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新潟県耐震改修促進計画 改定検討委員会 報 告 書 平成 28 年3月 は じ め に 平成 23 年3月 11 日に発生した東北地方太平洋沖地震は、約2万人もの死者 や行方不明者が発生するなど未曾有の大被害をもたらし、県内でも、山間地に 壊滅的な被害を与えた平成 16 年の新潟県中越地震をはじめ、平成 19 年の新潟 県中越沖地震や平成 23 年の長野県北部地震が発生したことは、まだ記憶に新し い。 全国では、南海トラフ巨大地震や首都直下地震の発生の切迫性が指摘され、 県内でも、櫛形山脈断層帯をはじめ数多くの活断層が存在するとされているな ど、地震への備えは、以前にも増して重要視されている。 このような状況の中、建築物の耐震化を強力に促進すべく平成 25 年に「建築 物の耐震改修の促進に関する法律」が改正され、不特定かつ多数の者が利用す る要緊急安全確認大規模建築物について、平成 27 年までの耐震診断が義務付け られたとともに、平成 32 年までに全国で達成すべき住宅の耐震化率の目標など、 建築物の耐震診断及び耐震改修の促進を図るための基本的な方針が、国から示 された。 本委員会報告は、法律の改正を受け、平成 18 年度に策定した「新潟県耐震改 修促進計画」を改定するため、県内の建築物の耐震化率の目標等について、3 回の議論を重ねてまとめたものである。 全国よりも早い人口の減少や高齢化の進行などにより、一律に建築物の耐震 化を進めていくことが困難な状況が見込まれる本県において、実行性のある次 期計画を策定するため、本委員会報告が活用されることを望む。 平成 28 年 3 月 24 日 新潟県耐震改修促進計画改定検討委員会 (委員長)長岡造形大学地域協創センター 副センター長 澤田 雅浩 エヌアイティー株式会社 理事 相田 幸一 新潟職業能力開発短期大学校 特任職業能力開発教授 時田 一雄 公益社団法人 長北 喜雄 新潟県旅館ホテル組合 理事長 野澤 幸司 一般社団法人 平山 桂子 新潟県宅地建物取引業協会 代表監事 新潟県建築士会 理事 目 次 はじめに 1 耐震化率の目標 (1) 住宅・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 (2) 特定建築物・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 2 耐震診断結果の公表等 (1) 要安全確認計画記載建築物に関する耐震診断結果の公表・・3 (2) 是正を命じる場合の相当の期間・・・・・・・・・・・・・4 おわりに 1 耐震化率の目標 (1) 住宅 平成 32 年度末における県内の住宅の耐震化率の目標は、87%とすべ きである。 (平成 26 年度末の耐震化率:82%) 県内の住宅に関する耐震化率の目標は、平成 27 年度末までに 87%を達 成することが現在の県の計画で定められているが、平成 20 年に発生した リーマンショックにより新設住宅着工戸数が低迷し、住宅の更新が遅れた ことなどから、平成 26 年度末時点で耐震化率が 82%と推計されるなど、 目標の達成が見込めない状況である。 平成 32 年度における全国での住宅の耐震化率に関する目標は、建築物 の耐震改修の促進に関する法律(以下「法」という。)の改正に伴い、95% 以上とすることが国から示されている。 県内の住宅について、全国と同様に平成 32 年度末までに耐震化率 95% を達成するためには、耐震改修を従来の約9倍行うことが求められるなど 厳しく、県内においては、所有者の高齢化に伴う耐震化への意欲の低下や、 人口減に伴う住宅更新の一層の遅れが想定されるなど、今後は、これまで どおり一律に耐震化を進めていくことが厳しい状況が見込まれている。 そのため、平成 32 年度までを期間とした県の次期計画で定める住宅の 耐震化率に関する目標は、実現可能な数値として、県の耐震化に関する施 策が今までどおりに成果を発揮できた場合に到達すると見込まれる 87% を最低限の目標とし、これを下回らないように努力すべきである。 なお、耐震診断の結果、耐震性なしと判断された住宅の所有者のうち、 耐震改修しないものの中に高齢者が多く占めているといった実情を踏ま え、今後は、高齢者等の災害時要援護者の生命を地震の被害から守るため、 寝室などの部分的な耐震改修等を普及させていくことが、耐震化率に算入 される完全な耐震改修の推進と合わせて求められる。 1 (2) 特定建築物 平成 32 年度末における県内の特定建築物の耐震化率の目標は、95% とすべきである。 (平成 26 年度末の耐震化率:83%) 県内の特定建築物に関する耐震化率の目標は、平成 27 年度末までに 90%を達成することが現在の県の計画に定められているが、住宅と同様 に、リーマンショックの影響などから、平成 26 年度末時点の耐震化率が 83%と推計され、目標の達成が見込めない状況である。 なお、計画では、特定建築物のうち県有建築物は 90%、防災上重要な 県有建築物は 100%の目標が定められているが、平成 26 年度末時点の耐震 化率がそれぞれ 92%と 94%に達しており、防災上重要な県有建築物につ いては、建替えなど予定があるものを除いて耐震化を完了していることか ら、これらの目標については、ほぼ達成していると言える。 平成 32 年度における全国での特定建築物の耐震化率の目標は、法の改 正に伴い、95%以上とすることが、住宅と同様に国から示されている。 県内での特定建築物の耐震化率に関する今後の見通しについて、県など の公共建築物は、今後も耐震化率を牽引していくことが期待され、民間建 築物は、建築時期が昭和 46 年以降のものについて、建築基準法の改正に より耐震性を有するものが比較的に多いことが想定されることから、所有 者に積極的な耐震診断を促すことによって、耐震化率を高めていくことが 可能と考えられる。 そのため、平成 32 年度までを期間とした県の次期計画で定める特定建 築物の耐震化率に関する目標は、所有者、行政及び建築士などの関係者が 一丸となって耐震化に取り組むためのマニフェストとして 95%とすべき と考える。 加えて、目標の達成に向け、今後は、費用面のみではなく、耐震診断士 の育成・強化や簡易な診断方法の研究など、ソフト面の施策を充実すると ともに、耐震化できずに残り続ける特定建築物を捕捉していく仕組みづく りが求められる。 2 2 耐震診断結果の公表等 (1) 要安全確認計画記載建築物に関する耐震診断結果の公表 要安全確認計画記載建築物に関する耐震診断結果は、可能な限り丁寧 に公表すべきである。 要安全確認計画記載建築物は、地震時の防災拠点や避難所などの公益上 重要な建築物を計画に位置付けることによって、計画で定められた期日ま でに耐震診断結果を所管行政庁へ報告することが義務付けられるもので あり、所有者から報告を受けた所管行政庁は、その内容を確認し、建築物 の概要や耐震診断結果に応じた安全性等を公表することが法律などで規 定されている。 建築物の安全性に関する耐震診断結果が公表されることは、とりわけ民 間建築物において、営業への影響などが懸念されることから、所管行政庁 である県は、所有者の不安を解消するためにも、耐震診断結果を単に公表 するだけではなく、耐震改修により耐震性が確保された場合には速やかに 公表内容を更新するなど、可能な限り丁寧な公表に心掛けるべきである。 なお、ここでの検討内容については、平成 27 年 12 月末までに耐震診断 結果の報告が義務付けられた要緊急安全確認大規模建築物の公表時にも 参考とされたい。 3 (2) 是正を命じる場合の相当の期間 耐震診断結果の未報告者に対して是正を命ずる場合の相当の期間は、 12 ヶ月以上とすることが望まれる。 所管行政庁である県が、耐震診断結果を報告しない要安全確認計画記載 建築物の所有者に対し、是正を命じる場合の猶予期間である法第8条第1 項に規定する「相当の期間」は、耐震診断や耐震診断技術者の確保などに 要する一般的な期間などを考慮して 12 ヶ月以上とし、耐震診断に必要な 建築時の図面等を紛失している場合には、その復元期間を考慮して 18 月 以上とすることが望まれる。 また、期限内までに耐震診断結果を報告しない所有者の中には、資金調 達や利害関係者との調整が困難であることなどを理由に、耐震診断を直ち に行うことが困難なものがいることも想定されるため、所有者に特別な事 情が認められる場合には、その内容を十分に考慮し、適切な猶予期間を別 途定めることが望まれる。 なお、ここでの検討結果については、平成 27 年 12 月末までに耐震診断 結果の報告が義務付けられた要緊急安全確認大規模建築物の所有者に是 正を命じる場合にも参考とされたい。 4