Comments
Description
Transcript
千葉大学病院における脊髄小脳変性症の遺伝学的検査と遺伝
O-01 千葉大学病院における脊髄小脳変性症の遺伝学的検査と遺伝カウンセリング ―家族歴を欠く 27 症例の解析 Genetic tests and counseling for hereditary spinocerebellar degeneration at Chiba University Hospital ; Analysis of 27 cases without familial history 澤井 摂 1,2 、宇津野 恵美 2、金井 数明 3、佐藤 謙一 2、石毛 崇之 2、糸賀 栄 2、西村 基 1,2、 松下 一之 1,2、桑原 聡 3、野村 文夫 1,2 1 千葉大学 大学院医学研究院 分子病態解析学、2 千葉大学 医学部 附属病院 検査部・遺伝子診療部、 3 千葉大学 大学院医学研究院 神経内科 当院検査部遺伝子検査室では、2003 年から、マルチプレックス PCR 法による遺伝性脊髄小脳変性症の遺伝学的検査(SCA1, 2, 3, 6, 7, 8, 12, 17, DRPLA)を行ってきた。本研究では、遺伝学的検査が実施された脊髄小脳変性症の中で、家族歴を欠く 27 症例を中心にその特徴をまとめ、今後の脊髄小脳変性症に対する遺伝カウンセリングに活かすという視点から考察した。 2003 年 4 月から 2010 年 12 月までに当院神経内科からの依頼で、遺伝性脊髄小脳変性症の遺伝学的検査を行ったのは 67 症例 で、そのうち、検査前に明らかな家族歴を認めなかった症例は 27 症例であった。検査の結果、そのうち 8 例は遺伝性脊髄小 脳変性症と診断され、そのタイプが確定した。脊髄小脳変性症はその約 3 割が遺伝性であり、その遺伝形式は常染色体優性遺 伝が多い。そのため、遺伝性脊髄小脳変性症では、ご家族に同じ疾患の方がいる場合がほとんどである。その場合には、患者 である親世代や同胞の病状の経過をみることで、疾患の症状や経過について認識し、また漠然と遺伝を意識している場合が多 い。明らかな家族歴がない状況で、遺伝学的検査により遺伝性疾患であることが明らかになった場合、疾患のイメージがつか みにくいことや、遺伝の認識がないことで、被検者やその家族が過剰に不安や悩みを抱えることになる場合がある。本研究で は、明らかな家族歴がなく遺伝学的検査で遺伝性脊髄小脳変性症と診断された 8 症例のうち 2 症例については、被検者の同胞 や子供が発症前遺伝子診断を行うことを希望された。遺伝学的検査が臨床検査の中で一般的な検査となりつつあるが、検査前 の遺伝カウンセリング体制など、遺伝学的検査における環境整備の充実が必要である。