Comments
Description
Transcript
欧州天然ガス・LNGの 現状と見通し - JOGMEC 石油・天然ガス資源情報
欧州天然ガス・LNGの 現状と見通し 2014年4月17日 調査部 永井 一聡 1 本日の内容 ・欧州の天然ガス・LNG需要動向と見通し ・欧州LNG基地の現状と事業動向 ・天然ガス価格引き下げを巡る動き ・ウクライナ問題に鑑みた欧州全体および各国の動き (天然ガス供給セキュリティ強化へ向けた対応) 2 欧州(EU-28)天然ガス調達量推移 別添カラー資料3あり 600 500 輸入(LNG) 天然ガス調達量 [ 10億m3 ] 輸入(ロシア以外パイプライン) 400 輸入(ロシアパイプライン) 輸入(パイプライン) 300 域内生産 200 ※2013年は速報値 100 0 出所:EuroStat, Eurogas, BP統計, IGU のデータを基にJOGMEC作成 3 欧州ガス消費量増減2012-2013 ※ガス需要上位10ヶ国とEU-28合計のガス消費量推移 ドイツ イギリス イタリア フランス オランダ スペイン ベルギー ポーランド ルーマニア ハンガリー EU-28合計 天然ガス消費量 [10億m3] 2013 2012 88.5 83.2 79.2 79.2 68.7 73.4 46.1 45.6 40.3 39.5 30.9 33.6 17.0 17.2 16.3 16.3 11.6 13.4 9.3 10.1 461.9 468.4 前年比増減 [%] +6.0% +0.0% -6.8% +1.1% +2.0% -8.7% -1.2% +0.0% -15.5% -8.6% -1.4% 出所:Eurogas 4 欧州域内主要ガス生産国(+ノルウェー)の生産量推移 別添カラー資料4あり 140 天然ガス生産量 [ 10億m3 ] 120 100 イギリス ノルウェー オランダ 80 60 40 20 0 1990 出所:BP統計 1995 2000 2005 2010 2015 ・イギリス・オランダは天然ガス生産量減少の見通し 5 EUの天然ガス(LNG含む)輸入元別割合 2012年 2% 2013年 4% ロシア 9% 2% ノルウェー 34% 14% 22% ロシア アルジェリア 44% リビア 北・南米 35% 別添カラー資料5あり カタール 34% ノルウェー ロシア・ノル ウェー以外 その他 出所:BP統計、Eurogas、Gazprom、Gassco のデータを用いてJOGMEC作成 6 欧州LNG輸入量推移 7000 6000 輸入量,万トン 5000 別添カラー資料6あり その他欧州 イギリス スペイン イタリア フランス ベルギー 4000 3000 2000 1000 0 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 出所:BP統計、IGUのデータを基にJOGMEC作成 7 欧州のLNG基地稼働率 別添カラー資料7あり 出所:Gas Infrastructure Europe 8 欧州におけるLNG再輸出量推移 別添カラー資料8あり 4.5 4 3.5 LNG再輸出量 [ 百万トン ] 3 スペイン 2.5 ポルトガル オランダ 2 フランス 1.5 ベルギー 1 0.5 0 2008 2009 2010 2011 2012 2013 出所:GIIGNL 9 欧州天然ガス需要とLNG基地稼働状況 ・天然ガス需要は相変わらず低迷 天然ガス需要は全体として前年比1.4%減少 LNG受入量は前年比約30%減少 ・欧州域内の天然ガス生産は減少傾向 ・LNG基地の稼働率は低い(平均稼働率20%) ・一部の基地ではLNG再輸出を活発に実施 ※LNG再輸出量(2013年)は約400万トン →多くは南米へ、一部アジアへ ←LNG売買契約における仕向地条項制約 ・欧州のロシア産ガスへの依存割合は約30% 10 欧州天然ガス需要見通し Eu‐27 Gas Demand 2010‐2035 700 天然ガス需要 [10億m3 ] 600 500 400 300 Base Case Environmental Case SlowDevelompents Case 200 100 0 2010 2015 2025 2035 出所:Eurogas 11 欧州におけるエネルギー事業動向 リーマンショック 金融危機 米国でのシェールガス革命 米国向けを想定して いたLNGが欧州へス ポット価格で流入 経済活動縮小 ガス需要減少・低迷 ガス市場(スポット)価格低下 高い原油価格 既存の長期契約天然ガス(石油 価格連動)を持つユーティリティ 企業は逆ザヤでの販売に 天然ガス価格再交渉 (仲裁裁判)の動き 米国国内で石炭が 競争力失う 米国の安価な 石炭が欧州へ 経済縮小による 炭素排出価格 暴落・低迷 石炭火力発電増加 再生可能 エネルギー政策 ガス火力発電閉鎖 12 天然ガス売買契約に関する動き ・欧州の長期契約でも石油価格指標から市場価格指標導入へ (市場価格指標の割合を増加) ・天然ガス価格再交渉による価格自体の引き下げも進む 13 最近合意された天然ガス価格再交渉 ①RWE⇔Gazprom 2011年8月 RWEがGazpromに対してガス価格を巡る 仲裁手続き起ち上げ 2013年6月 仲裁手続きにより、RWEがガス価格過払いに 伴う払い戻し(約10億ユーロと言われる)を獲得 (ガス価格引き下げ) ②DEPA⇔Gazprom 2014年3月 天然ガス価格について15%の引き下げで合意 (2013年6月~2016年まで遡及して有効) ③ENI⇔Statoil 2013年7月 天然ガス価格を巡る仲裁手続起ち上げ 2014年2月 価格条項見直しで基本合意(仲裁手続き凍結) 2014年3月 価格条項見直しで最終合意 市場価格指標を導入と見られる 14 欧州のLNG基地(計画中含む) 出所:JOGMEC作成 15 欧州で計画中の主なLNG基地 国名 スウェーデン フィンランド エストニア ラトビア リトアニア ポーランド ドイツ イギリス アイルランド イタリア 受入 開始年 Lysekil 2014 Gothenburg 2015 Joddbole or Tolkkinen 2019 Pansio Harbour 2015 Tornio Harbour 2016 Paldiski 2015 Muuga,Tallinn 2017 Riga 2016 Klaipeda (FSRU) 2014 Swinoujscie 2014 Hamburg 2014 Port Meridian(FSRU) 2016 Shannon LNG 2017 Falconara LNG 2018 Gioia Tauro 2017 Porto Empedocle 2018 プラント名 国名 フランス スペイン マルタ クロアチア アルバニア ギリシャ ルーマニア ウクライナ キプロス プラント名 Dunkerque Fos‐Faster El Musel (Gijon) Tenerife (カナリア諸島) Gran Canaria (カナリア諸島) Malta(FSU) Krk island LNG(FSRU) (一時的利用) Adria LNG Fiere Alexandroupolis(FSRU) Aegean LNG(FSRU) AGRI LNG Black Sea LNG Vassilikos 受入 開始年 2015 2019 2014 2017 2018 2018 2016 2017 2016 2015 2017 2020 2014 2015 出所:JOGMEC「天然ガスリファレンスブック」 16 スモールスケールLNGへ 欧州での排出規制強化 自動車:Euro6、 船舶:IMO規制 LNG基地の有効利用 新たなビジネスモデルの創出 石油価格の高止まり 環境性、経済性(対石油製品)に優れるLNGに注目 (※発電部門では石炭に価格優位性) 輸送用燃料向けLNGインフラ(分配用LNG基地、充填用ス テーション =小規模LNG基地)整備に向けた動きが活発化 17 各国で進む小規模LNG基地・設備計画 出所:Gas Infrastructure Europe 18 ロシアクリミア問題を踏まえた欧州の動き ・アメリカと共にEUはロシア制裁を示唆(ロシア依存縮小に合意) →具体的な制裁内容は不明 ・ウクライナ経由のロシア産天然ガス供給 停止リスク(2006,2009年に供給停止実績あり) ・天然ガスの供給セキュリティ確保のため、 調達多様化を指向 ・エネルギー効率改善 ・LNG ・石炭 ・調達増加?(北米産LNGも) ・再生可能エネルギー ・東欧諸国でのLNG基地建設計画 ・中央アジアからのパイプラインガス供給 ・カスピ海地域からのパイプライン建設 (Southern Gas Corridor計画) ・西欧⇒東欧へのパイプラインガス逆送能力確保 ・シェールガス開発・生産? 19 カスピ海地域からのガスパイプライン Southern Corridor計画 TAP:2019年操業開始予定 TANAP:2018年操業開始予定 輸送能力 輸送能力 100億m3/年 (200億m3/年まで拡張可能) 第一期(2018):160億m3/年 第二期(2023):240億m3/年 第三期(2026):310億m3/年 Shah Denizガス田 (アゼルバイジャン) 出所:BPホームページ 20 東欧諸国の天然ガス供給リスク対応 ・LNG基地建設へ ・ポーランド Swinoujscie基地:2014年操業開始予定 ・リトアニア Klaipeda基地(FSRU):2014年操業開始予定 ・フィンランド&エストニア それぞれLNG基地建設予定(2015)&パイプラインにて連結 ・クロアチア Krk island基地(2016)およびAdria LNG基地(2017)建設予定 ・西→東へのパイプラインガス逆送対応 ・ポーランドはドイツ・チェコからのガス輸送システムを増強 ・ハンガリーはスロバキアと逆送可能なガス導管接続へ 21 まとめ ・欧州の天然ガス需要は依然として低迷 ただし、長期的にはガス需要増加の見通し ・LNG基地の稼働率は低いが、 一部の基地ではLNG再輸出事業を実施 (再輸出先は南米、アジア) ・天然ガス価格引き下げに向けた動きは継続 市場価格連動の割合が増加 石油価格連動においても係数変更による価格引き下げ ・ウクライナ問題に鑑み、天然ガス供給セキュリティ 強化のため、調達の多様化を指向 →LNG調達増加の可能性有り ←市場への影響? ガスパイプラインネットワークを強化へ 22 インプリケーション ・欧州での天然ガス需要低迷(再生可能エネ政策、石炭) →アジア・日本においても、 天然ガスの価格競争力なければ需要減少の可能性 ・欧州LNG基地での再輸出 ←仕向地条項の制約が残っている →仕向地条項撤廃すれば、欧州市場と他市場の統合に 近づき、価格も収斂していく可能性 ・天然ガス価格引き下げ、価格再交渉 ←欧州企業の経営危機、調達源に選択肢が存在 ⇔日本の供給源はLNGのみ、交渉力弱い →ロシアからのパイプラインやメタンハイドレート? ・スモールスケールLNG(輸送用燃料向けLNGインフラ) →日本…排出規制強化見送り、LNG価格優位性なし ⇒インセンティブ小さい 23 ご清聴ありがとうございました。 24