Comments
Description
Transcript
フルディジタル・ アンプを作ろう
光/同軸入力の D 級アンプ フルディジタル・ アンプを作ろう CD/DVD プレーヤや HDD レコーダには,光もし くは同軸出力からディジタル・データが出ていま す.これをそのまま入力し,途中でアナログに変 換することなく,効率の良い D 級増幅までを通し て設計したアンプを作ってみませんか. 光永 法明 ● 途中にA-D/D-A 変換が入らない されます.ここまでの信号は,S/PDIF(Sony 最近は,オーディオ・アンプでD級アンプとい Philips Digital InterFace)と呼ばれる規格の信号 う言葉をよく耳にするようになりました.D 級ア です.S/PDIF信号はディジタル・インターフェー ンプは電力効率が高く,安価な構成でも音が良い ス・レシーバ(DIR9001)で,I2S(The Inter-IC ことから人気があります.D 級アンプでも多くの Sound Bus)信号に変換されます.S/PDIFでは配 場合は,CD やパソコンなどのディジタル機器か 線が少なくて済むように,一つの信号線にタイミ らの出力もアナログ信号として扱っています. ングや左右の音声などが詰め込まれています.そ それに対して本機は,入力から増幅までをディ ジタル信号のまま扱うフルディジタル・アンプで れをDIR9001で,後段のプロセッサで扱いやすい 形(I2S)に変換します. す.フルディジタルにすることで,A-D コンバー PWM プロセッサ(TAS5086)では,入力の音声 タ周辺のアナログ回路構成や,微小なアナログ信 信号を,スピーカを駆動する信号(PWM 信号)に 号の取り扱いをする必要がなくなり,簡単な構成 変換します.I2S 信号では,音声信号はディジタ で高音質が期待できます. ル・コンピュータで扱いやすい形式になっていま フルディジタル・アンプの構成 ● ブロック図から信号の流れを知る す.それに対してPWM 信号は,音の大きさに比 例した長さのパルスとして表します.この変換と 音量の調整をTAS5086で行います. 図 1 にブロック図を示します.入力は同軸× 2 TAS5142 は入力された PWM 信号を増幅しま と光×2 の4 系統あります.同軸入力は74HCU04 す.増幅した信号は,最終的にスピーカに出した を使ったアンプで増幅し,光入力は光(TOSLINK) い音声帯域以上の信号が含まれているので,ロー 受信モジュールで電気信号に変換します.四つの パス・フィルタを通して,スピーカ端子に出す信 信号は,マルチプレクサ(74HC153)で一つが選択 号とします. 94 フルディジタル・アンプを作ろう ローパス・ スピーカ フィルタ 出力 左+ マルチ 光受光 プレクサ モジュール (74HC153) (TORX177) 4 3 ボリ ュ など ーム の 光入力 DATA ディジタル・ インター PWM 左PWM 左− SCLK フェース・ プロセッサ 電力増幅 レシーバ MCLK ボリューム調整 右PWM (TAS5142)右+ PWM信号生成 右− LRCLK (TAS5086) (DIR9001) 2 ( S) 2 1 光入力 入 エ 力 切 り 替 ラ ー え ー ラ エ マイコン MSP430F2012 同軸入力 LED 状態表示 同軸入力 アンプ (74HCU04) 5V (7805) 入力切替スイッチ (SW701) 音量調整 ボリューム 3.3V (TA48M033) 12V 12V (0 ∼ 12V) (ACアダプタ)(ACアダプタ) 図1 フルディジタル・アンプのブロック図 ● マイコンと電源回路 かった場合は,入力は1 になります. MSP430 マイコン(MSP430F2012)は,入力切 入力切替スイッチ(SW701)を押すと一瞬LED が 替スイッチが押されたときに,マルチプレクサに 点灯します.入力は1 →2 →3 →4 →1 →…の順で 対して入力の切り替えを指示します.また,音量 切り替わります.LED は有効なディジタル音声入 調整用ボリュームの角度を読み取り,TAS5086 力があるときに点灯し,ないときは消灯します. のボリュームを設定します.ほかに,動作状態を TAS5142の温度が高すぎるなどの異常時には本機 示すLEDの制御などもしています. は動作を停止し,LED が点滅します. 電源は図1 のように,マルチプレクサまでは5V 動作 (三端子レギュレータ7805 で生成) ,DIR9001, TAS5086,MSP430F2012 は3.3V 動作(三端子レ 基板の組み立てと動作確認 ● 基板の組み立て ギュレータTA48M033で生成) ,TAS5142はディ 回路図を図 2 に示します.基板上の部品は表 1 ジタル部が12V 動作(AC アダプタ入力)になって のようになっています.基板上の部品は背の低い います.TAS5142 のパワー部の電源(PV DD , ものから取り付けていきます.まずフラット・ PGND)は0V から動作しますが,ここでは12Vで動 パッケージのICを取り付け,チップ部品をすべて 作させることを想定しています. はんだ付けします.込み入ったところがあるので, コテ先が入らないことがないように順番を考えま ● 本機の動作と操作 す.チップ部品を取り付けたら,横になっている 本機は電源を入れると,MSP430 が入力信号を 抵抗,ダイオード,コイルを取り付けます.そし 1 から順に切り替え,信号のある入力を探します. て,IC ソケットを取り付け,残りの抵抗,セラ 最初に入力の見つかったところで,サーチは止ま ミック・コンデンサ,フィルム・コンデンサ,三 ります.電源投入時に 1 から 4 の入力に信号がな 端子レギュレータや,電解コンデンサ,出力フィ 2008 August 95