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車室内におけるタイヤ走行音の評価
1-3-5 車室内におけるタイヤ走行音の評価* ○横山 栄,橘 秀樹(千葉工大),永井 秀(ブリヂストン) Table 1 Experimental conditions 1 (a) Dense grated asphalt concrete 60 57.9 57.9 (b) Shot blast dressing concrete 40 61.1 59.6 (c) Drainage pavement 60 56.6 56.8 (d) Asphalt concrete with joint 60 62.3 61.9 80 80 2 車室内における走行音の測定 2.1 走行試験の概要 セダン型乗用車を試験車として,2 種類の タイヤ(Tire A, Tire B)を対象に晴天時に走行 試験を行った.Table 1 に示すテストコース内 4 種類の舗装路面上を 60 km/h あるいは 40 km/h で定常走行し,助手席に 6ch.マイクロホ ン[4]を設置して車室内における走行音を収 録した.これらのデータからそれぞれ 8 秒間 を切り出して試験音とした. 2.2 測定結果 騒音レベル(LA)の測定結果を Table 1 に示 す.舗装条件の違いによって最大 5.7 dB の差 が見られるが,タイヤの違いによる走行音の レベルの差は最大 0.5 dB となっている.一例 として,(a) 密粒舗装路を 60 km/h で走行した 場合の音圧の周波数特性を 2 種類のタイヤ (Tire A, B)を比較して Fig. 1 に示す.800 Hz 以上の高音域で,Tire B のレベルが 0.7∼1.9 dB 低くなっている.この違いを聴感的に識別 できるかどうか、以下の評価実験を試みた。 3 走行音の印象評価 3.1 3 次元音場シミュレーションシステム 実際の車室内における走行中の聴感印象を できる限り自然な印象で実験室内にシミュレ ートするために、6 チャンネル収音・再生シ ステム[4]を適用した。実験では、各被験者 1 人ずつ無響室内にシミュレートした音場の中 心位置に座り、走行音を聴取して判断した。 LA [dB] Speed [km/h] Tire A Tire B Pavement Condition SoundPressure Pressure Level Level [dB] Sound はじめに 筆者らは,乗用車・車室内における音環境 の快適性評価として,3 次元的にシミュレー トした音場内でうるささやカーオーディオの 聴きやすさ,会話影響等について印象評価実 験を行ってきた[1-2].本報では,1kHz 付近に 生じる気柱共鳴音を低減させるよう考慮して 設計されたタイヤ[3]について,実際の走行音 を用いて音響効果を検討した. 70 70 60 60 50 50 40 40 T ire A T ire B 30 30 20 20 63 63 125 125 250 250 500 500 Frequency [Hz] F 1k 1k 2k 2k [H ] Fig. 1 Frequency characteristics of tire road noises (dense grated asphalt concrete). 3.2 一対比較法による評価実験 まず、タイヤの違いによる印象の変化につ いて、一対比較法により検討した。 Table 1 に示す(a)∼(d)の各舗装条件ごとに、 2 種類のタイヤ(Tire A, B)を装着した場合の 走行音を対にして呈示し(同一対を含む計 4 対) 、聴感印象が”同じ”か”違う”かを判断させ た。被験者は正常な聴力を有する 20∼50 代の 男性で、普段、自動車の操縦安定性や乗り心 地、音環境などの官能評価を行っているドラ イバ 7 名と技術開発者 4 名の合計 11 名である。 被験者全員の回答を集計した結果を Fig. 2 に示す。Hit rate の結果を見ると、路面条件(d) 継ぎ目路を除き、0.8 程度となっており、タイ ヤの違いによる車室内における走行音の違い が識別できている。 内観報告として、 「音色」、 「音の大きさ」、「共鳴音の聞こえ方」で違い を判断したというコメントが聞かれた。 * Subjective evaluation of tire road noise inside a passenger-car, by YOKOYAMA, Sakae, TACHIBANA, Hideki (Chiba Institute of Technology) and NAGAI, Shu (Bridgestone Corporation). 日本音響学会講演論文集 - 957 - 2008年3月 1.0 Ratio of correct answers / Hi rate 3.3 SD 法による評価実験 つぎに,どのように印象が変化したかを調 べるために,SD 法による評価を試みた. ここでは(a) 密粒舗装の条件における走行 音(Tire A, B)を試験音として,Fig. 3 に示す 8 項目について 7 段階評価を行った.また, 走行音(Tire A, 舗装条件(a))のスペクトルを 人為的に変化させた全 12 条件(63 Hz∼2k Hz, 各 2 段階(-5, -10 dB))も試験音に加えた. 実験では,始めに 8 秒間の試験音を呈示し, その後で印象を判断させた.被験者は上述の 11 名である. 被験者全員の回答を集計してプロフィール を作成した.Fig. 3 にタイヤ A と B に対する 印象を比較した結果を示す.項目(1) “静かな”, (2) “快い”,(4) “明るい”,(6) “やわらかい”に ついてわずかな差が見られ,特に”不快な”印 象が顕著に変化している.また,スペクトル を変化させた場合の印象をタイヤ A と比較し て Fig. 4 に示す.125 Hz, 250 Hz 帯域を変化さ せた場合の結果(Fig. 4(1))を見ると,すべて の項目で顕著な差が見られ,特に項目 (5) “滑 らかな”,(7) “開放的な”の変化が大きい.ま た,いずれの条件でも“騒々しい”,”不快な” といった印象が改善されている.また,500 Hz, 1k Hz 帯域を変化させた場合には(Fig. 4(2)), 項目(1) “騒々しい”,(2) “不快な”印象は改善 されているが,項目(3) “軽い”,(4) ”明るい”, (7) “開放的な”ではレベルを低くしたことに よってタイヤ A に対する印象よりも(3) “重 い”,(4) ”暗い”,(7) “圧迫感のある”印象へ変 化している. 0.8 0.6 0.4 0 (a) むすび 本報では,3 次元シミュレーション音場に おける主観評価実験により車室内における走 行音に対する印象評価を行った.その結果, タイヤのみを変えた場合の走行音について, “違い”が識別され,特に”快い”印象が変化す る傾向が見られた.また,走行音のスペクト ルを人為的に変化させて行った評価実験でも 印象が変化する傾向が見られた.ただし,今 回変化させたレベルは実際の技術で実現する ことは難しく,微妙な音色の変化についても 系統的な検討が必要である.今後,車室内に おける走行音の音質評価について,さらに検 討していきたい. 日本音響学会講演論文集 (b) (c) (d) Pavement condition (see: Table 1) Fig. 2 Experimental results using pair comparison method. 非常に (1) 静かな (2) 快い どちらとも言えない 非常に 騒々しい Tire A Tire B 不快な (3) 軽い 重い (4) 明るい 暗い (5) 滑らかな 粗い (6) やわらかい かたい (7) 開放的な 圧迫感のある (8)高級感のある 高級感のない Fig. 3 Experimental results for difference between Tire A and B using S. D. method. 非常に どちらとも言えない 非常に 非常に どちらとも言えない 非常に (1) (2) (3) Tire A (4) (5) (6) 4 Ratio of correct answers Hit rate Hit rat eof correct answers Ratio 0.2 (7) Tire A 125 Hz -5 dB -10 dB 500 Hz -5 dB -10 dB 250 Hz -5 dB -10 dB 1k Hz -5 dB -10 dB (8) (1) 125Hz, 250 Hz (2) 500 Hz, 1k Hz Fig. 4 Experimental results using S. D. method. 参考文献 [1] 近藤他,“自動車・車室内の音環境評価 -ラジ オ聴取に関する主観評価実験-”,音講論(秋), 677-678,2006. [2] 上野他,“会話のしやすさに着目した自動 車・車室内の音環境評価実験” ,音講論(秋), 873-874,2007. [3] 柏他,“サイドブランチ効果によるタイヤト レッドパターンの気柱共鳴の抑制” ,音講論 (秋) ,637-638,2006. [4] 横山他,“6 チャンネル方式収音マイクロホ ンの改良”,音講論(春) ,807-808,2007. - 958 - 2008年3月