...

地中熱利用 - 東京都環境局

by user

on
Category: Documents
14

views

Report

Comments

Transcript

地中熱利用 - 東京都環境局
2015年10月8日
九都県市
再生可能エネルギー
活用セミナー
イチから知りたい地中熱利用
NPO法人 地中熱利用促進協会
髙杉 真司
内容
•
•
•
•
地中熱の利用形態
地中熱利用の基礎知識
地中熱利用の普及・現状
地中熱利用の展望
利用形態
3
地熱と地中熱
• 地熱とは、地球内部に保有され
ている熱の総称(地学事典)
• 火山のある我が国では、高温の
地熱を利用して、地熱発電が行
われている。地熱発電では一般
に1000m級の孔井を掘削して、
蒸気・熱水が利用されている。
(NEDO パンフレット)
• 一方、地中熱とは浅い地盤中に
存在する低温の熱エネルギーで
あり、地中熱は昼夜間又は季節
間の温度変化の少ない地中の熱
的特性を活用して利用される。
外気温と地中の温度の関係
4
利用形態
地中熱は再生可能エネルギー
• 地中熱は、太陽及び地球内部からの
熱に由来する再生可能エネルギーであ
る。
• 地表近辺では気温の影響により地温
は変化するが、地下10~15mの深さに
なると、年間通して地温の変化が見ら
れなくなる。
• その温度はその地域の平均気温とほ
ぼ等しい。それより深い場所の温度は、
一般に100mにつき2~3℃程度の割合
で上昇するが、地温は安定した状況に
ある。
• 地中熱は、日本中どこでも利用でき、し
かも天候等に左右されず安定的に利
用できる。
季節ごとの地温の分布
利用形態
5
(地中熱利用促進協会)
利用方法別の設置件数
2013年までの累計
(環境省, 2015)
6
7
基礎知識
地中熱ヒートポンプの優れた点
なつ
ちちゅうねつ
地中熱ヒートポンプ
やく
ど
ねつ
に
熱を逃がす
ふゆ
ちちゅうねつ
地中熱ヒートポンプ
やく
ど
ねつ
え
熱を得る
地中の再生可能エネルギー
• いつでもどこでも利用可能
• 安定的利用
温度差の活用
• 省エネルギー
• 大きな節電効果
• CO2排出量の削減
地中での熱交換
• ヒートアイランド現象
抑制
5
8
自然エネルギーの選択肢
地中熱
地熱
太陽熱
太陽光
風力
小水力
バイオマス
雪氷
場所の制約
なし
火山・温泉
の近傍
なし
なし
風況調査が
必要
落差のある
(要搬送)
河川
積雪地近
傍
(要搬送)
時間の制約
なし
なし
昼間
昼間
風の吹く時
間帯
渇水期以
外
(要搬送)
主に事業用
発電
主に事業用
発電
自家用発電
事業用発電
事業用発電
自家用発電
主に事業用 主に事業用
発電
発電
暖房
給湯
融雪
給湯
(冷)暖房
―
―
電気
―
(要搬送)
―
エネルギー
利用形態
熱
冷暖房
給湯
融雪
―
(冷)暖房
給湯
冷蔵
冷房
基礎知識
9
地中熱利用は省エネルギー
NEDOの高効率エネルギーシステム導入促進事業で実証された
地中熱ヒートポンプの省エネルギー効果
2004-2007年の調査対象:87件、うち地中熱6件
NEDO 住宅・建築物高効率エネルギーシステム導入促進事業(建築物に係るもの)2009 事業成果紹介2009年11月作成による
10
基礎知識
地中熱ヒートポンプは節電効果大
業務部門全体の機器別電力需要(東京電力管内)
(資料提供:JFE鋼管株式会社)
空調電力消費量
kWh
3000
(資源エネルギー庁)
空気熱 2005-07年の平均
地中熱 2008-09年
年間
49%削減
2000
1000
0
11
12
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10月
地中熱と空気熱の年間運転実績の比較(笹田, 2010)
東電管内の業務用空調について見ると、夏の冷房需要が
1,000万kWある。地中熱ヒートポンプの導入による電力削
減に、ヒートアイランド抑制効果による電力削減を加え半
分が削減できるとすると、東電管内の業務用だけでも500
万kW程度の節電効果になるものと考えられる。 これに家
庭用の空調も考慮し全国規模で予測してみると、東電の電
力供給は全国の約3割であるので、日本全体では地中熱
ヒートポンプの導入による節電効果は1,000万kWを大きく
超える規模になるものと推定される。
基礎知識
11
CO2 排出量削減効果
(クローズドループ)
暖房
ton/年
灯油換算
1470 L
40
20
2006年
4
3
2
1
0
地中熱
灯油
地中熱
ヒートポンプ暖房出力6.2kW, ボアホール50m x 3本(150m)
COP(期間平均)3.4, 住宅床面積129m2, Q値1.6W/(m2・K), C値0.8cm2/m2
富良野市木造3階建住宅2005年10月竣工(北海道大学地中熱講座 2007)
CO2発生量
一次エネルギー
80
ton/年
2004年-2008年
ton/年
冷暖房・融雪
2004年-2008年
30
20
C10
在来システム
・空冷チラー
・灯油ボイラー
・電熱線融雪
0
在来
地中熱
システム
ヒートポンプ冷暖房用15HP(対象床面積329m2), 融雪用30HP(歩道360m2)
ボアホール90m x 16本(1440m), COP4.3(年平均)3.5 (暖房)5.8(冷房)
6.8(融雪)
冷暖房
山口県の中学校
GJ/年
2007年
1200
1000
800
600
400
200
0
空気熱 地中熱
+灯油
GJ/年
在来
地中熱
システム
0
灯油
500
400
300
200
100
0
CO2発生量
60
2006年
CO2発生量
一次エネルギー
GJ/年
弘前市の公共施設
一次エネルギー
北海道の住宅
2007年
60
40
20
0
空気熱 地中熱
+灯油
ヒートポンプ冷却能力308kW, 加熱能力270kW, ボアホール100m x 30本
下関市立豊北中学校2006年4月開校(栫 2010)
弘前市まちなか情報センター2004年4月運転開始(石上ほか 2010)
基礎知識
12
地中熱利用でヒートアイランド対策
• 地中熱ヒートポンプシステムでは、冷房排熱を大気中に放出せず、地中
に吸収させる。
• 従って、都市圏でのヒートアイランド現象の緩和に寄与する。
• ヒートアイランド現象の緩和により、さらなるエネルギー消費量が削減され
る。
•
東京都中央区日本橋地区をモデルとした試算によると、オフィスビルで使用してい
るエアコンをすべて地中熱システムに換えた場合、最高気温が1.2℃低下する結
果になっている(玄地, 2001) 。
(環境省資料)
13
基礎知識
地中熱ヒートポンプの施設別件数
(1981年~2013年)
農業施設, 52
駐車場(融雪), 7
工場, 43
地域冷暖房施設, 2
実験施設, 64
その他, 35
道路
(融雪), 82
温浴施設, 16
宿泊施設, 40
住宅, 640
店舗, 79
事務所, 173
学校, 64
公共施設, 107
福祉施設, 34
病院・医療施設, 35
幼稚園・保育施設, 40
総数:1,513件
(環境省, 2015)
基礎知識
地中熱ヒートポンプの設備容量
(施設別)
14
基礎知識
15
地中熱ヒートポンプの設置件数
(1981年~2013年)
(環境省, 2015)
16
基礎知識
地中熱ヒートポンプの設置件数
250
1000
地中熱利用ヒートポンプシステムの設置件数
【1981-2011年】
200
900
800
年設置数 〔併用〕
年設置数 〔オープンループ〕
700
年設置数 〔クローズドループ〕
年 150
間
設
置
件
数
(
件 100
)
600 累
計
設
500 置
件
数
(
400 件
)
累計 〔クローズドループ〕
累計 〔オープンループ〕
累計 〔併用〕
累計 〔全タイプ計〕
300
50
200
100
0
0
設 置 年
(環境省, 2012)
17
基礎知識
地中熱ヒートポンプの普及状況
世界の状況
(Lundほか, 2015)
18
基礎知識
2011~13の経産省「熱利用加速化」補助事業の実績から見た
地中熱ヒートポンプ導入の傾向
その他
地域冷暖房施設
駐車場(融雪)
福祉施設
幼稚園・保育施設
温浴施設・プール
病院・医療施設
2011~13
補助金申請件数
工場
農業施設・畜産施設
2011までの
設置件数
宿泊施設
店舗
(環境省調査データ)
学校
実験施設
道路(融雪)
公共施設
事務所
0
20
40
60
80
100
120
18
普及・現状
地中熱ヒートポンプシステム
住宅・建物・プール・地域冷暖房等への施設に導入
店舗(セブンイレブン/JFEエンジニアリング)
19
普及・現状
20
商業施設での地中熱利用
びっくりドンキー(アレフ)
コンビニ
(セブンイレブンジャパン)
ヒートポンプ
ヒートポンプ
(JFEエンジニアリング)
普及・現状
東京駅前の地中熱利用施設
21
KITTE(旧東京中央郵便局)
JPタワーのアトリウム
床の冷暖房に地中熱が利用されている
普及・現状
22
「東京スカイツリー地区」への地中熱の導入
再生可能エネルギー導入事例100(経済産業省 資源エネルギー庁)
地中熱エネルギー利用促進議員連盟(小池百合子会長)の視察
普及・現状
23
東京スカイツリー地区での地中熱利用
地中熱議連による視察
(東武エネルギーマネージメント 資料)
24
普及・現状
1.福岡新宮店の設備概要
2.立川店の設備概要
普及・現状
施設概要
25
建物名称:IKEA福岡新宮
所 在 地:福岡県糟屋郡新宮町
延床面積:31,800㎡
建物階数:地上2階
建物構造:鉄骨造
店舗開業:2012年4月
IKEA福岡新宮ストアへの導入事例
資料提供: (株)ミサワ環境技術
普及・現状
26
環境にやさしい取り組み
①太陽光発電
再生可能エネルギーとして注目されている太陽光発電を敷地内で行っています。太陽光パネルは、
駐車場の屋根の上に設置しています。
② 地中熱利用
再生可能エネルギーである地中熱をくみ上げ、冷暖房へ利用することにより、省エネとヒートアイラン
ド現象の抑制をします。
③雨水利用
雨水をタンクに溜め、トイレの洗浄水や非常時の消火用水に利用しています。
④自然採光
スカイハッチという装置により、照明として自然光を採光しています。
⑤氷蓄熱ヒートポンプ
夜間電力を用いて作られた氷を溶かして冷房などに利用することにより、電力消費の多い昼間の省
エネに貢献しています。
IKEA福岡新宮への導入事例
IKEA福岡新宮ストアへの導入事例
資料提供: (株)ミサワ環境技術
普及・現状
27
熱源システム概要
地中熱源ヒートポンプ 暖房能力 530kW
冷房能力 527kW
地中熱交換器 深さ100m×70本
(ダブルU字管)
空気熱源ヒートポンプ 暖房能力 500kW
冷房能力 475kW
その他個別系統
PAC 約1500kW
IKEA福岡新宮への導入事例
IKEA福岡新宮ストアへの導入事例
地中熱交換器
100m×70本
資料提供: (株)ミサワ環境技術
28
消費電力・CO2排出量削減効果
普及・現状
500
180
450
160
消費電力量(MWh/年)
36%
削減
36%
削減
400
350
120
300
250
200
140
空冷
117
空冷
458
空冷
171
空冷
44
100
80
60
150
地中熱
66
地中熱HP+空冷HP
(実績)
0
地中熱HP+空冷HP
(実績)
50
0
空冷HP
(試算)
40
地中熱
177
100
消費電力量
(MWh/年)
エネルギー削減量:42kL/年
(原油換算)
IKEA福岡新宮への導入事例
IKEA福岡新宮ストアへの導入事例
空冷HP
(試算)
CO2 排出量(t・CO2 /年)
2012年4月~2013年3月実績値
20
CO2排出量
(t・CO2/年)
CO2削減量:61t・CO2/年
資料提供: (株)ミサワ環境技術
普及・現状
29
施設概要
建物名称:IKEA立川
所 在 地:東京都立川市
建物階数:地上4階(1・2階店舗、3・4階駐車場)
店舗開業:2014年春(予定)
資料提供: (株)ミサワ環境技術
普及・現状
30
熱源システム概要
400kW
400kW
550kW
350kW
地中熱源ヒートポンプ
地中熱交換器
空気熱源ヒートポンプ
ガス焚冷温水発生機
350kW×1台
深さ100m×45本
550kW×1台
400kW×2台
地中熱設備範囲
地中熱交換器100m×45本 資料提供: (株)ミサワ環境技術
普及・現状
31
施設平面図
地中熱交換器
店舗
資料提供: (株)ミサワ環境技術
普及・現状
32
施工状況
ボーリングマシン
機械ボーリング全景
(ボーリングマシン2台
による施工状況)
地質状況
GL- 0~ 35m 砂礫
GL-35~100m 砂・粘土
資料提供: (株)ミサワ環境技術
展望
33
普及課題と対応策
2015.8.7
普及課題
コスト(とくに初期コスト)
認知度
国及び地方の政策
技術開発
地質情報整備
環境影響評価
技術の普及
対応策
・投資回収期間(初期コスト回収期間)の短縮
・累積生産量の増加によるコストの低減(学習曲線)
・国や地方自治体による補助金
・ESCO事業
・国・地方自治体の政策等からの情報発信
・関連業界での広報活動(展示会・専門雑誌・新聞等)
・知名度の高い建築物への導入、マスコミ・WEB
・実証事例の蓄積による信頼性の醸成
・エネルギー・環境政策、特に再エネ熱の政策
・公共部門での率先導入 国交省の導入ガイドライン
・地中熱ヒートポンプの省エネ基準への対応
・システム性能の向上と低コスト化
・ネット・ゼロ・エネルギー・ビル/住宅
・まちづくりの中での地中熱利用
・地質情報データベースの整備、ポテンシャルマップ
・環境省のガイドライン
・環境影響評価の研究
・技術の標準化、機器認証
・技術者の育成(地中熱講座)、品質確保(資格制度)
展望
34
認知度の向上
地中熱利用設備が導入された甲府市庁舎(甲府市)
再生可能エネルギー導入事例100
(経済産業省 資源エネルギー庁)
地中熱利用設備が導入される北陸新幹線上越妙高駅(上越市)
展望
35
地中熱利用促進協会 の広報活動:
展示会出展、普及書出版
NEW環境展・地球温暖化防止展での15社の共同ブース
主要な展示会への出展一覧(2013年10月~2014年8月)
展示会名
期間
パンフレット
配布部数
NEW環境展・地球温暖化防止展
5月27日~30日
1000
スマートコミュニティJapan
6月18日~20日
540
再生可能エネルギー世界展示会
7月30日~8月1日
670
不動産ソルーションフェア
10月21日~22日
40
社会イノベーション
10月29日~30日
440
エコプロダクツ
12月11日~13日
260
ENEX
1月28日~30日
750
共同ブース
○
地中熱利用ヒートポンプの基本がわかる本
○
横浜産業新聞 副編集長 内藤春雄 著
地中熱利用促進協会 監修
B5サイズ165頁
平成24年10月25日 発行
オーム社
展望
36
地中熱利用促進協会の活動 :
地中熱講座(基礎・設計・施工)
施工管理マニュアル
• 地中熱講座
地中熱ヒートポンプの利用技術の基礎
を習得することが目的の基礎講座(これ
まで10回実施)、実務的な設計講座(平
成24年度新設 3回実施)、施工管理講
座(平成26年度新設 2回実施)を開
設。
• マニュアル
地中熱ヒートポンプの施工管理マニュ
アルを、地中熱利用促進協会で作成。
市場の拡大にともない着実な施工と、
施工の標準化が求められている。この
マニュアルでは現場で効率的な施工が
行えるように、これまで施工実績の多
い企業、それぞれの専門分野の企業
の知見と技術を集約。
オーム社から2014年12月に出版。
基礎講座のプログラム
展望
街づくりの中の地中熱利用
37
地中熱による地域熱供給
•
•
•
•
•
個別建物での地中熱利用
個別建物での地中熱利用
ーーーーーー
ーーーーーー
ーーーーーー
統合したシステム
• 供給サイド: 集中工事によるコストの削減
• 需要サイド: 利用量の平準化
展望
38
展望
街づくりの中での地中熱の活用
39
地中からの熱源水の供給システム
学校
消防署
ヒートポンプ
システム
病院
ヒートポンプ
システム
ヒートポンプ
システム
熱源水
ヒート
ポンプ
ヒート
ポンプ
住宅
住宅
地中熱交換器
(共通施設)
(笹田, 2012)
展望
街づくりの中の地中熱利用
海外の先行事例
• 米国オクラホマ州タルサのBrady Village
• スイスのリヒティでの大規模システム
• チューリッヒ工科大学のサイエンスシティ
• カナダ、アルバータのOkotoksので太陽熱利用と
の組合せ
40
展望
チューリッヒ工科大学(ETH)
サイエンスシティ
41
(ETH資料)
展望
チューリッヒ工科大学(ETH)
サイエンスシティ
42
(ETH資料)
展望
オコトクス(カナダ)
43
太陽熱との組合せ
(Sibbitt et al., 2011)
展望
オコトクス(カナダ)
44
太陽熱との組合せ
(Sibbitt et al., 2011)
45
ご清聴ありがとうございました
http://www.geohpaj.org
Fly UP