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鋼材加工熱処理におけるミスト冷却特性の整理

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鋼材加工熱処理におけるミスト冷却特性の整理
生 産 研
45巻 6号 (19936)
研
究
速
究
│││││││││││││││││││ │││││││III IIII‖
報
UDC 621.78.08:6217856:669./4
特 集 25
鋼材加 工 熱処理 にお け る ミス ト冷却特性 の整理
l of Steel
E v a l u a t i o n O f M i s t C o l l i n g C h a r a c t e rMiescthiacnsi cianl TChoenrtmloo―
大久保 英 敏
*
*。
西 尾 茂 文
Hidetoshi OHKUBO and Shigefunli NISHIO
1.は
じ め
に
微粒化 した液滴群 を噴霧二相流 の状態で高温面 に衝突
させ ,顕 熱お よび潜熱移動 によ りこれを冷却する ミス ト
冷去口は,均 一性 お よびキ1御性 に優 れた冷却方法 として,
材料 の熱処理な どに広 く利用 されてい る。 しか し,鋼 材
加工熱処理技術 の進歩 とともに ミス ト冷却 の冷却速度 を
より高精度 に制御す ることが要求 されるようになって き
たことか ら,よ り正確 に ミス ト冷却特性 を把握する必要
1).
性が生 じてきた
鋼材加工熱処理では,被 冷却物体 である各種の材料 は,
C以 上の高温状
水滴 を分散 させた噴霧 二相流 により700°
態か ら冷却 されることが多 く,一 般 には沸騰現象の膜沸
騰域 に相当す る高温域 を経て冷却 される。 このため, ミ
ス ト冷去口
特性 を把握 ・制御するため には,高 温域 におけ
る熱伝達特性 お よび急冷開始点 を支配す る高温域下限界
条件 の解明が特 に重要 な問題であることを考慮 して,本
研究では高温域 を中心 とした検討 を行 う。
ミス ト冷却に関す る研究においては,大 気圧 における
―
水 空気系の ミス ト流 を対象 として,液 滴流量密度 2
液滴 直径 あ お よび液滴速度 場 (または気流速度 lり
などの ミス ト流構成因子 と冷却特性 との関係 を検討 した
ものが多 いが,わ れわれは特 に冷却面側因子に注 目して
大気圧 ,水 ―空気系 ミス ト冷却 の高温域熱伝達特性 に対
4),熱
2),表
3),ぬ
れ性
面粗度
す る冷去口
面材料 の熱物性
5),冷
6)の
容量
却面 の大 きさ
影響 を検討 して きた。本報
6)で
告 は,既 報
示唆 した水 ―空気系 ミス ト冷去口の高温域
熱伝達特性 の定量化 を検討 し,こ れ らを総合 した ミス ト
冷去口
特性 の整理法 について報告す る。
2.ミ ス ト冷却熱伝達特性 の模式化
Δ助
下限 界温度
10g△
rsat
図 1 ミ ス ト冷却熱伝達特性の模式化
しか し,こ の模式化 の中には,そ の後 の研究で明 らかに
なった高温域熱伝達率 と冷却面熱容量 の関係などが考慮
されてい ないことか ら,こ こでは諸因子 の影響 を考慮 し
た新 たな模式化 を検討する。
2.1 高 温域熱伝達率に及ぼす諸因子の影響
2.1.1 冷 却媒体側因子の影響
筆者 らは,高 温域 ミス ト冷去口における熱流束が,液 滴
へ の熱流東 9′と (放射熱流束 を含 む)気 流へ の熱流束
一液滴列 に関す る既存報告 をもと
9″との和 であ り,単
に,前 者が液体顕熱変化 と関連 しているとする次式 を報
5).
告 した
ρら泌 η“
み+9υ/ムLι
し=(C°
(1)
7)において ミス
ト冷却 を図 1に 示す 3 こ こで,ρ,CPは ,そ れぞれ液滴の密度および比熱であ
筆者 らは,既 報
つの領域 に分けて,そ れぞれの領域 を模式化 し,鋼 材加 り ,Cは 定数である。
工熱処理に利用可能な冷去口曲線 を予測す る方法 を示 した。 図 2は ,高 温域熱伝達率 について(1)式と既 存実験結
8).9)と
*東
を液滴流量密度 に対 して比較 して示 した もので
果
京大学生産技術研究所 第 2部
││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││
l12
生
45巻 6号 (1993.6)
産
研
究
IIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIllll
,W/m2
cJ. C't・ q「
速
HoHzontal upward―facing surface
ATsaF300K
o15xl mm
Va=20nys
C
Tl=21°
“
麟
[
[
︼
︼
〓
卜︼
月ヽ
︵
Mゝ ︶
、
ト ヘゴ
――――-1.0,81800 ▲
H Choi―Yao
―――- 1 . 0 , 4 0 9 0 0 △H
[8]
― ―一 ・0 5 , 8 1 8 0 0 ● V i
―― ―-0.5,40900 0 V
O
0
リ
ヽ
III:
es
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t
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︲
i
D
D
I:
Open symbois:Silvcr
solid symbols:SUS304
_
10
10
pCpl,k「
m3′(m2s)
図 3
mist region II:Intermediate mist region
100
/m2K
1000
高温域熱伝達率に及ぼす非定常性の影響
mist regiOn
高 温域 熱伝達率 と液滴流量密度 の関係
D(_Dmcan)=0.00057m3κm2s)
ある。 ミス ト冷却 は,ス プレー冷却 などとも呼 ばれてい
るが,本 論文 ではすべ ての液滴流量密度領域 の呼称 とし
て 「ミス ト冷去p」を用 い,図 2の 領域 Iを 「
希薄 ミ不 卜
M
遷移 ミス ト域」,領 域 Ⅲを 「
濃厚 ミス ト
域」,領 域 Iを 「
日
■ 鮒
2鍔
粂
鶴 :I似 ぢ 冤T譲
へ
つい
の
ては
に
成立す ることは, 液 滴群
熱流束 9 ′
,衝
突液滴 同士 の干渉が無視 で きることと, サ ブクール液滴
か らの顕熱移動が支配的であることを意味 している。一
詳朝
と
△スat=300K
+20%
-20%`
長
受
ヽ
ミ
11♂
o
f
O
_竃 』 覗 恣7υ
:11戦
減
9).1°
)を見 る と
い
い
の
が
慮 されて な
,こ れ ら
,従 来 報告
いる.こ
の因子 も影響 を及ぼす と考 えられて
れ らを考慮
nと
した整理式 は多 くの場合 9ω∝ Djttmシ
場 書 けるが,
Ohkubo and Nishio[61
:‖
shoji
tlol
`
与
a。
Y と品 ざ
輌
[町■§
\
_1
□ Ito ct al.[91
V:VCracJ surね ce,cJ V:騨 !輩::生 __
`
月k'薬
鴫 轟3∞d055
ll4lW(m2K)
ず
0°
図
4
101
dil■enslon , min
102
高温域熱伝達率 に及ぼす冷却面寸法 の影響
報告者 によ りmゃ nの 符号 自体す ら食 い違 ってお り, れ までの研究で明 らかになっている。図 3は ,水 平 上向
11)の 一
また庄司 ら
単 液滴列 の実験 によるとj■ 1で あ り, き 平面系 において高温域熱伝達率 に及ぼす非定常性の影
と考 えられる.こ れ らのことか ら, 響 を示 した ものであるが,図 か ら明 らかなように,冷 去ロ
は二次的因子
ぁ, ら
は
本研究で ,液 滴流量密度以外 の冷却媒体側因子 の影響 面 熱容量の大 きさにより,そ の影響が顕著な非定常域 と
その影響が無視 で きる準定常域 の二領域 に分 けられ る.
を二次的因子 として無視 してい る.
また,液 滴温度 については,筆 者 らが これまでの研究 図 4は ,液 滴群 による伝熱 に基づ く熱伝達率 と冷却面寸
で使用 して きた三流体 ノズルの場合,乾 き空気で水 の微 法 の関係 を示 した ものであ り,こ の影響が従来 の研究に
粒化 を行 っていることか ら,衝 突直前 の液滴温度 はノズ お いて同一液滴流量密度で も測定値 に大 きな分散がみ ら
2). れ
ル入 口部 での液温 と異な り,室 温 に近 い温度 になる
た原 因の一つであると考 えられる。図中には,熱 伝達
の上
は室温
とし
では
したが って,本 研究
限値 と下限値の 目安 を併記 した。上限値 としては,
,液 滴温 率
,液 滴温度
=
1
0
m
m お よび1 5 m m の 条件 での値 に有為 な差異がみ
い.
グ
度 の影響 も考慮 しな
2.1.2 被冷却物体側因子の影響
物体側 因子 は,
高温域熱伝 達率 に影響 を及 ぼす被 冷去口
られなかったことを考慮 して両条件での測定値の平均値
を
示 した。 また,下 限値 と しては,再 衝 突液滴 の影響 の
鉛直平面系 で は冷却面材料 の熱伝 導性 であ り,水 平 上向 な い条件 として ,後 述す る鉛 直平面系 での整理 式 か ら求
6)で
示 した空気 噴流 に よ
き平面系 で は非定常性 お よび冷却面寸法 であ るこ とが こ め られ る高温域熱伝達率 と既報
││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││lllll
480
研
究
45巻
速
生 産 研
6号 (1993.6)
報
る伝熱に基づ く熱伝達率との差として求めた し を示し
HOr120ntal upward―
Facing surface
た。
D ll.0000524‐0 000706nllノ
12s〕
(口
2.1.3 高 温域熱伝達特性の評価
106
高温域熱伝達特性 に関する冷却面側因子の影響 を考慮
した整理式 は,筆 者 らの提案 した式 を除いては見受 けら
の高温域熱伝達
れない ことか ら,水 ―空気系 ミス ト冷去日
特性 の定量化 のためには,筆 者 らの式 を用 いるのが現段
げ
階では適切 であると考 える.
2)に い
お て鉛直平面系 に適用で きる整
筆者 らは,既 報
馨菅二菖 [先 霙興T晃 興モF皇 誤層Υ警1つ 垣言芳鼻m
で一致す ることを示 している。
し
究
d=15‐185mm
△ ‐‐‐‐‐‐‐ H〈x)gcndmrn
att Hom
▲ ―― ―
〔
摯
1105
Ishigal
o ― ― ― ―Y a o
and
◇ ―― 一
Cl
:lo
ct
al
Choi
al
O― ――――-Ohku収 )and
Nishio
。 一 ― ―― IShigai ct al
l。
4
O
―― I t t l
一
。 一――
101
=2.28× 105(1+2.77×10 4αω-0586)
1/3
(2)
× ⊇z』06.ムηα
′
Ct
J
。鳳 u t x l a n d ,/
Nishio
Lin""
: cal
Symbols: data
102
△T s a t , K
103
1。7
また,水 平 上 向 き平面系 で は非定常性 の影響が顕著 に
表 れ る こ とか ら,準 定常域 と非定常域 の二領域 に分 けて
整理 を行 い,準 定常域 に関 して は次式 を提案 して い る.
6
51°
多
15。
「:£.メ
30
プ
■
△
■
″
嚇
“
′
デ I 摺0 %十
りε
「ill段
∴
ど
iλ
」
J〕
子
}71+t
ン ∫
り
≦D'(4)
:D″解η
05+み
°7.△
=1.51× 107.√055.D″″η
亀 ι
″
:D″″″>D'(5)
Nishio
1。4
ここで ,D'=0.0006m3/(m2s)で ぁ る。
図 5(a),(b)は
,(4),(5)式と水 平 上向 き平面系で の既存
1の
実験値 とを併記 して比較 した ものであ る .測 定値 に
よって過熱度依存性 に関するば らつ きがあるものの,こ
図
101
Symbols
102
1。
△Tsat,IK
: data
3
51a)lb)高温域熱流束の測定値と計算値との対応
場 合 獄 範 と帳 値 と研 廂 ま餅 で
=司
d勇
]=卜 71Flsteグ
ここで提案 した整理式 は,こ れまで定量的訂
鼻屁桑寒曹i ' グ
°5+場
・
ムηα
108。
15 °55。
D″“″
)
ι
か った既存測定値のばらつ きを評価 し得 るものであると
=B(1.4×
≦D'
:Dz“ η
考える。
また 「
濃厚 ミス ト域」については,今 後 の研究課題 と を []=
55.D″ 7.ム
°5+万
107.15 °
して残 されているが, この領域 では液滴同士 の干渉 の度
B(1.51×
"′
■α
ι
υ
: D ″ “″> D '
合が増 加する ことか ら,(3)∼(5)式は熱伝達率 を高めに見
積 ることが予測 される。 この領域 における高温域の測定
値 は,こ れ までの研究ではあまり見受けられず今後 の研
究課題であるが,整 理式としては,Dの 指数をさらに
低 くす る必要があろ う。また,過 熱度依存性 の評価 につ
いて も今後の課題であると考 える。
,ゝ
Lこ
で'D'=0.0006m3/(m2s)
B=-1.33× 10
103(ρ
のが+2.88×
らのプ
4(ρ-2(ρら
10
+3.07×10
1
(6)
ら のω
+2.98×
=15]は ,冷 却面直径 グ=15mm
ただ し,々 [Steady,グ
の
での
熱伝達率である.ま た,定 常域 と
非定常域に関しては,冷 去口
面の熱容量を考慮 した次の の 場合 準定常域
高温域熱伝達率 の整理式 を提案する.
と( 6 ) 式
が等 しくなる時の
非定常域の境界 は( 3 ) ∼
(5)式
0 ら のりを求めることによって得られる.
45巻 6号 (1993.6)
生
産 研
481
究
│ │ │ l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l│l│l│l│l│l │l │l l l l l l l ll lllll lll llll l l l l研l l l l l l l 1 1速1 1報 1 1 1 1 1 1 1 1 1
2 / ムつ
p = [ n { 9 ν∽Ъ″/ 0 . 9 )9 ]ε/ 1 n (T△
り]
n=gν (ムτ紛/ムηノ
0 0 0 0
遷移域熱伝達特性 :
△7L=0.35△ 7レ +35
=nム ■α
′
9ωι
以上 の整理式 を用 いて予測 され る冷却 曲線 と既存測定
値 との対応 を図 6に 示す。予測値 は測 定値 よ りも冷却 時
間が長 くなる傾 向 を示すが ,こ の傾 向 は,高 温域 の熱流
束 の予測値力潮I定値 よ りも若干低 い こ とに起 因す る.た
だ し,こ れ までの研 究 で は熱伝達特性 の定量化 が十分 で
‐
0
なか った こ とを考慮 した場合 ,熱 伝達特性 のわずか な差
2
4
6
8
■ , sec
10
12
が累積す る冷却 曲線 の予測結果 として は,お おむね傾 向
を把握 して い る もの と思 われ る。
図 6 冷 却 曲線 の測 定値 と計 算値 との対 応
3.お
2.2 冷 却曲線
図 1に 示 した熱伝達特性 の模式化 に基づいて冷却曲線
を計算するためには,高 温域熱伝達率 の他 に高温域下限
界温度,限 界熱流東 および遷移域熱伝達特性 を評価す る
必要が ある.こ れ らの中で,高 温域下 限界温度 Taィの
7)でD=ら
評価法 については,既 報
″ とした場合の整
13)で
は
示 した
理式 を提案 してお り,既 存測定値 ,前 報
ように計算値 と+30%,-15%程
度 の分散で一致 してい
る.
また,限 界熱流東 および遷移域熱伝達特性 に関 しては,
現段階ではこれ らの模式化 を定量的に行 えるだけの研究
成果が得 られてい ない もの と理解 している.し か し,こ
れ らの領域 は冷却曲線でみれば急冷過程 にあることか ら,
冷却時間全体 に及 ぼす影響 はあ ま り大 き くない。 した
6)で
が って,こ こでは既報
提案 した整理式 に基 づ く次式
を提案する.
限界熱流東 :
84)×
=(0.332・●らのが °
″
9″
9ε
9c=11.3×106.(ρ
らのが
″≦2'
(つ
:D″ >2'
″
:2場
174D″ 33
が
(8)
ここで ,2'は
両式 を等 しくした場合 の値 とす る。
わ
り
に
筆者 らの これ まで の研 究 に基づ き, ミ ス ト冷却特性 の
整理 を行 った。本研 究 で提案 した諸式 は,現 段 階で は最
も多 くの影響 因子 を取 り込 んだ もので あ るが ,適 用範囲
には限界が あ り,今 後 の研 究 に よって さ らに適用範 囲 を
広 げ て行 く必要 があ る。
(1993年
3月 10日受理)
参 考 文 献
1)S NishiO and H Ohkubo,Heat and Mass Transfer in
Materials PrOcessing(Edited ly I Tanasawa and N
Lior),(1992),477,Hemisphere Pub Co
2)大 久保 ・西尾,機 論,54501,B(1988),1163
3)大 久保 ・西尾,機 論,54-500,B(1988),934
4)大 久保 ・西尾,機 論,55517,B(1989),2846
5)大 久保 ・西尾,機 論,57539,B(1991),2349
6)大 久保 ・西尾,生 産研究,4311(1991),576
7)大 久保 ・西尾,機 講論,89063(1989),93
8)K J Choiand S C Yao,Int J Heat Mass Transf,
1987),311
30-2〈
伊 藤猛 宏 ほか 2名 ,機 論 ,55511,B〈 1989),805
庄 司 正 弘,第 15回 日本伝 熱 シ ンポ ジ ウ ム講 演 論 文 集 ,
(1978),187
庄 司正 弘 ほか 2名 ,機 論,50-451,B(1984),716
H Ohkubo and S Nishio, Proceedings of lst lntern
Conf on Transport Phenomena in PrOcessing,(1992),
663
13)大 久保 ・西尾,生 産研究,456(1993),掲
載予定.
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