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佐賀県研究成果情報 散布剤と種子消毒剤によるオオムギ裸黒穂病の
佐賀県研究成果情報 散布剤と種子消毒剤によるオオムギ裸黒穂病の制御 [要約]チルト乳剤25のオオムギ穂揃い期の散布によって、裸黒穂病子実保菌率が低 減し、それを種子として用いると発病が抑制される。トリフミン水和剤、ベンレート Tコートによる種子消毒は、裸黒穂病保菌率が高い種子に対しても高い防除効果を示 す。 佐賀県農業試験研究センター 土壌環境部 病害虫農薬研究担当 部会名 普通作専門部会 連絡先 専門 0952-45-2141 [email protected] 病害虫 対象 麦 [背景・ねらい] 近年、種子伝染性病害であるオオムギ裸黒穂病の発生が顕在化しており、種子生産現場 を含めた防除対策が求められている。そこで、種子保菌率と圃場における発生との関係を 明らかとし、種子生産現場で種子保菌率を低減するために実施可能な防除対策を検討する。 [成果の内容・特徴] 1.エンブリオ・テスト(International Rules for Seed Testing:http://seedtest.o rg/upload/cms/user/7013.pdf)によって調査したオオムギの裸黒穂病種子保菌率と圃 場での発病穂率の間には、正の相関がみられる。ただし、種子保菌率に対し発病穂率は 非常に低く、保菌率が低い場合には圃場での発生はほとんど見られない(図1)。 2.オオムギの散布薬剤であるチルト乳剤25(1,000倍)の穂揃い期(開花∼1週間後) 散布によって、子実の裸黒穂病保菌率が低減する。さらに、その子実を種子として用い ると裸黒穂病の発生が抑制される(表1)。 3.トリフミン水和剤0.5%種子粉衣、ベンレートTコートの0.5%種子粉衣による種子消 毒は、裸黒穂病保菌率が高い種子に対しても非常に高い効果を示す(表2)。 [成果の活用面・留意点] 1.オオムギ栽培地帯や種子生産圃場で活用できる。 2.本成果の種子消毒と散布を体系的に行うことで防除効果が安定する。 3.チルト乳剤25は、オオムギにおいて「対象病害:雲形病、網斑病、うどんこ病、赤か び病」、「使用時期:収穫21日前まで」、「使用回数:1回」で登録を有する。 4.チルト乳剤25は、出穂期の散布でオオムギ網斑病と斑葉病の種子伝染を抑制する。 「オオムギ網斑病および斑葉病の種子伝染防止対策」(平成13年度九州沖縄農業研究研 究成果情報)。 [具体的データ] 0.8 2005年 2006年 20 05 : y = 0.00 8x - 0 .1 4 R = 0 .81 * * * 0.6 発病穂率︵%︶ 0.4 200 6 : y = 0.00 6x - 0.0 4 R = 0 .7 4 * * 0.2 0.0 0 20 40 60 80 100 種子保菌率(%) 図1 オオムギ裸黒穂病の種子保菌率と圃場における発病穂率との関係 2005年;6品種、2006年;2品種、それぞれ異なる圃場由来の種子を供試 有意水準 : *** 0.1% 、** 0.5% 表1 各種オオムギ茎葉散布剤の裸黒穂病子実保菌率低減効果 2004年産子実(種子)a) 試験区 希釈 倍数 子実 保菌率 (出穂期散布薬剤) 2005年産子実(種子)b) 次作の発病穂率 (2005年4月) A圃場 B圃場 次作の発病穂率 (2006年4月) 子実 保菌率 平均 A圃場 B圃場 平均 % % % % % % % % チルト乳剤25 1,000倍 26.5 0 0 0 4.3 0 0 0 ストロビーフロアブル 2,000倍 62.8 0.2 0.6 0.4 91.4 0.6 0.9 0.7 トップジンM水和剤 1,000倍 52.8 0.9 0.8 0.9 52.5 0.6 0.1 0.4 76.5 0.5 0.3 0.4 74.8 0 0.3 0.1 無処理 a)品種;ニシノチカラ、播種2003年12月上旬、2004年4月20日の発病穂率0.8%、各試験区に開花期(2004年4月20 日)と開花期1週間後(27日)の2回背負い式動力散布機で散布した。収穫期の5月19日に発病株から約1m程度離れ た40穂を各区3地点採取。保菌率はエンブリオテストにより各地点50粒を3反復で調査。 次作は各区から採取した子実を混合し種子として用い、種子消毒なしで2004年12月1日に播種。2005年4月中旬調 査。 b)試験方法は、a)と同じ。品種;ニシノチカラ(保菌率37.8%、播種2004年12月1日、2005年4月20日の発病穂率 0.58%、開花期(2005年4月12日)と開花1週間後(19日)散布。収穫期の5月19日に穂を採取。 次作は2005年11月28日に播種。2006年4月中旬調査。 表2 オオムギ裸黒穂病保菌率が異なる種子に対する種子消毒剤の防除効果 試験年 供試種子番号 品種 保菌率(%) トリフミン水和剤 発病穂率 (%) 0.5%粉衣 防除価 種子消毒 ベンレートTコート 発病穂率 (%) 0.5%粉衣 防除価 2004∼05年 Ⅰ 2005∼06年 Ⅱ Ⅰ ニシノチカラ ニシノチカラ 67.0 68.0 0 0 100 0 100 100 − Ⅱ Ⅲ Ⅳ ニシノチカラ ニシノチカラ ニシノチカラ ニシノホシ 91.4 47.2 34.4 23.3 0 0 0.42 0 100 100 72 100 − 0 − 100 無処理 発病穂率 (%) 0.68 0.52 0.88 0.91 1.52 注)薬剤処理は播種前日に行った。数値は3反復の平均値。播種日;2004年12月1日、2005年11月28日 0 100 0.10 [その他] 研究課題名:イネ・ムギ種子伝染性病害虫の環境保全型制御技術と発生予察技術の確立 課題ID: 予算区分:国庫 研究期間:2005∼2007年度 研究担当者:山口純一郎、稲田 稔、古田明子