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グリーンパワーIC - Japan Patent Office
平成22年度 特許出願技術動向調査報告書(概要) グリーンパワーIC 平成23年4月 特 許 庁 問い合わせ先 特許庁総務部企画調査課 技術動向班 電話:03−3581−1101(内線2155) 第1章 グリーンパワーIC 技術の概要 第1節 グリーンパワーIC に関わる技術の俯瞰 近年、日本を含む世界各国で、グリーンエネルギー関連技術という社会インフラを進化さ せる研究開発が積極的に進められている。グリーンエネルギー関連技術は、太陽光発電や風 力発電等の CO2 を排出しない創エネルギー分野、電気自動車での利用が見込まれるリチウム イオン電池等の蓄エネルギー分野、LED やパワーデバイス等の低消費電力化を図る省エネル ギー分野に分類される。 省エネルギー分野において、各電力変換地点におけるエネルギーロスを最小化するために 重要な役割を担うのが“グリーンパワーIC”である。 ここで、グリーンパワーIC とは、グリーンテクノロジーに貢献し得る広義のパワーデバイ スであり、パワーデバイス、パワーモジュール、狭義のパワーIC 等を含む技術分野であると 本調査では定義付け、具体的には、高耐圧ショットキーバリアダイオード、サイリスタ、高 耐圧 MOSFET、IGBT、インバータモジュール等を含む。 図 1-1 にグリーンパワーIC の技術俯瞰図を示す。 グリーンパワーIC の分野に関わる技術は、基板(結晶成長、結晶の機械加工等)に関連す る技術、デバイス構造(半導体チップ内の構造)に関連する技術、モジュール(組立体)に 関連する技術に、プロセス(製造方法)に関する技術及び製造装置に関連する技術が組み合 わさった体系と見ることができ、本調査はこの五つの技術分野を対象に実施した。これらの 技術に対しては、基板の特性向上、デバイス・モジュールの特性向上、製造技術の改善、小 型化・高集積化・軽量化、信頼性・耐久性の向上などの課題が存在している。 電気・電子機器には、電源回路やモーター等の制御回路が含まれ、そこにはパワーデバイ スが使われているため、パワーデバイスのアプリケーション(応用分野)は広範囲に及んで いる。主なアプリケーションは、発電・送配電システム(スマートグリッド等)、自動車(EV、 HEV 等)、自動車以外の輸送機械(鉄道・船舶・航空機)、産業機器(FA 機器、エレベータ等)、 IT 関連機器(パソコン、携帯電話等)、民生・家電機器(エアコン、FPD、AV 機器等)などに 区分することができる。図 1-2 に示すとおり、アプリケーションによって、パワーデバイス に対する要求仕様は異なっている。したがって、グリーンパワーIC が、低炭素社会を実現す るグリーンイノベーションにより大きく寄与するためには、従来の高性能化、低コスト化を 重視した研究開発だけでなく、 “アプリケーションスペシフィック技術”の開発に注力するこ とが重要である。ここで、アプリケーションスペシフィック技術とは、個別のアプリケーシ ョンで必要とされる機能や性能を徹底的に追求する技術であると本調査では定義付ける。ア プリケーションスペシフィック技術には、今回の調査対象であるグリーンパワーIC 技術だけ でなく、システム化技術、電力制御技術とも深く関連しており、グリーンパワーIC に関わる 技術の動向をアプリケーションと関係付けて捉える際に、これらシステム化技術、電力制御 技術は重要な視点となり得るが、本調査においては対象外である。 - 1 - 図 1-1 グリーンパワーIC の技術俯瞰 グリーンテクノロジー 効果 ・世界の社会インフラの進化 アプリケーション※ 民生・ 家電機器 産業機器 スマート グリッド 鉄道・船舶 ・航空機 ・大規模なアプリケーション の登場 EV ・半導体産業をグローバル に牽引 IT関連機器 アプリケーション・ スペシフィック技術 システム化技術 、電力制御技術 課題 ・基板の特性向上 ・デバイス・モジュールの特性向上 (低損失、高耐圧、高温動作等) ・製造技術の改善 ・小型化・高集積化・軽量化 ・信頼性・耐久性の向上 グリーンパワーIC モジュール(組立体) プロセス 製造装置 :本調査の対象 デバイス構造 :本調査の対象外 ※アプリケーションはグリーンパワーICを 用いるものに限る 基板 図 1-2 アプリケーションと要求性能の概念図 分散電源、家電機器 低損失 大電流 電力系統、新幹線地上設備 高耐圧 SiC物性限界 電車、高圧配電系 Si物性限界 高温動作 高速動作 汎用INV,SW電源 高破壊耐量 EV/HEV 出典:荒井和雄「SiC 半導体のパワーデバイス開発と実用化への戦略」,Synthesiology,3(4),産業技術総合 研究所,p.259-p.271,(2010) 第2節 主要なパワーデバイスの種類とその動作 (1)ダイオード P 型半導体と N 型半導体を接合して電極を設けたものがダイオード(Diode)の基本系で、 PN ダイオードと呼ばれる(図 1-3(a))。順方向の電圧(アノードに正、カソードに負)を印 加すると、電流が流れるが、逆方向の電圧を印加(アノードには負、カソードには正)した ときは、電流は流れない。すなわちダイオードには整流作用がある。なお、ダイオードには - 2 - PN 接合界面の耐圧を高めた PIN ダイオード(図 1-3(b))、ショットキーバリアダイオード(図 1-3(c))など幾つかの種類がある。 図 1-3 ダイオードの構造 陽極(アノード) 陽極(アノード) 陽極(アノード) p p n+ n n n+ n+ 陰極(カソード) 陰極(カソード) 陰極(カソード) (b)PINダイオード (a)PNダイオード (c)ショットキーバリアダイオード (2)サイリスタ サイリスタ(Thyristor)は、図 1-4 に示すように、アノードからカソードへ PNPN と交互 に異なる導電型の半導体が並んだ 4 層構造の素子であり、電流のオン状態と、オフ状態の二 つの安定状態を保持することができる半導体素子である。図示したものは、2 端子サイリス タ及び 3 端子サイリスタである。3 端子サイリスタには、ゲートによってターンオフが可能 となるゲートターンオフサイリスタ(GTO)が含まれる。 図 1-4 サイリスタの構造 陰極(カソード) 陰極(カソード) n+ n+ p ゲート p n p+ n p+ p+ 陽極(アノード) 陽極(アノード) (b)3端子サイリスタ (a)2端子サイリスタ (3)バイポーラトランジスタ パイポーラトランジスタ(Bipolar Transistor)は、NPN 又は PNP の 3 層構造で、エミッ タ、ベース、コレクタの三つの電極を持っている。コレクタとエミッタ間に電圧をかけた状 態でエミッタとベース間に順電流(ベース電流)を流すと、コレクタとエミッタ間に電流(コ レクタ電流)が流れる。この基本動作を利用して、バイポーラトランジスタに、スイッチン グ機能と増幅機能を持たせることができる。パワーデバイスでは高耐圧と高電流密度という - 3 - 要求に対応するため縦型構造を採用することが多く、コレクタはウエハの裏面に形成されて いる(図 1-5)。 図 1-5 バイポーラトランジスタの構造 エミッタ ベース n+ p n n+ コレクタ (4)絶縁ゲート型電界効果トランジスタ 絶縁ゲート型電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)は、メモリやロジック LSI など小信号系の主力デバイスである。パワーデバイ スにおいても代表的なデバイスとして広く用いられている。バイポーラトランジスタと同様、 パワーデバイスでは縦型構造とすることが多い(図 1-6)。ゲートに電圧をかけると、ゲート 下にチャネルが形成されて、ソース、ドレイン間に電流が流れる。この基本動作を利用して、 MOSFET に、スイッチング機能と増幅機能を持たせることができる。 図 1-6 縦型 MOSFET の構造 ゲート ソース p n+ n+ p nn+ ドレイン (5)絶縁ゲートバイポーラトランジスタ 絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT: Insulated Gate Bipolar Transistor)の基 本構造を図 1-7 に示す。IGBT はバイポーラトランジスタと MOSFET を組み合わせたパワーデ バイスである。バイポーラデバイスの大電流、高耐圧、低オン抵抗特性と、MOSFET の高速性 という両方の特長を合わせ持ったデバイスである。 - 4 - 図 1-7 絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)の構造 エミッタ ゲート n+ n+ p p np+ コレクタ (6)高電子移動度トランジスタ 高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)の基本構造を図 1-8 に示す。HEMT はバンドギャップの異なる 2 種類の半導体を接合した界面(ヘテロ界面) に形成される、2 次元電子ガスを電界によって制御するトランジスタである。高耐圧が必要 なパワーデバイスでは、ワイドバンドギャップ半導体材料である窒化ガリウム系の材料を用 いた AlGaN/GaN-HEMT が研究開発及び実用化の対象として主流となっている。 図 1-8 高電子移動度トランジスタ(HEMT)の構造 ソース ゲート ドレイン AlGaN GaN 2次元電子ガス 基板 - 5 - 第3節 パワーデバイスの技術動向 前節では代表的なパワーデバイスについて説明したが、次に過去から現在までのパワーデ バイスの技術動向及び将来の技術展望について述べる。 1.パワーデバイスの変遷 バイポーラトランジスタが発明された 1950 年代に信号系デバイスに続いてパワーデバイ スの歴史が始まったと考えられる。その後 1960 年代にサイリスタが本格的な電力制御用デバ イスとして実用化された。 1970 年代後半に登場したパワーMOSFET は 1980 年代になって、徐々にバイポーラトランジ スタの市場を奪っている。これは MOSFET がもともとスイッチングの高速動作に優れることと、 MOSFET の技術的進歩により、高耐圧化及び低損失化が大きく進展したことによる。また、電 圧駆動が可能なため、駆動回路の低損失化、簡素化が可能となった。1985 年に市場に投入さ れた IGBT は、その後高耐圧、大電流化が進み、サイリスタの置き換えを進めていった。 現在、パワーデバイスには様々な応用分野があり、各用途に適したデバイスが選択され、 利用されている。現在メインとなっているのは MOSFET であり、数百ボルト以下の領域では主 としてこのデバイスが使われる。家電製品、IT 関連機器の電源系統などが代表的な用途であ る。新しいパワーデバイスとして登場した IGBT は急速にその性能を向上させ、かつてサイリ スタが使われていた分野を取り込んで、市場を急速に拡大し、民生家電機器、産業機器、自 動車、鉄道に使われている。サイリスタは IGBT の登場により市場が縮小したが、10MW を超 えるような大電力領域では依然としてサイリスタが使われている。 これまでは、シリコン(Si)基板のデバイスが主であったが、その性能の伸びは飽和しつ つある。そこで、将来的には炭化シリコン(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、ダイヤモンドとい ったワイドバンドギャップ半導体基板を用いたデバイスが有望とされる。これらのデバイス では原理的に高耐圧、低オン抵抗で、高温度での使用が可能なため、各研究機関で勢力的に 開発が進められている。以下、本報告書では、シリコン、炭化シリコン、窒化ガリウムなど の材料名の表記に Si、SiC、GaN などの化学式を用い、デバイス名の表記には主として MOSFET、 IGBT などの略号を用いる。 2.Si 系パワーデバイスの技術動向 ここでは、現在の主要なパワーデバイスある MOSFET と IGBT を取り上げ、技術動向を概観 する。両者ともに様々な技術革新により、特性改善(「高電力化」及び「電力の損失低減:低 オン抵抗化すなわち低オン電圧化」)が図られている。 (1)MOSFET の技術動向 MOSFET では、まず微細化とともにオン電圧は低減してきている。デバイス構造面でも特性 改善が図られ、トレンチゲート構造、超接合(スーパージャンクション)構造により、高耐 圧、オン電圧の低減が図られている(図 1-9、図 1-10)。 - 6 - 図 1-9 トレンチゲート型パワーMOSFET の構造 ゲート ソース 酸化膜 (SiO2) n+ トレンチ構造 p nn+ ドレイン 図 1-10 従来のパワーMOSFET 構造と超接合構造 ソースゲート ゲート ソース p+ n+ n+ p+ n+ n+ p+ p+ p n- n+ n+ n p+ p n+ n+ ドレイン ドレイン (a)従来のパワーMOSFET n+ n+ n p+ p (b)超接合(スーパージャンクション)構造 (2)IGBT の技術動向 IGBT も MOSFET と同様にまずゲートの微細化で性能の向上が図られてきた。それに加えト レンチゲートを採用することにより、更なる特性向上を果たしている点も MOSFET と同様であ る。また、IGBT ではさらにフローティングゾーン(FZ)ウエハの採用、フィールドストップ (FS)層の導入といった改良で、低損失化、高速化、耐圧の向上、小型化が推進されている。 3.ワイドバンドギャップ半導体材料デバイスの技術動向 Si 系パワーデバイスでの特性改善は、限界に近づきつつある。そこで、ワイドバンドギャ ップ半導体材料によるパワーデバイスの開発が進められている。具体的には、SiC、GaN、ダ イヤモンドといった半導体によるパワーデバイスの開発である。これらの材料はバンドギャ ップが大きいので、高温動作、高耐圧化とオン抵抗の低減の可能性がある。 - 7 - (1)SiC 系パワーデバイスの技術動向 製品化の状況としては、ショットキーバリアダイオードが 2001 年インフィニオン テクノ ロジーズから市場に投入されたのを機に、SiC のパワーデバイスが実用化のフェーズに入っ た。SiC MOSFET に関しても多くの試作例が報告されている。実用化が始まった SiC 系パワー デバイスであるが、特に MOSFET の場合、製品としての出荷はまだ一部に過ぎず、本格的な普 及のためには SiC 基板の大口径化と更なる欠陥の低減が不可欠である。また SiC MOSFET に関 しては、ゲート絶縁膜の品質向上が課題である。 SiC 系パワーデバイスに関わる要素技術の中で最も大きな課題を抱えているのは、SiC 基 板の作製技術である。SiC は昇華法などの気相での結晶成長方法が用いられるが、大口径の 基板作製は難しく、現在市販されているウエハの口径は 4 インチに留まっている。基板の欠 陥もまだ多く大きな問題点である。 (2)GaN 系パワーデバイスの技術動向 GaN のデバイスの検討は主に HEMT(High Electron Mobility Transistor)で行われてい る。GaN では AlGaN/GaN のヘテロ接合構造を用いて研究が進められており、高周波特性、高 耐圧などの優れた特性が示されている。 GaN の問題点は、今のところ大型のバルク結晶がなく、素子はエピタキシャル成長膜に頼 らなければならないという点である。現在ヘテロエピタキシャル技術によって、サファイア、 SiC、Si 基板上に GaN 系のエピタキシャル層を成膜して用いているが、格子定数のミスマッ チによる欠陥が生じる。様々な手法の開発により、改善が図られて 104 個/cm2 程度までに抑 えられるようになってきたが、更なる改善が必要である。 (3)ダイヤモンドパワーデバイスの技術動向 ダイヤモンドは絶縁破壊電界や電荷移動度などに優れた特性を持つため、高耐電圧・低損 失・高速応答のパワーデバイスとしての応用が期待されている。ダイヤモンド自体がヒート シンク(放熱部)の材料であり、高温に耐えかつ高温で電流密度が上がる。このため、次世 代パワーデバイスの材料として基礎的な研究が進められている。産業技術総合研究所での最 近の研究成果として、Ru(ルテニウム)を電極としたショットキーバリアダイオードにおい て、0.01μ秒の高速スイッチング、低損失特性、200℃までの高温動作などが確認されている。 今後、大面積の基板製造技術や低欠陥高品質膜成長技術などの結晶関連技術、ダイオード だけではなくトランジスタ、それに伴うデバイス設計技術などのデバイス技術についての研 究開発が同時に進展していくと予想される 1。 参考文献 1)Physics of Semiconductor Devices 3rd Edition, S. M. Sze and Kwok K. NG, WileyInterscience(2007) 2)IC ガイドブック(09-10 年版)、編集・著作:社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA) 3)パワーエレクトロニクスハンドブック 監修:今井孝二 発行所:R&D プランニング (2002) 4)次世代パワー半導体 著者:奥村元、松波弘之、大谷昇 他 発行所:エヌ・ティー・エス (2009) 1 http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2010/pr20100908/pr20100908.html - 8 - 第2章 グリーンパワーIC に関する特許出願動向(パワーデバイス関連特許) 第1節 調査対象範囲と調査方法 1.調査対象範囲 グリーンパワーIC に関する特許出願動向について、パワーデバイス関連特許と、応用分野 (電力変換器)関連特許の調査を行った。第2章ではパワーデバイス関連特許に関する調査 結果を、第3章では応用分野(電力変換器)関連特許に関する調査結果を報告する。 全体動向調査(特許出願及び登録特許)、技術区分別動向調査、注目研究開発テーマの動向 調査、出願人別動向調査及び重要特許調査を行った。 (1)調査対象とした出願先国 今回調査した特許の出願先国は、日本、米国、欧州、中国及び韓国(以下、日米欧中韓と 略すことがある)である。欧州への出願については、欧州特許庁への出願(EPC 出願)だけ でなく、EPC 加盟国のうちで、使用したデータベース(後述)に収録された出願先国 2 への 出願も対象とした。また、台湾への出願については、データベースへの収録の継続性の関係 で、登録件数のみを調査した。 (2)使用したデータベース 特許検索に使用したデータベースは、Derwent World Patents Index(WPINDEX(STN)、以 下 WPI とする)である。また、書誌事項の入手と特許文献の印刷には、PATOLIS(株式会社パ トリスの登録商標)、StarPAT 及び PatentWeb を併用した。 (3)調査対象期間と特許文献件数 調査対象とする特許文献は、優先権主張年を基準として 2000 年から 2008 年に出願された ものとした(検索日:2010 年 7 月 22 日)。検索された特許出願件数は、日本への出願につい て 18,061 件、米国、欧州、中国及び韓国への出願について合計 16,044 件であった。登録特 許についても優先権主張年ベースで 2000 年から 2008 年に出願されたものを調査対象とした。 なお、登録件数は登録公報の件数になるが、出願件数は、①公開・公表公報の件数、②登録 公報(ただし出願番号が同じ公開・公表公報が出ていない登録公報に限る)の件数、の和に なる。 (4)調査対象技術範囲と技術分類 調査対象としたグリーンパワーIC に関する技術の範囲は、基板、デバイス構造(MOSFET、 IGBT、HEMT、ダイオード、サイリスタ等)、プロセス、モジュール、装置、及びパワーデバイ スの応用分野とした。 検索された特許文献の内容から、要素技術に分類し、それぞれ解析軸を設けて技術分類を 行った。さらに、発明が解決すべき課題及び応用分野を分類した。技術分類に用いた解析軸 2 使用したデータベース(WPI)に収録された EPC 加盟国は、オーストリア、ベルギー、スイス、チェコ、 ドイツ、デンマーク、スペイン、フィンランド、フランス、イギリス、ハンガリー、アイルランド、イタ リア、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、ルーマニア、スウェーデン、スロバキアの 20 カ国である。 - 9 - (簡略化したもの)を表 2-2 から表 2-5 に示す 3。要素技術及び応用分野については、重複し て分類することを認めた。また、複数の課題が示されている場合は、それらを分類した上で、 主となる課題を 1 項目選定した。できるだけ特徴を浮き彫りにするため、課題と解決手段の 関係のように、課題と何かの関係をバブル図で見るときだけ、この主な課題を使用した。 (5)その他の留意事項 ①出願人国籍は、日本国籍、米国籍、欧州国籍、中国籍、韓国籍及びその他の国籍に分けて 集計した。出願人国籍は原則として出願人の住所を採用した。ただし、出願人が明記されて いない出願については、ファミリー特許に出願人が明記されたものがないかを調査し、見つ からない場合は筆頭発明者の住所を採用した。また、香港(HK)は中国籍に合算し、台湾(TW) はその他の国籍として集計した。 ②出願人国籍別出願動向において、欧州国籍の出願とは、2010 年 7 月 1 日現在の EPC 加盟国 である 37 か国 4の国籍の出願人からの出願とする。 ③特許の出願先国によって、データベースに収録されるまでの時間差があるため、全ての特 許データが収録されている期間が各国で異なっている。このため、特に 2007 年以降は全デー タが取得されていない場合があることに留意が必要である。さらに PCT 出願については、そ の出願が国内特許へ移行するまでの期間が長く、公表公報発行時期が国内出願の公開(1 年 6 か月)より遅くなる。 ④米国特許は、2000 年 11 月 29 日に公開制度が開始されたため、それ以前は、出願された特 許件数として集計できるのは登録された件数に限られることに留意が必要である。また、公 開制度開始後においても、18 か月公開制度を採用する他の国に出願しないことを条件として、 非公開の要求をすることにより、公開を避けることができることに留意する必要がある。 ⑤登録件数の推移については、特許出願から審査請求までの期間と審査にかかる期間が各国 で異なることを念頭において評価する必要がある。 2.調査方法 パワーデバイス関連特許の出願動向を調査した。パワーデバイス関連特許は、特許公報を 基にして解析した。 今回調査の対象とした出願先国別特許出願件数は表 2-1 のとおりである。調査した出願先 国は日米欧中韓で、出願人国籍別の出願動向を中心に調査した。調査対象年は出願年(優先 権主張年)ベースで 2000 年から 2008 年までとした。 表 2-1 出願先国別調査対象特許出願件数 日本への出願 米国への出願 欧州への出願 中国への出願 韓国への出願 出願件数 3 4 9,264 件 7,027 件 4,020 件 2,646 件 2,377 件 合 計 25,334 件 詳細な解析軸については、本編第2部第1章第2節を参照のこと。 <EPC 加盟国(2010 年 7 月 1 日現在)> オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、キプロス、 チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシア、ハンガリー、アイスラ ンド、アイルランド、イタリア、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、 モナコ、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、サンマリノ、スロバキア、スロ ベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、マケドニア旧ユーゴスラビア、トルコ、イギリス、アルバニ アの 37 カ国である。 - 10 - 技術分類に用いた解析軸は、応用分野、課題、解決手段(基板、デバイス構造1、縦型ト ランジスタ、横型トランジスタ、ダイオード・サイリスタ、プロセス、モジュール、装置)、 共通補助分類の 4 カテゴリーに分け、それぞれを更に細分化して合計 733 項目の分類項目を 設けて目視にて分類した。 表 2-2 応用分野に関する解析軸 大分類 中分類 IT 関連機器(携帯電話、パソコン他) 携帯端末用 携帯基地局用 データセンター用 その他 汎用インバータ 産業機器(モーター駆動等) FA 用 エレベータ・エスカレータ その他 発電・送配電システム(スマートグリッド等) 電力量計(スマートメータ) 無停電電源 直流送電 太陽光発電 風力発電 燃料電池 海洋エネルギ その他 民生・家電機器 エアコン 電子レンジ IH 冷蔵庫 洗濯機 照明 FPD AV 機器(カメラ、オーディオ、 VTR 等) その他 自動車 HEV EV クリーンディーゼル 燃料電池 電装品 その他 鉄道 船舶 航空機 電力貯蔵 その他 表 2-3 課題に関する解析軸 大分類 中分類 基板の特性向上 基板欠陥減少(転位密度、マイクロパ イプ他) 結晶性の向上(結晶系制御、結晶成 長方向制御) 製品の均一性の向上 基板平坦性、そり低減 基板の大口径化 結晶成長速度の向上 p 型不純物の活性化 自立基板 生産性・作業性・製造容易性の向上 コストの低減 歩留り向上 その他 デバイス・モジュールの特性向上 低損失 高耐圧 大電流 高速動作・高周波化 高温動作 高破壊耐量 p 型不純物の活性化 閾値制御 逆回復電流制御 リーク電流防止 ラッチアップ防止 寄生素子の発生防止 非極性面、半極性面の利用 電流コラプスの抑制 電流キンクの発生防止 結晶性の向上(基板製造以外の工程) その他 小型化・高集積化・軽量化 電磁干渉(EMI)の低減 信頼性・耐久性の向上 正常動作の実現(誤動作防止、初期特性確保) 製造技術の 生産性・作業性・製造容易性の向上 改善 (基板製造 製品の均一性の向上 以外の工程) コストの低減 歩留り向上 その他 その他 - 11 - 表 2-4 解決手段に関する解析軸 a)基板に関する解析軸 大分類 基板 中分類 Si SiC GaN ダイヤモンド その他 b)デバイス構造に関する解析軸 大分類 デバイス構造-1 デバイス構造-2 中分類 耐圧構造 保護素子 検知 平面形状 ドリフト層 ダミーセル パッシベーション膜 デバイスの構成その他 デバイス構造-2 一般 パワーMOS IGBT HEMT JFET・SIT ダイオード サイリスタ その他 シミュレーション c) プロセスに関する解析軸 大分類 プロセス 小分類 中分類 【補助分類】 工程区分 フロントエンドプロセス(結晶内に素子構造を形成) バックエンドプロセス(素子間の電気的接続) 背面処理、ダイシングプロセス その他 ウエット処理 誘電体膜形成 金属膜形成 超接合形成 フォトリソグラフィ エッチング 再成長 製造工程にダミーゲートを利用するもの イオン注入 熱処理 ゲッタリング 機械加工 貼り合わせ 評価・検査 プロセスフロー その他 - 12 - d) モジュールに関する解析軸 大分類 モジュール 中分類 モジュール 小分類 【補助分類】 モジュールの種類 モジュールの構成・構造 モジュールの部材 モジュールの製造方法 モジュールの評価・検査 その他 e) 製造装置に関する解析軸 大分類 装置 表 2-5 中分類 装置 小分類 結晶成長装置 CVD 装置 スパッタ装置 蒸着装置 フォトリソグラフィ関連装置 イオン注入装置 熱処理装置 メッキ装置 機械加工装置 デバイス・モジュール組立装置 治具 評価・検査装置 その他 共通補助分類に関する解析軸 大分類 共通補助分類 中分類 使用基板 適用素子 目標耐圧 使用帯域 小分類 Si SiC GaN ダイヤモンド その他 パワーMOS IGBT HEMT JFET・SIT ダイオード サイリスタ その他 100V 未満 100V 以上 600V 未満 600V 以上 1,200V 未満 1,200V 以上 3,400V 未満 3,400V 以上 6,000V 未満 6,000V 以上 10kHz 未満 10kHz 以上 1MHz 未満 1MHz 以上 - 13 - 細目 インバータモジュール コンバータモジュール インテリジェントパワーモジュール その他 第2節 全体動向 1.日米欧中韓への特許出願及び登録状況 日米欧中韓への出願における、出願人国籍別出願件数の年次推移と出願件数比率を図 2-1 に示す。出願人国籍では、日本国籍が全体の 57.6%と最も多く、次いで米国籍が 18.2%、欧 州国籍が 15.2%となっている。中国籍、韓国籍は少ない。年次推移を見ると、全ての年次で 日本国籍の出願人による出願が半数以上を占め、他の国籍の出願人を圧倒している。この結 果は、パワーデバイス分野における日本国籍の特許情報は世界に向けて発信することが可能 な技術的コンテンツを多数有していることを意味している。なお、2007 年以降のデータは、 PCT 出願が国内段階に移行するまで最大 30 か月かかるため、国内段階での公報発行が遅れる ことや、データベースへの収録が遅れることなどにより、全データが取得されていない可能 性があることに注意が必要である。そこで、下記の図では 2007 年以降のところを点線で示し ている。以降でも特許出願件数推移の図に対しては同様に表示している。 図 2-1 出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率(日米欧中韓への出願) 3,500 中国籍 331件 1.3% 欧州国籍 3,849件 15.2% 韓国籍 1,327件 5.2% 優先権主張 2000-2008年 3,101 3,249 3,150 2,924 その他 620件 2.4% 2,972 3,000 2,556 2,905 2,500 2,326 2,149 出 2,000 願 件 数 1,500 日本国籍 14,593件 57.6% 1,000 500 米国籍 4,614件 18.2% 合計 25,334 件 2000 2001 2002 出願人国籍 日本 2003 2004 2005 2006 2007 2008 出願年(優先権主張年) 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計 日米欧中韓での登録における、出願人国籍別登録件数の年次推移と登録件数比率を図 2-2 に示す。日本国籍出願人による特許出願が登録されたものが 51.4%と最も多く、次いで米国 籍が 20.3%、欧州国籍が 16.9%となっている。韓国籍は 6.9%であり、中国籍出願人による 登録は少ない。年次推移でも、日本国籍が全ての年次で最も多くなっている。 - 14 - 図 2-2 出願人国籍別登録件数推移及び登録件数比率(日米欧中韓での登録) 1,800 韓国籍 641件 6.9% 中国籍 142件 1.5% 1,627 その他 273件 3.0% 1,600 1,608 優先権主張 2000-2008年 1,487 1,400 1,304 1,386 1,200 出 願 1,000 日本国籍 件 800 4,758件 数 欧州国籍 1,561件 16.9% 51.4% 816 621 600 331 400 米国籍 1,876件 20.3% 200 合計 9,251 件 71 2000 2001 2002 2003 出願人国籍 日本 2004 2005 2006 2007 2008 出願年(優先権主張年) 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計 2.PCT 出願動向 特許協力条約(PCT)に基づく国際出願は、複数の国への出願を念頭に置いた重要な特許 出願であると考えられる。PCT 出願における、出願人国籍別出願件数の年次推移と出願件数 比率を図 2-3 に示す。米国籍出願人による出願と日本国籍出願人による出願とがほぼ拮抗し ており、それぞれ全体の 36.8%、35.9%となっている。次いで欧州国籍が 24.7%であり、韓 国籍と中国籍は少ない。出願件数の年次推移は 2006 年まで増加傾向であるが、その後減少に 転じている。出願人国籍については、2006 年までは米国籍、日本国籍が拮抗しているが、2007 年以降、日本国籍が最も多くなっている。日本国籍では、今後、パワーデバイス分野の PCT 出願が増えていくことを推測させる結果である。 図 2-3 出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率(PCT 出願) 中国籍 9件 0.4% 欧州国籍 541件 24.7% 韓国籍 22件 1.0% 350 その他 24件 1.1% 優先権主張 2000-2008年 304 302 300 283 265 248 250 日本国籍 786件 出 200 願 35.9% 213 196 210 166 件 数 150 100 50 米国籍 805件 36.8% 合計 2,187 件 2000 2001 2002 日本 - 15 - 2003 2004 2005 2006 2007 2008 出願年(優先権主張年) 出願人国籍 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計 3.出願先国別-出願人国籍別出願動向 出願先国別に出願人国籍別の出願件数を図 2-4 に示す。日本国籍出願人は、欧州以外の出 願先国では、いずれの国でも最も出願件数が多い。中国籍出願人から外国への出願は少ない。 さらに、出願件数シェアの推移を見ると、日本国籍出願人による出願件数シェアは従来 50% 台で推移していたが 2006 年以降増加に転じている。一方、米国籍出願人による出願件数シェ アは従来 20%台で推移していたが、2006 年以降減少に転じている。欧州は一貫して緩やかに シェアの減少傾向にある。 図 2-4 出願先国別-出願人国籍別出願件数 1 日本 7,907 米国 3,180 695 463 147 995 33 51 382 360 2,077 出 願 先 国 1 欧州 1,362 750 1,816 中国 1,190 557 324 韓国 954 535 251 日本 米国 欧州 出願人 国籍 - 16 - 65 296 117 616 中国 韓国 26 162 21 その他 4.出願件数と出願人人数の関係の推移 出願人人数と出願件数の関係の推移を、出願人国籍別に図 2-5 に示す。日本国籍出願人に よる出願は、毎年、出願人数、出願件数ともに他のいずれの国よりも非常に高いレベルで安 定している。中国では、年々出願人数、出願件数が単調に増加しているがまだ件数は少ない。 図 2-5 出願人国籍別出願件数-出願人人数推移 日本国籍 中国籍 2005 160 45 2007 2004 140 2006 2003 2001 2008 2007 35 2002 120 出 願 人 人 数 2008 40 2000 100 30 出 願 人 人 数 80 60 2006 25 2005 20 2003 15 40 2004 10 2001 20 5 0 0 2002 2000 0 500 1,000 1,500 2,000 0 20 40 出願件数 米国籍 40 2003 2002 70 出 願 人 人 数 2007 80 2008 2004 2001 35 2005 30 2000 2007 60 2006 2008 50 100 韓国籍 90 80 60 出願件数 出 願 人 人 数 40 30 25 20 10 10 5 2005 2001 2000 2000 15 20 0 2002 2004 2006 2003 0 0 200 400 600 800 出願件数 0 50 100 150 出願件数 - 17 - 200 250 300 5.出願先国別-出願人国籍別出願件数収支 日本、米国、欧州、中国及び韓国への出願における、出願先国別の出願人国籍別出願件数 収支を図 2-6 に示す。日本の出願件数収支は米国、欧州、中国、韓国のいずれの国に対して も数的に優位にある。欧州は日本以外のいずれの国に対しても優位にあり、米国は韓国、中 国に対して優位にある。この結果から、日本は数的には他地域に比較して、積極的に海外に 出願していることが分かる。 図 2-6 出願先国別-出願人国籍別出願件数収支 日本への出願 9,264件 米国籍 695件 7.5% 米国への出願 7,027件 欧州国籍 463件 5.0% 中国籍 1件 0.01% 韓国籍 147件 1.6% その他 51件 0.6% 欧州への出願 4,020件 695件 日本国籍 7,907件 85.4% 韓国籍 382件 5.4% 1,362件 463件 その他 360件 5.1% 1件 中国籍 33件 0.5% 3,180件 147件 995件 欧州国籍 995件 14.2% 韓国籍 65件 1.6% その他 26件 0.6% 日本国籍 1,362件 33.9% 欧州国籍 1,816件 45.2% 日本国籍 3,180件 45.3% 米国籍 2,077件 29.6% 中国籍 1件 0.02% 750件 米国籍 750件 18.7% 382件 1件 33件 65件 1,190件 557件 954件 251件 中国への出願 2,646件 324件 韓国籍 117件 4.4% 韓国への出願 2,377件 韓国籍 616件 25.9% 535件 その他 162件 6.1% 中国籍 296件 11.2% 中国籍 0件 0.0% 117件 欧州国籍 324件 12.2% その他 21件 0.9% 日本国籍 954件 40.1% 0件 米国籍 557件 21.1% 日本国籍 1,190件 45.0% 欧州国籍 251件 10.6% - 18 - 米国籍 535件 22.5% 6.出願先国別-出願人国籍別登録件数収支 日本、米国、欧州、中国及び韓国での登録における、出願先国別の出願人国籍別登録件数 収支を図 2-7 に示す。登録件数収支においても、日本は米国、欧州、中国、韓国のいずれの 国に対しても圧倒的に優位にある。欧州は米国、中国、韓国に対して優位にあり、米国は中 国に対して優位にある。韓国は米国と中国に対して優位にある。この結果から、日本は数的 には他地域に比較して、積極的に海外で特許を取得していることが分かる。 図 2-7 出願先国別-出願人国籍別登録件数収支 日本での登録 1,940件 欧州国籍 63件 3.2% 米国での登録 3,996件 韓国籍 185件 4.6% 韓国籍 23件 1.2% その他 3件 0.2% 米国籍 79件 4.1% 79件 中国籍 10件 0.3% 中国籍 0件 0.0% 日本国籍 1,772件 91.3% 1,731件 その他 205件 5.1% 0件 日本国籍 1,731件 43.3% 欧州国籍 521件 13.0% 欧州での登録 1,231件 307件 63件 23件 中国籍 0件 0.0% 韓国籍 16件 1.3% 521件 欧州国籍 786件 63.9% 119件 185件 0件 米国籍 1,344件 33.6% 16件 10件 524件 193件 424件 62件 129件 中国での登録 1,068件 韓国籍 中国籍 33件 132件 3.1% 12.4% 欧州国籍 129件 12.1% 米国籍 193件 18.1% 141件 その他 57件 5.3% 韓国籍 384件 37.8% その他 5件 0.5% 韓国での登録 1,016件 日本国籍 424件 41.7% 33件 0件 日本国籍 524件 49.1% - 19 - 中国籍 0件 0.0% 欧州国籍 62件 6.1% 米国籍 141件 13.9% その他 3件 0.2% 日本国籍 307件 24.9% 米国籍 119件 9.7% 7. 三極コア出願件数推移及び出願件数比率 三極コア出願とは、少なくとも日、米、欧の 3 地域へ特許が出願されている特許の出願を 言う。なお、近時、中国への出願を重視する企業(例:パナソニック、ルネサスエレクトロ ニクス、東芝、IBM 等)が増えており、少なくとも当該分野においては、今後は、中国を含 む四極コア出願の採用を検討する必要がある。 出願人国籍別三極コア出願件数推移及び出願件数比率を図 2-8 に示す。三極コアへの出願 は合計 2,010 件である。年次推移としては、2002 年、2007 年以降を除いておおむね 250 件以 上で推移してきている。出願人国籍としては、日本国籍が 54.1%で最も多く、次いで米国籍 が 23.5%、欧州国籍が 19.2%、韓国籍が 2.4%である。 図 2-8 出願人国籍別三極コア出願件数推移及び出願件数比率 300 283 285 258 262 265 250 中国籍 1件 0.0% 欧州国籍 386件 19.2% 米国籍 473件 23.5% 韓国籍 49件 2.4% 優先権主張 2000-2008年 222 その他 14件 0.7% 200 177 出 願 件 150 数 183 100 日本国籍 1,087件 54.1% 75 50 2000 合計 2,010 件 2001 2002 出願人国籍 日本 2003 2004 2005 2006 2007 2008 出願年(優先権主張年) 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計 (特許出願のファミリー単位で集計) - 20 - 第3節 技術区分別動向 1.日米欧中韓への出願における技術区分別-出願人国籍別出願件数 (1)技術区分(応用分野)別-出願人国籍別出願件数 日米欧中韓への出願における、技術区分(応用分野)別-出願人国籍別願件数を図 2-9 に 示す。日本の出願は IT 関連機器(携帯電話、パソコン等)と自動車向けが二大応用分野であ り、米国も同様である。欧州も自動車が最も多いが、日本、米国と異なり、発電・送配電シ ステムが次に来ている。この結果、いずれの分野においても、日本の出願は他の地域と比較 して応用分野を意識した特許出願が多いことが分かる。 図 2-9 技術区分(応用分野)別-出願人国籍別出願件数(日米欧中韓への出願) 応用分野 IT関連機器(携帯電話、 パソコン他) 419 汎用インバータ 167 産業機器 (モーター駆動等) 132 24 発電・送配電システム (スマートグリッド等) 138 34 民生・家電機器 222 20 自動車 408 鉄道 62 111 31 4 2 4 8 6 6 2 50 1 12 64 11 27 65 11 5 25 1 船舶 航空機 1 電力貯蔵 4 その他 8 1 1 101 60 日本 米国 6 欧州 1 中国 5 韓国 1 その他 出願人国籍 (2)技術区分(課題)別-出願人国籍別出願件数 日米欧中韓への出願における、技術区分(課題)別-出願人国籍別出願件数を図 2-10 に 示す。この結果、日本の出願は他の地域と比較して、当該分野の多様な技術課題を強く意識 していることを示唆している。 - 21 - 図 2-10 技術区分(課題)別-出願人国籍別出願件数(日米欧中韓への出願) 課 題 基板の特性向上 3,191 724 616 103 316 デバイス・モジュール の特性向上 7,308 2,631 2,010 187 647 小型化・高集積化・ 軽量化 1,663 555 498 電磁干渉(EMI)の低減 162 25 106 371 24 218 5 3 16 91 信頼性・耐久性の向上 1,668 346 525 38 135 58 正常動作の実現 (誤動作防止、初期特 性確保) 586 264 323 9 95 49 製造技術の改善(基板 製造以外の工程) 2,771 962 756 60 177 106 その他 442 日本 117 米国 128 欧州 20 中国 23 韓国 13 その他 出願人国籍 (3)技術区分(解決手段)別-出願人国籍別出願件数 日米欧中韓への出願における、技術区分(解決手段)別-出願人国籍別出願件数を図 2-11 に示す。解決手段で単にデバイス構造となっているものは、大分類のデバイス構造-1 とデバ イス構造-2 とシミュレーションを合算したものである(以下同様)。 この結果、日本の技術開発はいずれの技術分野においてもトップであり、バランス良く技 術蓄積がなされていることが分かる。日本の出願は他の地域に比較して当該技術分野の多様 な解決手段を検討していることを示唆している。 図 2-11 技術区分(解決手段)別-出願人国籍別出願件数(日米欧中韓への出願) 解決手段 基板 4,127 1,275 777 108 351 127 デバイス構造 2,531 940 683 74 225 160 プロセス 1,141 464 280 60 216 モジュール 2,922 498 1,112 13 102 39 882 257 7 48 2 日本 米国 装置 120 欧州 中国 出願人国籍 - 22 - 韓国 63 その他 2.技術区分別-出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率(日米欧中韓への出願) 技術区分(課題)の大分類別に、出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率を図 2-12 に示す。 基板の特性向上については、全体 5,056 件のうち日本国籍出願が 63.1%で最も多い。次い で米国が 14.3%、欧州が 12.2%、韓国 6.3%、中国 2.0%となっている。 デバイス・モジュールの特性向上については、全体 13,154 件のうち日本国籍出願が 55.6% で最も多く、次いで米国が 20.0%、欧州が 15.3%、韓国 4.9%、中国 1.4%となっている。 小型化・高集積化・軽量化については、全体で 3,049 件のうち日本国籍出願が 54.5%で最 も多く、次いで米国が 18.2%、欧州が 16.3%、韓国が 7.1%となっている。 電磁干渉(EMI)の低減については、全体で 211 件のうち日本国籍出願が 76.8%で最も多 い。次いで米国が 11.8%、欧州が 7.6%で、韓国、中国は少ない。 信頼性・耐久性の向上については、全体で 2,770 件のうち日本国籍出願が 60.2%と最も多 く、次いで欧州が 19.0%、米国が 12.5%、韓国が 4.9%、中国が 1.4%となっている。 正常動作の実現(誤動作防止、初期特性確保)については、全体で 1,326 件のうち日本国 籍出願が 44.2%で最も多く、次いで欧州が 24.4%、米国が 19.9%、韓国が 7.2%、中国が 0.7%となっている。 製造技術の改善(基板製造以外の工程)については、全体で 4,832 件のうち日本国籍出願 が 57.3%で最も多く、次いで米国が 19.9%、欧州が 15.6%、韓国が 3.7%、中国が 1.2%と なっている。 - 23 - 図 2-12 技術区分(課題)別-出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率(日米欧中韓への 出願) a) 基板の特性向上 800 中国籍 103件 2.0% 韓国籍 316件 6.3% 727 700 648 600 その他 106件 2.1% 優先権主張 2000-2008年 551 562 481 出 500 願 件 400 数 欧州国籍 616件 12.2% 611 627 503 346 300 日本国籍 3,191件 63.1% 200 100 2000 米国籍 724件 14.3% 合計 5,056 件 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 出願年(優先権主張年) 出願人国籍 日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計 b) デバイス・モジュールの特性向上 1,800 中国籍 187件 1.4% 韓国籍 647件 4.9% 1,600 その他 371件 2.8% 1,400 優先権主張 2000-2008年 1,603 1,447 1,188 1,200 日本国籍 7,308件 55.6% 1,628 1,617 1,599 1,239 1,226 出 願 1,000 件 800 数 欧州国籍 2,010件 15.3% 1,607 600 400 200 米国籍 2,631件 20.0% 2000 合計 13,154 件 2001 2002 2003 出願人国籍 日本 2004 2005 2006 2007 2008 出願年(優先権主張年) 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計 c) 小型化・高集積化・軽量化 600 中国籍 24件 0.8% 韓国籍 218件 7.1% その他 91件 3.0% 500 優先権主張 2000-2008年 482 427 400 欧州国籍 498件 16.3% 日本国籍 1,663件 54.5% 出 願 件 300 数 361 365 304 355 292 227 236 200 100 米国籍 555件 18.2% 合計 3,049 件 2000 2001 2002 出願人国籍 日本 - 24 - 2003 2004 2005 2006 2007 2008 出願年(優先権主張年) 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計 d) 電磁干渉(EMI)の低減 45 中国籍 0件 0.0% 欧州国籍 16件 7.6% 韓国籍 3件 1.4% 41 40 35 その他 5件 2.4% 米国籍 25件 11.8% 38 32 優先権主張 2000-2008年 36 30 26 出 願 25 件 20 数 15 日本国籍 162件 76.8% 5 5 2000 合計 211 件 11 11 11 10 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 出願年(優先権主張年) 出願人国籍 日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計 e) 信頼性・耐久性の向上 450 400 中国籍 38件 1.4% 韓国籍 135件 4.9% 381 350 その他 58件 2.1% 333 304 300 出 願 250 件 200 数 欧州国籍 525件 19.0% 優先権主張 2000-2008年 360 314 301 267 244 266 150 100 日本国籍 1,668件 60.2% 50 2000 米国籍 346件 12.5% 合計 2,770 件 2001 2002 日本 2003 2004 2005 2006 2007 2008 出願年(優先権主張年) 出願人国籍 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計 f) 正常動作の実現(誤動作防止、初期特性確保) 200 中国籍 9件 0.7% 韓国籍 95件 7.2% 181 180 その他 49件 3.7% 168 167 168 優先権主張 2000-2008年 160 142 140 127 出 120 日本国籍 願 586件 件 100 44.2% 数 80 欧州国籍 323件 24.4% 155 113 105 60 40 20 米国籍 264件 19.9% 合計 1,326 件 2000 2001 2002 出願人国籍 日本 - 25 - 2003 2004 2005 2006 2007 2008 出願年(優先権主張年) 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計 g) 製造技術の改善(基板製造以外の工程) 800 698 700 中国籍 60件 1.2% 欧州国籍 756件 15.6% 韓国籍 177件 3.7% 625 600 その他 106件 2.2% 565 423 509 475 300 日本国籍 2,771件 57.3% 200 100 2000 米国籍 962件 19.9% 518 519 500 出 500 願 件 400 数 優先権主張 2000-2008年 合計 4,832 件 2001 2002 出願人国籍 日本 2003 2004 2005 2006 2007 2008 出願年(優先権主張年) 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計 技術区分(解決手段)の大分類別に、出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率を図 2-13 に示す。 基板については、全体 6,765 件のうち日本国籍出願が 61.0%で最も多く、次いで米国が 18.8%、欧州が 11.5%、韓国が 5.2%、中国が 1.6%である。 デバイス構造については、全体 4,613 件のうち日本国籍出願が 54.9%で最も多く、次いで 米国が 20.4%、欧州が 14.8%、韓国が 4.9%、中国が 1.6%である。 プロセスについては、全体 4,599 件のうち日本国籍出願が 54.6%で最も多く、次いで米国 が 21.0%、欧州が 12.3%、韓国が 7.9%、中国が 1.4%である。 モジュールについては、全体 4,686 件のうち日本国籍出願が 62.4%で最も多く、次いで欧 州が 23.7%、米国が 10.6%で、韓国、中国は少ない。 いずれの技術区分(解決手段)も年次推移はほぼ横ばいの状況である。 - 26 - 図 2-13 技術区分(解決手段)別-出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率(日米欧中韓へ の出願) 1,200 a) 基板 1,133 優先権主張 2000-2008年 1,000 韓国籍 351件 5.2% 中国籍 108件 1.6% 欧州国籍 777件 11.5% 908 877 その他 127件 1.9% 840 800 出 願 件 数 680 633 648 600 605 441 400 日本国籍 4,127件 61.0% 米国籍 1,275件 18.8% 200 2000 2001 2002 2003 出願人国籍 合計 6,765 件 日本 2004 2005 2006 2007 2008 出願年(優先権主張年) 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計 b) デバイス構造 700 600 韓国籍 225件 4.9% 中国籍 74件 1.6% 500 その他 160件 3.5% 481 496 487 535 517 446 447 200 100 2000 米国籍 940件 20.4% 韓国籍 365件 7.9% 2001 2002 合計 4,613 件 日本 米国 2004 2005 2006 2007 2008 欧州 中国 韓国 その他 合計 700 600 その他 128件 2.8% 500 優先権主張 2000-2008年 605 555 590 549 520 495 457 435 出 400 願 件 数 300 欧州国籍 566件 12.3% 2003 出願年(優先権主張年) 出願人国籍 c) プロセス 中国籍 66件 1.4% 574 出 400 願 件 数 300 日本国籍 2,531件 54.9% 欧州国籍 683件 14.8% 630 優先権主張 2000-2008年 393 200 日本国籍 2,510件 54.6% 100 2000 米国籍 964件 21.0% 合計 4,599 件 2001 2002 出願人国籍 日本 - 27 - 2003 2004 2005 2006 2007 2008 出願年(優先権主張年) 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計 d) モジュール 700 中国籍 13件 0.3% 韓国籍 102件 2.2% その他 39件 0.8% 596 551 505 優先権主張 2000-2008年 521 492 500 484 出 400 願 件 数 300 欧州国籍 1,112件 23.7% 361 200 日本国籍 2,922件 62.4% 米国籍 498件 10.6% 594 582 600 100 2000 合計 4,686 件 2001 2002 出願人国籍 日本 - 28 - 2003 2004 2005 2006 2007 2008 出願年(優先権主張年) 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計 3. 出願先国別の出願動向 1.(1)で示した、日米欧中韓への出願における、技術区分(応用分野)別-出願人国 籍別出願件数を、出願先国別に分けて示したものが図 2-14~図 2-18 である。以下の結果を 見ると、日本は、日本への出願だけでなく、他の地域内の出願においても出願件数でその地 域の出願を上回っており、日本の出願には他の地域に比べ応用分野を意識した特許出願が特 に多いことが分かる。 (1)日本への出願動向 日本への出願における、技術区分(応用分野)別の出願人国籍別出願件数を図 2-14 に示 す。ほとんどが日本国籍出願人による出願であり、自動車用途が 213 件で最も多い。次いで、 IT 関連機器(携帯電話、パソコン等)195 件、民生・家電機器 96 件である。 図 2-14 技術区分(応用分野)別-出願人国籍別出願件数(日本への出願) 応用分野 IT関連機器(携帯電話、 パソコン他) 195 17 8 汎用インバータ 89 1 1 産業機器 (モーター駆動等) 60 3 2 発電・送配電システム (スマートグリッド等) 65 6 10 民生・家電機器 96 2 1 自動車 213 8 7 鉄道 31 1 1 4 3 3 船舶 航空機 1 電力貯蔵 2 その他 2 41 日本 10 米国 1 欧州 1 中国 韓国 その他 出願人国籍 (2)米国への出願動向 米国への出願における、技術区分(応用分野)別の出願人国籍別出願件数を図 2-15 に示 す。日本国籍出願人の出願が最も多く、次いで米国籍出願人の出願となっている。応用分野 としては、日米それぞれの国籍とも、IT 関連機器(携帯電話、パソコン等)が最も多く、次 いで自動車が多い。 - 29 - 図 2-15 技術区分(応用分野)別-出願人国籍別出願件数(米国への出願) 応用分野 IT関連機器(携帯電話、 パソコン他) 122 汎用インバータ 40 60 8 1 1 1 1 産業機器 (モーター駆動等) 30 9 発電・送配電システム (スマートグリッド等) 33 16 10 3 民生・家電機器 52 10 自動車 87 31 鉄道 1 1 17 13 4 9 5 2 4 船舶 航空機 4 電力貯蔵 その他 2 28 33 日本 米国 2 2 欧州 中国 韓国 1 その他 出願人国籍 (3)欧州への出願動向 欧州への出願における、技術区分(応用分野)別の出願人国籍別出願件数を図 2-16 に示 す。日本国籍出願人の出願が最も多い。日米欧いずれの出願も、自動車に関する出願が最も 多くなっている。 図 2-16 技術区分(応用分野)別-出願人国籍別出願件数(欧州への出願) 応用分野 IT関連機器(携帯電話、 パソコン他) 25 汎用インバータ 10 17 1 4 2 産業機器 (モーター駆動等) 21 6 発電・送配電システム (スマートグリッド等) 20 5 民生・家電機器 24 1 自動車 58 鉄道 11 23 7 11 1 36 1 1 11 18 1 船舶 航空機 2 電力貯蔵 1 その他 13 日本 13 米国 2 欧州 中国 出願人国籍 - 30 - 韓国 その他 (4)中国への出願動向 中国への出願における、技術区分(応用分野)別-出願人国籍別出願件数を図 2-17 に示 す。日本国籍出願人の出願が最も多い。日米は IT 関連機器(携帯電話、パソコン等)が、欧 州は発電・送配電システム(スマートグリッド等)が、中韓は民生・家電機器が最も多くな っている。 図 2-17 技術区分(応用分野)別-出願人国籍別出願件数(中国への出願) 応用分野 IT関連機器(携帯電話、 パソコン他) 48 汎用インバータ 14 産業機器 (モーター駆動等) 15 3 1 3 1 10 2 1 発電・送配電システム (スマートグリッド等) 13 2 民生・家電機器 28 4 1 自動車 26 7 3 鉄道 2 1 7 1 8 4 2 1 4 船舶 航空機 1 電力貯蔵 その他 11 日本 1 米国 1 欧州 1 中国 出願人国籍 - 31 - 韓国 その他 (5)韓国への出願動向 韓国への出願における、技術区分(応用分野)別-出願人国籍別出願件数を図 2-18 に示 す。出願人は日本国籍が圧倒的で米韓が少しある。IT 関連機器(携帯電話、パソコン等)、 民生・家電機器、自動車の分野が多い。 図 2-18 技術区分別(応用分野)-出願人国籍別出願件数(韓国への出願) 応用分野 IT関連機器(携帯電話、 パソコン他) 29 汎用インバータ 産業機器 (モーター駆動等) 9 1 2 7 11 発電・送配電システム (スマートグリッド等) 4 7 5 民生・家電機器 22 3 自動車 24 7 鉄道 9 2 1 1 3 船舶 航空機 電力貯蔵 その他 8 日本 3 米国 2 欧州 中国 出願人国籍 - 32 - 韓国 その他 第4節 注目研究開発テーマの特許出願動向 グリーンパワーIC における注目研究開発テーマとして 3 テーマを選定し、第2章第1節に 示した解析軸により出願動向を調査した。注目研究開発テーマの選定理由も含め、これらの 結果を以下にまとめる。 1.超接合 MOSFET の開発 1977 年に DMOS 型の Si パワートランジスタが製品化されて以来、パワーデバイスの領域で もバイポーラトランジスタから、MOSFET への移行が急速に進んだ。1990 年代にはトレンチゲ ート型が製品化され、MOSFET の Ron・A(単位面積で規格化したオン抵抗)は著しく減少した。 しかし、300V を超える中・高耐圧 MOSFET においては、ドリフト層の抵抗が全体のオン抵抗 の大部分を占めるため、この部分の抵抗をいかに下げるかをポイントとした開発がその後も 継続された。 そのような動きの中、Resurf 理論を基本として、一様な n 型ドリフト層を、交互に配置し た pn 層の列に置き換えて完全空乏化させる超接合型が開発され、1999 年には実際に Si 限界 を超える Ron・A が実証された。現在も、EV、HEV、エアコン用インバータなどの応用分野か らの要求に対応して、MOSFET を中心としたパワーデバイスの更なる低損失化に向けた検討が 進められている。今後は、継続的な低損失化とコスト低減の努力とともに、各応用分野の製 品に対してより最適化のレベルを高めた製品を目指した開発に重点が置かれると予想される。 このような状況から、DMOS における Si 限界を超える特性を実現するという点において、 「超 接合 MOSFET」はパワーデバイスの中で重要な選択肢の一つと位置付けられ、その開発の動向 が注目される。 図 2-19 に、超接合 MOSFET の開発における出願先国別-出願人国籍別出願件数を示す。各 国とも自国への出願件数が多いという一般的な傾向になっている。中国と韓国の出願件数は、 日米欧に比べて非常に少ない。出願人国籍別出願件数は、日本が最も多く、次に米国、欧州 と続いている。このように、当該重要分野において、日本の特許出願は数的に優位な状況に あり、当該重要分野においてリーダーシップを取り得る地位にある。 図 2-20 に、超接合 MOSFET の開発に関連する課題と解決手段(超接合構造と超接合形成) の関係を示す。課題としては、高耐圧が最も多く、僅差で低損失が続いている。MOSFET の特 性において高耐圧と低損失はトレードオフの関係にあり、このトレードオフの関係を改善す る技術として超接合技術が注目されていることに対応した結果と考えられる。課題として、 高耐圧、低損失の次に多いのは、製造技術の改善であり、超接合 MOSFET の開発においては、 デバイス特性だけでなく、製造技術を課題とした件数が多い結果となっている。解決手段の 超接合構造において、平面構造を工夫したものの中では、ストライプ形状のものが最も多い。 また、超接合形成においては、最も多いのが溝形成後エピ成長、次にエピ成長-注入-エピ成 長-注入の繰り返しで、イオン注入のみの件数は少ない。このように、当該重要分野において、 特に低損失化、高耐圧化といったデバイス技術、製造技術の改善というプロセス技術の研究 開発が盛んであることが分かる。 - 33 - 図 2-19 超接合 MOSFET に関する出願先国別-出願人国籍別出願件数(日米欧中韓への出願) 出 願 先 国 日本 174 13 7 1 米国 102 44 18 欧州 37 15 26 中国 31 15 5 韓国 14 15 4 日本 米国 1 4 3 1 2 5 欧州 中国 韓国 その他 出願人国籍 図 2-20 超接合 MOSFET における課題と解決手段の関係(日米欧中韓への出願) 課 題 3 低損失 ュー デ バ イ ス ・ モ ジ ル の 特 性 向 上 高耐圧 69 19 62 22 6 19 22 11 16 25 1 大電流 高速動作・高周波化 12 88 30 37 76 29 38 102 45 3 2 3 1 3 19 2 1 1 5 18 17 10 30 23 23 6 6 1 1 2 1 高温動作 1 1 3 5 15 2 1 リーク電流防止 4 ラッチアップ防止 1 3 4 寄生素子の発生防止 2 高破壊耐量 12 小型化・高集積化 ・軽量化 8 4 4 2 3 4 6 3 1 1 2 1 電磁干渉(EMI)の低減 信頼性・耐久性の向上 製造技術の改善 ス ト ラ イ プ 状 の も の 5 12 7 15 29 10 格 子 状 の も の そ の 他 断 面 形 状 が 垂 直 で は な い も の 絶 縁 領 域 を 含 む も の 特不 徴純 の物 あ濃 る度 もプ のロ フ そ の 他 超 接 合 形 成 一 般 イ ル に イ オ ン 注 入 の み 25 8 21 溝 形 成 後 エ ピ 成 長 エエ ピピ 成成 長長 そ の 他 注注 入入 の 繰 り 返 し 超接合形成 平面形状を工夫したもの 超接合構造 - 34 - → 平 面 形 状 を 工 夫 し た も の 一 般 10 → → 超 接 合 構 造 一 般 3 3 ァ 超 接 合 構 造 ・ 超 接 合 形 成 1 30 2 1 3 5 2.SiC 基板の大口径化 高パワー密度化と、高温動作を可能とする新材料(ワイドバンドギャップ半導体)として SiC を用いたパワーデバイスの開発が進展し、2001 年には SiC-SBD(ショットキーバリアダ イオード)が製品化された。SiC-MOSFET についても、SiC の理論限界には到達しないまでも、 既に Si デバイスを凌駕する特性の DMOS 型 SiC デバイスが得られている。2010 年の後半に入 ってからは、デバイスとしての出荷が開始されるなど、現在実用化への動きが加速されてい る。 SiC デバイスの用途としては、Si デバイスの置き換えと、優れた特性を活かした新規な応 用分野の 2 通りが想定されており、Si デバイスの置き換えはもとより、新規分野への応用に ついても、市場確立のためには、コストの低減と量産規模の確保が不可欠と考えられている。 そのための重要課題の一つとして基板の大口径化が挙げられ、研究開発テーマとして「SiC 基板の大口径化」が注目される。 図 2-21 に、SiC 基板の大口径化における出願先国別-出願人国籍別出願件数を示す。各国 とも自国への出願件数が多いという傾向が見られる。中国籍、韓国籍の出願件数は小さく、 両者とも自国へのみ出願している。全体的には、総数が少なく、未だこの分野のプレーヤー は十分な数でないことが分かる。今後、戦略的に強化することで、優位に立ち得る可能性が ある。 図 2-21 SiC 基板の大口径化に関する出願先国別-出願人国籍別出願件数(日米欧中韓への出願) 出 願 先 国 日本 58 10 2 米国 16 9 3 欧州 15 7 10 中国 4 4 韓国 10 6 日本 米国 1 4 3 欧州 6 中国 韓国 その他 出願人国籍 3.GaN on Si 系パワーデバイスの開発 SiC と同様にワイドバンドギャップを持ち、パワーデバイスに適した材料である GaN デバ イスの開発が、特に 2000 年以降活発化し、携帯電話基地局用パワーアンプに向けたマイクロ 波デバイスが製品化されている。最近ではより大きな市場が期待される GaN 系のスイッチン グパワーデバイスに開発テーマがシフトしていく傾向にある。GaN 系のデバイスにおいては、 分極による高い濃度の 2 次元電子ガスを利用した大電流デバイスや、横型デバイス特有のア イソレーションの容易性を活かした集積化デバイスなどの実現に期待が寄せられている。し かし、GaN の自立基板が極端に高価であるため、GaN 系デバイスは、通常異種基板上のエピ層 を活性領域にしており、GaN 系マイクロ波デバイスにおいてはエピタキシャル成長の下地に - 35 - SiC 基板が用いられることが多い。しかし、SiC と同様、市場確立のためにはコストの低減が 不可欠であり、スイッチングパワーデバイスの分野では、安価な Si 基板を下地としたエピウ エハを利用する GaN on Si 構造が注目されている。既に 6 インチ Si 基板を用いた GaN on Si 系インバータ IC が開発されるなど、実用化が加速されているが、GaN on SiC 系に比べて GaN on Si 系は格子定数の差が大きく、結晶成長技術を中心に多くの課題を抱えている。「GaN on Si 系パワーデバイスの開発」は注目すべき研究開発テーマと言える。 図 2-22 に、GaN on Si 系パワーデバイスの開発における出願先国別-出願人国籍別出願件 数を示す。各国とも自国への出願件数が多いという傾向が見られる。注目すべきは、中国、 韓国の出願である。いずれも、自国への出願件数が、他地域からの出願件数を上回っており、 中国、韓国ではこの分野に集中して研究開発がなされていることが分かる。 また、GaN on Si 系パワーデバイスの開発に関連する課題と使用エピ基板の関係を図 2-23 に示す。この結果から、GaN エピタキシャル成長基板を得るための使用エピ基板として、Si が特に注目されていることが明らかである。現時点では、異種接合技術の本質的な問題であ る、結晶性の改善を含む基板の特性向上を課題とする出願が多数を占める。今後も、GaN on Si 系は、基板の特性向上を課題とする特許が多数出願されると見込まれるが、デバイス・モジ ュールの特性向上等を課題とする出願も見られる。さらに、基板を利用したデバイス構造等 の技術が増えていくものと考えられる。 なお、GaN バルクについては、基板の特性向上を課題とする出願はあるものの、デバイス・ モジュールの特性向上を課題とした出願はまだわずかであり、この技術については研究の緒 についたばかりと言える。 図 2-22 GaN on Si 系パワーデバイスに関する出願先国別-出願人国籍別出願件数(日米欧中韓 への出願) 出 願 先 国 日本 119 14 14 7 米国 38 58 13 9 欧州 13 19 22 中国 9 9 8 韓国 10 10 7 日本 米国 欧州 30 25 中国 出願人国籍 - 36 - 韓国 2 9 3 3 1 4 2 その他 図 2-23 GaN on Si 系パワーデバイスにおける課題と使用エピ基板の関係(日米欧中韓への出願) 課 題 基板の特性向上一般 ュー デ バ イ ス ・ モ ジ ル の 特 性 向 上 111 360 107 56 低損失 6 23 7 高耐圧 14 31 12 大電流 8 16 67 2 1 2 8 高速動作・高周波化 6 14 6 高温動作 2 3 2 4 閾値制御 4 6 4 1 リーク電流防止 2 11 5 2 3 3 電流コラプスの抑制 高破壊耐量 1 p型不純物の活性化 非極性面、 半極性面の利用 小型化・高集積化・軽量化 1 10 1 4 信頼性・耐久性の向上 4 製造技術の改善 15 その他 9 25 3 サ フ ァ 使 用 エ ピ 基 板 5 S i イ ア - 37 - 5 1 12 1 2 3 S i C G a N そ の 他 第3章 グリーンパワーIC に関する特許出願動向(応用分野(電力変換器)関連特許) 第1節 調査対象範囲と調査方法 グリーンパワーIC に関する特許出願のうちで、応用分野(電力変換器)に関連するものを 検索し、全体動向調査(特許出願及び登録特許)、技術区分別動向調査及び出願人別動向調査 を行った。この調査は、グリーンパワーIC がどのようなアプリケーションで活用されるかを、 グリーンパワーIC から見たときの顧客側の情報として把握することを目的としている。調査 対象範囲は、以下に示すように第2章のパワーデバイス関連特許と同様であるが、特許文献 に示された抄録、あるいは特許データベースからダウンロードした抄録を基にして分類した。 調査対象とした出願先国及び使用したデータベースは第2章と同様である。 (1)調査対象期間と特許文献件数 調査対象とする特許文献は、優先権主張年を基準としてで 2000 年から 2008 年に出願され たものとした。検索された特許出願件数は、日本への出願について 6,677 件、米国、欧州、 中国及び韓国への出願について合計 8,893 件であった。登録特許についても優先権主張年ベ ースで 2000 年から 2008 年に出願されたものを調査対象とした。 (2)調査対象技術範囲と技術分類 解析に用いた解析軸は第2章と同一であるので、ここでは割愛する。ただし、抄録のみを 読んで分類しているため、課題と応用分野は記載されていることが多いが、解決手段につい ては明確には判断できないものが多い。そこで第3章では課題と応用分野を中心にデータ解 析した。 今回調査の対象とした出願先国別特許出願件数は表 3-1 のとおりである。調査した出願先 国は日米欧中韓で、出願人国籍別の出願動向を中心に調査した。 表 3-1 出願先国別調査対象特許出願件数 日本への出願 米国への出願 欧州への出願 中国への出願 韓国への出願 出願件数 6,677 件 2,846 件 2,945 件 - 38 - 2,067 件 1,035 件 合 計 15,570 件 第2節 全体動向 1.日米欧中韓への出願及び登録動向 (1)出願人国籍別出願及び登録動向 応用分野(電力変換器)関連特許について、日米欧中韓への出願における、出願人国籍別 出願件数の年次推移と出願件数比率を図 3-1 に示す。全体で 15,570 件のうち、日本国籍の出 願人による出願が 60.2%で最も多く、次いで欧州国籍が 17.2%、米国籍が 12.8%、韓国籍 が 3.7%、中国籍が 3.2%となっている。この結果、グリーンパワーIC を利用するアプリケ ーション分野において、日本は他地域と比較して多数の技術的蓄積があることが分かる。ビ ジネスの視点から見ると、グリーンパワーIC をシステム化するためのパートナーは日本国内 に豊富にあることを示唆している。 図 3-1 出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率(日米欧中韓への出願) 中国籍 499件 3.2% 2,500 韓国籍 571件 その他 3.7% 463件 3.0% 2,101 2,000 1,873 1,580 出 1,500 願 件 数 1,000 欧州国籍 2,674件 17.2% 日本国籍 9,366件 60.2% 米国籍 1,997件 12.8% 1,804 1,750 1,722 1,645 優先権主張 2000-2008年 1,588 1,507 500 2000 合計 15,570 件 2001 2002 日本 2003 2004 2005 2006 2007 2008 出願年(優先権主張年) 出願人国籍 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計 応用分野(電力変換器)関連特許について、日米欧中韓での登録における、出願人国籍別 登録件数の年次推移と登録件数比率を図 3-2 に示す。全体で 5,627 件のうち、日本国籍の出 願人による出願が 53.5%で最も多く、次いで欧州国籍が 19.2%、米国籍が 15.4%、韓国籍 が 4.9%、中国籍が 3.3%となっている。 図 3-2 出願人国籍別登録件数推移及び登録件数比率(日米欧中韓での登録) 1,000 中国籍 185件 3.3% 欧州国籍 1,081件 19.2% 韓国籍 277件 4.9% 900 その他 206件 3.7% 優先権主張 2000-2008年 923 805 854 800 700 出 願 件 数 日本国籍 3,012件 53.5% 918 875 600 552 500 415 400 300 222 200 100 米国籍 866件 15.4% 合計 5,627 件 63 2000 2001 2002 出願人国籍 日本 - 39 - 2003 2004 2005 2006 2007 2008 出願年(優先権主張年) 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計 (2)PCT 出願動向 特許協力条約(PCT)に基づく国際出願は、複数の国への出願を念頭にした重要な特許出 願であると考えられる。応用分野(電力変換器)関連特許について、PCT 出願における出願 人国籍別出願件数の年次推移と出願件数比率を図 3-3 に示す。全体で 1,435 件のうち、日本 国籍の出願人による出願が 38.5%で最も多く、次いで欧州国籍の 34.1%、米国籍の 21.4% となっている。中国籍、韓国籍による出願は共に少ない。 図 3-3 出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率(PCT 出願) 250 中国籍 22件 1.5% 韓国籍 12件 0.8% 優先権主張 2000-2008年 その他 53件 3.7% 213 196 200 日本国籍 552件 38.5% 200 177 162 出 150 願 件 数 100 欧州国籍 489件 34.1% 137 121 116 113 50 2000 合計 1,435 件 米国籍 307件 21.4% 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 出願年(優先権主張年) 出願人国籍 日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計 2.出願先国別-出願人国籍別出願件数 応用分野(電力変換器)関連特許について、出願先国別-出願人国籍別の出願件数を図 3-4 に示す。日本は、市場成長が見込まれる中国、韓国においては、自国の出願人よりも多く特 許出願しており、将来の市場展開のための知財的基盤は整備されつつある。出願先国別では、 日米中韓への出願は、日本国籍出願人による出願が最も多い。欧州へは、欧州国籍出願人に よる出願が最も多い。 図 3-4 出願先国別-出願人国籍別出願件数 出 願 先 国 259 300 日本 6,008 米国 1,174 818 509 欧州 932 466 1,430 中国 827 295 305 韓国 425 159 130 日本 米国 欧州 8 54 28 105 16 442 5 中国 出願人国籍 - 40 - 289 韓国 48 212 45 56 78 120 27 その他 3.出願先国別-出願人国籍別出願件数収支 応用分野(電力変換器)関連特許について、日本、米国、欧州、中国及び韓国への出願に おける、出願先国別の出願人国籍別出願件数収支を図 3-5 に示す。日本は米欧中韓いずれの 出願先に対しても数的に優位にある。米国と欧州は拮抗している。米国も欧州も、中国、韓 国に対しては共に数的に優位にある。韓国は中国に対して数的に優位にある。 図 3-5 出願先国別-出願人国籍別出願件数収支 日本への出願 6,677件 欧州国籍 300件 4.5% 中国籍 8件 0.1% 米国籍 259件 3.9% 米国への出願 2,846件 韓国籍 54件 0.8% その他 48件 0.7% 欧州への出願 2,945件 259件 日本国籍 6,008件 90.0% 中国籍 28件 1.0% 932件 300件 その他 212件 7.4% 韓国籍 105件 3.7% 8件 1,174件 中国籍 16件 0.5% 54件 日本国籍 932件 31.6% 欧州国籍 1,430件 48.6% 466件 米国籍 818件 28.7% 米国籍 466件 15.8% 105件 16件 28件 45件 827件 295件 425件 130件 中国への出願 2,067件 韓国籍 78件 3.8% 305件 その他 120件 5.8% 日本国籍 827件 40.0% 中国籍 442件 21.4% 韓国への出願 1,035件 159件 韓国籍 289件 27.9% 78件 5件 欧州国籍 305件 14.8% その他 56件 1.9% 509件 日本国籍 1,174件 41.3% 欧州国籍 509件 17.9% 韓国籍 45件 1.5% その他 27件 2.6% 中国籍 5件 0.5% 欧州国籍 130件 12.6% 米国籍 295件 14.3% - 41 - 日本国籍 425件 41.1% 米国籍 159件 15.4% 4.出願先国別-出願人国籍別登録件数収支 応用分野(電力変換器)関連特許について、日本、米国、欧州、中国及び韓国での登録に おける、出願先国別の出願人国籍別登録件数収支を図 3-6 に示す。日本は米欧中韓いずれの 登録先に対しても数的に優位にある。欧州は、米中韓のいずれに対しても優位にある。韓国 は米国及び中国に対して優位にある。米国は中国に対して優位にある。 図 3-6 出願先国別-出願人国籍別登録件数収支 日本での登録 1,628件 欧州国籍 52件 3.2% 中国籍 1件 0.1% 韓国籍 21件 1.3% その他 9件 0.6% 米国籍 55件 3.4% 55件 日本国籍 1,490件 91.5% 米国での登録 1,838件 中国籍 17件 0.9% 韓国籍 65件 3.5% その他 133件 7.2% 欧州での登録 1,064件 296件 52件 韓国籍 14件 1.3% 736件 1件 日本国籍 736件 40.0% 中国籍 5件 0.5% 21件 日本国籍 296件 27.8% 306件 欧州国籍 306件 16.6% 欧州国籍 631件 59.3% 100件 65件 米国籍 100件 9.4% 5件 米国籍 581件 31.6% 14件 17件 320件 72件 170件 17件 中国での登録 703件 75件 韓国籍 37件 5.3% 韓国での登録 394件 58件 その他 38件 5.4% 日本国籍 320件 45.5% 中国籍 161件 22.9% 日本国籍 170件 43.1% 37件 1件 欧州国籍 75件 10.7% その他 8件 2.0% 韓国籍 140件 35.5% 米国籍 72件 10.2% - 42 - 中国籍 1件 0.3% 欧州国籍 17件 4.3% 米国籍 58件 14.7% その他 18件 1.7% 5.三極コア出願件数推移及び出願件数比率 出願人国籍別の三極コア出願件数推移及び出願件数比率を図 3-7 に示す。全体で 1,153 件 のうち、日本国籍出願人による出願が最も多く、57.1%を占めている。次いで、欧州国籍が 23.1%、米国籍が 16.7%、韓国籍が 1.5%となっている。出願件数は、2006 年まで増加して おり、調査した期間ではどの出願年も日本国籍が最も多い。 図 3-7 出願人国籍別三極コア出願件数推移及び出願件数比率 中国籍 3件 0.3% 欧州国籍 266件 23.1% 韓国籍 17件 1.5% 200 その他 16件 1.4% 180 187 優先権主張 2000-2008年 153 160 140 131 133 出 120 願 件 100 日本国籍 数 80 658件 57.1% 149 137 123 84 56 60 40 米国籍 193件 16.7% 20 合計 1,153 件 2000 2001 2002 日本 - 43 - 2003 2004 2005 2006 2007 2008 出願年(優先権主張年) 出願人国籍 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計 第3節 技術区分別動向 応用分野(電力変換器)関連特許について、日米欧中韓への出願における技術区分別-出 願人国籍別出願件数の結果は以下のとおりである。 (1)技術区分(応用分野)別-出願人国籍別出願件数 応用分野(電力変換器)関連特許について、日米欧中韓への出願における、技術区分(応 用分野)別-出願人国籍別出願件数を図 3-8 に示す。 日米韓国籍出願人からの出願は、民生・家電機器分野への出願が最も多い。欧州国籍は、 発電・送配電システム(スマートグリッド等)分野への出願が最も多い。また、中国籍は、 汎用インバータが最も多い。 この結果、日本の特許出願については、幅広いアプリケーションにおいて多数の出願がな されており、パワーデバイスが各アプリケーションと有機的に結合されていくと、関連する 様々な業種の win-win の関係を国内においても構築し得ることを示唆している。特に、一般 の半導体デバイスには見られない発電・送配電システム、自動車、鉄道等のインフラ系のア プリケーションの数が多いことは、グリーンパワーIC のビジネスを展開する上でのユニーク な特徴を示唆している。 図 3-8 技術区分(応用分野)別-出願人国籍別出願件数(日米欧中韓への出願) 応用分野 IT関連機器(携帯電話、 パソコン他) 19 43 5 101 91 汎用インバータ 196 産業機器 (モーター駆動等) 408 131 190 発電・送配電システム (スマートグリッド等) 914 216 351 1,130 260 213 民生・家電機器 自動車 鉄道 船舶 航空機 830 32 26 27 5 48 64 17 53 2 8 2 9 4 2 16 2 41 6 99 日本 2 16 米国 55 10 11 欧州 中国 出願人国籍 - 44 - 45 160 105 8 57 その他 60 6 電力貯蔵 6 7 65 43 143 16 241 2 2 1 韓国 その他 (2)技術区分(課題)別-出願人国籍別出願件数 応用分野(電力変換器)関連特許について、日米欧中韓への出願における、技術区分(課 題)別-出願人国籍別出願件数を図 3-9 に示す。 日米欧中韓いずれの国籍の出願もデバイス・モジュールの特性向上を課題とする出願が最 も多い。 図 3-9 技術区分(課題)別-出願人国籍別出願件数(日米欧中韓への出願) 課 題 デバイス・モジュール の特性向上 2,631 小型化・高集積化・ 軽量化 1,665 電磁干渉(EMI)の低減 417 信頼性・耐久性の向上 1,465 製造技術の改善(基板 製造以外の工程) 1,848 534 417 744 日本 139 127 97 112 65 30 24 77 67 14 14 13 104 51 51 113 70 50 73 29 37 中国 韓国 その他 144 その他 156 234 199 169 142 128 米国 欧州 出願人国籍 (3)技術区分(課題)別-出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率 応用分野(電力変換器)関連特許で、技術区分(課題)の大分類ごとに、出願人国籍別出 願件数推移及び出願件数比率を図 3-10 に示す。 デバイス・モジュールの特性向上については、全体 4,004 件のうち、日本国籍の出願人に よる出願が最も多く 65.7%である。次いで、米国籍が 13.3%、欧州国籍が 10.4%、中国籍 が 3.9%、韓国籍が 3.5%となっている。出願件数は、2004 年と 2006 年とにいずれも 550 件 台のピークがあるが、後は大体 450 件平均で推移している。 小型化・高集積化・軽量化については、全体 1,993 件のうち、日本国籍の出願人による出 願が最も多く 83.5%である。次いで、欧州国籍が 5.6%、米国籍が 4.9%、中国籍が 3.3%、 韓国籍が 1.5%となっている。特に、他の課題に比べて、日本国籍の出願人の割合が高いこ とが目立つ。出願件数は、2000 年の 205 件から緩やかに増加して 2006 年に 281 件となって いる。 電磁干渉(EMI)の低減については、全体 602 件のうち、日本国籍の出願人による出願が 最も多く 69.3%である。次いで、米国籍が 12.8%、欧州国籍が 11.1%、中国籍が 2.3%、韓 - 45 - 国籍が 2.3%となっている。出願件数は、2006 年が 123 件と多いが、他は 70 件程度を中心に 増減を繰り返している。 信頼性・耐久性の向上については、全体 2,049 件のうち、日本国籍の出願人による出願が 最も多く 71.5%である。次いで、欧州国籍が 11.4%、米国籍が 7.0%、中国籍が 5.1%、韓 国籍が 2.5%となっている。出願件数は、2006 年が 416 件で多いが、他は 200 件程度を中心 に上下を繰り返し推移している。 製造技術の改善(基板製造以外の工程)については、全体 2,449 件のうち、日本国籍の出 願人による出願が最も多く 75.5%である。次いで、米国籍が 8.1%、欧州国籍が 6.9%、中 国籍が 4.6%、韓国籍が 2.9%となっている。出願件数は、2006 年が 444 件で多いが、他は 250 件程度を中心にほぼ安定に推移している。 図 3-10 技術区分(課題)別-出願人国籍別出願件数推移及び出願件数比率(日米欧中韓への 出願) a) デバイス・モジュールの特性向上 600 500 中国籍 156件 3.9% 韓国籍 139件 3.5% 558 555 優先権主張 2000-2008年 459 487 428 その他 127件 3.2% 400 400 356 出 願 件 300 数 欧州国籍 417件 10.4% 405 356 200 日本国籍 2,631件 65.7% 米国籍 534件 13.3% 100 2000 合計 4,004 件 2001 2002 出願人国籍 日本 2003 2004 2005 2006 2007 2008 出願年(優先権主張年) 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計 b) 小型化・高集積化・軽量化 300 欧州国籍 112件 5.6% 中国籍 65件 3.3% 韓国籍 30件 1.5% その他 24件 1.2% 250 281 優先権主張 2000-2008年 261 238 221 218 205 195 200 201 出 願 件 150 数 米国籍 97件 4.9% 173 100 50 合計 1,993 件 日本国籍 1,665件 83.5% 2000 2001 2002 日本 2003 2004 2005 2006 2007 2008 出願年(優先権主張年) 出願人国籍 米国 - 46 - 欧州 中国 韓国 その他 合計 c) 電磁干渉(EMI)の低減 140 中国籍 14件 2.3% 欧州国籍 67件 11.1% 韓国籍 14件 2.3% その他 13件 2.2% 123 優先権主張 2000-2008年 120 100 79 出 願 件 数 米国籍 77件 12.8% 80 79 72 66 58 60 60 46 40 日本国籍 417件 69.3% 20 19 合計 602 件 2000 2001 2002 出願人国籍 日本 2003 2004 2005 2006 2007 2008 出願年(優先権主張年) 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計 d) 信頼性・耐久性の向上 450 中国籍 104件 5.1% 韓国籍 51件 2.5% 416 優先権主張 2000-2008年 400 その他 51件 2.5% 350 300 欧州国籍 234件 11.4% 出 願 250 件 200 数 250 241 235 238 194 193 174 150 米国籍 144件 7.0% 100 108 50 日本国籍 1,465件 71.5% 合計 2,049 件 2000 2001 2002 日本 2003 2004 2005 2006 2007 2008 出願年(優先権主張年) 出願人国籍 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計 e) 製造技術の改善(基板製造以外の工程) 500 中国籍 113件 4.6% 欧州国籍 169件 6.9% 韓国籍 70件 2.9% 450 その他 50件 2.0% 444 優先権主張 2000-2008年 400 350 出 300 願 件 250 数 200 米国籍 199件 8.1% 281 255 257 262 254 263 211 222 150 100 50 合計 2,449 件 日本国籍 1,848件 75.5% 2000 2001 2002 出願人国籍 日本 - 47 - 2003 2004 2005 2006 2007 2008 出願年(優先権主張年) 米国 欧州 中国 韓国 その他 合計 第4章 グリーンパワーIC に関する研究開発動向 第1節 調査方法と対象とした論文 グリーンパワーIC に関する論文発表動向から見た研究開発動向について、論文データベー ス(JSTPlus)を用いて検索し、全体発表動向調査、技術区分別動向調査、注目研究開発テー マの動向調査、研究者所属機関・研究者別動向調査及び重要論文の変遷に関する調査を行っ た。論文の検索に用いた検索式を資料編の資料 1 に示す。対象とした論文の範囲は、2000 年 ~2009 年に発行された論文誌に掲載されたものとした。 検索された論文(原著論文、抄録有)は 7,211 件であった。このうち、パワーデバイスに 関する論文を 1,025 件抽出し、それらについては原文献のコピーを入手して、その内容を基 に特許出願動向調査と同様の分析軸で分類した。残りの論文については、日本語訳した抄録 を基にして分類した。その結果、発光デバイスに関する論文などの調査対象外の論文(いわ ゆるノイズ)が含まれており、調査対象とする論文は、原文献にて解析したものでは 910 件 (88.8%)、抄録にて解析したものでは 4,349 件(70.3%)であった。 検索に使用したデータベースが、日本の雑誌を多く収録しているため、研究者所属機関国 籍別に集計すると、日本国籍が有利になる可能性がある。そこで、論文発表動向を同じ条件 で国際的に比較するために、検索された論文を掲載した論文誌の中から、和雑誌と明らかに 特定の企業・機関の論文を掲載している雑誌を除いたものを「国際的な主要論文誌」と定め、 国際比較を行う際にはこれらに掲載された論文に限定して比較することとした。国際的な主 要論文誌は 569 誌である。国際的な主要論文誌は、主として外国で出版された英文の論文誌 であるが、英文の論文も掲載している日本の論文誌も選定されている。国際的な主要論文誌 に掲載された論文は 5,790 件(ノイズ落とし前)で、全体の 80.3%を占めている。なお、研 究者所属機関別ランキングや研究者別ランキングの調査においては、全論文誌で比較するこ とを原則とし、一部は両方の範囲で集計した。また、論文の研究者所属機関の国籍は筆頭著 者の所属する研究機関が所在する都市の国籍とした。研究機関及び研究者のランキングにお いて、共同研究の場合はそれぞれ別々にカウントした。研究機関の特定に当たり、ファンド をベースに大学で研究されたもので両方が記載される場合があるが、大学名を優先すること とした。 解析対象とした論文の件数(ノイズ除去後)を表 4-1 に示す。 表 4-1 解析対象とした論文件数 全論文誌 パワーデバイスに関する論文 その他の論文 国際的な主要誌 910 499 4,349 3,600 - 48 - 第2節 全体動向 国際的な主要論文誌に限定した場合について、研究者所属機関国籍別論文発表件数推移及 び論文発表件数比率を図 4-1 に示す。パワーデバイスに関する論文では欧州国籍が 210 件で 42.1%を占めており最も多い。次いで米国籍が 134 件で 26.9%となっており、日本国籍は 64 件で 12.8%である。その他の論文では、欧州国籍が 1,077 件で 29.9%を占めており最も多く、 次いで米国籍が 964 件で 26.8%、日本国籍は 497 件で 13.8%となっている。パワーデバイス に関する論文で 2001 年に比べて 2002 年には 3 分の 1 以下に大きく減少した要因については、 IT バブルの崩壊や、2001 年 9 月の米国における同時多発テロの影響が考えられる。 特許と比べ日本国籍の割合が小さい。論文発表は大学等の研究機関が主役となることから、 日本国内においては、グリーンパワーIC に関連する研究者の数が他地域に比べ相対的に少な いことを示唆している。他方、欧州では特許と比べ割合が大きい。論文は主に基礎的な研究 成果を対象としていることを考慮すると、欧州においては基礎的な研究が充実していること を示唆しており、日本企業が共同研究のパートナー等に適した相手を探す際には欧州が有力 な地域となる。 図 4-1 研究者所属機関国籍別論文発表件数推移及び論文発表件数比率(国際的な主要論文誌) a) パワーデバイスに関する論文 90 韓国籍 21件 4.2% その他 49件 9.8% 日本国籍 64件 12.8% 80 83 発表年 2000-2009 77 70 米国籍 134件 26.9% 56 57 60 中国籍 21件 4.2% 発 表 50 件 40 数 46 49 40 37 30 30 24 20 10 合計 499 件 欧州国籍 210件 42.1% 2000 2001 2002 2003 2004 研究者所属機関国籍 日本国籍 2005 2006 2007 2008 2009 発表年 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計 b) その他の論文 450 その他 593件 16.5% 韓国籍 180件 5.0% 日本国籍 497件 13.8% 426 392 400 350 365 340 2004 2005 361 343 370 258 発 表 250 件 200 米国籍数 964件 26.8% 426 319 300 中国籍 289件 8.0% 発表年 2000-2009 150 100 50 欧州国籍 1,077件 29.9% 合計 3,600 件 2000 2001 2002 研究者所属機関国籍 日本国籍 - 49 - 米国籍 2003 2006 2007 2008 2009 発表年 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 合計 第3節 技術区分別動向 論文(国際的な主要論文誌)における技術区分別-研究者所属機関国籍別論文発表件数の 結果は以下のとおりである。 (1)技術区分(課題)別-研究者所属機関国籍別論文発表件数 研究者所属機関の国籍ごとに、技術区分別(課題)の論文発表件数を図 4-2 に示す。課題 は、パワーデバイスに関する論文では、その他の課題以外では、デバイス・モジュールの特 性向上が多い。その他の論文ではそれらに加えて、基板の特性向上が多く、この傾向は国籍 間の差異は少ない。 なお、論文では必ずしも課題を解決することを述べたものとは限らないため、例えば、メ カニズムの解明や実験結果報告といったものがあるが、それらをその他の課題として分類し ている。そのため、結果的にその他の課題が最も多くなっている。 図 4-2 技術区分(課題)別-研究者所属機関国籍別論文発表件数(国際的な主要論文誌) a) パワーデバイスに関する論文 課題 基板の特性向上 デバイス・モジュール の特性向上 2 40 87 小型化・高集積化・ 軽量化 13 電磁干渉(EMI)の低減 4 信頼性・耐久性の向上 13 16 製造技術の改善(基板 製造以外の工程) 11 29 4 4 26 9 1 17 25 4 2 1 55 1 2 3 4 6 9 4 1 2 12 18 4 6 4 12 10 39 104 161 日本 米国 欧州 b) その他の論文 1 100 3 正常動作の実現 (誤動作防止、初期特 性確保) その他 4 中国 韓国 42 その他 研究者所属機関国籍 課題 基板の特性向上 128 207 234 56 34 89 デバイス・モジュール の特性向上 155 266 232 40 42 127 小型化・高集積化・ 軽量化 22 53 33 4 4 12 電磁干渉(EMI)の低減 18 34 19 12 1 18 信頼性・耐久性の向上 44 75 121 24 10 正常動作の実現 (誤動作防止、初期特 性確保) 41 93 140 29 20 32 17 42 81 製造技術の改善(基板 製造以外の工程) 50 89 101 その他 267 584 685 203 119 415 日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 研究者所属機関国籍 - 50 - 59 (2)技術区分(応用分野)別-研究者所属機関国籍別論文発表件数 応用分野ごとの研究者所属機関国籍別の論文発表件数を図 4-3 に示す。日米欧から発表さ れたパワーデバイスに関する論文は、応用分野として自動車と IT 関連機器を想定しているも のが多い。その他の論文では、自動車と発電・送配電システムに関する論文が多い。 図 4-3 技術区分(応用分野)別-研究者所属機関国籍別論文発表件数(国際的な主要論文誌) a) パワーデバイスに関する論文 応用分野 IT関連機器(携帯電話、 パソコン他) 8 12 10 2 1 7 汎用インバータ 産業機器 (モーター駆動等) 1 発電・送配電システム (スマートグリッド等) 1 1 2 3 3 1 1 4 民生・家電機器 2 2 2 1 自動車 10 8 19 2 1 1 2 鉄道 船舶 航空機 2 1 1 電力貯蔵 2 その他 17 1 日本 8 米国 欧州 中国 韓国 その他 研究者所属機関国籍 b) その他の論文 応用分野 IT関連機器(携帯電話、 パソコン他) 5 5 7 1 汎用インバータ 2 3 8 3 7 9 産業機器 (モーター駆動等) 発電・送配電システム (スマートグリッド等) 1 4 25 12 60 民生・家電機器 54 鉄道 11 4 109 28 8 6 自動車 26 107 18 17 74 7 109 5 24 9 13 35 3 10 38 4 15 6 船舶 10 4 1 11 4 3 航空機 2 電力貯蔵 1 7 3 その他 2 5 6 日本 米国 欧州 2 1 3 4 1 中国 研究者所属機関国籍 - 51 - 韓国 その他 (3)技術区分(解決手段)別-研究者所属機関国籍別論文発表件数 解決手段ごとの研究者所属機関国籍別の論文発表件数を図 4-4 に示す。パワーデバイスに 関する論文はデバイス構造に関する論文が最も多い。米国ではモジュールに関する論文が他 の国籍と比較して多くなっている。その他の論文では、どの国籍においても基板に関する論 文が最も多く、次いでモジュールに関する論文が多くなっている。 図 4-4 技術区分(解決手段)別-研究者所属機関国籍別論文発表件数(国際的な主要論文誌) a) パワーデバイスに関する論文 解決手段 基板 デバイス構造 5 22 3 24 プロセス 4 モジュール 5 3 41 1 9 3 17 装置 7 4 1 1 6 1 1 8 1 1 日本 米国 欧州 1 中国 韓国 その他 69 184 研究者所属機関国籍 b) その他の論文 解決手段 基板 187 335 376 デバイス構造 11 22 14 2 1 プロセス 19 29 24 7 4 モジュール 62 139 162 装置 3 日本 3 米国 112 23 3 欧州 17 1 中国 研究者所属機関国籍 - 52 - 14 63 3 韓国 7 2 その他 解決手段(モジュール)ごとの研究者所属機関国籍別の論文発表件数を図 4-5 に示す。パ ワーデバイスに関する論文では、モジュールの構成・構造、モジュールの部材、モジュール の製造方法に関する論文が発表されており、日米欧国籍ともモジュールの構成・構造がやや 多い。その他の論文では、日米欧国籍ともモジュールの構成・構造が最も多く、次いでモジ ュールの評価・検査に関する論文が多くなっている。 図 4-5 技術区分(解決手段-モジュール)別-研究者所属機関国籍別論文発表件数(国際的な 主要論文誌) a) パワーデバイスに関する論文 モジュール モジュールの構成・ 構造 5 16 6 1 1 モジュールの部材 4 11 4 1 1 モジュールの製造方法 2 8 モジュールの評価・ 検査 3 1 1 その他 2 日本 米国 欧州 中国 韓国 その他 12 48 研究者所属機関国籍 b) その他の論文 モジュール モジュールの構成・ 構造 32 88 100 モジュールの部材 21 35 41 モジュールの製造方法 モジュールの評価・ 検査 5 18 その他 14 日本 59 7 米国 6 11 63 4 12 3 1 1 10 2 7 欧州 4 中国 研究者所属機関国籍 - 53 - 5 韓国 23 4 その他 第5章 グリーンパワーIC に関する政策動向 第1節 日本の産業政策 1.各種の産業政策 グリーンパワーIC 関連技術は、第三期科学技術基本計画(2006~2010 年度)では、情報 通信分野とナノテクノロジー・材料分野に記載されている。その通信分野では、重要な研究 開発課題の詳細として、非シリコンデバイスの一つとしてパワーデバイスを挙げ、 「高効率イ ンバータの開発」と「高効率スイッチング電源の開発」を進めるとしている。さらにナノテ クノロジー・材料分野では、重要な研究開発課題の中の研究開発目標の一つとして、「2011 年までに、シリコントランジスタにとって代わる、炭化シリコンのナノサイズ成膜技術を活 用したパワーデバイスにより高効率インバータを実現し、また、炭化シリコンの上にナノサ イズの化合物半導体の薄膜を形成することでシリコン半導体の間接遷移型半導体とは動作原 理の全く異なる直接遷移型半導体を実現し、350GHz 級の高周波デバイスを実現する」として いる。 第四期科学技術基本計画(2011~2015 年度)でも、省エネ化のため、超低電圧デバイスと 高効率パワーエレクトロニクスの研究開発を経済産業省が行うことが盛り込まれる見込みで あり、2020 年までにパワー半導体の電力損失を 1/100 にすることを目標としている 5。 経済産業省が 2009 年 4 月に策定した七つのイノベーションプログラムにおいて、 「IT イノ ベーションプログラム」と「エネルギーイノベーションプログラム」の中に「グリーン IT プロジェクト」が含まれている。また「ナノテク・部材イノベーションプログラム」と「IT イノベーションプログラム」で「低炭素社会を実現する新材料パワー半導体プロジェクト」 が進められている。また「エネルギーイノベーションプログラム」・「ナノテク・部材イノベ ーションプログラム」・「IT イノベーションプログラム」として、「窒化物系化合物半導体基 板・エピタキシャル成長技術の開発」が進められている 6。 経済産業省は 2008 年 3 月に「Cool Earth-エネルギー革新技術計画」を発表した。その 中で、2050 年までに世界全体の温室効果ガス排出量を半減するために、21 の技術が挙げられ ており、パワーエレクトロニクスは部門横断技術の一つになっている。開発すべき技術、実 用化時期については、SiC 系、GaN 系パワーデバイスでは 2015 年頃の実用化、ダイヤモンド 系パワーデバイスでは 2020 年頃の実用化を目指すとしている 7。 2009 年 6 月に産業技術総合研究所(以下、産総研)、物質・材料研究機構及び筑波大学が 「つくばイノベーションア 中核となって、 「つくばイノベーションアリーナ」が形成された 8。 リーナ」では、世界的なナノテク研究拠点の構築を目指すために、経済産業省と文部科学省 が連携して、ナノテクの産業化と人材育成を一体的に推進している。六つのコア研究領域が あり、パワーエレクトロニクスはその一つである。 5 6 7 8 http://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihu91/haihu-si91.html http://www.meti.go.jp/committee/materials/downloadfiles/g80516a04j.pdf http://www.enecho.meti.go.jp/policy/coolearth_energy/coolearth-gaiyou.pdf http://tia-nano.jp/ - 54 - 産総研では 2010 年 4 月に「先進パワーエレクトロニクス研究センター」を設立した 9。こ こでは、電力エネルギーにおける省エネルギー技術と新エネルギーの技術導入のための高効 率電力変換技術等、電力エネルギー制御・有効利用のために、SiC や GaN 等のワイドバンド ギャップ半導体による、パワースイッチングデバイス及び電力変換器の技術確立と実証を目 的としている。 上記のほかに、民間主導の活動として、「技術研究組合次世代パワーエレクトロニクス技 術開発機構(FUPET)」と「SiC アライアンス」がある。 FUPET は、2009 年 8 月に 9 機関で設立され、NEDO から「次世代パワーエレクトロニクス技 術開発(グリーン IT プロジェクト)」の研究を受託して活動を開始した。2010 年 5 月には、 デバイスメーカー中心の組合であった FUPET が、材料メーカーや自動車メーカー等と共同で、 経済産業省の「低炭素社会を実現する新材料パワー半導体プロジェクト」に応募し、採択さ れたことを契機に、これら共同提案企業を組合員に加え、川上産業から川下産業に至るまで の企業、大学、公的研究機関が結集する 25 機関の組合に拡大された。 これに加えて 2010 年 5 月に、拡大 FUPET 組合員のみならず、SiC に関連する企業や大学な ど産学官が幅広く集結するオール・ジャパンの枠組みとして、SiC アライアンスが発足した 10。 このアライアンスでは、世界トップを目指した先端的研究により、内閣府が進める「最先端 研究開発支援プログラム」における超高耐圧 SiC デバイス開発を目指したプロジェクトや、 応用物理学会の「SiC 及び関連ワイドバンドギャップ半導体研究会」の活動を含め、産官学 それぞれが行う全ての SiC 研究開発を俯瞰し、相互連携を図ることを目的としている。 2.技術戦略マップ 2010 との対応関係 経済産業省が 2010 年 5 月にまとめた「技術戦略マップ 201011」において、パワーデバイ スが関連する分野としては、情報通信における①半導体分野及び④ネットワーク分野、ナノ テクノロジー・部材の②部材分野及び④グリーン・サステイナブルケミストリー分野、並び に、エネルギーの①エネルギー分野がある。これらのパワーエレクトロニクスに関係する部 分に記載された導入シナリオ、技術マップ及び技術ロードマップから、この分野の現状と今 後の研究開発目標などを調査した。 技術戦略マップ 2010 の改訂の主なポイントの一つとして、グリーンイノベーションへの 対応がある。これはグリーンイノベーションに関わる昨今の動向を踏まえ、エネルギー分野 において、技術ロードマップの中から主要な 18 の技術分野を抽出し、技術内容や研究開発動 向を掘り下げて解説している。 情報通信における①半導体分野では、半導体を情報家電、自動車、産業機械、医療器械等、 様々な製品の付加価値を高める非常に重要な産業のコア部品と位置付け、2010 年から 2019 年までの 10 年間の技術ロードマップを作成している。 技術マップにおいては、パワーデバイスは non-CMOS 技術のディスクリートデバイスに位 置付けられ、Si 系パワーデバイスとワイドバンドギャップ半導体パワーデバイスにカテゴリ 9 http://unit.aist.go.jp/eserl/ci/index.html http://www.sicalliance.jp/ 11 http://www.meti.go.jp/policy/economy/gijutsu_kakushin/kenkyu_kaihatu/index.html#shokai 10 - 55 - ー分けされている。最重要課題としては Si 系を超える超高速、大パワー密度、低消費電力、 新機能等を有することを期待されている。 技術ロードマップでは、SiC 系パワーデバイスの MOSFET の定格電流は 2012 年に [email protected]、 2016 年に [email protected] を目標とし、重要課題は大容量化、高耐圧化としている。 さらに、情報通信の半導体分野以外では、④ネットワーク分野で超高周波高出力デバイス として一部触れられている。ここでは GaN on SiC が 2009 年、GaN on Si が 2010 年、ダイヤ モンドが 2016 年頃とされている。 情報通信の半導体分野のパワーデバイスの技術ロードマップを図 5-1 に示す。 ナノテクノロジー・部材の②部材分野では、ニューガラス分野にパワーデバイスがあり、 技術マップでは情報家電分野の半導体関連部材にパワーデバイス部材がある。求められる機 能を発現する高度部材として、窒化物半導体/SiC/ダイヤモンド/CNT パワーデバイス等が ある。技術ロードマップでは、結晶成長で、SiC、GaN、ダイヤモンド等が挙げられている。 SiC 基板転位密度は、2010 年に 1000/cm2、2015 年に 100/cm2 がスペックとされている。 ナノテクノロジー・部材の④グリーン・サステイナブルケミストリー分野では、IT 向け化 学品(電子材料)として SiC、GaN 等のワイドバンドギャップ半導体材料が研究課題として挙 げられている。 図 5-1 情報通信の半導体分野のパワーデバイスの技術ロードマップ 分野構造 評価パラメータ 小項目 中項目 大項目 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 Flash メモリハーフピッチ(nm)→ 45 32 40 28 36 25 32 23 28 20 25 18 22.5 15.9 20 14.2 17.9 12.6 15.9 11.3 ロジック M1 ハーフピッチ(nm)→ 45 38 32 27 24 21 18.9 16.9 15 13.4 DRAM ハーフピッチ(nm)→ 重要課題 パワー デ バイス ディスクリー トデ バイス ウエハ 口径(インチ) 6 8 SiC IGBT の低損失化 厚さ(μm) 85 65 パワー (薄ウエハ化) デバイス MOSFET の低損失 5@600 オン抵抗(mΩcm2) 化(SJ 型) 40@1200 口径(インチ) 4 5 ウエハ 転位密度(1/cm2) <10000 5000 チャネル移動度 cm2/Vs 50 ゲート酸化膜信頼 寿命(年)@温度(℃) 30@150 性 MOSFET オン抵抗 10@1200 5@1200 低損失化・高耐圧 (mΩcm2)@耐圧(V) SiC 化 SBD Vf(V)@耐圧(V) パワー 1.4@1200 (200A/cm2) デバイス MOSFET 電流(A) 30@600 60@600 100@600 10@1200 大容量化・高耐圧 @耐圧(V) 30@1200 60@1200 化 IGBT 電流(A) 20@ @耐圧(V) >100000 材料・プロセス・ デバイス技術 ウエハ ヘテロエピ基板 GaN パワー デバイス 低損失 材料・プロセス・ デバイス技術 高出力パワー密度 回路・制 御・実装 回路・制御技術 技術 実装技術 出典:技術戦略マップ 2010 2.5@600 15@1200 1000 100 30@250 3@1200 2.2@3000 100@ 1200 100@ >100000 SiC-SBD 材料・デバイス構造 SiC-IGBT SiC-MOSFET 口径(インチ) 転位密度(1/cm2) GaN/Si 基板口径 (インチ) スイッチングデバイス オン抵抗(mΩcm2)@ 耐圧(V) 4 10000 8 1@600 材料・デバイス構造 変換器出力パワー 密度(W/cm3) 回路・制御技術 GaN・スイッチングHEMT:ノーマリON 10 15 ノーマリOFF 20 30 ワイドバンドギャップ半 導体 デバイス特 性 に適した回 路・制 御技 術 高温実装 デバイス温度 225℃動 作 実装 技 術 技術ロードマップから関連部分を抜粋(経済産業省) - 56 - エネルギーの①エネルギー分野の「総合エネルギー効率の向上」の次世代省エネデバイス 技術では、高性能デバイスとして SiC 系デバイス、窒化物系デバイス、ダイヤモンド系デバ イスが取り上げられている。また、高性能パワーエレクトロニクスとして高効率インバータ が取り上げられている。エネルギー分野のパワーデバイス関係の技術ロードマップを図 5-2 に示す。 図 5-2 エネルギー分野のパワーデバイス関係の技術ロードマップ エネルギー技術 個別技術 № 50.高性能デバイス 1501A 2010 2015 2020 ウエハ口径(パワーデバイス) 6” 8” 2025 2030~ 300mm Si デバイス 製造プロセス技術(ウエハの口径拡大、微細加工技術、超接合形成、薄ウエハ) 素子構造、材料の改良 新規素子構造 高電流密度化、高温動作化 ソフトスイッチング技術、マトリックスコンバータ技術 シリコンフォトニクス 50.高性能デバイス 1502A ウエハ口径 3” 4” ウエハ転位密度 4 -2 103cm-2 10 cm 6” 102 cm-2 50 cm-2 10 cm -2 SiC デバイス 製造プロセス技術(ウエハの口径拡大、ウエハ転位密度減少) 注入面チャネル移動度向上、酸化膜信頼性向上 ノーマリオフ型 MOSFET ウエハ口径 3” ウエハ転位密度 10 2cm-2 4” 5” 50.高性能デバイス 1503A 窒化物デバイス (GaN、AlN) 50.高性能デバイス HFET(Hetero-junction Field Effect Transistor) SBD(Schottky Barrier Diode) 縦型 MOSFET 素子 GaN 系ヘテロエピ成長技術 製造プロセス技術(ウエハの口径拡大、ウエハ転位密度減少、ウエハのひずみの減少) 注入面チャネル移動度向上、酸化膜信頼性向上 ノーマリオフ型 MOSFET ウエハ口径 ウエハ転位密度 2” 103 cm -2 3” 102 cm -2 4” 10cm-2 1504A ダイヤモンドデバイス ウエハ大口径化 エピ成長技術 プロセス・デバイス化技術 出典:技術戦略マップ 2010 技術ロードマップから関連部分を抜粋(経済産業省) 3.日本のパワーデバイスに関連する主な研究開発プロジェクト パワーデバイスに関してこれまでに実施された研究開発プロジェクトと、現在進行中の研 究開発プロジェクトを調査し、取組時期、開発テーマ、予算金額などから、パワーデバイス に対する日本の取組姿勢を把握した。パワーデバイスに関連する日本の国家プロジェクトは、 1998 年以降、炭化シリコン系を中心に窒化ガリウム系を含めて、継続的に推進されている。 図 5-3 にまとめを示し、以下に主なプロジェクトの概要を示す。 - 57 - 図 5-3 パワーデバイスに関する主な日本のプロジェクト プロジェクト名 推進母体 予算金額 '98 '99 '00 '01 '02 '03 '04 '05 '06 '07 '08 '09 '10 '11 '12 '13 '14 '15 超低損失電力素子技術開発プロジェクト NEDO 65 億円 エネルギー使用合理化技術戦略的開発 NEDO 10 億円 SiC 高品質エピタキシャルウエハの生産 技術に関する研究 パワーエレクトロニクスインバータ基盤 技術開発 窒化物半導体を用いた低消費電力型 高周波デバイスの開発 情報通信機器用低損失電源基盤技術 開発 窒化物系化合物半導体基板・エピタキ シャル成長技術 異種接合 GaN 横型トランジスタのイン バータ展開 SiC デバイスの量産試作研究及びシス テム応用実証 低炭素社会創成へ向けた炭化シリコン 革新パワーエレクトロニクスの研究開発 産総研 NEDO 30 億円 NEDO 33 億円 NEDO NEDO 30 億円 JST (CREST) 産総研 内閣府 35 億円 次世代パワーエレクトロニクス技術開発 NEDO 40 億円 低炭素社会を実現する新材料パワー 半導体プロジェクト 経済 産業省 100 億円 は SiC 関係のプロジェクト、 は GaN 関係のプロジェクト 1)超低損失電力素子技術開発(1998~2002 年度) 12 NEDO、参画メンバー:産総研、日立 製作所、東芝、三菱電機、三洋電機、沖電気工業、日産自動車、デンソー、昭和電工及 び複数の大学 2)エネルギー使用合理化技術戦略的開発(2003~2005 年度) 13 NEDO、参画メンバー:産 総研、日立製作所、東芝、三菱電機、デンソー及び新日本製鐵 3)SiC 高品質エピタキシャルウエハの生産技術に関する研究(2005~2008 年度) 14 産総 研、参画メンバー:産総研、電力中央研究所、昭和電工 4)パワーエレクトロニクスインバータ基盤技術開発(2006~2008 年度) 15 NEDO、参画メ ンバー:産総研、三菱電機、新機能素子研究開発協会 5)窒化物半導体を用いた低消費電力型高周波デバイスの開発(2002~2006 年度)16 NEDO、 参画メンバー:立命館大学、新機能素子研究開発協会、産総研、豊田合成、古河電気工 業、日本電気、三菱電機、松下電器産業(現パナソニック)、沖電気工業、日立電線、住 友化学、アルバック 6)情報通信機器用低損失電源基盤技術開発(2006~2008 年度) 17 NEDO、参画メンバー: 産総研、 7)ナノエレクトロニクス半導体新材料・新構造技術開発-窒化物系化合物半導体基板・エ ピタキシャル成長技術の開発(2007~2011 年度) 18 NEDO、参画メンバー:名城大学、 大阪大学、福井大学、サンケン電気、住友電工、昭和電工、金属系材料研究開発センタ ー 12 13 14 15 16 17 18 http://www.nedo.go.jp/iinkai/hyouka/bunkakai/15h/32/index.html http://www.nedo.go.jp/activities/portal/p03033.html http://www.sdk.co.jp/news/2005/aanw_05_0391.html http://www.nedo.go.jp/activities/portal/p06019.html http://www.nedo.go.jp/activities/portal/p02032.html NEDO 研究成果データベース(利用者登録制)による。 http://www.nedo.go.jp/activities/portal/p07030.html - 58 - 8)二酸化炭素排出抑制に資する革新的技術の創出-「異種接合 GaN 横型トランジスタのイ ンバータ展開」(2009 年度) 19 JST、参画メンバー:北海道大学、豊田中央研究所、山 口大学 9)SiC デバイスの量産試作研究及びシステム応用実証(2008~2011 年度) 20 産総研、参 画メンバー:産総研 10)低炭素社会創成へ向けた炭化シリコン(SiC)革新パワーエレクトロニクスの研究開発 (2009~2013 年度) 21 内閣府、参画メンバー:京都大学、電力中央研究所、産総研 11)次世代パワーエレクトロニクス技術開発(2009~2012 年度)22 NEDO、参画メンバー: 技術研究組合次世代パワーエレクトロニクス技術開発機構(FUPET) 12)低炭素社会を実現する新材料パワー半導体プロジェクト(2010~2014 年度) 23 経済 産業省、参画メンバー:技術研究組合次世代パワーエレクトロニクス技術開発機構 (FUPET)、旭ダイヤモンド工業 4.パワー半導体に関連する日本の輸出規制について 日本政府は外国為替及び外国貿易法第 48 条の下に定められる政令「輸出貿易管理令」で 輸出の許可、承認をしている。国際的な平和及び安全の維持を妨げることと認められる貨物 や、国内需要の確保、国際協定の遵守などの観点から、規制が必要とされる貨物が管理の対 象となっている。 半導体デバイスや製造装置等については、 「輸出貿易管理令」別表第 1 の第 7 項の(8 の 3) に「電力の制御又は電気信号の整流を行う半導体素子又は半導体モジュール」と定められて おり、同項の(16)に「半導体素子、集積回路若しくは半導体物質の製造用の装置若しくは 試験装置又はこれらの部分品若しくは付属品」と定められている。これらの貨物を輸出する 場合には、経済産業大臣による輸出の許可が必要である。さらに、貨物等省令第 6 条で対象 とする物品が具体的に示されており、また、別表第1の第7項の(16)には、第十七号に詳 細な仕様があり、その中に結晶のエピタキシャル成長装置が挙げられている。 なお、これらの省令には規制対象となる具体例が「解釈」として公開されており、以下の デバイスが列記されている。 接合電界効果トランジスタ(JFETs)、垂直接合電界効果トランジスタ(VJFETs)、MOS 電界 効果トランジスタ(MOSFETs)、二重拡散金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(DMOSFETs)、 絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、高電子移動度トランジスタ(HEMTs)、バイポー ラ接合トランジスタ(BJTs)、サイリスタ及びシリコン制御整流器(SCRs)、ゲートターンオ フサイリスタ(GTOs)、エミッタターンオフサイリスタ(ETOs)、PIN ダイオード、ショット キーバリアダイオードを含む。 また、別表第1の第7項の(16)の製造用装置等については、それぞれに詳細な条件規定 があるが、主な装置名のみ列記すると以下の装置である。これらの装置の本体だけでなく部 19 20 21 22 23 http://www.jst.go.jp/kisoken/crest/report/heisei21/pdf/pdf09/09-010.pdf http://unit.aist.go.jp/adperc/ci/project/initiative.pdf http://www.first-sic.jp/ http://www.nedo.go.jp/activities/portal/p09004.html http://www.meti.go.jp/information/data/c100226cj.html - 59 - 分品や付属品を輸出する際に、経済産業大臣の許可が必要である。 結晶のエピタキシャル成長装置、有機金属化学的気相成長反応炉、分子線エピタキシャル 成長装置、イオン注入装置、異方性プラズマドライエッチング装置、プラズマ増殖型の化学 的気相成長装置、リソグラフィ装置。 (参考情報:http://www.meti.go.jp/policy/anpo/kanri/shyourei-matrix/matrix7.htm) 第2節 外国の産業政策 1.米国のパワーエレクトロニクス関係の産業政策 24,25,26 パワーエレクトロニクスへのアメリカの国家支援政策は Center for Power Electronics System (CPES)で行っている。CPES は米国科学財団(National Science Foundation :NSF) のエンジニアリング研究センターの一つで、米国をパワーエレクトロニクス分野の世界的リ ーダーにする目的で 1998 年に設立された。バージニア工科大学、ウイスコンシン大学マジソ ン校、レンセラー工科大学、ノースカロライナ A&T 州立大学、プエルトリコ大学マヤグエス 校の 5 大学からなるコンソーシアムである。このほか 80 社以上が企業パートナーとして資金 提供を行い、研究活動を支援している。1998 年から 2008 年まで 60~70 億円、このうち 2007 年は 7 億円を得ている。個別領域では、①先進的パワー半導体技術、②実装対応型材料技術、 ③高密度実装技術、④発熱対応実装技術、⑤制御及びセンサ実装技術を対象とし、統合技術 としては、①統合パワーエレクトロニクスモジュールベース電力変換技術、②統合パワーエ レクトロニクスモジュール応用技術(標準モジュール、モータードライブ向けモジュール及 び高出力向けモジュール)を扱っている DARPA と海軍研究局(Office of Naval Research :ONR)は、SiC パワー素子開発コンソー シアム(1998 年~)に出資し、SiC パワーデバイスに関する研究開発を支援した。 Electric Power Research Institute (EPRI)は、SiC デバイスを用いた、系列制御用パ ワーエレクトロニクス機器への応用について研究している。 2.欧州のパワーエレクトロニクス関係の産業政策 26,27,27,28 欧州におけるパワーデバイス関係のプロジェクトとして、 European Center for Power Electronics (ECPE)はジーメンス、ABB、ALSTOM、インフィニオンなど 27 社により 2003 年に設立された。現在は 32 社が参加している。プリンシパルメンバーからの会費(総額 10 億円程度)を大学に渡して研究を実施している。ドイツのバイエルン州政府と EU はこのプロ ジェクトを資金面でサポートしている。活動内容は、①Pre-competitive な研究の推進、② 24 25 26 27 28 http://www.meti.go.jp/policy/tech_research/30_research/foreigncountries-research/h21fy/ h21fy_america.pdf http://ds22.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~ken-san/senryaku/kaigi/05.pdf http://unit.aist.go.jp/comphq/comp-info/idpo/houkoku21-3.pdf http://www.meti.go.jp/policy/tech_research/30_research/foreigncountries-research/h21fy/ h21fy_europe_1.pdf http://www.env.go.jp/earth/report/h21-03/ref5.pdf - 60 - 教育・人材育成と仕事の紹介、③PR とロビー活動である。 また、欧州情報技術研究開発戦略計画(European Strategic Program for Research and Development in Information Technology :ESPRIT)では、The High Temperature Electronics Network (HITEN)を組織し、高温エレクトロニクス分野に関するディスカッション等を行って いる。 ドイツでは、研究開発省が SiC Electronics プログラムを策定し、パワーデバイスに関す る研究開発を推進している。SiC パワーデバイスに関しては、エアランゲン大学等が担当し ている。スウェーデンでは、Industrial Microelectronics Center (IMC)において、SiC パワー素子開発研究プロジェクトを実施している。このプロジェクトには、ABB や Okmetic (フィンランド)等が参加し、SiC ウエハを中心とした研究開発を実施している。フランス では、産学官連携による国家プロジェクトで、SiC を中心とした研究開発が実施されている。 ベルギーの IMEC ではⅢ-Ⅴ族材料を使ったパワーデバイスの研究を進めている。イタリアで は、ST マイクロエレクトロニクスをプロジェクトコーディネータとするパワー半導体の研究 プロジェクトである LAST POWER プロジェクト(Large Area silicon carbide Substrates and heTeroepitaxial GaN for POWER device applications)が 2010 年 10 月から開始された。こ のプロジェクトは 42 か月間で、直径 150mm の大面積 SiC 基板上に GaN 層を成長させ、高性能 GaN デバイスの作製など五つの開発目標を掲げて活動している。参画団体はイタリアやスウ ェーデンの企業を中心に 14 機関である。 3.中国のパワーエレクトロニクス関係の産業政策 26,29,30 2005 年に再生可能エネルギー法が公布されて以来、その開発は常に注目を集め続けてきた。 再生可能エネルギーはそれぞれ異なった手法で電力に変換されるため、系統への接続に際し て、コンバータ技術による調整、制御を行わなければならない。しかしながら、再生可能エ ネルギーが直接発生する電力は、一般的に不安定であり、パワーエレクトロニクスを応用し た変換制御技術が欠かせない。 2008 年 11 月に 2010 年末までに、総額 4 兆元(約 50 兆円)を支出する大規模な景気対策 が発表され、省エネ・環境保全に 2,100 億元となっている。この中に、 「 再生可能エネルギー」、 「電気自動車・ハイブリッド車」、「エアコンのインバータ化」等が含まれている。 さらに国家エネルギー局が「新エネルギー産業振興計画案」を策定し、政府に提案するこ とにしている。この計画では 2011~2020 年の 10 年間に、環境負荷の小さい新エネルギーの 産業振興に 5 兆元(約 62 兆円)規模の資金を投じるものである。この計画は風力発電、太陽 光発電、バイオマス発電、電気自動車、次世代送電網スマートグリッドを 5 本柱とし、グリ ーン産業で経済を牽引することを目指している。 研究開発では、国家重点研究所を浙江大学、西安大学、武漢大学に設置し、パワーデバイ スを含むパワーエレクトロニクスの技術力と人材育成を強化している。 29 30 http://www.spc.jst.go.jp/science_policy/chapt1/1.html http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/2008/pdf/080625_4_bs1.pdf - 61 - 4.韓国のパワーエレクトロニクス関係の産業政策 26,31 2009 年1月に大統領府に緑色成長委員会を設置した。ここでは緑色成長に向けた様々な取 組を省庁横断で行う。またこの推進のため「緑色成長基本法」を制定した。低炭素・グリー ン成長を達成するために、五つの協議会を設置し、その一つが科学技術協議会である。グリ ーンテクノロジーに関する R&D 予算は、2010 年予算が 1.4 兆ウォン(約 12 億ドル)で、原 子力エネルギー、インテリジェント交通システム、ニューシティ、スマートグリッド、海洋 環境などへの投資が増やされている。核となるグリーンテクノロジーは、発光ダイオード、 CCS(二酸化炭素貯蔵・回収技術)、クリーンカー、再生可能エネルギー及びスマートグリッ ドなどがある。 第3節 標準化動向 パ ワ ーエ レク ト ロニ クス 関 係の 国際 標 準化 動向 と して 、材 料 や装 置、 サ ービ スに は、 Semiconductor Equipment and Materials International (SEMI)規格が対応している。パ ワ ー 半 導 体 及 び パ ワ ー エ レ ク ト ロ ニ ク ス 関 係 で は 、 国 際 電 気 標 準 会 議 ( International Electrotechnical Commission: IEC ) 及 び 電 子 機 器 技 術 評 議 会 ( Joint Electron Device Engineering Council: JEDEC)が国際規格の策定を行っている。 日本の標準化戦略としては、知的財産の創造、保護及び活用に関する施策を集中的かつ計 画的に推進するために、内閣に設置されている知的財産戦略本部が策定した「知的財産推進 「国際標準化特定戦略分 計画 2010」32(2010 年 5 月 21 日)において、三つの戦略の一つに、 野における国際標準の獲得を通じた競争力強化」が挙げられている。研究開発・事業化戦略 と連携した戦略的な国際標準化の推進等を通じて、世界市場の獲得を目指す国際標準化特定 戦略分野(7 分野)が選定され、その中に、パワーデバイスが関係する次世代自動車、鉄道、 エネルギーマネジメント(スマートグリッド、創エネ・省エネ技術、蓄電池)が位置付けら れている。そこでは、競争力強化戦略の策定・実行、国際標準化機関における幹事国引受件 数の増加、国際標準化活動の人材育成(議長、主査になり得る人材)等を目標にして、国際 標準化活動を総合的に支援するとしている。 日本国内の標準化は、日本工業標準規格(JIS)、電子情報技術産業協会(JEITA)、電気学 会(JEC)により材料ウエハ、パワー半導体デバイス及びパワーエレクトロニクス(変換装置) の標準化が推進されている。 31 32 http://www.meti.go.jp/policy/tech_research/30_research/foreigncountries-research/h21fy/ h21fy_asia.pdf http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/2010keikaku.pdf - 62 - 第6章 グリーンパワーIC に関する市場環境動向 第1節 パワーデバイス市場の俯瞰 パワーデバイスは電力損失を抑え、高温動作、高効率化や大電流化などの要求に対応した デバイスである。近年における CO2 の排出ガス削減など、地球温暖化対策が注目されるよう になり、新エネルギーの開発とともに、既存の電子機器や社会インフラ設備等における幅広 い省エネルギーに対する意識が高まりつつあり、グリーンパワーデバイスの需要が着実に拡 大している。 パワーデバイスは民生機器分野、情報通信機器分野、自動車・電装分野、新エネルギー分 野や産業分野、電鉄・車両分野に利用されており、インバータ等の高効率な電力変換ニーズ やスイッチング電源やエネルギーデバイスの低損失化、高機能化ニーズ、スマートグリッド 等のようにインフラ設備のネットワークの再構築などが検討されている。 Si 系パワーデバイスは、動作負荷容量が約 10MVA、動作周波数が約 1MHz までの領域が主 な適用範囲である。アプリケーションに応じて、トランジスタ、ダイオード、サイリスタな どの製品(モジュールを含む)が使い分けられている。パワーデバイスにおける動作負荷容 量/動作周波数とアプリケーションの関係を図 6-1 に示す。 この図において、Si 系パワーデバイスの理論限界範囲外に SiC 系パワーデバイスの適用領 域及び GaN 系パワーデバイスの適用領域がある。SiC 系パワーデバイスの適用領域では、低 損失化とともに大容量化や高温動作などの高性能化がまず意図されている。また、GaN 系パ ワーデバイスの適用領域では、低損失化とともに高周波化などの高性能化が第一段階として 期待されている。このように、Si 基板以外のワイドバンドギャップ半導体を用いたパワーデ バイスの開発により、パワーデバイスは将来的により幅広いアプリケーションに使用される ようになることが期待されている。 - 63 - 図 6-1 パワーデバイスの容量別及び周波数別でのアプリケーション Siデバイスの理論限界範囲 10M SiCデバイスの適用領域 発電・送配電 システム サイリスタ 1M インテリジェント パワーモジュール GTO/IGCT 鉄鋼、 電鉄・車両 バイポーラ トランジスタ モジュール IGBTモジュール EV・HEV自動車 汎用インバータ UPS 産業用ロボット バ Siデ 動作負荷容量 100k 【高密度・高パワー化】 ・大容量化 ・低損失化 ・高周波化 ・高温動作 囲 界範 論限 の理 イス [VA] 10k IGBT ディスクリート ACアダプタ サーバ用SW電源 トライアック デバイスの適用領域 GaN エアコン 冷蔵庫 電子レンジ IH調理器 洗濯機等 1k インバータ 照明器具 パワーIC スイッチング電源 携帯情報端末 情報通信機器 オーディオ機器等 100 電子レンジ 扇風機 洗濯機 MOSFET 10 10 100 1k 10k 動作周波数[Hz] - 64 - 100k 1M 第2節 パワーデバイスの世界市場動向 この節における市場情報は、国内外の半導体メーカー65 社で構成され、世界の半導体関連 製品の市場統計を作成している WSTS(World Semiconductor Trade Statistics)の統計デー タに基づいている。WSTS の統計データにおけるパワーデバイスとして、パワートランジスタ (1W 以上、モジュール類を含む)、パワーダイオード(整流素子、0.5A 以上)、サイリスタ(電 流区分なし)が含まれている。 1.世界市場推移 パワーデバイスの世界市場(金額ベース)推移を図 6-2 に示す。パワーデバイスの世界市 場は、2008 年に約 126 億米ドル(以下「ドル」と記す)であったが、2009 年には、米国にお けるリーマンショックの影響もあり、約 106 億ドルに減少した。2010 年には市場が回復し、 世界市場はその後も、右肩上がりに拡大し、2012 年には約 154 億ドルに達すると予測されて いる。 2009 年におけるパワーデバイス市場は、パワートランジスタの約 78 億ドル(73.6%)を 中心に、パワーダイオードが約 22 億ドル(20.8%)、サイリスタが約 6 億ドル(5.7%)であ る。 図 6-2 パワーデバイスの世界市場推移(金額ベース) 200 サイリスタ 180 パワーダイオード(0.5A以上) 160 パワートランジスタ(1W以上) 140 120 ( 世 界 市 場 規 模 ) 100 億 80 ド ル 60 40 20 0 2005 (実績) 2006 (実績) 2007 (実績) 2008 (実績) 2009 (実績) 2010 (見込み) 2011 (予測) 2012 年 (予測) 出典:WSTS 日本協議会のデータに基づき、事務局が図表化。 2.地域別市場動向 パワーデバイスの地域別世界市場規模推移(金額ベース)を図 6-3 に示す。2005 年におけ る地域別市場は、米州が 12.8%、欧州が 17.7%、日本が 25.8%、アジアパシフィックが 43.7% である。2008 年における地域別市場は、米州が 10.8%、欧州が 18.2%、日本が 22.6%、ア ジアパシフィックが 48.4%である。2009 年の世界市場規模は 2008 年に比べて縮小したが、 - 65 - 地域別市場ではアジアパシフィックが 54.1%と過半を占め、米州が 10.0%、欧州が 15.7%、 日本が 20.2%である。地域別市場比率は、日本は 2005 年から 2009 年の 5 年間に約 26%から 約 20%へと減少している。欧州はほぼ横ばいで、米州は減少し、アジアパシフィックの比率 が高くなっており、アジアパシフィックの市場成長が一層顕著になってきた。 図 6-3 パワーデバイスの地域別世界市場推移 160 ( 140 世 界 120 市 場 100 規 模 80 アジアパシフィック 欧州 米州(北米+南米) 日本 ) 億 ド ル 60 40 20 0 2005 2006 2007 出典:WSTS 日本協議会のデータに基づき、事務局が図表化。 2008 2009 年 次に、2009 年における各種パワーデバイスの地域別市場規模比率を図 6-4 に示す。パワー トランジスタとパワーダイオードの地域別市場規模比率は、アジアパシフィックが 55~56%、 次いで日本が 21~22%、欧州 14~15%、米州約 9%とほぼ類似している。しかし、サイリス タでは、アジアパシフィックが約 36%、次いで欧州約 31%、米州約 23%、日本が約 10%で ある。 - 66 - 図 6-4 各種パワーデバイスの地域別市場比率(2009 年、金額ベース) (1)パワートランジスタ(1W 以上) 米州(北米+南米) 9.3% 欧州 15.1% アジアパシフィック 55.0% 日本 20.6% (2)パワーダイオード(整流素子、0.5A 以上) 米州(北米+南米) 9.0% 欧州 13.7% アジアパシフィック 55.7% 日本 21.6% (3)サイリスタ 米州(北米+南米) 22.6% アジアパシフィック 36.3% 欧州 31.0% 日本 10.1% 出典:WSTS 日本協議会のデータに基づき、事務局が図表化。 - 67 - 3.用途別市場動向 パワーデバイスの主な用途は、民生機器、自動車、コンピュータ、産業、通信、その他で ある。2009 年におけるパワーデバイスの用途別世界市場(金額ベース)を図 6-5 に示す。 (1)はパワートランジスタ(1W 以上)、 (2)はパワーダイオード(0.5A 以上)+サイリス タについての用途別市場である。 図 6-5 パワーデバイスの用途別世界市場(2009 年、金額ベース) (1)パワートランジスタ(1W 以上) その他 0.3% 通信 22.3% 民生機器 17.7% 自動車 14.3% 産業 29.4% コンピュータ 16.0% (2)パワーダイオード(0.5A 以上)及びサイリスタ 通信 9.9% 民生機器 25.1% 産業 30.2% 自動車 21.5% コンピュータ 13.3% 出典:WSTS 日本協議会のデータに基づき、事務局が図表化。 - 68 - パワートランジスタの用途(2009 年、金額ベース)では、産業用が最大の約 29%で、次い で通信約 22%、民生機器約 18%、コンピュータ 16%、自動車約 14%、その他と続いている。 パワーダイオードとサイリスタを合わせた用途(2009 年、金額ベース)では、パワートラ ンジスタと同様に産業用が最大の約 30%で、次いで民生機器約 25%、自動車約 22%、コン ピュータ約 13%、通信約 10%、その他と続いている。 第3節 メーカー別世界市場動向 この節における市場情報は、株式会社アイサプライ・ジャパンによる市場データを参考と した。アイサプライ・ジャパンによるパワーデバイス市場には、パワーMOSFET、IGBT、サイ リスタ、パワーバイポーラトランジスタを始め、ボルテージ・レギュレータ(定電圧電源)、 パワーインターフェース、パワーASSP、レクティファイヤー(整流器)が含まれている。 1.日本メーカーのパワーデバイス市場シェア推移 図 6-6 において、パワーデバイス市場推移と日本メーカーのシェア推移を示す。パワーデ バイス市場は 2003 年から 2007 年までは順調に拡大していたが、その後 2008 年は横ばい、2009 年はリーマンショックの影響もあり、減少している。また、日本のパワー半導体メーカーは、 2003 年の市場シェア 37.5%を徐々に落としており、2009 年には 29.6%になっている。しか し、直近の 3~4 年は、日本メーカーの市場シェアは横ばい傾向を示している。 今後、日本メーカーのシェア低下が進むようであれば、メモリや液晶パネルと同様な運命 を辿ってしまう。ここから、いかにしてシェアを拡大していくか、日本メーカーは分岐路に 立たされていると言ってよい。 2.デバイスメーカー別世界市場シェア 2009 年のパワーデバイス市場におけるデバイスメーカー別の世界市場シェア(金額ベー ス)を図 6-7 に示す。なお、この図において、上位 16 社を表示しており、それ以下について はその他の企業としている。 世界市場において、市場シェアが上位にランクされているメーカーである ST マイクロエ レクトロニクス(イタリア、フランス)、テキサスインスツルメント(米国)、インフィニオ ン テクノロジーズ(ドイツ)、フェアチャイルド セミコンダクター(米国)の 4 社は、各々 4%以上の市場シェアを占有している。すなわち、ST マイクロエレクトロニクスが 8.2%、テ キサスインスツルメントが 7.1%、インフィニオン テクノロジーズが 5.8%、フェアチャイ ルド セミコンダクターが 4.7%である。 日本メーカーで上位にランクされている会社は、東芝、三菱電機、ルネサステクノロジ、 富士電機及びロームの 5 社で、それぞれ 16 位までにランクされている。東芝、三菱電機、ル ネサステクノロジの市場シェアは 3%台で、富士電機及びロームは 2%台である。 - 69 - 図 6-6 パワーデバイス市場推移及び日本メーカーの市場シェア推移(金額ベース) 250 ー パ ワ 50% 45% (右目盛り) 200 40% デ バ イ ス 150 市 場 規 模 100 35% ー 25% 日本メーカー以外の売上げ 15% ) 50 10% 5% 日本メーカーの売上げ 0 0% 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 年 出典:株式会社アイサプライ・ジャパンのデータに基づき、事務局が図表化。 図 6-7 パワーデバイスのメーカー別世界市場シェア(2009 年、金額ベース) STマイクロエレクトロニクス(イタリア、フランス) 8.2% テキサス インスツルメンツ(米国) 7.1% インフィニオンテクノロジーズ(ドイツ) フェアチャイルドセミコンダクター(米国) 5.8% 37.1% ビシェイ(米国) 東芝 NXP(オランダ) 4.7% 三菱電機 ナショナルセミコンダクター(米国) 3.8% 3.6% オン・セミコンダクター(米国) マキシムインテクレーテッドプロダクツ(米国) ルネサス・テクノロジ インターナショナルレクティファイア(米国) 3.6% 3.5% 2.2% 3.1% 3.2% 2.4% リニアテクノロジー(米国) ローム 3.3% 2.3% 富士電機 その他 3.2% 3.0% 出典:株式会社アイサプライ・ジャパンのデータに基づき、事務局が図表化。 - 70 - の シ ェ 20% カ ー 30% 日本メーカー のシェア ( 億 ド ル 日 本 メ ア 第4節 パワーデバイスの国内生産動向 この節における市場情報は、社団法人電子情報技術産業協会(JEITA: Japan Electronics and Information Technology Industries Association)のデータに基づいている。JEITA は 電子部品・デバイスの中のパワーデバイスとして、シリコン系のパワートランジスタ(1W 以 上)、整流素子(100mA 以上)、サイリスタ、IGBT の国内における生産実績の統計データを公 開している。2002 年から 2009 年の 8 年間のパワーデバイスの生産実績を図 6-8 に示す。 図 6-8 パワーデバイスの国内生産実績(生産ベース、億円) 3,000 生 産 金 額 ( 億 円 2,500 IGBT サイリスタ 整流素子(100mA以上) パワートランジスタ(1W以上) 2,000 1,500 ) 1,000 500 0 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 年 出典:JEITA のデータに基づき、事務局が図表化。 パワーデバイスの国内生産は、2002 年で約 2,000 億円であり、2003 年に若干減少したが、 2004 年以降着実に増加しており、2008 年には約 2,750 億円に拡大した。しかし、2009 年に はリーマンショックのため、約 1,850 億円まで減少した。2010 年には市場が大幅に回復する ことが期待されている。パワーデバイスであるパワートランジスタ(1W 以上)、整流素子 (100mA 以上)、サイリスタは、2002 年から 2008 年の 6 年間で、金額ベースでそれぞれ 19%、 11%、27%の増加であり、IGBT については同じ 6 年間で 124%の増加と大幅な伸び率を示し た。 - 71 - 第7章 総合分析 第1節 技術動向調査の総括 1.特許(パワーデバイス関連特許)動向調査の総括 パワーデバイス関連特許の日米欧中韓への出願件数は 25,334 件で、2000 年の 2,556 件か ら 2006 年の 3,249 件へと、2002 年の落ち込みを除きほぼ単調に増加している。パワーデバ イス関連技術は、近年注目されているグリーンエネルギー関連技術の中で、各分野の低消費 電力化に対して重要な役割を担うと期待されており、特許出願件数推移における増加傾向は、 その期待の大きさに対応する結果と見ることもできる。 出願人国籍別の集計では、日本国籍の出願件数が最も多く 57.6%を占めている。続く米国 籍は 18.2%、欧州国籍は 15.2%で日本国籍との差は大きく開いている。韓国籍、中国籍はそ れぞれ 5.2%、1.3%とさらに小さな比率である。同じ期間に出願された特許の登録件数でも 同様の傾向が見られ、日本国籍が 51.4%、米国籍が 20.3%、欧州国籍が 16.9%と日本国籍 が最も多い。出願人国籍と出願先国の関係に着目して、 「日本」対「米、欧、中、韓」の出願 件数の収支を見ると、米欧中韓とも日本からの出願件数の方が、日本への出願件数より多く なっている点が特徴的である。 技術区分別動向の応用分野別の集計では、日本国籍と米国籍の出願人では IT 関連機器と 自動車に関する出願が多く、欧州国籍の出願人では、自動車と発電・送配電システムに関す る出願が多い。また、中国、韓国及びその他の国籍では、民生・家電機器に関する出願が多 い。ただし、パワーデバイス関連特許では、応用分野を記載した出願が少ない。 技術区分別動向の共通補助分類(使用基板)別分類では、Si と使用基板不明を合わせた件 数が 58.5%と最も多く、GaN は 21.6%、SiC は 14%となっている。使用基板不明(特許明細 書に基板材料の記載がない)の出願は、Si 基板に関するものと考えられ 33 、結論として Si 基板に関する出願が 58.5%と見ることができる。すなわち、使用基板別の出願件数では、Si 基板に関するものが全体の 2/3 近くを占め、GaN と SiC を合わせた件数が約 1/3 となる。ダ イヤモンドに関するものは、1.0%と少ない。 技術区分別動向の共通補助分類(適用素子)別分類では、パワーMOS に関する件数が 42% と最も多く、その他は、IGBT が 16%、ダイオードが 14%、HEMT が 11%、サイリスタが 4%、 JFET・SIT が 3%となっている。パワーデバイスは、応用分野によって、要求される機能や特 性が大きく異なり、使用されるデバイス構造も様々であるが、特許出願という観点からは、 適用素子としてパワーMOS に偏りがみられる。 2.特許(応用分野(電力変換器)関連特許)動向調査の総括 応用分野(電力変換器)関連特許の日米欧中韓への出願件数は 15,570 件で、2000 年の 1,580 件から 2006 年の 2,101 件へと 2002 年の落ち込みを除き増加している。2000 年から 2002 年 33 GaN や SiC 基板を対象とした特許では、通常明細書に材料に関する記述をするが、半導体材料の主流であ る Si 基板を用いることを前提とした特許の場合、材料について明記しないことが多い。 - 72 - にかけて、米国のインターネット関連企業の株価の下落が進行し、全世界に様々な影響を及 ぼして一般に IT バブルの崩壊と呼ばれているが、パワーデバイスや応用分野(電力変換器) 関連特許における 2002 年の出願件数の減少はその影響を受けた結果と推測される。 技術区分別動向の応用分野別集計では、日本国籍と米国籍の出願人の場合、民生・家電機 器が最も多く、欧州国籍の出願人では発電・送配電システムが最も多い結果となっている。 3.研究開発動向調査の総括 グリーンパワーIC に関する論文の発表動向から見た研究開発動向を調査した。パワーデバ イス関係の論文発表件数は 910 件で、年間 100 件前後発表されている。その他のグリーンパ ワーIC に関する論文発表件数は 4,349 件で、年間 400 件から 500 件発表されている。研究者 所属機関の国籍別に比較するため、国際的な論文誌に限定すると、パワーデバイスに関する 論文は 499 件、その他の論文は 3,600 件であった。パワーデバイスに関する論文は、欧州国 籍の研究機関による論文発表が 210 件で最も多く全体の 42.1%を占めている。次いで米国籍 が 134 件(26.9%)で、日本国籍は 64 件(12.8%)である。その他の論文は、欧州国籍の研 究機関による論文発表が 1,077 件(29.9%)で最も多く、次いで米国籍が 964 件(26.8%) で、日本国籍は 497 件(13.8%)ある。 技術区分別では、パワーデバイスに関する論文に関しては、日米欧中韓国籍の研究機関と もデバイス・モジュールの特性向上に関する論文が最も多く、次いで日米欧国籍では信頼性・ 耐久性の向上が多い。その他の論文では、日米韓国籍の研究機関はデバイス・モジュールの 特性向上に関する論文が最も多く、欧中国籍では基板の特性向上に関する論文が多い。なお、 基板の特性向上の中には、光デバイス関係の結晶・基板製造に関する論文を含んでいる。 応用分野別では、パワーデバイスに関する論文では IT 関連機器(携帯電話、パソコン等) と自動車用途が多く、その他の論文では、発電・送配電システム(スマートグリッド等)と 自動車用途が多い。発電・送配電システムについては、日米欧中韓以外の国籍からも多くの 論文発表がある。 研究者所属機関別では、パワーデバイスに関する論文において、国際的な主要論文誌の場 合、ドイツのインフィニオン テクノロジーズが 24 件で 1 位、米国のバージニア工科大学が 2 位、米国のクリーが 3 位である。特許と比較して、特に日本の大学は極めて少ない数とな っている。大学を中心とした研究機関における基礎的な研究開発を担う人材の育成が急務で あることを示唆している。 4.政策動向調査の総括 グリーンパワーIC に関する日本の産業政策としては、科学技術基本計画(第三期)におい て、環境と経済を両立する省エネルギー・環境調和ナノエレクトロニクス技術の観点で、シ リコントランジスタにとって代わる、SiC を用いたパワーデバイスにより高効率インバータ を実現することを研究開発目標の一つとしている。 また、政策目標ごとに策定された七つのイノベーションプログラムでは、IT イノベーショ ンプログラムとエネルギーイノベーションプログラムの、総合エネルギー効率の向上の中に 「グリーン IT プロジェクト」が含まれている。この中で次世代パワーエレクトロニクス技術 - 73 - 開発が進められている。 さらに、Cool Earth-エネルギー革新技術計画においては、部門横断技術の一つとしてパ ワーエレクトロニクスが取り上げられ、発電、送配電、蓄電、電気機器で使われるワイドバ ンドギャップ半導体等を活用したインバータ等の省エネルギー技術を開発することを目標と している。 この他、産業技術総合研究所、物質・材料研究機構及び筑波大学が中核となって設立され た、つくばイノベーションアリーナでは、六つのコア研究領域のうちの一つにパワーエレク トロニクスを設定して活動している。 産業技術総合研究所は 2010 年 4 月に「先進パワーエレクトロニクス研究センター」を設 立し、SiC や GaN 等のワイドバンドギャップ半導体による、パワースイッチングデバイス及 び電力変換器の技術確立と実証を目的としている。 民間主導の活動としては、「技術研究組合次世代パワーエレクトロニクス技術開発機構 (FUPET)」と「SiC アライアンス」があり、企業や大学など産学官が幅広く集結するオール・ ジャパンの体制で活動している。 日本の標準化戦略としては、内閣に設置されている知的財産戦略本部が策定した「知的財 産推進計画 2010」(2010 年 5 月 21 日)において、三つの戦略の一つに、「国際標準化特定戦 略分野における国際標準の獲得を通じた競争力強化」が挙げられている。研究開発・事業化 戦略と連携した戦略的な国際標準化の推進等を通じて、世界市場の獲得を目指す国際標準化 特定戦略分野(7 分野)が選定され、その中に、パワーデバイスが関係する次世代自動車、 鉄道、エネルギーマネジメント(スマートグリッド、創エネ・省エネ技術、蓄電池)が位置 付けられている。そこでは、競争力強化戦略の策定・実行、国際標準化機関における幹事国 引受件数の増加、国際標準化活動の人材育成(議長、主査になり得る人材)等を目標にして、 国際標準化活動を総合的に支援するとしている。 外国のグリーンパワーIC に関する産業政策としては、米国では、パワーエレクトロニクス への国家支援政策として、Center for Power Electronics System (CPES)を中心として推 進しており、米国がパワーエレクトロニクス分野の世界的リーダーになることを目的に活動 している。 欧州では、パワーデバイス関係のプロジェクトとして、2003 年に設立された European Center for Power Electronics (ECPE)や、スウェーデンの Industrial Microelectronics Center (IMC)における SiC パワー素子開発研究プロジェクト、2010 年 10 月から開始され た LAST POWER プロジェクト等が活動している。 中国では、国家エネルギー局による「新エネルギー産業振興計画案」で、風力発電、太陽 光発電、バイオマス発電、電気自動車、次世代送電網スマートグリッドを、向こう 10 年間で 経済を牽引するグリーン産業の 5 本柱としている。研究開発では国家重点研究所を設置し、 パワーデバイスを含むパワーエレクトロニクスの技術力と人材育成を強化している。 韓国では、2009 年に大統領府に緑色成長委員会を設置し、緑色成長に向けた様々な取組を 省庁横断で行っている。グリーンテクノロジーへの投資が原子力エネルギー、インテリジェ ント交通システム、ニューシティ、スマートグリッド、海洋環境などでなされている。 台湾では、国家科学技術大会で策定された「科学技術発展計画」(2009~2012 年)で、新 しい重点分野としてグリーンテクノロジー(エネルギーを含む)が挙げられている。 - 74 - 5.市場動向環境調査の総括 パワーデバイスの世界市場は、2008 年に約 126 億ドルであったが、2009 年には、米国の リーマンショックの影響もあり、約 106 億ドルに減少した。2010 年には市場が回復し、2012 年には約 154 億ドルに達し、世界市場はその後も、右肩上がりに拡大すると予測されている。 パワーデバイスの主な用途(2009 年、金額ベース)は、産業用が約 29%、次いで通信約 22%、民生機器約 18%、コンピュータ 16%、自動車約 14%、その他と続いている。パワー ダイオードとサイリスタの用途では、パワートランジスタと同様に産業用が最大の約 30%、 次いで民生機器約 25%、自動車約 22%、コンピュータ約 13%、通信約 10%、その他と続い ている。(出典:WSTS) パワーデバイスの世界市場(金額ベース)における日本のパワー半導体メーカーの市場シ ェアは、2003 年の 37.5%から徐々に減少し、2009 年には 29.6%まで市場シェアが落ちてい る。しかし、直近の 3~4 年における日本メーカーの市場シェアは横ばい傾向を示している。 メーカー別世界市場シェアは、トップの ST マイクロエレクトロニクス(イタリア、フラ ンス)が 8.2%、次いで、テキサス インスツルメント(米国)が 7.1%、インフィニオン テ クノロジーズ(ドイツ)が 5.8%、フェアチャイルド セミコンダクター(米国)が 4.7%で ある。日本メーカーで上位にランクされている会社は、東芝、三菱電機、ルネサステクノロ ジ、富士電機及びロームの 5 社で、それぞれ世界市場シェア 16 位までにランクされている。 東芝、三菱電機、ルネサステクノロジの市場シェアは 3%台で、富士電機及びロームは 2%台 である。(出典:株式会社アイサプライ・ジャパン) パワーデバイスの国内生産は、2002 年で約 2,000 億円であり、2003 年に若干減少したが、 2004 年以降着実に増加しており、2008 年には約 2,750 億円に拡大した。しかし、2009 年に は、約 1,850 億円まで減少した。2010 年には市場が大幅に回復することが期待されている。 パワーデバイスでは、パワートランジスタ(1W 以上)、整流素子(100mA 以上)、サイリスタ は、2002 年から 2008 年の 6 年間で、金額ベースでそれぞれ 19%、11%、27%の増加である が、IGBT は同じ 6 年間で 124%と大幅な伸び率を示した。 (出典:社団法人電子情報技術産業 協会:JEITA) - 75 - 第2節 グリーンパワーIC に関する提言 グリーンイノベーションの一角を担い、世界の社会インフラの進化を支える重要技術分野 としてのグリーンパワーIC は、社会インフラ系のアプリケーション市場の成長とともに将来 にわたって拡大、成長を続けていくことが期待されている。こうした状況下において、今後、 世界を見据えて、日本が国際的な競争力の維持・拡大を図っていくために、日本が取り組む べき課題を整理し、日本が目指すべき研究開発、技術開発の方向性について、図 7-1 のよう な七つの視点から提言する。 図 7-1 グリーンパワーIC の提言マップ 提言7 (重点領域) 発展領域 情報共有のための GaN系 材料別事項 アライアンスの形成 提言6 (重点領域) 市場創設のための SiC系 発展領域 アライアンスの活動 提言5 (重点領域) Si系 コモディティ化のための 発展領域 ライセンスビジネスモデル 提言4 (重点領域) 情報発信・標準化 基礎的・共通的 事項 提言3 (重点領域) 人材育成の強化 発展領域 発展領域 提言2 (重点領域) アプリケーションスペシフィック 発展領域 提言1 (基本的理念) 有機的結合 資金 人材 技術 - 76 - 知財 サービス 【提言1】 グリーンパワーIC を、グリーンテクノロジーの基盤となる要素技術として、資金、技 術(ハードウエア+ソフトウエア)、雇用、サービス、知的財産を有機的に結び付け、 半導体産業をグローバルに牽引し、世界の社会インフラの進化を支える技術分野と位置 付ける。 近年、日本を含む世界各国で、グリーンエネルギー関連技術という社会インフラを進化さ せる研究開発が積極的に進められている。グリーンエネルギー関連技術は、太陽光発電や風 力発電等の CO2 を排出しない創エネルギー分野、電気自動車での利用が見込まれるリチウム イオン電池等の蓄エネルギー分野、LED やパワーデバイス等の低消費電力化を図る省エネル ギー分野に分類される。 省エネルギー分野において、各電力変換地点におけるエネルギーロスを最小化するために 重要な役割を担うのが“グリーンパワーIC”である。 ここで、グリーンパワーIC とは、グリーンテクノロジーに貢献し得る広義のパワーデバイ スであり、狭義のパワーデバイス、パワーモジュール、狭義のパワーIC 等を含む技術分野で あると本調査では定義付け、具体的には、高耐圧ショットキーバリアダイオード、サイリス タ、高耐圧 MOSFET、IGBT、インバータモジュール等を含む。 グリーンパワーIC は、発電・送配電システム(スマートグリッド等)、自動車(EV、HEV 等)、自動車以外の輸送機械(鉄道・船舶・航空機)、産業機器(FA 機器、エレベータ等)、 IT 関連機器(パソコン、携帯電話等)、民生・家電機器(エアコン、FPD、AV 機器等)といっ た幅広いアプリケーション分野で利用されている(図 1-1、図 6-1)。特に、電力ネットワー クという社会インフラと関連性の深いスマートグリッドや EV 等のアプリケーションは、グリ ーンエネルギー関連分野における投資の活発化、ハード・ソフトウエアの研究開発の促進、 雇用機会や新しいサービスを創出するという一連のグリーンイノベーションの中心舞台とな る。電力制御の要素技術であるグリーンパワーIC は、成長が持続的に期待されるこれらのア プリケーションにおいて不可欠なキーデバイスとして位置付けられる。 現在のパワーデバイスの市場は、半導体市場約 3000 億ドルのうち、約 130 億ドル(約 4.3%) を占めるに過ぎない(図 6-2)。しかし、半導体市場はそれを基礎として約 20 倍規模のサー ビス産業市場を産み出す。この関係をパワーデバイス市場に当てはめると、パワーデバイス を礎としたサービス産業の市場は約 2600 億ドルとなる。将来、EV、スマートグリッド等のア プリケーションが成長すればサービス市場はさらに成長が見込まれる。また、新材料の製品 化が進めば新たなアプリケーションが開発される余地は大きい。こうした事情を背景に、パ ワーデバイスの今後の市場展望は極めて明るい。 知的財産の観点からは、日本企業は、パワーデバイスの分野における特許は 50%超のシェ アを有し、国内外に多くの特許を出願、保有している(図 2-1、図 2-2、図 2-3、図 2-6、図 2-7、図 2-8、図 3-1、図 3-2、図 3-3、図 3-5、図 3-6)。しかし、パワーデバイス分野におけ る売上高シェアは約 30%(図 6-6)に留まり、特許シェアとのギャップは大きい。この事実 から、日本の企業は、特許を出願し、特許を取得するけれども、特許をビジネスに有機的に 結び付けられない傾向が見られる。ロジック・メモリ半導体、液晶パネル・太陽光発電パネ - 77 - ルのシェア低下の例から分かるように、特許出願、登録数だけでは、競争優位性を維持する ことはできない。何のために特許を取得するのか目的を明確にし、その目的を達成する手段 としての権利取得・管理体制を整備し、個々の事業戦略と有機的に結び付いた長期的な特許 戦略を立案、実行することが日本企業にとって急務な課題である。 【提言2】 グリーンパワーIC に関する研究開発を、スマートグリッド、EV 等の社会インフラを変 革させる大規模なアプリケーションに対応し、かつチューニング技術を徹底したアプリ ケーションスペシフィックパワーデバイス(ASPD)を中心として加速する。 パワーデバイスでは、ターゲットとするアプリケーション(応用分野)によって、コスト や信頼性とともに、要求される機能と性能(低損失、大電流、高温動作、高破壊耐量、高温 動作、高耐圧)が異なっている(図 1-2)。そのために、要求される電力容量及び周波数の範 囲は非常に広く、所定のオペレーション領域に対応した複数種の個性的なグリーンパワーデ バイスの開発が必須となる(図 6-1)。個々のパワーデバイスの研究開発に当たっては、個別 のアプリケーションで必要とされる機能や性能をソフトウエア技術を含めて徹底的にチュー ニングをしたアプリケーションスペシフィックパワーデバイス(ASPD;Application Specific Power Device)の開発が重要となる。誰もがディファクトと認めるようなアプリケーション を部品供給者としての立場から支える役割を担う。 社会インフラに深く関連したアプリケーションでは、コストという従来の競争軸に加えて、 信頼性、耐久性等という安全性に配慮した新たな技術観点が競争軸に加わる。この技術観点 は、日本が他国に比較して優位な技術観点である(図 2-12 d,e,f、図 3-10 c,d)。また、市 場勃興期にはハードウエアを中心としたシステムの構成が主流となるが、市場成長とともに ハードウエアのソフト化が進行することから、パワーデバイスのシステム開発に当たって、 パワーデバイスを効率的に制御するためのソフトウエア技術の開発も欠かすことはできない。 また、ハードウエア・ソフトウエアから構成されるシステムは、付加価値がソフトウエアに 移転しやすい傾向にあるから、ソフトウエア資産に対する管理には十分注意を払う必要があ る。さらに、社会インフラにおけるアプリケーションは、システムの単価が高価であること から、高性能・高機能なパワーデバイスの高コストというデメリットを吸収し得る可能性が ある。この特徴を活かすことで、コストの制約が緩和され、より付加価値の高いビジネスモ デルを描くチャンスが産み出される。 知的財産の視点からは、デバイスとアプリケーション、ハードウエアとソフトウエアがク ロスオーバーする技術領域が特許創出の宝庫となる。また、コストの制約が緩和されること で、斬新なビジネスモデルの特許が生まれる可能性が高まる。日本企業は、アプリケーショ ンを意識したクロスオーバーする分野の特許が海外勢に比較して多い(図 2-9、図 2-14、図 2-15、図 2-16、図 2-17、図 2-18、図 3-8)。先端技術分野の研究開発によって、質的に魅力 的な特許を取得することで、取得特許をビジネスに活かす工夫が求められる。 - 78 - 【提言3】 グリーンパワーIC に関する人材育成は、大学、業界団体、アライアンス、官庁の人的 ネットワークを活用して、多様な技術や知的財産を学ぶ機会を充実させ、国際舞台で通 用するグローバルな人材の輩出を目的とする。 グリーンパワーIC には、材料、プロセス、デバイス、モジュール、システムに加えてアプ リケーションなどの裾野の広い要素技術が必要となる。幅広い分野において、将来にわたっ てグリーンパワーIC の研究開発を継続・発展させるためには、個々の分野の専門家から、ク ロスオーバーな領域を理解するエンジニアまで多様な人材が不可欠である。そのためには、 スペシャリストであるシニアエンジニアに多分野の技術を学ぶ機会を確保するとともに、将 来の担い手となる若手エンジニアがグリーンパワーIC の基本を学ぶ機会の創設が求められ る。特に、人材教育の中心となる大学においては、これまでの材料(基板) ・物性評価・回路 技術に偏重している傾向を打破し、デバイス構造やモジュール開発、設計ツール開発等のハ ード面や、システムに関わるソフト面といった、幅広い分野の研究開発を推進する人材育成 が急務である。加えて、国際感覚の養成等、グローバルな人材育成も期待される(図 4-4、 図 4-5)。 一方、人材教育を大学にだけ依存する体質についても変革が求められ、公的研究機関や企 業研究機関に偏在している経験豊かなシニアエンジニアに、研究者であるとともに次世代の 若手の教育者としての活躍の場を設けるなど、産業界から大学へのバックアップも欠かせな い。大学と公的、企業研究機関との間で積極的に人材交流を活発化することで、教育機会の 増設は十分に可能である。例えば、パワーエレクトロニクスが一つのコア研究領域になって いる つくばイノベーションアリーナ(TIA;Tsukuba Innovation Arena)や、SiC アライア ンスは、人材育成や人材交流の場としての成功例を築き、後続の者の範となる成果を出すこ とが期待される(第5章第1節1.)。 また、先端研究開発から有用な知的財産を産み出す個々のエンジニアに対して、知財財産 の重要性を学ぶ機会を充実させることは、極めて重要である。専門性に依存するエンジニア に対する知財教育に関しては、特許制度の本質を熟知している審査官の派遣を含めて、特許 庁は積極的に大学を支援していく必要がある。 【提言4】 グリーンパワーIC に関する情報発信を、国内外のエンジニアがコンセンサスの形成を するために必要となる技術情報の共有化に資する活動として位置付け、その延長線上と して国際標準化を進める際には、特許を有効な交渉ツールとして積極的に活用する。 海外においてグリーンパワーIC について日本のプレゼンスを高めるためには、まず、国内 において、基板メーカー、装置メーカー、デバイスメーカー、実装材料メーカー、セット/ - 79 - システムメーカーが有機的に連携し、技術トレンドのコンセンサスを形成する仕組みが不可 欠である(第5章第1節1.)。公的研究機関、アライアンスは、中立性、公平性を活かして、 研究開発プログラムのコーディネータ等の役割を果たしながら、コンセンサス形成の場を形 成することが求められる。既に発足している SiC アライアンスや技術研究組合次世代パワー エレクトロニクス技術開発機構(FUPET;R&D Partnership for Future Power Electronics Technology)、産業技術総合研究所の拠点を活用する つくばイノベーションアリーナ(TIA)、 グリーンパワーIC に関わる電気学会や電子情報通信学会等においては、参加者間で草の根的 に技術の議論を重ねるとともに、特許情報を含めた技術データベースの整備等の活動が求め られる。国内で形成されたコンセンサスは同時に海外に対しても形成していくことが求めら れ、そのためには、日本がパワーデバイス技術関連情報の発信基地として積極的な情報発信 をする活動が望まれる。 また、国の標準化戦略としては、知的財産戦略本部の知的財産推進計画 2010 において、 「国 際標準化特定戦略分野における国際標準の獲得を通じた競争力強化」という戦略で、研究開 発・事業化戦略と連携した戦略的な国際標準化の推進等を通じて、世界市場の獲得を目指す 国際標準化特定戦略分野(7 分野)が選定され、その中に、グリーンパワーIC が関係する次 世代自動車、鉄道、エネルギーマネジメント(スマートグリッド、創エネ・省エネ技術、蓄 電池)が位置付けられている(第5章第3節)。このようなパワーデバイスのアプリケーショ ンでは、国として、例えば、アジア各国での低価格品に対して競争力を持って、アジアにお ける市場を拡大していくため、アジア各国とともに、省エネ性能や耐久性を客観的でフェア に評価する方法を確立し、アジアに合った規格を国際標準化機関に提案していくことが望ま れる。 標準化活動において、基本特許を所有していることは、交渉を進める際に大きな武器とな る。それは、基本特許を開放して、参加者に自由に研究開発ができる環境を提供することが 可能になるためであり、特許の公共財化として利用を進めることが、結果的に標準化を推し 進めることに寄与するからである。特許を標準化のために利用することが可能になれば、取 得特許の活用方法に新たな選択肢を加えることにつながり、特許取得の目的をより明確化す ることにもつながる。また、特許活用を含めて、国際的なコンセンサスを形成できる交渉力 のある人材育成は急務である。 【提言5】 Si 系パワーデバイスの分野では、超接合、薄型化、モジュール化、生産管理技術、ソフ トウエア等の研究開発を中心に ASPD(アプリケーションスペシフィックパワーデバイ ス)を深化させ、信頼性を含めた新たな競争軸で勝負するとともに、コモディティー化 するボリュームゾーンでは、特許ライセンス等を活用し、win-win となるパートナーシ ップを形成し、コスト競争下においても利益を産み出すビジネスモデルを構築する。 パワーデバイスの世界市場では、日本を除くアジアパシフィックの占める割合は半分強で 年々増加している(図 6-3、図 6-4)。現時点は、日米欧の企業がこの成長市場を奪い合う展 - 80 - 開になっている(図 6-7)。今後、市場規模の拡大とともに、製品のコモディティー化が進め ば、中国、韓国、台湾等のコスト競争力のある企業の参入が予想され、そのときには、後発 メーカーは、低価格競争に打ってでることが予想される。 こうした将来予測を踏まえた対応としては、①常に新しい研究開発に取り組み、アプリケ ーションスペシフィックパワーデバイス(ASPD)を深化させ、技術的先進性を確保し、そこ で産み出される研究開発成果を有望な海外市場を含めて特許化すること、②アプリケーショ ンへのチューニング技術はハード・ソフトの両面から開発を進めること、③生産管理技術を ブラッシュアップするとともに、ノウハウと権利化できる知的財産を的確に識別し、将来の 技術移転が可能なように自社の保有する知財管理を商品として管理すること、④正規のライ センスを希望する後発メーカー(同業メーカーはもちろん、上流から下流まで様々な業種の メーカーを含む)に対して、技術移転を行うことで技術提供と製品提供の関係において win-win のパートナーシップを築くこと、⑤不法な技術流出が起きないように模倣品対策、 情報管理を徹底すること、が挙げられる。コモディティー化が進むボリュームゾーンにおい て利益を産み出すビジネスモデルの構築には、長期的で知的財産を活用した事業戦略が有効 である。 Si 系パワーデバイスにおける具体的な研究開発テーマとしては、低コスト化にかかわる IGBT ウエハの大口径化やその薄型化、超接合などのデバイス特性の向上(図 2-19、図 2-20)、 標準化につながる評価技術、生産管理技術、設計を効率化するための統合設計支援技術、モ ジュールやアプリケーションにおける最適制御技術などが重要分野として挙げられる。 【提言6】 SiC 系パワーデバイスの分野では、基板の大口径化、長尺化、切削研磨等を中心とした 基板加工技術、誘電体膜の信頼性を含む MOS デバイス技術、インテリジェントパワーモ ジュール技術等の研究開発に注力し、研究開発成果を海外を視野に入れて特許化すると ともに、市場の早期立ち上げのために競争より協業に力点を置き、アライアン等の諸団 体を通じて、特許の公共財化、関係者の人的ネットワークの強化を推進する。 SiC 系のパワーデバイスが置かれている現状は、京都大学、産業技術総合研究所等が国家 プロジェクトして継続的な基礎研究を進めてきた研究成果が蓄積され、グリーンテクノロジ ーへの追い風とともに、次世代グリーンテクノロジーの代表格として注目を集める状況にあ る(図 5-3)。市場に関しては、勃興期にあり数値化できないレベルであるが、イノベーショ ンを加速する仕組みが機能すれば、2015 年に次世代パワーデバイス(SiC 系、GaN 系)とし て 100 億円超の市場になると予測されている。 ワイドバンドギャップ半導体材料分野が特許創出の宝庫であることは明白であり、将来の 市場がグローバルに拡大することが予想されることから、特許取得に関しては、国内特許に 偏重せず、米国、欧州といった先進国、中国を含めた BRICs 諸国など、市場成長が見込まれ る海外における特許取得を視野に入れたグローバルな特許戦略が求められる。 SiC 系パワーデバイスの特徴は、高パワー密度化を実現し、高温動作を可能にする点にあ - 81 - る(第1章第3節3.)。こうした材料の個性を活かすためには、バルク成長だけでなくエピ タキシャル成長、基板加工技術を含めた、高品質で安価(製造コスト低減と大量生産)な基 板(ウエハ)を製造する基板技術が必須となる。従来の種付け昇華法の改良とともに、繰り 返し a 面成長法(Repeated A-Face growth method:RAF 法)などの新たな技術を実用化して いくことが望まれる。SiC 基板を海外の特定のメーカーだけに頼らないレベルに研究開発力 を引き上げ、サイズ、価格、品質の点で、海外メーカーと遜色ない基板を供給できる国内の 基板供給体制を整備することが求められる(図 2-21、図 5-1、図 5-2)。 また、今後の有望市場であるアプリケーションスペシフィックパワーデバイス(ASPD)を 早期に立ち上げるためには、基板メーカー、装置メーカー、デバイスメーカー、実装材料メ ーカー、セット/システムメーカーが有機的に連携し、競争より協業を重視するコンセンサ スを形成する場が求められる。そのためには、2010 年 4 月に発足した民間主導の SiC アライ アンスの活動に期待したい(第5章第1節1.)。さらに、SiC アライアンスには、他者の研 究成果を積極的に利用促進するための仕組みについて、特許制度を有効活用して実現する活 動(パテントプールやプロフィットプールなど)など、市場成長を加速するための環境整備 に取り組むことが望まれる。 【提言7】 GaN 系パワーデバイスの分野では、エピタキシャル成長技術(装置技術を含む)を基軸 とした GaN on Si 技術、GaN バルク基板技術、実用的な CMOS 技術、インバータ IC 化技 術等を中心とした研究開発に注力し、研究開発成果を海外を視野に入れて特許化すると ともに、国内に分散しているパワー系 GaN の研究者のネットワークを強化し、業界が抱 える問題を提起したり、国家プロジェクト等を提案、運営できるアライアンスを形成す る。 GaN 系は、光デバイスを中心にした長い研究開発を経ており、材料自身に対する研究成果 の蓄積は大きい。もっとも、パワーデバイスの市場として見た場合、GaN 系パワーデバイス の市場はまだ萌芽期である。しかし、通信基地局など社会インフラを支える市場が既に先行 している点、光デバイスを中心に蓄積された膨大な技術力を背景に持つ点など、グリーンイ ノベーションの時代には、一気に市場拡大が加速する可能性を秘めた魅力あるパワーデバイ スである(第1章第3節3.)。新材料分野が特許創出の宝庫であることは SiC と同様な状況 であり、将来の市場がグローバルに拡大することが予想されることから、特許取得に関して は、国内特許に偏重せず、米国、欧州といった先進国のみならず、中国を含めた BRICs 諸国 など、市場成長が見込まれる海外における特許取得を視野に入れたグローバルな特許戦略が 求められる。 GaN 系パワーデバイスにおいて注目される技術領域には、エピタキシャル成長技術(装置 技術を含む)を基軸とした GaN on Si 技術、GaN バルク基板技術、さらにはインバータ IC 化 技術等がある(図 5-1、図 5-2)。GaN on Si 技術は、コスト的な優位性から、GaN 系パワーデ バイスの市場創設を牽引する基板技術として位置付けられる(図 2-22、図 2-23)。異種接合 - 82 - 技術の本質的な問題である、結晶性の改善を中心に、今後、実用化のための研究開発成果の 蓄積が求められる。また、GaN バルク基板技術は、究極の基板技術として研究開発から目が 離せない。なぜなら、GaN バルク基板が提供されるようになれば GaN 系パワーデバイスの特 徴を活かせる縦型のデバイス構造を採用することが容易となり、GaN 系パワーデバイスのト レンドに大きな影響を与えるからである。さらに、インバータ IC 化技術は、いかにして集積 化を進めていくかという半導体産業の使命とも言える課題に取り組む分野として、将来の布 石となる技術分野である。 また、GaN 系パワーデバイスの分野では、国内に分散している GaN 系パワーデバイス関係 者はもとより、GaN 系光デバイス関係者も視野に入れた、研究者のネットワークを強化する 団体の設立が求められる。当該団体には、技術情報の交換といった目的に加えて、例えば「輸 出貿易管理令」での規制の在り方(特に GaN エピ装置)のような業界が抱える諸問題の提起 (第5章第1節4.)、国家プロジェクトの提案、運営など、業界内のニーズを汲み上げて、 関係者のビジネス環境を整備する役割が求められる。SiC アライアンス等を参考に、GaN アラ イアンスの早期設立が求められる。 以上のような提言を踏まえ、改めて、Si 系パワーデバイスにおける提言の相関図を図 7-2 に、ワイドバンドギャップ半導体材料系(SiC 系、GaN 系)パワーデバイスにおける提言の相 関図を図 7-3 に示す。 図 7-2 Si 系パワーデバイスにおける提言の相関図 Si系における提言の相関図 資金、技術、雇用、サービス、知的財産の有機的結合 (提言1) コモディティ化領域では特許ライセンスを活用したwi n-winとなるパートナーシップの形成(提言5) 市場 社会インフラ コモディティ化領域 進化した社会インフラ(スマートグリッド、EV等)の実現 (提言1)。信頼性、耐久性という競争軸(提言2、5) 知財 知財 知財 知財 知財 製品 製品 製品 製品 製品 グリーン分野への投資活発化、今後の市場 拡大(提言1) サービス 資金 知財 雇用 (人材) 事業に結び付けた特許戦略(提言1)、市場が拡大する 国での特許戦略(提言5)の必要性。特許情報の発信 や基本特許の取得による国際標準化の促進(提言4) 知財 技術 ソフトウェア技術も含めたチューニングによる アプリケーションスペシフィックパワーデバイ ス(ASPD)の開発(提言2) 産学官の人的ネットワークを活用し、技術、知財、 国際教育を充実(提言3) - 83 - 図 7-3 ワイドバンドギャップ半導体材料系パワーデバイスにおける提言の相関図 ワイドバンドギャップ半導体材料系における 提言の相関図 早期拡大 社会インフラ 市場 知財 知財 製品 資金、技術、雇用、サービス、知的財産の有機的結合 (提言1) 進化した社会インフラ(スマートグリッド、EV等)の実現 (提言1)。信頼性、耐久性という競争軸(提言2) 事業に結び付けた特許戦略(提言1)、市場が拡大す る国での特許戦略( 提言6、7)の必要性。特許情報の 発信や基本特許の取得による国際標準化の促進(提 言4) 製品 資金 サービス 知財 協業 雇用 (人材) グリーン分野への投資活発化、今後の市場 拡大(提言1) 知財 技術 ソフトウェア技術も含めたチューニングによる アプリケーションスペシフィックパワーデバイ ス(ASPD)の開発(提言2) 知財知財 知財 知財 知財知財 知財 資金 競争 雇用 (人材) 知財 知財 知財 知財 知財 技術 技術 技術 技術 技術 市場早期立ち上げのために協業に力点を置き、アライ アンス等を活用して特許を公共財化する(提言6、7) 産学官の人的ネットワークを活用し、技術、知財、 国際教育を充実(提言3) - 84 -