘致するなど、遠隔地からも利用しやすい環境を
整える
・国際会議場などのコンベンション施設において、医療関連の学会を誘致するとともに、学会
と併せて市民向けセミナーを開催し、医師と市民・患者との交流を促進する。
3)教育エリア
:大学や医療関連の専門学校等の教育機関を配置し、学究的な交流活動を
促進させるエリア
・若者が集い交流する賑わいのある空間を創出するとともに、ポートアイランド地区のまちの
活性化に資する視点から、地域住民も参加・利用できる機会を積極的に設ける。
・大学の機能を住民の福祉や地域環境の整備に役立てる視点から、進出大学によるコンソーシ
アムを中心に、健康・福祉分野をはじめ文化、スポーツ等の分野も含めた市民向けセミナー
36
や各種イベントを開催する。
・先端医療分野や健康・福祉分野を中心に、研究開発エリアや医療エリアの研究機関や企業と
の交流の機会を創出するとともに、科学性の検証にあたっての被験者の指導やデータ収集な
ど、学生が、医療産業都市構想の様々の活動に参画し、実地の学習をする機会をつくる。
図
グランドデザインの実現に向けての誘導方策(ポートアイランド地区)
教育エリア
神戸学院大学
⇒
兵庫医療大学
神戸夙川学院大学
中央市民病院
学究的な交流活動を促進
させるエリア
医療エリア
神戸女子大学
神戸女子短期大学
⇒
コンベンション施設
BTセンター
新中央市民病院
移転新築予定地
BMA,TRI
CDB
注)
IBRI:先端医療センター
CDB:理化学研究所発生・再生科学総合研究センター
TRI : 神戸臨床研究情報センター
KIBC:神戸国際ビジネスセンター
BMA:神戸バイオメディカル創造センター
KIO :神戸インキュベーションオフィス
BTセンター:神戸バイオテクノロジー研究・人材育成センター/
神戸大学インキュベーションセンター
KIMEC:キメックセンタービル
HI-DEC:神戸健康産業開発センター
MEDDEC:神戸医療機器開発センター
KIMEC
HI-DEC
IBRI
KIBC
KI0
患者の選択に応じた
高度医療サービスを
提供するエリア
研究開発エリア
⇒ 研究者等が憩い安らげる空
間や働きやすい職場環境、
交流活動を促進する環境整
備を図るエリア
理研・分子イメージング研究開発拠点
神戸
空港
MEDDEC
・また、医療サービスやライフサイエンス研究においては、医師、薬剤師、看護師などを中心
に女性の参画が重要となるため、女性が育児もしながらいつまでも働くことができるよう、
保育施設の整備やクラスター内で就労が確保されるシステムづくりなどを進める。
・あわせて、神戸地域全体で、国内外から神戸に集まる研究者や医療従事者などが、外国人を
含めて安心して活躍できるような住宅・教育などの生活環境を整える。
37
b)関西全体でのライフサイエンス分野のスーパークラスター形成
・今後さらに、ライフサイエンス分野における国際競争力を高めるためには、医薬品の基礎研
究と創薬産業が集積する大阪北部(彩都)地域や、医療関連の分析・測定機器開発が強い京
都地域及びけいはんな地域をはじめ、関西全体でのスーパークラスターの形成が不可欠であ
る。
・そのために、大阪大学、神戸大学、さらには京都大学を3極とする関西全体の研究ネットワ
ークを形成し、共同研究推進の仕組みづくり、人材交流の仕組みづくり(バーチャル大学、
単位互換等)
、施設の共同利用などを推進する。
・あわせて、北大阪の彩都地区、大阪市内の道修町周辺、京都バイオシティ構想と、神戸医療
産業都市構想を関西のビジネスネットワークの中心とし、国内外へのプロモーション活動、
社会人の再教育プログラムや事業化支援の仕組みの共有などを行う。
・これらのネットワークを有機的に連携させ、大学・研究機関とバイオ産業が一体となった機
能「(仮称)知のバイオ・トライアングル」の整備について、関係機関に働きかけることが望
ましい。
・また、先端医療クラスター形成に向けてトランスレーショナルリサーチ機能を強化するため
の「知的クラスター創成事業」や、ベンチャー企業の創出と中小・中堅企業の成長促進を図
る「産業クラスター計画」を活用して、地域におけるイノベーション創出を加速するととも
に、「知のバイオ・トライアングル」との連携のもと、研究開発への国際的な研究者の参画や
世界に向けた情報発信のための研究ネットワークと、国際的な活動を行うグローバル企業の
誕生と参入を促すためのビジネスネットワークを構築し、国内外のバイオメディカルクラス
ターとの交流を促進する。
図
関西全体でのライフサイエンス分野のスーパークラスター形成
京都バイオシティ構想
京都バイオシティ構想
海外のバイオ
メディカル
クラスター
大学・研究機関
大学・研究機関
播磨科学公園都市
播磨科学公園都市
SPring-8
SPring-8
産総研
産総研
関西文化学術研究都市
関西文化学術研究都市
伊丹空港
伊丹空港
神戸大学
神戸大学
国立循環器病
国立循環器病
センター
センター
WHO神戸センター
WHO神戸センター
大阪・道修町周辺
大阪・道修町周辺
製薬企業群
製薬企業群
神戸空港
神戸空港
関西国際空港
関西国際空港
国内のバイオ
メディカル
クラスター
医薬基盤研究所
医薬基盤研究所
大阪大学
大阪大学
理研CDB
理研CDB
神戸医療産業
神戸医療産業
理研
理研
都市構想
都市構想
分子イメージング
分子イメージング
先端医療センター
先端医療センター
企業・
企業・
事業化支援組織
事業化支援組織
京都大学
京都大学
知のバイオ・
トライアングル
大学・研究機関
大学・研究機関
38
企業・
企業・
事業化支援組織
事業化支援組織
彩都
彩都
【神戸ライフサイエンス・ゲートウェイ】
・
「知のバイオ・トライアングル」による国際的な研究・ビジネスネットワークを支える組織と
して、研究シーズの事業化を可能とする専門人材を集積させた産学官の共同組織「神戸ライ
フサイエンス・ゲートウェイ」の設立を図る。
・この組織により、関西のバイオクラスターが持つTR支援機能を広く世界に紹介しながら、
国内のみならず海外のTRシーズを積極的に導入し、関西全体のスーパークラスターにおけ
る世界のライフサイエンス産業とのゲートウェイとする。
¾ イメージング技術や国際共同治験を活用した新たな医療製品開発の支援
¾ 海外クラスター(特に欧州、アジア(中国))や世界的な研究機関、企業、専門家とのネ
ットワーク構築
¾ 国内外における神戸クラスターのTR支援機能の紹介とTRシーズの調査・発掘ならび
に導入、パートナーの紹介
¾ 製品候補の市場調査ならびにマーケティング戦略、臨床開発戦略立案(マイルストーン
戦略)
¾ 臨床試験実施支援(先端医療センターとの密接な連携)
¾ ベンチャー育成ファンドなどと連携したTRシーズを有する企業に対する資金面の支援
図
神戸ライフサイエンス・ゲートウェイのイメージ
関西の大学・研究機関
医療機器、製薬、
国際
新たな
治験施設
ジェネリック医薬品、 ブリッジング研究
バイオベンチャー
ラライイ
セセシ
シン
ンググ
有
力
企
業
紹
介
創薬、タンパク
遺伝子解析、
診断計測機器、
治療用デバイス
DDS
イメージング
技術の活用
国際バイオベンチャー創出
バイオベンチャー
育成ファンド
取
許
特
先端医療センター
分子イメージング
経営者の斡旋 MEDDEC
大学・企業との連携
人材供給
製薬
欧米の
バイオクラスター
ネットワーク
製薬
医療機器
研究機関
アジアの
バイオクラスター
商社
TRI
技術提供
医療機器
39
得
援
支
ー
マ
開発支援
テ
ケ
グ
ィン
臨床研究
出 資
地元
中小企業
ベンチャー
キャピタル
支
援
③実現にあたって
・本ビジョンの実現にあたっては、神戸市、先端医療振興財団、神戸商工会議所を中心に、先
端医療分野や健康・福祉分野における国内外の多数の企業、市民、医療関係者、大学及び研
究機関、国及び県など各界各層の協調・協力のもとで、具体化に向けた取り組みを進めるこ
とが不可欠となる。
・特に、構想を推進する「神戸医療産業都市構想研究会」やその実施主体である神戸市及び先
端医療振興財団においては、本ビジョンの具体化に向けた年度別のプログラムを策定するな
ど、着実に実行していくことが望まれる。
・あわせて、構想に参画する企業や研究者、医療関係者、市民・事業者への意見聴取などによ
り、本ビジョンの進捗状況に関する意見を定期的に把握するとともに、構想を取り巻く環境
変化に対応して、適宜その内容の見直しを行う。併せて評価委員会を設け、定期的な評価を
実施する。
・本ビジョンを踏まえて、関西の産学官の連携と市民の参画のもと、高度医療サービスを提供
する「メディカルクラスター」の形成や、市民の科学的な健康づくりを支援する「健康を楽
しむまちづくり」の具体化、さらには、優秀な臨床医や研究者等の集積によりイノベーショ
ン創出を加速する「メディカルイノベーションシステム」の強化が進められることにより、
神戸経済の活性化、市民の健康・福祉の向上、国際社会への貢献が促進されるか否か、関西
地域との連携や国際交流が円滑になされているのか否かについても評価を行う。
・21世紀の日本は未曾有の高齢化社会を迎え、高齢者の健康を守り、適切な医療を行うこと
は重要な国家的課題となる。このビジョンの実現は、こうした時代のニーズに対応し、社会
に貢献するものと期待する。
40
参
考
(1)「神戸健康科学(ライフサイエンス)振興会議」
◆座
長◆
井村
◆委
委員名簿
裕夫
神戸医療産業都市構想研究会会長、(財)先端医療振興財団理事長
員◆(敬称略、五十音順)
家次
恒
池川
清子
鵜崎
功
(神戸商工会議所副会頭)
(神戸市看護大学長)
(神戸市助役)
左右田 隆(H17.8∼H17.10)、大川 滋紀(H17.10∼)
(武田薬品工業株式会社医薬研究本部長)
加護野
忠男
(神戸大学大学院経営学研究科教授)
春日
雅人
(神戸大学医学部附属病院長)
守殿
貞夫
(神戸赤十字病院長)
菊池
晴彦
(神戸市病院管理監)
北川
全
北村
新三
(神戸大学名誉教授)
北村
惣一郎
(国立循環器病センター総長)
後藤
武
高井
義美
(アルブラスト株式会社代表取締役社長)
(兵庫県健康財団副会長)
(大阪大学大学院医学系研究科教授)
ダグラス・シップ (理化学研究所発生・再生科学総合研究センター広報国際化室長)
田中
紘一
(先端医療振興財団先端医療センター長)
玉岡
かおる
(作家)
鶴井
孝文
(神戸市機械金属工業会副会長)
中西
重忠
(大阪バイオサイエンス研究所長)
西川
伸一
(理化学研究所発生・再生科学総合研究センター副センター長)
西田
芳矢
(神戸市医師会副会長)
平岡
眞寛
(京都大学大学院医学研究科教授)
平野
拓也
(科学技術広報財団理事長)
本庶
佑
松島
克守
宮田
満
山西
弘一
(総合科学技術会議議員、京都大学大学院医学研究科客員教授)
(東京大学総合研究機構俯瞰工学部門教授)
(株式会社日経BPバイオセンター長)
(医薬基盤研究所理事長)
41
◆オブザーバー◆(敬称略、五十音順)
岩尾 總一郎(H18.6∼)(WHO健康開発総合研究センター所長)
福水 健文(H17.8∼H18.9)、久貝
卓(H18.9∼)(近畿経済産業局長)
下野 昌宏(H17.8∼H18.3)、中瀬 憲一(H18.4∼)(兵庫県健康生活部長)
藤田 明博(H17.8∼H18.10)、藤木 完治(H18.10∼)
(文部科学省大臣官房審議官(研究
振興局担当)
)
鈴木 英明(H17.8∼H18.10)、松本 義幸(H18.10∼)(近畿厚生局長)
(2)神戸健康科学(ライフサイエンス)振興会議の開催経過
①神戸健康科学(ライフサイエンス)振興会議
日
時
概
要
平成 17 年
8 月 29 日
【第 1 回】
神戸医療産業都市構想のこれまでの取り組みと今後の方向について
12 月 5 日
【第 2 回】
ワーキンググループにおける検討状況
平成 18 年
3月8日
【第 3 回】
神戸健康科学(ライフサイエンス)振興ビジョンの基本的な枠組み(案)に
ついて
【第 4 回】
神戸健康科学(ライフサイエンス)振興ビジョンの基本的な枠組み(修正案)
について
【第 5 回】
神戸健康科学(ライフサイエンス)振興ビジョン(案)について
7 月 11 日
11 月 7 日
平成 19 年
2 月 20 日
【第 6 回】
神戸健康科学(ライフサイエンス)振興ビジョン(案)について
クラスター形成に向けた取り組み、神戸医療産業都市構想の経済効果、今
後のロードマップ等
②グランドデザイン検討ワーキング
日
時
平成 17 年
11 月 29 日
平成 18 年
2 月 28 日
6 月 20 日
概
要
【第 1 回】
グランドデザイン検討ワーキンググループにおける検討項目について
「アジアのメディカル・センター」の必要性について
【第 2 回】
神戸健康科学(ライフサイエンス)振興ビジョンの基本的な枠組み(案)
について
【第 3 回】
神戸健康科学(ライフサイエンス)振興ビジョンの構成について
メディカルセンター機能について、先端医療融合センター構想について、
経済効果の検証の進め方について
42
10 月 24 日
【第 4 回】
神戸健康科学(ライフサイエンス)振興ビジョン(素案)について
③新たな研究・技術開発方策ワーキング
日
時
平成 17 年
11 月 25 日
平成 18 年
3月1日
6 月 27 日
8 月 28 日
概
要
【第 1 回】
新たな研究・技術開発方策WGにおける検討項目について
懇談会報告書における「取り組むべき医学分野」の進捗と展望
(臨床試験(治験)、細胞・遺伝子治療、医療機器(介護機器含む))
、新た
な研究・技術開発を推進するための仕組みの構築(案)
【第 2 回】
神戸健康科学(ライフサイエンス)振興会議 基本的な枠組み(案)につい
て
【第 3 回】
神戸健康科学(ライフサイエンス)振興ビジョンの構成について
先端医療技術の将来像及び神戸で取り組むべき分野について、研究・技術
開発を推進する仕組み作りについて、経済効果の検証の進め方について
【第 4 回】
健康長寿戦略(ナイスエイジング)について
10 月 31 日
【第 5 回】
神戸健康科学(ライフサイエンス)振興ビジョン(案)について
平成 19 年
1 月 30 日
【第 6 回】
医療産業都市構想における今後の取組みに関するロードマップについて
③クラスター推進方策ワーキング
日
時
平成 17 年
11 月 30 日
平成 18 年
2 月 23 日
7月3日
10 月 18 日
概
要
【第 1 回】
クラスター推進方策WGにおける検討項目について、神戸大学における医
工連携の取り組み、クラスター形成に向けたこれまでの取り組みと今後の
展開、クラスター形成に向けた新たな具体化プロジェクト、神戸学院大学
の移転構想
【第 2 回】
神戸健康科学(ライフサイエンス)振興ビジョンの基本的な枠組み(案)に
ついて
【第 3 回】
神戸健康科学(ライフサイエンス)振興ビジョンの構成について
事業化・産業化を支援する仕組みづくりについて、経済効果の検証の進め
方について
【第 4 回】
神戸健康科学(ライフサイエンス)振興ビジョン(素案)について
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