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最終報告[PDF:17946KB]
「道路啓開時における路上車両移動技術研究会」
最終報告
平成28年6月
道路啓開時における路上車両移動技術研究会
目
次
1.はじめに
・・・2
2.災害対策基本法の一部を改正する法律について(施行通知)・・・3
3.既存の車両移動機材
・・・5
4.機材の保有状況、市場性
・・・11
5.既存の車両移動機材による車両移動手順及び所用時間
・・・25
6.被害想定に基づいた車両移動機材の適応性と課題
・・・35
7.既存の車両移動機材による車両移動方法
・・・48
8.既存の車両移動機材の改良や新たな車両移動機材・技術の構想・・56
9.機材・技術の改良・開発手法
・・・65
10.試作機の検証と検討成果
・・・66
11.今後の課題
・・・84
12.おわりに
・・・85
資料編
・・・86
1
1.はじめに
首都地域は、政治中枢や行政中枢、あるいは経済中枢といった首都中枢機
能が極めて高度に集積し、かつ人口や建築物が密集している。
現在、首都直下地震の切迫性が指摘される中、人的・物的被害や経済被害
は甚大なものになると予想される。
また、東日本大震災の際に都心部で大渋滞が発生したことを踏まえると、
人命救助や支援物資の輸送のための緊急通行車両をいち早く通行させるため
の道路啓開を如何に効率的かつ迅速に行うかが課題となっている。
また、平成26年2月の大雪では、立ち往生した車両により除雪に支障を
きたし、多くの孤立集落が発生した。
このような背景から道路管理者が自ら車両を移動することが出来るよう、
災害対策基本法が改正(平成26年11月14、同月21日施行)された。
国土交通省関東地方整備局では、平成26年6月4日に「道路啓開時にお
ける車両移動技術研究会」(以下、本研究会という)を立ち上げ、放置車両
の移動に関して機材・技術の面から検討を開始した。
改正災害対策基本法では、道路管理者が放置車両を移動する際、やむを得
ない限度の破損が認められたが、本研究会では、最低限の破損での放置車両
の移動を行うための機材・技術について検討するものとし、現状の車両移動
機材・技術の適応性や車両の破損等の課題を抽出し、現状の車両移動機材・
技術の改良や、新たな車両移動機材の開発を行うことを目的として、平成
26年度に4回、平成27年度に2回開催した。
本最終報告は、その2年間の研究会の内容を取りまとめたものである。
2
2.災害対策基本法の一部を改正する法律について(施行通知)
災害対策基本法が改正(平成26年11月14、同月21日施行)により、
道路管理者が自ら、災害時に車両の移動等を行うことが可能となった。
第二 改正法の趣旨及び主な内容
1.災害時における車両の移動等について(法第76条の6関係)
(2)内容
③ 道路管理者自らが行う車両の移動等について(第3項)
(略)
また、道路管理者は、当該措置をとるためやむを得ない限度において、
当該措置に係る車両その他の物件を破損することができるものとした。
この「やむを得ない限度の破損」とは、災害時の状況に応じて判断され
るべきものであるが、車両の移動等に複数の方法がある場合に、緊急通
行車両の通行確保する緊急性を考慮しつつ最も破損の度合いが低いもの
を選択した結果、生じる破損のことである。例えば、ロックやサイドブ
レーキを外すために窓ガラスの一部割ることや、車両を重機で持ち上げ
る際にすり傷やバンパーのへこみを生じさせる場合などを想定している
が、移動スペースが全く無くやむを得ない場合には車両を段積みするこ
とで車両を変形させることも許容されるものである。
(略)
なお、上記措置の実施に当たっては、道路管理者は、災害応急対策に
重要な役割を果たすライフライン施設や電気通信設備等の重要な施設、
設備工作物等は、その機能を失わせないため、極力損傷しないよう十分
に配慮するものとする。
3
「災害対策基本法に基づく車両移動に関する運用の手引き」
平成26年11月
国土交通省道路局
〈やむを得ない限度の破損〉
・車両等の移動の際には、現場の判断でやむを得ない限度で車両等を破損させ
ることができることとなっており、破損の形態としては、ロックやサイドブ
レーキを外すために窓ガラスを破壊、重機で車両等を持ち上げる際の擦り傷
や凹み、駆動系や制御系の損傷、段積みによる破損等が想定される。
・「やむを得ない限度での損傷」とは、これらの様々な破損がある中で、災害
時の状況に応じて判断されるべきものであり、車両等の移動に複数の方法が
とり得る場合に、緊急通行車両の通行を確保する緊急性を考慮しつつ、最も
破損の度合いが低い方法を選択した結果生ずる破損である。
・なお、窓ガラスを破損した場合等、降雨により車内設備が劣化することも想
定されるが、道路啓開作業後に、破損箇所をシート等の簡便な方法でふさぐ
等、可能な範囲で損傷が拡大しないような措置も必要である。
(略)
〈その他留意事項〉
・レッカー車やホイールローダーによる移動の際には、ガソリン漏れ等に十分
留意し、危険のないように行う必要がある。
・トラック等を移動する際には、積み荷の種類を可能な限り確認し、危険物等
が積載されている場合等、積み荷の種類及び状況に応じて、注意して移動を
行うものとする。
・ハイブリッド車、電気自動車等を移動する際には、感電等に注意して移動を
行うものとする。
4
3.既存の車両移動機材
現在、道路上の故障車両を可能な限り損傷を与えず移動・撤去するにはレッ
カー車を用いるのが一般的である。また、人力で車両を移動させる車両移動用
ジャッキがあり、レッカー車の補助機材として搭載されている。
その他、災害時等、多少車両に傷を付けても速やかに車両を移動させるため、
ホイールローダーにフォークアタッチメントを取り付けた機材や、フォークリ
フトでも車両の移動は可能である。
写真 3-1 一般的な各種移動機材と移動可能な車両の種類
このほかに、事故車や故障車をクレーンで吊ったり、重機で強引に脇に移動
させる方法もある。
5
図 3-1 既存の車両移動機材の適応性
表 3-1 車種毎の移動可能機材と本検討での車両の分類
車
種
移動可能機材
本検討での車両の分類
トレーラー
大型レッカー車
大型貨物車
大型レッカー車
中型貨物車
大型レッカー車、中型レッカー車
小型貨物車
小型レッカー車、中型レッカー車
小型貨物車
バス
大型レッカー車、中型レッカー車
バス
乗用車
小型レッカー車、中型レッカー車
フォークリフト、ホイールローダー、
車両移動用ジャッキ
乗用車
大型貨物車
6
1)レッカー車
写真 3-2 レッカー車各種
写真提供:全日本高速道路レッカー協同組合
特徴
・故障車両や事故車両、駐車違反車両など、道路交通の妨げになる自動車
を移動させる装置を持つ特殊用途自動車。
・被牽引車の規格に合わせて大型・中型・小型のレッカー車を選定し、前
輪あるいは後輪を吊り上げて牽引する。
・ただし、大型トラックの後輪を吊り上げる場合、積み荷の状況により前
輪に負担がかかることがあるため注意が必要である。
・日本ではレッカー車で自動車を牽引する場合、牽引免許は不要である。
・主に(一)日本自動車連盟(JAF)のロードサービス隊、レッカー組合・
協会、自動車修理業者が保有している。
・大型車両(トレーラ、トラック、ダンプ、バス)に損傷を与えず移動す
る方法はレッカー車のみで、牽引作業の他、搭載されているクレーンに
より横転車両の吊り上げも行われている。
・車両移動は通常1名~2名の少人数で作業が可能である。
7
2)フォークリフト(直接リフトアップする場合)
写真 3-3 フォークリフトによる車両の移動
特徴
・前方にある2本の爪で荷物の積み下ろし作業を行う荷役機械。
・ホイールベースが短く、小径後輪のハンドル操作により小回りが可能で
あり、小型なことから、狭い場所でも入っていくことが可能。
・車両の底部にフォークを挿入し、リフトアップするだけの作業のため移
動に要する時間が短い。
・数百 kg 積の電動型から、10t以上のエンジン型まで多くの機種があり、
主に企業の工場や倉庫にて稼働することが多い汎用機材である。
・走行速度は能力的には 20km/h 程度まで、傾斜角は 20%~30%程度まで
登坂可能。
・操作には運転技能講習の修了が必要。
・乗用車の移動に使用する場合、2.5~3.0t積以上のフォークリフトに長
さ 1.8~2.0m の爪を利用して、横から積み上げる作業となる。
8
3)ホイールローダー
図 3-2 ホイールローダーによる車両の移動
特徴
・前方に大型バケットを装備するタイヤ式の掘削・積込み用機械。
・土木建設業以外に、林業、畜産業、農業、除雪等に使用されている。
・本体中央部に方向転換用リンクがあるアーティキュレート構造で、タイ
ヤではなく機体を屈折させて左右に曲がる。
・用途に応じてアタッチメントを交換し、掘削以外の作業も可能。
・フォークアタッチメントを装着し、乗用車を横から積み上げて移動する
ことも可能。この場合、1.3~1.5m3 級(7.0~8.0t級)が必要。
・フォークアタッチメントを取り付けた場合、車両の底部にフォークを挿
入し、リフトアップするだけの作業のため移動に要する時間が短い。
・ナンバー付の登録車両もあることから、直接公道を移動できる。
・倒れた電柱の撤去、アタッチメントを変えてガレキの撤去、除雪作業な
ど、多用途に使用可能。
・段差など悪路でも走行可能。
9
4)車両移動用ジャッキ
図 3-3 車両移動用ジャッキ
特徴
・タイヤを下から機械式のジャッキで持ち上げて地面から浮かせることで、
人力で車両を移動するもの。
・自由に前後左右(直進・真横)へ移動可能なキャスタータイプと前後方
向のみのタイプがある。
・小型軽量、レバー操作のみでタイヤを地面から浮かせることができるた
め、簡単かつ効率的。
・人力で移動させるため、特殊な技術を必要としない。
・平坦な路面で乗用車が、1台当り3~4人で所要時間も数分で移動可能。
10
4.機材の保有状況、市場性
1)レッカー車
多くのレッカー事業所は、組合や協会に所属しているが、損保会社等
にも所属していることや、自動車整備事業など他の事業と兼ねていること
もあることから正確な事業所数は把握できていないが、関東地方に事業所
のある主な組合・協会等の事業者のうちヒアリングにより所有台数が把握
できた①~③の事業者の関東地域の保有台数は、以下の通りである。
表 4-1 関東地方に事業所のある主なレッカー事業の組合、協会等
①
一般社団法人
日本自動車連盟
②
全日本高速道路レッカー事業協同組合
③
一般社団法人
④
⑤
NPO 法人全日本レッカー協会
⑥
埼玉県レッカー事業協同組合
⑦
千葉県レッカー事業協同組合
⑧
西東京レッカー事業協同組合
全国ロードサービス協会
全国車載車・レッカー事業協同組合
表 4-2 ①~③のレッカー事業者が関東地域に保有するレッカー車
大型レッカー車
中型レッカー車
小型レッカー車
約140台
約130台
約430台
※関東地域とは、茨城県、埼玉県、栃木県、群馬県、東京都、千葉県、神
奈川県、山梨県、新潟県、静岡県。
※台数は①~③の組合、協会等へのヒアリングにより把握。
なお、レッカー車は高速道路や主要幹線道路の近隣に保管されているこ
とが多く、作業は緊急性を要するため、24 時間対応の事業者が多い。
11
2)フォークリフト
フォークリフトは動力形式により、ディーゼル式、ガソリン式、バッテ
リー式に大きく分類される。
このうち、バッテリー式は家庭用の電源では充電できないこと、充電に
1日を要することから、道路上での車両移動には適さない。
平成24年度の国内での3~10t級のフォークリフトの保有台数は
バッテリー式を除くと約6万5千台である。
関東地方での保有台数は相当数見込まれるが、工場や倉庫での使用割合
が多く、建設業やレンタル・リース業の保有台数(特に乗用車の移動が可
能な 2.5~3.0t級)は少ない。
また、公道での使用割合が少ないことからナンバー登録していない車両
が多く、その保有状況は明確ではない。
図 4-1 全国のフォークリフト(3~10t)の保有台数
70,000
60,000
50,000
40,000
30,000
20,000
10,000
64,701
57,343
50,780
44,968
42,788
38,601
34,577
30,747
ディーゼル式
27,332
24,368
22,058
ガソリン式
19,998
17,861
累計(D+G)
0
出典:平成 24 年度
届出外排出量の推計方法等に係わる資料(経済産業省)
これまで、把握できた車両の台数は以下の通りである。
①大型特殊自動車に分類されるフォークリフト(概ね 10t 級以上)
関東運輸局管内登録数(長野県除く) 13,810 台
②小型特殊自動車に分類されるフォークリフト(乗用車の移動に必要な
2.5t~3t 級)
(一)日本建設機械レンタル協会に加盟しているリース会社 1 社の保
有台数 約 1,000 台(神奈川県、埼玉県)
③全日本高速道路レッカー事業協同組合所有 16台
12
【参考】乗用車の移動に必要なフォークリフトのクラスと回転半径
乗用車の移動に必要なフォークリフトは、2.5tクラスであれば荷を満載した
大型ワゴン車やSUV以外の乗用車に対応可能。
また、2車線道路であれば乗用車の真横からフォークを差し込むことは可能。
ただし、放置車両の密集している場合に車両を移動させるためには、1m程
度の路肩が必要な場合もある。
図 4-2 フォークリフトの移動必要幅
2車線(3.5m×3.5m)=7.0m
第1車線
第2車線
⑥リフトダウン時の走行を含む必要幅:約6.6m
⑤直角での進入最小必要車幅:約4.1m
乗用車の
車幅1.8m
乗用車両側の
隙間0.8m
乗用車までの
作業距離
1.3m
(0.8m+0.5m)
後端の旋回半径
2.8m
(2.3m+0.5m)
乗用車のはみ出しを考慮
0.7m
乗用車両側の
隙間0.8m
軸距
2車線道路をは
み出す延長
0.5m
乗用車の
全長の半分
2.2m
前輪の内輪半径は
0.5mと仮定する
※フォークリフトの外形寸法は、2.5tクラスの仕様値
から設定したもの。
※乗用車の外形寸法は、全長4.4m×全幅1.8m。
※乗用車は3.5mの車線中央に配置している。
13
表 4-3 クラス別移動必要幅
規格
2.0t
2.0t
2.5t
2.5t
2.75t
3.0t
3.5t
3.5t
3.5t
4.0t
4.0t
4.5t
4.5t
本体重量
3.3
3.3
3.6
3.6
4.0
4.2
4.8
5.7
5.8
6.2
6.3
6.8
6.9
t
t
t
t
t
t
t
t
t
t
t
t
t
※1
全幅
m
m
m
m
m
m
m
m
m
m
m
m
m
1.2
1.2
1.2
1.2
1.2
1.2
1.3
1.4
1.4
1.5
1.5
1.5
1.5
全長
3.5
3.5
3.7
3.7
3.8
3.8
3.9
4.2
4.2
4.2
4.2
4.3
4.3
m
m
m
m
m
m
m
m
m
m
m
m
m
最小旋回半径
2.2
2.2
2.3
2.3
2.4
2.4
2.5
2.7
2.7
2.8
2.8
2.8
2.8
※2
m
m
m
m
m
m
m
m
m
m
m
m
m
軸距
1.7
1.7
1.7
1.7
1.7
1.7
1.7
2.0
2.0
2.0
2.0
2.0
2.0
14
m
m
m
m
m
m
m
m
m
m
m
m
m
リフトダウ
直角での
ン時の走
進入最小
行を含む
必要幅
必要幅
4.1m
4.1m
4.1m
4.1m
4.2m
4.2m
4.3m
4.5m
4.5m
4.6m
4.6m
4.6m
4.6m
6.6m
6.6m
6.6m
6.6m
6.7m
6.7m
6.8m
7.0m
7.0m
7.1m
7.1m
7.1m
7.1m
仕様
トヨタ・ガソリン
トヨタ・ディーゼル
トヨタ・ガソリン
トヨタ・ディーゼル
トヨタ・ガソリン
トヨタ・ガソリン
トヨタ・ガソリン
コマツ・ガソリン
コマツ・ディーゼル
コマツ・ガソリン
コマツ・ディーゼル
コマツガソリン
コマツ・ディーゼル
表 4-4 作業を行うために必要な資格
定格荷重が1t未満の
フォークリフト
対象
定格荷重が1t以上の
フォークリフト
フォークリフト運転技能講習を修
事業者が行うフォークリフトの運
了した者
転業務に関する安全または衛
(都道府県労働局長登録教習
生のための特別な教育を受け
機関で実施)
た者
資格内容
表 4-5 特殊自動車の種類等
新小型特殊自動車
区 分
小型特殊自動車
大型特殊自動車
農耕車以外
農耕作業用
全長
4.7m以下
4.7m以下
制限無し
12m以下
全幅
1.7m以下
1.7m以下
制限無し
2.5m以下
全高
2.0m以下
2.8m以下
制限無し
3.8m以下
15km/h以下
15km/h以下
35km/h未満
60km/h以下
最高速度
原付免許以外の全ての
免許
公道走行時の免許
公道走行時の条件
大型特殊免許
自賠責保険(農耕作業用は不要)
自賠責保険、車検
市区町村
運輸局運輸支局
車両の登録先
(ナンバー)
表 4-6 フォークリフトのクラス別移動可能車両
取り付け
移動可能 対応可能な乗
定格荷重
可能
本体重量
乗用車
用車
フォーク長
1.0t
0.6t未満
×
軽自動車~
1.3t未満
の小型車
軽自動車~
1.6t未満
の小型車
軽自動車~
小型SUV
軽自動車~
大型セダン
軽自動車~
大型SUVを除く
全ての乗用車
全長※1
全幅
全高
最小旋回半径※2
軸距
進入車幅 移動車幅 対応の可否
備考
1.8m~2.0m
2.1t
3.0m
1.1m
2.0m以下
1.9m
1.5m
5.5m
7.7m
×
小型特殊自動車
1.8m~2.0m
3.3 t
3.5 m
1.2 m
2.0m以下
2.2 m
1.7 m
5.8 m
7.7 m
△
小型特殊自動車
1.8m~2.0m
3.6 t
3.7 m
1.2 m
2.0m以下
2.3 m
1.7 m
5.9 m
7.7 m
○
小型特殊自動車
1.8m~2.0m
4.0 t
3.8 m
1.2 m
2.0m以上
2.4 m
1.7 m
6.0 m
7.7 m
○
新小型特殊自動車
1.8m~2.0m
4.2 t
3.8 m
1.2 m
2.0m以上
2.4 m
1.7 m
6.0 m
7.7 m
○
新小型特殊自動車
1.8m~2.0m
4.8 t
3.9 m
1.3 m
2.0m以上
2.5 m
1.7 m
6.1 m
7.7 m
○
新小型特殊自動車
2.0t
1.3t
2.5t
1.6t
2.75t
1.8t
3.0t
2.0t
3.5t
2.3t
3.5t
2.6t
全ての乗用車 1.8m~2.0m
5.8 t
4.2 m
1.4 m
2.0m以上
2.7 m
2.0 m
6.3 m
7.8 m
○
新小型特殊自動車
4.0t
3.0t
全ての乗用車
(満積載の大 1.8m~2.0m
型車を含む)
6.2 t
4.2 m
1.5 m
2.0m以上
2.8 m
2.0 m
6.4 m
7.8 m
○
新小型特殊自動車
4.5t
3.4t
1.8m~2.0m
6.9 t
4.3 m
1.5 m
2.0m以上
2.8 m
2.0 m
6.4 m
7.8 m
○
新小型特殊自動車
15
表 4-7 乗用車のクラス別重量等
乗用車のクラス
運転質量
全長
全幅
ホイールベース
例
軽自動車
0.7t~1.1t
3.4m未満
1.48m未満
2.4m~2.5m
アルト、ワゴンR、ムーブ、NBOX、アトレー
小型車(1,300cc~1,500cc)
0.9t~1.3t
3.8m~4.1m
1.7m未満
2.4m~2.6m
アクア、FIT、マーチ、スイフ
ト、デミオ
小型セダン(1,500cc~2,000cc)
1.1t~1.6t
4.4m~4.9m
1.7m~1.9m
2.6m~2.8m
カローラ、プリウス、アコード
小型SUV(1,500cc~2,500cc)
1.4t~1.8t
4.0m~4.7m
1.8m程度
2.4m~2.7m
エスクード、ハリアー、CX-5
大型セダン(2,500cc~5,000cc)
1.5t~2.1t
4.7m~5.3m
1.7m~1.9m
2.8m~3.0m
クラウン、フーガ、センチュ
リー
1BOX(2,000cc~3,000cc)
1.6t~2.2t
4.7m~4.9m
1.7m~1.8m
2.9m程度
大型ワゴン(2,000cc~3,000cc)
1.6t~2.3t
4.7m~5.4m
1.7m~1.9m
2.6m~3.1m
ハイエース、キャラバン
大型SUV(2,500cc~4,600cc)
1.9t~2.7t
4.2m~5.0m
1.9m~2.0m
2.5m~2.9m
パジェロ、ランドクルーザー
16
ステップワゴン、セレナ、アル
ファード
3)ホイールローダー
平成 23 年度建設機械動向調査によると、国内での年間販売台数は1万
3千台程度である。
また、関東地方で 0.6~3.6m3 級は 11,830 台であり、その35%を建
設業が所有していることから、災害協定による事前の調整により、調達可
能と判断される。
道路工事などで使用される機械は、ナンバー登録車両があり自走可能で
ある。
乗用車を横から積み上げるフォークアタッチメントは、林業や大規模農
業が行われている北海道で使用されているが、関東地域ではレンタル会社
でも取り扱われていないため、災害時の調達は難しい。
また、フォークアタッチメントは、メーカー、機種毎形状が異なるので、
汎用性が無く、全て受注生産になっている。
図 4-3 ホイールローダー(0.6m3~3.6m3)の保有台数(関東)
合計:11,830台
1,148台
9.7%
建設業
4,140台
35.0%
建設機械器具賃貸業等
5,217台
44.1%
官公庁等
497台
4.2%
その他
828台
7.0%
不明なもの
出典:平成 23 年度建設機械動向調査
17
【参考】ホイールローダーの移動半径
1.3m3 級~1.5m3 級のホイールローダーであれば、荷を満載した大型ワゴン
車やSUV以外の乗用車に対応が可能であり、2~3tの乗用車を作業対象
とすると、最低限必要となる機種がこのクラスと判断される。
また、小型機種としては 1.3m~1.5m3 級のホイールローダーを制作してい
るメーカーが多い。
なお、1.9m3 以上のホイールローダーであれば、全ての乗用車に対応が可能
である。
1.3m3 級~1.5m3 級のホイールローダーは3車線以上の幅員があれば乗用車
の真横からフォークを差し込むことが可能となる。
また、移動車両の停止位置、路肩の幅員等により、2車線道路でも乗用車
の真横からフォークを差し込むことは可能である。
(概ねの目安;移動車両の端部から約 6.5m の幅員が確保されている場合)
18
図 4-4 リフトアップ時
車両移動に必要となる車幅: 片側3車線(3.5m×3)
第3車線
第2車線
第1車線
⑥リフトアップ時の必要幅: 約8.3m
⑤直角での進入最小必要幅: 約6.5m
乗用車の
車幅1.8m
2車線道路の場合の路肩必要幅: 約2.1m
乗用車両側の
隙間0.8m
乗用車までの
作業距離
1.1m
(0.8m+0.3m)
外側車輪の回
転半径5.4m
乗用車両側の
隙間0.8m
車幅と最小回転半径から
算出した直角進入範囲
※ホイールローダーの外形寸法は1.3m3および1.5m3の数値
から設定したもの。
※乗用車の外形寸法は、全長4.4m×全幅1.8m。
※乗用車は3.5mの車線中央に配置している。
ホイールローダーの外形寸法と回転半径
規格
本体重量
全長
全幅
屈折角
1.3m3
1.3m3
1.3m3
1.5m3
1.5m3
2.0m3
2.0m3
2.3m3
2.4m3
2.5m3
2.5m3
5.5t
5.7t
5.8t
6.3t
6.7t
7.7t
7.8t
7.6t
8.6t
8.5t
9.5t
6.2m
6.2m
6.5m
6.4m
6.6m
6.9m
7.2m
7.3m
7.4m
7.4m
7.5m
2.2m
2.3m
2.2m
2.3m
2.3m
2.4m
2.4m
2.4m
2.5m
2.5m
2.5m
37°
38°
37°
37°
37°
38°
40°
40°
40°
40°
38°
内輪半径 外輪半径
2.5m
2.6m
2.5m
2.6m
2.6m
2.9m
2.9m
2.9m
2.9m
2.9m
2.9m
4.7m
4.9m
4.7m
4.9m
4.9m
5.3m
5.3m
5.3m
5.4m
5.4m
5.4m
リフトアップ時
直角での進入
の移動走行を
可能幅
含む最低幅
6.3m
6.5m
6.3m
6.5m
6.5m
6.9m
6.9m
6.9m
7.0m
7.0m
7.0m
8.1m
8.3m
8.1m
8.3m
8.3m
8.7m
8.7m
8.7m
8.8m
8.8m
8.8m
※ホイールローダーの仕様と車幅計算は、各社のカタログ数値から設定。
①最小回転半径と屈折角から、回転時の内輪と外輪の必要半径を算出。
②ホイールローダの外側車輪の最小回転半径は、作業時の余裕代を考慮して、計算上は1.1倍する。
外側車輪の最小回転半径=4.9m×1.1=5.4m
④外側車輪の回転半径と乗用車までの作業距離(赤色円弧から乗用車まで)を0.8m+0.3m=1.1mと仮定。
⑤直角での進入最小必要幅は、
例:4.9m(外側車輪の回転半径)×1.1+1.1m(乗用車までの作業距離)=6.5m
⑥リフトアップ時の必要幅は、直角での進入最低幅を合計して算出。
例:6.5m(直角での進入最小幅)+1.8m(乗用車幅)=8.3m
19
図 4-5 リフトダウン時(移動走行含む)
※放置車両が密集し、最も外側車線により移動走行が必要な場合
車両移動に必要となる車幅: 片側3車線(3.5m×3)
第3車線
第2車線
第1車線
⑥リフトダウン時の移動走行を含む必要幅: 約9.5m
⑤直角での進入最小必要幅: 約6.5m
乗用車の
車幅1.8m
乗用車両側の
隙間0.8m
乗用車までの
作業距離
1.1m
(0.8m+0.3m)
外側車輪の回
転半径5.4m
乗用車両側の
隙間0.8m
乗用車の
はみ出し量
1.2m
車幅と最小回転半径から
算出した直角進入範囲
※ホイールローダーの外形寸法は1.3m3および1.5m3の数値
から設定したもの。
※乗用車の外形寸法は、全長4.4m×全幅1.8m。
※乗用車は3.5mの車線中央に配置している。
ホイールローダーの外形寸法と回転半径
規格
本体重量
全長
全幅
屈折角
1.3m3
1.3m3
1.3m3
1.5m3
1.5m3
2.0m3
2.0m3
2.3m3
2.4m3
2.5m3
2.5m3
5.5t
5.7t
5.8t
6.3t
6.7t
7.7t
7.8t
7.6t
8.6t
8.5t
9.5t
6.2m
6.2m
6.5m
6.4m
6.6m
6.9m
7.2m
7.3m
7.4m
7.4m
7.5m
2.2m
2.3m
2.2m
2.3m
2.3m
2.4m
2.4m
2.4m
2.5m
2.5m
2.5m
37°
38°
37°
37°
37°
38°
40°
40°
40°
40°
38°
内輪半径 外輪半径
2.5m
2.6m
2.5m
2.6m
2.6m
2.9m
2.9m
2.9m
2.9m
2.9m
2.9m
4.7m
4.9m
4.7m
4.9m
4.9m
5.3m
5.3m
5.3m
5.4m
5.4m
5.4m
リフトダウン時
直角での進入
の移動走行を
可能幅
含む最低幅
6.3m
6.5m
6.3m
6.5m
6.5m
6.9m
6.9m
6.9m
7.0m
7.0m
7.0m
9.3m
9.5m
9.3m
9.5m
9.5m
9.9m
9.9m
9.9m
10.0m
10.0m
10.0m
※ホイールローダーの仕様と車幅計算は、各社のカタログ数値から設定。
①最小回転半径と屈折角から、回転時の内輪と外輪の必要半径を算出。
②ホイールローダの外側車輪の最小回転半径は、作業時の余裕代を考慮して、計算上は1.1倍する。
外側車輪の最小回転半径=4.9m×1.1=5.4m
④外側車輪の回転半径と乗用車までの作業距離(赤色円弧から乗用車まで)を0.8m+0.3m=1.1mと仮定。
⑤直角での進入最小必要幅は、
例:4.9m(外側車輪の回転半径)×1.1+1.1m(乗用車までの作業距離)=6.5m
⑥リフトダウン時の移動走行を含む必要幅は、進入車幅から乗用車のはみ出し量を1.2mと仮定して算出。
例:1.2m(はみ出し量)+6.5m(直角での進入最小幅)+1.8m(乗用車幅)=9.5m
20
表 4-8 ホイールローダーのクラス(バケット容量)別移動可能乗用車
ホイールローダーのクラス
(バケット容量)
運転質量
車両延長 ※1
車両幅
(バケット含まず)
移動可能乗用車
直角での進入
可能な車幅 ※2
車両移動に必要
となる車幅 ※3
対応の可否
0.5m3~0.6m3
3.3t~3.9t
4.3m~4.7m
1.6m~1.7m
1t未満
軽自動車~小型車の
1t未満の車両
6.8m~7.0m
8.6m~8.8m
×
0.9m3~1.1m3 ※4
5.1t~6.2t
5.1m~5.5m
1.9m~2.2m
1t~2t
軽自動車~小型乗用車
7.5m~7.9m
9.3m~9.7m
△
1.3m3~1.5m3
6.9t~8.7t
6.2m~6.5m
1.8m~2.3m
2t~2.5t
軽自動車~
大型SUVを除く乗用車
8.2m~9.1m
10.0m~10.9m
○
1.9m3~2.5m3
9.9t~12.8t
6.9m~7.6m
2.4m~2.6m
3t~4t
軽自動車~全ての乗用車、
満積載の大型乗用車 ※5
8.9m~9.2m
10.7m~11.0m
(3車線を越える)
○
3.0m3~3.7m3
14.2t~19.1t
7.5m~8.4m
2.6m~2.9m
4.5t~6t
9.2m~10.4m
11.0m~12.2m
(3車線を越える)
○
4.0m3~4.7m3
19.8t~25.4t
8.6m~9.2m
2.8m~3.6m
6.5t~7.5t
10.2m~11.2m
(機種により3車線を越える)
12.0m~13.0m
(3車線を越える)
○
5.0m3~5.6m3
25.5t~33.8t
9.1m~9.9m
2.9m~3.5m
8t~9t
10.3m~11.4m
(機種により3車線を越える)
12.1m~13.2m
(3車線を越える)
○
対応可能な乗用車
※1 ホイールローダのバケット先端から本体後端までの長さで、フォーク爪を装着した機械状態ではない。
※2 ホイールローダの最小回転半径と乗用車までの作業距離を考慮しているが、乗用車の停車位置(路肩までの距離)、乗用車移動時のはみ出し量は含んでいない。
※3 乗用車が左端の車線中央に停車中で、車両移動作業をイメージした車幅であるが、対象車両の全長、ホイールベースにより、はみ出し量が変わるため、概略推定値となる。
※4 0.9m3~1.1m3級のホイールローダーは、製造メーカが少なく、レンタル会社の所有もほとんどないため、緊急時の調達可能性は低い。
※5 満積載の大型乗用車とは、大型ワゴンや大型SUVの積載量上限という状態を想定し、4t未満までの全ての乗用車が対応可能と判断している。
21
表 4-9 乗用車のクラス別重量等
乗用車のクラス
運転質量
全長
全幅
ホイールベース
軽自動車
0.7t~1.1t
3.4m未満
1.48m未満
2.4m~2.5m
アルト、ワゴンR、ムーブ、NBOX、アトレー
小型車(1,300cc~1,500cc)
0.9t~1.3t
3.8m~4.1m
1.7m未満
2.4m~2.6m
アクア、FIT、マーチ、スイフト、
デミオ
小型セダン(1,500cc~2,000cc)
1.1t~1.6t
4.4m~4.9m
1.7m~1.9m
2.6m~2.8m
カローラ、プリウス、アコード
小型SUV(1,500cc~2,500cc)
1.4t~1.8t
4.0m~4.7m
1.8m程度
2.4m~2.7m
エスクード、ハリアー、CX-5
大型セダン(2,500cc~5,000cc)
1.5t~2.1t
4.7m~5.3m
1.7m~1.9m
2.8m~3.0m
クラウン、フーガ、センチュリー
1BOX(2,000cc~3,000cc)
1.6t~2.2t
4.7m~4.9m
1.7m~1.8m
2.9m程度
ステップワゴン、セレナ、アル
ファード
大型ワゴン(2,000cc~3,000cc)
1.6t~2.3t
4.7m~5.4m
1.7m~1.9m
2.6m~3.1m
ハイエース、キャラバン
大型SUV(2,500cc~4,600cc)
1.9t~2.7t
4.2m~5.0m
1.9m~2.0m
2.5m~2.9m
パジェロ、ランドクルーザー
22
例
4)車両移動用ジャッキ
本体は小型軽量なため、パトロール車などに積載して現場へ複数持ち込むこ
とが可能である。
自動車工場や自動車展示場などで乗用車の移動に使用されることもある。
方向転換や数m程度の近距離移動であれば、乗用車1台当り3~4人で数分
程度の作業時間で可能。関東地整管内の国道事務所および出張所に約 200 組配
備されている。
また、国内外からのメーカーから発売されているので入手は容易である。
図 4-6 車両移動用ジャッキ
23
表 4-10 車両移動機材の調達方法
車両移動機材名
機材の調達方法
大型レッカー車
・レッカー車による移動は、専門の技術と経験が必要なことか
ら、レッカー業界、JAFと災害協定を締結し、機材とオペ
レーターを確保する。
中型レッカー車
・現段階で判明している関東地域内にあるレッカー車は、大型
約140台、中型約130台、小型約430台である。
小型レッカー車
※保有台数は、(一)日本自動車連盟、全日本高速道路レッカ
ー事業協同組合、(一)全国ロードサービス協会の保有台数。
ホイールローダー
・ホイールローダー本体は、現在災害協定を締結している建設
会社から確保する。
(フォーク仕様)
・ただし、既存のフォークアタッチメントは、本体のメーカー、
機種毎に異なり汎用性が無いため、災害協定を締結している
建設会社等が最も多く所有している車種に適応するアタッチ
メントを確保しておくことが必要。
・各種工場などで運搬・荷役作業に使用されているが、保有台
数の正確なデータは把握できていない。
フォークリフト
・リース会社も車両移動に必要な 2.5t~3.0t のフォークリフト
は多く所有していないことから、フォークリフトを所有して
いる倉庫業、輸送等の物流業、製紙工場などの民間会社と災
害協定を締結し確保するものとする。
・この際、フォークリフトは小型特殊自動車、もしくは新小型
特殊自動車に分類され、ナンバーがあっても、能力的な移動
速度が約20km/h(小型特種自動車の制限速度15km/h)で
あることから、保管場所の近隣以外で作業を行う場合は、積
載車の確保も検討しておく必要がある。
・また、乗用車を移動させるのに必要なフォークの長さは 1.8m
~2.0m であるが、一般のフォークはこれより短いため、長尺
フォークやサヤフォークの確保等も検討しておく必要があ
る。
・現段階で判明している関東地域内にあるフォークリフトは、
2.5t~3.0t 級で約1,000台。
大型特殊自動車に分類されるもので(概ね 10t級以上)、
約14,000台。
※2.5t~3.0t 級の台数は、(一)日本建設機械レンタル協会
に加盟しているリース会社 1 社の所有台数。
大型特殊自動車に分類されるもの(概ね 10t級以上)の台
数は、関東運輸局管内登録(長野県を除く)台数。
車両移動用ジャッキ
・一般に市販されているものであり、関東地方整備局の国道事
務所、出張所に約 200 組確保されている。
・また、多くのレッカー車にも積載されている。
24
5.既存の車両移動機材による車両移動手順及び所用時間
(1)大型レッカー車
①前方にスペースがある場合
移動前
移動後
②前方にスペースが無い場合(バックで牽引)
移動前
移動後
25
写真 5-1 大型レッカー車による大型貨物車の移動手順
26
(2)中型・小型レッカー車
①前方に移動スペースがある場合
移動前
移動後
②前方に移動スペースが無い場合(バックで牽引)
27
写真 5-2
小型レッカー車による乗用車の移動手順
28
③転倒した大型貨物を引き起こす
写真 5-3
クレーン付き大型レッカー車による横転車両の引き起こし手順
29
(3)ホイールローダー
①片側2車線の場合
②片側3車線の場合(滞留車両無し)
30
③片側 3 車線の場合(滞留車両有り)
④片側2車線で路肩が広い場合の車両移動(路肩約 2m 以上)
31
写真 5-4
ホイールローダーによる乗用車の移動手順
32
(4)フォークリフト
移動前
写真 5-5
移動後
フォークリフトによる乗用車の移動手順
33
(5)車両移動用ジャッキ
移動前
写真 5-6
移動後
車両移動用ジャッキによる乗用車の移動手順
34
6.被害想定に基づいた車両移動機材の適応性と課題
既存の車両移動機材の適応性と課題を検討するため、被害状況を想定した。
1)被害状況の想定方法
被害時の車両及び道路の状態は、考えられる条件を組み合わせて想定した。
表 6-1 被害状況の想定条件
被害想定の基本条件
被害想定の組合せ条件
道路の
車両の破損
運転手の
キーの
車線数・路
1. 車両の種類 2.
3.
4.
5.
6. 横断勾
状況
有無
有無
肩幅
配
①
トレーラ
① 破損なし
(大型貨物)
② バス
③
②
① 有り
軽微な破損
② 無し
あり
大型トラック
なんとか自
③
(大型貨物)
走可能
① 有り
② 無し
7.周辺の状況
8. 車両の密度
片側1車線
0~5%
①
① 沿道火災発生
+路肩
未満
①
②
片側2車線
5%を超
②
② 沿道建物倒壊
える
+路肩
②
③
片側3車線
+路肩
①
車間距離30m
(道路内に移動
スペースあり)
車間距離3m
(道路内に移動
スペース無し)
9.車両の状態
停
車
通常の停車状態
① (道路を横断方向に ①
停車を含む)
通常の場所
側溝等の段差へ脱
②
輪
トンネル内
②
③ 歩道橋落橋
③ 横転
③
勾配5%
事
故
④
中型トラック
大破
④
(大型貨物)
(自走不能)
④ 電柱倒壊
④ 車両どおしの衝突
⑤
小型トラック
(小型貨物)
⑤ がれき散乱
⑤ 付属物等への衝突
⑥ 平時とほぼ同等
⑥ 車両の火災炎上
⑥ 乗用車
10.作業場所
注)青字が今回被害想定にした条件
(1)車両の種類
既存の車両移動機器においては、トレーラー、大型トラック、中型トラッ
クは大型レッカー車の移動になることから、大型貨物車として一括分類。
その他は、バス、小型貨物、乗用車として分類。
(2)車両の破損状況
財産価値がある車両を対象とすることから、①破損無し②軽微な破損有り
を対象とする。自走可能は、誘導により移動可能なことから対象としない。
(3)運転手の有無
運転手がいれば、誘導により移動可能なため、運転手はいない場合を対象
とする。
(4)車両の状態
財産価値がある車両を対象とすることから、①通常の停車状態(②横方向
に停車を含む)、③脱輪、④横転までを対象とする。
(5)キーの有無
大半のドライバーはキーを残さず放置すると仮定する。
35
(6)車線数
啓開する幹線道路は、片側 2 車線以上あることを前提に、一般道 片側2
車線(1 車線3.5m×2) 路肩1mを被害想定の対象とする。
(7)道路の勾配
立体交差の特例値として、0~5%と仮定した。(5%を上限とする。)
(8)周辺の状況
車両移動技術に関する検討のため、火災、建物崩壊などの要素は考慮せず、
平常時とほぼ同等な状態を想定する。(啓開を行う幹線道路は、堅牢な建物
がほとんどであることから、車両移動に支障を与えないと仮定。
(9)車両の密度
放置車両の移動先は、移動先がある場合と無い場合で検討。
車間距離30m(道路内に移動スペース有り)と車間距離3m(道路内に
移動スペース無し)で検討する。
写真 6-1 平常時と被災状況の想定
平常時
混雑時
平均すると約30m程度の車間距離
(写真からの目視)がある。(R4号)
東日本大震災時の渋滞では、約3m程度の
車間距離(写真からの目視)になった。
(R4号)
東日本大震災時のトンネル内の様子。
(新宿御苑トンネル)
36
2)組合せによる被害状況
移動対象となる個々の車両状態と周辺道路状況や被災状況による基本条件
に加え、作業性や所要時間に影響する組合せ条件を考慮して被害状況を複数
想定した。
表 6-2 検討ケース
車両の状況
ケース
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
基
本
条
件
組
合
せ
条
件
通常の停車
車
通常の停車
間
通常の停車
距
離
3
0
m
通常の停車
車 通常の停車
間 通常の停車
距
離
3
m
作業場所
通常の場所
トンネル内
傾斜有り
脱輪
脱輪
通常の場所
傾斜有り
横倒し
横倒し
横倒し
通常の場所
トンネル内
傾斜有り
通常の場所
トンネル内
傾斜有り
脱輪
脱輪
通常の場所
傾斜有り
横倒し
横倒し
横倒し
37
通常の場所
トンネル内
傾斜有り
3)被災状況と移動のイメージ図
道路啓開時の放置車両の移動は、片側 1 車線に 2 列に寄せる方法、路肩
と中央分離帯の両脇に寄せる方法があるが、車両移動機材の適応性と課題を検
討することから、便宜的に片側 1 車線に 1 列寄せることとした。
38
39
40
4)被害想定による現状における車両移動機材、作業技術の整理
表 6-3 検討ケースのまとめ
道路の状況
移動対象車両
スペース有り
スペース無し
既存の移動可能な技術(ケース1~8)
既存の移動可能な技術(ケース9~16)
大型貨物・バス 大型レッカー車
通常(フラット) 小型貨物
普通乗用車
トンネル内
(スペースを確保後)大型レッカー車
中型レッカー車
(スペースを確保後)中型レッカー車
中型レッカー車、小型レッカー車、フォークリフト、ホ
イールローダー、車両移動用ジャッキ
(スペースを確保後)中型レッカー車、小型レッカー車、
フォークリフト、ホイールローダー、車両移動用ジャッキ
大型貨物・バス 大型レッカー車
(スペースを確保後)大型レッカー車
小型貨物
中型レッカー車
(スペースを確保後)中型レッカー車
普通乗用車
中型レッカー車、小型レッカー車、フォークリフト、ホ
イールローダー、車両移動用ジャッキ
(スペースを確保後)中型レッカー車、小型レッカー車、
フォークリフト、ホイールローダー、車両移動用ジャッキ
大型貨物・バス 大型レッカー車
勾配有り(5%
小型貨物
程度)
普通乗用車
移動時間
(概ねの1台 小型貨物
当たりの移動
時間であり、
状況により変
動)
普通乗用車
道路上にスペースが無い場合には、スペース確
保後にレッカー、ホイールローダーによる移動と
なる。
・トンネル内においても通常の明かり部と同様に
移動作業が可能。
・ただし、レッカー車はトンネル内の転倒している
車両を起こすためには、クリアランスの低いク
レーンが必要。
・また、トンネル内は明かり部より作業効率は低
下する。
(スペースを確保後)大型レッカー車
中型レッカー車
(スペースを確保後)中型レッカー車
中型レッカー車、小型レッカー車、フォークリフト、ホ
イールローダー、車両移動用ジャッキ
(スペースを確保後)中型レッカー車、小型レッカー車、
フォークリフト、ホイールローダー、車両移動用ジャッキ
大型貨物・バス 大型レッカー車移動:20分、1~2名
課題等
・道路勾配が5%程度であれば、通常の明かり
部と同様に移動作業が可能。
(スペースを確保後)
大型レッカー車移動:30分、1~2名
中型レッカー車移動:10分、1名
(スペースを確保後)
中型レッカー車移動:15分、2名
中型レッカー車:10分、1名
小型レッカー車:10分、1名
フォークリフト:3分、2名
ホイールローダー3分、2名
車両用移動ジャッキ:10分、4名
(スペースを確保後)
中型レッカー車による移動:15分、小型レッカー車による
移動:15分
、フォークリフト10分、ホイールローダー10分
車両移動用ジャッキ:10分
41
・スペースが無い場合は、移動作業機械が限定
されるとともに、作業効率が悪い。
5)既存の車両移動機材による移動時間
表 6-4 レッカー車による移動時間と必要人数
通常の場所
車種
ケース名
トンネル
ケース1
ケース2
通常
トンネル
ケース4
横倒し
勾配有り
(5%)
ケース5
通常
トンネル
ケース6
ケース7
勾配有り
(5%)
ケース8
備考
大型貨物
20分
20分
20分
20分
(1~2名) (1~2名) (1~2名) (1~2名)
-
30分
(4~5名)
30分
(4名)
60分
(4名)
30分
(4名)
大型レッカー車
バス
20分
20分
20分
20分
(1~2名) (1~2名) (1~2名) (1~2名)
-
20分
(1~2名)
30分
(4名)
60分
(4名)
30分
(4名)
大型レッカー車
(
通
常
の
車
間
通常
脱輪
勾配有り
(5%)
ケース3
)
3 小型貨物
0
m
乗用車
ケース名
10分
(1名)
10分
(1名)
10分
(1名)
-
15分
(2名)
30分
(4名)
15分
(2名)
15分
(1名)
中型レッカー車
小型レッカー車
10分
(1名)
10分
(1名)
10分
(1名)
10分
(1名)
-
15分
(1名)
15分
(1名)
15分
(1名)
15分
(1名)
小型レッカー車
ケース9 ケース10 ケース11 ケース12
ケース13 ケース14 ケース15 ケース16
大型貨物
30分
30分
30分
30分
(1~2名) (1~2名) (1~2名) (1~2名)
-
40分
(4~5名)
30分
(4名)
70分
(4名)
30分
(4名)
大型レッカー車
バス
30分
30分
30分
30分
(1~2名) (1~2名) (1~2名) (1~2名)
-
40分
(4~5名)
30分
(4名)
70分
(4名)
30分
(4名)
大型レッカー車
(
渋
滞
の
車
間
10分
(1名)
)
3
m 小型貨物
乗用車
15分
(2名)
15分
(2名)
15分
(2名)
15分
(2名)
-
25分
(2名)
25分
(2名)
30分
(4名)
25分
(4名)
中型レッカー車
小型レッカー車
15分
(1名)
15分
(1名)
15分
(1名)
15分
(1名)
-
25分
(1名)
25分
(1名)
30分
(1名)
25分
(1名)
小型レッカー車
42
表 6-5 車両移動用ジャッキによる移動時間と必要人数
通常の場所
車種
脱輪
横倒し
勾配有り
(5%)
ケース5
通常
トンネル
ケース6
ケース7
勾配有り
(5%)
ケース8
通常
トンネル
ケース1
ケース2
勾配有り
(5%)
ケース3
大型貨物
-
-
-
-
-
-
-
-
-
バス
-
-
-
-
-
-
-
-
-
3 小型貨物
0
m
-
-
-
-
-
-
-
-
-
10分
(最低4名)
10分
(最低4名)
20分
(最低6名)
-
-
-
-
-
-
ケース9
ケース10
ケース11
ケース12
ケース13
ケース14
ケース15
ケース16
大型貨物
-
-
-
-
-
-
-
-
-
バス
-
-
-
-
-
-
-
-
-
3
m 小型貨物
-
-
-
-
-
-
-
-
-
10分
(最低4名)
10分
(最低4名)
20分
(最低6名)
-
-
-
-
-
-
ケース名
ケース4
トンネル
備考
(
通
常
の
車
間
通常
)
乗用車
ケース名
(
渋
滞
の
車
間
勾配有りでは著しく効率が低下す
る。
)
乗用車
※車両移動用ジャッキは、道路内の短距離の移動に使用
43
勾配有りでは著しく効率が低下す
る。
表 6-6 フォークリフトによる移動時間と必要人数
通常の場所
車種
脱輪
横倒し
通常
トンネル
ケース1
ケース2
勾配有り
(5%)
ケース3
大型貨物
-
-
-
-
-
-
-
-
-
バス
-
-
-
-
-
-
-
-
-
3 小型貨物
0
m
-
-
-
-
-
-
-
-
-
3分
(2名)
3分
(2名)
6分
(2名)
-
-
-
-
-
-
ケース9
ケース10
ケース11
ケース12
ケース13
ケース14
ケース15
ケース16
大型貨物
-
-
-
-
-
-
-
-
-
バス
-
-
-
-
-
-
-
-
-
3
m 小型貨物
-
-
-
-
-
-
-
-
-
3分
(2名)
3分
(2名)
6分
(2名)
-
-
-
-
-
-
ケース名
ケース4
トンネル
通常
トンネル
ケース6
ケース7
勾配有り
(5%)
ケース8
(
通
常
の
車
間
通常
勾配有り
(5%)
ケース5
)
乗用車
ケース名
(
渋
滞
の
車
間
)
乗用車
44
備考
表 6-7 ホイールローダーによる移動時間と必要人数
通常の場所
車種
脱輪
横倒し
通常
トンネル
ケース1
ケース2
勾配有り
(5%)
ケース3
大型貨物
-
-
-
-
-
-
-
-
-
バス
-
-
-
-
-
-
-
-
-
3 小型貨物
0
m
-
-
-
-
-
-
-
-
-
3分
(2名)
3分
(2名)
6分
(2名)
-
-
-
-
-
-
ケース9
ケース10
ケース11
ケース12
ケース13
ケース14
ケース15
ケース16
大型貨物
-
-
-
-
-
-
-
-
-
バス
-
-
-
-
-
-
-
-
-
3
m 小型貨物
-
-
-
-
-
-
-
-
-
3分
(2名)
3分
(2名)
6分
(2名)
-
-
-
-
-
-
ケース名
ケース4
トンネル
通常
トンネル
ケース6
ケース7
勾配有り
(5%)
ケース8
(
通
常
の
車
間
通常
勾配有り
(5%)
ケース5
)
乗用車
ケース名
(
渋
滞
の
車
間
)
乗用車
45
備考
6)既存の車両移動機材の課題
表 6-8 既存の車両移動機材の課題
既存の車両移動機材
レッカー車
(大型、中型、小型)
課
題
【移動方法】
・車種によっては、大型なため機器を設置するスペースを確保する
ことが必要。
【移動技術】
・運転免許、ブレーキ解放、ギヤ解放、ワイヤー掛け等の専門技術・
経験が必要。
【調達性】
・レッカー車を保有する協会、組合等の災害協定が必要。
【その他】
・トンネル内では、転倒車両を起こす際、クリアランスの低いクレ
ーン及び操作技術が必要。
フォークリフト
【移動方法】
・車両の縦方向にフォークでリフトアップする適切な位置がないた
め、移動車両の側面に移動するためのスペースが必要。乗用車の
移動には、最低 1.8m以上のフォークが必要。ただし長すぎると
機動性が損なわれる。
・大型貨物、バス、小型貨物はリフト時の能力やバランスがとれな
いため使用出来ない。
【移動技術】
・操縦するためには、フォークリフト運転技能講習を受講する必要
がある。また、年数回の操作演習を行うことが望ましい。
(車両をリフトアップするにはある程度の習熟が必要。)
・移動させる車両の適切な位置に、フォークを掛けないと車両底部
のマフラー等に傷が付くことがあることから、損傷を与えると致
命傷になる箇所の知識と、移動技術の習得が必要。
・公道を走行するには、小型特殊自動車(概ね定格荷重 2.5t まで)
では普通自動車免許で可能であるが、それを超えると大型特殊免
許が必要。
・ハイブリッド車の場合、感電の可能性があることから低圧電源特
別講習等を受けたある程度の専門知識を持ったオペレーターが必
要。
【調達性】
・民間の工場などで使用されており、災害時に台数を集めるには、
リース業、民間倉庫業、製紙業、運送業等と災害協定の締結など
が必要。
※自動車と違い全てが登録していないため、正確な保有台数は把握
出来ない。
【その他】
・通常の使用ではナンバーを取得することが余りないことから、公
道を自走出来る台数は少ないと推測される。また、道路での車両
移動が可能なフォークリフトは小型特殊自動車、もしくは新小型
特殊自動車に分類され、ナンバーがあっても、能力的な移動速度
が約20km/h(小型特種自動車の制限速度15km/h)であること
から、保管場所の近隣以外で作業を行う場合は、積載車の確保も
検討しておく必要がある。
46
既存の車両移動機材
ホイールローダー
課
題
【移動方法】
・本来は車両の移動に使用する機械ではないが、消防庁における事例
を元に検証する。フォークリフトに比べ、小回りはきかない。また、
フォークリフトと同様に、移動車両の側面からリフトアップする必
要があるが、大型であり、車線数が 2 車線以下の場合、車両移動用
ジャッキとの併用などを行い、移動車両の停車位置を変える必要が
ある場合があることから、移動時間を要す。(車両に傷を付けない
場合)
・大型貨物、バス、小型貨物はリフト時の能力やバランスが悪いため
使用出来ない。
【移動技術】
・大型特殊免許、車両をリフトアップする技術が必要。
・移動させる車両の適切な位置に、フォークを掛けないと車両底部の
マフラー等に傷が付くことがあることから、損傷を与えると致命傷
になる箇所の知識と、移動技術の習得が必要。
・公道を走行する場合、1.3m3~1.5m3 級のホイールローダーの場合、
大型特殊免許が必要。
・ハイブリッド車の場合、感電の可能性があることから低圧電源特別
講習等を受けたある程度の専門知識を持ったオペレーターが必要。
【調達性】
・ホイールローダー本体は調達しやすいが、フォークアタッチメント
を含めるとレンタル会社等からの調達は難しい。
・フォークアタッチメント取付部がメーカー、機種ごと異なるため、
他車種利用ができない。
・フォークアタッチメントはリースでもほとんどないため、災害時の
確保は困難。
【その他】
・ナンバーが無いと公道を自走出来ない。また、移動速度が約 30km/h
程度であることから、保管場所の近隣以外で作業を行う場合は、積
載車の確保も検討しておく必要がある。
・車両移動以外にも、ガレキ撤去や倒れた電柱の撤去、除雪など多用
途に使用が可能。
車両移動用ジャッキ
【移動方法】
・人力での移動であるので効率性に劣る。さらに坂道では、効率の低
下や、作業員の増員、ウインチ等の併用が発生する。
・もともと、自動車整備工場、自動車展示場などの車両の移動用とし
て開発されたことから、アスファルトのような粗い表面の場所では、
使用しにくい。
・大量の車両移動を行う場合、人力によることから移動距離、作業員
の確保、疲労の度合いを考慮する必要がある。
【調達性】
・市販されており、調達は容易。
47
7.既存の車両移動機材による車両移動方法
1)既存の車両移動機材の適用性
・大型貨物車、バス、小型貨物車の移動は、現在のところレッカー車以外
にない。
・乗用車については、レッカー車、フォークリフト、ホイールローダー、
車両移動用ジャッキによる移動が可能であり、それぞれの機材の適用性
について取りまとめた。
乗用車の移動
大型貨物車、バス、
小型貨物車の移動
■乗用車に対応
フォークリフト
□短距離の移動・運搬、レッカー車の補助
■大型貨物車、バスに対応
■乗用車に対応
大型レッカー車
車両移動用ジャッキ
□短距離から長距離の移動
□短距離の移動・運搬、レッカー車の補助
■乗用車に対応
■小型貨物車に対応
中型レッカー車
または
小型レッカー車
中型レッカー車
または
小型レッカー車
□短距離から長距離の移動
■乗用車に対応
□短距離から長距離の移動
ホイールローダー
□短距離の移動・運搬、レッカー車の補助
48
表 7-1 乗用車を移動させる機材の適用性
適用場所
現場の利用方法
入手可能性
操作技能・人数
レッカー車
(小型・中型)
・前輪または後輪を固定して牽
・レッカー業界,JAFと災害協定を ・レッカー移動の技術が必要。
引する。
もう一方のブレーキを解除でき 締結することにより災害時の調 ・作業に慣れた1人1組で約10分
~約15分程度。
ない場合、ドーリーなどの牽引 達台数を確保する。
用機材を使用する。
フォークリフト
(標準的なフォーク延長
1.0m~1.2m)
・フォークリフト本体の保管位置
と仕様の調査が必要。
・乗用車の移動に必要な1.8m ・民間との災害協定の締結も視
~2.0mのサヤフォークか治具を 野に入れる必要がある。
取り付け爪で車両を横から直接 ・標準的な爪の長さは1.0~1.2
m程度であり、乗用車を移動さ
持ち上げる。
せるには1.8m~2.0mの長さが
(2.5~3.0t級が必要)
必要であることから、サヤフォー
ク等を別途用意する必要があ
る。
・フォークリフト運転技能講習を修
了する必要がある。
・車両の移動には、慣れが必要。
・持ち上げ可能な下面位置の確
認が必要。運転手1名+補助員
1名。
・作業時間は約3分~約6分程
度。
ホイールローダー
・掘削バケット1.5~3.0m3級の
本体は建設会社やレンタル会
・フォークアタッチメントにより、
社より入手可能。
フォークリフトと同様に車両を横
・フォークアタッチメントは林業用
から持ち上げる。
の特殊なもので、需要が少なく
受注生産となる。
・持ち上げ可能な下面位置の確
認が必要。運転手1名+補助員
1名。
・作業時間は約3分~約6分程
度。
車両移動用ジャッキ
・レバー操作のみで簡単。
・4箇所のタイヤに取り付ける
・一般にも市販されており、関東
・大人4人程度で対応可能。
キャスター式のけん引用治具。
地方整備局管内で約200組配
・近距離移動であれば約10分~
・平坦であれば、大人3~4人
備している。
約20分で可能。
程度で数mの移動が可能。
49
坂道
5%
2車線の
トンネル
片側2車線
道路
(中央分離
帯有り)
○
○
○
・最も一般的かつ車両への
損傷もない方法。
○
・車両が滞留しているトン
ネル内では、フォークリフト
単独で車両の移動はでき
ない。
(レッカー車が必要)
△
・車両の滞留の有無にか
かわらずトンネル内ではホ
イールローダー単独で車
両の移動は出来ない。
(レッカー車、車両移動用
ジャッキが必要)
・ガレキの撤去など多用途
に使用可能
○
・2%を超える勾配がある
と、作業効率が低下する。
・近距離移動用機材である
ため、車両が滞留したトン
ネル内では単独では移動
出来ない。
(レッカー車が必要)
○
○
△
△
×
△
備考
2)レッカー車、フォークリフト、車両移動用ジャッキの組合せによる車
両移動手順の例
50
3)大雪によるスタック車両の移動の例(参考)
51
4)車両移動時の注意点
【参考①】大型貨物車等の移動時間の短縮する方法
災害対策基本法の一部を改正する法律(平成26年11月21日施行)に
より、道路管理者は、災害時に放置車両のロックやサイドブレーキを解除す
るために窓ガラスを割ることなどの「やむを得ない限度の破損」が可能とな
った。
これにより、これまで大型貨物車等を移動する際には、サイドブレーキが
支障となり、車両に破損を与えないようにするには、シャフトを抜くしかな
かったが、窓ガラスを最小限割ることでドアを開け、サイドブレーキを解除
できれば移動時間の短縮が可能となる。
※車種にもよるが、大型貨物の場合シャフト抜きの時間約 12 分/台短縮。
乗用車でもFF車の場合、後輪にドーリーを設置する時間が短縮できる。
※専門家でないと解除できないサイドブレーキ
近年の大型トラックでは,サイドブレーキを解除しても非常ブレーキ(ス
プリング ブレーキ)が作動した状態となることがある.
写真 7-1 サイドブレーキの種類
エア式(非常ブレーキ有り)
一般的なサイドブレーキ
出典:一般社団法人 日本自動車工業会 大型車部会
一般財団法人 日本自動車研究所 安全研究部 協力 つくば市消防本部
HP
サイドブレーキに非常用サイドブレーキが付いた一般的なものの他に、
エア式の非常ブレーキ付きサイドブレーキがある。これは、作動するとき
52
プシュという空気音がすることで判断できる。
非常ブレーキとは、中・大型貨物車に取り付けられているもので、衝突
事故でエア配管が破損した場合やエンジンが止まってから長時間経過す
ると,メインタンクの空気圧が低下して駐車ブレーキが作動した状態とな
る場合がある。
解除方法は、巻き上げるタイプのものや、ブレーキチャンバーに連結さ
れたターンバックル(またはロックナット)を締めこむタイプがあり、解
除に専用の工具も必要になること等から専門的な知識と技術が必要であ
る。
53
【参考②】図 7-1 車両の下廻りで、損傷を与えると致命傷となるところ
※移動する各車両の燃料タンクには、トラック類では多量の軽油、乗用車類には、引火点が低く、気化した蒸気の
質量が大気より重く、低部に滞留してしまうガソリンが積載されているため、移動時には燃料系統の損傷は許され
ない。また、移動時の万一の損傷に備えて燃料漏洩時の対策・機器類の準備を行うことや、別の要因で車両火災が
発生することも考えられるため火災に対する検討も必要と思われる。
54
【参考③】図 7-2
大型トラックのフロント・けん引フック
55
8.既存の車両移動機材の改良や新たな車両移動機材・技術の構想
研究会で検討した研究開発の構想は、現段階で考えられる研究開発の構想を
幅広に整理したものである。
1)開発目標
(1)発災後、遅くとも2日(48 時間)以内での道路啓開を目指す。
(2)災害時だけでなく常時にも使用可能な機材の汎用性を確保する。
(3)入手しやすく、オペレーターも豊富な既存の建設機械の活用を検討する。
(4)実際の機材の移動は、建設会社などの協定会社が行うことから、特別な
技術や免許を必要としないこととする。
2)既存の車両移動機材の改良や新たな車両移動機材・技術の構想
(1)レッカー車
■目指すべき方向性
・全ての車種に対応できることから、如何に早く、レッカー車を設置するスペース
を確保するかを目指す。
■具体的な対策・構想
・基本的には、小回りの利く他の移動機材(フォークリフト、車両移動用ジャッキ)
と連携することで、レッカー車の設置スペース確保時間を短縮する効率的な手
順や作業方法等を検討・整理する。
・既存の機材以外、新たなスペース確保のための専用機械の開発。
56
(2)フォークリフト
■目指すべき方向性
・乗用車の俊敏な移動、レッカー車及びホイールローダーを設置するスペース作
り、車両移動の効率化を図ることを目標とする。
・フォークリフトの持つ機動性を活かしつつ、※課題を改善する方策を検討する。
※:課題についてはP46参照
■具体的な対策・構想
[1] 車両を安定的にリフトアップできる機能の開発。
①移動車両に合わせたフォーク幅の変更機能
②フォークから車両が滑り落ちないための機能
③車両に傷を付けない機能
④フォークの長さが調節できる機能
⑤ハイブリッド車などの移動に通電(感電)しないフォークの開発
[2] 乗用車より大型の車両を移動可能な機能の開発。
[3] レッカー車のように車両の端部をリフトアップできる装置・アタッチメントの
開発。
図 8-1
[1]車両を安定的にリフトアップできる機能の開発
※これらは、イメージであり今後、開発が必要となった時には詳細に検討していく。
57
※これらは、イメージであり今後、開発が必要となった時には詳細に検討していく。
58
写真 8-1
[3]レッカー車のように車両の端部をリフトアップできる装置・アタッチメント
の開発
(3)ホイールローダー
■目指すべき方向性
・ホイールローダーの持つ車両移動の速さを活かしつつ、※課題を改善する方策
を検討する。
※:課題についてはP47参照
■具体的な対策・構想
[1]車両を安定的にリフトアップできる機能の開発。
①移動車両に合わせたフォーク幅の変更機能
②フォークから車両が滑り落ちないための機能
③車両に傷を付けない機能
[2]メーカー、機種を問わず、取り付けできるフォークアタッチメントの開発。
[3]短時間で車両移動できる機能をさらに向上させる機動性の向上。
①本体の小型化
②乗用車の縦方向からもフォークで移動できる機能の開発
[4]レッカー車のように車両の端部をリフトアップできる装置・アタッチメントの開発。
59
図 8-2 [1]車両を安定的にリフトアップできる機能
図 8-3
[2]メーカー・機種を問わず取り付けできるフォークアタッチメントの開発
※これらは、イメージであり今後、開発が必要となった時には詳細に検討していく。
60
図 8-4
[4]レッカー車のように車両の端部をリフトアップできる装置
・アタッチメントの開発
※これらは、イメージであり研究会の中で詳細に検討を行った。
61
(4)車両移動用ジャッキ
■目指すべき方向性
・小型、コンパクトという特性を利用し、レッカー車やホイールローダーの設置スペー
ス作り、車両移動の効率化を図ることを基本とする。
・機材の機動性を損なわず、※課題を改善する方策を検討する。
※:課題についてはP47参照
■具体的な対策・構想
[1] 路上でも移動しやすい機材に改良。
①キャスターの大径化
②ジャッキアップ機能の改良、牽引、操舵、ブレーキ機能の追加など
[2] 車両移動ジャッキのように人力でも移動出来る、小型でコンパクト機械の開発。
図 8-5 [1]路上でも移動しやすい機材に改良
※これらは、イメージであり研究会の中で詳細に検討を行った。
62
(5)その他
■目指すべき方向性
・災害発生時に調達しやすい市場性のある建設機械類、資材の利用。
・既存の機材との組合せによる効率的な作業形態を検討する。
■具体的な対策・構想
[1] 災害協定会社が保有する建設機械と建設資材等を活用した車両移動。
①単管パイプを活用した車両の吊り上げによる移動。
[2]車両移動用ジャッキと組み合わせて牽引する専用機材の開発。
図 8-6
[1]災害協定会社が保有する建設機械と建設資材等を活用した車両移動
※バックホウによる車両の吊り上げ移動は、具体的な吊り上げ方法や移動方法等につい
て検討出来ていないため、早期に移動方法等について検討・整理し、今後追記できる
ものは記述していくこととしている。
※これらは、イメージであり今後、開発が必要になった時には詳細に検討していく。
63
図 8-7
[2]車両移動用ジャッキと組み合わせて牽引する専用機材の開発
☆ホイールローダーと車両移動用ジャッキの組合せ
※これらは、イメージであり今後、開発が必要となった時には詳細に検討していく。
64
9.機材・技術の改良・開発手法
1)機材・技術の改良・開発手法
考えられる機材・技術の改良、開発手法としては以下の3つの手法が考え
られるが、本研究会では最も短期間で対応可能な【手法3】で進めた。
図 9-1 開発手法のメリット・デメリット
65
10.試作機の検証と検討成果
P56から記載の「8.既存の車両移動機材の改良や新たな車両移動機材・
技術の構想」のうち、道路啓開計画に基づき実施する道路啓開作業にあたり、
以下条件を勘案の上、2機種を抽出し試作を行い、実作業での検証を実施した。
試作機の抽出
試作機を製作するにあたり、災害時の協定・協力会社である建設会社が保
有する建設機械を活用すること、また機械類が未到着のため人員(人力)の
みで対応する可能性、もしくは車両移動の補助的な作業を考慮しなければな
らないこと、また作業の迅速化・車両の補償の減少・作業の安全性を確保し
なければならない観点から、以下の項目をクリアする機種を抽出した。
① 軽量・コンパクトであること(人力設置可能が望ましい)
② 設置作業・啓開作業が複雑でないこと
③ 車両に傷を付けないこと
④ 作業員の安全を確保すること
⑤ 過度な動力を用いないこと
⑥ 汎用的で現場投入性の高い建設機械を用いること
これらより、新たな機材の開発はホイールローダーを、現状機材の改良は
車両移動用ジャッキを用いた機材を試作し検証する。
なお検証にあたっては、最初に一次試作機を製作し、それを検証し得た課
題と改善策を反映した二次試作機まで製作し、検証を行うこととした。
1)一次試作機の検証
(1)ホイールローダー用牽引装置
■目指すべき方向性
ホイールローダーの持つ車両移動の速さを生かしつつ、※課題を改
善する方策を検討する。
※:課題についてはP47参照
■主な課題と改善策
①ホイールローダーへの取り付け部がメーカー、機種ごと異なる
改善策:吊り上げ式とすることにより汎用性を確保
②重量のある車はバランス及びホイールローダーの能力により制限を
受ける
66
改善策:装置を車体下に入れ、テコの原理を利用して小型貨物車
まで対応
なお、対象とした小型貨物車は国内のトラックメーカーの諸元から以
下を許容範囲として想定した。
表 10-1
図 10-1
対象車両の車体諸元等の許容範囲
レッカー車のように車両の端部をリフトアップできる装置
67
写真 10-1
一次試作機全景
図 10-2 一次試作機製作図面
68
図 10-3 車両設置状況図
写真 10-2
検証状況
69
70
●検証結果
①人力設置を目指し分割式にしたが、結果的に軽量化されず、分割式
であるがために、今回の設置方法・設置時間では熟練者以外では取
扱が厳しく時間もかかる。
(取扱説明用のビデオを用意したとしても設置は困難ではないか)
【研究会における検証後の確認作業において作業時間の実測を行っ
たところ、トラックからの荷下ろし~組み立て・小型貨物車への
セットまで3回平均で30分、逆に小型貨物車からの取り外し~
分解・積み込みまで26分かかった】
②車体下に機材を挿入するが、設置しやすいように改良するべき。
(慎重な作業にならざるを得ず、オペレーターに負担がかかる)
③対象車を小型貨物車まで広げたため重量増となり人力設置ができず、
準備時間を要することとなった。
④開発の方向性を考えるべき。
(対象が大きいから機材も大きくなるので規格を落とすなど)
71
検証結果より、今回の機材では、乗用車を持ち上げる能力のホイールロー
ダーでもテコの原理を応用することにより小型貨物車まで移動できることが
確認出来た。しかし小型貨物車までをターゲットとしたがために、その対象
車両の重量から軽量・コンパクト化が図れず、機材質量が重く(約 700kg)
クレーン作業が必要になるなど作業の容易性も損なわれたことから、総合的
に判断して1次試作機による八方向作戦での使用について、実用的ではない
と考えられた。
●二次試作に向けた改善策
①対象車を乗用車までとし、軽量・コンパクト化を目指す。
→P6の適応性に立ち返り、まずは乗用車をターゲットとする。
②軽量化し、人力設置が出来ることとし、過度の分割をしないことに
より設置容易性を向上させる。
③乗用車を対象とすることから直接持ち上げることを前提とし、車体
下に機材を挿入することをやめ、作業性の向上と時間短縮、オペレ
ーターの負担軽減を目指す。
72
(2)車両移動用ジャッキ
■目指すべき方向性
・小型、コンパクトという特性を利用し、レッカー車やホイールロ
ーダーの設置スペース作り、車両移動の効率化を図る。
・機材の機動性を損なわず、※課題を改善する方策を検討する。
※:課題についてはP47参照
■主な課題と改善策
①人力移動のため長時間作業では効率低下が懸念される。また坂路で
は作業員の増員が必要
改善策:牽引用フック(アイボルト)の取り付け、機器設置時の
逸走防止用ストッパーを設置
②アスファルトのような荒い場所では使用しにくく、勾配箇所のコン
トロールも難しい
改善策:キャスターの大径化、キャスター方向の固定機能を付加
図 10-4
路上でも移動しやすい機材に改良
73
写真 10-3
一次試作機全景
※キャスター:φ130、幅 40mm、ゴム製
図 10-5 一次試作機製作図面
74
写真 10-4
検証状況
●検証結果
①キャスターを大きくしたために、タイヤにかけるローラー位置が高
くなり、踏力が増加した。
②車高の低い車ではジャッキと車両底部が干渉して設置が不可。
③ゴムキャスター(標準はナイロン樹脂プラスチック)のため、向き
が変わる最初は大変だが、動き出せばある程度スムーズ。
④ブレーキ機能及びアイボルトの設置は良い。
検証結果より以下の改善を二次試作において行うことにより、実用的にな
ると考えられた。
●二次試作に向けた改善策
①キャスター径を小さくすることなくフレームを下げることによりタ
イヤにかけるローラー位置を下げ踏力増加を抑制する。
②キャスター取り付け部をスリム化し、ホイールハウス内への機材の
挿入性を向上させる。
③キャスター材質を硬度化し、初期可動性を向上させる。
75
2)二次試作機の検証
(1)ホイールローダー用牽引装置
■一次試作機からの改善点
①対象車を乗用車までとし、一次試作機から大幅に軽量化出来たこと
により人力設置を可能とした。
②通常は非分割とし、分割も2分割までとした。
③吊り上げ式ではないが、バケットに装着することとし、汎用性を確
保した。
④車体下に機材を挿入することをやめ、作業性の向上と設置時間を短
縮し、オペレーターの負担も軽減した。
なお、対象とした乗用車は国内の乗用車メーカーの諸元から以下を許
容範囲として想定した。
表 10-2
対象車両の車体諸元等の許容範囲
写真 10-5
二次試作機全景
牽引装置重量
バケット積載状況(非分割状態)
76
図 10-6 二次試作機製作図面
図 10-7 車両設置状況図
77
表 10-3 所用時間
車両の種類
乗用車
停止車両の状態
① 運転手無し
② キー無し
③ サイドブレーキ、
パーキング状態
④ タイヤ
(前1軸、後1軸)
移動手順等
① 荷下ろし
② フレームをバケットへ
取り付け
③ 部品取り付け
所用時間
2分
14分
(分解された状態の場合)
④ 移動車両前輪に固定
⑤ 後輪にドーリ-装着
8分
⑥ 前後へ移動
1分
車両移動時間合計
写真 10-6
25分
収納スペース
78
備 考
① 分解された状態でバケット
内に積み込んで現地組立
② 所用時間はオペレータ1人、
作業員3人で行った3回の
平均時間
③ 移動時間は20m程度直進
の場合
④ 乗用車2台目以降の移動は
装置取付済なので9分
写真 10-7
検証状況
①バケット積載状況(2分割状態)
②バケット取り付け部を固定
③分割部品(先端部)の組立
④牽引装置をバケットに固定
⑤装着完了状況
⑥車両取り付け状況
⑦車両移動状況
⑧検証状況
79
●検証結果(一次試作機との比較)
①人力設置が可能であることが確認出来た。
②車体下への挿入をやめたことにより車両への取り付けも容易になっ
た。
③分割式をやめたことにより仕組みが理解しやすく作業員の方も一度
練習すれば使えるほど単純化できた。
④ 作業時間はレッカー車と同等
⑤ 装置がコンパクトになり、保管スペースが小さい
⑥ バケットの剛性に頼り、また先端部の形状も幾つかあることから、
汎用性が完全とは言い切れない。
⑦ 2分割が求められるのであれば、ピンのテーパー化等それなりの構
造とすべき。
⑧ 外れ止めとしてのチェーンならばバケット裏から廻した方が良い。
⑨ 装着しやすいよう取り付け用の持ち手を付けると良い。
これらより、移動機材としての有用性は確認出来たので啓開計画には
要素技術として有用と思われる。ただし取り付けや作業性に関しては若
干検討の余地があることから、今後導入にあたっては⑥~⑨について継
続してユーザーの声を聞きつつ改良を行った後に機材を配備し活用が図
られることが望ましい。
80
(2)車両移動用ジャッキ
■一次試作機からの改善点
①キャスター径を小さくせず、フレームの形状を変えることによりタ
イヤにかけるローラー位置を下げた。
②キャスター取り付け部をスリム化した。
③キャスター材質をプラスチック化した。
写真 10-8
二次試作機全景
図 10-8 二次試作機製作図面
表 10-4 所用時間
車両の種類
乗用車
停止車両の状態
① 運転手無し
② キー無し
③ サイドブレーキ、
パーキング状態
④ タイヤ
(前1軸、後1軸)
移動手順等
① 車両移動用ジャッキを
タイヤに装着
② 人力で移動
所用時間
5分
5分
備 考
① 所用時間は作業員4人で行
った3回の平均時間
② 移動時間は20m程度直進
の場合
車両移動時間合計
81
10分
表 10-5 初動時の引張力
舗装種別
既製品
一次試作機
二次試作機
密粒アスファルト舗装
90~110kgf
(0.88~1.08kN)
100~120kgf
(0.98~1.17kN)
70~ 90kgf
(0.68~0.88kN)
排水性舗装
100~150kgf
(0.98~1.47kN)
130~200kgf
(1.27~1.96kN)
90~140kgf
(0.88~1.37kN)
写真 10-9
備 考
・普通乗用車
(車両重量1,200kg)
・最小値:キャスター順方向
・最大値:キャスター90°方向
引張力測定状況
写真 10-10 検証状況
●検証結果(一次試作機との比較)
①フレームを下げ、タイヤに掛けるローラー位置を下げた結果踏力が
減少したことにより、連続作業に耐えうると思われる。
②キャスター取り付け部がスリム化出来たことにより、ホイールハウ
ス内への機材の挿入性が向上した。
③ブレーキを足踏み式としたことでブレーキ力は劣るかもしれないが、
逸走防止用なら十分。
82
④キャスター材質をプラスチックとしたことにより初期可動性が向上
した。ただしアスファルトの凹凸を拾うため移動中の微振動は増加
した。また、コスト問題をクリアできれば硬質ウレタンでも良い。
⑤ 機材としての塗色も検討すべき。
⑥ 路上での作業性は向上したが、所用時間は従来と同等だった。
これらより、二次試作機は啓開計画に有用であると考えられることか
ら、機材を配備し活用が図られることが望ましい。
83
11.今後の課題
今回の開発検討に関し、車両移動用ジャッキは概ね実用性の目処が立ち、ホ
イールローダー用牽引装置では、取り付け用の持ち手を付けて運搬性・作業性
を向上させることにより、実用性が高まると思われる。これらより、研究会と
しては一定の成果を上げたといえる。
しかし、技術的な内容以外にも以下の課題があり、引き続き更なる改良を検
討するが必要がある。
課 題
1)本報告書で「開発が必要となった時には詳細に検討していく」とした機材
の開発
2)二次試作機の更なる改良
ホイールローダー用牽引装置
① 装着作業の簡略化(取り付け汎用性の確保)
② 軽量化
③ 分割構造是非による改良
④ ホイールローダーによる運搬(現場移動)時の収納等
⑤ 保管スペースの縮小
⑥ 対象車両の拡大(出来るかぎり)
車両移動用ジャッキ
① キャスターの制動性能向上(路面やタイヤ部との滑り抑制)
② 排水性舗装に対応したキャスターの円滑な回転確保(タイヤ材質の検討)
③ キャスターの回転性の確保と制動装置による制約の解消
上記の検討は、今後関東地方整備局が中心となり、必要に応じて研究会メン
バーの助言を得つつ進めて参ります。
84
12.おわりに
本研究会において、道路管理者としてやるべき事は何か、必要とされる機材
とは何かを考え、外部の有識者を交え2年にわたり道路啓開に使用できる機材
を検討し、提案がなされた。
ターゲットを首都直下地震とした場合ドライバー不在の車両移動となるが、
強引に車両を移動することが災害対策基本法の改正による道路管理者権限が強
化されたことより可能となった。しかし自動車はユーザーの大切な財産である
ため補償すれば許されるということで強引な車両移動が全てではないことから
検討を進めてきたが、技術的課題が残されている項目もあり、更に改良を行う
必要がある。また自動車はガソリン等の可燃性燃料を積んだ機材であり、ハイ
ブリッド車の普及により高電圧バッテリーを搭載した車両も多いことを考慮す
ると、車両を移動するにあたり作業員の安全確保も重要である。これらより研
究会としては作業スピードだけでなく、安全性も考慮しながら検討をすすめて
きた。
検討にあたっては車両移動のプロフェッショナルである全日本高速道路レッ
カー事業協同組合と一般社団法人日本自動車連盟より現場の知見や工夫・アイ
デア、そして安全作業について多くの意見をいただけたことが研究会の成果に
大きな効果を上げた。
6回に渡る本研究会において、「放置された車両等を効率よく移動する技術
的検討を行う」目的は達成できたと考えるが、前述のとおり二次試作機に課題
が残っていることや、今後新たな現場ニーズもあろうことから、今後も具体的
機材について開発を継続することが望まれる。
明日にも起こるとも限らない首都直下地震に備え、本研究会の検討成果及び
開発機械が道路管理者を始め啓開作業に携われる方に役に立つことを願ってや
まない。
85
資
料
86
編
<参考1>規約
道路啓開時における路上車両移動技術研究会
規 約
(名称)
第1条 本会は「道路啓開時における路上車両移動技術研究会」(以下「研究
会」という。)と称する。
(目的)
第2条 研究会は、首都直下地震が発生した場合、被災者の救命・救助を行う
ための道路啓開を速やかに展開するため、放置された車両等を効率よく
移動する技術的検討を行うものである。
(検討事項)
第3条 研究会は、前条の目的を達成するために以下の事項について検討を行
う。
・現状における車両移動機材・技術の実態調査
・被災状況を想定した既存車両移動機材・技術の被災状況に応じた適応
性の検討及び課題の整理
・課題を踏まえた新たな車両移動機材・技術の検討
・その他、必要な事項に関すること
(研究会)
第4条 研究会は別紙-1で構成される。
2 必要に応じ構成員の同意をもって、構成員を追加できるものとする。
3 研究会の構成員は、研究会において事務局が示した内容に対する見解を
述べるととともに、情報を提供する。
4 また、必要に応じ構成員の同意をもって、構成員以外の者に出席を求め、
意見を聞くことができるものとする。
(情報公開)
第5条 研究会は、成果を取りまとめた段階で速やかに公開するものとする。
(事務局)
第6条 研究会の事務局は、国土交通省関東地方整備局
道路部道路管理課に置く。
87
企画部施工企画課、
2
事務局は、研究会の運営に関して必要な事務を処理する。
(規約の改正)
第7条 この規約を改正する必要があると認められるときは、研究会で協議す
る。
(その他)
第8条 この規約に定めるもののほか、研究会の運営に関し必要な事項は、研
究会で協議する。
(附則)
第9条 この規約は、平成26年6月4日から施行する。(平成26年度)
第9条 この規約は、平成27年8月4日から施行する。(平成27年度)
88
別紙-1
「道路啓開時における路上車両移動技術研究会」の構成
【構成員】
◎:会長
◎関東地方整備局
関東地方整備局
関東地方整備局
関東地方整備局
関東地方整備局
関東地方整備局
関東地方整備局
企画部
企画部
企画部
企画部
道路部
道路部
道路部
関東地方整備局
関東地方整備局
防災対策技術分析官
防災対策官(平成26年度)
防災課長(平成27年度)
機械施工管理官
道路情報管理官
路政課長
道路管理課長
関東技術事務所
東京国道事務所
所長
所長
全日本高速道路レッカー事業協同組合
一般社団法人
一般社団法人
日本自動車連盟
国土交通省
国土交通省
東京支部
東京支部
東京支部
日本建設機械施工協会
車両製造メーカー
専務理事(平成26年度)
事務局(平成27年度)
ロードサービス隊
ロードサービス隊
ロードサービス隊
主管
杉並基地
足立基地
主任
主任
事務局長(平成26年度)
業務執行理事(平成27年度)
等
総合政策局
道路局
公共事業企画調整課
国道防災課
企画専門官(オブザーバー)
企画専門官(オブザーバー)
【事務局】
関東地方整備局 企画部施工企画課、道路部道路管理課
(注)構成員については、代理出席を認めるものとする。
また、必要に応じ構成員の同意をもって、構成員を追加できるものと
する。
89
<参考2>検
第1回
討
経
緯
平成26年 6月 4日
・道路啓開の具体的イメージと目標の共有化
第2回
平成26年 8月27日
・被災状況を想定した既存車両移動機材・技術の適応性の検討及び課題の
整理
現場検証
平成26年10月20日
・車両移動デモンストレーションと移動時間等の検証を実施
・研究会の構成員が、フォークリフトへ取り付ける新たなアタッチメント
を開発し、その実用性を検証
第3回
平成26年11月 7日
・課題を踏まえた新たな車両移動機材・技術の構想(案)の提示
第4回
平成26年12月19日
・現状の車両移動機材の改良や新たな車両移動機材・技術の提案
・車両移動機材・技術の改良・開発手法
・「道路啓開時における車両移動技術研究会」中間取りまとめ(原案)
第5回
平成27年8月4日
・中間報告より抽出した2機種の一次試作機の実動評価
第6回
平成27年12月10日
・二次試作機の実動評価
・最終報告取りまとめ(原案)
90
<参考3>レッカー車の保有台数
レッカー車の保有台数については、レッカー事業者に聞き取りで行った。
① (一)日本自動車連盟 レッカー車配備状況
車種
新潟
長野
茨城
栃木
群馬
埼玉
千葉
東京
神奈川
山梨
合計
バン型車
5
6
6
2
3
7
9
31
16
1
86
3
6
4
7
4
1
28
軽バン型車
3
レッカー車(小型)
7
10
18
13
12
30
31
32
40
6
199
車積載車
4
5
6
4
5
5
6
5
4
2
46
4
5
10
6
1
27
2輪用積載車
1
2輪車
1
91
1
② 全日本高速道路レッカー事業協同組合
92
レッカー車配備状況
③ (一)全国ロードサービス協会
レッカー車配備状況
93
<参考4>フォークリフトの保有台数
※●:(一)日本建設機械レンタル協会所属のフォークリフト専門レンタル会社 1 社の
所有台数
※●:全日本高速道路レッカー事業協同組合保有台数
94
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