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ローン償還タワー

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ローン償還タワー
19032001.pdf
http://www.shoei.co.jp/
企 業
3003
昭栄
渡 辺 憲 二
(ワタナベ ケンジ)
昭栄株式会社社長
目標達成に向けて
市場制約、資本制約、資金制約を打破
◆営業利益・経常利益共に大幅増加
2006年12月期の業績は、売上高242億56百万円(前期比45.6%増)、営業利益75億44百万円(同159.1%
増)、経常利益81億13百万円(同71.2%増)、当期純利益55億80百万円(同1.9%増)となった。事業別収益
では、営業利益・経常利益で3部門共に増益を確保し、3部門共に黒字となった。特に不動産事業部門の伸び
が大きく、経常利益・税引前利益で初めて有価証券事業部門を凌駕することができた。
連結貸借対照表については、総資産が前期末の1,945億円から2,533億円に増加した。SPC5件の連結化で
資産が309億円増加し、デットについてもノンリコースローンで285億円増加している。棚卸資産については、
資産の入れ替え方針を明確にし、売却予定の物件を棚卸資産に振り替えたため、116億円増加した。資本につ
いては、CBの転換が進まなかったこと、有価証券の含み益が減少して評価差額が減少したことにより、14億
円の増加にとどまっている。
SPCの連結化については、現在、会計基準委員会で、開示基準策定の段階となっている。当社としては、ノ
ンリコースローンや、倒産隔離の実態から、連結化には慎重に対応すべきであると考えていたが、監査法人か
ら「連結化が至当」との意見表明があり、協議を重ねた結果、連結化を決定した。連結化の影響としては、総
資産が309億37百万円増加したほか、売上が22億44百万円、営業利益が8億49百万円増加している。なお、
SPC連結によって期間収益は1億81百万円増加したが、繰延資産の一括費用処理を行った影響で、経常利益
は2億24百万円のマイナスとなった。
◆投資の累積効果、ファンド償還益等で不動産事業が増収増益
事業別の概況として、不動産事業は、売上高184億65百万円(前期比52億60百万円増)、営業利益72億12
百万円(同39億72百万円増)となった。投資の累積効果、不動産ファンド償還益、分譲竣工が寄与しており、
SPCの連結化も増収要因となっている。投資案件は、ふれあい横浜メディカルセンタービル、東横イン那覇
美栄橋駅、新宿アイランドタワー(一部所有)、桜新町ビル、アクアタウン納屋橋となっており、資産の入れ
替えで吉川ショッピングセンターを売却した。分譲については、ブリリアタワー東京、ランドール浅草が共に
完売となっている。不動産投資については、物件価格の高騰により、新規投資が2004年水準にペースダウン
した。中期経営計画の下限は確保したが、前倒し投資には至っていない。厳しい投資環境への対応として、オ
フィスビルについては、常にポートフォリオを意識して投資を行うことに加え、新規分野の開拓と開発案件の
強化を進めている。不動産賃貸の営業利益は、投資の累積効果により大幅に増加した。また、京浜地区の当社
所有物件が空室率ゼロとなり、賃料も緩やかながら着実に上昇していることも利益拡大の追い風となってい
る。
有価証券投資事業については、含み益が前期の542億21百万円から485億61百万円に減少し、運用利回り
が従来の5%水準から4%台に低下した。2006年度のマーケットは、特に後半、爬(は)行色の強い相場とな
り、ボラティリティが急速に下がるという厳しい状況となったが、運用収益の構成を見ると、配当が大幅に増
加している。また、さまざまな工夫により、プレミアム収益を中心に増強を図った。
電子機器・部品事業については、売上高が前期の27億32百万円から34億55百万円に増加、営業利益も13
百万円から1億26百万円に増加した。中国市場の急速な受注回復で、主力製品のPASキャパシタが好調に推移
したことが大きな要因である。事業再編の総仕上げとしては、富山昭栄を清算して昭栄エレクトロニクスに一
体化し、製品寿命を終えたプチキャップを終売した。また、ソフト開発部門を発注元に業務移管している。
環境事業については、新規事業の立ち上げ負担から、黒字ではあるものの減益となった。新規事業では、
RPF(廃プラスチック・古紙を原料とした固形燃料)の製造を開始した。燃料価格が高止まりする中、需要
は堅調に推移しているが、一方で原料確保の問題等があり、収益への貢献には至っていない。既存の事業は、
ほぼ前年並みで推移している。
本著作物の著作権は、社団法人 日本証券アナリスト協会 R に属します。
◆SPC連結化により、財務基準を見直し
当期は、SPCの連結化等で資産が大幅に増加したものの、資本の充実がスローペースとなった。また、純
利益がほぼ横ばいの中、今後の収益の増加も見据えて、1:1.1の株式分割を行った結果、EPSが若干低下し、
配当性向は26.4%となった。
調達については、当該物件担保によるファイナンスを基本としている。3年前からは、通常のコーポレート
ファイナンスに加え、SPCを使ったノンリコースローンの調達も積極的に活用してきたが、SPC連結化によ
り、財務方針を修正する必要が出てきた。従来は、自己資本比率の下限を25%、キャッシュフロー償還年数
を最長15年としてきたが、SPC連結化後の新たな基準は自己資本比率20%としている。なお、12月末の自己
資本比率は25.1%となっている。当期は、さまざまな指数が前期比で悪化しているが、有価証券についても、
保有不動産についても、時価ベースの評価で、担保使用額がほぼ半分の水準となっており、十分な担保余力が
あると考えている。
リスクキャピタルは、現在、630億円である。SPC連結化の影響で大幅に資産が増加したが、これはノン
リコースローンに見合う資産の増加であり、リスク量は不変である。また、バランスシート上の資本は636億
円となっており、実際の資本額とリスクキャピタルは、ほぼバランスが取れている。ただし、この資本には、
有価証券の評価差額等の変動要因があるため、ヘッジ比率を管理し、常にバランスが異常にならないように
チェックしながら運営している。
組織マネジメントとしては、創造的業務遂行と生産性向上につなげる仕事の革新を意識している。意思決定
力の強化として、会議を3 分類しており、フォワード・ルッキング会議では、常に仮説・検証・シミュレー
ションを繰り返し、先行きの収益期待値と最大損失を明確にした上で、意思決定を行っている。体制整備の面
でも、こうした仮説・検証を、ミドルマネジメントレベルで行う仕組みをつくり、これを支えるデータベース
のレベルアップも進めている。また、日本版SOX法に対応した業務マニュアルも作成中である。役員報酬制
度については、株主価値の持続的成長に資する役員報酬体系に改定した。
◆中期経営計画の目標達成に向けて
2007年度も不動産価格の上昇は続くとみているが、一方で、需給緩和への備えも必要であると考えている。
考えられるリスクとして、物件が払底して投資できないこと、投資チャンス到来時に動けないことが挙げられ
る。具体的には、優良物件、将来の収益基盤となる物件への着実な投資で安定成長を確保し、投資チャンス到
来時には、果断に投資を増加させ、高成長に挑戦していこうというものである。
2007年度は中期経営計画の最終年度で、当期純利益66億円、時価総額1,500億円を目標額に設定している。
連結の業績予想は、売上高400億円、経常利益85億円を見込んでいる。売上高については、資産入れ替え方針
を明確化し、地方物件の売却を進めることにより、大幅に増加する見込みである。当期純利益については、中
期経営計画の目標を達成できるとみている。
今期にやるべきことは、次期中計の策定および収益基盤拡大への布石である。次期中計については、より高
い収益目標を設定し、安定成長を確保した上で高成長へ挑戦していく。また、開発増による収益化の遅れに対
応するため、資産入れ替えを本格化し、ポートフォリオの最適化を目指していく。収益基盤拡大への布石とし
ては、親密先との連携により、開発案件への積極的な取り組みを進めていく。また、競争の少ない事業領域を
開拓や、SPC連結化の動きを投資機会として生かし、ファンドビジネスの拡充・強化を図っていく。
◆太陽誘電と昭栄エレクトロニクスの全株式譲渡を契約
事業別の計画として、不動産事業では、有力親密先との連携、投資会社としてのリスク評価能力といった強
みを生かして投資を展開していく。資産入れ替えについては、地方から首都圏、中古から新規を基本として、
最適ポートフォリオを構築し、売却候補は棚卸資産へ振り替えていく。有価証券投資事業については、残高の
積み上げではなく、運用利回りの向上で収益の増強を図る。オプション利用率を上げ、中長期投資について
は、目標株価に到達した時点で売却する。また、不動産事業の強化に資する投資を推進していく。
事業投資の電子機器・部品事業については、2月2日に太陽誘電と昭栄エレクトロニクスの全株式譲渡を契
約した。昭栄エレクトロニクスは、次期中計期間内でのIPOを展望していた。同社のPASキャパシタ製品群
の速やかな実用化を図るため、他社の買収等を模索したが、手ごろな先が見当たらなかった。そこで、有力な
先に事業を委ね、成長速度を加速させる形に発想を転換し、セラミックコンデンサ等、電子部品の優れた技術
本著作物の著作権は、社団法人 日本証券アナリスト協会 R に属します。
力で世界的にも定評のある太陽誘電に売却することとした。この売却益は、IPOに伴う株式売却益を、事実上
先取りするものだと考えている。環境事業のトスマク・アイは、新規事業としてRPF製造と食品残渣(ざん
さ)リサイクルを手掛けており、今期の課題は、新規事業の乗軌化および既存事業の再構築による安定的な事
業収益の積み上げである。
こうした計画の下、総力を挙げて中期経営計画の目標達成を目指していく。
(平成19年2月8日・東京)
本著作物の著作権は、社団法人 日本証券アナリスト協会 R に属します。
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