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間テクスト性に着目して, 表現主体の背景を想定することの意義 The

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間テクスト性に着目して, 表現主体の背景を想定することの意義 The
比治山大学紀要,第 21 号,2014
Bul. Hijiyama Univ. No.21, 2014
131
間テクスト性に着目して,
表現主体の背景を想定することの意義
―説明的文章の読みの指導に焦点をあてて―
The Significance of Assuming the Background of the
Writer by Paying Attention to Intertextuality
Focusing on Descriptive Text Reading Instruction
青 山 之 典
Yukinori AOYAMA
〈要旨〉間テクスト性の考え方をもとにすれば,あるテクストにはそれ以前のテクストが潜在していると考えるこ
とができる。そして,その潜在のさせ方には表現主体の意図が反映し,その意図を解釈するには,表現主体の背景(状
況・立場・価値観)が手がかりになると考えられる。本研究では,特に教科書教材に焦点をあてて検討し,間テク
スト性に着目して,表現主体の背景を想定することの意義について論ずる。
1.問題意識
体の意図を対象とした授業を構想するとき,指導者は
学習指導要領における「読むこと」の内容を概観す
学習者がテクストに潜在する表現主体の意図をとらえ
ると表現主体の意図を対象としていることが窺える。
るための手だてを考えておく必要があると考えられ
しかし,テクストに潜在している表現主体の意図を解
る。
釈するとき,対象となるテクストだけでは十分な手が
かりを得ることができない場合がある。
しかし,教科書教材の場合,指導者が間テクスト性
に着目してテクストに潜在する表現主体の意図を解釈
間瀬(2001)は,間テクスト性に注目し,複数の説
すること自体も容易なことではない。なぜなら,教科
明的文章教材を使った説明的文章の指導論を構想して
書教材は様々な背景をもった表現主体群(筆者および
いる。この中で,間瀬はある一つの説明的文章が自身
教科書編集者)の共同作業で創造されたものであり,
の中にすでに他のテクストとの関連性を内包している
表現主体の意図も複雑な構造体としてテクストに潜在
ことを指摘している。
しているからである。教材分析のとき,指導者の手元
論者(青山)は特に,対象となるテクストと,それ
に,表現主体の背景に関わる基礎資料があったなら,
を表現した主体によって著された他のテクスト群との
表現主体の意図を解釈する助けになるのではないかと
間に存在する間テクスト性に注目した。そのような間
考える。したがって,研究者には,表現主体の背景に
テクスト性に注目することで,表現主体の背景が浮き
関わる基礎資料の作成が求められていると考える。
彫りになると考えられる。そして,テクストに潜在す
る表現主体の意図を解釈するときの手がかりになると
考えられる。
2.基礎資料作成の試み
ここまでに示した問題意識に基づき,論者は,試み
さて,我が国ではほとんどの場合,国語科教科書所
に小学校国語科教科書教材の一つ(「どうぶつの赤ちゃ
収の説明的文章が教材として使用されている。表現主
ん」増井光子,光村図書1年)について,間テクスト
青 山 之 典
132
性に焦点をあて調査検討を行い,基礎資料の作成を
行った。
ちなみに,この説明的文章は初出の時点では,ライ
オン,シマウマ,カンガルーの事例を取り上げて,動
ちなみに「どうぶつの赤ちゃん」は初出当時から注
物の赤ちゃんの誕生と成長の様子を説明している。第
目された教材であった。西郷(1981),小田(1986),
1事例であるライオンは肉食動物の事例,第2事例で
森田(1988)によって,比較的早い時期からその文章
あるシマウマは草食動物の事例,第3事例であるカン
の良質さが評価され,教材研究の対象となった。
ガルーは有袋類の事例である。有袋類は哺乳類の少数
その多くが「どうぶつの赤ちゃん」という一つのテ
派であり,これを取り上げることで,子どもの興味を
クストに焦点をあてた研究をしている。例えば,植山
引くとともに,分類上より多くの動物を取り上げるこ
(2011)は類比・反復表現に焦点をあて,「どうぶつの
とを目指したものと考えられる。
赤ちゃん」の詳細な分析を示している。本研究では,
「ど
再構成の多くが事例を対象としたものであるが,そ
うぶつの赤ちゃん」のコンテクストに注目している点
のうち特に大きな変更は「カンガルー」の事例に関す
がそれらの研究とは異なっている点を確認しておきた
るものであった。
い。
その実態を【表1】に示す。
また,河野(2006)は「〈対話〉による構成活動」
最も特徴的な変更は,1992年にカンガルーの事例が
に関する臨床的研究の題材として取りあげるととも
全て削除され,2011年に再び登場したことである。こ
に,学習者の視点が組み込まれる工夫がなされている
れは,肉食動物と草食動物の対比関係を明確にする効
教材として評価している。この研究の場合,動物の赤
果を生んでいると考えられるが,有袋類の事例を削除
ちゃんに関する情報群というコンテクストを活用した
したことで,動物の多様性について伝わりにくくなっ
学習が組織されており,本研究と似ている。しかし,
ていると考えられる。
本研究では「どうぶつの赤ちゃん」の筆者に焦点をあ
また,カンガルーの事例が姿を消している時期の前
て,表現主体の背景を示すコンテクストに注目してい
後を比較してみると,先の時期にはあった「うじ虫」
る点が河野(2006)とは異なっていることを確認して
という表現がなくなっている。
おく。
この「うじ虫」という表現を巡って変遷を追ってみ
さて,本研究では,間テクスト性に焦点をあてた基
ると,1983年まではカンガルーの赤ちゃんを「まるで
礎資料作成の過程を具体的に示しながら,作成した基
うじ虫みたい」と表現し,1986年からは「たいへん小
礎資料を示すとともに,基礎資料を活用した場合の展
さくて,うじ虫ぐらい」と表現している。前者が大き
望について論じる。検討にあたって,まず,基礎資料
さと様子を表しているのに対して,後者は大きさのみ
作成のための観点を次に示しておく。
を表していると考えられる。さらに,カンガルーの事
例が削除・復活した後には,「一円玉ぐらいのおもさ」
A)教科書における「どうぶつの赤ちゃん」本文の変遷
実態
B)教科書における「どうぶつの赤ちゃん」の位置づけ
の変遷実態(学年,該当学年の教科書を構成する
教材群,学習のめあて,学習のてびき)
C)学習指導要領改訂との関連
D)
「どうぶつの赤ちゃん」の原典(増井の著作群,参
考文献群)との関連
と表現されている。視覚に訴える要素が次第に削られ
ていると考えられる。
4.教科書における「どうぶつの赤ちゃん」の位置づけ
の変遷実態
(1)配当学年
初出から一貫して1年下に配当。
(2)該当学年の教科書を構成する教材群
3.教科書における「どうぶつの赤ちゃん」本文の変遷
実態
「どうぶつの赤ちゃん」は初出が1980年版であり,
「どうぶつの赤ちゃん」を所収している1年教科書
には,【表2】のような所収教材の変遷が見られる。
なお,教科書改訂時に新しく登場した教材は太ゴ
2015年版までの10回の教科書改訂のうち6回,テクス
シック体で表し,改訂で姿を消した教材は 次削 とい
トの再構成が行われている。
う記号をつけて示すことにする。
間テクスト性に着目して,表現主体の背景を想定することの意義
133
【表1 カンガルーの事例の変遷(1980∼2015)】
カンガルーの事例
カンガルーの赤ちゃんは,生まれたときは,おやゆびぐらいの大きさしかありません。まるでうじ虫みたいです。
一
九
八
〇
まだ,目や耳もついていません。はっきりわかるのは,口とまえ足だけです。
それでも,この小さな赤ちゃんは,小さなまえ足で,おかあさんのおなかにはい上がっていきます。そして,じ
ぶんの力でおなかのふくろに入ります。カンガルーの赤ちゃんは,小さくても,おかあさんのおなかのふくろが
あるからあんしんなのです。
カンガルーの赤ちゃんは,ふくろの中で,おかあさんのおちちをのんで大きくなります。そうして,六か月ほど
たつと,ふくろのそとに出て,じぶんでくさもたべるようになります。
カンガルーの赤ちゃんは,生まれたときは,とても小さくて,まるでうじ虫みたいです。目や耳もどこにあるのか,
まだよくわかりません。はっきりわかるのは,口とまえ足だけです。
一
九
八
三
それでも,この小さな赤ちゃんは,小さなまえ足で,おかあさんのおなかにはい上がっていきます。そして,じ
ぶんの力でおなかのふくろに入ります。カンガルーの赤ちゃんは,小さくても,おかあさんのおなかのふくろが
あるからあんしんなのです。
カンガルーの赤ちゃんは,ふくろの中で,おかあさんのおちちをのんで大きくなります。そうして,六か月ほど
たつと,ふくろのそとに出て,じぶんでくさもたべるようになります。
カンガルーの赤ちゃんは,生まれたときは,たいへん小さくて,うじ虫ぐらいです。目や耳もどこにあるのか,
一
九
八
六
まだよくわかりません。はっきりわかるのは,口とまえ足だけです。
それでも,この小さな赤ちゃんは,小さなまえ足で,おかあさんのおなかにはい上がっていきます。そして,じ
ぶんの力でおなかのふくろにはいります。カンガルーの赤ちゃんは,小さくても,おかあさんのおなかのふくろ
にまもられてあんぜんなのです。
カンガルーの赤ちゃんは,ふくろの中で,おかあさんのおちちをのんで大きくなります。そうして,六か月ほど
たつと,ふくろのそとにでて,じぶんでくさもたべるようになります。
一
九
九
二
【カンガルーの事例が全て削除された。】
カンガルーの赤ちゃんは,生まれたときは,たいへん小さくて,一円玉ぐらいのおもさです。目や耳もどこにあ
るのか,まだよくわかりません。はっきりわかるのは,口とまえあしだけです。
二
〇
一
一
それでも,この小さな赤ちゃんは,小さなまえあしで,おかあさんのおなかにはい上がっていきます。そして,
じぶんの力で,おなかのふくろにはいります。カンガルーの赤ちゃんは,小さくても,おかあさんのおなかのふ
くろにまもられてあんぜんなのです。
カンガルーの赤ちゃんは,ふくろの中で,おかあさんのおちちをのんで大きくなります。そうして,六か月ほど
たつと,ふくろのそとに出て,じぶんで草もたべるようになります。
【学習の手引きの後に,付録として再掲載された。】
【表2】から窺えるように,改訂のたびに多くの教
の赤ちゃん」にとっても大きな転換点であった。教科
材が入れ替えられている状況下で,
「どうぶつの赤ちゃ
書編集者の何らかの意図がこのような大きな変更の原
ん」は所収され続けている。そして,1980年から2015
動力となっていることが推察される。
年まで「どうぶつの赤ちゃん」は終末部分に設定され
ており,この教材が光村図書小学校国語科1年教科書
において,説明的文章読解の到達水準を示す重要教材
として位置づけられていると推察される。
また,教材の入れ替え実態に焦点をあてると,1992
年に大幅な入れ替えが行われている。1992年はカンガ
ルーの事例の全削除が行われた年であり,「どうぶつ
青 山 之 典
134
【表2 光村図書国語科教科書1年所収教材の変遷(1980∼2015)】
上巻
はしれ はしれ
ともだち
次削
次削
わたしと ぼく
はなの みち︵おか のぶこ︶
せんせい あのね
しっぽの やくめ︵かわた けん︶
あそんだ ときの こと
おさるが ふねを かきました
︵まど・みちお︶ 次削
おおきな かぶ︵さいごう たけひこ︶
えと さくぶん
おむすび ころりん
︵一︶
えと かんじ
︵二︶
かずと かんじ
︵一︶
じどう車くらべ
︵二︶
でん車ごっこを しましょう 次削
一九八三
上巻
なかよしの き 次削
ともだち
わたしと ぼく
はなの みち
︵おか のぶこ︶
せんせい あのね
しっぽの やくめ
︵かわた けん︶
あそんだ ときの こと
おさるが ふねを かきました
︵まど・みちお︶
おおきな かぶ
︵さいごう たけひこ︶
えと さくぶん
おむすび ころりん
︵一︶
えと かんじ
︵二︶
かずと かんじ
︵一︶
じどう車くらべ
︵二︶
でん車ごっこを しましょう
下巻
くじらぐも︵なかがわ りえこ︶
ころちん
しゃぼんだま
ものの 名まえ
たぬきの 糸車︵きし なみ︶
きのうの こと
チックとタック︵ちば しょうぞう︶次削
どうぶつの 赤ちゃん︵ますい みつこ︶
うちの 人の こと
︵一︶
花 いっぱいに なあれ
︵まつたに みよこ︶
︵二︶
ほかの ふうせんは
一九八〇
下巻
くじらぐも
︵なかがわ りえこ︶
ころちん
しゃぼんだま
ものの 名まえ
たぬきの 糸車
︵きし なみ︶
きのうの こと
チックとタック
︵ちば しょうぞう︶
どうぶつの 赤ちゃん
︵ますい みつこ︶
うちの 人の こと
︵一︶
花 いっぱいに なあれ
︵まつたに みよこ︶
︵二︶
ほかの ふうせんは
一九八六
一九八九
上巻
上巻
はしれ はしれ
うみ 次削
次削
あかるい おひさま︵くどう なおこ︶
あかるい おひさま︵くどう なおこ︶次削
さるが くる︵ごみ たろう︶
さるが くる︵ごみ たろう︶次削
はなの みち︵おか のぶこ︶
はなの みち︵おか のぶこ︶
おはようって いいな︵なかがわ りえこ︶ おはようって いいな︵なかがわ りえこ︶
次削
せんせい あのね
しっぽの やくめ︵かわた けん︶
えばなし
︵たむら しげる︶次削
あそんだ ときの こと
せんせい あのね
あいうえお・ん︵つるみ まさお︶
しっぽの やくめ︵かわた けん︶ 次削
おおきな かぶ︵さいごう たけひこ︶
あそんだ ときの こと 次削
えと さくぶん
あいうえお・ん︵つるみ まさお︶ 次削
おむすび ころりん
おおきな かぶ︵さいごう たけひこ︶
しょういちろう︶
えと さくぶん 次削
︵
かみ おむすび ころりん
︵かみ しょういちろう︶
︵一︶えと かんじ
えと かんじ
︵二︶かずと かんじ
かずと かんじ
じどう車くらべ
じどう車くらべ
下巻
下巻
くじらぐも︵なかがわ りえこ︶
くじらぐも︵なかがわ りえこ︶
︿しの ひろば﹀
︿しの ひろば﹀ 次削
ものの 名まえ
ものの 名まえ
きのうの こと
きのうの こと 次削
たぬきの 糸車︵きし なみ︶
︵きし なみ︶
花 いっぱいに なあれ︵まつたに みよこ︶ たぬきの 糸車
花 いっぱいに なあれ
︵まつたに みよこ︶次削
どうぶつの 赤ちゃん︵ますい みつこ︶
どうぶつの 赤ちゃん︵ますい みつこ︶
いちばん かきたい こと
いちばん かきたい こと 次削
︵一︶ぼく、にげちゃうよ
︵一︶ぼく、にげちゃうよ
︵マーガレット=ブラウン 作、
︵マーガレット=ブラウン 作、
いわた みみ やく︶
いわた みみ やく︶ 次削
︵二︶うさぎの おや子
︵二︶うさぎの おや子 次削
135
間テクスト性に着目して,表現主体の背景を想定することの意義
一九九二
上巻
はるの あさ
︵くどう なおこ︶ 次削
うたに あわせて あいうえお
なおこ︶
︵
くどう ぶらんこ
︵もりやま みやこ︶
おはなし きいて
はなの みち
︵おか のぶこ︶
おはようって いい きもち
としこ︶ 次削
︵
かんざわ みつけた みつけた 次削
なぞなぞあそび 次削
せんせい あのね
おむすび ころりん︵はそべ ただし︶
こんな ことを したよ 次削
どうぶつの あし
︵むらた こういち︶
おおきな かぶ
︵さいごう たけひこ︶
こんな さくぶんを かいたよ 次削
小さな ねこ
︵いしい ももこ︶ 次削
えと かんじ
おにごっこを したこと 次削
かずと かんじ
じどう車くらべ
ずうっと、ずっと、大すきだよ︵ハンス=ウィル
下巻
くじらぐも
︵なかがわ りえこ︶
かたかな
ものあてゲーム 次削
ものの名まえ
こうえんに いった ときの こと 次削
ヘルムさく、
ひさやまたいちやく︶
たぬきの 糸車
︵きし なみ︶
かたかな
しのひろば 次削
どうぶつの 赤ちゃん
︵ますい みつこ︶
日づけと よう日
たのしかった こと 次削
きりかぶの 赤ちゃん
︵まど・みちお︶
おはなしを かんがえよう 次削
一九九六
上巻
みつけた みつけた 次削
うたに あわせて あいうえお
みんなで あいさつ 次削
ぶらんこ︵もりやま みやこ︶
はなの みち︵おか のぶこ︶
おはなし きいて
すきなもの、おしえて
だれに あえるかな︵くどう なおこ︶次削
とりと なかよし︵かなお けいこ︶
せんせい あのね 次削
おむすび ころりん︵はそべ ただし︶
はなが さいたよ
大きな かぶ︵さいごう たけひこ︶
えと かんじ
かずと かんじ
じどう車くらべ
かいて くらべよう
二〇〇〇
上巻
いきたいね 次削
うたに あわせて あいうえお
げんきに あいさつ 次削
ぶらんこ︵もりやま みやこ︶次削
はなの みち︵おか のぶこ︶
おはなし きいて 次削
次削
すきなもの、おしえて
かえるの かくれんぼ︵くどう なおこ︶ 次削
とりと なかよし︵かなお けいこ︶次削
たのしみです 次削
おむすび ころりん︵はそべ ただし︶
はなが さいたよ 次削
大きな かぶ︵さいごう たけひこ︶
えと かんじ
かずと かんじ
じどう車くらべ
かいて くらべよう 次削
下巻
下巻
くじらぐも︵なかがわ りえこ︶
くじらぐも︵なかがわ りえこ︶
かたかな
かたかな
日づけと よう日
日づけと よう日
わたしが つくった カレンダー
わたしが つくった カレンダー
おとあてゲーム 次削
ものの 名まえ
次削
ものの 名まえ
おとあてゲーム
ずうっと、ずっと、大すきだよ︵ハンス=ウィル ふうせんは、どう なるのかな 次削
ずうっと、
ずっと、
大すきだよ︵ハンス=ウィル
ヘルムさく、ひさやまたいちやく︶
ヘルムさく、ひさやまたいちやく︶
カルタづくり
カルタづくり 次削
たぬきの 糸車︵きし なみ︶
どうぶつの 赤ちゃん︵ますい みつこ︶
わたしの たからもの
かたかな ︵ 次
削
二つから一つへ︶
ふうせんは、どうなるのかな
わたしの たからもの
どうぶつの 赤ちゃん︵ますい みつこ︶
アルバムを つくろう
かたかな
かん字ずかん 次削
アルバムを つくろう
たぬきの 糸車︵きし なみ︶
かん字ずかん
うごかそう 次削
きりかぶの 赤ちゃん︵まど・みちお︶次削 にんぎょうを あるけ あるけ︵つるみ まさお︶
たのしい おはなしを つくろう 次削
二〇〇二
上巻
あそびに きてね 次削
おはなし よんで
どうぞ よろしく
うたに あわせて あいうえお
たんけんしたよ、みつけたよ
かきと かぎ
ともだち︵まど・みちお︶
ことばで あそぼう 次削
はなの みち
︵おか のぶこ︶
ねこと ねっこ
あいうえおの うた︵なかがわ ひろたか︶次削
ことばを いれて ぶんを つくろう
おばさんと おばあさん
だれだか わかるかな
︵いまもり みつひこ︶次削
はをへを つかって かこう
おもちやと おもちゃ
おむすび ころりん︵はそべ ただし︶
こんな ほんを みつけたよ 次削
てがみを かこう
大きな かぶ
︵さいごう たけひこ︶
かずと かんじ
わたしは、
なんでしょう
ことばで あそぼう 次削
じどう車くらべ
ずうっと、ずっと、
大すきだよ︵ハンス=ウィル
下巻
くじらぐも
︵なかがわ りえこ︶
かんじの はなし
ぼくんちの ゴリ︵かさの ゆういち︶次削
よく 見て かこう 次削
かたかな
ヘルムさく、
ひさやまたいちやく︶
あるけ あるけ︵つるみ まさお︶ 次削
日づけと よう日
わたしが つくった カレンダー 次削
かるたづくり 次削
おみせやさんごっこを しよう
かたかなの かたち
わたしの たからもの
どうぶつの 赤ちゃん
︵ますい みつこ︶
なかまの かん字 次削
アルバムを つくろう 次削
たぬきの 糸車︵きし なみ︶
青 山 之 典
136
あいうえおで
二〇〇五
あそぼう︵なかがわ ひろたか︶
上巻
はる
おはなし よんで
どうぞ よろしく
うたに あわせて あいうえお
たんけんしたよ、
みつけたよ 次削
かきと かぎ 次削
ともだち
︵まど・みちお︶次削
ねこと ねっこ 次削
はなの みち
︵おか のぶこ︶
ことばを いれて、
ぶんを つくろう 次削
おばさんと おばあさん 次削
いろいろな くちばし︵むらた こういち︶次削
はをへを つかって かこう 次削
おもちやと おもちゃ 次削
おむすび ころりん
︵はそべ ただし︶
すきな もの、
おしえて 次削
ほんと なかよし 次削
てがみを かこう 次削
みんなに しらせたい こと 次削
大きな かぶ
︵さいごう たけひこ︶
かずと かんじ
じどう車くらべ
ずうっと、ずっと、大すきだよ︵ハンス=ウィル
下巻
くじらぐも
︵なかがわ りえこ︶
かんじの はなし
しらせたいな、
見せたいな
かたかな 次削
ヘルムさく、
ひさやまたいちやく︶
日づけと よう日
あつまれ ふゆの ことば
あめふり くまの こ
︵つるみ まさお︶次削
ものの 名まえ︵二〇〇〇年に同名教材︶
おみせやさんごっこを しよう
かたかなの かたち
わたしは、
なんでしょう 次削
どうぶつの 赤ちゃん
︵ますい みつこ︶
にている かん字 次削
いいこと いっぱい、
一年生
たぬきの 糸車
︵きし なみ︶
二〇一一
いい りょうし
︵いなだ かずこ、
つつい えつこ︶
だっての おばあさん
︵さの ようこ︶
二〇一五
おおきく なった
おむすび ころりん︵はそべ ただし︶
たからものを おしえよう
はをへを つかおう
すきなこと、なあに
おおきな かぶ︵さいごう たけひこ︶
ほんは ともだち
こんな ことを したよ
いちねんせいの うた︵なかがわ りえこ︶
なつやすみの ことを はなそう
ひらがな あつまれ
ゆうやけ︵もりやま みやこ︶
かたかなを みつけよう
うみの かくれんぼ
かずと かんじ
いる かん字 ︵二〇〇五年に同名教材︶
だって だっての おばあさん︵さの ようこ︶
いい こと いっぱい、
一年生
にて
上巻
上巻
下巻
はる 次削
あさ
くじらぐも
︵なかがわ りえこ︶
あかるい こえで 次削
さ
あ
は
じ
め
よ
う
し
ら
せ
た
い
な
、見せたいな
どうぞ よろしく
おはなし よんで 次削
なんて いおうかな
まちがいを なおそう
うたに あわせて あいうえお
ど
ん
な
お
は
な
し
か
な
かん字の はなし
ふたりで おはなし 次削
どうぞ よろしく
ことばを 見つけよう
あかい とり ことり
︵きたはら はくしゅう︶次削
はなの みち︵おか のぶこ︶
こえの おおきさ、どう するの
じどう車くらべ
わけを はなそう
う
た
に
あ
わ
せ
て
あ
い
う
え
お
かたかなを かこう
なぞなぞあそび 次削
つくろう
まの いい りょうし︵いなだ かずこ・
あいうえおで あそぼう︵なかがわ ひろたか︶ ことばを くちばし
︵むらた こういち︶
えを みて はなそう
つつい えつこ︶
なんて いったら いいのかな 次削
かきと かぎ ︵
むかしばなしが いっぱい
おさるが ふねを かきました︵まど・みちお︶次削
二〇〇五年に同名教材︶
あさの おひさま︵かんざわ としこ︶
ともだちに きいてみよう
こんな いしを みつけたよ 次削
おむすび ころりん︵はそべ ただし︶
はなの みち︵おか のぶこ︶
日づけと よう日
はをへをつかおう
ぶんをつくろう
本を えらんで よもう
すきなもの、なあに 次削
ねことねっこ ︵
ずうっと、ずっと、
大すきだよ︵ハンス=ウィル
おおきな かぶ︵さいごう たけひこ︶
二〇〇五年に同名教材︶
ほんは ともだち
わけを はなそう
ヘルムさく、ひさやまたいちやく︶
かけるように なった 次削
︵かわさき ひろし︶
おばさんと おばあさん︵二〇〇五年に同名教材︶ てんとうむし
ひらがな あつまれ
ものの 名まえ
いちねんせいの うた︵なかがわ りえこ︶ くちばし︵むらた こういち︶
ゆうだち
︵もりやま みやこ︶次削
おもちやとおもちゃ︵二〇〇五年に同名教材︶ かたかなの かたち
おはなし きいて 次削
てがみで しらせよう
おもいだして はなそう
かずと かんじ
みいつけた 次削
︵きし なみ︶
あいうえおで あそぼう
︵なかがわ ひろたか︶ たぬきの糸車
かたかなを みつけよう
ことばを たのしもう
かんじの はなし
これは、なんでしょう
どうぶつの 赤ちゃん︵ますい みつこ︶
下巻
くじらぐも︵なかがわ りえこ︶
しらせたいな、見せたいな
ことばであそぼう ︵二〇〇二年に同名教材︶ 次削
まの
じどう車くらべ
ずうっと、ずっと、大すきだよ︵ハンス=ウィルヘルム
むかしばなしが いっぱい
日づけとよう日
あつまれ、ふゆのことば 次削
だって
さく、
ひさやまたいちやく︶
てんとうむし︵かわさき ひろし︶
ものの 名まえ
おみせやさんごっこを しよう 次削
かたかなの かたち
たぬきの糸車︵きし なみ︶
これは、
なんでしょう
どうぶつの 赤ちゃん︵ますい みつこ︶
いい こと いっぱい、一年生
間テクスト性に着目して,表現主体の背景を想定することの意義
(3)「どうぶつの赤ちゃん」の学習のめあておよび学
習のてびきの変遷実態
教科書編集者の意図が窺えるものに,教科書に示さ
137
なお,教科書改訂時に新しく登場した部分は太ゴシッ
ク体で表している。
「学習のめあて」の変遷をたどると,1980年から
れた「学習のめあて」と「学習のてびき」がある。以
1992年までは「はじめてわかったことは」であり,
下に,「どうぶつの赤ちゃん」における両者を一覧に
1996年から2015年までは「ちがいをかんがえてよもう」
して示し,教科書編集者の意図について検討したい。
となっている。両者の違いは大きい。「学習のめあて」
【表3 「どうぶつの赤ちゃん」の学習のめあておよび学習のてびきの変遷(1980∼2015)】
年
学習のめあて
学習のてびき
1980
1983
はじめてわ
かったことは
はじめてわかったことは
「どうぶつの赤ちゃん」をよんで,ふしぎだなあ,おどろいたなあとおもったのは,どこですか。
どうぶつの赤ちゃんの生まれたときのようすは,どうちがいますか。くらべてよんでみましょう。
「じぶんでは」「じぶんで」
このことばが入っている文をさがして,ノートにかいてみましょう。
1986
1989
はじめてわ
かったことは
はじめてわかったことは
「どうぶつの赤ちゃん」をよんで,ふしぎだなあ,おどろいたなあとおもったのは,どんなことですか。
ちがうところ,にているところ
ライオン,しまうま,カンガルーの赤ちゃんの,どんなところにちがいがありますか。また,どんな
ところがにていますか。くらべながらよんでみましょう。
・生まれたときのようすは。
・大きくなっていくようすは。
「じぶんでは」「じぶんで」
このことばが入っている文をさがして,ノートにかいてみましょう。どんなことがわかりますか。
1992
はじめてわ
かったことは
はじめてわかったことは
「どうぶつの赤ちゃん」をよんで,ふしぎだなあ,おもしろいなあとおもったのは,どんなことですか。
ちがうところ,にているところ
ライオン,しまうま,カンガルーの赤ちゃんの,どんなところにちがいがありますか。また,どんな
ところがにていますか。くらべながらよんでみましょう。
・生まれたときのようすは。
・大きくなっていくようすは。
できるようになったことを
ライオンの赤ちゃんは,1年ぐらいたつと,えもののとりかたをおぼえます。あなたが,1年生になっ
て,じぶんでできるようになったことをかいてみましょう。
1996
ちがいをかん
がえてよもう
ちがいをかんがえよう
○ライオンとしまうまの赤ちゃんは,どんなところがちがいますか。かきうつしてくらべましょう。
●大きさ
ライオンの赤ちゃんは,生まれたときは,子ね
こぐらいの大きさです。
●大きさ
しまうまの赤ちゃんは,生まれたときに,もうや
ぎぐらいの大きさがあります。
イラストの子どもの会話
「生まれたときは目や耳もちがうね。」 「ほかには,どこがちがうかな。」
2000
ちがいをかん
がえてよもう
ちがいをかんがえてよもう
○ライオンの赤ちゃんと,しまうまの赤ちゃんは,生まれたときは,どんなところがちがいますか。ノー
トにかきうつしてくらべましょう。
●大きさ
ライオンの赤ちゃんは,生まれたときは,子ね
こぐらいの大きさです。
●大きさ
しまうまの赤ちゃんは,生まれたときに,もう
やぎぐらいの大きさがあります。
イラストの子どもの会話
「生まれたときは,目や耳もちがうね。」「ほかには,どこがちがうかな。」
○ライオンの赤ちゃんとしまうまの赤ちゃんが大きくなっていくまでのようすでは,どんなところがち
がいますか。くらべましょう。
イラストの子どもの会話
「ライオンの赤ちゃんは,じぶんではあるくことができないんだよ。」
「しまうまの赤ちゃんは,生まれてすぐに,じぶんで立ち上がることができるよ。」
○「どうぶつの赤ちゃん」をよんで,ふしぎだなあ,おどろいたなあとおもったのは,どんなことですか。
みんなにはなしましょう。
○「どうぶつの赤ちゃん」のなかから,
「二ヶ月」のような,月日やじかんをあらわすことばをさがして,
かきうつしましょう。
青 山 之 典
138
2002
ちがいをかん
がえてよもう
○「どうぶつの赤ちゃん」をよんで,はじめてしったこと,ふしぎだなあとおもったことを,みんなに
はなしましょう。
○「ライオンですか,しまうまですか」クイズをしましょう。
・はじめに,きょうかしょの文しょうをカードにかいて,もんだいをつくりましょう。
・つぎに,下のようなこたえのカードをつくりましょう。
カード例
だい1もん 生まれたときは,子ねこぐらいの大きさです。
だい2もん 生まれて三十ぷんもたたないうちに,じぶんで立ち上がります。
・もんだいを出す人とこたえる人にわかれて,クイズをしましょう。
○ほかのどうぶつについても,赤ちゃんのときのことをしらべて,クイズにくわえてもいいですね。
2005
ちがいをかん
がえてよもう
○ライオンの赤ちゃんとしまうまの赤ちゃんをくらべましょう。生まれたときは,どんなところがちが
いますか。
生まれたばかりのようす
ライオン ライオンの赤ちゃんは,生まれたと
きは,子ねこぐらいの大きさです。
しまうま しまうまの赤ちゃんは,生まれたときに,
もうやぎぐらいの大きさがあります。
大きくなっていくようすも,おなじようにくらべましょう。
○ほかのどうぶつの赤ちゃんのことをしらべて,カードにかきましょう。
コアラ
コアラの赤ちゃんは,生まれて五か月ぐらいは,おかあさんのおなかのふくろの中にいます。
2011
ちがいをかん
がえてよもう
〇「どうぶつの赤ちゃん」をよんで,はじめてしったことや,ふしぎだなあとおもったことを,みんな
にはなしましょう。
〇ライオンの赤ちゃんとしまうまの赤ちゃんをくらべましょう。
生まれたばかりのようす
ライオン ライオンの赤ちゃんは,生まれたと
きは,子ねこぐらいの大きさです。
しまうま しまうまの赤ちゃんは,生まれたときに,
もうやぎぐらいの大きさがあります。
・どんなところがちがいますか。
・大きくなっていくようすも,くらべましょう。
○「じぶんでは」がはいっている文と,
「じぶんで」がはいっている文をさがして,ノートにかきましょう。
・あとに,どんなことがかいてありますか。
・「じぶんでは」と「じぶんで」をつかって,あなたのことをかきましょう。
2015
ちがいをかん
がえてよもう
〇「どうぶつの赤ちゃん」をよんで,
はじめてしったことや,
ふしぎだなあとおもったことをはなしましょう。
〇ライオンの赤ちゃんとしまうまの赤ちゃんをくらべましょう。
生まれたばかりのようす
ライオン ライオンの赤ちゃんは,生まれたと
きは,子ねこぐらいの大きさです。
しまうま しまうまの赤ちゃんは,生まれたときに,
もうやぎぐらいの大きさがあります。
・どんなところがちがいますか。
・大きくなっていくようすもくらべましょう。
〇ほかのどうぶつの赤ちゃんと,くらべてみましょう。
(書籍の表紙写真:ゾウ,パンダ,チンパンジー,ペンギン)
カンガルーの赤ちゃんとくらべてもいいですね。
☆くらべてよむと,ちがいがよくわかります。
においては1996年にひとつの分岐点があるといえるだ
学習指導要領は1989年に改訂されており,1992年版
ろう。「学習のてびき」では1992年までも変更はされ
の教科書がその影響を受けているはずである。次に,
ているが,1996年からの変更は激しい。これらのこと
1989年版の学習指導要領国語科の目標を,1979年版の
から「どうぶつの赤ちゃん」の教材としての役割は
ものと比較できるように取りあげる。(表4参照)
1992年から大きく転換していると考えられる。
学習のめあてにおいて比較が強調され始める理由に
ついては,「思考力」や「想像力」の重視が1989年版
5.
「どうぶつの赤ちゃん」の本文や位置づけの変遷と
学習指導要領改訂との関係
「どうぶつの赤ちゃん」の場合,1992年~1996年に
教科書編集の意図の大きな分岐点が窺える。1992年に
カンガルーの事例が全て削除されたことも,その一貫
であったと推察される。
学習指導要領の目標に位置づけられたことに関係があ
ると考える。この点については,教科書編集趣意書等,
教科書会社の受け止めについても検討する必要がある
と考えるが,今後の課題としたい。
間テクスト性に着目して,表現主体の背景を想定することの意義
139
【表4 1979年版および1989年版の学習指導要領の抜粋(学習指導要領データベース作成委員会)】
1979年版
総
括
目
標
1989年版
目標
目標
国語を正確に理解し表現する能力を養うとともに,国
国語を正確に理解し適切に表現する能力を育てるとと
語に対する関心を深め,言語感覚を養い,国語を尊重す
もに,思考力や想像力及び言語感覚を養い,国語に対す
る態度を育てる。
る関心を深め国語を尊重する態度を育てる。
6.
「どうぶつの赤ちゃん」の原典(増井の著作群,参
考文献群)との関連
間に焦点を絞り,その著作群を取りあげ,検討する。
まず,1970年から1980年における増井の著作群を「国
光村図書によれば,「どうぶつの赤ちゃん」は書き
立国会図書館サーチ」によって調査した。具体的には,
下ろしであり,原典にあたるものが見当たらない。そ
「増井光子」をキーワードにして検索し,時系列に従っ
こで,原筆者である増井の背景について考察するため,
て配列した後,出版年・発行年が明らかなものを取り
「どうぶつの赤ちゃん」が教科書に登場する前の10年
あげた。
【表5 1970年∼1980年の増井光子の著作群】
①『よくわかる犬の飼い方』
(1970)増井光子,有紀書房
②『草げんのきいろい矢・がんばれスイフティ』
(1970)増井光子(文)松永禎郎(絵),主婦と生活社
③『どうぶつ』
(1970)増井光子,七尾純,主婦と生活社
④「野生動物の麻酔について」(1971)増井光子,
『獣医麻酔』2,pp.51-55
⑤『犬の飼いかた』
(1971)増井光子(文),加藤利以地(絵),秋田書店
⑥「131 ムササビの動脈硬化症(病理学分科会)
(第72回日本獣医学会記事)
」
(1971)増井光子,
『日本獣醫學雑誌』33(0)
,
pp.231-232
⑦「幼若ネコ類のカルシウム欠乏症に関する臨床学的研究」
(1972)増井光子,
『博士論文・麻布獣医科大学』
⑧「ネコ類の血液について」
(1972)増井光子,
『麻布獣医科大学研究報告』24,pp.35-49
⑨『らいおん 学研のこどもずかん5』
(1973)増井光子(指導),山田三郎(絵),学習研究社
⑩『ペットを飼おう:犬から虫まで 学研カラー版ジュニアチャンピオンコース』
(1973)増井光子,太田浜路等(絵),学習研
究社
⑪『ぞう 学研のこどもずかん4』
(1973)増井光子(指導),沢田弘(絵),学習研究社
⑫『アフリカ野生動物の旅』
(1973)増井光子,時事通信社
⑬『さる 学研のこどもずかん6』
(1973)増井光子(指導),清水勝(絵),学習研究社
⑭「特集 楽しい夏休みをすごすために きみにも飼える動物」
(1973)増井光子,
『子どものしあわせ:母と教師を結ぶ雑誌』
211号,日本子どもを守る会編,あすなろ書房,p24-28
⑮『わたしの動物記』
(1974)増井光子,ポプラ社
⑯『名犬なんでも入門 小学館入門百科シリーズ35』
(1974)増井光子,小学館
⑰「マレーバク(<I>Tapirus indicus</I> Desmarest)の麻酔」
(1974)増井光子,斎藤勝,成島悦雄,竹内啓,小川博之,佐々
木伸雄,
『獣医麻酔』5,pp.60-61
⑱「仔ネコのカルシウム欠乏症に関する実験的研究」
(1974)増井光子,
『麻布獣医科大学研究報告27号』,pp.1-19
⑲『動物と話す本:表情,動作,声で彼らの"言葉"がわかる 21世紀ブックス』
(1974)増井光子,主婦と生活社
⑳「珍客の台所」
(1974)増井光子,
『食生活』,全国地区衛生組織連合会,国民栄養協会,カザン,pp.34-37
㉑「霊長類における塩酸ケタミンの臨床使用例」
(1975)増井光子,斉藤勝,成島悦雄,平松広,秦舜二,
『獣医麻酔』6,pp.2124
㉒「鳥類におけるFluothane吸入麻酔の臨床使用例」
(1975)増井光子,斉藤勝,成島悦雄,平松広,志村良治,坂本一則,
『獣
医麻酔』6,pp.25-28
㉓『どうぶつ 絵ばなし図鑑 第1』
(1975),増井光子 執筆,七尾純 構成・執筆,主婦と生活社
㉔「随筆 男の闘い」
(1975)増井光子,
『オール讀物』30(5),文芸春秋,p118-119
㉕「わたしは動物大使のお世話役」
(1975),増井光子,
『母の友6月』265号,福音館書店,pp.10-17
㉖『日本の動物 自然観察と生態シリーズ』
(1976),増井光子,小学館
㉗「1例のチンパンジー (Pan troglodytes)の反復G.O.F.麻酔とその肝機能について」
(1976)成島悦雄,平松広,斉藤勝,増井
光子,
『獣医麻酔』7,pp.31-34
㉘「砂漠にロバを追う」
(1976)増井光子,
『世界週報』57(14)
(2735),時事通信社,pp.24-25
㉙「生きものの世界(6)同種間の殺しについて」
(1977)増井光子,
『本』2(1),講談社,pp.36-38
140
青 山 之 典
㉚「ジアゼパム静注による鳥類の鎮静効果について」
(1977)成島悦雄,平松廣,増井光子,
『獣医麻酔』8,pp.29-30
㉛『ペットの診療室:犬,猫の美容と健康』
(1977)中川志郎,増井光子,北隆館
㉜『動物私記』
(1977)増井光子,多摩豆本 第1冊,未来工房
㉝「動物の世界・人間の社会」
(1977)増井光子,
『経済セミナー』,pp.68-75
㉞「動物たちと話すということ」
(1977)増井光子,
『コンセンサス』pp.24-25
㉟「人形より動物好きのヘンな女の子」
(1977)増井光子,
『リクルートキャリアガイダンス』9(7)
(96),リクルート,pp.42-43
㊱「馬の世話にあけくれた大学時代」
(1977)増井光子,
『リクルートキャリアガイダンス』9(8)
(97),リクルート,pp.46-47
㊲「やっとの思いで動物園に就職する」
(1977)増井光子『リクルートキャリアガイダンス』9(9)
(98),リクルート,pp.46-47
㊳『ジャポニカ少年博物館 4 イヌのなかま』
(1978)デイビッド・クック ヴァレリ・ピット著 増井光子 日本語版監修,小学
館
㊴『動物の親は子をどう育てるか』
(1978)増井光子,どうぶつ社
㊵『ウマのなかま ジャポニカ少年博物館12』
(1978),増井光子,小学館
㊶「ホンドタヌキのプロピオニルプロマジンと塩酸ケタミンによる麻酔効果について」
(1978)平松廣,成島悦雄,増井光子,田
代和治,
『獣医麻酔』9,pp.57-59
㊷「野生ニホンカモシカの求愛行動と交尾について」
(1978)増井光子,
『哺乳動物学雑誌』7(3)
,日本哺乳動物学会編,pp.155157
㊸『ぞう:アフリカぞう キンダーブック3』
(1978)増井光子(指導),新井苑子(絵),フレーベル館
㊹『ライオンのこども 小さな探検家シリーズ8』
(1978)増井光子(監修),小学館
㊺『アフリカの動物 小さな科学者シリーズ2』
(1978)増井光子編,小学館
㊻『光の国の動物記:エチオピアの野生動物と民衆』
(1978)増井光子,八月一日出版
㊼「野生ニホンカモシカの求愛行動と交尾について」
(1978)増井光子,
『哺乳動物学雑誌』,日本哺乳動物学会編,pp.155-157
㊽「精神病動物診療日誌」
(1978)増井光子,
『中央公論』93(4)
(1093),pp.260-271
㊾「野生動物」
(1978)増井光子,
『週刊文春』20(14)
(976),文芸春秋,pp.84-85
㊿「動物社会と子育て(8)
【現代版「ノアの箱舟」の行方】」
(1978),増井光子,
『経済往来』30(8),pp.122-143
51「ベビーブームのチンパン村」
○
(1978),増井光子,
『総合教育技術』33(8)
,小学館,pp.14-16
52「動物にみる親子のきずな」
○
(1978),増井光子,
『助産婦雑誌』32(9)
,医学書院,pp.10-14
53「人と本」
(1978)
,ますいみつこ,
『望星』9(10)
(100)
,東海教育研究所,pp.94-95
○
54「ごろううふふぶうぶう」
○
(1979),ピーター・スピア/作,渡辺茂男,増井光子/訳,冨山房
55『世界の野生動物13:クマ・パンダ・キツネ』
○
(1979),オグデン・タナー,増井光子,パシフィカ
56『動物ってなんだろう:獣医師のノートから』
○
(1979),増井光子,講談社
57『世界の野生動物20:滅びゆく野生』
○
(1979),ドン・アーネスト,増井光子,パシフィカ
58『大きな動物たち』
(1979),プルー・ネーピア,増井光子,パシフィカ
○
59『森へ帰る』
○
(1979),ステラ・ブルーワー著,増井光子,増井久子,サンリオ
60『動物私記 続』
○
(1979)増井光子,多摩豆本 第6冊,未来工房
61『動物が好きだから』
(1979),増井光子,どうぶつ社
○
62『ライオンのなかまたち』
○
(1979),メートランド・A.エディー,増井光子,パシフィカ
63「サル山騒動記」
○
(1979)増井光子,
『文化評論』
(215)
,新日本出版社,p. 178
64『かがくのとも:らいおん』
○
(1979),金尾恵子作,増井光子監修,福音館
65「動物は善悪が解るか」
○
(1979)増井光子,
『文芸春秋』57(4)
,文芸春秋社.pp.84-86
66「子供の力」
○
(1979)増井光子,
『幼児の教育』,日本幼稚園協会,pp.22-23
67「女らしさ・男らしさとは」
○
(1979),増井光子,
『家庭科教育」53(7),家政教育社,pp.29-32
68「動物たちの知恵雑感」
○
(1979),増井光子,
『學鐙』76(6)
,丸善株式会社,pp.20-23
69『動物ってなんだろう』
○
(1979),増井光子,講談社
70「サル山騒動にみるボスの条件」
○
(1979)増井光子,
『経済往来』経済往来社,pp.183-191
71『どうぶつのおやこ ミッキー幼児えほん2』
○
(1980),増井光子(監修),講談社
72『島のタヌキ』
○
(1980),増井光子,中央公論社
73「ベテランの力」
○
(1980)増井光子,
『望星』11(1)(114),東海教育研究所,pp.16-17
74『動物と楽しく愉快に暮らすには』
○
(1980)ベアトリス・ライデッカー著,増井久代訳,増井光子(監修),どうぶつ社
75『パンダくんこんにちは』
(1980),マーガレット・サザーランドぶん,ジャニー・ヒューズえ,増井光子やく,冨山房
○
大変多くの著作があること,ほとんど全てが動物関
一覧からも「動物」への思い入れの深さは強く感じ
連の著作であること,
「子ども」
「親子関係」というキー
られる。この点については,著作に述べられているこ
ワードが存在することなどが窺える。
とからも強く感じられる。
間テクスト性に着目して,表現主体の背景を想定することの意義
動物たちの生活はただそこに毎日の食物があれば良い
というものではない。食物がいくら十分にあってもそれ
だけではあの野生のいきいきとした眼の輝きは消えてし
まう。彼等の眼には物憂げな,無気力な,ボンヤリとし
た光しか宿さなくなってしまうだろう。やむをえず野生
141
ただし,小学校1学年児童に直接提示することは賢
明ではないと考えるが,教師が児童の実態に合わせて
取捨選択し,加工して扱ったとき,表現主体の存在を
意識しながら読むことが可能になると考える。
地からつれてこられた動物たちは,黙って単調なオリ暮
しを続けてゆくだろうが,それは単に生きているといっ
たしろものにすぎず,動物,すなわち動く物といったも
のからは遠い存在になってしまうと思われる。動物たち
は運動し,新鮮な日光を十分に浴び,仲間と遊び,時に
はケンカもし,いろんなことをしたがっている。動物園
8.間テクスト性に着目して,表現主体の背景を想定す
ることの意義
難波(2008)によれば,テクストを読むとは,その
テクストがおかれている場,つまり筆者,読者,テク
では彼等の要求を満たし,野生時代の生活を再現させて
ストに関わる他のテクスト群などが形成する「言論の
やらねばならない。そのための動物たちの住居,運動場
場」に参入することである。本研究の立場も,この間
の工夫,また見る観客の側からみても動物園にきてよかっ
テクスト性に立脚した考え方に近い。表現主体の背景
た,見て楽しかったと思ってもらうためのディスプレイ
を想定しつつ,テクストを読むことは,日常的な読み
の数々,さらには彼等が健康で長生きするための研究,
こんなことはあたりまえのことかも知れない。しかしア
フリカの野生動物はあらためて私の眼の上に,実例をもっ
てつきつけてくる迫力ある姿ではあった。
に近く,国語科の授業における読みもそのような自然
な読みであることが望ましいと考える。
しかし,本研究において指摘したように,教科書教
私は思わず心に大声で叫んだ。”すばらしいお前たち,
材は一般的なテクストに比べ,どのような「言論の場」
お前たちのことを多くの人びとに理解してもらうために,
に属しているかがわかりにくく,表現主体の背景が複
見知らぬ他国へ送られていった仲間たちのために,私は
これから前にも増していっそう努力することを約束する
よ。どんなところにお前たちの仲間が住んでいようとも,
眼から不屈の野生の光が消えないように。
(『アフリカ野生動物の旅』(1973)増井光子,pp.265-266)
雑である。そのため,テクストだけを手がかりにして
表現主体の意図を解釈することは容易ではないと考え
られる。研究者には表現主体の背景に関する資料を作
成し,教師に提供することで,教師の教材研究をサポー
トすることが求められていると考える。
この引用部分から感じられることは,原筆者である
増井が,「野生」に対して強い思い入れをもって動物
9.謝辞
園での飼育に携わろうとしていること,また「すばら
本研究は,JSPS科研費25885113(研究代表者 青
しい」動物たちのことを人々に理解してもらうことを
山之典)およびJSPS科研費26381209(研究代表者 使命と考えていることである。
難波博孝 研究協力者 青山之典 宮本浩治 吉川芳
このような増井の「動物観」が「どうぶつの赤ちゃ
則 幸坂健太郎)の助成を受けた研究の一部です。
ん」の執筆に際しても働いたのではないかと考えられ
る部分が1980年版の教材文にはある。それが「カンガ
【参考文献】
ルー」の事例であり,「うじ虫」の比喩である。野生
ジュリア・クリステヴァ著,中沢新一・原田邦夫・松
を読者に感じさせ,理解させようという考えの現れで
浦寿夫・松枝到訳(1984)『セメイオチケ2』,せ
もあったのではないかと考えられる。
りか書房
青山之典(2014)「説明的文章の授業における『論理
7.本研究で作成した資料群は,どのような展望を開くか
的認識力』育成の研究―『論理』と『意味内容』
説明的文章を読むとき筆者の意図をとらえようとす
との相互補完的な実践を通して―」『広島大学大
るならば,実際には,学習者に筆者の存在を実感させ
学院教育学研究科紀要』第一部第63号,広島大学
る具体的な手だてがなければ難しいだろうと考える。
大学院教育学研究科,pp.67-75
本研究において示した様々な資料群は,そのような手
植山俊宏(2011)「表現の類比・反復に着目した説明
だてを教師が創造するときの手がかりになることが期
的文章教材の分析方法に関する研究(1)」『全国
待できる。
大学国語教育学会発表要旨集』121,全国大学国
青 山 之 典
142
語教育学会,pp.49-52
小田迪夫(1986)『説明文教材の授業改革論』
,明治図書
小森 厚(1976)『動物のおやこ』,小学館
西郷竹彦(1981)『説明文の指導―認識と表現の力を
育てるために』,部落問題研究所
難波博孝(2008)『母語教育という思想』,世界思想社
章の学習指導論の構想」『国語教育論叢』11,島
根大学教育学部国文学会,pp.15-27
光村図書(1980,1983,1986,1989,1992,2005)『国
語1年学習指導書』,光村図書
森田信義(1988)『説明的文章の研究と実践―達成水
準の検討』,明治図書
増井光子(1980,1983,1986,1989,1992,1996,2000,
文部科学省(1977,1989,1998,2008)『小学校学習
2002,2005,2011,2015)「どうぶつの赤ちゃん」
指導要領』(『学習指導要領データベース』学習指
『こくご一(下)ともだち』,光村図書
増井光子(1965)『アカ公,なぜ死んだ』,秋元書房
導要領データベース作成委員会,国立教育政策研
究所,による)
増井光子(1973)『アフリカ野生動物の旅』
,時事通信社
増井光子(1974)『わたしの動物記』,ポプラ社
増井光子(1977)『動物私記』(多摩豆本第1冊),未
来工房
〈キーワード〉
間テクスト性,表現主体の背景,説明的文章,論理的
認識力,教科書教材
増井光子(1978)『動物の親は子をどう育てるか』,ど
うぶつ社
青山 之典(現代文化学部子ども発達教育学科)
増井光子(1979)『続・動物私記』(多摩豆本第6冊),
未来工房
間瀬茂夫(2001)「間テクスト性に注目した説明的文
(2014. 11. 10 受理)
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