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盛土法尻の液状化対策工に作用する地震時土圧

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盛土法尻の液状化対策工に作用する地震時土圧
III-129
土木学会第58回年次学術講演会(平成15年9月)
盛土法尻の液状化対策工に作用する地震時土圧(その2 土圧振動成分)
(独)土木研究所 正会員
岡村 未対、石原 雅規
正会員 ○谷本 俊輔、田村 敬一
1.はじめに
河川堤防の基礎地盤の液状化による沈下低減を目的とした耐震対策では,盛土法尻直下の地盤改良や矢板締切り工法
が用いられている.対策工の現行設計法は,対策工に作用する地震時土圧と慣性力を仮定し,滑動や転倒に対する安全
率を確保する震度法ベースのものである.しかしながら,近年では許容沈下量に基づいた,より合理的な設計が望まれ
ている.筆者らが提案している盛土沈下量の時刻歴動的解析法 1)では,法尻部対策工に作用する地震時土圧を時刻歴で
与える必要がある.そこで本研究では,液状化地盤の地震時土圧を遠心模型実験により調べ,盛土の影響を考慮した振
動成分土圧評価式を提案する.
2.遠心模型
表 1 各ケースでの盛土形状
実験では,図
図 1,表1
表1に示す法尻に鉛直な剛壁を有する模型と、図
図2に
表1
Case
示す法尻部分に固化改良を模したブロックを有する模型を作成した。剛壁
R1
R2
R3
R4
R5
R6
R7
R8
R9
R10
R11
R12
模型では,幅 10cm×高さ 2cm の受圧面を持ち直土圧とせん断力を測定で
きる 2 成分土圧計を深さ方向に 12 段内蔵した剛壁を土槽に固定し,その
間に層厚 24cm,相対密度 Dr=60%の江戸崎砂層を作成した.一方,固化
改良模型では Dr=90%の硅砂層を作成後,側面及び底面に土圧計を内蔵し
た幅 20cm の固化体模型を設置し,剛壁模型と同様に江戸崎砂層と盛土を
作成した.DM1 および DM2 での固化体の硅砂層への根入れ深さは,それ
ぞれ 0 および 4cm とした.剛壁模型では盛土の形状を種々変えて実験を
行った.土圧計受圧板の表面は布製サンドペーパーを貼り付け粗とし,背
面には小型加速度計(質量 1g)を取付け,受圧板の加速度を測定した.全て
の実験は 50g の遠心力場で行い,地下水位は剛壁模型は盛土底面下 5cm,
固化改良模型は 4cm とした.以下,本文では相似則に従って原型スケー
ルに換算して示す.
DM1
DM2
盛土高(m) 法面勾 天端幅(m)
剛壁模型
5
1:2
5
2.5
1:2
5
5
1:1
5
10
1:2
10
2.5
1:2
10
5
1:2
5
5
1:2
10
5
1:4
5
10
1:2
5
5
1:2
5
0
盛土無し
2.5
1:2
5
固化体模型
5
1:2
5
5
1:2
5
土圧計
(2成分)
12m
3.実験結果
剛壁
盛土
図 3 は剛壁模型 Case10 から得られた剛壁の土圧と加速度お
江戸崎砂
(Dr=60%)
よび近傍の間隙水圧の時刻歴である.入力波形の最初の 4 波
は地盤全体を液状化させることを意図したもので,その後に
図 1 剛壁模型
周波数 2Hz で加速度振幅が約 100,250,450gal の正弦波を 3
入力することにより,土圧挙動に及ぼす周波数と加速度レベ
ルの影響を調べた.過剰間隙水圧が有効上載圧σ’v0 に達し地盤
が液状化した t=7s 以降,土圧の波形は受圧板の加速度波形と
同様のものとなっている.GL.-5m∼-6m に設置した土圧計の
4.5 8.0 5.0
波ずつ入力し,さらに周波数 1Hz で加速度振幅を変えた波を
D=8mまたは 9m
盛土
2
10m 1:
固化体模型
(土圧計内蔵)
江戸崎砂
(Dr=60%)
7号硅砂(Dr=90%)
(prototype unit:m)
図 2 固化改良模型
t=7s 以降の土圧と土圧計受圧板加速度の関係を図
図 4 に示す.入力した加速度および周波数によらず両者の間には線形
関係が認められる.また,剛壁間の距離や入力周波数によって液状化した土が共振することはなかった.このような線
形関係は剛壁に作用する動水圧と同じであり,これまでも Westergaared の動水圧評価式を剛壁が液状化した土から受け
る土圧を算定する際にしばしば準用してきた.しかしながら,Westergaard 動水圧式は液体表面で応力ゼロという条件
の下で適用できるものであり,液状化層上に不飽和層が存在し,あるいは盛土が存在する場合にはそのまま適用するこ
キーワード 液状化,土圧,液状化対策,遠心模型実験,盛土
連絡先
〒305-8516 つくば市南原1−6 (独)土木研究所耐震研究グループ TEL:029-879-6771
-257-
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土木学会第58回年次学術講演会(平成15年9月)
300
200
3
水平全土圧 (kN/m )
水平全土圧 過剰間隙
(kPa)
水圧(kPa)
加速度(g)
1
0.5 振動台(入力)
0
-0.5
2Hz
1Hz
-1
1
0.5 受圧板
0 (GL-5m)
-0.5
-1
100
50
法尻直下 GL.-5.0m
0
200
0
-100
σ'v0
-200
Case10
GL.-5∼-6m
GL.-5.0∼-6.0m
100
-300
-1
振動成分
0
100
0
受圧板加速度 (g)
漸増成分
0
10
時間 (s)
20
30
1
図 4 土圧と受圧板加速度の関係
図 3 剛壁と土圧と加速度の時刻歴
Case10
12
5
7
とはできない.図
図 5 は土圧-受圧板加速度の傾き,すなわち剛壁加速度 1g
あたりの振動成分土圧の深度分布である.実験では剛壁近傍の GL.
Case8
-9.5m 以深では液状化に達しなかったので,この部分では深度と共に土圧
Case9
2
土 圧 振 動 成 分 (kN/m /g)
振動成分が小さくなっているが,
この深度以浅では分布形状は Westergaard
0
0
50
100
150
に近いものとなっている.なお、図
図 5 の Westergaard 動水圧の計算には、
水の単位体積重量の代わりに液状化した土の飽和重量を用いた.図 6 は不
▽
し,便宜的に地表面までを液状化層としたモデルである.このモデルによ
図 5 より,盛土の全重量が大きいほど土圧振動成分も大きくなっている
Case
5
7
8
9
10
11(水 平 )
12
4
深 度 (m)
に不飽和層を有する水平地盤の Case11 は計算値と良く一致している.
250
2
飽和層がある場合,液状化層上面での全土被り圧が等しくなるように換算
り Westergaard 式を用いて計算した土圧振動成分を図
図 5 中に示す.地表面
200
Westergaard
地 表 面 =GL.-0.4m
(図 6右 の 地 表 面 )
6
ことがわかる.図 7 は盛土による土圧振動成分の増加率と平均盛土荷重の
8 Westergaard
関係である.ここで平均盛土荷重は盛土重量を盛土底面幅で除したもので
地 表 面 =地 下 水 位 面
あり,図の縦軸は各ケースの土圧振動成分を図
図 6 の方法によって修正した
10
地表面位置から算定した Westergaard 動水圧で正規化してある.これより,
土圧振動成分は深度によらず平均盛土荷重の増加と共にほぼ直線的に増
12
図 5 土圧振動成分の深度分布
大することがわかる.また,図
図
H2=H1γsat/γt1
おける値を同様にしてプロッ
H1
不飽和層
γt1
液状化層
液状化層
γsat
上にのっていることがわかる.
液状化層
液状化層
図 6 に従って修正した地表面
位置を基準とした Westergaard
動水圧を基準とすると,盛土荷
重がある場合の土圧振動成分
図 6
1
1.5
1
0
p d = (1.0 + 4.98 × 10 −3 q ) × pWG
平均盛土高 (m)
4
6
8
剛壁模型
盛土γ t =15.7kN/m 深度GL.-(m)
不飽和層γ t =14.0kN/m3
4∼5
2
6∼7
最小自乗近似
8∼9
-3
y=1.0+4.98*10 *(平均盛土荷重)
地盤表面の非液状化層厚
の換算
pd は次の式によって近似できる.
2
3
H2
トしてある.固化体模型の場合
にも剛壁と同じ最小近似直線
0
振動成分土圧
Westergaardの動水圧
7 中には固化体模型の 3 深度に
固化体模型 GL.- (m)
-3∼-4
DM1, DM2
-4∼-5
-5∼-6
40
50
平均盛土荷重 (kN/m2)
60
80
100
図 7 平均盛土荷重と振動成分増加率
ここで, q は平均盛土荷重(kN/m2)、pWG は修正地表面位置から算定した Westergaard 動水圧である.
まとめ
本研究では,盛土法尻の液状化対策工に作用する液状化層の土圧を調べることを目的とし,剛壁の実験及び固化改良
対の実験を行った.土圧を振動成分と漸増成分(別報 その1)に分け,それぞれ盛土荷重を考慮した簡易評価式を提
案した.これを用いることにより,固化体の加速度波形を用いて土圧の時刻歴波形を知ることができる。
-258-
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