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動的資産配分と静的資産配分

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動的資産配分と静的資産配分
2010 年 8 月 18 日
R&I レポート
vol.19
動的資産配分と静的資産配分
年金事業部
チーフアナリスト 舎利弗 孝通
リーマンショック以降、資産配分を柔軟に変化させる方法を「動的資産配分」と呼んで、議論
される機会が増えているようだ。これは、従来から実施されている政策アセットミックスを中心
とした資産配分である「静的資産配分」に対比して語られることが多い。ここでは、改めて「動
的資産配分」と「静的資産配分」についての考え方を整理しておきたい。
「静的資産配分」とは通常行われている政策アセットミックスを長期的に維持するといった資
産配分手法である。リスク許容度に変化がなく、各資産クラスのリターン・リスク等の期待値が
長期的に機能し、政策アセットミックスを維持することで効用が満たされるという考え方がこの
背景にはある。逆に言えば、政策アセットミックスを維持しなければ、期待通りの運用成果・効
用を享受できないことになる。
一方、昨今、話題にのぼる「動的資産配分」は「静的資産配分」とは対照的に、一定の条件の
下で資産配分を機動的に変更していく手法である。資産配分変更の際の判断基準としては、各資
産クラスのリターン・リスク等の予想値や年金基金の負債状況とそれに対応した積み立て水準な
どがトリガーとして議論されている。
ここで「動的資産配分」と「静的資産配分」の重要な相違として、年金基金の資産配分に影響
を与えうる要因が一定期間で「不変なのか」又は「可変なのか」と認識することにある。「静的
資産配分」では、各資産のリターン・リスクやリスク許容度は一定期間「不変」であるというの
が前提になっており、そのため、資産配分を維持することによって期待効用を実現できるのであ
る。一方、
「動的資産配分」では、各資産クラスのリターン・リスクやリスク許容度は経済状況等
によって「可変」であるというのが前提になっており、そのため、資産配分を変更することによ
って期待効用を向上させようと意図しているのである。
実は、資産配分についての考え方は、資産運用の大御所と評される賢者でも意見は分かれてい
る。故ピーター・バーンスタインは、「リバランスを実施するのは、その政策アセットミックス
が最善だと判断をしていることになる。そこには値下がりした資産の価格が戻り、値上がりした
資産の価格が下がるという予測が入りこんでいる。そうした隠れた予測をするくらいなら、きち
んとした予測をして最適な資産配分に変更すべきだ」と主張してきた。他方、バンガードの創設
者ボーグルは、リターンの分布が変化することは認めつつも、数年~10 年程度、政策アセットミ
ックスを愚直に守ることが重要だと主張している。タイミングを見てポートフォリオの構成を変
える戦略によって成功するのは、実際には非常に困難だというのである。
このように、明示的な“正解”が存在しない場合の多い資産運用にあって、資産配分における
考え方や手法も唯一の正解が存在する訳ではない。年金基金にとって、それぞれの考え方や手法
を十分認識することがまず必要であろう。
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