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建設請負業者の法的手引きメモ 2008 年冬版 履行保証

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建設請負業者の法的手引きメモ 2008 年冬版 履行保証
建設請負業者の
建設請負業者の法的手引き
法的手引きメモ 2008 年冬版
履行保証
範囲
本建設請負業者の手引は、建設及びエンジニアリング分野の観
点から履行保証の種類、商業的機能、及び利用につき簡単に考
察してみたい。
履行保証とは
履行保証とは何
とは何かまた何故
かまた何故あるのか
何故あるのか?
あるのか?
履行保証の本質は第三者(第1次債務者)による受益者に対し
て負われている契約義務の実際の又は申し立てられた不履行の
場合に、規定の金額までを 1 人の契約当事者(「債務者」)に
よって他の契約当事者(「受益者」)に支払うという約束である。
多種類の履行保証があり、また膨大な範囲の文書が出回ってい
る。
履行保証は国際貿易(炭化水素等の均質商品を含む)、商業銀
行業務、資本市場取引、及びインフラ・プロジェクトを含む、
非常に多くの商業分野に強力に根付いている。この様な利用の
多様性が基本的には同じものを述べるに際して、過剰な用語に
つながったのである‐それが当の履行保証の種類であれ、履行
保証の当事者の標記であれである。建設及びエンジニアリング
のプロジェクトでは、履行保証は請負業者/下請業者/サプライ
ヤーの履行の保証に使用されているが、時にはその「基礎を成
す契約」下でのディベロパーの義務の保証に使用されている。
基礎を成す契
第1次
債務者
受益者
履行保証
債務者
反対補償
図-担保義務
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レッテルは
レッテルは誤解を
誤解を招くことがある
建設及びエンジニアリング・プロジェクトにおいては、保証が普通は履行保証の提供
という方法によって提供されるという、ある種の共通の状況が存在する。関連する状
況を参照することによって履行保証の種類を表現する慣習が築かれてきた。一般的な
例は下記を含む:
•
前渡金履行保証(この場合、履行保証は前渡金に対する反対保証として請負業
者によって提供される);
•
入札担保(入札者が入札手続で最後まで遂行しなかった場合に、入札手続に際
してディベロパーによって被られた損失に対する保証として);
•
保留金返還担保(建設契約下でディベロパーが請負業者から保留金を保留する
代わりの保証として);
•
履行担保(建設契約下で請負業者が不履行した場合に、ディベロパーによって
被られた損害に対する保証);
•
オフサイト資材担保(高価値の品目がサイトに納入される前に支払済の場
合);
履行保証に対処するに際して多分最も重要なルールは、履行保証が準拠する法律の関
連基準と規則に関連して、特定履行保証の特定の言い回しが、その範囲、意味、及び
効力を決定することである。言い回しは特定の履行保証が実際にどの様に作用し、ま
たそれが債務者に対してどんな債務を課すかに影響を与える‐そしてこれが広範に異
なるのである。
第 1 次及び
次及び第 2 次債務
異なった種類の履行保証を識別するに際して、普通は履行保証が債務者に対して第1
次債務かまたは第 2 次債務を課しているかを確定することが非常に重要である。
債務者が他の人物の債務と無関係に受益者に対して責任を負う場合には、それは「第
1次債務」である。受益者に対する債務者の責任が、第三者が受益者に負っている義
務の違反をすることを条件としている場合には、それは「第 2 次債務」である。従っ
て、上記で参照した通り、履行保証という背景においては:
•
債務者が基礎を成す契約下での第1次債務者の債務に関係なく履行保証を支
払う義務がある場合には、債務者は受益者に対して第1次債務を有してい
る;又は
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•
履行保証下での債務者の債務が、基礎を成す契約下での第1次債務者の義務
の違反を条件としている場合には、受益者に対する債務者の債務は二次的で
あり、即ち保証債務である。
概して第1次債務を含む履行保証は「オンディマンド・ボンド」又は(幾分混乱気味
に)「ディマンド・ギャランティー」と呼称されており、一方第 2 次債務は「パフォ
ーマンス・ギャランティー」と呼称されがちである。
第1次債務及び
次債務及び第 2 次債務の
次債務の種類
恐らく第1次債務を課す履行保証の最も明快な例は、受益者がそれを要求した時に債
務者が担保金額を彼に支払うことを義務付けるものであり‐それは受益者が履行保証
の要求を立証する証拠を提供する所要条件なしにであり、例えば「証拠や条件なしで
要求時に」であり‐それ故に「オン・ディマンド」という別称が慣用されているので
ある。実際には第1次債務者を更に保護するために、受益者から付加的書面が要求さ
れていることが分かるのが一般的である。例えば:
(a)
第1次債務者は不履行であるとの陳述書、
(b)
建設契約下で第1次債務者に与えられた、不履行を救済する旨の警告通知のコ
ピー、
(c)
契約下で任命された第三者の証明書(例えばエンジニア又は建築士)、または
(d)
仲裁人の裁定または裁判所命令や判決。
履行保証がかかる付加的書面を要求している場合であっても、履行保証はそれでも債
務者に第1次債務を課す可能性があり、それは例えば履行保証の要求に対して述べら
れている正規手続と手順に従うことを条件として、債務者は第一に担保金額を支払う
ことを強いられる場合である。かかる履行保証はしばしば「条件付きオンディマン
ド・ボンド」と呼称される。履行保証が第1次債務を生じることを更に強調するため、
多くの履行保証は要求されている金額が支払われるべきであるとの決定的証拠として、
債務者が必要書類の提供に依拠する権利を明白に与えている。これは、既定の正規手
続と手順に適合することを条件として、債務者は第1次債務者からの抗議にもかかわ
らず支払わなければならないことを明確にしている。
明らかに履行保証の要求に対する条件が煩雑であればある程、それは第 2 次債務、保
証に近くなる。第 2 次債務を生じるに際しては受益者に対する債務者の債務は、担保
金額と当該不履行についての受益者に対する第1次債務者の債務の金額のうち、少な
い方に限定される。履行保証の要求を行なう権利を得るためには、受益者は第1次債
務者の不履行から生じた債務を確立しなければならず‐従って「オン・ディフォール
ト」という別称が使用されるのである。
現在では裁定保証はエンジニアリング建設プロジェクトでは主要なものとなりつつあ
る。その名称が示唆する通り、同保証は通常はディベロパーが請負業者に対して仲裁
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人の裁定を得た場合には、ディベロパーに履行保証を要求する権利を与える。裁定保
証は商業的には第 1 次履行保証と第 2 次履行保証との間くらいに入ると認められてい
る。しかしながらその性格と範囲は未だ発展段階にある。法定判決制度を適用してい
る他の管轄権において、裁定保証がディベロパーと請負業者にとって関心のない理由
が存在するだろうか?多分正しい回答は「ノー」であろう。1999 年に発行された国際
建設契約に対する FIDIC の「レインボー・スイート」条件は、ICC のディマンドギャ
ランティーに対する統一規則(ICC 公布番号 458)(「URDG
URDG」)を基礎とした履行保証
URDG
の模範様式を取り入れており、紛争裁定委員会による初期の紛争解決を定めている。
暫定的に当事者に対して拘束力を有する、かかる委員会の裁定は 84 日以内に下されな
ければならない。ディマンドギャランティーの要求は、請負業者が契約違反であるこ
と及びその違反が招いた損害を述べている、委員会の裁定を伴わなければならないと
いうことに、当事者が合意できない理由はない。
古風な
古風な言葉遣い
言葉遣い
上述の通り履行保証を記述するに際しての専門語の使用は、多くの場合に第1次債務
者が何を提供することに合意したかにつき混乱を招いている。加えて履行保証は書類
の本文での専門語と古風な言葉遣いの使用について長い間批判されてきた(及び今も
批判され続けている)。これが債務者の債務の性格についての混乱につながったので
あり、今も混乱を生じ続けているのである。1930 年代というかなり前の英国で、アト
キン卿(英国上訴院判事)は下記の通り意見を述べた:
「なぜ実業家は正確な取引を適切に表現していない旧態依然の様式の契約で重
要な義務の締結を主張するのか、理解に苦しむと発言させて戴く。」(トレー
ド・インデムニティー対ワーキントンハーバー&ドックボード)
また英国であるがもっと最近になって、マイケル・ラサム卿は 1994 年のレポートでこ
の懸念を繰り返す必要を痛感しており、履行保証は現代の言葉を使用してドラフトさ
れるべきであると述べている。いずれにせよ ICC 及び FIDIC 等の組織の努力にも関わ
らず、残念ながら古めかしい言葉遣いで履行保証をドラフトする慣習は存続している。
第1次債務や
次債務や第 2 次債務はいつ
次債務はいつ必要
はいつ必要か
必要か?
実際に必要な履行保証(またはその必要とする法的機能)の種類は、なぜ履行保証が
求められるか(またはその必要な商業的機能)の理由によって主に決まる。しかしな
がら第 2 次債務を要求するという付加的複雑性を考えると、ディベロパーにとっては
全ての場合において第1次債務を求めるという誘惑が存在する。この様な慣行は、履
行保証の選択に影響を与える多くの他の要素を見落としている:
第1次債務履行保証が
次債務履行保証が好ましい要素
ましい要素
*
恐らく履行保証を求める最も共通した理由(及びその商業的機能)は、第1次債
務者が債務超過のためにその義務の履行を完了できないことが招いた損失に対
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する保証を提供することである。受益者はプロジェクト完了の資金を調達する
ための当面の現金財源を実現するためには、履行保証下で請求を行なえる必要
がある。第 2 次債務は、第1次債務者の債務を確立し且つ恐らくは立証する必
要のゆえに、履行保証を請求することができるに際して起こり得る遅延を考え
ると適切ではない。履行保証の請求に対する所要条件に殆ど制限が無いか全く
無い第1次債務(即ち「クリーンボンド(無制限保証)」の方がより適切であ
る。
*
履行保証の他の一般的な商業的機能は、基礎を成す契約下で義務を履行しない
ことについての第1次債務者の義務に対する保証を提供することである。第1
次債務は、受益者が第1次債務者の債務を確立することなしに、直ちに支払を
要求することを可能にする。これは履行保証が、保留金の代わりの保証か又は
受益者が行なった前渡支払金に対する保証として提供されている場合には必要
と見なされることができる。しかし主に受益者の懸念が、立証された時に第1
次債務者が債務を満たせないことである場合には、第 2 次債務で満足する可能
性がある。
*
債務者は申し立てられた不履行に関する、及び担保が保証を提供したところの
その結果としての債務に関する紛争への関与の必要性を回避するために、第1
次債務を供与することを好む可能性が高い。
*
プロジェクトが第三者によって資金提供されている場合には、担保はプロジェ
クトの貸し手がそれに対して保証を取ることができる資産(例えば担保自体の
譲渡の方法によって)を提供することが可能である。いくつかの法律制度下で
は第 2 次債務を確立している担保下での受益者の権利は譲渡不可能であるが、
第1次債務を確立している担保下では譲渡可能である。結果的にプロジェクト
の貸し手は通常は後者を主張する。
第 2 次債務履行保証が
次債務履行保証が好ましい要素
ましい要素
*
担保の要求が成功した場合には、債務者は殆どの場合に普通は反対補償の形式
で第1次債務者に対して償還を要求する(上図を参照のこと)。第1次債務の
場合には、債務者(普通は商業銀行)もまた多くの場合最初に現金預託を要求し、
それは担保が要求された場合には引き下ろされる。第 2 次債務が与えられた場
合には、債務者(多くの場合は保険会社)は普通は反対補償の提供に加えて保
険料支払を必要とするのみである。結果的に第1次債務履行保証に対する所要
条件は、受益者にとってかなり高くつく可能性がある。
*
基礎を成す契約から第1次債務を切り離すことは、必然的に履行保証が不当に
利用される可能性を広げる。第1次債務履行保証の請求にチャレンジする第1
次債務者の限られた能力を考えると、かかる請求(又はかかる請求の恐れ)は当
事者の商業上の地位に相当な影響を与える。実際において履行保証の請求が行
なわれた場合には、重荷は受益者が第1次債務者から取ることを追求しなけれ
ばならないよりは、むしろ請求する履行保証が存在しない場合にはそうなると
ころの、履行保証の受益者から取ることを追求する第1次債務者にある。結果
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的に第1次債務履行保証は「ダモクレスの剣」として利用されることができ、
「…履行しなければ担保を請求する‐」「…遅延弁済金を払わないなら担保を
請求する」。この理由のために第1次債務者予備軍は、第1次債務履行保証を
提供したがらないのである。
*
第1次債務者(または関連会社)が入手した履行保証に行なわれた請求に関する
第1次債務者(または関連会社)の実績は、その(または関連会社の) 将来に
履行保証を入手する能力に影響を与える可能性が高い。これは第1次債務履行
保証が現実には不可欠ではない状況では、第1次債務者をしてそれを提供した
がらなくさせる。
上述の通り、特定のケースで本当に必要な履行保証の種類に対しては、時に不充分な
考慮がなされている。最大の考慮は多くの場合に、履行保証の種類をディベロパーの
商業目的とマッチさせることではなく、契約が作成された時点での当事者間の商業的
な力の均衡のみに払われている。これは交渉の長期化につながる可能性があり、また
恐らくは及び少なくとも部分的には、しばしば遭遇する不明瞭且つ複雑なドラフトの
原因である。当事者が必要な最も適切な保証の形式を充分に考慮し、またこれが契約
前の議論で最初に彼等の間で確立されている場合には、発生する多くの問題は回避さ
れることが可能である。
履行保証の
履行保証の金額
これは証書の本文で明白であるべきである。履行保証は概して契約金額の 5%から 10%
の間で見積もられている(誰もがこの額の範囲の経験を共有してはいないものの)。
但し保証の目的を反映させる特定の取り決めが行なわれることができる。
例えば、保証金額は(a)特定の出来事の発生時に減額することができる(例えば事実上
の完了);又は(b)受益者によって第1次債務者に行なわれた支払の割合に連れて増額
することができる。前渡金担保は中間評価を通じて前渡金支払が計上されるに連れ、
普通は価値が減少する。オフサイト資材担保は資材が支払われるに連れ増加し、また
その後資材が納入されるに連れて価値は減少する。履行担保は保証期間末まで続く可
能性があり、その場合には事実上の完了時に多くの場合減少する。
他の種類の履行保証の場合には、履行保証の金額は保証が取られた目的とリンクされ
る可能性が高い。例えば保留金返還担保は、保留金が契約下で中間支払から控除され
る代わりの保証として取られる。結果として担保の金額は常に保留金の変動価値を反
映するべきであるが、これは明らかに実に複雑になる可能性をはらんでいる。
履行保証はいくら
履行保証はいくら請求
はいくら請求できるか
請求できるか?
できるか?
受益者は債務者から担保金額の全額を要求する権利があるか又はその損失額に対する
補償のみを求める権利があるか?これもまた履行保証の種類によって決まる。
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明確に第 2 次債務の場合には、履行保証下の債務は少なくともその履行保証によって
受益者によって担保された債務に対する第1次債務者の債務に制限されている。結果
的に受益者は、履行保証がそれより大きい金額に対して供与されていることに係わら
ず、その債務を超える金額を請求する権利はない。またこれはかなり不自然ではある
が、明らかに履行保証の条件は履行保証下での特定の種類の債務の回収を更に除外す
ることも可能である。
加えて第 2 次債務に対しては通常の保証の法律が適用することは、念頭に置く価値が
ある。結果的にその反対の明白な定めがない場合には、債務者は履行保証下で受益者
に支払を行なう時に、第1次債務者の相殺と反対クレームを考慮に入れることができ
る可能性が高い。
第1次債務者は独占管轄権条項に用心するべきである。例えば URDG の第 28 条は、当
事者が別途合意しない限り、債務者と受益者との間の紛争は債務者の国の裁判所によ
って独占的に解決されるものとする、又は債務者が 1 つ以上の事業所を有する場合に
は履行保証を供与した支店の国の裁判所によって独占的に解決されるものとすると述
べている。第1次債務者は外国の下請業者との下請契約で、この定めの完全な逓減化
を達成することは困難であると認めるであろう。何故ならば下請業者(下請履行保証
下で第1次債務者予備軍として)は多くの場合、下請業者の国における現地銀行がそ
れを提供することを主張するからである。下請業者の国の銀行が履行保証を供与した
場合には、独占法廷地規定の理由で、第1次債務者は(下請業者の履行保証下での受益
者として)下請業者の国の裁判所で訴訟を起こす(または弁護する)ことを余儀なくされ
る‐これは明らかに不利となる。この問題を回避するためには、下請契約履行保証が
下請業者の本国管轄権外に支店を持つ国際的銀行によって提供される必要があるかも
知れない。
履行保証が債務者に対して第1次債務を生じる場合には、受益者は要求を行なう時に
は担保金額を超えない金額を受領する権利がある。しかしながら英国裁判所は、担保
金額に対する受益者の権利の範囲に特定の制限を推断している:
「担保の金額が…損害についての[彼の]クレームを満たすに充分ではない場合
には、彼は担保下で受領した金額を控除して、彼の損失に対して訴訟を起こす
ことができる。逆に担保下で受領した金額が、被った正確な損失を超える場合
には、担保を提供した当事者は過分の支払を取り戻す権利がある。」(カーギ
ルインターナショナル SA 対 BSFIC(1966))。
かかる黙示条項への依存は(言外の意味に対する理論的基礎が不明瞭であることを考
慮すると)、第1次債務者と受益者との間で、どんな出来事が実際に受益者に履行保
証を要求する権利を与えるかについて、相当な不確実性を持ち込むことは明らかであ
る。加えて、受益者は過分な支払を第1次債務者のために信託で保有するわけではな
く、そのため第1次債務者は受益者の債務超過によって被害を受けやすい。これらの
理由のために、かかる問題が第1次債務者と受益者との間で、契約中で明白な条件で
もって処理されることが賢明である。
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結び
これは専門語と古めかしい言葉遣いで過剰に複雑化されてきた法律及び実務の分野で
ある。しかし一旦ディベロパーによって提示された特定の履行保証の本文を周到に分
析することによって、それが第1次債務か又は第 2 次債務を生じるかを確立したら、
履行保証の解釈と行使に適用する法律の大部分は明確になってくる。いずれにせよ、
履行保証は分かり易い法律証書ではなく、従って相当な関連経験を持つ弁護士のイン
プットをお薦めする。
© Pinsent Masons 2008
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