Comments
Description
Transcript
地中熱利用の現状と 事業化の展望
2012年6月8日 日本を元気にする 産業技術会議シンポ 地中熱利用の現状と 事業化の展望 地中熱利用促進協会 笹田 政克 目次 • • • • • • • • 地中熱利用の概要 省エネ・節電効果 普及の現状 普及課題 コストの考え方 国の政策 事業の構造 産官学‐NPOの連携 地中熱の利用 (地中熱利用促進協会) 地中熱ヒートポンプシステム クローズドループで使用する地中熱交換器 ボアホール方式 杭方式 鋼管杭(新日鉄エンジニアリング資料) Uチューブ (日伸テクノ資料) PHC杭 (日本設計資料) 場所打ち杭 大成建設資料) 省エネ・CO2 排出量削減に効果的 暖房 ton/年 一次エネルギー 灯油換算 1470 L 2006年 ヒートポンプ暖房出力6.2kW, ボアホール50m x 3本(150m) COP(期間平均)3.4, 住宅床面積129m2, Q値1.6W/(m2・K), C値0.8cm2/m2 富良野市木造3階建住宅2005年10月竣工(北海道大学地中熱講座 2007) 山口県の中学校 2007年 ton/年 2007年 ヒートポンプ冷却能力308kW, 加熱能力270kW, ボアホール100m x 30本 下関市立豊北中学校2006年4月開校(栫 2010) 2004年-2008年 ton/年 2004年-2008年 在来システム ・空冷チラー ・灯油ボイラー ・電熱線融雪 C ヒートポンプ冷暖房用15HP(対象床面積329m2), 融雪用30HP(歩道360m2) ボアホール90m x 16本(1440m), COP4.3(年平均)3.5 (暖房)5.8(冷房) 6.8(融雪) 弘前市まちなか情報センター2004年4月運転開始(石上ほか 2010) 冷暖房 CO2発生量 一次エネルギー GJ/年 GJ/年 冷暖房・融雪 CO2発生量 2006年 CO2発生量 GJ/年 青森県の公共施設 一次エネルギー 北海道の住宅 東京都のオフィスビル 電力量 kWh 空調更新 空気熱 → 地中熱 2008年-2009年 冷暖房 CO2削減量 3.8 ton/年 C ヒートポンプ20HP冷房58.3kW, 暖房65.6kW, ボアホール75m x 8本(600m) オフィス床面積303m2(101m2 x 3), COP4.3(年平均)3.6(暖房)5.8(冷房) 一番町笹田ビル2008年11月運転開始(笹田 2010) 夏期最大ピーク日の電力需要カーブ推計 (東京電力管内) (資源エネルギー庁) 地中熱ヒートポンプは節電効果大 東京電力管内では、原発3基分(5基分)の節電 暖房比較 (2010年3月2日) 14 日消費電力(kWh) 12 冷房比較 (2009年7月15日) 業務部門全体の機器別電力需要(東京電力管内) 19% 10 39% 8 6 4 空 気 熱 2 地 中 熱 空 気 熱 地 中 熱 0 (資料提供:JFE鋼管株式会社) 空調電力消費量 kWh 3000 空気熱 2005-07年の平均 地中熱 2008-09年 年間 49%削減 2000 1000 0 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10月 地中熱と空気熱の年間運転実績の比較(笹田, 2010) (資源エネルギー庁) 夏は東京電力管内で850万kWの不足が予想されているが、 ピーク時間帯において全エアコンの消費電力1000万kWを3 分の1削減すれば330万kWの節約ができる。 また廃熱を地中に放出するためヒートアイランド現象の緩和 が期待され、都内のオフィスビル街区を地中熱利用ヒートポ ンプに置き換えた場合、最高気温で1.2℃程度のヒートアイラ ンド緩和効果が試算されている(玄地、2001)。仮に気温を 1℃下げることができれば170万kWの節約ができ、両者の効 果によって夏のピーク負荷を500万kW低減させることが可能 となる。 (日本地熱学会地中熱利用技術専門部会の提言より) 地中熱ヒートポンプの設置件数 地中熱ヒートポンプの普及状況 地中熱ヒートポンプシステム 住宅・建物・プール・地域冷暖房等への施設に導入 地中熱ヒートポンプの普及状況 世界の状況 TJ/年 設備容量(MWt)* 地中熱ヒートポンプ 世界の利用量 (Lund, 2010) *: 欧米においては家庭用の地中熱ヒートポンプの平均的 なサイズが12kWtであることから、各国の設備容量をこの値 で除した値をもって、その国における地中熱ヒートポンプの 普及台数とみなすことができる。 このように換算すると米国 での普及台数はおよそ百万台となる。 (Lund, 2010) 普及課題と対応策 普及課題 コスト(とくに初期コスト) 認知度 国及び地方の政策 技術開発 対応策 ・普及が進む価格帯を実現 ・設備費回収期間の大幅な短縮 ・国・地方の助成策 ・地中熱利用を多くの市民・行政担当者が理解 ・知名度の高い建築物に地中熱利用設備を導入 ・実証事例の蓄積による信頼性の醸成 ・国の政策の中に地中熱を明確に位置付ける ・助成制度等の政策の充実 ・公共部門での市場創出 ・システム性能の向上 ・低コスト化の実現 ・将来的には、ゼロ・エミッション・ビル/住宅の実現 地質情報整備 ・地質情報のデータベースの整備。設計リスクの軽減 環境影響評価 ・環境影響評価により地中熱の望ましい利用法を定着 技術水準 ・技術水準の維持向上 ・高品質な地中熱利用システムを提供 ライフサイクルコストの考え方 (長野 2010) 住宅用地中熱ヒートポンプシステム 初期コストの費用構造 最近の施工例と概算額 万円 住宅用10kWのクローズドループ(150m掘削)のコスト 1) 関東地方での施工例は、室内機にファンコイ ルユニットを4台設置した冷暖房システム(2010年 実績) 2)北海道での概算例は、室内機には放熱器を用 いた暖房用システム(長野, 2010) (NEDOパンフレット 2006) 初期コストの低減実績 スイスでの25年間の実績 (FWSの資料より) 拡大が期待される需要側の種別 需要側の種別 病院 福祉施設 温浴施設 ホテル コンビニ 融雪施設 消防署 学校 公共施設 拡大が期待される内容 大きな熱需要 地中熱に近い温度の熱需要 環境・エネルギー教育 省エネ・節電・温暖化対策の普及 住宅 市民の環境・エネルギーへの貢献 (将来) ゼロ・エネルギー住宅 オフィスビル 企業の環境・エネルギーへの貢献 (将来) ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB) 国の基本文書に明記 平成22年 • 「新成長戦略」(平成22年6月) 「固定価格買取制度」の導入等による再生可能エネル ギー・急拡大 第四に、木質バイオマスの熱利用、空気熱利用、地中熱・太陽熱の温水利 用等の普及を推進する。 これにより、2020 年までに再生可能エネルギー関 連市場10 兆円を目指す。 (地中熱関連部分の文章を抜粋) • 「エネルギー基本計画」(平成22年6月) 再生可能エネルギーの利用拡大 さらに、空気熱の導入促進及び地中熱等の温度差エネルギーの利用促進 のため、産業用・業務用・家庭用の給湯・空調等におけるヒートポンプの利 用促進を図る。 (地中熱関連部分の文章を抜粋) 平成24年度 各省の関連予算 環境省 ・ クールシティ推進事業 地中熱利用の普及方策の構築(新規) 0.62億円 ・ 環境技術実証事業 ・ グリーンニューディール基金 121億円 ・ 地域の再生可能エネルギー等を活用した自立分散型地域づくり(新規) 10億円 ・ チャレンジ25地域づくり事業 27億円 ・ 地球温暖化対策技術開発等事業 60億円 経済産業省 ・ 再生可能エネルギー熱利用加速化支援対策費補助金 ・ 再生可能エネルギー熱利用計測技術実証事業 ・ 住宅・建築物のネット・ゼロ・エネルギー化推進事業(新規) 40億円 1.4億円 70億円 国土交通省 ・ 官庁施設のゼロエネルギー化 ・ ゼロエネルギー住宅等の推進(国土交通省・経済産業省の共同事業) 総務省 ・ 緑の分権改革推進事業 2.8億円 建物の空調システム(中小規模・戸建) クローズドループ型地中熱ヒートポンプ 設備設計の範囲 建物 室外機 地中熱ヒートポンプシステムの範囲 ビルマルチ・住宅用 室内機 熱源水 室内機 地中熱 ヒートポンプ 冷媒/冷温水 地中熱の補助金 (再エネ熱利用) の対象範囲 地中熱交換器 ・ボアホール方式 ・杭方式 室内機 建物の空調システム(大規模) クローズドループ型地中熱ヒートポンプ 設備設計の範囲 クーリング タワー等の 屋外機 建物 ヒートポンプ 地中熱 チラー等 ヒートポンプ 他の熱源機 室内機 地中熱ヒートポンプシステムの範囲 熱源水 室内機 地中熱 ヒートポンプ 冷温水 地中熱の補助金 (再エネ熱利用) の対象範囲 地中熱交換器 ・ボアホール方式 ・杭方式 室内機 地中熱ヒートポンプ導入事業の構図 地中熱事業のプレイヤー 地中熱利用の普及に向けた 産官学‐NPOの連携 NPO法人 地中熱利用促進協会 団体会員 175社 個人会員 56名 特別会員 64名 ヒートポンプメーカー 施工/掘削会社・設備会社 地中熱利用促進協会 地域協議会 産総研 経済産業省 環境省 国土交通省 農林水産省 都道府県 建築・土木工学 衛生工学 資源工学 地球科学 山梨県地中熱利用推進協議会(H22) 北関東産官学研究会地中熱利用研究 会(群馬県 H22) 岐阜地中熱利用研究会(H23) 長野県地中熱利用促進協議会(H23) 新潟県地中熱利用研究会(H24) 秋田県地球熱利用・産業振興協議会 まとめ • 地中熱は、いつでも、どこでも、安定的に利用で きる再生可能エネルギー。 • 地中熱ヒートポンプは、省エネ・節電効果、CO2 削減効果、ヒートアイランド対策に優れている。 • 普及は加速しているが、世界的に見るとわが国 は圧倒的に遅れをとっており、初期コストの低減 と認知度の向上が大きな課題。 • 環境省・経済産業省などで普及に向けた施策を 実施。 • 地中熱設備の導入事業には、施主・設計・施工 で複数のプレイヤーが関与。 • 地中熱の普及拡大に向けて、産官学‐NPOの連 携が重要。