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2016年2月第2週号

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2016年2月第2週号
2016 年 2 月 第 2 週号
(原則、毎月第 2 週、4 週発行) 2015 年度 vol.21
< フォーカス>マイナス金利で広がる波紋
「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入に伴い、日銀は今後、「量」・「質」・「金利」の 3 つの次元
で、追加金融緩和を講じることができると謳っている。しかし、これを前向きな変更と受け止める向きは少数
派だろう。むしろ、日銀自身、量の拡大が限界に近づいていることを認めたとみる向きが大半とみられる。
足元では早くもマイナス金利の副作用が広がりつつある。とりあえず、各金融機関とも、マイナス金利へ
のシステム対応で大わらわである。また、安全資産のリターンの低下は、銀行をはじめ、金融機関の経営の
外的ショックへの脆弱性を高める。日銀はこれでポートフォリオリバランスを促すとしているが、世界金融市
場が不安定化するなかでは、過度なリスクテイクが余計経営を不安定化させるリスクの方が大きい。足元で
は、企業や個人の各種短期運用資金が銀行預金にシフトしているが、銀行のなかには、預り資産の一部に
新たな手数料を課そうとする動き等、今後の金利・手数料体系の地殻変動を予感させる動きが出てきてい
る。運用者の間では戸惑いが広がっており、新たなリスク回避のため、足元では多くの機関が後ろ向きなポ
ートフォリオリバランスの検討を余儀なくされている状況である。
マイナス金利は(量的緩和もそうだが)、本質的に金融機関の経営を犠牲にして景気を救おうという政策
である。日銀からすれば、「将来的に金利を上げるためにやるのだ」というところだろうが、当初の量的緩和
の開始からはや 15 年、いまだにそうした状況は訪れない。より大胆な手法をとっても、目立った景気・物価
の浮揚効果が出てこないのは、この 2 年半で証明されている。マイナス金利にしても、先んじて導入した欧
州各国の景気にさしたる成果は見えない。ゼロ金利到達後の金融政策の効果は、自国通貨安ルートに頼
るしかないというのが各国の経験則でもあるが、今回の場合はわずか 3 日で株価、為替とも緩和前の水準
に戻ってしまった。14 年 10 月の追加緩和(バズーカ第 2 弾)の際は、3 日で 5 円/ドル、最終的には約 10 円
/ドルの円安が進んだが、圧倒的物量で驚かすという単純明快さが失われただけに、期待に働きかけるとい
う面では、これまでの 2 度のバズーカに比し力不足だったことを示している。また、ドル円相場は、日銀よりも
米国の金融政策に左右される部分が結局のところはるかに大きく、米国の連続利上げ期待が急速に萎み
つつあることが、足元では強いドル売り圧力となっている。欧州も追加利下げに動いており、人民元もいず
れ元安容認に舵を切ってくる可能性が高いことを考えれば、日銀だけで円安に導くのは難しい状況である。
これほど大規模に金融政策を展開しても、効果が不十分ということであれば、そろそろ金融政策の限界を
認めて目標変更に踏み切るべきとも思うが、当然ながら黒田総裁が振り上げたこぶしを下ろすはずもなく、
先週の都内の講演では「2%の物価目標のためにできることは何でもやる」と、なお意気盛んである。一部
からは、マイナス金利の拡大が限界に達した後は、現金にマイナス金利などと言う声も飛び出しているが、
これ以上、日本経済をリフレ派の実験場にするのは勘弁してほしい気もする。(Kodama wrote)
目
<フォーカス>マイナス金利で広がる波紋・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
・経済情勢概況・・・・・・・‥・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
・前途多難なマイナス金利政策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
・前年比ゼロ近傍での推移が続く消費者物価・・・・・・・・・・・・・・・13
・伸び悩みが続く日本の輸出・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
次
・米国の設備投資は低調に推移・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19
・1 月 26-27 日開催の FOMC について・・・・・・・・・・・・・・・・ 22
・人民元は元安方向で推移・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29
・主要経済指標レビュー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・32
・日米欧マーケットの動向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38
経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
経済情勢概況 (※取り消し線は、前回から削除した箇所、下線は追加した箇所)
日
本
日本経済は、緩やかながら回復に向かいつつある。今後も、引き続き交易条件の改善が下支えす
るとみるものの、内外需ともけん引役不在のなか、景気の回復ペースは緩慢なものにとどまると予
想する。
個人消費は、回復ペースが鈍い。名目賃金に力強い伸びが期待できないものの、昨秋以降の原油
安に伴う家計の実質購買力の改善などから、今後も均せば緩やかな回復傾向で推移するとみる。
住宅投資の持ち直しペースは鈍い。今後も、需要先食いの影響がしばらく残るとみていることか
ら、一進一退の推移が続くと予想する。
設備投資は、更新・合理化投資が下支えとなるものの、製造業の能力増強投資の低迷が続くこと
で、今後も緩やかな回復にとどまるとみる。公共投資は、来年度予算がほぼ前年並みとなる見込み
のなか、一進一退の推移が続くとみている。
輸出は、伸び悩んでいる。今後も、米国向けの力強い回復が期待できないなか、中国景気の減速
の影響を受け、停滞気味の推移が続くと予想する。生産は、在庫調整局面が続いていることに加え、
輸出や個人消費の戻りの鈍さを背景に、回復ペースは緩やかとみている。
消費者物価(コア CPI)は、0%付近での推移が続いている。需要面からの押し上げ圧力が弱い
なか、物価の戻りのペースも鈍いとみられ、2016 年度もコア CPI は前年比+0.5%前後にとどまる
とみられることから、日銀が目標とする「20172016 年度前後半頃に 2%程度」の達成は難しいとみ
ている。
米
国
米経済は、きわめて緩慢緩やかな回復が続いている。新興国景気の減速などを背景に、当面は低
めの成長にとどまるに伴う景気への下押し圧力が続くとみるが、雇用環境が堅調に推移しているほ
か、ガソリン安によって家計の実質購買力が向上していることなどからを背景に、春以降は緩やか
な景気回復今後も景気の回復基調が続くと予想する。
個人消費は、実質所得が改善していることなどから、回復が続くと予想する。
住宅市場は、雇用環境の改善や低金利環境が続いていることなどから、持ち直し傾向で推移する
とみる。
設備投資は、エネルギー関連業種の業況が足かせとなり、当面停滞気味に推移するとみられる。
ただ、交易条件の改善が企業収益を下支えすることなどから、年央以降は徐々に回復に向かう資金
調達環境や交易条件の改善に支えられ、回復傾向で推移するとみるが、エネルギー関連業種の業況
が低調に推移していることもあり、回復ペースは緩慢なものにとどまると予想する。
輸出は、新興国景気の減速や、ドル高が抑制要因となることから、軟調な推移が続くとみる。
FRB は 2015 年 12 月の FOMC で、FF レートの誘導目標レンジを 0-0.25%から、0.25-0.5%へと
引き上げた。賃金の回復には力強さが欠けることなどから、インフレ圧力が強まるまでにはしばら
く時間がかかるとみており、2016 年の利上げ回数は 2 回程度と予想する。
欧
州
ユーロ圏経済は緩やかな回復傾向が続いている。新興国の景気減速を受け、輸出は伸び悩みが続
くとみるが、原油価格の下落が家計の実質購買力向上につながるとみられることなどから、ユーロ
圏景気は個人消費がけん引役となって、今後も緩やかな持ち直しが続くと予想する。
個人消費は、ドイツやスペインを中心に雇用環境の回復が続くと見込まれるのに加え、銀行貸出
態度の緩和などを背景に、家計の資金繰りも改善傾向にあることなどから、底堅く推移するとみる。
固定投資は、緩和的な金融環境などが下支えになるとみるが、企業の期待成長率が低迷している
ことなどから、引き続き緩慢な回復にとどまると予想する。
ECB は 2015 年 12 月の理事会で、中銀預金金利を▲0.2%から▲0.3%まで引き下げたほか、資産
買入れ策の実施期間を 6 ヵ月間延長し、2017 年 3 月末までとした。原油価格が軟調に推移するな
か、ECB は 3 月の政策理事会で金融政策のスタンスを見直す方針を示しており、次回 3 月の理事会
では、中銀預金金利の引下げなどの追加金融緩和に踏み切ると予想する。
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経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
前途多難なマイナス金利政策
緩和は予想どおりだが、意外だったマイナス金利
日銀は、1 月 28,29 日に開催された日銀金融政策決定会合において、マイナス金利の導入を決定
した。今回の会合での追加緩和は、筆者のかねてよりの予想どおりだが(昨年 7 月以降同じ予想を
維持)、マイナス金利については、黒田総裁が定例会見で、「考えていないし、近い将来に考えが
変わる可能性もない」とまで言い切っていただけに、かなり意外感があった。黒田総裁のことなの
で、追加緩和に踏み切るからには、市場を驚かせる仕掛けは必ず用意すると考えていたが、筆者は
あくまで量で勝負するのではないかと読んでいた。結果としては、スキームで 驚か せた 形で あ る。
なぜ今回動いたか
今回の会合で日銀が追加緩和に踏み切った背景には、年明け以降の世界の金融市場の混乱に伴い、
自らが追加緩和を「見送るリスク」に配慮せざるを得なかったことがあるとみている。BOJ ウォッ
チャーの間では、事前に追加緩和を見込む声は 2 割もなかったが、市場ではそれなりに期待感が広
がっており、筆者は、もし日銀が追加緩和を見送った場合、為替相場は 115 円/ドルを突破し、株
価は 16,000 円を目指す可能性が高いとみていた。特に為替相場は、ゼロ金利に到達して以降、15
年にわたり日銀にとっての「陰の」政策変数となっている。加えて、新年からは決定会合が年 14
回から年 8 回に減少するため、今回動かない場合は 3 月中旬まで待つ必要があり、その間に市場が
荒れる展開への不安が大きかったのではないか。もちろん臨時会合を開くのは可能だが、そんな状
況に追い込まれたら赤恥である。ECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁の緩和示唆発言で、市場が落
ち着きを見せていたため、日銀は動く必要はないとの見方もあったが、市場が悲観一色に染まった
時よりも、安定の気配が出てきた段階の方が、追加緩和が相場を押し上げる力は大きい。筆者は日
銀にとって逆にチャンスが広がったとみていた。
もちろん、金融市場の問題だけではなく、春闘の要求水準が昨年を下回ったことで、すでに「16
年度後半頃」の物価目標の先送りは不可避な状況となっていた。目下の政策変数である「物価の基
調」の要素のひとつでもある、家計・企業のインフレ期待の低下も明らかになっており、動く条件
は整っていた。
マイナス金利のスキーム
(図表 1)マイナス金利政策のスキーム
日銀当座預金を 3 段階の階層構造とし、今後、
金融機関が新たに積み増す当座預金に、2 月から
▲ 0.1%の 金利を適用 する。具 体的には 、以下 の
日銀当座預金残高
▲0.1%
方法で分割し、それぞれの階層に応じてプラス金
利、ゼロ金利、マイナス金利を適用する(図表 1)。
政策金利残高
マクロ加算残高
0%
( 1)基礎 残高… …+0.1%を適 用(既往 の残
高、2015 年 1 月~12 月の
平均残高)
(2)マクロ加算残高……ゼロ%を適用(所要
準備額+貸出支援金・被災
地金融機関支援オペ相当
3
基礎残高
+0.1%
経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
額+マクロ的加算額((1)×掛目)
(3)(1)と(2)を上回る部分……▲0.1%を適用
このように、3 段階で金利を変えるという、かなり
マニアックなスキームである。日銀当座預金の既往
残高の部分は 0.1%の付利を残すとのことで、マイナ
ス金利を導入するのは、当座預金のうち、今後の国
兆円
350
現金流通高
300
日銀当座預金
250
200
債買いオペで積み上がる部分にほぼ限定される(70
150
兆円前後?)。マイナス金利を適用する部分は、上
100
記(2)の「掛目」の水準にも左右されるが、当初は
とりあえずゼロとのことである。今後、マイナス金
利の副作用を見極めながら、必要に応じ適宜拡大し
て、市場へのショックを和らげる目的だろう。
筆 者が マイ ナス 金利 はな いと 予想 して いた 大き な
(図表2)日銀のマネタリーベースの推移
400
50
0
12年度末
13年度末
14年度末
15年度末
(出所)日銀
(図表3)マイナス金利で期待される波及効果
理由のひとつは、足元で 260 兆円弱(15 暦年の平残
では約 220 兆円、主要準備含む)もの規模に達してい
日銀当預に
マイナス金利
る 当座 預金 の利 息を プラス から いき なり マイ ナス に
転じるのは、金融機関の経営への打撃が大きすぎると
いうものだったが、そうした部分には配慮がなされて
いるようだ。これまで付利と引き換えに、当座預金へ
80兆円の積み増し
目標は変わらず
の積み増しをいわば「勧奨」するのが量的・質的緩和
のポイントのひとつであったことを考えれば、既往残
高へのマイナス金利適用はだまし討ちに等しく、日銀
にとっても、そうした信義にもとる政策は打てるもの
ではない。
マイナス金利でも銀行が鞘を抜ける水準
(より大きなマイナス金利=高価格)で日銀
が国債を買い入れる必要
期待される効果は何か
今後、日銀の国債買いオペで新たに積み上がる部分
はマイナス金利となるが、80 兆円というマネタリー
国債金利の低下
ベースの積増し目標に変更はないことから、オペの札
割れ頻発を避けるためには、マイナスで当座預金に積
んでも金融機関が利鞘を得られる価格で国債を購入、
す なわ ちよ り大 きな マイナ ス金 利で 国債 を購 入す る
貸出増
円安
必要がある。民間銀行が、日銀当座預金から引き出し
て現金のまま手元に置けば日銀当座預金は減るが(マ
ネタリーベースは変わらない)、今回、日銀は現金保
有増に見合う部分はマイナス金利を適用するという、
景気回復
現金シフトの防止策を打ち出している。したがって、
今後長短金利には一段の下押し圧力がかかる。これが貸出金利の低下を通じ貸出し増につながる、
あるいは為替相場で円安を通じ景気回復につながると言うのが期待されるルートである。もっとも、
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2016 年 2 月第 2 週号
これまでの諸外国の例をみても、期待されるのはもっぱら為替ルートであり、したがって円安トレ
ンドの持続性が大きなポイントとなる。
公表文をみても、「日本銀行当座預金金利をマイナス化することでイールドカーブの起点を引き
下げ、大規模な長期国債買入れとあわせて、金利全般により強い下押し圧力を加えていく」とされ
ており、緩和効果の重心を、これまでの期待の転換ルートから、金利ルートに移している様子がう
かがえる。ただ、石田委員の反対理由のとおりで、これ以上の追加的なイールドカーブの低下が実
体経済に大きな効果をもたらすとは考えられない。市場金利のマイナスは基本的にありえない。長
短金利ともおしなべて 0%に接近していることを考えれば、名目金利の低下余地は限られている。
インフレ期待が上昇すれば実質金利は下がるが、これまでの 2 回の「バズーカ」同様、そのトラン
スミッションメカニズムは依然として不明確である。
今回の措置はいかにもマニアックな枠組みで、黒田緩和の売りであった、「圧倒的物量で驚かす」
わかりやすさが消えてしまったため、過去 2 回の「バズーカ」に比べるとインパクト不足は否めな
い。そのため、生命線である「期待の転換に働きかける効果」の持続性には疑問符がつく。QQE 下
で、企業や家計のインフレ期待が顕著に上昇してきた実績がないことを考えれば、今度こそインフ
レ期待が上昇につながると考える根拠はない。
日銀によれば、今後は、「量」・「質」・「金利」の 3 つの次元で、追加的な金融緩和措置を講
じることができるとの触れ込みだが、国債の購入に限界がないと本当に考えているのであれば、素
直に大規模な国債買い増しを発表したほうが市場へのインパクトは大きかったはずで、今回の政策
転換は、追加的な国債購入が限界に近づいていることを日銀自身も認識していることを示唆してい
る。
マイナス金利の拡大にはおのずから限度があり、量的拡大も限界が近づいていることを考えれば、
資産価格への影響も前回の追加緩和時ほど大きなものにはならない可能性が高い。現に、ドル・円
相場と株価は、わずか 3 日で追加緩和前の状態に戻ってしまった。今回の措置で、QQE は延命に成
功したと言えるが、一方で「QQE の終わりのはじまり」を想起させる政策変更ともいえる。
再浮上したコミュニケーション問題
今回の追加緩和は、日銀の市場とのコミュニケーションという意味では大きな禍根を残した。筆
者が今回の会合で追加緩和との予想を最後まで変えなかった背景には、黒田総裁が、昨年 10 月の
展望レポート前とは異なり、「必要ならば追加緩和も辞さず」との情報発信を繰り返していたこと
を考慮したことがある。しかし、「考えていないし、近い将来考えが変わる可能性もない」とまで
言い切っていたマイナス金利を導入するとは思わなかった。
「解散と公定歩合は嘘をついても良い」というのは昔の格言?であり、今では、そうしたコミュ
ニケーションスタイルをとる中央銀行は、少なくとも先進国の中ではない。筆者は、14 年 10 月に
「バズーカ第二弾」に踏み切って以降の黒田総裁の姿勢から、市場とのコミュニケーションの立て
直しを図っている印象を感じ取っていた(間違いだったが)。14 年 10 月の際は、直前まで追加緩
和は不要とのメッセージを発信しながら、市場を出し抜く形で追加緩和に踏み切り、サプライズを
与えることには成功したものの、発言の信頼性は大いに失われた。当時は、10 月 28 日の参議院財
政金融委員会において、「物価は順調に目標に向かって進んでいる」と証言したわずか 3 日後に追
加緩和に踏み切ったため、後日議員から、「国会に遊びに来てもらっているわけではない」と指弾
されるという一幕もあった。こうした経緯もあり、さらに 15 年 10 月の際は、同じく追加緩和は不
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経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
要とのメッセージを送り続け、市場の根強い緩和観測にもかかわらず動かなかったことから、「市
場の期待をわざと逆の方に振っておいてサプライズを狙う」というような手法はもう取らないもの
と考えていた。
定例会見では当然ながら、市場とのコミュニケーションの問題を問う質問が複数出されたが、黒
田総裁は、
「 事務方への検討の指示を踏まえて、オプションを具体的に示してきたということです。
そうした具体案を基に、今日、金融政策決定会合において、経済・金融等に関する情勢判断と政策
についての討議を行って決定したものです 」、「 金融政策決定会合毎に,それまでの経済・物価情
勢あるいは金融動向というものを十分議論して、そこで次回の会合までの金融政策について調整す
る必要があるかどうかを議論するという点は全く変わっていません 」などと述べている。そうであ
れば、マイナス金利についても、「将来の政策オプションはその時の経済状況次第であり、現時点
ではお答えできない」と述べておけば良かったのであり、「近い将来考えが変わる可能性もない」
とまで言い切る必要はない。これではただの嘘つきと言われても仕方がない。市場はもはや黒田総
裁の発言を信じない。やはり黒田日銀は、市場とのコミュニケーションを無視する中央銀行だった
ようだ。
物価目標は再度先送り
会合後の公表文では、「緩やかな回復を続けている」との基調判断が 10 ヵ月連続で維持された
(図表 4)。票決は 5:4 の僅差だったことが明らかになっており、追加緩和を決定する際は、今後
も薄氷の票決となる可能性が高まっている。
(図表 4)金融政策決定会合後の声明文における景気の現状判断の変化
声明文の発表日
14 年 1 月 22 日
2 月 18 日
3 月 11 日
4月8日
4 月 30 日
5 月 21 日
6 月 13 日
7 月 15 日
8月8日
9月4日
10 月 7 日
10 月 31 日
11 月 20 日
12 月 19 日
15 年 1 月 21 日
2 月 18 日
3 月 17 日
4月8日
4 月 30 日
5 月 22 日
現状判断
緩やかに回復している
緩やかに回復している
緩やかに回復している
基調的には緩やかな回復を続けている
基調的には緩やかな回復を続けている
基調的には緩やかな回復を続けている
基調的には緩やかな回復を続けている
基調的には緩やかな回復を続けている
基調的には緩やかな回復を続けている
基調的には緩やかな回復を続けている
基調的には緩やかな回復を続けている
基調的には緩やかな回復を続けている
基調的には緩やかな回復を続けている
基調的には緩やかな回復を続けている
基調的には緩やかな回復を続けている
緩やかな回復基調を続けている
緩やかな回復基調を続けている
緩やかな回復基調を続けている
緩やかな回復基調を続けている
緩やかな回復を続けている
6 月 19 日
7 月 15 日
8月7日
9 月 15 日
10 月 7 日
10 月 30 日
緩やかな回復を続けている
緩やかな回復を続けている
緩やかな回復を続けている
緩やかな回復を続けている
緩やかな回復を続けている
緩やかな回復を続けている
方向性
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
↑
→
→
→
→
→
→
6
備
考
消費増税に合わせた変更
小幅上方修正との解釈も可能
明白な上方修正は、一昨年の 9
月以来
経済ウォッチ
11 月 19 日
12 月 18 日
16 年 1 月 29 日
2016 年 2 月第 2 週号
緩やかな回復を続けている
緩やかな回復を続けている
緩やかな回復を続けている
→
→
→
(出所)日銀
展 望レポー トの見 通しに つ
(図表5)展望レポート、中間評価における見通し(政策委員の大勢見通しの中央値)
いては(今年から年 4 回となり、
金融経 済月報は展望レ ポート
前年比(%)
に吸収)、10 月の展望レポー
2015年度 実質GDP
トとの比較で、16 年度のコア
CPI を 1.4%から 0.8%へと大
幅下方修正したのが目立つ(図
表 5)。これに伴い、「16 年度
15年4月 15年7月中 15年10月 16年1月展
展望レポート 間評価
展望レポート 望レポート
コアCPI
2016年度 実質GDP
コアCPI
2017年度 実質GDP
コアCPI
当社見通し(1
月展望レポー
トの予想)
2.0
1.7
1.2
1.1
1.2
0.8
0.7
0.1
0.1
0.1
1.5
1.5
1.4
1.5
1.3
2.0
1.9
1.4
0.8
1.0
0.2
0.2
0.3
0.3
0.4
1.9
1.8
1.8
1.8
1.9
※CPIは消費増税の影響を除いたケース
後半ごろ」としていた物価目標
(出所)日本銀行より明治安田生命作成
の達成時期は、「2017 年度前
半ごろ」まで半年先延ばしされた、わずか 3 ヵ月での再延長となる(図表 7)。量的・質的緩和の
開始から 4 年が経過する計算になるが、これでもまだ「2 年程度」とのスタンスは変えないという
ことなのだろうか。10 月末の定例会見で黒田総裁は、「『2 年程度』という表現は、物価安定目標
の実現に関するこのコミットメントにおいて、『できるだけ早期に』という際に念頭に置いている
期間を示したものです。実際の目標達成時期は原油価格の動向などによりある程度前後するわけで
すが、だからといって、「念頭に置いている期間」を変える必要があるとは考えていません 」と述
べている。しかし、とうにすぎた期限を「変わらない」と言い張るのはやはり無理がある。物価目
標早期達成へのコミットメントが揺らいだと受け取られるのを警戒しているのだろうが、黒田総裁
の言う「2 年程度」とはいったい何年目まで入るのかという話で、結局は、目標変更を明確に宣言
しないまま、達成期限を自ら形骸化させつつあるのが実態である。日銀の政策は事実上、フレキシ
ブル・インフレターゲティングにシフトしている。目標達成の期限を区切る手法は、できなかった
ときに説明がつかなくなるという点で、方法論としてやはり無理があったということである。岩田
副総裁が就任時に述べていた「辞任」は、実際にはできる相談ではない。
意外に近いバズーカ第 4 弾
今回の公表文、および黒田総裁の会見では、足元の「物価の基調」はあくまで堅調だが、原油価
格下落と金融市場の混乱の影響で、企業コンフィデンスの改善や人々のデフレマインドの転換が遅
延し、物価の基調に悪影響が及ぶリスクが増大しているため、これを未然に防ぐため追加緩和に踏
み切ったという立てつけになっている(図表 6)。
そうなると、もし未然防止に失敗し、物価の基調の下振れが明確になってしまったら、再度追加
緩和せざるをえないということになるのではないか。物価の基調は、企業や家計のインフレ予想や
価格設定行動、各種物価指数などから総合的に判断するとのことなので、特定の指標の小幅の変化
であれば「物価の基調は堅調」と強弁し続けることも可能である。しかし、下方トレンドが数多く
の指標に広がってくるようだと苦しい。短観の物価見通しの概要を見ても、ここ半年の企業のイン
フレ期待の下振れ傾向は明らかで、同じく日銀の「生活意識に関するアンケート調査」や内閣府の
消費動向調査からは、家計のインフレ期待の下振れも確認できる。「物価の基調は堅調」とする黒
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経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
田総裁の説明は苦しさを増しつつある。
今後は、食料・エネルギー除く総合(コアコア指数)、生鮮食品・エネルギー除く総合(新型コ
ア指数)など、「物価の基調」を示すハードデータの動きが焦点となる。今のところ、両指標の動
きは堅調だが、一昨年 10 月の追加緩和時に進んだ円安に伴う、コストプッシュ的な上昇という側
面が大きい。当社の試算では、円安の効果はすでにはく落しつつあり、今後は「物価の基調」も徐々
に変調をきたす可能性が高い。4 月の展望レポートは乗り切れても、7 月は再び正念場ということ
になるのではないか。
市場では、今後は QQE 延命のため、量の拡大はなるべく抑え、マイナス金利との合わせ技で勝負、
基本的にはマイナス金利の拡大をメインに据えていく可能性が取り沙汰されている。欧州の例を見
ても、1%強くらいまでは拡大余地があるとの見方が多いが、国債市場が果たしてどの程度のマイ
ナス金利を許容できるのか、実務上の不透明感も大きく、マイナス金利幅の拡大は手探りで進めて
いかざるをえない。足元の状況を見ても、MMF はすでに機能停止に追い込まれつつあるほか、生保
等の手元資金もコールから銀行預金にシフトすることが予想されている。銀行が莫大な普通預金を
抱え込むことが実務面、運用面から可能なのかといった問題のほか、他にも、金融機関の経営に予
期せぬ副作用が広がる恐れも小さくない。1 回の金融緩和で大胆なマイナス金利幅の拡大を行なう
ことはできず、次第に「バズーカ」とは呼べない規模にならざるを得なくなっていくだろう。次回、
市場を驚かすとしたら、再び量に回帰するしかないように思うが、果たしてどうか。(担当:小玉)
(図表 6)会合後の公表文の前回との比較
※下線部は主たる変更箇所
2015/12/18
2016/1/29
1. 日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合
において、次回金融政策決定会合までの金融市場調
節方針を、以下のとおりとすることを決定した(賛
成8反対1)。
1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合
において、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早
期に実現するため、「マイナス金利付き量的・質的金
融緩和」を導入することを決定した。今後は、「量」・
「質」・「金利」の3つの次元で緩和手段を駆使して、
金融緩和を進めていくこととする。
2.マネタリーベースが、年間約80兆円に相当するペ
ースで増加するよう金融市場調節を行う。
(1)「金利」:マイナス金利の導入(賛成5反対4)
金融機関が保有する日本銀行当座預金に▲0.1%
のマイナス金利を適用する。今後、必要な場合、さ
らに金利を引き下げる。
具体的には、日本銀行当座預金を 3 段階の階層構
造に分割し、それぞれの階層 に応じてプラス金利、
ゼロ金利、マイナス金利を適用する。
貸出支援基金、被災地金融機関支援オペおよび共
通担保資金供給は、ゼロ金利 で実施する。
3.資産の買入れについては、以下の方針とする(賛成
6反対3)。
①長期国債について、保有残高が年間約80兆円に相
当するペースで増加するよう買入れを行う。ただ
し、イールドカーブ全体の金利低下を促す観点か
ら、金融市場の状況に応じて柔軟に運営する。買入
れの平均残存期間は、本年中は7年~10年程度、
来年からは7年~12年程度とする。
②ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、
それぞれ年間約3兆円、年間約900億円に相当す
るペースで増加するよう買入れを行う。
③CP等、社債等について、それぞれ約 2.2 兆円、約
3.2 兆円の残高を維持する。
(2)「量」:金融市場調節方針(賛成8反対1)
次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針
は、以下のとおりとする。 マネタリーベースが、
年間約 80 兆円に相当するペースで増加するよう金
融市場調節を行う。
(3)「質」:資産買入れ方針(賛成8反対1) 資
産の買入れについては、以下のとおりとする。
①長期国債について、保有残高が年間約 80 兆円に
8
経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
相当するペースで増加するよう買入れを行う。
ただし、イールドカーブ全体の金利低下を促す
観点 から、金融市場の状況に応じて柔軟に運営
する。買入れの平均残存期間は 7 年~12 年程度
とする。
②ETFおよびJ-REITについて、保有残高
が、それぞれ年間約 3 兆円、年間約 900 億円に
相当するペースで増加するよう買入れを行う。
③CP等、社債等について、それぞれ約 2.2 兆円、
約 3.2 兆円の残高を維持 する。
(4)「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の継
続
日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現
を目指し、これを安定的に持続するために必要な
時点まで、「マイナス金利付き量的・質的金融緩
和」を継続する。今後とも、経済・物価のリスク
要因を点検し、「物価安定の目標」の実現のため
に必要な場合には、「量」・「質」・「金利」の
3つの次元で、追加的な金融緩和措置を講じる。
<筆者コメント>
・マイナス金利を導入
3.わが国の景気は、輸出・生産面に新興国経済の減速 2.わが国の景気は、企業部門・家計部門ともに所得か
の影響がみられるものの、緩やかな回復を続けている。 ら支出への前向きの循環メカニズムが作用するもと
海外経済は、新興国が減速しているが、先進国を中心
で、緩やかな回復を続けており、物価の基調は着実に
とした緩やかな成長が続いている。そうしたもとで、
高まっている。もっとも、このところ、原油価格の一
輸出は、一部に鈍さを残しつつも、持ち直している。
段の下落に加え、中国をはじめとする新興国・資源国
国内需要の面では、設備投資は、企業収益が明確な改
経済に対する先行き不透明感などから、金融市場は世
善を続けるなかで、緩やかな増加基調にある。また、
界的に不安定な動きとなっている。このため、企業コ
雇用・所得環境の着実な改善を背景に、個人消費は底
ンフィデンスの改善や人々のデフレマインドの転換が
堅く推移しているほか、住宅投資も持ち直している。
遅延し、物価の基調に悪影響が及ぶリスクが増大して
公共投資は、高水準ながら緩やかな減少傾向にある。
いる。
鉱工業生産は、横ばい圏内の動きが続いている。この
間、企業の業況感は、一部にやや慎重な動きもみられ
るが、総じて良好な水準を維持している。わが国の金
融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者
物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%程度となって
いる。予想物価上昇率は、このところ弱めの指標もみ
られているが、やや長い目でみれば、全体として上昇
しているとみられる。
4.先行きのわが国経済については、緩やかな回復を続
けていくとみられる。消費者物価の前年比は、エネル
ギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移すると
みられる。
5.リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、
欧州における債務問題の展開や景気・物価のモメンタ
ム、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。
<筆者コメント>
・景気の現状判断は、「緩やかな回復を続けている」で変更なし
・物価の基調も着実に高まっているとの認識で変更ないが、原油価格の下落と、新興国・資源国経済への懸念で
世界の金融市場が不安定化していることで、「物価の基調が下振れするリスクが増大」しているとの認識
6.「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮してお
り、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を
目指し、これを安定的に持続するために必要な時点ま
で、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経
3.日本銀行は、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、
2%の「物価安定の目標」 に向けたモメンタムを維持
するため、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」
を導入することとした。日本銀行当座預金金利をマイ
9
経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検
し、必要な調整を行う。
ナス化することでイールドカーブの起点を引き下げ、
大規模な長期国債買入れとあわせて、金利全般により
強い下押し圧力を加えていく。また、この枠組みは、
従来の「量」と「質」に「マイナス 金利」を加えた3
つの次元で、追加的な緩和が可能なスキームである。
日本銀行は、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」
のもと、2%の「物価安定の目標」の早期実現を図る。
7.こうした方針に沿って「量的・質的金融緩和」を推
進していくに当たっては、国債市場の動向や金融機関
の保有資産の状況などを踏まえ、より円滑にイールド
カーブ全体の金利低下を促していくことが適当であ
る。また、「量的・質的金融緩和」のもとで企業や家
計のデフレマインドは転換してきており、設備・人材
投資に積極的に取り組んでいる企業も多いが、そうし
た動きがさらに広がっていくことが期待される。こう
した観点に立って、日本銀行は、「量的・質的金融緩
和」を補完するための諸措置を決定した。
<筆者コメント>
・「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」は、「金利全般により強い下押し圧力を加えていく」のが主目的と
の説明
・従来の「量」と「質」に「マイナス金利」を加えた3つの次元で、追加的な緩和が可能なスキームとの説明
(図表7)展望レポートの概要
(前回10月との比較、下線部は主たる変更箇所)
1.わが国の経済・物価の中心的な見通し
(1)経済情勢
現状判断
先行き見通し
経済見 通しの
背景に ある前
提
直近の 中間評
価との比較
前回(2015/10/30)
わが国の景気は、輸出・生産面に新興国経済
の減速の影響がみられるものの、緩やかな回復
を続けている。
2015年度から2016年度にかけて潜在成長率
を上回る成長を続けると予想される。2017年度
にかけては、消費税率引き上げ前の駆け込み需
要とその反動などの影響を受けるとともに、景
気の循環的な動きを映じて、潜在成長率を幾分
下回る程度に減速しつつも、プラス成長を維持
すると予想される。
①金融環境は緩和した状態が続く
②海外経済が緩やかに成長率を高めていく
③公共投資は緩やかな減少傾向をたどった後、
見通し期間の終盤には下げ止まる
④企業や家計の中長期的な成長期待は緩やか
に高まっていく
7月の中間評価時点と比べると、2015年度に
ついて、新興国経済の減速を背景とした輸出の
もたつきや天候不順の影響などによる個人消
費の鈍さから下振れているものの、2016年度と
2017年度については概ね不変である。
今回(2016/1/29)
わが国の景気は、輸出・生産面に新興国経済
の減速の影響がみられるものの、緩やかな回復
を続けている。
2015年度から2016年度にかけて潜在成長率
を上回る成長を続けると予想される。2017年度
にかけては、消費税率引き上げ前の駆け込み需
要とその反動などの影響を受けるとともに、景
気の循環的な動きを映じて、潜在成長率を幾分
下回る程度に減速しつつも、プラス成長を維持
すると予想される。
①金融環境は緩和した状態が続く
②海外経済が緩やかに成長率を高めていく
③公共投資は緩やかな減少傾向をたどった後、
見通し期間の終盤には下げ止まる
④企業や家計の中長期的な成長期待は緩やか
に高まっていく
今回の見通しを従来の見通しと比べると、概
ね不変である。
前回(2015/10/30)
当面0%程度で推移するとみられるが、物価
の基調が着実に高まり、原油価格下落の影響が
剥落するに伴って、「物価安定の目標」である
2 %に向けて上昇率を高めていくと考えられ
る。2%程度に達する時期は、原油価格の動向
によって左右されるが、同価格が現状程度の水
今回(2016/1/29)
エネルギー価格下落の影響から、当面0%程
度で推移するとみられるが、物価の基調は着実
に高まり、2%に向けて上昇率を高めていくと
考えられる。この間、原油価格が現状程度の水
準から緩やかに上昇していくとの前提にたて
ば、エネルギー価格の寄与度は、現在の-1%
(2)物価情勢
先行き見通し
10
経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
準から緩やかに上昇していくとの前提にたて
ば、2016年度後半頃になると予想される。その
後は、平均的にみて、2%程度で推移すると見
込まれる。
物価上 昇率を
規定す る主た
る要因
①マクロ的な需給バランスは着実に改善
②中長期的な予想物価上昇率は、やや長い目で
みれば全体として上昇
③輸入物価は為替が押し上げ要因で原油が押
し下げ要因
直近の 中間評
価との比較
7月の中間評価時点と比較すると、2015年度
と2016年度については、原油価格下落の影響な
どから下振れているものの、2017年度について
は概ね不変である。
強から次第に剥落していくが、2016年度末まで
はマイナス寄与が残ると試算される。この前提
のもとでは、消費者物価の前年比が、「物価安
定の目標」である2%程度に達する時期は、
2017年度前半頃になると予想される。その後
は、平均的にみて、2%程度で推移すると見込
まれる。
①マクロ的な需給バランスは着実に改善
②中長期的な予想物価上昇率は、やや長い目で
みれば全体として上昇
③輸入物価は為替が押し上げ要因で原油が押
し下げ要因
今回の見通しを従来の見通しと比べると、
2016 年度は下振れ、2017 年度は概ね不変であ
る。物価見通しの下振れおよび2%程度に達す
る時期の後ずれは、原油価格の想定を下振れさ
せたことによるものである。
2.上振れ要因・下振れ要因
(1)経済情勢
上振れ要因・下
振れ要因
前回(2015/10/30)
①海外経済の動向に関する不確実性
②消費税引き上げの影響
③企業や家計の中長期的な成長期待
④財政の中長期的な持続可能性
今回(2016/1/29)
①海外経済の動向に関する不確実性
②消費税引き上げの影響
③企業や家計の中長期的な成長期待
④財政の中長期的な持続可能性
前回(2015/10/30)
①企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の
動向
②マクロ的な需給バランス
③マクロ的な需給バランスに対する物価の感
応度
④輸入物価の動向
今回(2016/1/29)
①企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の
動向
②マクロ的な需給バランス
③マクロ的な需給バランスに対する物価の感
応度
④輸入物価の動向
前回(2015/10/30)
2016年度後半頃に2%程度の物価上昇率を実
現し、その後次第に、これを安定的に持続する
成長経路へと移行していく可能性が高いと判
断される。
中心的な経済の見通しについては、海外経済
の動向を中心に下振れリスクが大きい。物価の
中心的な見通しについては、中長期的な予想物
価上昇率の動向などを巡って不確実性は大き
く、下振れリスクが大きい。より長期的な視点
から金融面の不均衡について点検すると、現時
点では、資産市場や金融機関行動において過度
な期待の強気化を示す動きは観察されない。も
っとも、政府債務残高が累増する中で、金融機
関の国債保有残高は、全体として減少傾向が続
いているが、なお高水準である点には留意する
必要がある。
日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実
現を目指し、これを安定的に持続するために必
今回(2016/1/29)
2017年度前半頃に2%程度の物価上昇率を実
現し、その後次第に、これを安定的に持続する
成長経路へと移行していく可能性が高いと判
断される。
中心的な経済の見通しについては、海外経済
の動向を 中心に下振れリスクが大きい。物価
の中心的な見通しについては、中長期的な予想
物価上昇率の動向などを巡って不確実性は大
きく、下振れリスクが大きい。より長期的な視
点から金融面の不均衡について点検すると、現
時点では、資産市場や金融機関行動において過
度な期待の強気化を示す動きは観察されない。
もっとも、政府債務残高が累増するなかで、金
融機関の国債保有残高は、全体として減少傾向
が続いているが、なお高水準である点には留意
する必要がある。
金融政策運営については、2%の「物価安定
の目標」をできるだけ早期に実現するため、
「マ
(2)物価情勢
上振れ要因・下
振れ要因
3.金融政策運営
第一の柱
第二の柱
金融政策運営
11
経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続
する。その際、経済・物価情勢について上下双
方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行
う。
12
イナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入し
た。 日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の
実現を目指し、これを安定的に 持続するため
に必要な時点まで、「マイナス金利付き量的・
質的金融緩和」 を継続する。今後とも、経済・
物価のリスク要因を点検し、
「物価安定の目標」
の実現のために必要な場合には、
「量」・「質」・
「金利」の3つの次元で、追加的な金融緩和措
置を講じる。
経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
前年比ゼロ近傍での推移が続く消費者物価
コア CPI はゼロ近傍での推移が続く
日本の消費者物価は、伸び悩んでいる。全国消
除く生鮮食品
1.5
以下コア CPI、消費増税の影響を除くベース)を
1.0
見ると、2014 年 4 月には前年比+1.5%と、2008
0.5
-1.0
15/12
15/06
14/12
14/06
たコアコア CPI は、12 月が同+0.8%となり、夏
13/12
※消費増税の影響を除く
13/06
-2.0
12/12
から食料(酒類を除く)およびエネルギーを除い
12/06
-1.5
10/06
近での推 移となっている(図 表 1)。一方、 CPI
11/12
は伸びが鈍化に向かい、2015 年 5 月以降はゼロ付
0.0
-0.5
11/06
年 10 月以来の高い伸びとなったものの、その後
除く食料(除酒類)・エネルギー
10/12
費者物価指 数(生鮮食品を除く消費者 物価指数、
(図表1)消費者物価指数(全国:前年比)
%
2.0
(出所)総務省「消費者物価指数」
場以降、1%手前での推移が続いている。
エネルギーの押し下げ幅は目先一段と拡大する可能性
四半期ベースでコア CPI に対する寄与度を見る
-1
10/03
月以降に原油価格が大きく調整した影響は、今後
顕在化するとみられる。当社経済モデルでは、原
油価格(ブレント)とドル・円為替相場が足元の
エネルギー除く寄与
エネルギーの寄与
17/03
※消費増税の影響を含む
※原油価格、為替相場の前提条件は当社見通しと異なる
-2
16/03
ヵ月の遅れを伴って現れる。したがって、昨年 10
0
15/03
CPI のエネルギー価格には、原油価格の変動が数
1
14/03
コアコア CPI の乖離の要因となっている(図表 2)。
2
13/03
近く押し下げに寄与しており、これがコア CPI と
前提条件(2016年1-3月期から2017年10-12月期の間の価格)
ブレント原油価格:34ドル/バレル
予測
ドル・円為替相場:120円/ドル
(エネルギーの
寄与のみ)
3
12/03
響を受け 、エネルギーが前年 比▲1.0%ポイ ント
(図表2)コアCPIとエネルギーの寄与(全国:前年比)
11/03
と、2015 年 10-12 月期は、原油価格の下落の影
%
4
コアCPI(前年比)
(出所)総務省「消費者物価指数」、OEGMより明治安田生命作成
水準で一定の推移となった場合、エネルギーの寄与がプラスに転じるのは 2017 年央と試算される。
為替相場は、日銀によるマイナス金利導入の発表後、一時的に円安に振れたものの、すでに発表前
の水準まで戻している。原油価格についても、イラン産原油の輸出再開や、世界的な景気の弱さを
受けて、需給の緩みが続くとみられるなかで、持続的に上昇する展開は考えにくく、エネルギー価
格のプラス転換は 2017 年にずれ込む可能性もある(当社の為替、原油価格見通しについては、経
済見通しにて 2 月 18 日プレス発表予定)。とりわけ、2016 年前半にかけては、引き続きエネルギ
ーが大きくコア CPI を押し下げる状況が続くとみる。
2014 年の追加緩和後の円安による押し上げ幅は足元がピーク
足元のコア CPI を品目別に見ると、教養娯楽耐久財(11 月:前年比+13.9%→12 月:同+14.7%)、
家庭用耐久財(同+4.8%→同+4.7%)、生鮮除く食料(同+2.3%→同+2.3%)などの上昇が目
立っており、12 月はこれら 3 品目でコア CPI を+0.72%ポイント押し上げている。いずれも輸入品
のウェイトが比較的高い品目であり、2014 年 10 月の日銀による追加緩和以降に進行した円安が押
し上げに働いてきたとみられる。
ただ、同時期の円安による輸入品の価格上昇を通じたコア CPI の押し上げ効果は、足元がピーク
とみられ、今後は徐々にはく落へ向かう可能性が高い。原油価格、為替レート、名目賃金、コア CPI
13
経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
からベクトル自己回帰(VAR)モデルを構築し、イ
(図表3)各ショックに対するコアCPIのインパルス・レスポンス
ベーシスポイント
ンパルス・レスポンスを導出したところ、ショッ
ク発生後、コア CPI の押し上げが最大となるのは
原油価格が半年強後、賃金が 3 四半期後、円安が
ドバイ原油ショック
0.2
0.1
0.0
-0.1
→ 円安ショ ックからの経過月数(t=1でショ ックを与える)
-0.2
1
約 1 年後との結果を得た(図表 3)。ドル円相場
3
5
7
9
11
13
15
17
0.15
21
19
為替ショック
ベーシスポイント
の動きを見ると、2014 年 10 月から 11 月にかけて、
±1標準偏差
23
25
±1標準偏差
0.10
10 円/ドル程度円安に振れたのち、5 月中旬までは
120 円/ドル付近での推移が続き、5 月後半から 6
月にかけてさらに 5 円/ドル程度円安に振れてい
る。このため、足元までの CPI 輸入品目の上昇は、
2014 年 10-11 月の円安効果が顕在化した形だが、
実証分析の結果からは、この効果は足元がピーク
であり、目先はゆっくりとはく落へ向かう可能性
が示唆される。東京都区部の 1 月中旬速報値で前
述の 3 品目を見ると、教養娯楽耐久財(12 月:前
0.05
0.00
1
3
5
7
9
11
13
1
3
5
15
17
19
賃金ショック
ベーシスポイント
0.15
0.10
0.05
0.00
-0.05
-0.10
7
9
11
13
15
23
21
25
±1標準偏差
17
19
21
23
25
ドバイ原油価格(ファクトセット、対数値)、名目実効為替レート(BIS、対数値)、名目賃金指数(厚生労働省、季
調値、対数値)、コアCPI(季調値、対数値)からVARモデルを構築。SICにより、1次のラグを設定。インパルス・レ
スポンスの導出はコレスキー分解(ドバイ原油→為替レート→賃金指数→コアCPI)を利用、500回のモンテカル
ロ・シミュレーショ ンにより標準誤差を計算。分析期間:05年1月-15年11月
網掛け部分はショ ックが最大となる時点を示す
(出所)国際決済銀行(BIS)、厚生労働省、総務省、ファクトセットより明治安田生命作成
年比+17.0%→1 月:同+9.6%)、家庭用耐久財(同+7.0%→同+3.8%)、生鮮除く食料(同+
2.3%→同+1.9%)と、いずれも伸びが鈍化しており、円安効果のはく落が顕在化してきているこ
との証左とみられる。
期待インフレも伸び悩む
中長期的な物価動向に大きな影響を与える消費
者や企業の期待インフレも伸び悩んでいる(図表
4 %
(図表4)前年比CPIと家計の1年後の期待インフレ率の推移
前年比CPI実績値
家計の期待インフレ率 *
企業の期待インフレ率 **
3
4)。 内閣府の 「消費動向 調査」と 消費者物価 指
2
数から修正カールソン・パーキン法を用いて、家
1
計の 1 年後の期待インフレ率を推計すると、12 月
0
-1
-2
する物価上昇は、円安に伴うコスト上昇分の価格
15/12
14/12
13/12
12/12
11/12
10/12
09/12
んでいる要因とみられる。足元の輸入品を中心と
* 消費動向調査、総合CPIより修正カール ソン・パ ーキン法 により抽 出
** 日銀短観の先行販売価格DI、企業 物価指 数より修正カ ール ソン・パ ーキン法 により抽 出
08/12
ー価格の低下も消費者の期待インフレが伸び悩
-4
07/12
-3
05/12
鈍化した。名目賃金の伸び悩みに加え、エネルギ
06/12
は前年比+0.85%と、2013 年春の水準まで伸びが
(出所)総務省「消費者物価指数」、内閣府「消費動向調査」、
日本銀行「短観」、「企業物価指数」より明治安田生命作成
転嫁の影響が大きいとみており、需要の拡大など
(図表5)景気ウォッチャーの判断理由のうち、「値上げ」に関するコメント(抜粋)
を受けた趨勢的な物価上昇期待の定着には至っ
南関東
食材値上げはまだ続くとみているが、それに合わせて販売
高級レストラン 単価を上げられるほどの勢いはまだない(2015年12月)
中国経済の減速などの影響もあり、景気回復への材料が
そろっていない。円安の影響から取引先の原料事情は厳
中国
しい状況が継続しており、販売価格を値上げしたいが値
金融
上げによる販売数量の減少を勘案すれば踏み切れない
企業が多い。今が踏ん張りどころとする社長も多く、
景気は踊り場である状況がしばらく続く(15年12月)
東北
原材料費や運賃の値上げを検討している取引先が増えて
コピーサービス きており、この先価格に転嫁できるか不安である(15年11月)
ていない状況と捉えられる。
また、日銀短観の先行きの販売価格 DI と企業
物価指数から推計される企業の期待インフレ率
を見ると、これまで 0%付近での推移が続いてい
たものの、2015 年 12 月調査では低下しており、
(出所)内閣府「景気ウォッチャー調査」
2013 年 9 月調査以来のマイナスとなった。直近 2 ヵ月間の内閣府「景気ウォッチャー調査」では、
特に最終消費段階において販売価格を引き上げることが難しいことを指摘する声が出ており、家計
の節約志向の高まりを背景に企業が慎重に価格設定を行なっている様子が表れている(図表 5)。
14
経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
企業の価格設定行動については、期待インフレ
10
の低迷に加え、ユニットレーバーコスト(ULC)が
8
ると、賃金の低迷や資源価格の下落による生産性
0
今後についても、景気回復ペースが緩やかなも
-2
15/03
14/03
13/03
12/03
11/03
10/03
09/03
08/03
-6
07/03
↓ 雇用者報酬減少
労働生産性改善
-4
05/03
き上げる誘因には欠いている(図表 6)。
ユニットレーバーコスト(前年比)
4
2
マクロ的には、需要を犠牲にしてまで販売価格引
労働生産性要因の寄与
6
がらない要因の一つとみられる。ULC の推移を見
の改善もあって、前年比横ばいにとどまっており、
1人当たり雇用者報酬変化率の寄与
↑ 雇用者報酬増加
労働生産性低下
06/03
上昇していないことも、販売価格の引き上げが広
(図表6)ユニットレーバーコスト(ULC、前年比)の推移
%
ULC=雇用者報酬÷実質GDP
=1人当たり雇用者報酬×雇 用者数÷ 実質G DP=1 人当たり賃 金×1/労 働生産性
(出所)内閣府「四半期別GDP速報」、厚生労働省「毎月勤労統計」より明治安田生命作成
のにとどまり、賃金も上がりにくいなかで、消費者の期待インフレ率は低位での推移が続くと予想
する。また、消費者の期待インフレが伸び悩むなかでは、企業も、販売価格を引き上げることは容
易ではないとみており、企業の期待インフレも低迷が続くとみられる。
デフレギャップが続く
需給ギャップについては、当社では、消費や輸
4
出が振るわないなか、7-9 月期は▲2.0%と、マ
2
イナスの需給ギャップ(=デフレギャップ)が続
0
いたと推計している(図表 7)。需給ギャップは
-2
推計方法により差が生じるので、幅を持って見る
-4
必要があるが、足元では需要面からの物価押し上
-6
げ圧力は弱い。今後についても、内外需ともけん
-8
緩やかなものにとどまる可能性が高く、需要面か
らの物価の押し上げ幅は限定的とみている。
15/09
14/09
13/09
12/09
11/09
10/09
09/09
08/09
07/09
06/09
05/09
04/09
03/09
02/09
需給ギャップ(当社推計値)
01/09
引役を欠く状況が続くなか、景気の回復ペースは
(図表7)需給ギャップの推移
%
ln(GDP/(就業者数×労働時間))=
決定係数:0.974
0.329×ln((資本ストック×稼働率)/(就業者数×労働時間))+0.002×(TIME)-2.315
(10.32)
(7.09) (▲16.62)
(出所)内閣府および総務省の統計より明治安田生命作成
2016 年度の物価上昇率は前年比+0.3%程度と予想
今後のコア CPI は、エネルギーの押し下げが続
(図表8)2017年1-3月期のコアCPI(前年比)のシナリオ別予想値
くなか、円安による押し上げも次第にはく落する
北海ブレント原油価格(ドル/バレル)
とみられること、足元の景気が足踏みしているこ
15
30
45
60
110
▲ 1 .5
▲ 0 .9
▲ 0 .4
0 .0
115
▲ 1 .0
▲ 0 .4
0 .1
0 .6
価格・為替とも足元の水準程度にとどまった場合、
120
▲ 0 .5
0 .2
0 .7
1 .1
1 年後の 2017 年 1-3 月期のコア CPI は前年比 0%
125
▲ 0 .0
0 .7
1 .1
1 .6
となどから、上昇ペースは緩やかなものにとどま
るとみる。当社経済モデルによる予想では、原油
円/ドル
強の水準にとどまるとの結果を得た(図表 8)。
(%)
2月8日現在 ドル・円:117円/ドル、北海ブレント原油:34ドル/バレル
前述のとおり、原油価格が持続的な上昇へ向かう
(出所)OEGMより明治安田生命作成
可能性は低いほか、円安圧力は徐々に緩和するとみていることから、原油を含めた輸入価格の上昇
による押し上げは期待しがたい。2015 年度のコア CPI は、前年比+0.1%程度に落ち着き、2016 年
度についても、エネルギー価格が下押し圧力となるなかで、円安による押し上げも一服するとみら
れることから、通年でも同+0.5%前後にとどまるとみる。2017 年度についても、景気回復ペース
が緩やかなものにとどまるとみられ、消費増税による押し上げを除けば同+0.7%程度の上昇にと
どまると予想する。(担当:山口)
15
経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
伸び悩みが続く日本の輸出
20
財務省の貿易統計によると、12 月の輸出金額は
15
前年比▲8.0%と、11 月の同▲3.3%からマイナス
10
幅が拡大した(図表 1)。輸出金額の伸び率を数
5
量要因と価格要因に分解すると、輸出価格が同▲
0
-5
四半期連続のマイナスとなり、マイナス幅も 7-9
(図表2)主要国・地域の実質輸出の推移
200
月期の同▲ 2.8%から拡大するなど、実勢 として
175
2005年=100
米国
アジア新興国
世界(右軸)
15/12
15/9
14/6
14/3
13/12
(出所)財務省「貿易統計」
13/9
見ても、10-12 月期の輸出数量は同▲4.1%と、3
13/6
13/3
-10
前月からマイナス幅が拡大した。四半期ベースで
15/6
輸出数量指数
輸出金額指数
金額指数=数量指数×価格指数
15/3
輸出価格指数
4.4%と 6 ヵ月連続のマイナスとなり、いずれも
14/12
3.8%と 2 ヵ月連続のマイナス、輸出数量も同▲
(図表1)輸出指数の推移(前年比)
%
14/9
輸出は低迷が続く
2005年=100
日本
ユーロ圏(右軸)
175
150
の輸出の基調は引き続き弱い。
15/1
14/1
13/1
25
12/1
50
実 質 輸 出 の 持 ち 直し は 緩 慢 と いう 状 況 が 続 いて
11/1
な持ち直し傾向が続いているなかで、日本からの
10/1
50
09/1
75
08/1
ると、2009 年以降、世界全体の実質輸出は緩やか
07/1
75
06/1
100
05/1
し て い る オ ラ ン ダ経 済 政 策 分 析局 の デ ー タ を見
04/1
100
03/1
125
02/1
世界の主要国・地域からの実質輸出を月次で公表
01/1
125
00/1
150
海外と比べても 、日本の輸出は弱さが目立つ 。
(出所)オランダ経済政策分析局
きた(図表 2)。日本の場合、東日本大震災の影
響で経済活動が 2011 年前半に大きく落ち込んだ
100
という要因もあるが、その影響の一巡後は、4 年
80
%
(図表3)主要先進国の輸出の財種別内訳(2013年)
消費財
資本財
以上にわたり均せば横ばい圏にとどまっており、
60
直近でも震災直前の 2011 年 2 月の水準を戻して
加工品
いない。
40
資本財輸出は伸びにくい状況が続く
20
部品
日 本 の 輸 出 品 目 を 他 の 主 要 先 進国 と 比 較 す る
素材
0
日本
と、消費財や素材のウェイトが小さい一方、生産
30
の投資比率(総資本形成/GDP)と緩やかな正の相
米国
ドイツ
フランス
英国
素材:未加工燃料・食品等
加工品:加工済み燃料・食品等
(図表4)世界の投資比率と日本の輸出額の関係
財のウェイトが高く、資本財と中間財で輸出の 8
こうした貿易構造を受け、日本の輸出額は、世界
カナダ
(出所)RIETI-TIDより明治安田生命作成
設備などの資本財や、部品と加工品からなる中間
割強が占められていることが分かる(図表 3)。
イタリア
輸出額(前年比、%)
20
10
0
関関係にある(図表 4)。すなわち、投資主導で
-10
世界景気が持ち直す場合には、日本からの輸出が
-20
伸びやすいが、世界的に投資が慎重となる局面で
-30
は、資本財輸出の不振を通じ、日本の輸出が伸び
-40
-2.5
悩む傾向がある。
世界の投資比率[総資本形成/GDP](前年差、%ポイント)
(出所)財務省「貿易統計」、IMFより明治安田生命作成
16
2017年(IMF予想)
2016年(IMF予想)
-2.0
-1.5
-1.0
-0.5
y = 13.76 x + 2.44
R² = 0.67
[1993-2015年]
0.0
0.5
1.0
1.5
経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
(図表5)世界の投資比率(総資本形成/GDP)の推移
世界の投資比率は、2000 年代前半には中国をは
じめとする新興国の投資ブームにけん引されて上
昇したものの、リーマン・ショック後のユーロ圏
%
35
世界
先進国
新興国
30
のデレバレッジや、中国の資本ストック調整の影
20
産能力の削減が続くとみられるほか、先進国につ
→IMF予想
2012
2010
2008
2006
2004
2002
2000
1998
1996
1994
も不良債権問題が残るなか、IMF 予想では投資比
1992
15
1990
いても、米国製造業の生産活動の弱さや、欧州で
2016
(図表 5)。先行きについても、中国では過剰生
25
2014
響などを受け、2011 年以降、横ばいとなっている
(出所)IMF
率は世界的に高まらない見込みとなっており、日
本の輸出の伸びは小幅にとどまることが示唆され
20
る(図表 4)。
15
また、資源価格の下落により、資源開発が抑制
(図表6)資源開発関連品目の輸出額の推移
%
10
5
0
15/12
15/09
15/06
なっていることで、前年比▲15%程度の減少が続
15/03
※建設用・鉱山用機械、ポンプ遠心分離機、荷役機械の合計
14/12
-20
EU
世界
中東
その他
14/09
ジアなど、主要仕向け先が軒並みマイナス寄与と
米国
アジア
14/06
抑制の影響を受けている米国をはじめ、中東やア
-15
14/03
-10
13/12
の 3 品目の輸出額は、シェールオイル事業の開発
13/09
-5
13/03
建設用・鉱山機械とポンプ遠心分離機、荷役機械
13/06
されるなか、関連品目の輸出の減速が顕著である。
(出所)財務省「貿易統計」
いている。今後についても、資源価格の軟調な推移が予想されるなか、資源関連機械は特に落ち込
みが続くとみられる。
サプライチェーンの見直しで米国向け中間財輸出も伸びにくく
米ミシガン大学のレフチェンコ助教授らによるリーマン・ショック後の 2008-2009 年の世界的
な貿易減少局面に関する研究(IMF Economic Review,2010)では、当時の世界貿易の落ち込みの主
因は最終財ではなく中間財であったことと、先進国では米国や EU 諸国よりも、日本からの輸出で
落ち込みの影響が大きかったことが確認されている。日本は輸出に占める中間財貿易のウェイトが
高いため、中間財貿易の不振がその後も続いていれば、他の先進国に比べ、輸出の回復が遅れてい
ても不自然ではない。
日本からの中間財輸出の不振が続く背景の一つに、近年、米国企業のグローバル・サプライチェ
ーンが見直されている可能性が挙げられる。東日
(図表7)米景気と対米輸出数量間の構造変化テスト(CUSUMテスト)
60
本大震災以前、東北地方には、電機・電子機器関
連等を中心に、多くのサプライヤーが拠点を設け
ており、日本企業だけでなく海外企業のグローバ
ル・サプライチェーンの一翼を担っていた。
40
20
0
-20
こうしたグローバル・サプライチェーンのもと
-40
では、米景気の回復→米国自動車生産の増加→日
-60
本から米国への部品輸出の増加といった波及効果
-80
点線は±5%有意水準の臨界点であり、 CUSUM
が点線内にあれば米景気(米景気 一致CI指数、
コンファ レンスボード)と対米輸出数量(内閣府)
の関係が安定的であることが示される
2000
が働きやすく、米景気と対米輸出の間に相関関係
が生まれやすい。ただ、震災後は、こうしたグロ
17
2002
2004
2006
CUSUM
2008
2010
5% Significance
(出所)内閣府、米コンファレンスボードより明治安田生命作成
2012
2014
経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
ーバル・サプライチェーン構造に変化が生じたことで、波及効果が薄れている可能性がある。対米
輸出数量指数を被説明変数とし、米コンファレンスボードが発表している米景気一致 CI を説明変
数とした累積和(CUSUM)テストを実施すると、2011 年 7 月を境に、両者の間で以前の安定的な関
係から、不安定な関係へと構造変化が生じたことが示唆される(図表 7)。震災を受けて、米国企
業が部品調達先を見直していることを反映している可能性があり、今後も米国向けの中間財輸出は
米景気の回復ペースを下回る可能性が高く、シェールオイル事業の開発抑制と並び、輸出の足かせ
となると見込まれる。
また、中間財貿易においては、アジア諸国に進
(図表8)アジア諸国の総輸入額に対する日本からの輸入と現地調達比率
%
<現地調達比率>
% <日本からの輸入比率>
60
中国
出 す る 日 系 企 業 現 地 法 人の 現 地 調 達 比 率 の高 ま
60
りも、日本からの輸出が伸びにくい構造となって
50
ASEAN 4ヵ国
50
アジア全域
いる要因と考えられる。経済産業省の「海外事業
活動基本調査」を見ると、中国や ASEAN では、2000
年代以降、日本からの輸入比率が低下する一方で、
40
40
30
30
20
20
10
10
現地調達比率が高まっている。直近 2013 年度調
査では、アジア全域における 2013 年度の日本か
0
らの輸入比率は 25%程度と、2000 年の 33%から
0
2000
2005
2010
2013
2000
2005
2010
2013
(出所)経済産業省「海外事業活動基本調査」より明治安田生命作成
大きく低下した(図表 8)。現地での産業集積が
進んだことや物流網が整備されたことで、為替動向に左右されずに部品を調達できる現地調達体制
の構築が進んでいるとみられ、中国やアジア NIEs 諸国の景気の弱さに加え、今後もこうした動き
がアジア向け輸出の下押し圧力となるとみられる。
2016 年度の輸出は伸び悩みが続くと予想
今後については、先進国景気が力強さに欠くなかで、米国向けについては複数の構造要因もあり、
持ち直しペースが鈍いものにとどまるとみられる。加えて、アジア向け輸出が下押し圧力になるた
め、数量ベースでは、引き続き輸出の伸び悩みが続くと予想する。
輸入については、12 月の輸入金額は前年比▲18.0%と、12 ヵ月連続のマイナスとなり、マイナ
ス幅は前月から拡大した。足元の輸入の低迷は、原油価格の下落に伴う価格指数のマイナスの影響
が大きいが、輸入数量指数も直近 6 ヵ月中、5 ヵ月でマイナスとなっており、内需の弱さが現われ
ている。今後についても、原油価格は、上値の重い展開が予想されることから、鉱物性燃料の輸入
金額は低水準にとどまるとみる。加えて、高浜原
発がすでに再稼働したほか、伊方原発も再稼働が
視野に入るなか、輸入燃料の需要は減少傾向とな
15
(図表9)貿易収支の推移
%
貿易収支(右軸)
兆円
輸出数量(前年比)
輸入数量(前年比)
3
10
2
5
1
0
0
-5
-1
-10
-2
-15
-3
(出所)財務省「貿易統計」
18
15/12
15/9
15/6
15/3
14/12
14/9
14/6
定着には至らないと予想する。 (担当:山口)
14/3
みるものの、輸出が伸び悩むなか、貿易黒字の
13/12
表 9) 。貿易収支は赤字幅の縮小傾向が続くと
13/9
全体の伸びも鈍いものとなる可能性が高い (図
13/6
なものにとどまるとみられることなどから、輸入
13/3
るとみられる。また、国内最終需要の伸びが緩慢
経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
米国の設備投資は低調に推移
うち製造業
マイナスとなったほか、石油掘削などを含む鉱業も
15/12
14/12
13/12
12/12
11/12
10/12
15/12
14/12
13/12
15/12
15/11
15/10
15/9
うち公益事業
鉱工業生産
(出所)FRB
同▲0.8%と 4 ヵ月連続で低下した。公益事業は同
(図表4)鉱業機械受注額とリグの稼動数の推移
▲2.0%と、3 ヵ月連続のマイナス。マイナス幅も
3500
大きく、全体を押し下げた。ただ、公益事業に関し
3000
ては、記録的な暖冬によって暖房需要が伸び悩んだ
うち鉱業
15/8
の 7 割を占める製造業が同▲0.1%と 2 ヵ月連続の
15/7
ヵ月連続で低下した(図表 3)。産業別では、全体
15/2
鉱工業生産を見ると、12 月は前月比▲0.4%と、3
(図表3)鉱工業生産の推移(前月比)
%
15/1
企業の生産活動も、停滞気味の推移が続いている。
4
3
2
1
0
-1
-2
-3
-4
-5
-6
14/12
停滞が続く企業の生産活動
ISM製造業生産指数
ISM非製造業新規受注指数
(出所)米サプライマネジメント協会(ISM)
国景気の先行き不透明感や原油安のほか、ドル高な
の回復を抑制している。
09/12
ISM製造業景況指数
ISM製造業新規受注指数
拡大・縮小の境目である 50 を下回っている。新興
どが製造業の景況悪化につながっており、設備投資
12/12
以降、軟調に推移し、足元では 4 ヵ月連続で活動の
11/12
(図表 2)。一方、製造業景況指数は 2014 年半ば
15/6
いたが、昨年半ばごろからは低下傾向が続いている
15/5
2014 年以降、50 台後半を中心とした推移となって
(図表2)ISM製造業・非製造業景況指数
ポイント
08/12
る 。ISM 景 況指 数を 見ると 、非 製造 業総合 指数 は
70
65
60
55
50
45
40
35
30
25
20
07/12
企業景況感についても、下押し圧力がかかってい
08/12
(出所)米商務省
機)を見ても、12 月は前月比▲4.3%と、2 ヵ月連
続のマイナスとなっている。
07/12
資の先行指標とされる非防衛資本財受注(除く航空
10/12
した新興国景気の減速、ドル高などがある。設備投
15/4
種の業況が低調に推移しているほか、中国を中心と
06/12
(図表 1)。背景には、原油安でエネルギー関連業
09/12
率 ▲1.8%と 、13 四 半期ぶ りの マイ ナスと なっ た
15/3
速報値)を見ると、2015 年 10-12 月期は前期比年
(図表1)実質民間設備投資の推移(前期比年率)
05/12
向が続いている。実質民間設備投資(GDP ベース、
%
03/12
米国の設備投資は、2014 年半ばごろから減速傾
25
20
15
10
5
0
-5
-10
-15
-20
-25
-30
04/12
実質民間設備投資は 13 四半期ぶりのマイナス
2500
2000
影響も大きく、今後は下押し圧力が徐々に和らぐと
1500
みている。
1000
500
エネルギー関連業種は当面低調に推移
況は、引き続き設備投資の下押し圧力となる可能性
が高い。設備投資全体の約 5 割を占める実質機械投
19
ガス・石油掘削機械受注額(3ヵ月移動平均、百万ドル)
リグ稼動数(基)
(出所)Baker Hughes、米商務省
15/12
14/12
13/12
12/12
11/12
10/12
09/12
08/12
07/12
0
一方、石油掘削といったエネルギー関連業種の業
経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
資(GDP ベース)の推移を見ると、10-12 月期は前
(図表5)原油価格と為替の推移
ドル/バレル
2010年=100
90
グの稼働数を見ても、足元では 2014 年 10 月のピー
20
125
ク時から 60%以上減少している(図表 4)。原油価
15/12
120
14/12
40
13/12
115
動きが増えるとみられる。石油掘削に用いられるリ
12/12
110
60
ら、石油掘削用の機械などへの設備投資を手控える
11/12
105
80
10/12
100
09/12
算 が とれ な い事 業が 増 加す ると 見 込ま れる こ とか
08/12
100
07/12
120
ドル高
95
った。エネルギー関連業種では、原油安の影響で採
⇔
140
ドル安
期比年率▲2.5%と、4 四半期ぶりのマイナスとな
160
WTI原油価格
実質実効為替レート(右軸、逆目盛り)
格(WTI)は昨年末以降 40 ドルを下回って推移して
(出所)ファクトセット、OECD
いることから(図表 5)、リグは引き続き軟調な推
移が続くとみており、エネルギー関連業種の機械投
資は抑制される可能性が高い。
(図表6)原油安による実質機械投資への影響
影響の度合
bp
4
一方、原油価格、企業向け貸出金利、実質機械投
資 を 変数 と した ベク ト ル自 己回 帰 モデ ルに よ る当
2
0
-2
社試算では、原油価格が 1%下落するという「ショ
-4
ック」を与えると、実質機械投資への下押し圧力は
-6
およそ 1 年にわたって拡大する可能性が示唆され
実質機械投資の変化
±1標準偏差
経過時間(四半期)
-8
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 11 12 13 14 15
・WTI原油価格、企業向け貸出金利、実質機械投資の3変数VARモデルで試算。
インパルス・レスポンスでは、コレスキー分解(変数順序は上記順)を利用し、500回
のモンテカルロ・シミュレーションにより標準偏差を算出。期間1999/4Q~2015/4Q、
ラグは2次と設定
(出所)米商務省、ファクトセットより明治安田生命作成
るものの、その後は下押し圧力が緩和に向かうとの
結果になる(図表 6)。エネルギー関連業種の業況
は当面停滞気味の推移が続くとみるが、機械投資を
ったため、交易条件は大きく改善した。海外景気の
輸入物価
輸出物価
15/12
14/12
13/12
後半以降低下しているが、輸入物価の下落が大きか
12/12
輸出入物価指数の推移を見ると、いずれも 2014 年
11/12
ら、交易条件は大きく改善している(図表 5,7)。
10/12
一方、原油安に加え、ドル高も進んでいることか
105
103
101
99
97
95
93
91
89
87
85
09/12
交易条件は改善
(図表7)輸出入物価指数(前年比)と交易条件の推移
08/12
とみられる。
25 %
20
15
10
5
0
-5
-10
-15
-20
-25
07/12
中 心 とし た 設備 投資 へ の悪 影響 は 徐々 に一 巡 する
交易条件(右軸)
※交易条件は、輸出物価指数÷輸入物価指数×100として算出
減速などを背景に、10-12 月期の企業収益は海外
(出所)米労働省より明治安田生命作成
部門を中心に低調に推移しているが、交易条件の改
100
高 が 引き 続 き輸 入物 価 の上 昇を 抑 制す ると 見 込ま
80
れることから、交易条件の改善が引き続き企業収益
の下支えとなろう。
(図表8)銀行の貸出態度
厳格化-緩和 %
善は海外からの所得流入につながる。原油安やドル
※3ヵ月前と比べ貸出態度を「厳しくし
た」と回答した銀行の割合から、「緩くし
た」とした銀行の割合を控除して作成
60
40
↑ 厳格化
20
低金利環境が企業活動を下支え
0
貸出態度調査の結果を見ると、10-12 月期は、3 ヵ
20
小規模事業貸出
(出所)FRBより明治安田生命作成
大・中堅企業貸出
15/12
14/12
13/12
12/12
11/12
10/12
09/12
(米連邦準備制度理事会)による銀行の商業ローン
↓ 緩和
-40
08/12
融環境は、足元で引き締めの兆しが出ている。FRB
07/12
今 まで 設 備投 資を 促 して きた 米 国の 緩和 的 な金
-20
経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
月前と比べて貸出態度を「厳しくした」と回答した
銀行の割合が「緩くした」と回答した割合を 15 四
半期ぶりに上回った(図表 8)。背景には、昨年 12
月の FOMC(米連邦公開市場委員会)で FRB が 9 年
半 ぶりに政 策金利 の引き上 げに踏 み切った こと が
ある。ただ、FRB が公表する FF レート見通しは、
下方修正が続いており、新興国景気の減速や原油安
を背景に、今後の利上げペースはゆっくりとしたも
のにとどまると見込まれる(図表 9)。こうした状
%
4.0
(図表9)FOMC参加者によるFFレート見通し(誘導目標中央値)
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
2015年末
2016年末
2017年末
2018年末
2014/9 FOMC
2014/12 FOMC
2015/3 FOMC
2015/6 FOMC
2015/9 FOMC
2015/12 FOMC
(出所)FRBより明治安田生命作成
※FFレート見通しはFOMC予想の中央値
況を受け、緩和的な金融環境が長期化するとみており、企業活動を引き続き下支えするとみる。
エネルギー関連業種の業況が足かせとなり、設備投資は当面停滞気味に推移するとみている。た
だ、交易条件の改善などが企業収益を下支えすることから、年央以降は徐々に回復に向かうと予想
する。(担当:玉置)
21
経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
1 月 26-27 日開催の FOMC について
海外情勢への警戒姿勢が示される
1 月 26-27 日開催の FOMC(米連邦公開市場委員会)では、政策金利である FF レートの誘導目標
レンジが 0.25-0.5%ですえ置かれ、金融政策に変更はなかった。一方、声明文では、年初からの
金融市場の混乱を受け、前回(12 月 15-16 日開催の FOMC)の「全般的に国内外の状況を考慮する
と、委員会は経済状況と労働市場の双方の見通しに対するリスクが安定しているとみている」との
一文が削除。代わって、「委員会は、世界経済と金融動向を注視し、労働市場とインフレ、見通し
に対するリスク・バランスへの影響を評価している」が付け加えられ、海外情勢への警戒姿勢が示
された。
景気の現状判断は下方修正
景気の現状判断は、前回の「経済活動が緩やかなペースで拡大」から、「経済成長が年末に減速
したにもかかわらず、労働市場の状況はさらに改善」へと変更。労働市場は堅調との認識が示され
る一方、景気判断は下方修正された。需要項目別では、個人消費と設備投資は「ここ数ヵ月、堅調
なペースで増加」から、「ここ数ヵ月、緩やかなペースで拡大」へと下方修正。一方、住宅は「一
段と改善」、輸出については「軟調」と、いずれも判断がすえ置かれたが、「在庫投資は減速した」
との一文が付け加えられた。
労働市場については、「継続する雇用者数の増加と、低下が続く失業率を含め、最近の幅広い労
働市場の指標はさらに改善し、労働資源の活用不足が年初以来、かなり縮小したことを裏付けてい
る」との一文が、「力強い雇用者数の増加を含め、最近の幅広い労働市場の指標は、労働資源の活
用不足がさらにいくらか縮小したことを示している」へと変更。労働資源の活用不足が引き続き改
善しているとの見方はすえ置かれた。
インフレについては、前回の「インフレ期待を示す市場の指標は低いままである」のうち、「低
いまま」が「さらに低下」へと下方修正された。一方、「調査に基づく長期的なインフレ期待の指
標の一部はやや低下した」のうち、「一部はやや低下した」が「ここ数ヵ月、総じてほとんど変わ
らなかった」へと上方修正され、まちまちの判断
(図表1)輪番制に伴うFOMC投票権者の異動
が示された。
目先のインフレ見通しは下方修正
今後の見通しのパラグラフでは、「金融政策の
スタンスを緩やかに調整することによって、経済
活動は緩やかなペースで拡大」、「労働市場の指
標は引き続き力強さを増す」との見方に変更はな
かった。ただ、物価の見通しについては、前回の
「中期的に、エネルギー価格や輸入物価の低下に
よる一時的な要因が解消し、労働市場がさらに力
2015年
2016年
投票権を失ったメンバー
投票権を得たメンバー
・ラッカー
リッチモンド連銀総裁
(タカ派)
・ウィリアムズ
サンフランシスコ連銀総裁
・ジョージ
カンザスシティ連銀総裁
(タカ派)
・メスター
フィラデルフィア連銀総裁
(タカ派)
・ブラード
セントルイス連銀総裁
(タカ派)
・ローゼングレン
ボストン連銀総裁
(ハト派)
・ロックハート
アトランタ連銀総裁
・エバンス
シカゴ連銀総裁
(ハト派)
強さを増すにつれ、2%へ上昇する」との一文に、
「エネルギー価格のさらなる低下を一因に、短期
的には低いままにとどまる」が付け加えられ、目
オバマ大統領は、ランドン氏(ハワイ銀行の元C EO)と、
ドミンゲス氏(ミシガン大学教授) を理事に指名
(上院の承認待ち)
(出所)FRBより明治安田生命作成
先は低インフレが継続するとの見方が新たに示
22
経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
された。
一方、今後 の金融政策については、 「金融政策
18
のスタンスは引き続き緩和的」、「経済状況が FF
16
レートの緩やかな引き上げしか正当化しない形で
12
進む」、「FF レートは当面、長期に達成すると見
10
8
6
4
制度理事会)が保有する債券の償還資金の再投資
4.5
15/1
14/1
13/1
12/1
11/1
10/1
広義の失業率 ※
失業率
(出所)米労働省
についても、「FF レートの水準が十分正常化され
るまで、継続すると予測している」との一文に変
09/1
08/1
2
ものになるとの見方は変わらず。FRB(米連邦準備
07/1
がいずれもすえ置かれ、利上げペースは緩やかな
14
06/1
込まれる水準を下回って推移する可能性が高い」
(図表2)失業率の推移
%
※求職断念者や非自発的パートタイマーを失業者に含む
(図表3)賃金上昇率と失業率ギャップ
%
%
-1
輪番制で入れ替わった(図表 1)。タカ派で知られ
平均時間給(除く経営者)
失業率ギャップ(自然失業率-広義の失業率 ※ 右軸)
※求職断念者や非自発的パートタイマーを失業者に含む
タカ派色の強いジョージ・カンザスシティ連銀総
(出所)米労働省、CBOより明治安田生命作成
裁、メスター・フィラデルフィア連銀総裁、ブラ
の失業率(非自発的パートタイマーや求職断念者
輸入物価
15/1
14/1
13/1
12/1
11/1
レンジである 4.8-5.0%に達しているほか、広義
10/1
5.0%と、すでに FRB による失業率の長期見通しの
09/1
やかなものになるとみている。12 月の失業率は
08/1
もっとも、今後の利上げペースは、きわめて緩
07/1
年の FOMC はタカ派に親和的と な る可 能性 があ る。
(図表4)輸入物価指数(前年比)の推移
%
25
20
15
10
5
0
-5
-10
-15
-20
-25
06/1
わった。タカ派の投票権者が増えたことから、2016
15/1
平均時間給
るラッカー・リッチモンド連銀総裁が交代したが、
ード・セントルイス連銀総裁が投票権者として加
14/1
-8
今回の会合から、FOMC 投票権者のうち、4 名が
13/1
-7
1.0
FOMC 投票権者が交代
12/1
-6
1.5
11/1
-5
2.0
た。
10/1
-4
2.5
09/1
3.0
08/1
-3
和的な金融環境を継続するとの見方がすえ置かれ
07/1
-2
3.5
06/1
更なく、FRB のバランスシートの規模を維持し、緩
4.0
除く石油
(出所)米労働省
などを失業者に含む)も 9.9%と、2010 年 4 月の
17.1%をピークに低下傾向が続いている(図表 2)。ただ、現状のペースで改善が続いても、広義
の失業率が住宅バブル崩壊前の水準まで改善するのは、早くて 2016 年後半から 2017 年中ごろにな
る。時間当たり賃金は 2010 年以降、前年比+2%台前半での推移が中心となっており、賃金インフ
レは抑制されている(図表 3)。原油価格下落のほか、新興国の景気減速などを背景に、輸入物価
指数は今後も低調に推移する可能性が高く(図表 4)、インフレ圧力は引き続き抑制的なものにと
どまるとみられる。労働需給の引き締まりによって、賃金上昇率が加速し、インフレ圧力が強まる
までにはしばらく時間がかかるとみており、2016 年の利上げ回数はせいぜい年 2 回程度と予想する。
(担当:信本)
23
経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
<別紙>FOMC 声明文(下線部は前回と今回の主な相違点)
前回 2015/12/15-16
Information received since the Federal Open
Market Committee met in October suggests that
economic activity has been expanding at a
moderate pace. Household spending and
business
fixed
investment
have
been
increasing at solid rates in recent months,
and the housing sector has improved further;
however, net exports have been soft. A range
of recent labor market indicators, including
ongoing job gains and declining unemployment,
shows further improvement and confirms that
underutilization of labor resources has
diminished appreciably since early this year.
Inflation has continued to run below the
Committee's 2 percent longer-run objective,
partly reflecting declines in energy prices
and in prices of non-energy imports.
Market-based
measures
of
inflation
compensation remain low; some survey-based
measures
of
longer-term
inflation
expectations have edged down.
今回 2016/1/26-27
Information received since the Federal Open
Market Committee met in December suggests
that labor market conditions improved further
even as economic growth slowed late last year.
Household spending and business fixed
investment have been increasing at moderate
rates in recent months, and the housing sector
has improved further; however, net exports
have been soft and inventory investment
slowed. A range of recent labor market
indicators, including strong job gains,
points to some additional decline in
underutilization
of
labor
resources.
Inflation has continued to run below the
Committee's 2 percent longer-run objective,
partly reflecting declines in energy prices
and in prices of non-energy imports.
Market-based
measures
of
inflation
compensation declined further; survey-based
measures
of
longer-term
inflation
expectations are little changed, on balance,
in recent months.
10 月の FOMC 会合以降に入手した情報は、経
済活 動が緩やかな ペースで拡 大してきたこ とを
示唆 している。個 人消費と設 備投資はここ 数ヵ
月、 堅調なペース で増加し、 住宅市場は一 段と
改善 した。しかし ながら、輸 出は軟調だっ た。
継続 する雇用者数 の増加と、 低下が続く失 業率
を含 め、最近の幅 広い労働市 場の指標はさ らに
改善 し、労働資源 の活用不足 が年初以来、 かな
り縮 小したことを 裏付けてい る。インフレ は、
エネ ルギー価格と エネルギー 以外の輸入物 価の
低下 を一部反映し て、委員会 の長期的な到 達点
である 2%を下回り続けた。インフレ期待を示す
市場 の指標は低い ままであり 、調査に基づ く長
期的 なインフレ期 待の指標の 一部はやや低 下し
た。
12 月の FOMC 会合以降に入手した情報は、経
済成 長が年末に減 速したにも かかわらず、 労働
市場 の状況はさら に改善した ことを示唆し てい
る。 個人消費と設 備投資ここ 数ヵ月、緩や かな
ペー スで増加し、 住宅市場は 一段と改善し た。
しか しながら、輸 出は軟調で あり、在庫投 資は
減速 した。力強い 雇用者数の 増加を含め、 最近
の幅 広い労働市場 の指標は、 労働資源の活 用不
足 が さ ら に い く らか 縮 小 し た こと を 示 し てい
る。 インフレは、 エネルギー 価格とエネル ギー
以外 の輸入物価の 低下を一部 反映して、委 員会
の長期的な到達点である 2%を下回り続けた。イ
ンフ レ期待を示す 市場の指標 はさらに低下 した
が、 調査に基づく 長期的なイ ンフレ期待の 指標
はここ数ヵ月、総じてほとんど変わらなかった。
<ポイント>
・現状の景気判断は、前回の「経済活動が緩やかなペースで拡大」から、「経済成長が年末に減速したにもかかわ
らず、労働市場の状況はさらに改善」へと変更。労働市場の堅調さが示される一方、景気判断は下方修正された
・需要項目別では、個人消費と設備投資は「ここ数ヵ月、堅調なペースで増加」から、「ここ数ヵ月、緩やかなペ
ースで拡大」へと下方修正。住宅は「一段と改善」、輸出については「軟調」と、いずれも判断がすえ置かれた
が、「在庫投資は減速した」との一文が付け加えられた
・労働市場については、「継続する雇用者数の増加と、低下が続く失業率を含め、最近の幅広い労働市場の指標は
さらに改善し、労働資源の活用不足が年初以来、かなり縮小したことを裏付けている」との一文が、「力強い雇
用者数の増加を含め、最近の幅広い労働市場の指標は、労働資源の活用不足がさらにいくらか縮小したことを示
している」へと変更。労働資源の活用不足が引き続き改善しているとの見方は変わらず
・インフレについては、前回の「インフレ期待を示す市場の指標は低いままである」のうち、「低いまま」が「さ
らに低下」へと下方修正。一方、「調査に基づく長期的なインフレ期待の指標の一部はやや低下した」のうち、
「一部はやや低下した」が「ここ数ヵ月、総じてほとんど変わらなかった」へと上方修正された
24
経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
Consistent with its statutory mandate, the
Committee seeks to foster maximum employment
and price stability. The Committee currently
expects that, with gradual adjustments in the
stance of monetary policy, economic activity
will continue to expand at a moderate pace and
labor market indicators will continue to
strengthen. Overall, taking into account
domestic and international developments, the
Committee sees the risks to the outlook for
both economic activity and the labor market
as balanced. Inflation is expected to rise to
2 percent over the medium term as the
transitory effects of declines in energy and
import prices dissipate and the labor market
strengthens further. The Committee continues
to monitor inflation developments closely.
Consistent with its statutory mandate, the
Committee seeks to foster maximum employment
and price stability. The Committee currently
expects that, with gradual adjustments in the
stance of monetary policy, economic activity
will expand at a moderate pace and labor
market
indicators
will
continue
to
strengthen. Inflation is expected to remain
low in the near term, in part because of the
further declines in energy prices, but to rise
to 2 percent over the medium term as the
transitory effects of declines in energy and
import prices dissipate and the labor market
strengthens further. The Committee is closely
monitoring global economic and financial
developments
and
is
assessing
their
implications for the labor market and
inflation, and for the balance of risks to the
outlook.
法で 定められ た責務に基 づき、委員 会は雇 用
の最 大化と物価安 定の促進を めざしている 。委
員会 は現在、金融 政策のスタ ンスを緩やか に調
整す ることによっ て、経済活 動は緩やかな ペー
スで 拡大を続け、 労働市場の 指標は引き続 き力
強さ を増すと予想 している。 全般的に国内 外の
状況 を考慮すると 、委員会は 経済状況と労 働市
場の 双方の見通し に対するリ スクが安定し てい
ると みている。イ ンフレは中 期的に、エネ ルギ
ー価 格や輸入物価 の低下によ る一時的な要 因が
解消し、労働市場がさらに力強さを増すにつれ、
2%へ上昇すると予想される。委員会は、インフ
レ動向を引き続き注視している。
法で 定められ た責務に基 づき、委員 会は雇 用
の最 大化と物価安 定の促進を めざしている 。委
員会 は現在、金融 政策のスタ ンスを緩やか に調
整す ることによっ て、経済活 動は緩やかな ペー
スで 拡大し、労働 市場の指標 は引き続き力 強さ
を増 すと予想して いる。イン フレは、エネ ルギ
ー価 格のさらなる 低下を一因 に、短期的に は低
いま まにとどまる が、中期的 に、エネルギ ー価
格や 輸入物価の低 下による一 時的な要因が 解消
し、労働市場がさらに力強さを増すにつれ、2%
へ上 昇すると予想 される。委 員会は、世界 経済
と金 融動向を注視 し、労働市 場とインフレ 、見
通し に対するリス ク・バラン スへの影響を 評価
している。
<ポイント>
・今後の景気見通しは、「金融政策のスタンスを緩やかに調整することによって、経済活動は緩やかなペースで拡
大」、「労働市場の指標は引き続き力強さを増す」との見方に変更なし
・物価の見通しについては、前回の「中期的に、エネルギー価格や輸入物価の低下による一時的な要因が解消し、
労働市場がさらに力強さを増すにつれ、2%へ上昇する」との一文に、「エネルギー価格のさらなる低下を一因
に、短期的には低いままにとどまる」が付け加えられ、短期的には低インフレが継続するとの見方が示された
・年始からの金融市場の混乱を受け、「全般的に国内外の状況を考慮すると、委員会は経済状況と労働市場の双方
の見通しに対するリスクが安定しているとみている」が削除。代わって、「委員会は、世界経済と金融動向を注
視し、労働市場とインフレ、見通しに対するリスク・バランスへの影響を評価している」との一文が付け加えら
れ、海外情勢への警戒姿勢が示された
The Committee judges that there has been
considerable improvement in labor market
conditions this year, and it is reasonably
confident that inflation will rise, over the
medium term, to its 2 percent objective. Given
the economic outlook, and recognizing the
time it takes for policy actions to affect
future economic outcomes, the Committee
decided to raise the target range for the
Given the economic outlook, the Committee
decided to maintain the target range for the
federal funds rate at 1/4 to 1/2 percent. The
stance
of
monetary
policy
remains
accommodative, thereby supporting further
improvement in labor market conditions and a
return to 2 percent inflation.
25
経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
federal funds rate to 1/4 to 1/2 percent. The
stance
of
monetary
policy
remains
accommodative after this increase, thereby
supporting further improvement in labor
market conditions and a return to 2 percent
inflation.
In determining the timing and size of future
adjustments to the target range for the
federal funds rate, the Committee will assess
realized and expected economic conditions
relative to its objectives of maximum
employment and 2 percent inflation. This
assessment will take into account a wide range
of information, including measures of labor
market conditions, indicators of inflation
pressures and inflation expectations, and
readings on financial and international
developments. In light of the current
shortfall of inflation from 2 percent, the
Committee will carefully monitor actual and
expected progress toward its inflation goal.
The
Committee
expects
that
economic
conditions will evolve in a manner that will
warrant only gradual increases in the federal
funds rate; the federal funds rate is likely
to remain, for some time, below levels that
are expected to prevail in the longer run.
However, the actual path of the federal funds
rate will depend on the economic outlook as
informed by incoming data.
In determining the timing and size of future
adjustments to the target range for the
federal funds rate, the Committee will assess
realized and expected economic conditions
relative to its objectives of maximum
employment and 2 percent inflation. This
assessment will take into account a wide range
of information, including measures of labor
market conditions, indicators of inflation
pressures and inflation expectations, and
readings on financial and international
developments. In light of the current
shortfall of inflation from 2 percent, the
Committee will carefully monitor actual and
expected progress toward its inflation goal.
The
Committee
expects
that
economic
conditions will evolve in a manner that will
warrant only gradual increases in the federal
funds rate; the federal funds rate is likely
to remain, for some time, below levels that
are expected to prevail in the longer run.
However, the actual path of the federal funds
rate will depend on the economic outlook as
informed by incoming data.
委員 会は労働 市場が今年 かなり改善 したと 判
断しており、インフレが中期的に 2%の到達点へ
上昇 すると合理的 に確信して いる。経済見 通し
を踏 まえ、政策行 動が今後の 経済に影響を 及ぼ
す時間を考慮したうえで、委員会は FF レートの
誘 導目標レ ンジを 0.25- 0.5%へ と引き上 げる
こと を決定した。 金融政策の スタンスは今 回の
利上 げ後も引き続 き緩和的で あり、労働市 場の
さらなる改善と、2%のインフレへの回帰を支え
る。
経済見通しを踏まえ、委員会は FF レートの誘
導 目標レン ジを 0.25-0.5%です え置くこ とを
決定 した。金融政 策のスタン スは引き続き 緩和
的であり、労働市場のさらなる改善と、2%のイ
ンフレへの回帰を支える。
誘導 目標レン ジの今後の 調整時期と 幅を決 定
するにあたっては、雇用最大化と 2%のインフレ
とい う到達点に照 らして、経 済状況の実績 と見
通し を評価する。 この評価に は、労働市場 の状
況に 関するさらな る尺度、イ ンフレ圧力お よび
イン フレ期待を示 す指標、金 融と国際動向 の見
通し を含む幅広い 情報を考慮 する。インフ レが
現時点で 2%に届いていないことを踏まえ、委員
会は インフレ目標 に向けた実 際の実績と見 通し
誘導 目標レン ジの今後の 調整時期と 幅を決 定
するにあたっては、雇用最大化と 2%のインフレ
とい う到達点に照 らして、経 済状況の実績 と見
通し を評価する。 この評価に は、労働市場 の状
況に 関するさらな る尺度、イ ンフレ圧力お よび
イン フレ期待を示 す指標、金 融と国際動向 の見
通し を含む幅広い 情報を考慮 する。インフ レが
現時点で 2%に届いていないことを踏まえ、委員
会は インフレ目標 に向けた実 際の実績と見 通し
26
経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
を注視する。委員会は、経済状況が FF レートの
緩や かな引き上げ しか正当化 しない形で進 むと
予測しており、FF レートは当面、長期に達成す
ると 見込まれる水 準を下回っ て推移する可 能性
が高い。しかしながら、FF レートの実際の道筋
は、 今後入手する データによ る経済見通し 次第
である。
を注視する。委員会は、経済状況が FF レートの
緩や かな引き上げ しか正当化 しない形で進 むと
予測しており、FF レートは当面、長期に達成す
ると 見込まれる水 準を下回っ て推移する可 能性
が高い。しかしながら、FF レートの実際の道筋
は、 今後入手する データによ る経済見通し 次第
である。
<ポイント>
・FF レートの誘導目標レンジは 0.25-0.5%ですえ置き
・「金融政策のスタンスは引き続き緩和的」、「経済状況が FF レートの緩やかな引き上げしか正当化しない形で
進む」、「FF レートは当面、長期に達成すると見込まれる水準を下回って推移する可能性が高い」がいずれも
すえ置かれ、利上げペースはゆっくりとしたものになるとの見方を維持
・一方、次回の利上げについては、「経済状況の実績と見通しを評価する」、「今後入手するデータによる経済見
通し次第」との一節がすえ置かれ、利上げは今後の経済指標次第との姿勢に変更なし
The Committee is maintaining its existing
policy of reinvesting principal payments from
its holdings of agency debt and agency
mortgage-backed
securities
in
agency
mortgage-backed securities and of rolling
over maturing Treasury securities at auction,
and
it
anticipates
doing
so
until
normalization of the level of the federal
funds rate is well under way. This policy, by
keeping
the
Committee's
holdings
of
longer-term securities at sizable levels,
should help maintain accommodative financial
conditions.
The Committee is maintaining its existing
policy of reinvesting principal payments from
its holdings of agency debt and agency
mortgage-backed
securities
in
agency
mortgage-backed securities and of rolling
over maturing Treasury securities at auction,
and
it
anticipates
doing
so
until
normalization of the level of the federal
funds rate is well under way. This policy, by
keeping
the
Committee's
holdings
of
longer-term securities at sizable levels,
should help maintain accommodative financial
conditions.
委員 会は保有 する政府機 関債や住宅 ローン 担
保証 券からの償還 資金を住宅 ローン担保証 券に
再投 資し、償還を 迎える国債 を入札でロー ルオ
ーバーする現在の政策を維持し、FF レートの水
準が 十分正常化す るまで、継 続すると予測 して
いる 。大規模な長 期債保有を 維持する委員 会の
政策 は、緩和的な 金融環境を 維持していく こと
につながるだろう。
委員 会は保有 する政府機 関債や住宅 ローン 担
保証 券からの償還 資金を住宅 ローン担保証 券に
再投 資し、償還を 迎える国債 を入札でロー ルオ
ーバーする現在の政策を維持し、FF レートの水
準が 十分正常化す るまで、継 続すると予測 して
いる 。大規模な長 期債保有を 維持する委員 会の
政策 は、緩和的な 金融環境を 維持していく こと
につながるだろう。
<ポイント>
・保有債券の償還資金の再投資は継続
・再投資については、「FF レートの水準が十分正常化されるまで、継続すると予測している」との一文に変更な
く、FRB のバランスシートを今後も維持するとの見方がすえ置かれた
Voting for the FOMC monetary policy action
were: Janet L. Yellen, Chair; William C.
Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; Charles
L. Evans; Stanley Fischer; Jeffrey M. Lacker;
Dennis P. Lockhart; Jerome H. Powell; Daniel
K. Tarullo; and John C. Williams.
Voting for the FOMC monetary policy action
were: Janet L. Yellen, Chair; William C.
Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; James
Bullard; Stanley Fischer; Esther L. George;
Loretta J. Mester; Jerome H. Powell; Eric
Rosengren; and Daniel K. Tarullo.
この FOMC の金融政策に賛成票を投じたのは、
イエ レン議長、ダ ドリー副議 長、ブレイナ ード
理事 、エバンス総 裁、フィッ シャー副議長 、ラ
ッカー総裁、ロックハート総裁、パウエル理事、
タルーロ理事、ウィリアムズ総裁。
この FOMC の金融政策に賛成票を投じたのは、
イエ レン議長、ダ ドリー副議 長、ブレイナ ード
理事 、ブラード総 裁、フィッ シャー副議長 、ジ
ョー ジ総裁、メス ター総裁、 パウエル理事 、ロ
ーゼングレン総裁、タルーロ理事。
<ポイント>
・輪番制で投票権者 4 名(エバンス・シカゴ連銀総裁、ラッカー・リッチモンド連銀総裁、ロックハート・アトラ
27
経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
ンタ連銀総裁、ウィリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁)が交代し、ブラード・セントルイス連銀総裁、ジョ
ージ・カンザスシティ連銀総裁、メスター・フィラデルフィア連銀総裁、ローゼングレン・ボストン連銀総裁が
投票権者として加わる
28
経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
人民元は元安方向で推移
人民元が SDR の構成通貨へ
(図表1)SDRの通貨バスケット構成比率
2015 年 11 月 30 日、IMF(国際通貨基金)は、SDR
%
(特別引き出し権)の構成通貨として、人民元の採
用を正式に発表した。SDR とは、為替市場で流通す
%
8.09
11.3
8.33
9.4
41.9
41.73
10.92
る通貨とは異なり、IMF が通貨危機などに備え、出
資金に応じて IMF 加盟国に配分される「準備通貨」
30.93
37.4
であり、外貨準備の不足時には加盟国間で SDR を外
2015年
貨と交換することができる。SDR の価値は、複数の
通貨から構成される「通貨バスケット」に基づいて
決められている。ユーロが導入された 1999 年以降、
通貨バスケットは、米ドル、ユーロ、日本円、およ
び英ポンドの 4 通貨で構成されてきたが、今回の決
定で、人民元が 2016 年 10 月以降加わることになる。
構成割合は 10.9%と、米ドル(41.7%)、ユーロ
(30.9%)に次ぐ第 3 位となり、日本円(8.3%)
は第 4 位に後退する見通しである(図表 1)。
SDR の構成通貨になるには、①過去 5 年間の財・
米ドル
ユーロ
2016年10月以降
人民元
日本円
英ポンド
(出所)IMF
(図表2)財・サービス輸出額と世界に占めるシ ェア
(5年平均)
(単位:10億SDR、%)
2005-2009年
2010-2014年
国・地域
金額 シェア 国・地域
金額 シェア
ユーロ圏
2,146 19.9 ユーロ圏
2,662 18.3
米国
1,539 14.3
米国
1,985 13.6
中国
833
7.7
中国
1,533 10.5
英国
778
7.2
英国
731
5
日本
616
5.7
日本
707
4.8
(出所)IMF
サービス輸出額が世界の上位であることや、②自由利用可能通貨であることの二つの要件を IMF が
認めることである。①については、中国の財・サービス輸出額は過去 5 年間の平均で世界第 3 位と
なっており、その実績は十分なものだった(図表 2)。一方、②については、国際取引で広く使わ
れているかどうかを IMF が判断する。中国の場合、金融資本市場の改革は道半ばであり、「自由利
用可能通貨」として十分ではないものの、今回の決定にあたって、IMF ではここ数年中国が金融資
本市場の自由化を徐々に進めてきたことを評価したとみられる。また、引き続き中国に対して、市
場の透明性向上などを促すといった目的もあったとみている。
中国が人民元の SDR の構成通貨入りを求める理由
中国が人民元の SDR 採用を意識し始めたのは、2009 年のことである。人民銀行の周小川元総裁が、
ドルを基軸通貨とする現行の国際通貨システムに改革を提言する「国際通貨システムの改革に関す
る思考」を発表し、SDR の国際準備通貨としての役割強化を唱えた。また、SDR の構成通貨を GDP
シェアに基づく形にすべきとの考えも示し、SDR に人民元を加えるよう提言した。IMF では 5 年ご
とに SDR を構成する通貨バスケットの見直しを行っているが、2009 年の見直し時には、財・サービ
ス輸出額の面では要件をクリアしたものの、人民元が自由利用可能通貨としては不十分との考えか
ら、採用は見送られた。
中国では、2015 年の見直しをにらんで、資本市場の開放に向けて段階的な取り組みを行なってき
た。昨年はこうした動きを加速させ、7 月に海外中央銀行や政府系ファンド等金融機関の債券取引
市場への参入規制を緩和し、人民元を運用しやすい環境の整備を進めたほか、8 月には、人民銀行
が人民元の基準値の算出方法を実勢に近づける形に変更した。10 月には、預金基準金利の上限を撤
廃するなど、金利の自由化にも踏み切った。
29
経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
人民元の SDR の構成通貨入りが決まった際、ラガルド IMF 専務理事は、「今回の決定は、中国当局
が自国の通貨金融システム改革で過去数年にわたり成し遂げた前進の承認でもある」と、中国の取
り組みを評価する姿勢を示している。
準備通貨は実際の通貨ではなく、売買等で使用されることはない。中国が人民元の SDR の構成通
貨入りにこだわった主な理由として考えられるのが、人民元の国際的な地位向上である。10 月に中
国が主導する AIIB(アジアインフラ投資銀行)の設立調印式が行なわれ、創設メンバーとして 57
ヵ国が署名し、12 月に正式に発足した。中国は、陸上と海上の二つのルートでアジアと欧州をつな
ぐ「シルクロード経済圏構想」をたてており、AIIB は金融面からの支援を行なっていくものとみら
れる。当面は、ドル建て融資が中心になるとみるものの、いずれは人民元建てでの取引を拡大して
いくものとみられ、こうした動きを後押しする意味でも、人民元の信用力の向上に取り組む必要が
あったとみている。
ただ、国境を超える人民元取引は依然として制限が残るなど、人民元の国際化には資本市場開放
へ向けたいっそうの取り組みが必要となる。ラガルド専務理事は、「(人民元の)運営上の課題は
残るものの、中国が現在行なっている改革を継続、かつ深化させることが重要である」と発言して
おり、引き続き IMF は金融改革を促していくものとみている。
今後の人民元は元安方向へ
人民元の SDR 構成通貨としての採用決定を受け、外貨準備として各国での元の積み増し需要が発
生することが見込まれる。ただ、バスケット通貨としての運用開始は今年の 10 月以降であり、実
際に積み増す場合でも、債券市場が発展途上であることもあって、ゆっくりと買入れを進めていく
とみられることから、元高要因としては限定的と予
想する。また、AIIB の元建て取引の拡大も、中長期
的な見通しであることから、短期的な元高圧力には
なりにくいとみる。
(図表3)実効為替レートの推移
2010=100
140
130
実質
名目
120
人民元は、SDR の構成通貨入り決定前の昨年 11
110
月ごろから、元安傾向を強めている(図表 3)。事
100
実上米ドルにペッグしてきたことなどを背景に、実
90
とや、当局が今後、市場実勢に沿った運営を行なっ
80
70
96/12
97/12
98/12
99/12
00/12
01/12
02/12
03/12
04/12
05/12
06/12
07/12
08/12
09/12
10/12
11/12
12/12
13/12
14/12
15/12
質 実 効 為替 レ ート ベ ース で は上 昇 が続 い てき た こ
ていくとの見方が強まったことなどが、元安進行の
(出所)BIS
主な要因として挙げられる。12 月 11 日、人民銀行
(図表4)ドル・元為替レートの推移
元/ドル
6.90
センターは、ドル、ユーロ、円などの 13 通貨から
6.75
構 成 さ れる 人 民元 の 価値 を 示す 新 指標 の 発表 を 始
6.60
めたことも、ドルとの連動を薄める動きとして捉え
6.45
られ、元安圧力につながったとみられる。
6.30
年が明けた 4 日には、中国の製造業 PMI(財新)
6.15
の結果が好不況の境目である 50 を 10 ヵ月連続で下
6.00
回り、主な市場予想にも届かなかったことを嫌気し
て、6.5377 元/ドルまで元安が進んだほか、6 日に
30
10/07
10/10
11/01
11/04
11/07
11/10
12/01
12/04
12/07
12/10
13/01
13/04
13/07
13/10
14/01
14/04
14/07
14/10
15/01
15/04
15/07
15/10
16/01
傘 下 で 上海 外 国為 替 市場 を 運営 す る中 国 外貨 取 引
(出所)ファクトセット
経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
は、人民銀行が基準値を 6.5646 元/ドルと、対前日での下げ幅としては 2011 年 3 月以来の大きさ
となったことから、元売り圧力が強まった(図表 4)。こうしたなか、人民銀行では、相場の過度
の変動や、行き過ぎた元安の回避などを目的として、元買い介入を続けており、外貨準備高は大き
く減少、昨年 12 月末時点では 3 兆 3,304 億ドルと、
(図表5)外貨準備高の推移
2014 年 6 月のピーク時から 2 割近いマイナスとなっ
兆ドル
4.8
ている(図表 5)。
4.0
800
香 港 市 場 を 中 心 と す る オ フ シ ョ ア人 民 元 市 場 で
3.2
400
は、オンショア市場以上に元安が進み、一時 6.6957
2.4
0
1.6
-400
0.8
-800
0.0
-1200
で 人 民 銀 行 によ る 元 買 い介 入 が 入っ た と みら れ る
ことから、乖離幅は縮小したものの、流動性のひっ
迫 を 受 け 、 翌日 物 人 民 元建 て 香 港銀 行 間 取引 金 利
(Hibor)が急上昇する など、短期市場は不安定 な
1200
10/6
10/9
10/12
11/3
11/6
11/9
11/12
12/3
12/6
12/9
12/12
13/3
13/6
13/9
13/12
14/3
14/6
14/9
14/12
15/3
15/6
15/9
15/12
元/ドルまで減価した。11 日以降、オフショア市場
億ドル
外貨準備高(前月差、右軸)
外貨準備高(ストック)
(出所)ファクトセット
動きとなった。
今後についても、中国ではデフレ懸念など景気の先行き不安が強まっており、香港から輸入代金
の支払いを装った資金流出の動きも懸念されるなど、引き続き資本流出が元安圧力として働く可能
性が高い。ただ、急速な元安進行は、輸出回復のためのプラス材料となる一方、消費主導の経済へ
の構造転換を進めるなか、輸入物価の上昇を通じ、国内景気の下押し圧力として働くとみられる。
ドル建て債務負担の拡大も、中国企業の財務内容や資金繰りの悪化につながる可能性が高い。9 月
には中国が G20 サミットの議長国になることが決まっていることもあって、人民銀行は市場実勢に
沿った運営をしつつも、市場の混乱を招きかねない急激な元安進行は望んでいないとみられ、年間
6.5%程度の緩やかなペースでの元安方向の推移を維持するとみている。(担当:平野)
31
経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
主要経済指標レビュー(1/25~2/5)
本≫
○ 12 月雇用関連統計(1 月 29 日)
12 月の完全失業率(季調済)は 3.3%と、前月から
横ばいとなった。完全失業者数が前月比+5 万人の増
加となった一方、就業者数が同+45 万人増加した。有
効求人倍率(季調済)も 1.27 倍と、1991 年 12 月以来
の高水準となっており、雇用環境の底堅さが示された
形。ただ、求人は雇用形態や職種の偏りが続いており、
雇用の質の改善ペースは鈍い。労働力人口は、生産年
齢人口の減少を背景に、回復が頭打ちとなりつつあり、
その改善も高齢者や女性が中心で、就職した場合でも
雇用形態は非正規のケースが多いとみられる。企業側
でも採用ニーズは、非正規や、生産性の劣る一部の職
種が中心であり、労働需給の引き締まりを受けた賃金
上昇も、全職種平均で見る限り、緩やかな上昇にとど
まるとみている。
32
15
10
5
0
-5
金額指数=数量指数×価格指数
輸出金額指数
輸出数量指数
15/12
15/09
15/06
15/03
14/12
14/09
14/06
14/03
13/12
13/09
13/06
13/03
-10
輸出価格指数
(出所)財務省「貿易統計」
鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移
05年=100
112
05年=100
120
108
115
104
110
100
105
96
100
生産指数(左軸)
出荷指数(左軸)
在庫指数(右軸)
92
95
15/12
15/09
15/06
15/03
14/12
14/09
14/06
14/03
13/12
13/09
13/06
13/03
12/09
12/12
90
12/06
88
12/03
○ 12月鉱工業生産(1月29日)
12 月の鉱工業生産指数(季調済)は前月比▲1.4%
と、2 ヵ月連続のマイナスとなった。出荷指数も同▲
1.7%と 2 ヵ月連続のマイナス。設備投資の先行指標
とされる資本財出荷(除.輸送機械)は、同▲3.7%と
大幅マイナスで、いまだ強気の企業の設備投資計画は、
例 年以上 の大幅 下方修 正と なる可 能性が 高まっ てい
る。1 月の生産計画は比較的強めとなっており、製造
業 の在庫 調整も 終盤に 差し 掛かっ ている とみら れる
ことから、年明け以降は下げ止まると予想する。ただ、
世界経済は先行き不安が高まっていること、春闘の要
求水準が全体として下がるなか、個人消費も伸び悩む
とみられることから、2016 年度も生産の回復ペースは
きわめて緩慢なものにとどまると予想する。
輸出金額の推移(前年比)
%
20
11/12
○ 12月貿易統計(1月25日)
12 月 の 貿 易 統 計 に よ る と 、 輸 出 金 額 は 前 年 比 ▲
8.0%と、3 ヵ月連続のマイナスとなった。輸出の実勢
を示す数量指数は同▲4.4%と 6 ヵ月連続のマイナス
となり、マイナス幅も前月の同▲3.1%から拡大し、
基調的な弱さが示された。数量指数を相手地域別に見
ると、米国向けが同▲8.4%、中国向けが同▲2.4%と、
主要輸出国である米中向けの低迷が目立つ。今後につ
いても、中国を含むアジア向けは、中国景気の減速が
下押し圧力となり、回復ペースは鈍いものにとどまる
可能性が高い。米国向けについても、米国の生産活動
の弱さや、米国製造業が東日本大震災以降、部品の調
達先を多様化した影響などもあるため、伸び悩みが続
くとみており、輸出は来年度にかけても停滞気味の推
移が続くと予想する。
(出所)経済産業省「鉱工業指数」
倍
1.4
有効求人倍率と完全失業率の推移
%
7.0
有効求人倍率〈左軸〉
1.2
完全失業率〈右軸〉
6.0
1.0
5.0
0.8
4.0
0.6
3.0
※2011年3~8月の完全失業率は補完推計値から算出
0.4
2.0
10/12
11/03
11/06
11/09
11/12
12/03
12/06
12/09
12/12
13/03
13/06
13/09
13/12
14/03
14/06
14/09
14/12
15/03
15/06
15/09
15/12
≪日
(出所)厚生労働省「一般職業紹介状況」、総務省「労働力調査」
経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
33
116
108
114
106
112
104
110
102
108
100
106
98
104
96
102
実質消費支出(左軸)
実質コア消費支出(左軸)
消費総合指数(右軸)
94
92
100
98
96
11/12
12/03
12/06
12/09
12/12
13/03
13/06
13/09
13/12
14/03
14/06
14/09
14/12
15/03
15/06
15/09
15/12
90
(出所)総務省「家計調査」、内閣府「消費総合指数」
%
3.5
全国コアCPIの推移(前年同月比寄与度)
電気・ガス・灯油
ガソリン
生鮮食品を除く食料
その他
コアCPI
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
-0.5
-1.0
15/12
15/09
15/06
15/03
14/12
14/09
14/06
14/03
13/12
13/09
13/06
13/03
12/12
-1.5
(出所)総務省「消費者物価指数」
利用関係別新設住宅着工戸数の推移
(季調済年率換算戸数)
万戸
万戸
60
120
50
100
40
80
30
60
40
(出所)国土交通省「住宅着工統計」
15/12
15/09
20
15/06
15/03
14/12
14/06
14/03
貸家
総戸数(右軸)
13/12
10
13/09
持家
分譲
14/09
20
13/06
○ 12月新設住宅着工戸数(1月29日)
12 月の新設住宅着工件数(季調済)は前月比▲2.2%
と、2 ヵ月ぶりのマイナスとなった。利用関係別に見
ると、貸家が同+1.4%と 2 ヵ月連続のプラスとなっ
たものの、持ち家が同▲5.1%と 2 ヵ月ぶりのマイナ
ス、分譲が同▲6.1%と 3 ヵ月ぶりのマイナスとなっ
た。今後については、引き続き低金利政策や住宅ロー
ン減税などの政策措置が下支えとなるとみられる。た
だ、貸家については、節税需要が鈍化しつつあるとみ
られるほか、省エネ住宅エコポイントやフラット 35S
金 利の引 き下げ 幅拡大 が終 了した ことも 下押し 圧力
になるとみている。加えて、需要先食いの影響も残っ
ているとみられることから、回復ペースは鈍いものに
とどまると予想する。
05年=100
118
110
13/03
○ 12月全国消費者物価指数(1月29日)
12 月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く消費者
物価指数、以下コア CPI)は前年比+0.1%と、前月と
同じ伸びとなった。コアコア CPI(食料〈酒類除く〉・
エネルギーを除く消費者物価指数)は同+0.8%と、
前月の同+0.9%から伸び幅が縮小。今後は、昨秋以
降の原油安の効果が一巡することで、コア CPI は当面、
小幅ながらもプラス傾向が続くとみる。ただ、円安の
影 響によ る押し 上げ効 果が 縮小傾 向で推 移する とみ
られるほか、需給面からの押し上げ圧力も弱いことか
ら、2015 年度通年でのコア CPI は同+0.1%程度に落
ち着くとみる。2016 年度も、足元の原油価格が軟調に
推移している影響に加え、期待インフレも高まらない
とみられることから、同+0.5%前後の伸びにとどま
ると予想する。
実質消費関連指数(季調値)の推移
10年=100
112
12/12
○ 12月個人消費関連統計(1月29日)
12 月の家計調査によると、2 人以上世帯の消費支出
は実質ベースで前年比▲4.4%と、11 月の同▲2.9%か
らマイナス幅が拡大した。降雨などによる天候不順の
影響のほか、温暖な気温が続いたことで、冬物衣料の
販 売不振 につな がった こと などが 落ち込 みにつ なが
った。勤労者世帯の実質可処分所得も 4 ヵ月連続の前
年比マイナスとなっており、家計が節約志向を強めて
いる様子も示された。販売サイドの百貨店売上高を見
ても、12 月は同 0.1%と、小幅のプラスにとどまって
いる。今後は、昨冬以降の原油安が家計の実質購買力
の改善につながっているとみられるものの、名目賃金
の伸び悩みが続くなか、食品や日用品価格の上昇が家
計負担の増大につながっていることもあって、個人消
費 の持ち 直しペ ースは 緩慢 なもの にとど まると 予想
する。
経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
34
一致CIの推移
2010年=100
120
115
110
105
100
95
90
7ヵ月後方移動平均
85
3ヵ月後方移動平均
80
一致CI
(出所)内閣府「景気動向指数」
15/12
14/12
13/12
12/12
11/12
10/12
09/12
08/12
07/12
06/12
75
05/12
○ 12 月景気動向指数(2 月 5 日)
12 月の景気動向指数では、一致 CI が 111.2(前月
差▲0.7 ポイント)と、2 ヵ月連続で低下した。先行
CI も 102.0(前月差▲1.2 ポイント)と、2 ヵ月連続
のマイナス。内閣府の基調判断は、「足踏みを示して
いる」がすえ置かれた。一致 CI では、生産・出荷関
連のマイナス寄与が大きい。生産計画(製造工業生産
予測調査)では、1 月は前月比+7.6%の増産見込み、
2 月は同▲4.1%と減産計画となっているものの、1 月
の増産見込みは強気で下方修正される可能性が高く、
当面の一致 CI も一進一退の推移が続くとみる。今後
の景気は、名目賃金が伸び悩むことで、個人消費の持
ち直しペースは鈍いと見込まれるほか、世界景気の先
行き不安が高まるなか、輸出も停滞気味の推移が続く
とみており、緩やかな回復にとどまると予想する。
経済ウォッチ
国≫
35
200
1,000
14/6
12/6
11/6
住宅着工件数
新築住宅販売件数
15/12
2,000
15/6
400
14/12
3,000
13/12
600
13/6
4,000
12/12
800
11/12
5,000
10/12
1,000
10/6
6,000
09/12
1,200
中古住宅販売件数(右軸)
(出所)米商務省、米不動産業協会(NAR)
ISM製造業景況指数の推移
ポイント
65
60
55
50
45
40
35
16/1
15/7
15/1
14/7
14/1
13/7
13/1
12/7
12/1
11/7
11/1
10/7
10/1
09/7
30
(出所)米サプライマネジメント協会(ISM)
600
製造業新規受注の推移
10億ドル
10億ドル
360
受注額
(出所)米商務省
耐久財(右軸)
15/12
15/6
120
14/12
150
200
14/6
180
250
13/12
300
13/6
210
12/12
240
350
12/6
270
400
11/12
450
11/6
300
10/12
330
500
10/6
550
09/12
○ 12月製造業新規受注(2月4日)
12 月の製造業新規受注は前月比▲2.9%と、2 ヵ月
連続で減少した。除く輸送機器ベースでも、同▲0.8%
と、2 ヵ月連続の減少となった。耐久財は同▲5.0%と、
航空機や機械が落ち込んだ結果、2 ヵ月連続で減少。
非耐久財も同▲0.8%と、石油などが低調に推移し、6
ヵ月連続で減少した。設備投資の先行指標とされる非
防衛資本財受注(除く航空機)は同▲4.3%と、2 ヵ月
連続の減少となった。今後の新規受注は、自動車販売
などに支えられ、輸送機器などが回復傾向で推移する
とみるが、海外景気の減速や、原油安を背景にエネル
ギー関連業種への下押し圧力が続くことから、停滞気
味の推移が続くと予想する。
千件
7,000
新築・中古住宅販売件数と住宅着工件数の推移
09/6
○ 1月ISM製造業景況指数(2月1日)
1 月の ISM 製造業景況指数は 48.2 と、7 ヵ月ぶりに
上昇したものの、市場予想(48.5)を下回った。一方、
活動の拡大を示した業種は、「PC・電子部品」、「機
械」など全 18 業種中 8 業種で、12 月の 6 業種から増
加した。構成項目別に見ると、生産が 2 ヵ月連続で上
昇したほか、新規受注も 3 ヵ月ぶりに上昇し、いずれ
も好不況の境目となる 50 を 3 ヵ月ぶりに上回った。
ただ、雇用は 2 ヵ月連続で低下し、50 を下回った。中
国景気への懸念や、原油安を背景にエネルギー関連業
種の業況が低調に推移していることから、企業景況感
には当面下押し圧力がかかるとみるが、交易条件の改
善などが企業収益を下支えするとみられ、春以降はゆ
っくりと持ち直しに向かうと予想する。
千件
1,400
09/1
○ 12月住宅販売・着工件数(1月20,22,27日)
12 月の米新築住宅販売は年率換算で 54.4 万戸、前
月比+10.8%と、3 ヵ月連続で増加し、市場予想(年
率換算 50.0 万戸)を大きく上回った。過去 3 ヵ月分
も計+2.8 万戸上方修正されており、住宅販売は回復
基調を維持している。中古住宅販売も年率換算で 546
万戸、同+14.7%と、大幅増となったが、これは購入
時の手続き書類に関する規制変更に伴い、11 月分の契
約が遅れ、12 月分に計上された影響が大きい。一方、
住宅着工件数は年率換算で 114.9 万戸、
同▲2.5%と、
2 ヵ月ぶりに減少した。雇用環境の改善などに支えら
れ、住宅市場は今後も回復傾向が続くとみるが、在庫
不足などの供給制約が残ることなどから、力強い回復
には至らないと予想する。
08/12
≪米
2016 年 2 月第 2 週号
非耐久財(右軸)
経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
千人
非農業部門雇用者月間増減数と失業率
600
11
4
-1000
3
非農業部門雇用者月間増減数
失業率(右軸)
16/1
5
-800
15/1
6
-600
14/1
-400
13/1
7
12/1
8
-200
11/1
9
0
10/1
200
09/1
10
(出所)米労働省
36
%
400
08/1
○ 1月雇用統計(2月5日)
1 月の非農業部門雇用者数は前月比+15.1 万人と、
増加幅が 4 ヵ月ぶりに 20 万人の大台を割り込み、市
場予想(同+19.0 万人)をも下回った。一方、家計調
査から集計される失業率は 12 月の 5.0%から 4.9%へ
と、3 ヵ月ぶりに改善し、ほぼ 8 年ぶりの低水準とな
った。時間当たり賃金も前月比+0.5%と、1 年ぶりの
高い伸びとなるなど、労働市場の回復基調は続いてい
る。ただ、不安定な金融市場や、製造業関連などの経
済指標が軟調であることを背景に、FRB(米連邦準備
制度理事会)は 3 月 15-16 日開催予定の FOMC(米連
邦公開市場委員会)で利上げを見送ると予想する。
経済ウォッチ
州≫
37
16/1
15/1
14/1
13/1
12/1
11/1
09/1
08/1
07/1
10/1
期待指数
IFO景況指数
ユーロ圏景況感指数
ポイント
125
115
105
95
85
ドイツ
スペイン
フランス
ユーロ圏
16/1
15/1
14/1
13/1
12/1
11/1
10/1
09/1
65
08/1
75
イタリア
(出所)欧州委員会
6
M3と民間部門貸出額の推移(前年比)
%
5
4
3
2
1
0
-1
-2
M3
(出所)ECB
民間部門貸出額
15/12
15/6
14/12
14/6
13/12
13/6
-3
12/12
○ 12月ユーロ圏マネーサプライ(1月29日)
12月の ユー ロ圏 マネ ーサ プラ イ( M3)は 前年 比+
4.7%と、2ヵ月連続でプラス幅が縮小した。民間向け
貸出額も同+1.2%→+0.6%と、3ヵ月連続ぶりにプ
ラス幅が縮小。民間向け貸出額の内訳を見ると、家計
向けが同+1.9%と、前月と同じ伸びにとどまったも
のの、非金融企業向けは同+0.6%→+0.1%と、プラ
ス幅が縮小した。ECB(欧州中央銀行)による量的緩
和策などを背景に、銀行の貸出態度が緩和しているほ
か、貸出金利も低下傾向にあることなどから、ユーロ
圏の民間向け貸出は今後、回復傾向で推移すると予想
する。
現況指数
(出所)Ifo経済研究
12/6
○ 1月ユーロ圏景況感指数(1月28日)
1月のユーロ圏景況感指数は105.0と、2ヵ月ぶりに
悪化した。構成項目別に見ると、小売業景況感が2.9
と、前月から横ばいとなったものの、鉱工業景況感は
▲2.0→▲3.2、サービス業景況感は12.8→11.6、消費
者信頼感は▲5.7→▲6.3、建設業景況感は▲17.6→▲
19.1と、軒並み悪化した。主要国別では、フランスが
102.1→ 103.2と、3ヵ月ぶりに改善した一方、ドイツ
は106.8→104.7、イタリアは109.5→107.8、スペイン
は111.9→ 107.8と、いずれも悪化した。ECB(欧州中
央銀行)による緩和的な金融政策などが下支えすると
みるが、新興国経済の減速が下押し圧力となって、ユ
ー ロ圏景 況感指 数の改 善ペー スは緩 やかなも のにと
どまると予想する。
独Ifo景況感指数
ポイント
125
120
115
110
105
100
95
90
85
80
75
07/1
○ 1月ドイツIfo景況感指数(1月25日)
1 月のドイツ Ifo 景況感指数は 107.3 と、前月の
108.6 から 1.3 ポイント悪化した。同指数の悪化は 2
ヵ月連続。内訳を見ると、現況指数が 112.8→112.5、
期待指数が 104.6→102.4 と、ともに 2 ヵ月連続で悪
化。産業別では、卸売業が 11.8→13.0 と、2 ヵ月ぶり
に改善したものの、製造業は 12.2→8.3、建設業は 1.6
→▲0.7、小売業は 7.3→7.2 と、いずれも悪化した。
雇用環境の改善などを背景に、個人消費が底堅く推移
すると見込まれることから、ドイツ景気は今後も回復
傾向が続くとみる。ただ、新興国向け輸出の低迷など
が足かせとなることで、景気回復ペースは緩やかなも
のにとどまると予想する。
11/12
≪欧
2016 年 2 月第 2 週号
経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
日米欧マーケットの動向
(2016年2月8日現在)
▽各国の株価動向
(円)
(ドル)
日経平均株価
17000
16000
15000
日経平均株価
14000
13000
(出所)ファ クトセット
16/2
15/8
15/11
15/5
15/3
14/9
14/12
14/6
14/4
14/1
13/7
13/10
英国の株価指数(FT100)
7200
15/02
14/11
14/05
14/08
14/03
13/12
13/09
13/06
13/04
13/4
(ポイント)
ドイツの株価指数(DAX)
13/01
(出所)ファ クトセット
13/2
12000
16/2
15/8
15/11
15/5
15/3
14/9
14/12
14/6
14/4
14/1
13/7
(出所)ファ クトセット
13/10
13/4
ダウ工業株30種平均
18000
12/10
12000
12/07
12/04
12/02
13/2
23000
21000
19000
17000
15000
(円)
13000
19000
11000
18000
17000
9000
16000
7000
15000
14000
13000
12000
11000
10000
9000
(ポイント)
8000
7000
13000
19000
6900
11000
6600
10000
6300
9000
6000
5700
16/2
15/11
15/8
15/5
14/12
14/9
14/6
14/4
14/1
13/7
13/10
(出所)ファ クトセット
13/4
5400
16/2
15/11
15/8
15/5
15/3
14/9
14/12
14/6
14/4
14/1
13/10
13/7
13/2
6000
13/4
(出所)ファ クトセット
13/2
7000
15/3
8000
▽外為市場の動向
(ドル)
38
16/2
15/11
15/8
15/5
15/3
14/12
14/9
14/6
14/4
14/1
13/10
16/2
15/11
15/8
15/5
15/3
(出所)ファ クトセット
14/12
16/2
15/11
15/8
15/5
15/3
14/9
14/12
14/6
14/4
14/1
13/10
13/7
13/4
13/2
(出所)ファ クトセット
14/9
110
14/6
120
14/4
130
14/1
140
13/10
150
円/ポンド相場
13/7
200
190
180
170
160
150
140
130
120
110
160
90
13/7
16/2
15/11
15/8
15/5
14/9
14/12
14/6
14/4
15/3
(円)
円/ユーロ相場
100
(出所)ファ クトセット
13/4
(円)
14/1
13/10
13/7
13/4
13/2
(出所)ファ クトセット
ドル/ユーロ相場
13/4
1.45
1.40
1.35
1.30
1.25
1.20
1.15
1.10
1.05
1.00
13/2
円/ドル相場
13/2
(円)
135
130
125
120
115
110
105
100
95
90
85
80
75
70
25
115
(出所)ファ クトセット
100
85
70
55
40
1900
1800
1700
1600
1500
1400
1300
1200
1100
1000
39
16/2
15/11
15/8
(ドル)
16/2
15/11
15/8
15/5
15/3
16/2
15/11
15/8
15/5
15/3
14/12
14/9
14/6
14/4
14/1
(出所)ファ クトセット
15/5
原油先物(WTI、中心月)
14/12
2.4
15/3
-0.1
14/12
0.25
14/9
0.50
14/9
(出所)ファ クトセット
14/6
0.75
14/6
(%)
14/4
政策金利(ユーロ圏、定例オペ最低入札金利)
14/1
1.0
14/4
0.1
14/1
2.0
13/10
(%)
3.5
13/10
0.2
15/2
14/11
14/8
14/5
14/3
13/12
13/9
13/6
13/4
13/1
12/10
12/7
12/5
12/2
(%)
1.1
1.0
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0.0
-0.1
13/10
2.5
13/7
0.3
13/7
3.0
13/7
0.4
13/4
政策金利(米国、FFレート)
13/2
(出所)ファ クトセット
13/4
16/2
15/11
15/8
15/5
15/3
14/12
14/9
14/6
14/4
14/1
0.0
13/2
16/2
15/11
15/8
15/5
15/3
14/12
14/9
14/6
14/4
14/1
0.1
13/4
16/2
15/11
15/8
15/5
15/3
14/12
14/9
14/6
14/4
14/1
13/10
13/7
13/4
日本の無担保コール(O/N)
13/2
16/2
15/11
15/8
15/5
130
15/3
14/12
14/9
14/6
14/4
(ドル)
14/1
(%)
0.5
13/10
13/7
13/2
-0.1
13/10
13/7
13/4
13/2
(%)
0.2
13/10
13/7
(%)
1.00
13/4
0.0
13/4
13/2
0.00
13/2
経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
▽各国の金利動向
長期金利(日本、10年国債)
(出所)ファ クトセット
長期金利(米国、10年国債)
1.5
(出所)ファ クトセット
長期金利(ドイツ、10年国債)
1.9
(出所)ファ クトセット
1.4
0.9
0.4
▽商品市況の動向
金先物(COMEX)
(出所)ファ クトセット
経済ウォッチ
2016 年 2 月第 2 週号
本レポートは、明治安田生命保険 運用企画部 運用調査 G が情報提供資料として作成したものです。本
レポートは、情報提供のみを目的として作成したものであり、保険の販売その他の取引の勧誘を目的と
したものではありません。また、記載されている意見や予測は、当社の資産運用方針と直接の関係はあ
りません。当社では、本レポート中の掲載内容について細心の注意を払っていますが、これによりその
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いた結果生じた直接的、間接的トラブルや損失、損害については、当社は一切の責任を負いません。ま
たこれらの情報は、予告なく掲載を変更、中断、中止することがあります。
●照会先●
明治安田生命保険相互会社
運用企画部 運用調査グループ
東京都千代田区丸の内2-1-1 TEL03-3283-1216
執筆者 :小玉祐一、謝名憲一郎、信本将巳、平野真依子、山口範大、
尾家小春、安藤卓康、玉置菜摘、開發彰徳、村上梨子
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