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http://www.cr-net.co.jp/ 企 業 3024 クリエイト 福 井 道 夫 (フクイ ミチオ) クリエイト株式会社社長 収益返済を主体とする有利子負債の減少で 企業体質強化 ◆会社プロフィール 当社は大阪に本社があり、現在グループ内従業員数は433名である。主な事業内容は、建物に使用する給水、 排水、空調関係の配管に使われる継手、パイプ、バルブといった管工機材の卸売である。取扱商品群を大きく 分けると、排水・汚水関連商品(構成比24.9%)、給湯・給水関連商品(同29.8%)、化成商品(同27.0%)、 その他商品(同18.3%)となる。排水関連商品に強いトップブランドを持つダイドレ㈱を傘下に持ち、その 総発売元として排水・汚水関連商品をベースに全国ナンバーワンの販売ネットワークを築き、給湯・給水関連 商品、化成商品事業などへと事業を拡大してきた。つまり排水・汚水関連商品以外の商品を扱うことによって 売上と利益の規模を拡大してきたとも言える。関連会社はダイドレ㈱のほか、クリット㈱、㈱ハイライト、ダ イドレ物流㈲、ダイポリシステム㈱がある。 当社の経営理念は「人と水との係わりを深め、より豊かな生活を創造する全国ネットワークの企業」である。 さらに社会的存在価値を追求するため、商社機能の追求、高付加価値商品の提供、創造性に基づく市場開拓、 能力主義の人材育成、環境への対応の5項目を掲げている。 当社の特長は3点ある。第1はジャストインタイムの顧客対応が可能なことである。全国37カ所の営業所に よる、地域に密着したきめ細かな営業体制を敷いており、併設ヤードに約3,000アイテムを常時ストックし即 日配送に対応している。このジャストインタイムの効果により業界の中でも高い利益率を維持している。第2 は専門商社としての豊富な品ぞろえと取扱量である。主要仕入先で構成する「クリエイト会」を通じて充実し た商品調達が可能であり、大量取り扱いによる原価率低減の仕組みを構築している。第3は自社ブランド「トー ロー印」の存在である。このブランドはダイドレ㈱の持つ排水関連商品の高い品質と業界最大の品目を有する 信頼のブランドである。この「トーロー印」がクリエイトグループの信頼性をより強固なものにしている。 ◆2008年度第2四半期業績の概要 2008年度第2四半期連結業績は、売上高125億34百万円(前年同期比4.5 %減)、営業利益59百万円(同 73.7%減)、経常利益1億32百万円(同51.1%減)、四半期純利益38百万円(同65.5%減)となった。売上高 減少の主な要因は、建築基準法改正に伴う新設住宅着工戸数の減少による排水・汚水関連商品の売上高の減少 である。排水・汚水関連商品の売上高は前年同期比6億26百万円の減少となった。売上原価は102億83百万円 (同3.5%減)である。今期上期は原材料価格が高騰し、仕入価格および子会社の製造原価が上昇した。その 結果売上総利益は22億51百万円(同8.6%減)となり、前年同期比も計画比もマイナスとなった。急激な仕入 価格の上昇により売値にヘッジできず、利益率が低下したことが大きな理由である。売上総利益の計画比マイ ナス分2億26百万円の内訳は、売上不足によるものが1億36百万円、売上総利益率が計画を下回ったことによ るものが90百万円である。一方販売費および一般管理費は21億91百万円となり計画比76百万円減、前年同期 比48百万円減となった。売上が厳しくなり、経費節減に努めた結果と言える。しかし経費は減少したものの、 売上総利益の減少が大きく、営業利益は計画比1億50百万円減、前年同期比1億65百万円減となった。営業外 収益では、前期に12百万円のデリバティブ評価損が出たのに対して、今期は32百万円のデリバティブ評価益 が出ている。しかし営業利益不足により、経常利益は計画比1億22百万円減、前年同期比1億38百万円減となっ た。特別利益39百万円は貸倒引当金の戻入と保険解約益の計上などによるものである。貸倒引当金が戻入で きたのはリスク管理に努めた結果と考えている。前期はこの数年の中でも不良債権の発生が少ない年であった が、今期も不良債権が1件も出ていない。特別損失は、投資有価証券評価損、役員退職金、保険解約損を計上 して48百万円となった。その結果、税引前四半期純利益は1億23百万円(計画比1億31百万円減)となっている。 連結貸借対照表で、棚卸資産が若干増加したのはタイミングの問題にすぎず大きな理由はない。支払手形お よび買掛金は売上高減少の影響により61億64百万円(前期末比4億22百万円減)となった。借入金は4億70 百万円増加し、このうち短期借入金が6億20百万円増加している。その分割引手形が減少している。 本著作物の著作権は、社団法人 日本証券アナリスト協会® に属します。 営業キャッシュフローはマイナス2億98百万円となった。主な要因は、売上債権の減少が10億56百万円、 割引手形の減少が8億9百万円、仕入債務の減少が4億22百万円である。財務キャッシュフローは4億51百万円 であり、短期借入金の増加6億20百万円が大きな理由である。投資キャッシュフローはマイナス59百万円と なっている。 当社の有利子負債は前期末比3億20百万円減少した。借入金が5億9百万円増加したものの、手形割引が8億 10百万円減少し、さらに手形売却が20百万円減少した結果である。当社は収益返済を主として有利子負債の 返済に充てる方針をとっており、今後もこの方針を継続していく。その結果当社の有利子負債は徐々に減少し ている。 ◆当社の経営環境と課題 建築基準法の改正により、2007年度の新設住宅着工戸数は全体で前年度比19.4%減、分譲マンションは同 34.0%減少した。その影響は今年9月あたりまで続いていた。さらに10月以降も減少しているのは、サブプラ イムローン問題による買い控えの影響が大きい。通常、新設住宅着工戸数が減れば、既存住宅のリフォームが 増えるが、株価が1万円を切る状況の中、リフォームも減少傾向にあり、われわれの業界は苦戦している。し かし昨今原材料価格や原油価格が猛烈な勢いで低下しており、舵取り次第では利益率の向上につながると考え ている。 住宅着工数の低迷および住宅価格上昇による買い控えの影響で、建設・不動産業者が相次いで破綻している。 さらに上期は原材料価格の高騰、商品仕入価格の相次ぐ値上げ、製造部門での原材料価格高騰による製造原価 率の上昇により、思うように販売価格に転嫁できず、利益率の低下につながった。管工機材市場全体の需要の 停滞と業界内の生き残り競争の激化で売上は伸び悩み、さらに仕入価格・製造原価の上昇を販売価格に転嫁す るまでにタイムラグが生じることから利益率は低下した。 これに対して当社は今期四つの取り組みを行ってきた。第1は営業所の新設・拡張である。営業所併設のス トックヤードを活用したスピーディーな営業体制を一層強化していく。ただし現在は設備投資を控えており、 次回の新設・拡張を検討している段階である。第2は商品ラインナップの充実である。福祉・介護関連用品を 取り扱う部署を設置したほか、自社企画商品の積極的な開発と販売を推進する。また仕入先組織「クリエイト会」 をここ2年間で33社から50社に拡大し、商品調達力の強化にも努めてきた。第3は販売体制の強化である。新 規取引先の開拓による市場シェアの拡大を図るほか、販売先組織「トーロー会」の拡大により安定した需要を 確保する。第4は利益体質の強化である。販売価格転嫁への迅速な対応により利益率の改善を図る一方で、市 場環境が業界に与える影響を配慮して与信管理を徹底していく。 ◆通期連結業績見通し 当社は今年9月に通期業績見通しを下方修正した。需要の低迷が長期化すると予想されることから、売上 高は当初計画比14億52百万円減の266億45百万円とした。それに合わせて営業利益は4億51百万円(当初計 画比2億77百万円減)、経常利益は5億86百万円(同2億26百万円減)、当期純利益は3億32百万円(同1億33 百万円減)とそれぞれ下方修正している。 売上原価は、仕入価格、製造原価上昇の影響により売上原価率が上昇するとみて217億27百万円(前期比 1.4%減)とした。ただしこれはあくまでも9月時点の予想であり、現在はやや情勢が変わり原価率が下がる 可能性も出てきたため、逆にプラス要因ととらえている。販売費および一般管理費は44億66百万円(同1.1% 増)を計画している。このうち人件費は、人材の確保と育成を図る必要性から25億55百万円(同1.9%増)を 見込んでいる。また賃貸料は、前期の営業所の開設、拡張による増加が通年に影響するとみて4億50百万円(同 4.9%増)とした。その結果営業利益は前期比32.0%減、経常利益は同8.3%減となる。法人税などを差し引き、 最終的な当期純利益は3億32百万円(同7.8%増)を計画している。 正直言って下期は先行き不透明である。しかし当社はキャッシュフローに基づく経営を行うことにより、こ の4 ∼ 5年の間に体力をつけてきた。当社の有利子負債は数年前と比較すると半減しており、体質が強化され ている。来期に向けてじっくりと構え、次期の企画に備えて無理をしない経営を行っていきたい。 (平成20年11月20日・大阪) (平成20年11月25日・東京) 本著作物の著作権は、社団法人 日本証券アナリスト協会® に属します。