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相補効果と相乗効果
第12回 相補効果と相乗効果 資源展開と相補・相乗効果 ❖事業間の「相補的」な結びつき(コンプリメント効果) ♦ 「1+1=2」 ♦ 有形(物的)資源の未利用部分の活用(Penrose, 195) ▸ 未利用部分の発生 ▹ ビジネス特性・不確実性 利用率(稼動率)の絶対量な不足 利用の時間的ムラ(季節循環,景気循環・・・) ❖事業間の「相乗的」な結びつき(シナジー効果) ♦ 「1+1>2」 ♦ 無形(情報)資源の同時多重利用性の活用 ▸ 技術シナジー:技術・生産能力の共有 ▸ 販売シナジー:ブランド,販売チャネルの支配力などの共有 ▸ 管理シナジー:戦略立案能力,プロジェクト管理能力の共有 2 資源展開と相補・相乗効果1 3 ❖「相補効果」に着目した新事業の開発 ♦ 季節のムラ ▸ スキー場の夏のレジャー客の集客 ♦ 時間帯のムラ ▸ ファミレスの朝の閑散時の集客 ▸ 大学の夏休みの施設開放 ♦ 好況・不況によるムラ 具体例は? ▸ 好況時(景気が良いとき)に売上が伸びる製品・サービス ▸ 不況時(景気が悪いとき)に売上が伸びる製品・サービス ♦ 円高・円安によるムラ ▸ 円高のときに売上が伸びる製品・サービス ▸ 円安のときに売上が伸びる製品・サービス ♦ その他 ▸ 商品配送後の回送トラックの有効利用 具体例は? 資源展開と相補・相乗効果2 ❖相乗効果」に着目した新事業の開発 ♦ 技術シナジー(技術ノウハウ) ▸ 複写機 → レーザープリンター (電子写真技術) ▸ 化粧品 → フロッピーディスク (ファンデーション技術) ♦ 市場シナジー(顧客基盤、販売チャネル) ▸ ガソリンスタンド → CVS (販売チャネル) ▸ レザープリンター → インクジェットプリンター (PC関連市場の顧客ニーズ) ♦ 戦略・管理シナジー(戦略・管理ノウハウ) ▸ 複写機トナー → BJPインクカートリッジ (消耗品ビジネスの戦略ノウハウ) ▸ 繊維事業 → スーパーマーケット事業 (女子パート労働者の管理ノウハウ) ▸ ユニクロの食品販売事業SKIP(生産→物流→販売までの一貫在庫管理ノウハウ) 4 ミスミの食材販売事業 ❖ミスミ ♦ 中小企業向け金型用部品・FA機器用部品の通信販売 ▸ カタログ販売・インターネット販売 ▸ 部品の標準化と、大量生産を通じたコストダウンと納期の短縮 小口・多頻度の受注・配送ノウハウ (一都三県なら深夜2時までの注文で翌日配送) ♦ 飲食店向け下処理済み食材販売事業の展開 ▸ 臭みを取るために下煮した牛モツ、アク抜きしたゴボウなど1000点 の品揃え+調味料や洗剤などの消耗品 ▸ 飲食店:材料の仕入れや仕込み時間の短縮+味付けの工夫による独 自の味の実現 5 豊田自動織機の物流ソリューション事業 ❖豊田自動織機 ♦ トヨタ自動車の源流 ♦ 自動車部門(トヨタ車の組み立て,エンジン生産) ♦ 産業車両部門(フォークリフトなどの生産) ♦ 物流ソリューション事業(第三の柱) ▸ 2001年、トヨタに委託していたフォークリフトの販売を自社で「製 販統合」、役員がスーパーや食品卸にトップセールス ▸ 逆に、それら流通系企業から物流効率化についての相談を持ちかけ られる(「トヨタ生産方式」への関心) ▸ 「フォークリフトを売るのでなく、物流を丸ごと引き受けるビジネ ス」 ▸ 単なる企画提案や物流の請負ではなく、自ら提案した物流システム を実践する中で起こる問題を見つけ出し、改善・進化させていく 「カイゼン」を売るビジネスの展開 ▸ 顧客の年間の物流コストの下げ幅に応じた報酬を取る成功報酬型の ビジネス 6 資源展開とシナジー 7 ❖既存の事業と関連のある事業への多角化(関連多 角化)している企業ほど、売上・利益ともに高い業 績を示す。 ❖同じ関連多角化でも、集約的な多角化のほうが、 売上・利益ともに高い業績を示す。 拡散型 集約型 シナジー追求の落とし穴 ❖シナジーの効果を過大に見積もりやすい ♦ シナジーの効果は、梃子となる資源以外の補完的な資源との組合せで 決まる ♦ 新しい製品・事業分野で必要となる補完的な資源の存在や利用可能性 を検討すべき ❖シナジーを狙った戦略が、シナジーの源になる資源に悪影 響を与えることがある ♦ 負のシナジー(「1+1<2」) cf. キャノンの初期のデジタルカメラ事業 ❖単体としては収益を生み出さない製品・事業が「他の製品 の役に立つ」という理由から増えやすい ♦ シナジーと収益性のバランス ♦ 内部化か他社との連携か 8 ダイナミック・シナジーの視点 9 ❖資源は事業活動のインプットであると同時に、ア ウトプットである。 経営資源 ・ヒト ・モノ ・カネ ・情報 管理ノウハウ 成果 事業活動(e.g. 製品開発プロセス) 技術知識 市場・顧客知識 事業活動は、成果を生み出すプロセスであると 同時に、学習のプロセスである! July 28, 2012