...

報告書 - 留学生教育学会

by user

on
Category: Documents
3

views

Report

Comments

Transcript

報告書 - 留学生教育学会
留学生教育学会(JAISE)
2014 年度留学生担当教職員研究分科会
(東京分科会)
「留学生教育における学内外連携の
現状と課題」
報告書
2015 年 2 月 20 日~21 日
於一橋大学佐野書院
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
目
はじめに
次
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
特別セミナー
① 「広島県の留学生増加(倍増)に向けた方策」 太田
浩(一橋大学)
・・・・・・・5
② 「留学生交流プログラム FACE を通じての地域との連携について」
原田 麻里子(東京大学)・・・・・・・・・・20
③ 「継続性をふまえた留学生教育と地域連携への試み」
田口 香織(東北大学)
・34
一般発表(報告者の了解がとれた配布資料のみ掲載)
①「国内の日本語学校在籍留学生への大学情報提供について
~エンロールメント・マネジメントによる支援~」
前田 和則(崇城大学)・・・・・・・・・・・52
②「留学生の防災教育~参加型地震防災教育開発プロジェクトにおける成果と課題~」
紫藤 真由氏(静岡大学院)
・・・・・・・・・59
③「大学の枠組みを越境した連携:
防災・減災に関する東北大学・名古屋大学での授業の実践報告」
島崎 薫氏(東北大学)
、渡部 留美氏、Emanuel LELEITO(名古屋大学)
・・・68
④「地域ボランティアと大学の連携−
留学生・外国人研究者の家族のための支援団体の活動事例から」
渡部 留美氏(名古屋大学)
・・・・・・・・・76
⑤「日本とマレーシアの高等教育連携」仙石 祐氏(クアラルンプール大学)・・・・84
⑥「留学生のキャリア支援に関する新たな試み:
留学生と地域企業の交流推進事業の実践報告」
伊東 章子氏(名古屋大学)
・・・・・・・・・97
1
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
はじめに
本報告書は、2015 年 2 月 20 日~21 日に一橋大学佐野書院で開催した JAISE 留学生担当
教職員分科会の内容を、後日報告者らの意見をとり入れて編集したものである。この分科
会の目的は、
① 留学生教育・アドバイジングに関わる者として求められる知識・スキル・態度につい
て相互に学び、専門性を向上させる。
② それぞれ持ち寄った問題について知恵や経験を寄せ合うことで、問題を解決の方向に
前進させる。
③ 顔の見える関係としてのネットワークをつくる。
であり、参加者から「オフレコ」も含めて率直な意見が活発に交わされるように工夫して
運営している。JAISE 会員ではなくても参加できるオープンな場であり、ベテランや常連の
方から初参加の方まで毎回留学生に関わる様々な方との出会いがある。
2014 年度の本分科会のテーマは「留学生教育における学内外連携の現状と課題」であり、
このテーマに即した発表が初日に 6 本、翌日の特別セミナーで 3 本報告された。概要は以下の通
りである。
崇城大学の前田和則氏による「国内の日本語学校在籍留学生への大学情報提供について
~エンロールメント・マネジメントによる支援~」は、進路選択ミスを防ぐために適切な
情報を本人に届けることが必要であるとして、オープンキャンパスのような特別の企画で
はなく、ありのままのキャンパスをみてもらうための留学生用プログラムを実施している
との報告であった。同プログラムでは、正規の授業と同じ教員・時間による講義・実験・
実習や在学生との交流を行い、留学生が本当に進みたい分野かどうかの判断材料を提供し
ている。
静岡大学院生の紫藤真由氏による「留学生の防災教育~参加型地震防災教育開発プロジ
ェクトにおける成果と課題~」は、留学生が基本的な防災リテラシーを身につけ、地域に
対して共助の力となるには事前の継続的な教育支援が重要と考え、多文化共生の視点に立
った防災教育の観点から教材開発と参加型地震防災教育を実施したという報告であった。
その実践には静岡のいくつかの大学や日本語学校から、のべ 100 人以上が参加したが、そ
の概要、特色、成果と今後の課題について紹介があった。
東北大学の島崎薫氏、名古屋大学の Emanuel LELEITO 氏、渡部留美氏による「大学の枠
組みを越境した連携:防災・減災に関する東北大学・名古屋大学での授業の実践報告」で
は、東北大学と名古屋大学の教員が共同で開発・実施し、両大学の留学生・日本人学生を
対象に、地震をはじめとした災害・危機管理への理解を深めることを目的として開講した
授業の実践報告がなされた。インターネットを介したテレビ会議システムを利用して、双
方の大学が講義を提供し、また被災地でフィールドトリップを実施して得られた効果や浮
き彫りとなった課題が示された。
引き続き、渡部留美氏による「地域ボランティアと大学の連携−留学生・外国人研究者の
家族のための支援団体の活動事例から」の報告があったが、これは自身の長年にわたるボ
ランティア経験・大学スタッフとしての立場・国際教育研究者としての立場といった三通
りの観点から、留学生及び外国人研究者の家族のための支援団体と大学との連携のポイン
トを考察した内容であった。ボランティア団体が抱える課題、ボランティアが大学スタッ
フ・国際教育研究者に期待する点など、参考になる様々な知見が提供された。
2
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
クアラルンプール大学の仙石祐氏による「日本とマレーシアの高等教育連携」は、ツイ
ニングプログラムである MJHEP*(Malaysia Japan Higher Education Program)と現地の大学
及び日本の各大学の連携、そして理工系科と日本語科及び日本人とマレー人の教員の連携
による教育支援を事例とした報告であった。このツイニングプログラムにおける共通シラ
バス・単位認定・教授内容などの様々なすり合わせ・協働の実態と連携上の問題点と課題
が指摘された。
(*MJHEP の学生はマレーシアで予備教育学年と大学 1,・2 回生の専門基礎教
育を日本語で受け、大学連合に加盟する日本の国公立・私立大学の 3 回生に編入する。
)
名古屋大学の伊東章子氏による「留学生のキャリア支援に関する新たな試み:留学生と
地域企業の交流推進事業の実践報告」では、愛知県のものづくり企業と、日本での就職を
希望する留学生の交流推進を目的に行う名古屋大学「ものづくりプロジェクト」の取組が
紹介された。留学生が当該企業や業界について知識を深めるワークショップと、企業を訪
れて担当者や就職した元留学生との交流を行うサイトスタディの二つの活動があり、その
活動意義や効果、今後の反省点が示された。
これらの報告のあと、短時間ではあったがワークショップを行い、参加者でグループご
とに「連携とは何か」を議論した。そこで得られた「望ましい連携のポイント」は以下の
通りである。
① 目的・目標を明確にして、それを共有して連携する。危機感も共有する。
② 知識・能力・マンパワーを補い合い、支援対象者の効用が Max かつ皆が win-win
になる点を探す。
③ 情報を共有し、丁寧にコミュニケーションをとる。
お互いの共通の目的のために、今困っていることを出し合い、お互いに足りないもの(知
識・能力・時間)を補い合い、間違いを恐れず、win-win の状況を作り上げていくことが重
要である。
次に、特別セミナーについて述べる。まず、一橋大学の太田浩氏による「広島県の留学
生増加(倍増)に向けた方策」は、太田氏が広島県のアドバイザーとして 2013 年度から始
めた大規模な連携事例の報告であった。同氏は、国内外の多様な専門家と連携しつつ、広
島県内の教育機関や関西の日本語学校と連携して留学生を増やす各種の改善策を実施して
いる。その方策は、学位取得留学生に対して「広島トラック」を作り、大学への接続性を
高めたり、編入学制度や渡日前入学許可制度の導入、新しい就職支援(有償インターンシ
ップ)を実施したりするなど包括的で先進的な内容である。同氏の指摘や取り組みは留学
生増加に向けた条件整備のみならず、日本の長期的な発展を見据えた試みといえよう。
東京大学の原田麻里子氏による「留学生交流プログラム FACE を通じての地域との連携に
ついて」は、東京大学国際センター相談室の事業の柱・コンセプト、FACE プログラムの概
要・コンセプト・課題、同プログラムから発展した交流プログラムや今後の連携の紹介で
あった。15 年という長期にわたってコーディネーターとして運営に携わってきた原田氏に
よる報告は、数多くの地域住民と連携して留学生やその家族をきめ細やかに支援し、地域
住民と留学生の関係性の構築と地域の多文化化に尽力していることが伺える内容であった。
東北大学の田口香織氏による「継続性をふまえた留学生教育と地域連携への試み」では、
東北大学における 2014 年度からスタートした仙台市や地元企業の連携事例の紹介があった。
特に地元老舗百貨店の国際化プロジェクトの事例では、留学生の観点や留学生との交流が
3
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
百貨店社員の意識を変えたという劇的な効果が報告された。また、同氏らによる地域企業
との連携による大学・企業・留学生のそれぞれのメリットや地域との連携上のポイントの
提示があり、意欲的な活動から得られた価値ある知見が共有できた。
本分科会で「地域連携」をテーマにしたのは初めてである。「留学生教育」を軸とした地
域における学内外連携の主たるアクターは地域住民であると当初想定されていたが、9 本の
報告で扱われたアクターは自治体・企業・業界団体・日本語学校や他大学・住民団体・個々
の住民など多様であり、また国や県を越えた多様な連携の事例が集まった会となった。留
学生教育・支援の分野で様々なアクターと連携する実践者による刺激的な会となったこと
に感謝申し上げる。
ある参加者から、「『日本人がどう変わっていくか?』を最終的な問題と位置づけてフォ
ーカスしたモデルとして聞いた。
」との感想をいただいたが、地域住民・企業・自治体とい
ったアクターの多くは日本人であり、その多くの日本人と外国籍住民がコミュニケーショ
ンをとりながら、共に学び生活して win-win の関係を作るために変わっていくことが重要
と理解できた機会となったと考える。
本分科会世話人:
宮崎悦子(金沢大学)
、末松和子(東北大学)、秋庭裕子(一橋大学)
4
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
<特別セミナー:報告 1>
広島県の留学生の増加(倍増)に向けた方策」
一橋大 太田
(本文は掲載せず、配布資料のみ次ページから掲載)
5
浩
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
広島県の留学生増加(倍増)
に向けた方策
留学生教育における学内外連携の現状と課題
留学生教育学会の留学生担当教職員分科会
2015年2月21日(土)
一橋大学 佐野書院
一橋大学 国際教育センター
太田 浩
Email: [email protected]
留学生増加に向けたボトルネック
• 私大に留学生受入れ(獲得)のインセンティブが十分にない。
• 大手私大と国立大以外は、財政的負担を考慮すると留学生の
増加に消極的な面がある(但し、生き残りのための留学生受入
れは増加傾向)。
(要因)・日本人学生と比較して外国人留学生受入れは高コスト
【元関大河田学長コメント】(文系)2倍 (理系)1.5倍
日本語教育,授業料減免,留学生サポートスタッフの人件費
事務コスト
・私大では国費留学生の割り当てが少ない。
• 留学生も大学での入試を受験(書類審査のみでの合否判定が
世界標準):留学生の6~7割は、国内の日本語学校経由で入学
• 貧弱な海外での留学生リクルーティング:「受入れ」⇒「獲得」へ
• 留学生宿舎(全体の23%が入居)の圧倒的不足
• 留学生別科(大学付属日本語学校)が少ない。大学と日本語学
校の連携も進まない。
1
6
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
日本留学の動向
• 中国、韓国、台湾:私費での留学が可能だが、英米志向が強い。
今後は対策がないと減少(日韓、日中関係の悪化)。中国東北
部は増加の余地があるか。
• 近隣アジア諸国の高等教育発展(成熟)と留学生送出し国から
受入れ国への転換:韓国(20万人 by 2020)、中国(50万人 by
2020)、シンガポール(15万人 by 2015)
• インドネシア, ベトナム,ミャンマー,ネパール:留学生の増加の可能性は大
きい。ただし、経済的支援が必要不可欠
• 先進国を中心に日本への交換・短期留学の需要は大きい。自校
の学生を海外留学させる機会も創出
2
近年の国の留学生支援逓減の状況
• 留学生授業料減免への補助制度廃止(2010年分から)
激変緩和措置あり
• 外国人留学生医療費補助制度廃止(2009年)
• 留学生奨学金(国費留学生や学習奨励費)予算の減額
(2009年:316億円→2012年:277億円)
• 宿舎建設奨励金の廃止(2009年)
日本人学生の海外留学支援に政策転換: 2020年までに
海外留学者数を6万人(2010年)から12万人へ倍増
• 海外留学奨学金予算(2009年:6.3億円→2014年:70億
円)
3
7
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
広島県の対応の方向
2013年度より
○ 大学の自助努力や財政的負担を前提に、留学
生数増を求めるのは現実的でない。県が文科省
やJASSOに代わる、何らかの支援を行うことが必要
○ 交換・短期留学生受入れの受け皿(プログラム
等)作りと学生国際交流の基盤づくりを県が支援
できないか。
4
留学生数増加(倍増)に向けた方策
方策 Ⅰ 学位取得留学生の増加
方策 Ⅱ 交換・短期留学生の増加
方策 Ⅲ 海外PRの実施手法の改革
5
8
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
学位取得留学生の増加
留学生数増加(倍増)に向けた方策 Ⅰ
<学位取得留学生の増加>
【現状】
○ 日本の留学生全体の92%は学位取得留学生
○ 大学に在籍する留学生の6-7割は国内の日本語
学校、大学、短大等からの進学
6
学位取得留学生の増加
広島県:学部留学生の割合が低く
日本語学校からの進学者が少ない
留 学 生 数
在籍区分
学位取得 大学院
留学生 大学等
専門学校
その他
計
専門学校でない日本語学校
広島県
942
953
275
329
2,499
125
(%)
(37.7)
(38.1)
(11.0)
(13.2)
(100.0)
-
全国
35,445
59,581
25,167
17,563
137,756
24,092
(%)
(25.7)
(43.3)
(18.3)
(12.7)
(100.0)
-
単位:人,%
福岡県
(%)
1,981
(19.0)
5,974
(57.3)
1,309
(12.5)
1,170
(11.2)
10,434
(100.0)
1,305
-
(%)
(1.1)
(18.6)
(40.1)
(1.3)
(61.2)
(37.8)
(1.0)
(100.0)
単位:人,%
福岡県
(%)
42
(0.4)
1,731
(16.6)
5,463
(52.4)
151
(1.4)
7,387
(70.8)
3,036
(29.1)
11
(0.1)
10,434
(100.0)
※ 大学等:大学+短大+高等専門校
※ 日本学生支援機構「留学生調査」の結果による。
直 前 の 在 籍 機 関
在籍区分
社会人
大学等
日本語学校等
国内
高校等
計
海外
不明
計
広島県
38
711
626
10
1,385
1,101
13
2,499
(%)
(1.5)
(28.5)
(25.1)
(0.4)
(55.4)
(44.1)
(0.5)
(100.0)
全国
1,572
25,649
55,230
1,841
84,292
52,070
1,394
137,756
※ 大学等:大学+短大+高等専門校
※ 日本語学校等には,専門学校及び準備教育課程を含む。
※ 日本学生支援機構「留学生調査」の結果による。
県内の日本語学校の約3分の1が県外に進学
7
9
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
学位取得留学生の増加
広島県:卒業後、帰国する者が多く
県内で就職する者の割合は少ない
留 学 生 数
在籍区分
学位取得 大学院
留学生 大学等
専門学校
その他
計
専門学校でない日本
広島県
942
953
275
329
2,499
125
(%)
(37.7)
(38.1)
(11.0)
(13.2)
(100.0)
-
全国
35,445
59,581
25,167
17,563
137,756
24,092
(%)
(25.7)
(43.3)
(18.3)
(12.7)
(100.0)
-
単位:人,%
福岡県
(%)
1,981
(19.0)
5,974
(57.3)
1,309
(12.5)
1,170
(11.2)
10,434
(100.0)
1,305
-
※ 大学等:大学+短大+高等専門校
※ 日本学生支援機構「留学生調査」の結果による。
卒 業 後 の 進 路(H24.3月)
進路
就職
進学
国内
その他
計
海外
不明
計
広島県
125
302
63
490
321
27
838
(%)
(14.9)
(36.0)
(7.5)
(58.5)
(38.3)
(3.2)
(100.0)
全国
7,910
11,203
4,684
23,797
11,782
2,319
37,898
(%)
(20.9)
(29.6)
(12.4)
(62.8)
(31.1)
(6.1)
(100.0)
単位:人,%
福岡県
(%)
329
(13.4)
999
(40.8)
239
(9.8)
1,567
(64.0)
698
(28.5)
182
(7.4)
2,447
(100.0)
※ 日本学生支援機構「留学生調査」の結果による。
卒 業 後 の 進 路(H24年の就職)
就職者
県内就職者数
広島県
95
全国
10,969
単位:人
福岡県
404
※ 法務省入国管理局「平成24年における留学生の日本企業等への就職状況について」による。
8
学位取得留学生の増加
方策1 県内の日本語学校への留学生誘致を強化
県内の大学との連携を促進
a) 県内(外)の日本語学校から県内の専門学校、短大、大
学への進学ルート(推薦入学制度)を構築
b) 国外(中国東北部,韓国,台湾,モンゴル等)の日本語
学校、留学予備校から県内の日本語学校への留学ルート
を強化
c) 県内の大学や短大における留学生向け日本語教育を県内
(外)の日本語学校に委託(日本語学校での日本語教育
と大学短大における日本語教育の接続性も高める)
※ これから留学生受入れに取り組む大学や短大にとって
重要 ⇒ 全体として留学生の量も質も向上させる
9
10
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
学位取得留学生の増加
方策2
県内の専門学校や短大から大学への編入
学を促進(横の移動を促進)
方策3
渡日前入学許可制度を活用
a) 海外から県内の大学への直接応募を推進
書類審査(大学での入学・面接試験を課さない)に
よる入学者選抜の導入(面接はSkypeでも可能)
b) 海外での現地入試実施
c) 海外の短大や大学から県内の大学への編入学(単位
認定を伴う)を導入
d)「落とすための入試(優秀か否か)」から「獲得す
るための入学選考(可能性や潜在能力の有無)」へ10
学位取得留学生の増加
方策4
留学生の県内での就職支援を強化
県内で日本語教育から就職までの一貫した
留学ルートを構築し、優秀な留学生(卒業生)
を社会に送り出す(“広島モデル”の構築)。
課題:私大の受入れ意欲回復に向けた経済的支援
⇒廃止・縮小された文科省・JASSOの留学生に対する
授業料減免、奨学金、医療費補助の補てん(県、経
済界の支援)
11
11
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
交換・短期留学生の増加
留学生数増加(倍増)に向けた方策 Ⅱ
<交換・短期留学生の増加>
【現状】
○ 日本の留学生全体のわずか8%
○ 日本のポップ・カルチャー人気により先進国を
中心に需要大
○ 将来の大学院留学先の候補
○ 日本人学生の交換留学先確保
12
交換・短期留学生の増加
方策1
県大サテライトキャンパスにおいて、英語に
よる科目と日本語初級科目を中心としたプログ
ラム(交換・短期留学生の受け皿)を共同開講
a) 英語による科目:各大学の持ち寄り
日本語初級科目:日本語学校に委託
b) 交換・短期留学生:共同利用施設と受入れ大学の授業科
目どちらも履修可
c) 英語による科目:日本人学生にも履修を推奨(国内留学
または海外留学準備として)
※課題: 学生国際交流の基盤づくりへの支援
交流協定校の開拓・協定締結への支援
交換・短期留学生の宿舎確保
12
13
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
学位取得留学生の増加
広島県:短期留学生の人数は少ないが
福岡県よりも出身国は多様
広島(34か国,384人)
南米
1%
北欧
1%
上位10か国
欧州
11%
順位
人数
順位
1位 中国
122
6位 インドネシア
18
2位 台湾
77
7位 タイ
14
アフリカ
0%
3位 韓国
51
8位 オーストラリア
9
4位 アメリカ合衆国
25
9位 ポーランド
6
中東
0%
5位 ドイツ
20
9位 フランス
6
北米
7%
大洋州
3%
中国
32%
その他アジ
ア
32%
韓国
13%
南米
1%
北米
13%
北欧
3%
中東
1%
人数
福岡(28か国,652人)
中国
23%
大洋州
3%
アフリカ
1%
国
※ 年間短期受入数と短期プログラムを合計している。
※ 日本学生支援機構「留学生調査」の結果による。
全国(119か国,8,121人)
欧州
11%
国
韓国
17%
その他アジ
ア
27%
アフリカ
0%
中東
1%
その他アジ
ア
22%
北米 大洋州
1%
4%
北欧 南米
0%
0%
欧州
5%
中国
20%
韓国
47%
14
海外PRの実施手法の改革
留学生数増加(倍増)に向けた方策 Ⅲ
<海外PRの実施手法の改革>
15
13
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
海外PRの実施手法の改革
方策1
海外PR手法の改革
○ 海外PRと併せて、個別リクルーティングと留学
生入試改革(渡日前入学許可の導入等)を実施
〇 コンサルタント活用、海外事務所設置、帰国した
元留学生の協力
方策2
PRの実施
○“広島モデル”を構築(日本語教育から就職まで
一貫した留学ルート)
○ 大学、短大、専門学校、日本語学校の連携による
オール広島でのPR宣伝材料を作成
<Study in Hiroshima>のPR
16
海外PRの実施手法の改革
方策3
海外リクルーティング(留学生募集活
動)の戦略
○ 対象国・地域の優先順位付け
国、都市、学校、連携のイメージ
○ 現地留学エージェント、留学予備校、高校(日
本語教育を実施)の洗い出しと連携
方策4
勉強会の開催
○ 参加大学等による勉強会(事例研究)の開催
リクルーティングの手法、留学生入試改革(渡
日前入学許可、書類選考スキルの向上:外国学
歴資格成績評価の高度化)等
○ 留学生リクルーティング先進校招聘
17
14
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
2014年度の取組み
留学生増加に向けた方策の実行 Ⅳ
<2014年度の取組み>
広島県では、留学生獲得競争の激化に備えて
“広島モデル”構築のための取組みに着手
18
2014年度の取組み
取組1 学位取得留学生の増加に向けた取組み
◇ 留学生獲得に積極的に取り組む大学を支援
〇 大学提案型モデルプロジェクト支援事業
県が大学等の次の取組みに要する経費を支援
(1テーマ・1大学:上限100万円)
① 新たな留学ルートの開拓
② 渡日前入学許可制度の導入
③ 編入学に係るモデル構築
④ その他先進的な取組み
19
15
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
2014年度の取組み
取組2 海外PRの実施手法の改革に向けた取組み
◇ 大学の個性に応じた留学生リクルーティングを専
門家を活用して支援
〇 海外共同リクルーティング事業
① 対象国の拡大
中国・韓国・ベトナム・台湾・インドネシア・
タイでの実施を検討中
② フェア中心からリクルーティング重視にシフト
より効果的な留学生獲得手段の採用
③ コンサルティングの導入
県内大学に対する支援体制の強化
20
2014年度の取組み
取組3
新しい就職支援の実施
◇ 企業が求めるビジネス日本語能力やビジネスマナー
を身に付けた留学生の養成
○ ビジネス日本語養成研修の実施
① BJTビジネス日本語能力テストJ1レベルの輩出
○ インターンシップの拡大
① 留学生活用の成功事例紹介による企業ニーズ
の掘り起し
② 有償インターンシップの仕組みづくり
21
16
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
2014年度の取組み
取組4 広島県留学生・大学グローバル化研究会
◇留学生増加(倍増)に向けた意識の醸成及び方策実
現に向けた事例(手法)研究と動向把握
〇「方策実現のための具体的取組みに係る勉強会」
(月2回のペースで実施)
① 参加団体
・大学、日本語学校、経済団体、県、関係市
② 主なテーマ
・渡日前入学許可制度の導入事例
・英語によるプログラムの創成事例
・アジアにおけるリクルーティングの実際
・留学生定着(就職)支援事業のあり方
・ビジネス日本語養成研修の実施に向けて 22
文科省の動向
(来年度予算概算要求)
◆優秀な外国人留学生の戦略的な受入れ: 28,082百万円 (26,926百万円)
○日本留学への誘い、入り口(入試・入学・入国)の改善: 6,310百万円 (631百万円)
①戦略的な留学生獲得加速プログラム
・来日前予約採用奨学金の新設等 新規分2,500人
②留学コーディネーター配置事業の拡充3拠点→ 6拠点等
○受入れ環境づくり、卒業・修了後の社会の受入れの推進 20,671百万円( 25,049百万
円)
①住環境・就職支援等受入れ環境の充実10件
②外国人留学生奨学金制度
・国費外国人留学生制度11,263人
・双方向交流の推進による日本人学生の海外留学促進
<協定受入型> 5,000人→ 10,000人(5,000人増)等
◆専修学校留学生就職アシスト事業: 59百万円 (68百万円)
専修学校における外国人留学生に対する来日の動機付けから就職支援までを総合的
に支援し、産業界等と連携のもと、留学生受入れ拡大を図る。
23
17
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
期待される産業界の留学生支援
• 留学生の半分が卒業後、日本での就職を希望→
実際は、その半分しか就職できていない:留学生
の積極的採用(雇用機会の創出)、有償インター
ンシップ、労働対価型奨学金(アルバイトとの差
別化)
• 国際宿舎建設(管理運営)への協力・連携:ビジ
ネスモデルの開発
• 英語による授業への講師派遣
• 短期研修(サマープログラム)への協力
24
まとめ
• 留学生政策と移民政策の連携:知識集約型経済への移行
とグローバル化が急速に進む中で、優秀な留学生の獲得
と卒業後の定着が国の経済力を左右する。
• 少子化と高齢化で生産年齢人口が今後急速に減少する
日本において、社会と経済を支える質の高い人材を海外
からも積極的に取り込むことが必要
– 優秀な留学生を獲得し、日本で高度人材・ブリッジ人材となる
べく養成し、日本で就職してもらい、そして定住、または母国で
の日系企業への就職につながるような仕組みを産官学で連携
して構築することが重要。国レベルの大胆な制度改革も必要。
• 大学の国際化は待ったなし→優秀な留学生が日本人学
生と共に学び、共に生活する環境をつくることは、総体的
なグローバル人材育成につながる。
25
18
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
ご清聴ありがとうございました。
Email: [email protected]
広島県の取組みに関するお問い合わせ、
ご提案は以下までお寄せください。
担当:広島県地域政策局国際課 濵本,佐藤
E-Mail:[email protected]
電話:082-513-2359
住所:広島市中区基町10-52
26
19
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
<特別セミナー:報告 2>
留学生交流プログラム 「FACE」 を通じての地域と連携について
東京大学国際センター相談室 原田麻里子
本日は、東京大学国際センターで 15 年ほど実施している「FACE プログラム」について、
地域連携という視点から述べる。本日お話しするのは、①相談室の事業の柱・コンセプト、
②留学生のための日本語交流プログラム「FACE」の概要・コンセプト・大切にしている点・
課題と、③「FACE プログラム」から発展した交流プログラムや今後の連携についてである。
まず、東京大学国際センターについて紹介する。東京大学では、改組後、国際センター
と日本語教育を担当する日本語教育センターの2本立てになっている。国際センターは留
学生の交流支援と相談サポート、そして最近は日本人学生の送り出しを担っている組織で
ある。東大には 3 キャンパスがあり、それぞれにオフィスを設けているが、いわゆる相談
業務を全面に出しているのが本郷にある相談室で、月曜から金曜までの 10:00~17:30 ま
で、留学生・家族・研究員など誰でもウォークインで入ってくることができ、相談を受け
付けている。実際、家族帯同で来られるケースも多いので、保育園・住宅トラブル・交通
事故などありとあらゆる相談を受け付けている。中国語の非常勤相談員もおり、日本語・
英語・中国語で対応している。
相談室の特徴としては、交流支援である「FACE プログラム」を前面に出していることで
ある。
「相談」と言って相談に来るのはハードルが高いので、交流をきっかけに相談室にな
じみを持ったり、交流相手にちょっと相談をもちかけたり、そのうち交流相手から重い相
談が持ちかけられたりするというように、相談と交流を一緒に行うことは非常に意義があ
る。また、単なる受け口ではなく、
「問題解決型」の相談窓口であり、学外への同行も含め、
なるべく留学生に寄り添う形で相対している。
次のスライドは活動の概念図である。これは、残念ながら 3 年前に他界された私たちの
元上司の栖原さんが 1997 年に着任されたときに掲げたコンセプトであり、当初から、学内
の留学生の支援と同時に学外との連携が重視されていた。
――――――――――――――――――
栖原「留学生は地域で暮らす生活者である。地域社会とのつながりの中で、住民として受
け入れられ、共に生きていく関係を築くことは欠かせない。この関係性を築くことは時間
と手間が非常にかかる。しかし、労力を惜しまず、同じ目線で一緒に考えて作り出すこと
が、生活状況の共有やサポートのすそ野の拡大になり、地域の多文化化につながる。この
コーディネートもわれわれの役割である。」
―――――――――――――――――――
このコンセプトを強く打ち出して、地域のボランティアや業者の方と対等な立場、留学
生となるべく対等・近い立場で私どもは活動している。この概念図の中のキャンパス地域
交流の連携プログラムがこれから紹介する「FACE プログラム」である。これは、そもそも
1989 年に「留学生交流プログラム」という名称で始まったが、2001 年に改名した。今まで
の登録者数は留学生 3500 人、ボランティア 2200 人(発足以来)である。実活動数は年間約
200~250 の組み合わせである。
ボランティアによっては 1~2 回の活動で終わる人もいれば、
交流が卒業してからも続くなど 5~6 年にわたる人もいる。コンセプトは「出会いのきっか
けは作るが、最後は切らない」である。いつ終わったかという報告も特に求めず、
「フォロ
ーはするけども管理はしない」という方針である。交流は、長い人では留学生が国に帰っ
てからも 10 年以上続けている人もいる。登録と顔合わせの 2 回はセンターに来ていただき、
そこでプログラムの趣旨を徹底することを心がけて、趣旨を理解した上で協力していただ
いている。プログラムの詳細は配布資料のパンフレットを参照してほしい。
20
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
<コンセプト・大切にしている点>
「FACEプログラム」は日本語の交流(日本語の支援・教えることではない)である。「日
本語」は、両者の真ん中で、共通にあるものである。「英語を話したい」と来る人もいる
が、大切なことは、日本語を使って交流し、日本人との関係づくりをすることである。最
近、東大では英語プログラムが増えている。ネット社会でもあり、コミュニケーション能
力が若い人全体で下がっているため、コミュニケーション能力や適応力を上げるためにプ
ログラムを活用してほしい。留学生達はある年齢で家族と離れて日本に来て、限られた人
間関係の中で、「どうしても欠けているけれどもその年代で養うべきもの」を少しでもこ
のプログラムでフォローできたらと思う。私は地域交流と就職支援がメインの仕事だが、
基本的な人間としてのマナーや礼節を守るということや、敬語ではなくても丁寧な普通の
日本語を話すということをこのプログラムを通じて学べている学生がすごく多いと感じる。
それが最終的には彼らのキャリア形成にとても役立つ。ボランティアにはシニアの方が多
いが、そのような方から日常生活や社会経験を聞いたりする中で留学生は「日本で働いて
みたい」という気持ちに自然につながるというところが、私たちが日本語交流にこだわる
意味の一つである。
また、大切にしていることは、企画コーディネートはスタッフがきちんと行って、対応
することである。留学生から相談が持ち上げられたときにはボランティア一人一人が負う
のではなく、それを相談室につないでもらって、こちらと二人三脚で対応する。これは、
ボランティアの安心感・自由性の担保につながる。そして継続的にフォローしていくため
に、定期的にボランティア同士の交流会を持ち、他のボランティアの交流の状況や問題点
の吸い上げ・課題解決の場を提供している。そのような場では、「留学生との交流でかか
る費用はどうするか?」、「留学生から過度な期待をされる」、「保証人を頼まれる」と
いった問題が質問される。そのようなことを連絡会で皆さんから投げかけてもらって、ボ
ランティアを長く行っている先輩に答えてもらう。相談室のスタッフだと上から指導する
立場になってしまうので、こちらが指導するのではなく、ボランティア同士で、「遠慮す
る関係だと長く続かない」、「お金は初めから50:50で支払うことにしようと宣言すれば
よい」などと話し合うようにしてもらい、解決してもらうようにしている。
一方で、登録の場にもいろんなボランティアが来る。「国籍を選びたがる」とか、「特
定の国をいやがる」というスタンスの場合にはボランティアになってもらうことを断って
いる。ボランティアは留学生に一番近い立場であり、留学生の本当の気持ちを代弁する立
場であるため、その気持ちをもって対応する人がボランティアであってほしいと考え、FACE
プログラムを提供している。留学生との交流を「すごくきれいで高級なボランティア」と
思う人や、海外体験帰りで自分の海外体験を押しつけたがる人もいるが、30分以上かけて、
プログラムの趣旨や留学生に近い立場であることを説明するようにしている。
<この頃の課題>
15 年以上続けてきたプログラムであるが、最近の特徴・傾向としては、短期留学生が増
えてきて、滞在期間が短くなっている。以前は、在学期間を 1~2 年と見込んでいたが、こ
の頃は、登録してから「半年以内に帰ります」という人や、来日直後ではなく、人づてで
聞いて、
「あと 2 か月しかいません」という人もいる。しかし、そのような人は登録できな
いということでは無く、そんな人ほどなかなか交流のチャンスがなかったということで、
「畳の部屋を体験したい」などの小さな希望がある。そこで、そのような人には、短期で
もすぐに交流してくださる人を探して電話して、
「すみません、2 ヶ月間しかないのですが、
頼んでもいいですか?」、
「今週組み合わせしてもいいですか?」、「年末年始に時間がある
と留学生は言っていますが、年末よろしいですか?」とお願いしている。ボランティアと
顔の見える関係をなるべく作るように心掛け、時には難しいリクエストを打診してみるこ
21
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
ともある。
それと同時に、英語プログラムの人は日本語を話す機会がなかなか無く、大学で日本語
教育を提供していない。しかし、彼らはやはり日本に来た以上日本語を話してみたい、勉
強してみたいと思っているので、あえて英語ができないボランティアを組み合わせている。
そのような留学生は私たちと話すときは全部英語だが、隣の談話室で話すときには不思議
と英語が聞こえてこず、日本語だけでやっているので、留学生はそれをとてもいい経験と
して持ち帰る。そんなきっかけづくりを行っている。
これは、次のスライド「5 15 年以上を経た『このごろは?』と課題」ともつながるが、
交流相手へのリクエストに就職支援を入れる留学生が増えている。留学生は先輩からいろ
いろ情報を得ていて、自分の先輩は社会人経験がある大企業や商社出身のボランティアと
交流し、エントリーシートを直してもらったので、
「自分もそのようなボランティアがほし
い」と言ってくるが、そもそもの交流目的と異なるニーズをくっつけてくることがある。
そうなると、ボランティアも、
「私では役に立たない」と引いていってしまう人もいる。そ
れは良くないと考えるので、
「交流と自分のニーズを満たす」ということは切り離すように
言っている。相談室では組み合わせは、私ともう一人が担当するが、あえて留学生のニー
ズと異なりそうな組み合わせ、例えば、経済学研究科で修士 2 年の、もうすぐ就職活動を
しそうな留学生には、企業出身者ではない人を組み合わせる、ということもしている。
課題としては、どこのボランティア団体も同じであるが、ボランティアの世代交代・高
齢化・次世代の人材の不足がある。プログラムを始めた 15 年前は 50 代でボランティア側
を担っていた人たちが多数いたが、今の 40~50 代はやはり仕事をしている人が多いので、
次の世代が出てきていない。インターネットで活動を知った若い人から、企業の夏休みに
問い合わせが増えたり登録したりしてくれるが、一時的な興味関心であり、実際に日常生
活に戻ると「やりたいことが沢山ある」とボランティアが持続しない人が多い。そんな中、
ボランティアの継続的発掘が課題である。
かたや、留学生は若い人が好きかというとそうでもなく、シニア層の人と交流したいと
いう希望が強い。
年配の人と談話室で週に 1 回継続的交流したいというニーズが強いので、
そのような組み合わせを作っていくことが課題である。また、もう一つは、就職や、留学
生を人材として扱いたい、留学生にアプローチしたいという企業団体や中間支援業者が、
本音を隠して接触してくることがある。一人の留学生と交流したことで、その友達にアク
セスしたい、といったニーズが見えてくるので、そのあたりもこちらは感度を高くしてお
く必要がある。
<「FACE プログラム」からの発展
~「ホームビジットプログラム、日本語交流「本郷」~>
FACE プログラムを始めて 15 年過ぎたが、そこから発展したプログラムを最後に紹介した
い。文京区はローカルで下町気質があり、JR の駅が1つもなく、自転車で走り回るような
さほど広くない地域である。継続的に活動できるボランティアを増やすことはなかなか難
しいこともあり、
「FACE プログラム」にすでに登録をしていて、交流に慣れている、大学か
ら 30 分以内のところに住む方々のところに単発の「ホームビジット」するプログラムを始
めた。お昼ごはんはこちらで軽食を提供し、それを食べた後の午後訪問する、「お気軽ホー
ムビジット」である。午後だけでも良いし、夜ごはんを一緒に夜ごはんを食べてもいいし、
交流を継続してもよい。継続的交流への発展もある。私たちが提供するのは最初の入口と
いうあくまで簡単で、留学生・ビジットファミリーの双方に負担にならないビジットプロ
グラムである。
22
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
もう1つは、先日ちょうど 1 周年を迎えた、日本語交流「本郷」というボランティアに
よる日本語交流教室のようなものを学内に作った。名前もこだわっており、「日本語教室」
、
「日本語クラス」ではなく、
「日本語交流」という名称にした。
毎週月曜日に 50 分×2 コマ行う。1 コマだけの参加でもよいが、ほとんどの人は 2 コマ
連続して参加している。私自身、地域で 15 年以上日本語ボランティアを毎週しているが、
そこで活動するボランティアや、FACE プログラムのボランティアの方々の中から何人かを
限定してお願いして、日本語交流教室を開催した。
「本郷」のスタイルは、
「事前予約不要」、
「すること⇒自由」
、
「1 年中休み無し」(注:夏季休暇・春期休暇中でも実施するという意
味)である。留学生は忙しいとき・天気が悪いときには来ない。しかし、始めてみてわか
ったのは、医学系など忙しい留学生や、研究室で日本語をまったく使わない留学生が「日
本語に触れたい」とふらっとウォークインで来たいニーズがあることである。ボランティ
アのほうも、今日は留学生が毎回、何人来るかわからずに参加してくださる。参加留学生
が 3 人のときや 1 人の留学生に 5 人のボランティアが付くこともあれば、留学生が多く、1
人のボランティア対 4 人の留学生というグループで話をすることもある。そのような方法・
状況・趣旨を理解してくださっているボランティアと協働して作り上げている。そこで、
「も
っと話したい」という留学生がいたら、地域の日本語教室を紹介している。また、企業出
身者もボランティアで参加しているため、
「企業のことを聞きたい」という留学生がいたら、
FACE プログラムではなく、
「
『本郷』でならいいですよ」と言っている。
「本郷」の活動内容
はなんでもありで、
「梅祭り」といった地域のイベントに行くことや、和菓子でお茶会をや
ること等もある。
(写真を見せながら)これは活動風景だが、手前の人は、「明日提出する必要がある」と
いうエントリーシートのチェックをしてもらっている、そして奥には自由におしゃべりし
ている人もいる。(別の写真を見せながら)また、「自己紹介・国の紹介などどんなテーマ
でもいいので、5 分ほどプレゼンテーションをしてみない?」と言ってミニプレゼン大会を
行ったりしたこともある。
<「FACE プログラム」の意図するもの・効果>
FACE プログラムは、留学生とボランティアにとって双方意図するもの・効果があるもの
として捉えている。留学生にとっては、日本人と交流する機会であり、社会人となる準備
をする、時間を守る、連絡をする、感謝の気持ちを伝えるなどを守るべきところのものと
して知ってもらう。
ボランティアにとっては、意義と大きく考えるのではなくて、
「自分が必要とされる存在」
、
「交流する相手がいて、友達ができる」、「若い世代と知りあえる」といった意義がある。
また、相談室がコーディネートすることで、前述の通り留学生の相談室への敷居が低くな
る。やはり留学生にとって相談室に来るということはなかなかしにくい時もあるので、
「交
流・就職サポート」が窓口になって、相談室に来る大義名分ができる。相談室に来るきっ
かけができると、もっと話しているうちに、もっと大変な問題があるということを吸い上
げることができる。それと同時に、大学としては地域の人たちに留学生の状態を知っても
らえる。今、外国人観光客が注目されているが、地域に外国人が留学生として住んでいて、
こんなことで困っていて、どんな状態であるかを地域に伝え、多文化理解を進めていくの
が大学としての役割として大きいと考えている。
交流という意味での連携は FACE プログラムが主であるが、今日のテーマの「地域との連
携」に関して、最後に一言だけ事例を述べる。最近、留学生の住宅トラブルを機に宅建協
会文教支部、自治体、そして専門家と連携している。そのトラブルは「留学生を、差別的
23
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
意識を持って扱った」ということであったが、1つの不動産業者と議論するのでなく、宅
建協会の文京支部内に「消費者相談センター」があり、そこに持ちかけたところ、話がプ
ラスに展開した。それは、文京区内で留学生に積極的に部屋を貸す業者のリストを宅建協
会で作成し、それを留学生に案内・斡旋するというものである。大学側は「家を借りると
きにはどのようなことに注意をすべきか、トラブルになりやすいか」を記載した多言語パ
ンフレットを作成し、住居探し時に配布、同じものを不動産屋さん側も持ち、留学生、貸
主双方が安心できるようにするという取り組みが進んでいる。
Q1:パンフレットに写っている写真の活動は何をしている?
A1:留学生のニーズによって本当に様々である。普通におしゃべりをすることが多いが、
ある程度日本語能力が高い場合は新聞記事を一緒に読んだりする。先日ある留学生が
ボランティアと挨拶に来てくれたが、彼らは、毎週朝 9 時から 3 年の交流の中で文庫
本を 10 冊読んだそうである。この他、書道をする、囲碁をする、メイドカフェに行っ
てみるなど、いろいろな形がある。なんでもあり。
Q2:活動の記録はとっているか?
A2:一切無い。組み合わせから 3 か月後にメールを送って、「楽しかったこと、困ったこと
があったら書いてください」と聞くが、それも義務ではない。年に一回交流報告会が
あり、そこで報告を聞いている。あるいは、相談室の隣に談話室があるので、声をか
けて、ボランティアから話を聞いている。
Q3:地域のボランティアが得る成果はあると思うが、日本人学生が得た成果・メリットは
あるか?
A3:日本人学生のアクセスはあったが、学生は忙しいのでなかなか継続しない。ただ、こ
れから留学に行く、留学を考える日本人学生にとっては、「逆留学」という立場を経験
することにメリットはあると感じる。日本に来ている留学生に「あまり考えずに留学
に行っておいで」と背中を押されている。また、留学から帰ってきた日本人学生が「向
こうで自分がお世話になったのでこちらで役に立ちたい」と言って来るケースもある。
FACE プログラムとは別に語学交換のプログラムもあるので、日本人学生が来た時には
「あなたは語学交換が目的ですか?それとも日本語交流が目的ですか?」と聞いて、
目的をはっきりさせてもらって、プログラムに参加してもらう。
Q4:ボランティアが親身になりすぎるときはどうしているか?例えば、お金を貸す、住宅
保証人になるなど。何かしばりは設けているか?
A4:特にしばりは設けていない。金銭の貸し借りはやめてくださいと言っているが、保証
人については個人の判断と考えている。保証人等はそれに伴う責任が発生することや
機関保証があることを伝えている。これまで保証人問題でトラブルはない。
Q5:プログラムの需要と供給のバランス、留学生の要望とボランティアの数はどうなって
いる?
Q5:留学生のリクエストの数が多いので、留学生に待ってもらっていることが多い。ボラ
ンティアにメールを送って、
「交流が終わった人は連絡ください」、「2 人目の交流を希
望する人は?」とリクエストをしている。ただ、孤立している家族の人がいれば、そ
の方を優先するようにしている。
Q6:全体として自由で緩やかなプログラムであるが、禁止していることはあるか?
A6:相談室は連絡先や組み合わせ状況を把握する必要があり、留学生が友達などにボラン
ティアを直接紹介することは禁止している。あくまで相談室を通して組み合わせを作
24
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
るようにしている。また、ボランティアには、
「日本語を教えることを強制しないでほ
しい」と言っている。
Q7:企業のリクルートを排除する努力をしているが、宗教の勧誘への対応は?
A7:宗教の勧誘には気を付けるようにアドバイスしている。留学生も敏感に感じるようで、
集会への誘いなど断りにくいケースがあればこちらに連絡するように伝えている。
Q8:英語ベースの留学生を私の大学でリクルートしているが、そのような人たちがボラン
ティアと関わりたいという要望は実際あるか?サービス提供の状況は?
A8:全く日本語能力がゼロの留学生が FACE プログラムに登録に来ても何もできず返すこと
があった。その時には「また 1 か月後に少し日本語がわかるようになってから登録に
来てください」と言っていたが、やはりそれは心が痛んだ。それに対しての入口の代
替案がさきほどのホームビジットである。ホームビジットのときは、ファミリー側に
何語ができるかを聞いているので、日本語ゼロの留学生には英語ができる人を訪問さ
せて、そこから入口が広がるようにしている。そして地域の日本語ボランティア教室
で受け入れてもらって、そこで慣れたら、FACE に登録に来てもらっている。
(終了)
25
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
2014年度 留学生教育学会 分科会
留学生交流プログラム 「FACE」
を通じての地域と連携について
2015.2.21
東京大学国際センター相談室 原田麻里子
本日のメニュー
1. 東京大学国際センター相談室について
2. 相談室事業の柱・コンセプト
3. 留学生のための日本語交流プログラム「FACE」の概要
4. コンセプト・大切にしている点(なにを重視?)
5. 15年以上を経た「このごろは?」と課題
6. 交流の様子のご紹介
7. 「FACEプログラム」からの発展
8. 「FACEプログラム」の意図するもの・効果
9. 今後にむけて ー連携ー
2
26
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
1 東京大学国際センター 相談室について
東京大学 国際センター相談室
International Center Advising Room
開室時間: 月-金 10:00-17:30(土日祝祭日は閉室)
場所 :
本郷キャンパス 第二本部棟
名称:
●どなたでも利用できます
●どんな相談でも受け付けます
●交流支援も行っています
●日本語・英語・中国語で利用できます
FACE
●平日いつでも利用できます
※ 相談内容についての秘密は厳守されます。
2 国際センター相談室事業の柱・コンセプト
• 解決型の相談窓口であること。
相談者(留学生)に寄り添う姿勢を大切に
• 留学生は学生であり、また、地域で暮らす住民の一面も持つ。
彼らの暮らしやすい環境作り、日本人との交流を心がける。
• 学内外のとの人的ネットワークが重要。連携を常に視野にいれること
27
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
連携
出典:栖原暁「留学生指導担当教官の役割と可能性-「留学生センター指導部門の存在意義」をめぐる議論データから 」
『東京大学 留学生センター紀要』第13号,東京大学留学生センター,2003年
3 留学生のための日本語交流プログラム
「FACE」の概要
留学生と、地域住民(日本人学生)との日本語交流のプログラグラム
• 発足
1998年(2001 FACEプログラムと改名)
• 登録人数 留学生3500 ボランティア2200(発足以来)
• 実活動数 年間約 200-250の組み合わせ
国際センターFACE事務局によるコーディネート 来室
して、登録・顔合わせ
⇒ 趣旨の確認・徹底
28
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
東京大学 国際センター 相談室
The University of Tokyo, International Center Advising Room
F
A
C
E
Friendship And Cultural Exchange Program
東 京 大 学 国 際 センター相 談 室 ( 本 郷 オフィス) では、 日 本 人 ボランティアと留 学 生 を 1 対 1 で
組 み合 わせ、 日 本 や海 外 の文 化 などについて、 日 本 語 で会 話 し、 交 流 を行 う国 際 交 流 プログラ
ム「 FACE( フェイス)」 を実 施 しています。
留 学 生 の皆 さんに は、 日 本 文 化 や日 本 社 会 、 日 本 人 の生 活 を知 っていた だ き、 日 本 人 ボラン
テ ィアに は 、 留 学 生 の母 国 の 文 化 な ど に 触 れて い ただ く こ と が で きる プログラ ム で す。 興 味 の ある
留 学 生 や日 本 人 学 生 の方 は下 記 までご連 絡 下 さい。
The International Center Advising Room (Hongo Office) has a program for introducing international students to
Japanese volunteers. International students and volunteers are individually matched in this one-to-one program. In
this program, you have opportunities to learn about cultural ways of thinking or Japanese daily lifestyle and society.
Please visit the advising room and ask for details.
东京大学国际中心咨询室(本乡分室)正在实施 FACE(フェイス)国际交流项目。
本项目为日本人志愿者和留学生进行一对一的介绍,两者可以通过日语会话交谈日本
和海外的文化等来进行交流。 FACE(フェイス)给留学生们提供知晓日本文化、日
本社会和日本人生活的机会,同 时也向日本人志愿者提供知晓留学生本国文化等的
机会。如果您对 FACE(フェイス) 项目有兴趣,请通过下述方式与国际中心联系。
4 「FACEプログラム」のコンセプト・
大切にしている点(なにを重視?)
 日本語支援でなく、“日本語交流”
「日本語」は、両者の真ん中で、共通にあるもの。交流の媒介手段
日本語習得 ⇒ 交流を通じて、①日本人との人間関係づくり
②コミュニケーション力・適応力を得る
継続的な人間関係を通じて 留学生が得られるものは?
⇒ キャリア形成につながる。日本社会理解・日本で働く選択へ
•
企画・コーディネートの基本スタンスをしっかりもつこと
参加者への自由性・安心感 ・ 継続的フォロー
いろ~んなボランティアにどう対応?
29
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
5 15年以上を経た「このごろは?」と課題
 このごろは? 特徴など
I.
大学の留学生受け入れプログラムの変化
*短期プログラムで来日の学生への対応 ⇒短期間の交流(組み合わせまでの配慮)
*英語プログラム参加者への対応
⇒最低限の日本語を話したい・知りたいという自然な希望
II. 留学生のニーズの変化・社会的状況の変化
*ネット環境での情報入手の増加 ⇒ 情報は得られる。しかし人間関係が限定されている。
*就職を視野に入れた交流相手のリクエスト・交流相手にESチェックなどをリクエスト
⇒ ニーズを満たす交流相手を希望
交流相手を比べる。
5 15年以上を経た「このごろは?」と課題
 課題:
• ボランティアの世代交代・高齢化 ・・・次世代の人材の不足 若い
人―多忙
/ 一時期的な興味関心で交流が持続しない
留学生ニーズ・・・・「おばあさん、おじいさん」と交流したい という希望は高い
⇒次世代の育成・裾野の拡大が急務
•
就職関連業者からのアプローチ
本当に個人の純粋な意思? 留学生とコンタクトを取る入口に?
30
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
6 ~交流の様子のご紹介~
Nさんの出産と交流
東南アジア出身 博士課程在籍 (家族滞在)
 Aさんの交流と就職
南アジア出身 工学系修士課程
7 「FACEプログラム」からの発展
I.
ホームビジットプログラム
•
FACEプログラムの登録ボランティアに打診 大学から30分以内のファミリー
をビジット⇒
顔の見える関係の安心感
相手を選ばない
短時間訪問 ⇒ 安心して話す
•
継続的交流への発展もあり。 個々の出会い
•
留学生・ビジットファミリー 双方に負担にならないプログラムを
31
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
7 「FACEプログラム」からの発展
II. 日本語交流「本郷」
•
•
•
•
•
名称の意味するもの・こだわり
「日本語交流とは」( ×サポート ×日本語クラス )
スタイル
事前予約不要・ 50分×2コマ ・何をやりたい?⇒自由(でもほとんどが会話)
対応するボランティア ・・・地域の日本語教室で長年活動しているボランティアの方々
趣旨を理解してくださるVOLと作り上げる理由は?
人数に左右されない、相手がいなくてもOK
留学生(在日外国人)の状況を理解してくださっている
キョリ感ふくめ自然体で対応 (拒まず、追わず)
なんといっても、「日本語で」 話しすぎず、聞き役に
地域のボランティア教室や交流イベントへのつなぎ役 企業出身の
ボランティアには、就職のための話し相手、相談相手に
8 「FACEプログラム」の意図するもの
・効果
 留学生にとっての「FACE」・日本語交流
 地域ボランティアにとっての留学生との交流
 相談室がコーディネートする意味・効果
 大学としての役割
32
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
9 今後にむけて ―連携―
 交流面の連携 ・・・・地域住民、団体と
FACE
 相談支援面の連携
•宅建協会
・・・留学生の家さがしサポート
•自治体
・・・行政文書・表示の多言語化プロジェクト
•専門家
・・・労働相談、弁護士相談(在留資格など)
日本人住民への外国人理解・留学生理解へのきっかけつくり
地域連携の意義?効果?
・・・それは誰が語れること? いつ現れること?
33
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
<特別セミナー:報告 3>
継続性をふまえた留学生教育と地域連携への試み
東北大学グローバルラーニングセンター
特任准教授 田口香織
たった半年前である 2014 年秋からの試みであるが、東北大学におけるチャレンジを紹介
する。まず、東北大学の現状と地域連携のきっかけとなった出来事、留学生支援に関する
地域の課題を述べる。次に藤崎百貨店というところの国際化プロジェクトの概要、最後に
地域連携を発展させるためのポイントと今後の展開について話をする。
<東北大学の現状>
東北大学はグローバル化を進めており、G30 を受託したことで英語だけで卒業できるプロ
グラムも増え、サマープログラムも充実し、交換留学の学生も非常に増えている。さらに
平成 24 年からグローバル人材育成推進事業の一環でグローバルに活躍する日本人学生を育
てる「東北大学グローバルリーダー育成プログラム」(TGL プログラム)を進めている。そ
れにより日本人学生と留学生の共修やアクティビティも増えている。東北大学としてはグ
ローバルビジョンのもとグローバルラーニングセンターを改組、教養教育の一環として国
際的な活動をするという取り組みも進められている。
次に東北大学の留学生の現状であるが、交換留学生も含めると90か国、約1,750名の外国
人留学生が在籍している。東日本大震災の影響により一時的に留学生数が減少し、2012年
には1,432名であったが、この3年間で300人近く増え、グローバルな環境が整いつつある。
東北大学は仙台市内に5つのキャンパスがある。仙台市は人口107万人の政令指定都市で
あり、都市の規模としては大きい。ただし、正直国際化が進んでいるとは言えないロケー
ションである。地域連携するにあたって、仙台市は広島県と同じような地域の課題を有し
ている。仙台市の経済の特徴は「支店経済」であり、外部依存型経済構造がある。支店比
率が56.6%で、本社がグローバル化していて、本社では留学生や留学経験のある日本人学
生を採用していても、支社には「グローバル人材は必要ない」ということで、あるシンポ
ジウムで留学生を採用している企業を探したが見つからなかった。グローバルというより
も地元に根付いた人材育成をするスタンスであり、かつ転勤社員も多い。転勤によって毎
年10万人が出入りする街の構造になっている。一方で東北大学は全国区の大学であり、宮
城県出身の学生は約15%と少ない。日本人学生でも、仙台に馴染みのない学生が多い。
次に、仙台市の産業構造であるが、卸売業・小売業の割合が高く、製造業等の割合が低
い「消費型都市」である。「顧客が日本人なら、売る側も日本人であることが望ましい」
とされる、ドメスティックな内需消費産業構造となっている。東北大学は理系の学生が7割
であり、製造業へ就職したいという学生が多い。しかし、仙台市内の製造業は5%に満たな
い状況であり、就職希望先と地元の産業構造のミスマッチが起きているため、東北大学は
地元企業と連携がとりにくいロケーションにある。
次に、観光産業について述べるが、東日本大震災によって観光産業が縮小した。外国人
観光客は急激に減少し、2013 年時点でも震災前にはまだまだ程遠い状況である。一方で、
北海道・広島・福岡といった他の地方都市ではすでにインバウンド需要の高まりを見せて
いる。
総括すると、留学生支援に関する地域の課題が以下のようにあげられる。第一に、大学・
地域それぞれに連携のメリットが見出しにくい。日本人にとっても「入口」「出口」で馴
染みが薄い。地元企業は中小企業が多く、資金的、人的余裕はない。インターンシップを
受け入れても、東北大学の学生が就職につながるわけではないと、諦められている。
第二に、地域の国際化が非常に遅れている。震災があったこともあり、市は仙台市内の
企業を守ることを中心に考え、市内の内需拡大・安定を強く意識している。また、市民の
高齢化も進展しており「お年寄りにやさしい街」として、国際化よりも内部課題に対応す
ることに比重が置かれがちである。一方で、大学はグローバルな競争環境に置かれており、
34
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
開いていかなければならない。90か国からの外国人留学生が在籍していることもあり、グ
ローバルスタンダードの教育・支援を目指したいということから地元とのミスマッチが起
きている。しかし、企業との連携ができないわけではない。留学生の教育や支援に協力的
なグローバル企業がたくさんある。後期には留学生70人、日本人30人ほどが一緒に受ける
授業が開講されているが、毎週ゲストとしてグローバルカンパニーの役員クラスが来訪し
英語でグローバル戦略について講義をしてくださっている。日産の執行役員、IBMの副社長、
インドネシアからわざわざ社長が来るなど、遠方であっても喜んで協力してくれる企業は
多数存在する。そのような点では大変恵まれているが、「教育から学習へ」と留学生の主
体的な活動を支援していこうとすると、このような空中戦でやっていてもしかたない。地
元で挑戦できる場、活躍するフィールドが少ないことが課題である。
そんな中で、国連防災世界会議が仙台で開かれることを知った。約 5,000 人の来賓が海
外から仙台市に集結し、NGO,NPO の人と合わせると 20,000 人ぐらいの外国人が集まる大き
なイベントである。しかし前述した通り、仙台は十分な国際対応ができるような状態では
ない。地域社会との対話を続けていく中で、国際化の進む東北大学に対して様々な協力要
請があり、頼りにされるような関係が構築されてきた。
その1つは市との連携である。2013 年の 11 月に仙台市と打ち合わせをしたところ、語学
ボランティアが 300 人必要になるということで、学生派遣の要請を受けた。そこで、学生
が参加しやすいような募集要項の作成、研修内容・研修日程の調整などを依頼した。そし
て、東北大学グローバルリーダー育成プログラムのポイント対象(単位ではない)に指定
した。新学期に合わせて 2014 年 4 月から語学ボランティア募集活動を開始し、留学経験を
活かす場、語学力を活用する場として広く告知した。交換留学から帰国した学生も参加で
きるようにスケジュールを調整してもらい、2014 年 7 月、交換留学からの帰国後学生も加
わり、語学ボランティアに対しての研修会がスタートした。スライドの写真は第 1 回研修
会の様子である。市民の方と一緒に研修を行い、時には実際に被災地に訪問するような研
修もあった。2014 年 11 月の時点で語学ボランティア登録者約 380 名いたが、そのうち学生
が約 180 名(東北大学からは約 150 名が登録)と多数の学生が参加した。その中に外国人
留学生も登録して入った者もいる。
次に、地元企業との連携について紹介する。仙台市商工会議所青年部の方とたまたま知
り合うことができ、話をしているうちに勉強会を一緒に行うことになった。青年部は 45 歳
以下の仙台市内の経営者の集いで、約 250 社が参画している。まず末松先生と私とで一緒
に勉強会に伺い、東北大学の現状や取り組み、どんなコラボレーションができるかといっ
たことを紹介させていただいた。
その後、11 月に青年部の有志が台湾に視察ツアーに行く機会があり、そのメンバー(約
20 名)と、東北大教員(5 名)、台湾人留学生(10 名)を交えた勉強会・懇親会を行った。
そこで台湾の留学生が台湾の事情について話をし、台湾の理解促進(おみやげは何を買っ
たらいいか等)の相談や、留学生との交流の場を設けた。その場で、藤崎百貨店から、こ
の後紹介する取り組みについての相談を受けて、2014 年 1 月 9 日から藤崎百貨店との国際
化プロジェクト開始することとなった。
商工会議所青年部とは、2015 年 3 月の国連防災世界会議に向けて、案内所での留学生通
訳・案内所サービスのスタッフアレンジ(日本人学生・外国人留学生)、ANA ホテルカウン
ターでの通訳アルバイト依頼(日本人・外国人留学生)、それ以外にも、青葉祭りでの「す
ずめ踊り」や被災地ツアーへの協力など、この半年での連携が急展開している。
<地元企業との連携事例「藤崎百貨店国際化プロジェクト」>
「藤崎百貨店の国際化プロジェクト」について詳しく説明する。藤崎百貨店とは、約 200
年の歴史を持つ老舗百貨店である。藤崎の方曰く、
「ちょんまげのころからやっていました」
とのことで、伊達藩の頃から街を支えてきたという自負がある。市内に 4 店舗を構え、東
北エリアでは唯一の海外高級ブランド店を誘致している。商店街(アーケード)の中心に
35
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
あり、商店街の活性化に貢献し、文化的にも商業的にも中核的な存在である。ただ、東北
大学と連携するのは創業以来初めてとのことであった。藤崎百貨店の現状について述べる
と、店内案内などの英語対応がなされていなかった。インフォメーションは「案内所」と
書かれており、留学生のなかには読めない学生もいた。また、外国人を見ると社員が逃げ
てしまうこともあり、全フロアでの外国人対応は困難という状況であった。最初は「国連
防災会議で外国からゲストがたくさん来られるにもかかわらず、藤崎では対応できる状態
ではないので、
国連防災会議の期間中留学生をアルバイトとして 15 人ほど派遣してほしい」、
という依頼だった。藤崎側からの要請は人事からではなく、営業企画(国連防災会議での
対応部署)であり、免税カウンター、受付通訳としてアルバイトかインターン生 15 名を要
請された。
ただ、藤崎さんが素晴らしいのは、
「一過性のイベント意識に留まらない国際化対応への
きっかけにしたい」と、サミットやスポーツの国際大会の誘致を見越して、インバウンド
ビジネスを継続的に活性化したいという意図があったということだ。また、藤崎のみなら
ず、将来的には商店街に免税カウンターを設置や国際対応できるようにしたいといった商
店街を巻き込むという意欲もあった。先ほど紹介した他の都市では、外国人向けの福袋を
企画するなど、売上の 10%を外国人が担うほどインバウンドビジネスが拡大しているが、
藤崎は全くそのようなことを行っていないので、対応していきたいとのことであった。
一方で大学側の現状は、英語だけで進学する学生、交換留学生といった外国人留学生が
アルバイトを見つけるのも難しい背景があり、大学側の狙いと提案は以下の通りであった。
―――――――――――――――――――――――――――
・交換留学生のインターンシップ先(単位付与)として位置付けたい。
・留学生が日本の文化やおもてなしを学ぶ場として位置付けたい。
・留学生と日本人の共修プロジェクト受け入れ先として位置付けたい。
・社会人との協働によってコミュニケーション力を身につけさせたい。
・街の国際化のきっかけにしたい。藤崎社員の意識も変えていきたい。
―――――――――――――――――――――――――――
取り組み概要は以下の通りである。
・インターン生は合計 16 名。
(日本人 3 名、外国人留学生 13 名・9 か国)
・そのうち日本人 3 名、外国人留学生4名をリーダーとして事前研修を受けさせ、時間を
かけて育成した。
・第 1 回〜第 3 回事前研修はリーダーのみ参加。第 4 回事前研修以降はインターン生全員
が参加。
ここからリーダーが他のメンバーに指示する体制を作る。リーダーには 2 単位
(TGL
ポイント 2 ポイント)
、一般参加のインターン生には 1 単位を付与する。
具体的な事前研究はスライド 15 の通りである。
第 1 回研修:課題提示では、リーダーの 7 名と藤崎フロアマネージャー3 名が 3 チームに分
かれ、藤崎の歴史を知り、4 店舗を視察し、課題提示。課題は「フォトエスノグラフィー」
としてあらかじめ指定された 8 つの観点で藤崎店内の写真を撮影し、それぞれ自分の考え
をまとめてくるもの。ただし、自分とは異なる国籍の学生と一緒に店舗を視察に行くこと
を条件とした。
第 2 回研修:藤崎社員の意識改革・おもてなし研修
これは藤崎社員の意識改革ということで、藤崎のフロア責任者や教育指導担当者等 20 名に
対する、異文化理解研修という位置付けで実施した。藤崎社員の研修に東北大学の留学生
が混ざるという形をとった。
第 3 回研修;学生に基本的な接客を理解させる
リーダーを対象にした、3 月の国連防災世界会議期間中のキャンペーン内容についてのレク
36
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
チャーと、会期中ホテル等で配布するパンフレットの作成。基本的な挨拶や接遇に関する
レクチャー、売り場での仕事体験を行う。
第 4 回研修;学生全員参加の研修。
全員で基本的な挨拶、接遇のレクチャーと店舗視察、実際の売り場での研修。
スライド 16 は、学生の事前研修と、社員の異文化理解研修を同時開催した第 2 回研修で
ある。研修内容は以下の通りである。午前の部で外部講師を東京から招いた。「中国人はこ
う、イギリス人はこう」といった国別のパターンを伝えるのではなく、「心の壁を取る。コ
ミュニケーションをとる。
」ことを理解してもらうためのワーク形式の研修を行った。「カ
ントリー・プロファイル・ゲーム」
、
「トランスミッション・ゲーム」といった言葉が通じ
ない人と一緒に何か協働してみるプログラムを藤崎の社員だけが受けた。
午後は、東北大学の学生が加わって、「外国人顧客の立場から見た藤崎のいいところ、改
善点」について、写真をもとにディスカッションしたり、「今までに経験した最高のおもて
なし体験」を留学生とともにグループワークで話し合ったりした。その後に、藤崎の社員
だけが残って、
「3 月の世界防災会議までに私たちはこれから何をすればよいのか」をまと
めて、自分事として捉えてもらうということを行った。藤崎の研修参加者は、以下の通り
で、様々な売り場から現場を指導する方々に来てもらった。
―――――――――――――――――――――――
藤崎のフロアマネージャーや、社員教育担当。
国連防災世界会議で国際化推進担当として任命されている各売り場の担当社員。
人事部 4 名 (計 20 名)
―――――――――――――――――――――――
研修内容は結構私からも提案させていただいた。(写真を見せながら)研修風景は、最初
は藤崎の社員はあまり積極的ではなかったが、留学生が加わったフォトエスノグラフィー
の研修あたりから、留学生ならではの視点で意見が出てくると、藤崎の社員はボディラン
ゲージがでてくるなど積極的になった。例えば、「不快に感じる」という観点での写真に牛
タンが挙げられるなど、仙台の人にはショックだったと思う。また、トイレの使い方がわ
からないなど、留学生ならではの視点がでてきた。このような意見が出てくると、社員の
方も身を乗り出してきて、積極的に関わるようになった。
藤崎社員への研修後のアンケート結果を見ると、研修内容の理解、研修が実際に役立ち
そうか、今後の国際対応に関する意識の変化でもそうだが、「非常に意識が変わった」と答
えてくれている。また、自分の担当部署で取り組むべきことが見つかったかということも
ポジティブに考えてくれている。また、ワークに参加した人は、
「外国人留学生とコミュニ
ケーションできた」
「積極的に話しかけることができた」「外国人の立場で考えるきっかけ
になった」
「外国人との意識の違いを発見することができた」という回答があった。
この合同研修をすることで、以下の 4 つの点で藤崎社員にとてもいい影響をもたらすこ
とができたと思われる。
1)視点の変化:日本人顧客以外の立場で考えたことがなかったということに気付いた。
私たちの視点は日本人の視点だと気付かされた。営業時間の表記わかりにくい。自分
たちが当たり前と思った施設が使いづらいとわかった。
2)国際化対応・おもてなしへの意欲:国際化=英語と思っていて、「英語できないから」
「英語できる人やって」と思っていたが、外国人顧客への苦手意識からの転換がはか
れた。言葉がわからなくても一生懸命に伝える努力をしていきたい。外国の方も言葉
がわからない不安の中に日本に来ているので、相手の立場になって、一生懸命に、誠
実にしていきます。言葉は違っても笑顔は世界共通です。
37
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
3)社内の意識変化:営業企画は、国際化対応といわれても「こんなことやってどうする
の」と現場から言われることも多く、今までは現場も「あまり関わりたくない、やり
たくない」
「上に言われたからやっている」という意識も見られたようだったが、今回
20 人の売り場担当者が研修に巻き込まれたことで、売り場からの提案(英語のPOP
を作ってみたがどうか?など)がどんどん出されており、その対応に今追われている
そうである。
この他、以下のような声もあった。「外国人への対応は、言葉のことだけを考えるのでは
なく、それ以外もできることは沢山ある」「外国の方が来ても身構えずに、ボディランゲー
ジでちゃんと伝える練習を自分たちのフロアでやります」「部下への指導の注意点に気付い
た」
「藤崎も国際化の変化に対応していかなければならないと気付いた」「留学生が日本文
化に興味を持っていることがわかった」
「留学生ともっとコミュニケーションをとりたかっ
た」このように、この第 2 回研修で、藤崎百貨店の国際化への扉は開いたと思う。
さらに、この合同事前研修がもたらしたものがある。東北大学が国際的な活動を行って
も何もニュースにならないが、200 年の歴史を持つ老舗が行うということで、様々なメディ
が取り上げてくれた。
(ニュースを動画で紹介)実は一昨日これが放送されたというぐらい
現在進行形の取り組みである。
藤崎との連携は実は今後も発展する。国連防災世界会議に向けての店舗・サービス改善
提案と社員研修をしたが、後期の授業では、日本人・外国人留学生の共修授業を行う予定
であり、現在内容を検討中である。藤崎も人事が窓口になるのではなく、全社的にとらえ
て現場からもいろいろな声が上がってきているため、百貨店にとっても良いチャンスとと
らえ、新しいことにどんどんチャレンジしたいというモードになってきている。
地域連携によって大学が提供できる価値は、次のようなものがあると考える。1 つは「情
報・ノウハウ・人的資源の提供である。2 つ目は、
「社員の人材育成と社内の活性化のきっ
かけの提供」である。
「外国人を見ると裏に逃げる」状態だった藤崎社員の主体性とグロー
バルマインドを醸成するきっかけになったのではないかと思う。3 つ目は、「新事業の創出
と拡大支援・街の活性化」である。藤崎のインバウンド事業の創出と街を巻き込んだ形に
していきたい。藤崎が行うことで、他に伝播する可能性も大いにあると思う。
<大学としての連携のメリット>
大学としての連携のメリットは以下の通りである。連携に「学習」「育成」という観点を
加えることで、見え方が変わる。
1)留学生に日本の本物のおもてなしを学ぶ「インターンシップ」を提供できる。今回、
交換留学生が 9 名、G30 の学生が 3 名と、日本語能力が十分ではない外国人留学生が
多かったが、自分達の強みを活用できる場を提供することができた。
2)日本人と外国人留学生の共修による、PBL 型のリソース。今回、藤崎からの指示を、
リーダーとなっている日本人が留学生たちに通訳した。留学生が英語で言っているこ
とを日本人学生が通訳したが日本人学生にとってもメリットがあったと思う。課題解
決型授業の成果が、自分たちの住む街の国際化として体感できるのは大変よいものだ
と思う。
3)外国人留学生・研究者にとっての生活環境の国際化進展。留学生招致にも良い影響
がある。
4)留学生支援の観点では、不測の事態の際の協力者が得られると感じる。防災会議期
間中に防災訓練を藤崎が行うが、そこに留学生たちも入って、外国人が売り場にいた
38
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
際にどのような対応を行うかというシミュレーションも行う予定だ。すでに社員と顔
なじみになっている留学生もいるので、日常的に外国人留学生と接点を持つ市民が増
えることで、安心安全を提供できる。
「イベント」のような一過性ではなく、「就職」のような高いハードルのない、地元企業
とのゆるやかな「継続的な連携」により、相互理解と協力体制が深まるのではないかと考
える。
最後のまとめとしては、地域社会との連携を行っていくうえで大切なのは「継続性」で
ある。継続のためには、大学側・教育的観点だけでは NG である。留学生教育や支援にお
ける産学連携は、一方的な押し付けやお願いになりがちであるが、やはり、地域社会にと
って有益であるか、大学にとって有益であるか、学生にとって有益であるか、この三者に
とって WIN-WIN-WIN であることが望ましいと思う。大学側も地域への貢献意識を持つこ
とが重要である。
地域との継続的な連携を進めるにあたって当たり前のことばかりだが、ポイントとして 3
点あると思う。
1)まず地域のことを知ること。
地域の産業構造、歴史、人間の価値観、最近の動き。官公庁の情報だけを頼りにしな
い。
2)地元の方々との顔の見える関係を構築し、深める。
意外と大学は、地元経済界にとっては異質な存在。思った以上に知られていない。積
極的な情報発信と対話をする必要がある。特に若手経営者を対象に留学生に関しての
理解促進がポイントである。
3)街の国際化・産業発展に貢献するという意志を持つ
「仙台の国際化なくして、東北大学の国際化は進展しない」ということを意識して、組織
として関わること。きっかけは私と商工会議所の人という個人と個人であっても、きちん
と「組織対組織」として、地域企業との関係性を繋ぐことが大切だと考える。老舗企業・
ベンチャー企業などの企業家と直接連携して、緩やかな関係性を築く。一方的なお願いで
はなく、アルバイト、インターンシップによる国際化推進・意識改革など、企業の事業へ
の貢献と、こちらの教育効果双方のバランスを考える必要がある。外国人留学生を受け入
れてもらえる土壌を継続的に開拓することが必要である。
<質疑応答>
Q1:仙台市では多言語化への取り組みが行われているか?(おみくじを 7 カ国語で出す)
A1:まだ少ない。多言語化しても、対応する側の人が逃げたら意味がない。市民のグロー
バルマインド意識が上がってから多言語ツールが使えるのだと思う。
Q2:日本と海外との文化的な差異は広く、外国人は日本人の行動の裏にあるものを聞きた
がる。例えば「サービス」と「Service」は意味が違う。行動の意味を理論的に説明す
る必要があり、そこの部分を大学が役割を果たせるのではないか?
A2(概要)
:参加した日本人学生でコンビニでのアルバイト経験者もいたが、「コンビニと
百貨店のおもてなしはレベルが違う」とのことであった。コンビニだとマニュアル通
りかもしれないが、百貨店ではお客さんのことを第一に考えた行動というのが基本に
ある。ただ、百貨店の方も「おもてなしの意味をここまで深く考えたことがなかった」
と話しており、おじぎの意味や「いらっしゃいませ=あなたが来たということを私は
39
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
気付いた」という意図を伝えることだと私からも介入して説明させていただいた。お
客として受けるものと自分が行うことではとらえ方も違う。留学生をまじえることで、
社員にも気づきがあったと思う。
Q3:このプロジェクトの学内での認知度・協力体制は?
A3:まだ始めて半年のプロジェクトであり、認知度は高いとは言えないが、メディアに取
り上げられたことは大きい。将来的にも全学的な教育として取り組んでいきたいし、
経済学部でもPBL型の日本人学生のアウトバウンド・海外研修もあり、地元のもの
を海外で売ってみるというプロジェクトのために地元企業とつながりを持ちたいと思
っている。そのために協力関係を持ち、留学生もそこに加わることができると良い。
(この他の全体質疑応答はオフレコのため掲載せず。)
40
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
留学生教育学会 留学生担当教職員分科会
「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
継続性をふまえた
留学生教育と地域連携への試み
2015年2月21日
東北大学 グローバルラーニングセンター
特任准教授 田口香織
1
本日の内容
・東北大学の現状
・留学生支援に関して、地域の課題
・地域との連携のきっかけ
・藤崎百貨店・国際化プロジェクトの概要
・地域連携を発展させるポイントと今後の展開
2
41
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
東北大学の現状
■大型競争資金の獲得による、加速的なグローバル化を推進
〇国際化拠点整備事業:グローバル30(H21年度-H25年度)
国際学士・大学院プログラム 交換留学プログラム、サマープログラ
ムの充実 留学生の増加と支援体制の整備
〇グローバル人材育成推進事業(H24年度~) 東北大
学グローバルリーダー育成プログラム(TGLプログラム) グロ
ーバルキャンパスの実現 グローバルラーニングセンターの
設置
〇東北大学グローバルビジョン
里見ビジョン(総長ビジョン)+部局ビジョン (H25年)
〇高度教養教育学生支援機構(H26年4月~)
グローバルラーニングセンターを改組 異文化・国
際理解、海外研鑚を教養教育の柱に
3
東北大学の現状
■交換留学生も含めると90か国、約1,750名の外国人留学生が在籍。
東日本大震災の影響により一時的に留学生数が減少したが、
英語のみで卒業する留学生も増え、グローバルな環境が整いつつある。
外国人留学生受け入れ数の推移
外国人留学生の受け入れ状況
各年5月1日時点
1,800
1,600
1,400
1,200
1,194 1,179 1,218
1,346
1,511 1,498
1,432 1,436
1,532
1,000
800
600
400
200
0
2014年11月1日時点
4
42
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
東北大学の現状
■東北大学は仙台市内に5キャンパスがあり、街を囲むようなロケーション。
学生の活動拠点は仙台市内が中心となる。
東北大学
仙台市は人口107万人。
政令指定都市。
東北大学
東京都を除いて人口数11位
10位:広島市
118万人
12位:北九州市 98万人
13位:千葉市
96万人
都市の規模としては大きい。
ただし、国際化が進んでいる
とは言えない状況。
仙
台
駅
東北大学
東北大学
東北大学
バスで約15分
5
留学生支援に関して、地域の課題
■仙台市の経済の特徴: 「支店経済」=外部依存型経済構造。支店比率が56.6%。
本社がグローバル化していても、支社にはグローバル人材は必要ない。留学生を必要としていない。
地元に根付いた人材育成+転勤社員が多い。(転勤によって毎年10万人が出入りする街)
■東北大学:「全国区の大学」=地元出身者が少ない。宮城県出身学生は約15%
日本人学生でも、仙台に馴染みのない学生が多い。
仙台市の支社比率
仙台市
支社, 56.6%
東北大学の入学者状況(H26 4月)
本社・単独事
業所, 43.4%
四国
中国1%
1%
近畿
3%
九州・沖縄
1% その他
2%
宮城
16%
中部
17%
政令指定
都市平均
支社, 43.2%
本社・単独事
業所,
56.8%
北海道
3%
関東
31%
東北(宮城以外)
25%
資料:「平成18年事業所・企業統計調査」
6
43
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
留学生支援に関して、地域の課題
■震災の影響による、観光産業の縮小
東日本大震災によって、外国人観光客は急激に減少。2013年時点でも震災前にはおよばない。
一方で他の地方都市ではすでにインバウンド需要の高まりを見せている。
都市別外国人宿泊客の推移
仙台市外国人宿泊客の推移
資料:「宿泊旅行統計調査」(国土省)
その他
オセアニア
100000
1400000
90000
欧州
1200000
80000
北中南米
アジア
70000
1000000
札幌市
60000
800000
福岡市
50000
広島市
600000
40000
仙台市
30000
400000
20000
200000
10000
0 0
2006
2006
2007
2007
2008
2008
2009
2010
2010
2011
2011
2012
2012
2013
2013
8
44
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
留学生支援に関して、地域の課題
①大学・地域それぞれに連携のメリットが見出しにくい。
日本人にとっても「入口」「出口」で馴染みが薄い。地元企業に資金的、人的余裕はない。
インターンシップを受け入れても、就職につながるわけではないと、諦められている。
②地域の国際化の遅れ⇔大学の国際化の進展
市は仙台市内の企業を守ることを中心に考える。
市民の高齢化も進展。年金・助成金生活者も多い。
→市内の内需拡大・安定を強く意識。(復興助成金)
大学はグローバルな競争環境に置かれている。
90か国からの外国人留学生が在籍。
→スーパーグローバル大学事業トップ型にも採択。
→国際化より、内部課題に対応することを意識。
→グローバルスタンダードの教育・支援を目指したい。
③留学生の教育・支援に協力的なのはグローバル企業
グローバル社会を担う人材育成に協力する企業=都市部のグローバル企業との連携が進展。
遠方であっても喜んで協力してくれる企業は多数存在する。
教育から学習へ。留学生の主体的な活動を支援していきたいが、
地元で挑戦できる場、活躍するフィールドが少ないことが課題に。
9
きっかけ
仙台で国連防災世界会議、開催。
約5,000人の来賓が海外から仙台市に集結。十分な国際対応ができるような状態ではない。
国際化の進む東北大学に対して様々な協力要請があり、頼りにされるように。
10
45
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
市との連携
①仙台市国連防災世界会議準備室との連携
2013年11月末
仙台市との打ち合わせ開始。語学ボランティアに関する要請を受けて、学生が参加しや
すいような研修内容、研修日程、募集要項に調整を依頼。新学期から告知に協力。
2014年4月
語学ボランティア募集活動開始。東北大学グローバルリーダー育成プログラムの
ポイント対象に指定。留学経験を活かす場、語学力を活用する場として、広く告知。
2014年7月
交換留学からの帰国後学生も加わり、
語学ボランティアに対しての研修会スタート。
市民と学生とが一緒に接遇や、被災地ツアーの
ガイドができるようトレーニングを受ける。
2014年11月
語学ボランティア登録者約380名。
そのうち学生が約180名。東北大学からは約150名が登録と多数の学生が参加。
外国人留学生も登録。
11
地元企業との連携
②仙台市商工会青年部との連携
2014年9月4日:商工会青年部との勉強会(情報交換会)
商工会青年部は45歳以下の仙台市内の経営者の集い。
約250社が参画し定期的に勉強会を実施
→勉強会で東北大学の国際化の現状と経済界との連携の
可能性について具体事例を紹介。
2014年11月4日:台湾をテーマに交流会
商工会青年部、台湾視察メンバー(約20名)と、東北大教員(5名)、台湾人留学生(10名)を交えた
勉強会・懇親会。台湾の理解促進と留学生との交流の場を設ける。
2014年1月9日:
藤崎百貨店との国際化プロジェクト開始
<今後の予定>
商工会の案内所での留学生通訳・案内所サービスのアレンジ(日本人学生・外国人留学生)
ANAホテルカウンターでの通訳アルバイト依頼(日本人・外国人留学生) それ以外にも
、青葉祭りでのすずめ踊りや被災地ツアーへの協力など、連携が急展開。
46
12
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
地元企業との連携事例 「藤崎百貨店国際化プロジェクト」
【藤崎百貨店の国際化プロジェクト】
■藤崎百貨店とは・・・ 約200年の歴史を持つ老舗百貨店。伊達藩の頃から街を支
えてきたという自負がある。 市内に4店舗を構え、東北エリアでは唯一の海外高級ブラ
ンド店を誘致している。
年商450億円、従業員730名。商店街(アーケード)の中心にあり、商店街の活性化に貢献。
本館の屋上にえびす神社を構え、文化的にも商業的にも中核的な存在。
13
地元企業との連携事例 「藤崎百貨店国際化プロジェクト」
【藤崎百貨店の国際化プロジェクト】
〇藤崎の現状
・店内案内など、英語対応がなされていない。
・外国人を見ると社員が逃げてしまうという状況もあり。全フロアでの外国人対応は困難。
〇藤崎側からの要請と狙い
・国連防災世界会議時の免税カウンター、受付通訳としてインターン生15名を要請。
・一過性のイベント意識に留まらない国際化対応へのきっかけにしたい。
・藤崎のみならず、将来的には商店街を巻き込むという意欲も
・国連防災世界会議、サミット等を見越して、インバウンドビジネスを活性化したい。
■大学側の現状
・外国人留学生がアルバイトを見つけるのも難しい状況。
■大学側の狙いと提案
・交換留学生のインターンシップ先(単位付与)として位置付けたい。
・留学生が日本の文化やおもてなしを学ぶ場として位置付けたい。
・留学生と日本人の共修プロジェクト受け入れ先として位置付けたい。
・社会人との協働によってコミュニケーション力を身につけさせたい。
・街の国際化のきっかけにしたい。藤崎社員の意識も変えていきたい。
14
47
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
地元企業との連携事例 「藤崎百貨店国際化プロジェクト」
■取り組み概要
インターン生は合計16名。(日本人3名、外国人留学生13名・9か国) そのうち日本人3名、外国人
留学生3名をリーダーとして事前研修を受けさせ、時間をかけて育成。 第1回〜第3回事前研修は
リーダーのみ参加。第4回事前研修以降はインターン生全員が参加。 リーダーには2単位(TGLポ
イント2ポイント)、一般参加のインターン生には1単位を付与。
■第1回研修:課題提示
藤崎の歴史を紹介。3チームに分かれ、藤崎フロアマネージャー3名と4店舗視察、課題提示。
→フォトエスノグラフィーとして様々な観点で藤崎店内の写真を撮影し、それぞれ自分の考えをまとめてくる。
ただし、自分とは異なる国籍の学生と一緒に店舗を視察に行くことを条件にする。
■第2回研修:藤崎社員の意識改革・おもてなし研修 藤崎フロア責任者や教育指導担当者等20
名に対する、異文化理解研修という位置付けで実施。 異文化理解研修の専門企業に依頼。大学側
が研修会社と研修内容を検討し、藤崎人事部の要望も踏まえて アレンジ。午前中は藤崎社員のみ研修、午
後は学生(留学生3名、日本人学生3名)が加わって合同研修。 最高のおもてなしとはなにか?外国人からみ
てどんな点を改善すべきか?ついてディスカッション。
■第3回研修;学生に基本的な接客を理解させる 3月の国連防災世界会議期間中のキャンペーン
内容についてのレクチャーと、会期中ホテル等で配布する パンフレットの作成。基本的な挨拶や接遇に関
するレクチャー、売り場での仕事体験を行う。
■第4回研修;学生全員参加の研修。
全員で基本的な挨拶、接遇のレクチャーと店舗視察、実際の売り場での研修。
15
地元企業との連携事例 「藤崎百貨店国際化プロジェクト」
■第2回研修:学生の事前研修と、社員の異文化理解研修を同時開催
<研修内容>
<研修参加学生>
日本人学生3名、外国人留学生4名
10:00~12:00 外部講師による異文化理解研修
(藤崎社員)
■ グローバル化に向けた心構えを醸成する。
藤崎社員を対象とした異文化理解研修
【演習】カントリー・プロファイル・ゲーム(アジア編)
【演習】トランスミッション・ゲーム
<藤崎の研修参加者> 藤崎のフロアマ
13:00~14:30 ディスカッション①
(藤崎社員+東北大学の学生)
■藤崎の現状・今について考える。 外国人顧客の立
場から見た藤崎のいいところ、改善点 について事前に8の
観点から撮影した写真をもとに考える。
14:30~16:30 ディスカッション②
(藤崎社員+東北大学の学生)
■藤崎のこれからについて考える。 今までに経験し
た最高・最悪のおもてなし体験を振り返る。 おもてなしと
は何か。藤崎のおもてなしのあり方を考える。
16:30~17:00 まとめと振り返り(藤崎社員)
■藤崎社員として、これからなにをすべきか
ネージャーや、社員教育担当。 国連防災世界
会議で国際化推進担当として 任命されてい
る社員。
サービス推進(4名)
紳士洋品・ビジネスウェア
婦人服2
インテリア ハンドバ
ック・婦人靴
ベビー用品・
子供服・玩具・
ホ
ビー
担当
グロサリー和洋酒
美術ギャラリー 営業
企画担当(2名)友
の会・Fカード担当
総務部
総務担当3名(防災保安・セキュリティ部門)
<オブザーバー>
人事部4名
自分の担当で、外国人顧客のためになにをするか、
3月までに何をすべきかを自分事として考える。
16
48
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
藤崎百貨店 国際化プロジェクトの影響
■合同事前研修がもたらしたもの
街への影響力⇒「河北新報」、「NHK」、「TBS系列」で研修が取り上げられる。
特に河北新報は仙台経済界のキーマンが必ず読んでおり、
仙台市役所や経済人からも記事をみたと声をかけられるように。
東北大学発ではなく、老舗発の国際化対応だからこその伝播力。
17
地元企業との連携の可能性
■藤崎との連携は、今後もさらに発展。
・国連防災世界会議に向けての店舗・サービス改善提案と社員研修
・防災会議会期中の通訳、防災訓練への協力
・外国人留学生の授業への講師派遣
・日本人・外国人の共修授業(後期)「藤崎インバウンドビジネス提案」
国際化プロジェクトとして、全社を巻き込んだ形に。
■地域連携によって大学が提供できる価値とは?
1.情報・ノウハウ・人的資源の提供
=国連防災世界会議にむけて、藤崎店の店頭・店内・サービスの国際化をサポート。
2.社員の人材育成と社内の活性化
=「外国人を見ると裏に逃げる」状態だった藤崎社員の主体性とグローバルマインド醸成支援。
3.新事業の創出と拡大支援・街の活性化へ
=藤崎のインバウンド事業の創出と街を巻き込んだ動きへ
例)外国人向け福袋、観光ツアーの提案等
18
49
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
地元企業との連携の可能性
■大学としての連携のメリット
連携に「学習」「育成」という観点を加えることで、見え方が変わる。
1.留学生に日本のおもてなしを学ぶ「インターンシップ」を提供できる
=日本語能力が十分ではない外国人留学生も、自分達の強みを活用できる。
2.日本人と外国人留学生の共修による、PBL型のリソース
=課題解決型授業の成果が、自分たちの住む街の国際化として体感できる。
3.外国人留学生・研究者にとっての生活環境の国際化進展
=外国人留学生の全体性を支援する体制づくり=留学生招致に好影響。
4.留学生支援の観点で、不測の事態の際の協力者が得られる
=日常的に外国人留学生と接点を持つ市民が増えることで、安心安全を提供できる。
「イベント」のような一過性、「就職」のような高いハードルのない
地元企業との「継続的な連携」により、相互理解と協力体制が深まる。
19
地域社会との連携を継続的に行っていくために
■地域社会との連携をするうえで大切なのは「継続性」
地域社会との連携を継続していくためには、大学側・教育的観点だけではNG
留学生教育や支援における産学連携は、一方的な押し付けやお願いになりがち。
地域社会にとって有益である
か 大学にとって有益であるか
学生にとって有益であるか
地域社会
大学
学生
三者にとってWIN-WIN-WINであることが望ましい。 バランスを
とりながら継続的な地域連携を行い、街の国際化を促していく。 双方の状
況をきちんと理解して、相手の利益のことも忘れてはならない。
大学側も、地域への貢献意識を持つことが重要。
20
50
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
地域社会との連携を継続的に行っていくために
■地域との連携にあたってのポイント
仙台の国際化なくして、東北大学の国際化は進展しないということを意識して、
きっかけは個人と個人であっても、組織対組織として、地域企業との関係性を繋ぐこと。
1.まず地域のことを知ること。
地域の産業構造、歴史、人間の価値観、最近の動き。官庁の情報だけを頼りにしない。
2.地元の方々との顔の見える関係を構築し、深める。
大学は、地元経済界にとっては異質な存在。思った以上に知られていない。
積極的な情報発信と対話を。特に若手経営者を対象に留学生に関しての理解促進を。
3.街の国際化・産業発展に貢献するという意志を持つ
老舗企業・ベンチャー企業などの企業家と直接連携して、緩やかな関係性を築く。
一方的なお願いではなく、アルバイト、インターンシップによる国際化推進・意識改革など、
企業の事業への貢献と、こちらの教育効果双方のバランスを考える。
外国人留学生を受け入れてもらえる土壌を継続的に開拓する。
21
ご清聴ありがとうございました。
22
51
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
<一般発表>
① 「国内の日本語学校在籍留学生への大学情報提供について
~エンロールメント・マネジメントによる支援~」
前田 和則(崇城大学)
国内の日本語学校在籍留学生への大学情報提供について
~エンロールメント・マネジメントによる支援~
前田 和則(崇城大学)
SOJO UNIVERSITY
SOJO UNIVERSITY
52
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
発表の流れ
・日本の大学の現状
・進学先の選定方法
・進学先選定時の問題点
・エンロールメント・マネジメント(EM)
・EMを活用した支援方法の実践報告
・日大連携
SOJO UNIVERSITY
日本の大学の現状(大学数)
日本国内大学数推移(国公私立)
900
800
700
600
500
474
460 460 465
446 451 455 457
523 534
507 514
490 499
552
586
565 576
604
622
649
669
686
702 709
726
778 780 783 782
765 773
744 756
400
300
200
100
0
1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
*筆者作成(総務省統計局調査結果より)
SOJO UNIVERSITY
53
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
進学先を探す場合
・大学案内(パンフレット)
・インターネット(HP、SNS)
・担任、進路担当教員からの情報
・進学説明会(会場形式、校内形式)
・出前授業
・オープンキャンパス
・先輩からの情報
・保護者からの助言
・進学情報雑誌
等々
SOJO UNIVERSITY
進学相談会参加者推移
外国人留学生向け進学相談会参加者推移(会場:福岡市)
2,500
2,071
2,000
1,608
1,500
1,360
1,000
865
500
193
0
2010
2011
2012
2013
2014
*筆者作成(㈱さんぽう実施報告書より)
SOJO UNIVERSITY
54
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
日本の大学の現状(ミスマッチ)
65.2%の大学が課題認識
*(久保田2014/出典(両角2014))
SOJO UNIVERSITY
*(久保田2014/出典(両角2014))
SOJO UNIVERSITY
55
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
エンロールメント・マネジメント
・エンロールメント・マネジメントとは?
「学生の大学選択、大学入学、在学中のサービス、大学中退学
阻止、学生の将来などに関わる支援諸活動を総合的に運営
すること」
「揺りかごから墓場までの支援」
*(今井ほか2007)
SOJO UNIVERSITY
エンロールメント・マネジメントのステップ
入学前
入学後
卒業後
①Aware
(大学の存在に気付かせる)
②Interested (興味を持たせる)
③Applies
(志願させる)
④Admitted (入学許可を与える)
⑤Select
(選んでもらう)
⑥Enrolls
(入学してもらう)
⑦Engages (満足させる)
⑧Graduates (卒業させる)
⑨Succeeds (社会で成功してもらう)
⑩Supports (支援してもらう)
⑪Bequeaths (遺産を寄付してもらう)
*(船戸2011)
SOJO UNIVERSITY
56
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
EMに基づいたサポート~芸術プログラム~
「留学生向け芸術プログラム」(全4回シリーズ)
対
内
時
象:建築系、芸術系、デザイン系大学を志願している留学生
容:デッサン力を養う。デザインの基礎知識を学ぶ。
間:1回あたり90分授業×2コマ
効 果
・デッサン力を養うことができる。
・デザインに関する基礎知識を学ぶことができる。
・自分が本当に進みたい分野なのか見極めるための判断材料になる。
SOJO UNIVERSITY
EMに基づいたサポート~生物プログラム~
「留学生向け生物プログラム」(1回完結型)
対 象:生物系の大学を志願している留学生
実験例:DNAを見て見よう!
内 容:ブロッコリーからDNAを抽出し、エタノール沈澱という方
法を使い、目でDNA確認する。
時 間:90分×2コマ
効 果
・日本語教育機関ではできない実験ができる。
・日本留学試験で出題される問題を実際に体験できる。
・自分が本当に進みたい分野なのか見極めるための判断材料になる。
SOJO UNIVERSITY
57
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
EMに基づいた日大連携の促進
・日大連携とは?
国内の日本語教育機関と大学が日本語教育機関に在籍してい
る留学生のために連携を行うこと。(筆者の造語)
・目的
将来、日本との架け橋となってもらうべく、協働で留学生を育て
る。そのために、適切な学生募集活動行い、入学時のミスマッチ
を防ぐ。
SOJO UNIVERSITY
参考文献
・今井健,今井光映,2003,『大学エンロールメント・マーケティングー
大学EMの4Cスクェアーパラダイム』,中部日本教育文化会
・株式会社さんぽう,2014「留学生のための進学相談会2014開催
結果報告書」
・久保田憲寿,2014,「学生募集におけるオープンキャンパスのあり
方について -エンロールメント・マネジメントの視点を取り入れ
た学生募集の構築- 」,桜美林大学大学院大学アドミニストレー
ション研究科大学アドミニストレーション専攻(通信教育課程) 修
士論文
・船戸高樹, 2011,長野大学SD研修会「大学改革、職員の役割―
ベテランからプロフェッショナルへ」配布資料
*お断り
本資料は発表資料の抜き刷り版のため、一部内容が不足している場合があ
ります。
SOJO UNIVERSITY
58
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
② 「留学生の防災教育~参加型地震防災教育開発プロジェクトにおける成果と課題~」
紫藤 真由(静岡大学院)
留学生への防災教育
~参加型地震防災教育開発プロジェクト
における成果と課題~
静岡大学教育学部
藤井基貴研究室
59
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
教材開発の背景
・総務省多文化共生に関する研究会 (2012)
「外国人住民が災害時に適切な対応を自らとれるよ
う、 外国人住民の防災学習への支援をきめ細かく行
うこと で啓発を図ることが必要」
・日系定住外国人施策推進会議 (2014)
「災害に関する理解はまだ十分に進んでいない」
・留学生30万人計画(2008)
教材開発の背景
・地震経験や知識が少ない
(岩本ら, 2011; 京都府国際センター, 2013 )
・「初めての経験で大きな不安があった」 (仙台市, 2011)
・震災後、留学生の方が不安感が高く、
PTSD ハイリスク群の割合が高い (名古屋大学, 2013)
60
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
教材開発の背景
Yes
全国
141.774人
日本での地震への不安
静岡
1,576人
図1. 留学生数 (2010年5月現在. 静岡県
公式HPより)
No
その
他
41%15
59%22
自国での地震経験
35%
13
54%
20
自国での地震防災教育
受講経験
35%
13
60%
22
0
114
%
5
2%
図2. 静岡大学留学生アンケート結果 (紫藤,2015)
①留学生数の増加
②6 割が地震への不安
③5 割以上が母国で地震の経験なし
④6 割が母国で防災教育の経験なし
教材開発の背景
地震 (jishin)
⑤日本語認知
津波 (tsunami)
余震 (yoshin)
震度 (shindo)
震源地…
火災 (kasai)
Know
注意情報 (cyui…
Don't
know
警戒宣言 (keikai…
No
answer
高台 (takadai)
倒壊 (toukai)
避難 (hinan)
非常口…
0%
20%
40%
60%
80%
100%
静大留学生アンケート結果 (紫藤, 2015)
61
⑥ 震災時の行動にも
不安 (観光庁, 2012)
⑦留学生用防災教材・
カリキュラムの不足
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
留学生への防災教育
地震 (jishin)
災害時要援護者
津波 (tsunami)
に対する支援
余震 (yoshin)
震度 (shindo)
震源地…
火災 (kasai)
Know
注意情報 (cyui…
Don't
know
警戒宣言 (keikai…
No
answer
高台 (takadai)
留学生・外国人
向けの教材開発
英語版
やさしい日本語版
倒壊 (toukai)
避難 (hinan)
防災コミュニティー
非常口…
0%
20%
40%
60%
80%
100%
の形成支援
静大留学生アンケート結果 (紫藤, 2015)
教材・授業開発
学外:WaNavi Japan
ゼミ合宿(静大、京大、慶大、関大)
学内:教育学部の英語科・社会科・理科、留学生
62
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
教材・授業開発
知識+判断力+行動力
B
C
A
特色
• 参加型地震防災教育
・ 異文化理解教育の手法 D.I.E.メソッドをベースに
• 留学生 “地域で活躍できる存在”のメッセージ
• 英語と “やさしい日本語” Ver. での取り組み
63
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
グループディスカッション
“What are you going to do?”
D.I.E. 法 (Janet M. and Milton Bennett ,1975)
① Description
② Interpretation
③ Evaluation
① 客観的な事実描写
② 考え、行動、発言の
読み取り
③ 自分ならどう判断し
行動するか
早くしないと火事
になる、逃げよう
B
C
助けて!
A
地域コミュニティの一員として
=多文化防災=
多文化共生の視点にたった地域防災
外国人といった国籍や文化の異なる人々を一概に “
要援護者”としてとらえるのではなく、むしろ地域の担
い手として考え、実践する地域防災という考え
(仙台市国際交流協会, 2012)
64
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
地域コミュニティの一員として
やさしい日本語版
65
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
実践の様子
静岡大学 名古屋大学 静
岡県内の日本語学校など
@静岡大学
@静岡大学
2014年12月
@名古屋大学
実践の様子
2014年11月
©毎日新聞社
@A.C.C. 国際交流学園
2015年2月
@ふじのくにNPO活動センター
66
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
参加者の声
インドネシア
It makes our knowledge more opened. So, this class is
very important for my life especially because I did not get
this lecture in my country. In this class, we got a lot of
information. It works. I will share this to others in my
country.
韓国 韓国はあまり地震がな
いから この教育を受けて本
当に勉 強になりました。日
本の地震 に対する知恵をし
りました。そ して他の国の人
とはなしをし ながらいろいろ
勉強をしてと ても楽しかった
。
日本 ディスカッションをして
みて、 自分が気がつかな
かった視 点をグループの
人から聞け た。もし自分が
ディスカッショ ンのような状
況にいたら、何 をすべきか
決めるのは本当 に難しい
とおもった。
スペイン
When a disaster happens, there aren’t “me” but there
are “us” because we all belong to a community. That’s
the difference between Japanese and people from other
countries. I’m grateful that this speech let me think like
community and not like an individual man.
今後の取り組み
教材の実施と改善
公開の促進 より総合的なカリ
キュラムの開発
67
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
③「大学の枠組みを越境した連携:
防災・減災に関する東北大学・名古屋大学での授業の実践報告」
島崎 薫(東北大学)
、渡部 留美(名古屋大学)
、Emanuel LELEITO(名古屋大学)
留学生教育学会「留学生担当教職員分科会研究会」
テーマ「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
平成27年2月20日(金)@一橋大学
大学の枠組みを越境した連携:
防災・減災に関する東北大学・名古屋大学で
の授業の実践報告
東北大学グローバルラーニングセンター 島崎薫
名古屋大学国際教育交流センター 渡部留美
名古屋大学工学研究科 レレイト・エマニュエル
68
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
発表の概要
1.授業がおかれていたコンテキスト
2.受講者概要
3.講義の概要
4.評価の方法
5.共修授業
6.授業で築かれた連携
7.改善するべき点
8.CHALLENGES/ FINAL QUESTIONS: 今後の課題
1.授業がおかれていたコンテキスト
南海トラフ地震を
東日本大震災を
経験するかもしれない
経験した東北大学
東北大学
災害科学
国際研究所
名古屋大学
本授業
69
名古屋大学
減災連携研究
センター
災害対策室
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
2.受講者概要
• 名古屋大学
G30プログラム(国際プログラム群)の学部生10
名(2〜4年生)。全学教育科目のため、専攻分
野は理系、文系様々。国籍も様々。
• 東北大学
IPLAの学部生4名、日本人学生3名(うち1名自
由聴講)。日本人学生は全学教育科目のため、
専攻分野は理系、文系様々。国籍も様々。
3.講義の概要-1
①東北大学の教員による講義 3
• Earthquake Prevention Technology and
Interdisciplinary Research
• Lesson Learned from the 0311 earthquake
(Tsunami Disaster) など
②名古屋大学の教員による講義 2
• Disaster Management in Japan
• Nankai Trough earthquakes, their potential
hazards to the populated area of Japan
③福島大学の教員による講義 1
• International Students and Disaster safety
Lessons learnt from Fukushima University
70
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
3.講義の概要-2
④仙台国際交流協会職員による講義 1
Risk management and networking
⑤各大学で講義、プロジェクト
名古屋大学:100円ショップの商品を使った災害時持ち出
し袋の作成
東北大学:震災経験者へのインタビュー活動
⑥ジョイントプロジェクト
東北ツアー前に、東北大・名大の学生でグループを作り、
現地でインタビューする内容について協議(東北スタディツ
アーのみ参加する東北大学生も参加)
⑦東北スタディツアー
⑦東北スタディツアー
1月10日(土) 福島(郡山)
• 富岡町から避難している住民の仮設住宅とおたがいさまセンター
訪問
• 語り部へのインタビュー
1月11日(日) 宮城(女川)
• 津波現場訪問(復興住宅・コミュニティセンター見学)
• 東北大学マリンサイエンスセンター教員による講義
• 発表準備
1月12日(月)
• 発表、講評
71
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
4.評価の方法
出席:30%、レポート:50%、授業への積極的な参加:20%
• 名古屋大学
グループワーク(災害時持ち出し袋)、ビデオ制作、東北
ツアー参加、最終レポート
• 東北大学
インタビュー活動、中間レポート、東北ツアー参加・プレ
ゼンテーション、最終レポート
5.共修授業
留学生
留学生
留学生
5−1.教室
本授業
留学生
日本人
学生
日本人
学生
名古屋大学
東北大学
名大・東北大会場をWeb会議システムでつなぐ
72
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
5−2.東北スタディツアー
本授業
6.授業で築かれた連携
6−1.大学間の枠組みを越境した連携
• 両大学には震災学の専門家が多数
→大学の枠を越えた「知」の共有
• 東北大学の場合、東日本大震災の経験者が
周囲にいる
→東北の「生の情報」の共有
73
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
6−2.大学と地域の枠組みを越境した連携
• 東北スタディツアー@郡山&女川
→被災地を訪れ、被災者の話を聞く
7.改善するべき点-1
• 学生同士がインターアクションできる機会を
もっと早い段階で設けるべきだった。
⇒知らない者同士がインターネットを介してディスカッ
ションする難しさ
• ローカルな情報をどのように共有するのかを
工夫するべきだった。
• ネット環境
74
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
7.改善するべき点-2
• 教養教育の授業であり、受講生は学部2〜4
年生や交換学生であったため、学生にとって
は内容が専門的すぎた。
• 名大側は、G30の授業であったため、日本人
学生やその他の留学生も授業に参加できる
仕組みを作るとより議論が活性化したと思わ
れる。
• 講義が多かった。ディスカッション時間をより
多く設ける。
CHALLENGES || FINAL QUESTIONS
ー 今後の課題 ー
Focus : Disaster Risk Reduction Education (DRRE) is more
about building resilience than just getting academic credits,
therefore it is imperative that we device ways of reaching a
large number of international students, individually.
How do we accomplish this with limited resources?
Content: DRRE is multidisciplinary. Target students are
often in disparate specialized fields of study. How do we
design a syllabus that gathers adequately for this?
Replication: To promote wider adoption of DRRE and
minimize duplication of effort, how can we efficiently
disseminate and encourage exchange and replication of
good practice in DRRE initiatives among the educators?
75
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
③ 「地域ボランティアと大学の連携−留学生・外国人研究者の家族のための支援団体の
活動事例から」
渡部 留美(名古屋大学)
留学生教育学会「留学生担当教職員分科会研究会」
テーマ「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
平成27年2月20日(金)@一橋大学
地域ボランティアと大学の連携
-留学生・外国人研究者の家族のための支援団体の活動事例から-
名古屋大学国際教育交流センター
渡部留美
76
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
発表の目的と流れ
国際交流関係の地域ボランティアと大学の連携の現状について、ボランティア、
国際教育交流担当者(研究者)、大学スタッフの三つの視点から、課題とその
解決策について報告を行う。
1.地域ボランティアと留学生支援の歴史、ボランティアの活動内容
2.今回の発表で取り上げる地域ボランティア団体
2−1. 概要
2−2.団体が抱える課題
3.発表者個人の体験からみえた地域ボランティア
4.地域ボランティアは何故ボランティアをするのか
5.大学が地域ボランティアとうまく連携するために
6.地域ボランティア経験者として大学との連携を考える
1.地域ボランティアと留学生支援の歴史、ボランティアの活動内容
80〜90年代まで:大学は地域との交流に積極的ではなかった
→「大学の業務ではない」
*日本の組織のボランティアに対する消極的な態度(足立1996)
90年代〜:留学生政策懇談会第一次報告『今後の留学生政策の基本
的方向性について』「留学生の日本人学生・地域住民・民間団体との交
流活動の推進」(1997年7月)を受けての文部省から関係機関への通
知
→「大学が地域と留学生の橋渡しを行う」
(2004横田・白土)
活動内容例
• 留学生のための日本語教室
• 日本文化紹介(着付け、折り紙、書道など)
• 留学生の家族のサポート
大学の予算や人員で
• ホストファミリー、ホームステイ
賄えない内容を実施
• バザー
77
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
2.今回の発表で取り上げる地域ボランティア団体
2−1.概要
• 名称:KOKORO-NET in 神戸
• 設立年:1996年
• 目的:留学生・外国人研究者の家族の支援・交流
• 発足人:留学生担当教員と大学教員の配偶者
• メンバー:25名
• 基本スタンス:「市民レベル」「全員参加」「日本語」
• 活動内容①カフェ(学内外3カ所において日本文化、ハイキングなど
の交流プログラム)
• 活動内容②日本語講座(週1回、2クラス)
• 活動内容③その他(サポート、バス旅行、大学・地域からの依頼対
応)
発表者は博士論文の研究テーマ「留学生の帯同家族の利点と課題」
について、実践調査をおこなうため2000年に入会
2−2.団体が抱える課題(1)
寺島・渡部(2015)より一部引用
①予算
• 会員の年会費、助成金、寄付金が頼り
• 発足当時はほぼ手弁当
• 次第に助成金、大学からの資金面の支援など安定した予算が確保
できるように
②広報
• 対象者への広報、関係者への活動の周知のルート
• 一時は研究室訪問をし、教員へ直接宣伝しようという案もあったが、
大学からの宣伝、HPの開設等により認知度が上がってきた
③スタッフ
• スタッフの入れ替わりが少なく、「阿吽の呼吸」で実施してきたが、ス
タッフが高齢化し、ボランティアの核となる主婦の減少による若いス
タッフの不足。存続の危機。
78
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
2−2.団体が抱える課題(2)
④対象者、社会の変化
• 行政の制度の整備、ネット社会の普及、留学生の多様化によ
り、団体の支援を必ずしも必要としなくなってきている
⑤大学との関係
• フォーマル組織(大学)とインフォーマル組織(地域ボランティ
ア)の連携の難しさ
「山嵐のジレンマ」(立木、1997)
対象者の増加、多様化、ニーズの変化、社会の変
化と共に解決した問題もあれば課題となることもあ
る
3.発表者個人の体験からみえた地域ボランティア
国際教育交流担当者(研究者)という立場から
• プログラムによっては、参加者が少ないこともあり、留学生の
多様化や留学生に対する制度整備について情報を提供
• 研究者としてデータを集めたいが、スタッフに言い出しにくい。
• 同じボランティア仲間としての関係を保ちつつ、研究をするこ
との難しさ
ボランティアという立場から
• 他のボランティア同様、活動を行う
• 若いスタッフの確保
• メーリングリスト、ホームページ、ブログの管理
79
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
大学スタッフという立場から
• スタッフから大学への不信感が出た際、大学の立場や事情を
説明し、相互理解促進に努める。
「大学は無断で私たちの活動を掲載した」「私たちの活動
が大学のいいいように使われている」
• 広報の仕方などについて意見を述べる
10周年記念誌発行は広報の絶好の機会だと思ったが、反対意
見も多数あった。
「PR するために活動しているわけではない」「対象者が
喜んでくれればそれでいい」「発行作業を手伝ったが、今
でも『もっと他にしないといけないことがある』と思って
いる」
発表者と地域ボランティアの関係
ボランティア
としての私
活動
やりがい、満足感
大学組織・事情
について情報提供 KOKORO-NET
in 神戸
大学スタッフ
としての私
大学としてやるべきこ
とのアイディア、大学
がいかにボランティア
に頼っているかにつ
いての理解
80
現場の事情・課題、
研究のアイディ
ア・データ
留学生の多
様化、国の
政策などの
情報提供
国際教育交
流担当者(研
究者)として
の私
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
4.地域ボランティアは何のためにボランティアをしているのか
• 草の根の国際交流は、相互理解の基礎→世界の平和
• ココロネットは自分を支える大切な場所だ
• ココロネットの仲間は信頼し合える大切な友人である
(寺島・渡部2015)
• 活動に対する楽しさの実感
• 留学生家族への思い、家族は友達
• 仲間、友人がいるから続けられる
(渡部2011)
ボランティアの適性「他人を受け入れるキャパシティ、異質な考えに
対応できる柔軟性」(田尾1999)
ボランティア活動の社会的条件「ともに参加する仲間や友人がいるこ
と」(足立1996)
5.大学が地域ボランティアとうまく連携するために(1)
予算
• 家族に関係する業務が大学の一業務であるという認識をもつ
• 活動費や活動場所の提供を行う努力をする
広報
• 大学のHPへの掲載(国際交流センターにリンクを貼るなど)
• 団体について宣伝、紹介する(オリエンテーション時など)
スタッフ
• スタッフの募集のサポートを行う
• 学内組織(学生の交流・支援団体)や同類の他団体との連携
のサポートを行う
• 地域ボランティアが足りない、あるいは活動が困難な場合は、
学内リソースの提供を行う
• 研修会の開催
• 情報共有の提供の場
*プロのボランティアの養成を支援(田尾1999)
81
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
5.大学が地域ボランティアとうまく連携するために(2)
対象者の変化、社会
の変化
• 国・大学の留学生受け入れ戦略や現在の大学が抱える
事情について定期的に情報共有を行う
地域ボランティアとの
関係
•
•
•
•
•
•
ボランティアの特性について知る
連携する団体についてよく知る
ボランティアの良さを活かす
弱みや親切心につけ込まない
ボランティアが苦手な部分などは大学がサポートする
大学の下部組織とするか、別組織とするか、などについ
ては、ボランティア団体の意向を聞きながら組織化を進め
る
6.地域ボランティア経験者として大学との連携を考える
両方の立場を経験した大学スタッフとして
国際交流関係の大学スタッフは、両者の視点に立つことが可能
なのでは。大学組織とボランティア組織の間をとりもつアドボ
ケート(仲介者)、橋渡しの役割。
仮に、国際教育交流担当者が地域ボランティアとして活動す
るなら・・
利点と弊害を考えておく。あくまでボランティアとしてのスタンス
を保つ。大学スタッフ色を出さない。
82
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
参考文献/関連サイト
• 足立清史(1996)『高齢化とボランティア社会』弘文堂
• 田尾雅夫(1999)『ボランタリー組織の経営管理』有斐閣
• 立木茂雄編(1997)『ボランティアと市民社会ー公共性は市民が紡
ぎ出すー』晃洋書房
• 寺島宏子・渡部留美(2015)「KOKORO-NET in 神戸:活動を始め
て18年 現在の活動と課題」名古屋大学ボランティア研修会(2015
年2月10日)配付資料
• 横田雅弘・白土悟(2004)『留学生アドバイジング』ナカニシヤ出版
• 渡部留美(2009)「滞日外国人留学生の家族の支援―ボランティア
団体「KOKORO-NET in 神戸」の活動事例― 」『研究論叢』第16号、
pp.35-43、神戸大学教育学会
• 渡部留美(2011)「地域ボランティアによる外国人留学生家族への
支援-PAC分析を通してみえるもの-」『留学生交流・指導研究』第13
号、pp.73-84、国立大学留学生指導研究協議会
• KOKORO-NET in 神戸
URL: http://www.geocities.jp/kokoronetinkoube/
83
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
⑤「日本とマレーシアの高等教育連携」
仙石
祐(クアラルンプール大学)
クアラルンプール大学 マレーシア・日本高等教育課程
京都大学大学院人間・環境学研究科
仙石 祐
日本とマレーシアの高等教育連携
84
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
自己紹介
仙石 祐(せんごく ゆう)
 クアラルンプール大学 マレーシア・日本
高等教育課程 専任講師
 3月まで京都大学大学院人間・環境学研究科
にも在籍
 専門:情報科学
 特に画像処理・Data Hidingなど
 担当授業:微分積分学・情報通信基礎
政策の歴史的背景(1/2)
東方政策(Look East Policy)
 1982年Mahathir首相が提唱
 日本の高度な知識・技術だけでなく、労働倫
理・勤労意欲を日本への留学・研修を通じて
学ぶ [1]
2009年までに
学部3068名・高専1523
名・大学院170名の
Look East留学生が来日
[2]
85
2009年以降マレー人留
学生の人数は2300人か
ら2400人程度・全留学
生に占める割合も約
1.7%で変わらないが、
順位は5位から8位に落
ちている [3]
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
政策の歴史的背景(2/2)
ブミプトラ政策
 Bumiputera = マレー語で「土地の子」
 華人・インド人と比較して経済的に劣る
マレー人を優遇し、貧富の差解消により社会
の安定図る [1]
 このようなaffirmative actionに対する華人・
インド人からの批判
→2008年下院総選挙で野党躍進・Najib首相改革
[4]
日本と連携する高等教育機関
(1/2)
AAJ
KTJ
MJIIT JAD
Ambang
Asuhan
Jepun,
マラヤ大
学予備教
育部日本
留学特別
コース
Kumpulan
Teknikal
Jepun,
マレーシ
ア高専予
備教育
コース
Malaysia後述
Japan
Internation
al Institute
of
Technology
, マレーシ
ア日本国
際工学院
86
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
日本と連携する高等教育機関
(2/2)
AAJ
KTJ
Bumiputeraの
180名が2学年
Bumiputeraの 学部と大学院 後述
60名+非
Bumiputeraの 今後1学年の
20名が2学年 定員は500名
から600名以
理工系科目と 上に
日本語教育
理工系科目と
日本の高専
英語教育
3年生編入
理工系科目と
日本語教育
日本の国立大
1回生入学
MJIIT JAD
MJHEPの仕組み(1/2)
JAD(Japan Associate Degree, 日本・マレーシ
ア高等教育連合大学プログラム)
 マレーシアで予備教育学年と大学1, 2回生の
専門基礎教育及び日本語教育
→提携を結ぶ日本の大学の3回生に編入
→日本の各大学の学位を取得(ツイニング)
87
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
MJHEPの仕組み(2/2)
 今はプログラム4期目(Malaysia Japan Higher
Education Program = MJHEP)
 Bumiputeraの約100名が3学年
 MJHEPより日本の円借款を卒業、100%マレー
シア政府財源(企業家開発省傘下・マラ教育
財団(Yayasan Pelajaran MARA)が主管)
MJHEPの教育(1/3)
MechatronicsとElectrical and Electronicコース

全科目必修・下記科目の他に集中講義あり
予備教育学年
基礎日本語
工学入門(表現)
工学日本語
英語1, 2
基礎数学
体育
基礎物理学
イスラム学
基礎化学
道徳
工学入門(図学)
88
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
MJHEPの教育(2/3)
大学1回生
科学技術日本語
物理学1, 2(講義・演習)
文章表現法
化学1, 2(講義・演習)
数学1, 2(微分積分学・線形代数学)
材料力学1(M)
情報処理1, 2
電気回路理論1(EE)
インターネット基礎
英語3
情報通信基礎
体育
MJHEPの教育(3/3)
大学2回生
総合日本語
機械設計1, 2(M)
電磁気学1, 2(EE)
日本研究
機械工学実習1, 2(M)
高度情報処理1, 2(EE)
数学3, 4(統計学・複素解析)
機械加工(M)
電気回路理論2(EE)
制御工学
機構学・機械要素
(M)
電気電子計測(EE)
制御理論
機械計測(M)
TOEIC英語
材料力学2(M)
電気工学実験1, 2(EE)
最終学年課題
熱力学1, 2(M)
電子工学実験1, 2(EE)
機械工学実験1, 2(M)
電子回路1, 2, 3(EE)
AAJ, KTJはより中等教育に比重・MJIITは完全に高等教育
89
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
ギャラリー(1/2)
ギャラリー(2/2)
http://karidzspace.blogspot.com/2014/03/jad-mjhep-cabaran-hidup.html
90
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
現地の大学との連携(1/2)
 AAJ – マラヤ大学・KTJ – マラ工科大学と
連携
 MJHEPとクアラルンプール大学の連携
 Institute of Product Design and Manufacturing
(IPROM), Universiti Kuala Lumpur (UniKL)
 2回生修了時にDiploma授与
 日本の大学を落第したときの「保険」
 連携はマレーシア産業界からの要請?
 年4週間の”Intra” = インターンシップ
現地の大学との連携(2/2)
 MQA(Malaysia Qualifications Agency, マレーシア
資格機構)による審査
 クアラルンプール大学を通じて
 MJHEPのモニタリングと高等教育の資格認定
 MQAと独立行政法人大学評価・学位授与機構と
の連携 [5]
91
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
日本の大学との連携(1/2)
MJHEPと日本国際教育大学連合(JUCTe)の
連携
 進学先となる提携先の日本の大学
岡山理科大学 東海大学
近畿大学
明治大学
東京工科大学 立命館大学
芝浦工業大学 東京電機大学 愛媛大学
拓殖大学
熊本大学
兵庫県立大学
上智大学
埼玉大学
福井大学
…
豊橋技術
科学大学
室蘭工業大学
東京理科大学 九州工業大学 名古屋
工業大学
山口大学
 MJIITコンソーシアムに加盟の大学もほぼ同じ
日本の大学との連携(2/2)
 ツイニングは日本の大学史上初の試み
 共通シラバスの作成
 シラバス委員会による検討・更新
 単位認定
 幹事大学による試験問題のチェック
 日本の大学とMQAの要請の総和(最大公約数
的?)である教育が行われている
92
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
理工系科と日本語科の連携
(1/2)
 MJHEPにおける教授内容の重なり合い
 マレー人学生に日本語で理工系科目を教える
→専門語彙の解説・補完の必要性 [6]
→日本語科教員による「科学技術日本語」
 AAJ, KTJでも同じような試みがなされていると
推測 [6] [7]
理工系科と日本語科の連携
(2/2)
 MJHEPの理工系科と日本語科の協働例
 日本の各大学に送る学生の願書指導
 理工系科教員が、進学を希望する大学のことや
研究したい内容を中心にチェック
 日本語科教員が、自然な日本語の言い回しや
論理展開を中心にチェック
93
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
日本人とマレー人の連携(1/2)
MJHEPの国別及び科目別による教員の構成
日本人
マレー人
合計
理工系科
13人
15人
28人
日本語科
19人
6人
その他
0人
3人
合計
32人
24人
25人
3人
56人
2014年10月1日現在
日本人とマレー人の連携(2/2)
日本人もマレー人も協力して授業を担当
 マレー人教員はほぼ全員日本留学経験を持つ
→授業及び教員どうし日本語でコミュニケー
ション
 大学教育経験の長い日本人教員が若いマレー
人教員に教授法の指導を行うことも
 教員のローカル化が進められている [1]
94
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
連携上抱える問題(1/2)
 AAJ, KTJ, MJIIT, JAD間の連携はほぼない
 主管の違いが原因
 華人が学ぶ大学との連携もない
 JADでは日本の大学とMQAの要求を同時
に満たすために、学生に負担がかかる
連携上抱える問題(2/2)
 学生は留学後概して日本文化に馴染んで
いくが、暗記のみに頼りがちなマレー人
学生には落第するものもいる [8]
 日本とマレーシアの中等教育までと高等教育
における理系科目の教授法に差異があること
を認識
 暗記偏重・選択式試験・教員の質・学校の予備
校化…
95
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
今後の研究の展望
 日本語科教員とのさらなる連携
 共通教材・共同授業の可能性模索
 Faculty Development
 マレー人学生の(理系科目における)論
理的思考能力の確認及びその向上を企図
 数学及び情報科学における教育学及び教
育工学の手法を用いた授業の改善方法
参考文献
[1]岡本義輝:ルックイースト政策30年の功罪と今後の展望・南山大学アジ
ア・太平洋研究センター報第9号・pp. 26, 27, 37 (2013).
[2] マレーシア日本人商工会議所調査部:マレーシアハンドブック(2009).
[3] 独立行政法人 日本学生支援機構外国人留学生在籍状況調査・
http://www.jasso.go.jp/statistics/intl_student/ichiran.html, 2015年2月10日最終アク
セス
[4] 葉一洋:マレーシア魔訶不思議ブミプトラ優遇政策史・Senyum No. 64
(2014).
[5] 独立行政法人 大学評価・学位授与機構 「当機構とMQAとの間における覚
書」・http://www.niad.ac.jp/n_kokusai/malaysia/no17_mou_niad_mqa_ns.pdf,
2015年2月16日最終アクセス
[6] 伊藤光雅:マレーシア政府、高専留学プログラムでの物理教育 –専門科目
教育を補完するための授業取り組み –・日本物理教育学会・pp. 51, 52(2008).
[7] 永川元ら:日本語教師と化学教師によるチームティーチングの実践的研
究・日本語教育学会・pp. 85 - 91(1998).
[8] 岡本義輝:マレーシアのAV企業・設計開発(R&D)部門の拡大発展に向け
て –理数教育の課題について、国際学力比較(PASAとTIMSS)を中心に- 電気
学会研究会資料・pp. 4/ 9(2007).
96
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
⑥「留学生のキャリア支援に関する新たな試み:
留学生と地域企業の交流推進事業の実践報告」
伊東
章子(名古屋大学)
留学生と地域企業の交流推進事業
名古屋大学「日本のものづくり愛知
のものづくりプロジェクト」
名古屋大学国際教育交流センター
国際言語文化研究科
伊東章子
97
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
JAISE留学生担当教職員分科会「留学生と地域企業の交流推進事業」
「ものづくり」プロジェクトの概要
愛知県にあるものづくり企業と、留学生の交流推進
を目的に、平成25年度より実施
留学生がものづくりの現場を訪れ、企業の開発部門
や人事担当者らとの交流を通じて、キャリアについ
て考える機会を提供する
留学生を採用する意欲のある協力企業に、これか
ら労働市場に出る留学生の姿を知ってもらう
1
JAISE留学生担当教職員分科会「留学生と地域企業の交流推進事業」
なぜ「ものづくり」か
愛知県の「地の利」ー日本の産業集積地
名古屋大学に寄せられる期待
製造業を中核にした中部産業界に資するグ
ローバル人材の育成・輩出
2
98
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
JAISE留学生担当教職員分科会「留学生と地域企業の交流推進事業」
 年間の活動内容
 導入セミナー:ものづくりについて知識を深める
 協力企業2社とのワークショップとサイトスタディの開催
導入セミナー
「ものづくりとは何
か?」
協力企業1:
協力企業1:
学内ワークショップ
サイトスタディ
協力企業2:
協力企業2:
学内ワークショップ
サイトスタディ
3
JAISE留学生担当教職員分科会「留学生と地域企業の交流推進事業」
 学内ワークショップ
協力企業の概略や商品などについて学ぶとともに、
企業から与えられた課題について、参加留学生がグ
ループディスカッションを行う。
導入セミナー
「ものづくりとは何
か?」
協力企業1:
協力企業1:
学内ワークショップ
サイトスタディ
協力企業2:
協力企業2:
学内ワークショップ
サイトスタディ
4
99
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
JAISE留学生担当教職員分科会「留学生と地域企業の交流推進事業」
 サイトスタディ
協力企業の生産現場を訪れ、実際のものづくりを体
感する。さらに人事や開発部門の社員の前で課題の
プレゼンテーションを行い、意見交換を行う。
導入セミナー
「ものづくりとは何
か?」
協力企業1:
協力企業1:
学内ワークショップ
サイトスタディ
協力企業2:
協力企業2:
学内ワークショップ
サイトスタディ
5
JAISE留学生担当教職員分科会「留学生と地域企業の交流推進事業」
プロジェクトの企画と運営
 報告者をリーダーとして、工学研究科レレイト・エマ
ニュエル、西山聖久、国際教育交流センターキャリ
ア支援部門今井千晴が企画・運営
 名古屋大学留学生支援事業から予算を受ける
 参加留学生は学内全体から募り、所属、学年、国籍
は問わない
6
100
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
導入セミナーの例
「からくり人形に学ぶ日
本のものづくり」
講師:末松良一名古屋
大学名誉教授
2014年7月17日実施
7
JAISE留学生担当教職員分科会「留学生と地域企業の交流推進事業」
学内ワークショップの構成
導入レクチャー(20分)
企業や商品に関する説明
ディスカッション課題の提示
グループディスカッション(45分)
それぞれの意見の出し合い
グループの意見としてのまとめ
グループ毎のプレゼンテーション(25分)
質疑応答
5分間のプレゼンテーション
8
101
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
JAISE留学生担当教職員分科会「留学生と地域企業の交流推進事業」
学内ワークショップの概要
 M社から納豆、めんつゆ、おにぎり用ふりかけ、ちら
し寿司の素の製品提供を受ける
 事前のオリエンテーションで、参加留学生を納豆以
外の3製品ごとに班分けし、それぞれの製品と納豆
を持ち帰らせ、実際に自宅で調理して食べることを
課題として与える
 「ディスカッションシート」を配布し、ワークショップま
でに完成させるように指示
9
JAISE留学生担当教職員分科会「留学生と地域企業の交流推進事業」
 ディスカッションシートの内容(例:ちらし寿司の素)
問1:ちらし寿司を食べたことがありましたか?
問2:M社のちらし寿司の素を食べた感想は?
問3:あなたの国にちらし寿司に似た食べ物はありますか?
問4:あなたの国にM社ちらし寿司の素に似た製品はありますか?
それは日本の消費者にも好まれると思いますか?
問5:あなたの国の料理とM社のちらし寿司の素を組み合わせて、
日本の消費者に新しい料理を提案してください。
問6:あなたの国でM社ちらし寿司の素を売り出すとすれば、どん
なメニューで売り出しますか?
102
10
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
サイトスタディの構成
工場などの生産現場の見学(60分)
製品の製造過程に関する説明・見学
質疑応答
企業に関する説明(20分)
企業のグローバル化戦略
留学生の採用状況
JAISE留学生担当教職員分科会「留学生と地域
企業の交流推進事業」
グループ毎のプレゼンテーション(60)
開発、生産担当者からのフィードバック
5分間のプレゼンテーション
11
JAISE留学生担当教職員分科会「留学生と地域企業の交流推進事業」
サイトスタディの概要
 愛知県内にある納豆製造ラインの見学
工場長より生産工程、原材料、衛生管理などを学ぶ
 本社社員との企業説明会
人事担当者から留学生の採用実績と今後の作用計
画の説明や、実際に採用された元留学生社員の紹介
 参加留学生によるグループ・プレゼンテーション
各製品の開発部門担当者が参加
12
103
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
JAISE留学生担当教職員分科会「留学生と地域企業の交流推進事業」
参加学生の感想
 食品工場の衛生管理と品質管理に関心をもった。
自分の現在の研究が活かせる職場だと思った。
 改めて日本と自分の国の市場のおける消費者の志
向や選択の違いに関心を持つようになった。マーケ
ティングの職に就きたいと思うようになった。
 実際に元留学生で日本企業に就職した先輩の話が
聞けて、自分の就活に実感が持てるようになった。
13
JAISE留学生担当教職員分科会「留学生と地域企業の交流推進事業」
協力企業の感想
 前年度から留学生の採用を始めたが、まだ実際に
今後どのように採用を続けていくのか明確ではない。
今回のプロジェクトへの参加を通じて、改めて社内
で人材の配置・活用を議論するきっかけになった。
 留学生から自社製品ついて鋭い感想が聞けて、海
外マーケットを探るうえでの手がかりになった。
 自分が長らく手掛けている製品を全く違う視点でみ
ることができた。
14
104
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
JAISE留学生担当教職員分科会「留学生と地域の交流推進事業」
 プロジェクトの目標
参加留学生
協力企業
大学
 日本のものづくり文化や歴史、ものづくり企
業のグローバル戦略などを実践的に学ぶ
 企業の留学生採用の実態を把握し、キャリ
ア計画に役立てる
 製造業のグローバル化について、世界各
国から集まる留学生と直接意見を交換する
 留学生採用を含めた人材活用の検討
 地域企業が求める留学生人材像を明らか
にする
 グローバル人材育成について地域企業と
連携を深める
15
JAISE留学生担当教職員分科会「留学生と地域企業の交流推進事業」
今後の課題
 協力企業の獲得
 予算の獲得
 使用言語
 学内の他のキャリア支援との連携
16
105
JAISE-2014 留学生担当教職員研究分科会(東京)「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
<初日の一般報告>
<楽しく美味しい懇親会>
留学生教育学会(JAISE)2014 年度留学生専門教育教員研究分科会
「留学生教育における学内外連携の現状と課題」
報告書
発行
2015 年 12 月
発行者 金沢大学経済学経営学系
宮崎悦子(責任編集者)
東北大学高度教養教育・学生支援機構
グローバルラーニングセンター 末松和子
一橋大学商学研究科
秋庭裕子
〒920-1192 金沢市角間町 [email protected]
TEL:076-264-5442 FAX:076-264-5444
106
Fly UP