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アクティブ運用の意義 - 格付投資情報センター

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アクティブ運用の意義 - 格付投資情報センター
2011 年 12 月 8 日
R&I レポート
vol.39
アクティブ運用の意義
年金事業部
チーフアナリスト 舎利弗 孝通
ある報道によると、
「アクティブ運用からパッシブ運用へ」というのが日本だけでなく、も
はや世界的な動きとなっているようだ。こうした背景のひとつに、
「アクティブ運用はインデ
ックスを上回ることが容易ではない」という考えがあるらしい。一方、運用資産がすべてパ
ッシブ運用となってしまったら、一体、市場はどうなってしまうのであろうか?ここでは、
アクティブ運用の意義を再度、確認したい。
アクティブ運用の本質的な機能として、以下の 2 つが考えられる。①価格発見機能(流動性の
供給)と②効率的な資金配分機能である。価格発見機能とは、企業に対して、様々な異なる見通
しをベースに、市場に流動性を供給することである。この役割を果すためには、投資家が熱心に
財務諸表を分析し、テクニカル分析を行う等、必死でミスプライスされた銘柄を探すことが
必要となる。不特定多数の市場参加者である投資家が、それぞれの判断で証券を分析し、売
買する結果として形成される株価こそが効率的であり、市場全体に対して流動性が供給され
るのである。
また、②効率的な資金配分機能とは、今後将来に渡って有望とされる企業に資金を供給する一
方で、成長の見込めない企業には資金を提供せず、市場からの退出を促すことである。この機能
が有効に機能すれば、株式市場の時価総額を増大させることが出来る。こうした 2 つの機能によ
り、アクティブ運用に本来期待される役割とは、長期の企業価値の向上に貢献することであろう。
一方、こうしたアクティブ運用の持つ機能からパッシブ運用を考えてみると、パッシブ運用に
関する最大の論点は「ただ乗り」である。そもそも、投資家が情報を収集し、銘柄を取捨選択す
るからこそ市場の価格発見機能は機能し、流動性も供給されるのであって、そのコストを負担し
ないパッシブ運用はアクティブ運用の発見した価格に「ただ乗り」しているだけとの批判は免れ
られないであろう。パッシブ運用はファンドを構築するためには、多くの銘柄を購入・売却する
必要性が生じるが、そのためには市場に潤沢な流動性が存在する必要がある。しかし、その潤沢
な流動性を提供してくれるのがアクティブ運用であり、アクティブ運用に支えられてこそ、パッ
シブ運用が成立すると言っても過言ではない。誰も情報収集しない、誰も取引しないというよう
な市場を想定すれば、果たして「アクティブ運用からパッシブ運用へ」という動きは、市場の機
能を考えると、簡単に受け入れられるものなのであろうか。
こうしたパッシブ運用に関して、昨今、イギリスで起こっていた議論のひとつに「投資家責任」
の考え方がある。これは、投資家の投資対象企業に対する無関心な態度等が、結果的に株式市場
のリターンを低めてしまい、社会的に大きなコストを引き起こしているのではないかとの問題提
起である。国民共有の財産とも言える株式市場が活性化するためにも、アクティブ運用の意
義を強調しておきたい。
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