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特集「コミュニティ再生とビオトープの役割」
日本ビオトープ協会 2015 ビオトープNo.3 5 特集「コミュニティ再生とビオトープの役割 」 カブトムシ繁殖施設での観察会 (富山県射水市) 写真 岡田 一雄氏 提供 㻌目 次㻌 頁㻌 㻌 㻌 㻌 巻頭言㻌 㻌㻌 ビオトープがつくるコミュニティ㻌 㻌 㻌 岩村㻌 和夫㻌 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 㻝㻌 特別寄稿㻌 㻌㻌 コミュニティ再生とビオトープ㻌 㻌 㻌㻌㻌㻌㻌㻌ことしの夏に被災地を巡って考えたこと:環境は自分たちがつくる㻌 㻌 原田㻌 鎮郎 㻌・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 㻟㻌㻌㻌 㻌 シリーズ連載㻌 㻌㻌 ビオトープのいきものたち -その㻞㻝- 震災後の湿地に渡来した鳥たち㻌 㻌 佐竹㻌 一秀㻌 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 㻝㻜㻌 会員投稿㻌 㻌ビオトープ形成に関する提案事業の実例㻌 㻌 㻌 㻌 㻙㻺㻼㻻法人自然環境ネットワーク ・射水市ビオトープ協会の活動㻙㻌 㻌 岡田㻌 一雄 㻌・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 㻤㻌㻌㻌 㻌 㻌 ビオトープによるコミュニティづくり㻌 㻌 㻌 永田㻌 章人㻌 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 㻝㻜㻌 㻌 協会活動状況㻌 㻌㻌 各地区委員会〈㻤地区〉活動㻌 報告・計画等㻌 㻌 㻌 各地区委員長 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 㻝㻞㻌 㻌㻌 活動報告・お知らせ等㻌 㻌 㻌 事務局 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 㻝㻡㻌 連載コラム㻌 「都市の虫たち」 㻌 第㻝回㻌 チョウ類㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 立川㻌 周二㻌 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 㻝㻢㻌 㻌 巻頭言㻌 ビオトープがつくるコミュニティ 㻌 東京都市大学名誉教授 㻔株㻕岩村アトリエ代表取締役㻌 日本ビオトープ協会顧問㻌 岩村 和夫 㻌㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 右の一文は、㻝㻥㻥㻣年に完成した建 替公営住宅団地「世田谷区深沢環 境 共 生 住 宅」の 基 本 コ ン セ プ ト で す。住まい・まちづくりの分野で環境 への配慮、特に生態系との関わりに 関心が注がれ始めたのは㻝㻥㻥㻜年代 に遡りますが、その代表的な取り組みが産官学一体となっ た「環境共生住宅」の研究・開発でした。その具体的な事 例として、私たちが建て替え前の住民たちと一緒になって 作り上げた事業の基本的な考え方がここに凝縮されていま す。㻌 この基本方針に至るまでに、プレデザインとしてこの団 地敷地が立地する場所性と社会性について立体的な詳し い調査分析を行いました。そして、戦後直後に建てられた 古い公営住宅をただ新しく建て替えるのではなく、周辺地 域を含めて立地特性を発見的に分析し、そこにどのような 環境を形成すべきかを議論・検討しながら、その具体的な 手法について精査しました。こうして、地域→団地→住まい →住み手のように、空間的規模を広域から身の回りまで段 階的に辿りながら、目指すべき姿を描いたのです。 この中で、「ビオトープ」の概念が中心的位置を占めてい ます。そして、大から小に至る各空間的段階に応じて、人と の係わりを念頭に置き、その結果として「環境共生」を実体 化できる「建築学」と「生物学」との統合的な全体像を描きま した。この新たな方法は、 最近では建築環境におけ る「生物多様性」の重要性 が認識されるようになりまし たが、その先駆けとも言う べき取り組みであったと思 います。その下敷きとなっ たのが、ドイツを中心とし て㻝㻥㻣㻜年代 から取 り組ま れてきたまさに建築と生物 学の統合、すなわち「建築 生物学(㻮㼍㼡㼎㼕㼛㼘㼛㼓㼕㼑)」でし た。こ の よ う な 考 え 方 は 㻝㻥㻥㻜年代以降の地球環境 㻌写真㻝:ビオト-プ・ガーデン 時代を迎えて、ようやく建築や都市の分野でその重要性が 認識されてきましたが、日本においては世田谷の事例が集 合住宅団地における「コミュニティ」の形成を図る上で、先鞭 をつけたと言ってよいでしょう。 日本のような温暖な気候風土の国では、東京のような大 都市にあっても、そこに少しでも裸地があれば生物多様性 につながる豊かな動植物の棲息環境を形成することが可能 です。大切なのはそれらをつなげてネットワーク化すること ですが、私たちは、近年それ を「都市を耕す」という表現に 思いを込め、さまざまな住ま い・まちづくりのプロジェクトに 取り組んできました。農地が 都市の内部にパッチワークの ように共存していた江戸時 代、もはやそこに戻ることはで きません。しかし、そうしたユ ニークな都市構造の歴史を 持つ我々にとって、全く無縁 のことではありません。そして さ ら に、災 害 時・復 興 時 に も 重要な役割を果たす平常時 の近隣コミュニティを醸成する 上で、ビオトープの創出や育 成管理を通した生活環境づく りが大変役に立つ、そのこと を世田谷での実践を通して 強く実感しました。㻌 コミュニティがビオトープを つくり、ビオトープがコミュニ ティをつくることを。㻌 㻌 写真㻞:コミュニティ活動 㻌 -1- 特別寄稿 㻌 㻌 㻌 㻌 コミュニティ再生とビオトープ㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ことしの夏に被災地を巡って考えたこと㻌 環境システム研究所㻌 代表取締役 原田 鎮郎㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ・環境は自分たちがつくる㻌 歴史の継続・元気な若者がいた㻌㻌 㻞㻜㻝㻠年の㻤月㻝㻝日に岩手県山田町の海の盆の祭りに 参加する機会を得た。この日は東日本大震災から㻟年 㻡ヶ月たった月命日、高校生も含む若者たちの神楽の演 奏と舞いが素晴らしかった。若者たちがこの地に足をつ けて先祖からの文化をしっかり体の中に取りこんでいる 姿に感銘を受けた。この感動は、㻞㻜㻝㻟年の㻝㻞月に大槌 町でのシンポジウムの際に若者と壮年者が一体となった 虎舞いを見たときに感じたものと同じだった。震災を乗り 越え、未来に向かって、地域の誇りを持って受け継いで いこうとする熱意と誇りに満ちていた。 㻌 住田町の木造庁舎 午後からは住田町に移動した。間もなく新しい木造の 庁舎が出来上がるのでその見学をお願いすると、多田 町長が自ら現場を案内してくださった。㻌 㻌 さすが木材の町である住田町の個性を十分に発揮す る気持ちのいい空間であった。「建築雑誌をにぎわすよ うなファッショナブルな建築はいらない、町民がいつでも 気軽に立ち寄れる庁舎を作りたい」という町長のコンセプ トが見事に反映されていた。㻌 外壁は鎧張りの下見壁、細かい斜めトラス格子に組ま れた耐震壁、そしてガラスサッシュの㻟種類の材料の組 み合わせでリズミカルな縦模様が表現されていた。建物 すべてに気仙大工の技が十分に発揮されていた。㻌 㻌 中央のエントランスロビーには直径1m近くもあろうかと いう㻠本のケヤキの柱が㻞階分の吹き抜けの高さでそびえ ている。この巨大なケヤキの柱は町民の寄付であるとい う。内部は木の香りが一杯で、まるで森林浴をしているよ うな庁舎ロビーであった。きっとこの庁舎は長く町民に愛 されて、建物自体は年を経るに従って風格を増していく ことだろう。㻌 数十年前に植林された木々が時代を超えて現代に生 かされている。ここでも神楽や虎舞と同じように地域の時 間の継続性が大事にされていることを感じた。㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 みんなの舞台・住宅とコミュニティの場でワンセット 住田町新庁舎の見学を終えて、町長と一緒に町内の 中上団地に向かった。この団地は被災者のための仮設 住宅である。内陸の住田町は被災地ではないので国や 県からの補助金が受けられなかった状況の中で町長は、 震災直後に他の市町、特に陸前高田の被災者を引き受 けるための仮設住宅建設を決定した。伝統的木造建築で 気仙大工によって建てられた住宅は他の市町の仮設住 宅のようにプレファブ棟割長屋スタイルではなく、完全な 木造独立住宅である。他の地域の多くの仮設住宅が㻞年 の使用予定を超えてだいぶガタが来ているのに対して、 この住宅はまだまだしっかりしている。屋根にはソーラ温 水器が載り、各戸にはペレットストーブが用意されている。 数合わせの一時しのぎの仮設住宅ではなく、たとえ仮設 でも人間の生活をしっかりと守ろうとする思想がここにはあ る。 ところがさすがの住田町の仮設住宅にも無いものが あった。それがみんなが集まってお茶が飲めてお話がで きる共用空間である。住民たちは気楽にいつでも立ち寄 れて話ができる井戸端会議のような場所がほしいと思っ ていた。 その住民のニーズに応えたのが今回の東大と㻹㻵㼀(マ サチューセッツ工科大学)の学生たちのワークショップで あった。学生たちは地元の気仙大工さんの指導も受けな がら㻝週間ほどの滞在期間で「みんなの舞台」という交流 スペースを作り上げた。 竣工の餅撒きに集まった住民たちは口々に「こんなとこ ろがほしかったのよ」と語った。その夜は廃校になった旧 小学校の教室で開かれた慰労会で住民や学生たちが夜 遅くまで、飲み、踊り、唄って交流を深め、明日からの別 れの寂しさを紛らわした。都会ではとっくに忘れてしまっ た人々の温かい交流に久しぶりに接することができた。 㻌 住田町庁舎:木造のトラス構造で支えられて内部には柱がないので 将来の変化にも柔軟に対応できる。 㻌 -2- エントランスロビーの内観:㻠本のケヤキの丸太 が町民を迎える。 今こそ新しい発想を 震災が無くてもわが国は人口減少時代に突入するタイ ミングだった。山が削られて、その土が低地に盛られて 嵩上げされた地盤ができあがっても、高齢化、少子化、 人口減少、産業の空洞化など震災以前から続く課題は 存在し、むしろ加速化している。この社会問題を克服し ない限り都市は再生できない。 今までは戦後70年、人口は増え、産業は発達し、人々 の所得は増え、交通機関は発達し、国際化は進み、す べて右肩上がりの成長トレンドが続いてきた。しかしなが ら社会はすでに量的拡大ではなく縮小・円熟の計画の 時代に入っている。戦国時代の戦いでも退却は最も難し い戦い方といわれてきた。 今までの歴史の中では成長、拡大をする人類が自然 を追い詰めて縮小させてきた。貴重な動植物も犠牲に なって消えた。 これまでの拡大成長の原理は、今しばらくは発展途上 国では受け入れられていくであろう。しかし先進国にお いては従来どおりの拡大型の計画理念、計画手法では 社会に適合できなくなってきている。まさにあちらこちら に「不都合な真実」が露呈してきている。 この山を切り低地を埋める手法は、はたしてこれからの 地球のあるべきデザインのモデルになりうるであろうか。 私は違うように思う。 これからは自然を再生させ人工環境と共存させる、更 には一歩進んで人工環境を自然環境に戻していく手法 が求められる。 東大とMITの学生が、気仙大工さんの指導を受けて完成させた 中上団地のみんなの舞台:竣工の餅撒きがおこなわれた。 そして被災地の今 これが正解なのか 翌日訪れた陸前高田では、120mの山を削り40mの高さ の台地の上に住宅地を作ろうと平成の一大土木工事が進 行中であった。その削られた土は恐竜のようなベルトコンベ ヤーで空中を走り、低地には現代のピラミッドのような土の 山が築かれていた。 大槌町でもあちらこちらに3階建てくらいの高さの台形の 盛り土が見られた。やがて地盤沈下で生まれた湿原のよう な空間もこのように土の山で覆われるのであろう。 大槌町でも陸前高田でも地盤沈下の場所が多い。まだ 盛土を行っていない場所では、水がたまって新しい緑が生 えてきている。小魚、昆虫、鳥たちも集まり新しいビオトー プが生まれている。しかしここもまもなく盛土の下に埋めら れてしまうのである。新しく生まれてきた湿生植物の豊かな 環境を守ろうという動きは見られない。 町の記憶や歴史はすべて盛土の下に塗り封じ込められ てやがて消滅していく。 本来リアス式海岸は厳しい自然条件ゆえに、入り組んだ 湾ごとに独特の文化を形成してきた。人にはそれぞれ個性 があるように、リアス式海岸では湾ごとに個性豊かな風土、 歴史、文化が育まれてきた。 大規模造成工事は個性豊かに描かれたキャンバスに盛 土という絵の具を塗って下地を消し、個性のない絵を機械 的に描こうとしているようにみえる。 新しい発想:自然の大地を塞がない。人間はあまりにも多く の地表面を閉塞化してきた。人工の大地を持ち上げて足元 の自然を繋げる。 われわれが長年追求してきた人工地盤もその一つで ある。人工地盤が自然の大地を離れて空中に浮くように 存在する。今までわれわれはあまりにも多くの地表面を 人工物でカバーしてきた。人工地盤は足元の自然の生 態系を分断せず、自らの人工地盤の上にも緑を育て池 を作り魚や水生昆虫などの生息環境を作ることができる システムである。 陸前高田や大槌では、山を切り高台に平地を作り、低地に は土を盛り山を作る平成の大土木工事が進行中である。 -3- 愛知万博でもメインの動線となった空中回廊はこのよう な人工地盤の考え方からデザインしたものである。ループ の上を象やキリンが歩いたわけではないが、生き物を繋 いでいるというコンセプトを表している。 この空中回廊は杭も柱も床も鋼構造で会期後はすべて リサイクル、リユースされている。このように大地を土木で はなく人工地盤という立体的都市構造物にすることによっ て、随時モニタリングを行いながら適切な維持管理を行い 安全性を確保していくことができる。 空中に持ち上げられた人工地盤の上には、 庭があり増改築もできる住宅が建てられる。 例えば段状に構成される人工地盤は、各階に雨が降り 日光が降り注ぎ、風が流れる。そしてピロティに持ち上げ られた下層部は、そのまま大地の表面の自然のエコシス テムを断ち切ることなく連続させることができる。自然の大 地はなるべく自然に戻してエコサイクルをつなげていく。 先住民であるともいえる微生物、昆虫、動植物などのエコ の連鎖を繋ぐ。 もちろん真の自然のようには行かないところもあるが、コ ンパクトに重層化されて自然の大地を閉塞させる面積が 減少しさらに上空に持ち上げられた人工地盤の上でも、 若木が二酸化炭素を吸収し、温暖化の付加を減少させ、 生物の多様性を確保することができる。 愛知万博会期中のグローバルループ:高さ15mの空中散歩 という非日常の体験、車も来ないバリアフリーの人間の道・ これからの都市開発の一つのモデル その後の台湾の台中文化センター、金門旅客船ターミ ナルの設計コンペでも、われわれは同じ人工地盤のコン セプトを提案し続けた。 台中文化センター案:足元を開放して自然のエコシステムの 連続性を確保し、屋上にビオトープのある人工大地をつくる 提案をした。 愛知万博グローバルループ:地球上の生き物は みんな仲間であるというコンセプトを表している。 -4- 金門旅客船ターミナルの環境システム:ターミナルの屋上と各階のテラスはすべてビオ トープとして苛酷な環境を和らげ、安全な渡り鳥の中継基地にもなることを意図した。 われわれは、非常に大きな代償を払って学んだ。自 然に力ずくで対応する巨大土木技術が時には非常に 無力であることを。このことは大震災以降も大規模な土 砂崩れなどの事例が教えてくれている。同時にコミュ ニティの大切さ、人と人とのつながりの大切さも同時に 学んだ筈である。 金門旅客船ターミナルの外観:海外から入港する船にはまず ターミナルの屋上の緑豊かな空間が眼に入り、美しい台湾に 来たことを実感させる。 ベトナム・CAT BAエコアイランド計画:世界遺産ハロン湾に面する この島の建物の屋上はビオトープにすることを提案した。 -5- これからは自然を征服するのではなく、自然と共存し ていく新しい環境システムの構築が求められている。 そしてその環境を住民が自分たちの環境として守って いく新たなコミュニティの意識も醸成も喫緊の課題であ る。自然と人工環境との調和ある共存、たとえば里山 のような環境は不断の努力によってのみ持続されるも のであり、それを怠ったら瞬時にその微妙な環境のバ ランスは崩壊する。福島原発事故による帰宅困難区 域では野生動物がわがもの顔に走り回っている。普通 の農村でも人口減少が著しい農山村では野性のイノ シシ、サル、シカなどの被害をこうむっている。 人口が減少し、都市などの人工環境が維持できなく なって自然環境へ返っていく自然回帰の流れのしくみ の鍵は人工地盤にあると私は考えている。 人工地盤の上に自然エネルギーを活用したサス ティナブルなコンパクトシティを作り上げてそこで生活 をする。一方大地は自然に開放して、先住民であるさ まざまな動植物の豊かな生息環境に戻していく。不必 要に人工環境で覆われた地表面を剥がして自然に戻 していく。その仕組みをきちんと作り上げれば、人間の 生活領域と動物たちの生息領域を棲み分けることが できよう。力づくではない柔らかなインフラの想像であ る。 わたしはまずこのモデルを東日本大震災の被災地 の復興の中で作り上げるべきであると考えている。そ れが、多くの犠牲を出した被災地へのささやかな償い となるのではないかと。 シリーズ連載 ビオトープのいきものたち -その㻞㻝-㻌 震災後の湿地に渡来した鳥たち 㻌 前回に引き続き被災地の生物の状況について、鳥類を 中心に報告します。私のフィールドは仙台空港の東側に あり、震災前は防潮林とヨシ原、それにビニールハウスの 立並ぶ畑地がありました。海までの距離は防潮林、砂浜を はさんで㻡㻜㻜m程度、北側には名取川河口に続く広浦とよ ばれる潟湖があり、その間にはヨシ原広がっています。今 から㻞㻜年程前の平成㻟年頃から、その場所の鳥を見始め ました。平成㻣年からは鳥見(バードウオッチング)を本業 (自然環境調査業)にしてしまったこともあり、(休日を使っ てまで)鳥を見に行くことはなくなっていました。そして、平 成㻞㻟年㻟月㻝㻝日の震災を迎えました。震災後は被災地の 過去の調査データなどが求められましたが、一部の場所 を除いて調査、記録されていないのが実情です。そのよう ななか、確認種名と個体数だけですが、記録として残して いましたので、鳥類の記録を取ることを考えました。ただ、 震災直後は立ち入り規制もあり、現地に入ることがためら われました。震災後初めて入ったのが平成㻞㻟年㻢月で、そ の後定期的に入るようになったのは㻥月からです。最低で も月に㻝回は行くようにしていて、今年(平成㻞㻢年)㻝㻝月ま でに延べ㻡㻢回行っています。震災前については平成㻟年 から平成㻝㻝年で延べ㻣㻢回行っていました。㻌 震災前の環境はヨシハラとクロマツの防潮林、水辺の近 くとは思えないような落葉広葉樹の高木林もあり、また、人 もほとんど立入らないため、なかなか良い環境でした。そ の場所が津波により一変しました。クロマツや広葉樹の高 木林はそのほとんどはなぎ倒され、見通しがきくようになり ました。また、ビニールハウスのあった畑地は地盤沈下と 排水機場が破壊されたことにより、湿地化しました。被災 地の状況を考えれば不謹慎な話ですが、それはそれで 良好な湿地環境となりました。ただ、良好な湿地環境は長 く続く事はなく、復興事業により徐々に元の畑地には戻っ ていくのですが・・・、その状況は前回㻺㼛㻚㻟㻠(平成㻞㻢年㻤月 発行)を参照してください。㻌 確認した鳥類については、震災前には㻤㻤種、震災後は 平成㻞㻢年㻝㻝月現在でちょうど㻝㻜㻜種で、震災前後を併せ た総確認種数は㻝㻞㻠種となっています。震災後見られなく なった種は㻝㻡種、震災後新たに確認された種は㻞㻣種あり ました。種数だけをみると、震災により鳥類にとって良い環 境が増えたようにもみえますが、新しく確認された種のうち ではヨシガモ、ハシビロガモ、スズガモ等カモ類が㻤種、カ ンムリカイツブリ、ハジロカイツブリのカイツブリ類㻞種と、い ままで見えなかった(見ていなかった潟湖の湖面を利用し ている)種や、全国的に分布拡大しているカワウやミヤマ ガラスの㻞種も含まれていて、一概にいうことはできませ 㻺㻼㻻法人日本ビオトープ協会理事㻌 北海道・東北地区委員長㻌 主席ビオトープアドバイザー㻌 株式会社 エコリス 代表取締役 佐竹 一秀㻌 ん。ただ、一時的にできた湿地でソリハシシギ、キョウジョ シギ、セイタカシギ等のシギチドリ類の利用はありました し、草地環境を好むセッカやヒバリは明らかに個体数を 増やしています。一方で、防潮林が消滅したことで、樹 林性の鳥アオゲラ、ヤマガラ、ヒガラ、キクイタダキは全く 確認できていません。ショドウツバメ、ノビタキ、ノゴマ 等、渡りの途中で立寄ったと思われる種については、震 災後でも確認されています。今後も継続して鳥を見るこ とで、震災後の環境の変化と併せて、いろいろなことが 見いだせるような気がしています。㻌 -6- 平成㻞㻟年㻢月㻝㻞日 地盤盤沈下し湿地化した 畑地(ビニールハウスの 残骸) 平成㻞㻢年㻡月㻞㻠日 倒伏した防潮林が撤去 された跡の草地 中央奥が広浦の潟湖 平成㻞㻟年㻝㻝月㻝㻟日 コブハクチョウ確認! 奥の建物は仙台空港の ターミナル た。ただ元は1家族群ですので、遺伝子の交流もなく、 近年は新たな雛が生まれておらず平成20年には10羽程 度まで減少したとの報告があります。また、標識調査に よりウトナイ湖と北浦や霞ヶ浦間の渡りも確認されていま す。原産地の個体群も、冬季には南に渡るので、日本 でも渡りを行なうのは本能なのでしょうか…。当地での確 認も平成23年11月~平成24年1月、4~5月、9月~平成 25年1月、そして昨年(平成25年)12月となっています。こ れを見ると秋季から冬季にかけて出現していますので、 もしかしてウトナイ湖から茨城まで渡らずに、途中の仙台 に越冬場所を変えたのかも知れません…。 ハシビロガモ <オオハクチョウとコハクチョウの識別点> くちばし基部の黄色の部分が多く、黄色部の先端がとがっている のがオオハクチョウ カンムリカイツブリ コハクチョウ オオハクチョウ ソリハシシギ コブハクチョウ 次は湿地に現れたコブハクチョウについて話します。 震災の年(平成23年)の11月に、地盤沈下により新たに できた大きな水たまりに、1羽のコブハクチョウがいまし た。コブハクチョウはヨーロッパ西部,中央アジア,モン ゴル,シベリア南部が原産地です。ですので、外来種と いうことになります。宮城県でも時々記録されています し、大きな公園の池などに放し飼いにされていて、餌付 けされている場所も多くあります。嘴はオレンジ色がかっ た赤色で,その基部に和名の由来となっている黒色のこ ぶがあります。秋に渡ってくるオオハクチョウやコハクチョ ウとは、くちばしの色や形で簡単に見分けることができま す。今回の個体もどこかの公園から飛んできた(逃げて きた:籠ぬけ(かごぬけ)という言い方もします)ものらしく 人なれしていて、コンパクトカメラでも撮影できるくらいの 距離まで近寄ってくれました。公園等に放し飼いにされ る場合は、飛んで逃げられないように羽(翼の初列風切 り羽(しょれつかざきりばね))を切ります。ただ、羽は生 えかわりますので、そのまま放し飼いを続けると、飛ぶこ とも可能になります。また、日本国内でも十分繁殖できま すので、そこで生まれた雛も、成長すれば当然飛ぶこと ができます。そのため、各地で野生化した個体も見られ ます。昭和50年に函館市の大沼公園に1つがいのコブ ハクチョウが放されました。翌昭和51年には繁殖して8羽 の雛が生まれ、合計10羽となりました。翌年の昭和52年 に大沼公園から北東側約120kmにあるウトナイ湖に7羽 が移動し、翌昭和53年からそこで繁殖するようになりまし た。その後も数を増やし昭和62年には70羽になりまし 下の写真は、セイタカシギという鳥です。足が赤くて 長く(写真では水深があるので長いようには見えません が)スマートで、高貴さを感じさせる鳥です。平成25年4 月下旬から5月上旬にかけて、飛来しました。東京湾岸 では繁殖しているようですが、宮城県では渡来数の少な い鳥です。水面に映っていますが、これを「水鏡」(すい きょう・みずかがみ)と言います。「水鏡」にはもう少し深い 意味があり、水がありのままに物の姿を映すように、物事 を比較・観察してその本質を見抜き、人の模範となるこ と、あるいは、そのような人の事を言うようです。皆さんは この写真を見てどうですか。何か見えましたか? セイタカシギ (H25.5.5) (写真は上下逆です。上に映っているセイタカシギは虚像、下に映ってい るセイタカシギが実物です。) -7- 会員投稿 ビオトープ形成に関する提案事業の実例 㻙㻺㻼㻻法人自然環境ネットワーク ・射水市ビオトープ協会の活動㻙㻌 始めに 㻢年前広島市で開催されたビオトープアドバイザー認 定試験研修会に参加し、江田島(広島市)の古鷹山ビオ トープを見学するとともに、ビオトープの計画書・提案書の 書き方などを学びました。この古鷹山ビオトープは、㻺㻼㻻 法人日本ビオトープ協会会員企業の提案事業として、広 島市に採択され造成されたと聞きました。その時、いつか は、自分の住む射水市においてもこのようなビオトープを 造成したいと考えました。 提案事業 射水市は、富山県の中央に位置する人口約㻥万㻡㻘㻜㻜㻜 人の市です。原生的な自然は、ほとんどなく里山・里地・ 里海地域が多いまちです。 射水市には、公募提案型市民協働事業の制度があり、 平成㻞㻡年に応募提案し、採択され㻟ヵ年事業として取り組 んでいます。提案事業の名称は、「生物多様性保存型里 山ビオトープの形成に関する事業」です(提案書の概要 は、別に掲載します)。これは、射水市の丘陵里山地域に おいて池を中心とした生物多様性豊かなビオトープを形 成し、次の事業を行う事を目的としています。 ◇ 生物多様性・生態系の理念の啓発・普及㻌 ◇ 地域在来生物の保護・保存㻌 ◇ 自然にふれあう活動を通し子どもの健全育成を図る㻌 ◇ 社会教育・生涯学習の場を提供する㻌 ◇ 交流人口の増加を図り、人と自然が共生できるまち づくりの推進を図る㻌 ◇ その他 池の造成 ビオトープ池の設計は、㻺㻼㻻法人日本ビオトープ協会 の副会長の久郷愼治氏と協議し、施工は㈱久郷一樹園 に委託した。 森の中の沢にできた水たまり(㻟週間くらい雨が降らな いと水が枯れてしまう)の場所に池を掘り、年中水を湛え るビオトープ池を造成した。 池のコンセプト ◇ 多自然型池…生物が棲みやすい池 㻌 㻌 ・餌の確保・産卵場の確保㻌 㻌 㻌 ・水の流量の確保・水質の確保㻌 㻌 㻌 ・天敵からの保護・避難場所の確保 ◇ コンクリートを使用せず、粗朶・木杭・自然石等を使 用 ◇ 水深㻠㻜cm程度…子どもが入っても安心 㻺㻼㻻法人日本ビオトープ協会個人会員㻌 ・ビオトープアドバイザー㻌 㻺㻼㻻法人 自然環境ネットワーク㻌 ・射水市ビオトープ協会 理事長 岡田 一雄㻌 池の周辺整備 㻌 池の周辺は、侵入してきた竹の繁殖が目立ち広葉樹 等が減少し、生物多様性が劣化していた。㻌 㻌 周辺の竹を千本以上伐採し、跡地に広葉樹を中心に 約㻝㻢㻜本植栽した。植栽した樹木は、園芸種は極力避 け、地域在来種を選んだ。㻌 㻌 クヌギ、エノキ、ハンノキ、コナラ、ソヨ ゴ、ユズリハ、ガマズミ、ナワシログミ、タ ニウツキ、ヤマツツジ、アセビ、クサソテ ツ、シャガ、ショウブ、アヤメ、カラスザン ショウなどの昆虫の食草・食樹を重点的に植栽し、昆虫 等の呼び込みを図った。 伐採した竹資源の有効利用 枕木と竹チップを利用してカブトムシの繁殖施設を 作った。1年目に竹チップが堆肥化し、周辺に生息して いるカブトムシが産卵に訪れ、現在数百匹の幼虫が生 息している。 池や周辺に現れた生き物 植栽した食草には、チョウが産卵し幼虫が現れ、アキ アカネなどのトンボが池に産卵した。㻞月には、池の中で ヤマアカガエルが産卵し、排水路では、ツチガエルが産 卵した。㻡月には、池の上の枝で産卵し㻞㻤個の卵塊が確 認できた。また、クロサンショウウオの幼生も多数確認で きた。こうして、地域在来生物の保全という目標の第一歩 を踏み出すことができた。 モリアオガエルの 卵塊 クロサンショウウオ の幼生 チョウの幼虫 トンボの産卵 ツチガエルの卵塊 木杭 自然石 着工前 完成した池 -8- 粗朶 ビオトープの活用に関する事業 ◇ ビオトープ池の観察会の開催 㻌 これまでに見学して頂いた主な団体 ・射水市橋下条コミュニティセンター・太閤山コミュ㻌 ニティセンターふるさと親子自然体験教室 ・射水市シルバー人材センターわんぱく体験教室 ・射水市市民環境講座 ・射水まちづくり大学の事例発表 ・社会福祉施設小さなしあわせの家の自然ふれあ㻌 い活動 ・ビオトープアドバイザー試験認定研修の事例見学 ・その他多くの団体・個人の方に見学して頂きまし た。㻌 ◇ 自然環境セミナーの開催 これまでに学識経験者や地域で自然保護活動にかか わっている方を講師に招き、当協会主催で 㻣回のセミ ナーを開催しました。㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 終わりに 平成㻞㻣年㻟月には北陸新幹線が開通し、東京から富 山まで㻞時間㻤分の所要時間となり、首都圏を始め日本 各地から富山への交通の便も格段に良くなります。 㻌 射水丘陵はじめ富山県には、身近な自然の良さが数 多く残されています。皆様の来県を心よりお待ちしており ます。 㻌 㻨㻞㻜㻝㻠年度の事業は、射水市の他に、一般財団法人セブン イレブン記念財団と富山県県民税「水と緑の森づくり税」から の助成を受けています〉㻌 提案書の概要㻌 ◇ 事業の名称㻌 生物多様性保存型里山ビオトープの形成に関する事業㻌 ◇ 事業の目的㻌 地球的規模で進行する生物多様性・生態系の破壊に対応す るために、㻞㻜㻝㻜年に名古屋市で開催された生物多様性条約 第㻝㻜回締約国会議(㻯㻻㻼㻝㻜)において日本から提案された 㻿㻭㼀㻻㼅㻭㻹㻭イニシアティブが採択され「サトヤマ」が「サムラ イ」や「ジュードー」等と同じように国際語になった。『地球規模 で考え・地域規模で行動する』をモットーにし、原生的自然 は、少ないが、里山地域は多くある射水市において生物多様 性・生態系の理念を啓発し、地域在来の動植物の保存を図る とともに過密化や老齢化の進行による里山衰退を防ぎ地域の 活性化を図る。㻌 ◇ 事業内容㻌 ・対象㻌 㻌 射水市内の里山地域㻌 青井谷の西谷地区周辺㻌 㻌 旧射水市交流セミナーハウス周辺・この地区には㻡世帯の住 宅があったが、平成㻞㻢年㻟月に最後の住人が移転し、現在は 無人となっている。耕作放棄、あるいは休耕されている農地も 多く、外来植物のセイタカワダチソウ等が繁茂し里山としての 生物多様性がうしなわれつつある。㻌 この地域において全市民を対象にした事業を行う。㻌 ・手法㻌 生物多様性保存型の池を中心とする里山ビオトープを形成し、 その維持管理に関する事業を通し、ホタルやモリアオガエル・ サンショウウオ等の在来生物の保存を図るとともに、そのビオ トープを中核として生物・自然とふれあう事業を行い、子どもの 健全育成を図り、社会教育の推進を図る。㻌 ・目標㻌 生態系・生物多様性の理念の普及を図り、年間㻝㻘㻜㻜㻜人の参 加を目標とし、地域の交流人口を増加し地域の活性化と人と 自然が共生できるまちづくりに寄与することを目標とする。㻌 ◇ 協働事業として取り組むことの必要性㻌 生物多様性基本法(平成㻞㻜年㻢月施行)では、『都道府県及び 市町村は(中略)生物の多様性の保全及び(生物資源の)持 続可能な利用に関する基本的な計画(生物多様性地域戦略) を定めるよう努めなければならない』と規定されています。(第 㻝㻟条)。努力規定ではありますが、石川県や魚津市等におい ては、すてに策定され富山県も検討会を発足させています。㻌 私達の会は、長年にわたり、自然環境の調査・観察・研究など の事業を行ってきましたが、この事業こそ協働事業として取り 組む意義があるものと考えます。 ◇ 役割分担㻌 (提案団体が果たす役割)㻌 ビオトープの維持管理作業、地域特有の生物の収集保存調 査活動、ビオトープを活用した市民等への啓発活動㻌 (事業実施に伴う市の役割)㻌 ビオトープ形成に関する指導・助言及び財政的支援㻌 ◇ 事業スケジュール㻌 㻢月下旬㻌 㻌 基本設計を㻺㻼㻻法人日本ビオトープ協会に委託㻌 㻣月㻝㻜日~㻞㻜日㻌 㻌㻌㻌㻌ビオトープ池の造成工事㻺㻼㻻法人日本ビオトープ協会の 指導のもと施工できる業者に委託㻌 㻣月㻞㻝日~㻝㻝月㻟㻜日㻌 地域在来の動物・植物の呼込み及び移植㻌 㻌 ※会員をはじめ広く市民の参加を呼びかけて継続的に実 施する㻌 ◇ 準備期間㻌 㻌 平成㻞㻡年㻝月~㻢月㻌 㻺㻼㻻法人日本ビオトープ協会とビオトープの基本構想の協議 平成㻞㻜年㻤月~平成㻞㻡年㻡月まで周辺地域の生物(特に両生 類および昆虫)の調査㻌 ※事業終了後も引き続き実施する㻌 ◇ 事業の評価のポイント㻌 何人がビオトープ形成活動に参加するか、何人がビオトープ を利用した活動に参加するかという点及び、本来その地域に 生息していた生物がどれだけ保存されるかという点㻌 評価のスケジュールは、毎年と㻝㻜年~㻞㻜年後という㻞つの観点 で行う。㻌 ◇ 事業効果㻌 (事業に取り組み、市民がどのような効果を受けるか。)㻌 市民参加型の自然保護活動・自然観察の会・ビオトープ教 室・講座・講演会などを連続的に開催することにより、子どもの 健全育成・社会教育の推進を図る機会が提供され、人と自然 が共生できるまちづくりの一端を担える。㻌 ◇ 事業展開㻌 (協働事業終了後の事業展開)㻌 この事業は、一旦形成すれば、終わりではなく継続した維持 管理作業が必要であり、継続のためには、次世代へのバトン タッチも必要であり多くの人に参加してもらえるよう努力する。㻌 年次ごとに第Ⅱ期・第Ⅲ期事業を行いより充実したビオトープ に拡充する。㻌 -9- 会員投稿 ビオトープによるコミュニティづくり 㻌 私の本業(主な業務)は建築の企画・設計及び工事監 理です。概ね㻞㻜年の間、東京と静岡で組織設計事務所に 勤務し、数多の開発や建築の工事に携わってきました。 その後独立し、早や㻝㻜年近くの歳月が経とうとしていま す。㻌 㻌 本来、自然環境はあるがままに調和しているものであり、 無暗に乱してはならないのが当然です。やむを得ず人間 がその活動において手を入れなければならない場合に は、周囲の自然とバランスのとれた共生環境を整備すべ きであり、せめて影響を与えた分について代償するのが 道理というものだと思います。その道理を無視して身勝手 な開発などを推し進めれば様々な生物が棲む場所を奪 われ、生態系のバランスが失われ、いつしかその影響は 人間自身に及ぶことも私たちは十分承知しているはずで す。しかしながら、私のキャリアにおいてもそうであったよう に人間活動の多くは経済性や効率が優先されて、人間中 心の論理が圧倒的な勢力を持ってそうした当たり前の常 識を押し流してきたのが現実です。…少なくとも近年まで は。㻌 この数年で、やはり東日本大震災の影響もあるのでしょ うか…。少しずつですが世界各地で劇的とは言えないま でも明らかな変化が起きているように感じています。エコロ ジーやエシカルといった概念が人々の欲望に影響を与え 始め、企業の義務的な㻯㻿㻾活動は経営戦略としての㻯㻿㼂 に遷移して、経済と環境や自己利益と社会的な共有価値 といったものが同じテーブルの上で議論されるようになっ てきたと思います。別な言いかたをすれば、地球温暖化 やそれに伴う気候変動、多発深刻化する自然災害、さら には水不足や食糧自給、エネルギー問題、世界同時多 発的な不況、地域間の格差…等々、人類共通の社会的 な課題について個人や企業が今まで以上に「持続可能な 自 己 自 身」(私 はこれ を「サ スティ ナ ブル・アイデ ン ティ ティ」と呼びたい)を意識するようになり、コミュニティにお ける帰属意識の高まりが重要視されてきているような気が します。何故このような流れが生じて来ているのでしょう か?その問いに対して私は、生物として私たち人間が元 来持っている「種の保存」についての防衛本能のようなも のがあって、私たちを取り巻く現代の様々な危機感に対し てそれが反応する無意識なコモンセンスとして、そうした 意識が必然的に発生してきているのでは無いだろうかと 考えています。この「サスティナブル・アイデンティティ」 (以下「㻿㻵」)という概念は、人類という高度な集団的生物に ある意味で特有な意識であり、個々における変化や進化 で問題を防御、解決するのではなく、帰属するコミュニティ 意識の高まりの中で自己を守ろうとする本能作用があるの では無いかと想像しています。また、誤解を恐れずに言え ば、私たち日本人を含む先進国において個人が自らの幸 福や安定を実現しようとするとき、単に自身の地位や財産 㻺㻼㻻法人日本ビオトープ協会個人会員㻌 ・主席ビオトープアドバイザー㻌 ㈱ 永田デザイン一級建築士事務所 㻌代表取締役 永田 章人 㻌 の充実を追及しても満たされない何かがあって、常に飢 餓感や喪失感を内包しているのが現代人の特徴ではな いでしょうか?例えば㻿㻺㻿やボランティア活動などにより、 多くの人がオルタナティブで本来的な幸福感を感じるの は、そうした内的ハングリー精神の表出なのではないかと 私は思っています。「繋がる」ことで安心する気持ちや「繋 がり」の中で自己を実現しようとする壮絶な欲求が、現代 の私たちの中には間違いなく存在していると感じます。こ のように「㻿㻵」という概念は、外的な集団的環境属性と内的 な自己同一性が表裏一体となってコンテンポラリーな構 成を成しているのではないかというのが、私の勝手な考え です。 話が大分長くなりましたが、日本ビオトープ協会におけ る自然共生環境の創出・復元の理念や里山保全、環境 教育など一連の活動も、根源的に「㻿㻵」と密接な「繋がり」 があるように思います。勿論、ビオトープづくりには様々な 意義があるのは言うまでもありませんが、「㻿㻵」の観点から ビオトープを眺めると新たな価値や役割が見えてくるよう な気がします。結論から言うと、「自己が帰属するコミュニ ティにおけるビオトープは自らの持続性をもたらしてくれ る」、ということです。裏を返せば、かなり荒っぽい言い方 になりますが、破綻した自然共生環境にあるコミュニティ に属することは自らの持続性を否定することにつながる恐 れがあるということです。ビオトープを単なる自然回帰や 環境保全の為のツールとして機能させるのではなく、人 の暮らしの基盤としてのプラットフォームとして捉えれば、 その存在意義が少し違って見えてくると思います。仮に 地球規模での破壊の連鎖があるとしても、一方で小さなコ ミュニティにおける健全な環境の復元・創出を止むことな く推進することで自然本来の力とのシナジーが生まれ、再 び調和する方向に向かう波紋が拡散していくのでは無い でしょうか?表題に掲げた『ビオトープによるコミュニティ づく り』と は「㻿I」における人の暮 らしの インフラストラク チャーづくりという意味です。ビオトープはある意味でイン フラエンジンとして機能するべきものであると私は考えて います。自然と共生するバランスのとれた環境を整備して そこに暮し、負荷の少ない生活の「しくみ」をつくることが、 ビオトープづくりの中長期的な視野で俯瞰した目標の一 つであると言っても良いかも知れません。外的な危機感 に晒される環境の中で内的に自己を喪失している現代の 私たちにとって、人の暮らしの基盤としてビオトープをつく ることが、持続する自己自身を実現することに繋がってい るのだと私は思っています。 㻌 -10- から一歩を踏み出すのは、他の生物同様容易なことで は無いと思われます。その越えがたいハードルを乗り越 えるためにも、私たち協会の活動を推進する人材がお 手本となるモデルケースを示さなければならないのでは と自戒の念を新たにしています。 ちょっと大袈裟ですが、その決意を表明するために、 私の関係する現在進行中のエコヴィレッジプロジェクトを 最後にご紹介したいと思います。静岡県内の東部地域 に存する丘陵地に約10万平方メートルの敷地があり、民 間による開発計画ですが、地元行政の賛同を得て県の 「内陸フロンティア推進区域」にも指定を受けています。 「農住一体」となった住宅分譲地と地産地消マーケット やレストラン、物販店舗の他、子育てと高齢者支援を行 う住民共用施設を設け、地域エネルギーシステムの構 築等多様な価値を内包した自立した持続可能な居住エ リアづくりを目指しています。「SI」的な人の暮らしの基盤 とするべく、コンクリートを極力使用しない地形を生かし た自然造成を行い、傾斜の急な部分は残置山林とし、 開発上必要となる雨水調整施設を水田やビオトープとし て利用することを検討しています。また、設備重視のエ ネルギーシステムではなく、基本的に環境負荷の少な い、省エネ性能を確保したパッシブな住居・施設を建築 して、それらの運用及び交通手段等を含む住民の生活 全般にわたる低エネルギー消費生活運用プログラムに よるネガワット施設とする方針です。さらに、エコであり続 けるために「働く村」をコンセプトに掲げ、直売所の収益 や節電所の余剰益でヴィレッジ内の維持管理を行い、 「村民」自身の日常生活がそのまま防耐災となる「しく み」をデザインして行きたいと考えています。この計画に おける重要なポイントの一つには、農地や山林等の生 物多様性を確保した空間を、周囲の既存自然と共生す る環境として、人の手により積極的に創り出し、そこにか つての農村集落のような人の暮らしの基盤を現代的に 整備することにあります。人間中心の論理を抑制、制御 して「人の暮らしの基盤を創る」。そうすることでヴィレッ ジ全体が人間を含む様々な生物の為の大きなビオトー プとなり「持続可能な自己自身」をもたらしてくれるコミュ ニティ環境整備が実現できると確信しています。新たな 時代が到来しつつあるこの時に、私自身がビオトープア ドバイザーとしての役割をしっかりと果たして行きたいと 願っています。 近年、スマートシティという言葉が流行って各地に新 たなコミュニティが作られ始めています。最新のテクノロ ジーをふんだんに盛り込み、持続可能で地球環境に負 荷をかけない環境づくりを目指していると言われていま す。確かに日本の産業構造に変革・発展をもたらし、私 たちの暮らしにおける様々なリスクをヘッジする仕組み づくりであるといえるかも知れません。こうした流れも国家 の将来には重要な位置づけであると私も思っています。 しかし穿った見方をすれば、様々なハイテク設備を駆使 して人間活動の持続性を高めようという意図には、本質 的に相変わらずの人間中心の論理が見え隠れしている ようにも思えます。設備偏重であることはそれ自体のライ フサイクルにおいてスマートであるとは言い難いですし、 便利で安心な暮らしも、時の経過とともに環境にも住ま い手にも少なからぬ負荷を強いることになりそうです。ま た、生物多様性に配慮した住環境を売りにしているケー スもありますが、見た目重視の限られた植栽や住民の手 を極力煩わせない委託管理された公園等を整備してい るものがほとんどのようです。私はこのような方法論では 「SI」の観点から眺めた場合の「人の暮らしの基盤づくり」 というものからベクトルが大分ずれてしまっているように 感じずにはいられません。 私自身、先述の通り長きに渡り、多くの開発や建築の プロジェクトに従事してきましたが、その過程においても 反省すべきものが沢山あります。例えば大規模な集合 住宅の開発で、当時としては稀にみる充実した内容の 中庭のある案件があり、単に住戸を販売するのではなく 住環境を売るコンセプトでデザインされ、実際に高い評 価を受け良好な分譲実績となりました。完成後10年以上 の歳月が経過しましたが、いまだに中古物件が出てもす ぐに買い手がつくと聞いています。防犯上の理由等で現 況写真などを掲載することができず残念ですが、中庭に は実に多種多様な植栽が施され、ビオガーデンもありま す。樹木もすっかり伸び茂っていますが、非常に良く管 理されていてちょっと他の分譲集合住宅には無いような 雰囲気です。ただ、落葉樹は落ち葉の問題もあるので しょう、幾つかあるシンボリックな高木は全て気の毒なほ ど切り詰められてしまいました。ビオガーデンも元々景観 重視のアクセサリー的な設定であった為か手入れこそ完 璧ですが、生物のハビタットとは言い難いものとなってい ます。出来た当時は恥ずかしながら良いものを創ったと 自負していましたが、今となってはやはり人間目線で作 られた人工的な環境にすぎず、子どもの遊び場や住民 のイベント等にスペースを上手に活用されているもの の、「SI」としてのコミュニティを形成するには至っていな いようです。然しながら、その充実したスペースを活かし てコミュニティづくりの為の「しくみ」を運用していくことが 出来れば、「SI的な人の暮らしの基盤」として進化する可 能性は十分あると思います。その際にキーワードとなる のは、完全に管理された環境から「住民自身による環境 づくり」を行える「しくみづくり」です。ビオトープづくりはそ の一助として有効なアイテムとなり、既存のビオガーデン を住民が育て、維持管理することでコミュニティの形成基 盤に発展させることが期待されるところです。ただ、現実 は悲観的で、一度管理された環境で暮らす人間がそこ 現在計画が進行中のエコヴィレッジプロジェクトイメージ模型 -11- 協会活動状況:各地区㻌 各地区委員会㻌 活動状況㻌 全国㻤地区の地区委員会では、その土地に応じた様々な活動を活発に行っております。㻌 今号では今年度の活動報告や計画等についてお知らせいたします。㻌 ………………………………………………………………………………………………………………………………………… 北海道・東北地区活動報告・計画 委員長㻌 佐竹 一秀 (株式会社 エコリス)㻌 1.「緑のカーテンプロジェクトいわて」支援㻌 㻌 㻌 㻟㻚㻝㻝三陸大津波の平成㻞㻟年に、㻶㻭㼄㻭の宇宙を旅したアサガオ㻞代目 種子の提供を受け、被災地仮設住宅を主として緑のカーテンを設置し て㻠年目の活動となった。㻌 従来の仮設住宅から、本年度初めて「復興公営住宅団地」に提供し た。また公共施設㻟か所にも設置して広く住民に啓蒙することとし新たな 展開を図った。㻌 ◇仮設住宅団地(釜石市・大槌町・陸前高田市・野田村)㻝㻜団地㻌 ◇復興公営住宅団地(大槌)㻝団地㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 対象住宅数㻌 㻢㻠㻢戸㻌 㻌 㻌 ◇公共施設(釜石市立鵜住居小学校・同鵜住居幼稚園・同民俗資 料館)㻟施設㻌 (協力団体等:㻺㻼㻻法人緑のカーテン応援団・岩手県立大学総合政策部㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ・あさがおネットワーク釜石・遠野まごころネット大槌・小岩井農場)㻌 2.三陸大津波被災地における「ミズアオイ再生」プロジェクト支援㻌 㻌 ・鵜住居被災場所から種子採取保護地への播種・育成・保護活動㻌 緑のカーテンプロジェクト㻌 㻌 ・鵜住居河川の河岸攪乱による自然発生試験㻌 㻌 釜石市立鵜住居幼稚園㻌 㻌 ・釜石民俗資料館における「ミズアオイ」展示と市民への啓蒙活動㻌 (同・写真提供)㻌 3.近自然フォーラム「再生可能エネルギー」開催(㻣月㻝㻞日盛岡)協賛㻌 㻌 㻺㻼㻻法人環境パートナーシップいわて主催、スイス近自然学研究所㻌 山脇正俊代表による講演とワーク ショップ「エネルギーヴェンデ㻖に向けた戦略」㻌 㻌 㻌 (㻖㻱㼚㼑㼞㼓㼕㼑㼣㼑㼚㼐㼑㻦化石燃料・原子力依存エネルギーから再生エネルギーへの大転換)㻌㻌 4.ビオトープ問い合わせに対し、現地視察と説明・提案 ・山形県米沢市ロータリークラブ㻌 㻌 㻢月㻞㻡日㻌 5.富山県ビオトープ協同組合一行、ビオトープ現地視察㻌 㻣月㻝㻣日 㻌 ・小岩井農場まきば園ビオトープ(「第㻡回顕彰審査委員長賞」野澤副会長対応)㻌 㻌 ・岩手県立大学調整池ビオトープ(「第㻠回ビオトープ大賞」平塚教授・辻准教授対応)㻌㻌 6.会員拡大㻌 㻌 㻞㻜㻝㻠年度個人会員入会㻌㻞名㻌 㻌 ○「海岸林再生フォーラム」の開催(ビオトープ協会後援)㻌 予定:㻞㻜㻝㻡年㻞月㻞㻝日㻝㻟時~、岩手県大槌町 三陸花ホテルはまぎく(旧 浪板観光ホテル)、㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 基調講演・鈴木邦雄代表顧問㻌 㻌 㻌 㻌 〈詳細決定後㼃㻱㻮に㼁㻼いたします〉㻌 ………………………………………………………………………………………………………………………………………… 関東地区活動報告・計画 委員長㻌 砂押 一成㻌 (株式会社 砂押園芸) 1.「ビオトープフォーラム㼕㼚㻌横浜㻞㻜㻝㻠」の運営㻌 盛会に終了㻌 㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌㻌 㻌 㻞㻜㻝㻠年㻡月㻟㻜日㻌 㻝㻟㻦㻜㻜~㻝㻢㻦㻠㻡㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 横浜ビジネスパーク㻌 ウエストタワー㻌 2.㻲㼍㼏㼑㼎㼛㼛㼗での情報発信㻌 㻌 㻌 ~「日本ビオトープ協会」で検索して下さい~㻌 3.自治会・学校ビオトーププロジェクト継続実施㻌 㻌 㻞㻜㻝㻠年㻠月 村松小ビオトープ ホタル放流会(東海村)㻌 㻌 㻞㻜㻝㻠年㻡月 長堀小㻠学年 ビオトープ学習会(ひたちなか市)㻌 㻌 㻞㻜㻝㻠年㻣月 常葉台ビオトープ ホタル観賞会(ひたちなか市) 4.他団体との情報連携強化㻌 5.「ホタル水路づくり研修会」(神奈川県伊勢原市)への協力 6.会員拡充 㻞㻜㻝㻠年度法人会員入会㻌 㻝社:株式会社地域環境計画(東京)㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌個人会員入会㻌 㻟名(㻮㻭研修会受講同時入会㻝名含む)㻌 ………………………………………………………………………………………………………………………………………… -12- 各地区委員会 活動状況 …………………………………………………………………………………………………………………………………………… 北陸・信越地区活動報告・計画 委員長 久郷 愼治 (株式会社 久郷一樹園) 1.富山県ビオトープ協同組合との東北地区先進地視察研修 7月17日(金)~7月19日(土) 参加者8名 復興状況の視察も兼ね、岩手県及宮城県のビオトープ先進地を訪問 2.射水市ビオトープ協会との実地研修会 「地域の生態系の保全について」 6月21日(土) 射水市青井谷地区ビオトープ 研修会 6月14日(土) 射水市金山小学校 ホタル観賞・研修会、講演会 〈詳細報告は協会WEB活動実績ページをご覧ください〉 3.富山県ビオトープ研究会との勉強会の開催 8月8日(金) ボルファートとやま 研修会、事例発表、講演会等 4.富山県ビオトープ研究会との近畿地区先進地視察研修 10月31日(金)~11月1日(土) 参加者10名 ヤンマーミュージアム屋上、ぼてじゃこの池、近江兄弟社村ビオトープ等 西川勝相談役、西川博章理事、他協力 5.「ビオトープアドバイザー(BA)認定試験研修会in富山」 11月13日(木)~15日(土) 会場:射水市大門総合会館 受講者:10名 (講師:p.15記載) 6.会員増強 2014年度個人会員入会5名(BA研修会受講同時入会) 近畿地区視察研修 BA認定試験研修会・富山 ………………………………………………………………………………………………………………………………………… 静岡地区活動報告・計画 委員長 藤浪 義之 (株式会社 藤浪造園) 1. 技術研修会 ・里地里山再生 静岡市清水区中町浄水場 場内維持管理 1月~ 2. 講演・講習・視察会 ・スキルアップ研修会 2014年10月25日 麻機遊水地1工区 魚類調査 参加者12名 麻機緑地の造成工事に伴い、㈱静環検査センター・大塚善弘先生のご指導 により、魚類の捕獲・同定を行った。 周辺環境も含めた視察となり、今後の造成による環境変化の経過を観察す る上で大変有意義な研修会となった。 3. 巴川流域麻機遊水地自然再生協議会 参画 4. 「支援学校 堆肥づくり」への協力 ・2014年11月27日 5. 「ホタル水路づくり研修会」(神奈川県伊勢原市)への協力 第6回:2014年10月24日 第7回:2014年11月28日 6.会員の拡大 魚類調査 堆肥づくり ……………………………………………………………………………………………………………………………………… 中部地区活動報告・計画 委員長 榎本 雅文 (太啓建設 株式会社) 1.中部ブロック会議開催 10月6日 会場:名鉄トヨタホテル 6F 御河 スキルアップ研修会 2.BAスキルアップ研修会 ビオトープの維持管理について 講師 主席ビオトープアドバイザー 日髙庸次氏 10月22日 会場:トヨテツの森 参加者:会員21名、豊田鉄工㈱4名 合計25名 3.持続可能な開発のための教育(ESD)に関するユネスコ世界会議 併催イベント・パネル展示 11月10~12日 会場:国際会議場 4.バイオフィット研究会合同研修会 スイス・ドイツ近自然工法・最新情報報告会 3月予定 5.会員募集 2014年度個人会員入会1名 国際会議場 パネル展示 ………………………………………………………………………………………………………………………………………… -13- 各地区委員会 活動状況 ………………………………………………………………………………………………………………………………………… 近畿地区活動報告・計画 委員長 西川 勝(近江花勝造園 株式会社) 1.ビオトープ研修会の実施 日時:2014年4月26日(土)10:00~12:00 会場:キタイ設計㈱ 会議室 講師: 滋賀ビオトープ研究会前副会長中村實氏 受講者:20名 2.研修会(講演会) 滋賀ビオトープ研究会と共催 近畿地区委員会・滋賀ビオトープ研究会合同研修会 日時:2014年11月24日(月)13:30~16:30 会場:滋賀県立男女共同参画センター(研修室A) 講演:演題「造園計画と生物環境~作庭記の歴史から考える」 講師:奈良女子大学名誉教授 近藤 公夫 先生 コメント:滋賀ビオトープ研究会会長・竺文彦氏(日ビ協会顧問) 参加者:33名 3.「水環境の防災の会」 震災地の教訓を受けて、又ビオトープが果たす役割について等 予定:2015年1月~3月 会場:自治会館 4.会員拡大 上・下:近畿地区研修会(講演会) ………………………………………………………………………………………………………………………………………… 中・四国地区活動報告・計画 委員長 梶岡 幹生 (株式会社カジオカL.A) 1.江田島古鷹山ビオトープ フォローアップ活動継続 ◇第1回古鷹山ビオトープにおける自然観察会と撫育管理 日時:2014年6月14日10:00~12:00 場所:江田島市古鷹山ビオトープ 参加者:23名 講師:神垣健司(トンボ、蝶)、清田康博(メダカ)、梶岡幹生(環境) ◇第2回古鷹山ビオトープにおける自然観察会 日時:2014年9月20日10:00~12:00 場所:江田島市古鷹山ビオトープ 参加者:24名 講師:神垣健司(昆虫、樹木)、野村公平(ビオトープ)、梶岡幹生(総合) 〈各詳細報告は協会WEB活動実績ページをご覧ください〉 2.ビオトープアドバイザー認定試験研修会in広島 月日:2014年10月3日(金)-5日(日) 場所:広島県中央森林公園 受講者:13名 (講師:p.15記載) 3.地区会員の情報交流 4.会員拡大 2014年度個人会員入会3名(BA研修会受講同時入会) 上・下:BA認定試験研修会・広島 ………………………………………………………………………………………………………………………………………… 九州地区活動報告・計画 委員長 田中 和紀 (株式会社 園田グリーンセンター) 1. 九州地区内のビオトープアドバイザーに研修会後の情報 発信・バックアップをしていく 2. ホタルを通してのふれあいビオトープ ホ タ ル・メ ダ カ 放 流、ホ タ ル が と び か う た め の 環 境 整 備 へ の 協 力 ひかり保育園、宮崎大学清武キャンパス構内・船塚2キャンパス構内 3.会員募集 ………………………………………………………………………………………………………………………………………… -14- 協会活動㻌 お知らせ・ご報告:事務局本部㻌 第㻣回ビオトープ顕彰(平成㻞㻢・㻞㻜㻝㻠年度募集)のお知らせ㻌 㻌 国内各地において、ビオトープつくりの取り組みを一層進めその啓蒙を図るために、㻌 㻌 毎年度、模範となる㻌 ビオトープを全国より募集、審査・選考し、優秀な取り組みを讃えて㻌 㻌 表彰を行なっています。㻌 今年度も皆様のご応募をお待ちしております。㻌 㻌 募集期間:~㻞㻜㻝㻡(平成㻞㻣)年㻟月㻝㻜日㻌 㻌 㻌 㻌 ※応募方法など詳細は協会㼃㻱㻮ページ(㼔㼠㼠㼜㻦㻛㻛㼣㼣㼣㻚㼎㼕㼛㼠㼛㼜㼑㻚㼓㼞㻚㼖㼜)㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 又はビオトープ顕彰ページ(㼔㼠㼠㼜㻦㻛㻛㼣㼣㼣㻚㼎㼕㼛㼠㼛㼜㼑㻚㼓㼞㻚㼖㼜㻛㼗㼑㼚㼟㼔㼛㼡㻛)をご覧ください。㻌 ビオトープアドバイザー認定試験研修会の実施㻌 ※写真等は各地区ページ(㻼㻚㻝㻠中四国、㻼㻚㻝㻟北陸信越)をご覧ください。㻌 「第㻟㻞回 ビオトープアドバイザー認定試験研修会 㻌 広島」 㻞㻜㻝㻠年㻝㻜月㻟日(金)~㻡日(日)㻌 会場:広島県中央森林公園㻌 㻌 㻌 㻌 㻌講師:上嶋英機先生、中越信和先生、鈴木邦雄先生、神垣健司先生、櫻井淳会長、梶岡幹生総務委員 長・中四国地区委員長(プログラム順等)㻌 「第㻟㻟回 ビオトープアドバイザー認定試験研修会 㻌 富山」 㻞㻜㻝㻠年㻝㻝月㻝㻟日(木)~㻝㻡日(土)㻌 㻌㻌㻌㻌会場:射水市大門総合会館㻌 㻌 視察:射水市野手地区のビオトープ池㻌 㻌 㻌講師:広瀬慎一先生、高橋剛一郎先生、鈴木邦雄先生、花島宏奈先生、岡田一雄先生、櫻井淳会長、㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 久郷愼治副会長・北陸信越地区委員長(プログラム順等)㻌 ホタル水路づくり研修会㻌 ご案内㻌 神奈川県の東京農業大学伊勢原農場にて、市民や学生が参加し、協会員・ビオトープアド バイザー(㻮㻭)の研修も行う「ホタル水路づくり」を開催中、皆様にはご協力をいただき誠に ありがとうございます。㻌 毎回実地で学べる良い機会、ぜひご参加ください。(ご案内は随時㼃㻱㻮ページに㼁㻼㻕㻌 ○大和ハウス工業株式会社従業員の皆様よりいただきましたご寄付(㻞㻜㻝㻟年度)と、東京農業大学様助成 金を、材料費等研修会費用に使わせていただいております。㻌 第㻝回㻌 㻟月㻝㻠日(金)現地・周囲の視察・環境調査、説明㻌 第㻞回㻌 㻠月㻞㻡日(金)測量、川沿い清掃、粗朶実習・説明㻌㻌 第㻟回㻌 㻡月㻞㻟日(金)粗朶護岸作業㻌㻌 第㻠回㻌 㻢月 㻢日(金)夜㻌 付近のホタル生息調査㻌㻨雨天中止㻪㻌 第㻡回㻌 㻣月㻝㻤日(金)粗朶護岸作業続き、上流部に小水路づくり㻌㻌 第㻢回 㻝㻜月㻞㻠日(金)河川整備、剪定作業等㻌 第㻣回 㻝㻝月㻞㻤日(金)ロープワーク講習、剪定・草刈作業等㻌 第㻤回㻌 㻞月㻞㻣日(金)下流部に水路づくり、周辺の生きものについて講義㻌 ~参加者募集中、協会㼃㻱㻮ページ(㼔㼠㼠㼜㻦㻛㻛㼣㼣㼣㻚㼎㼕㼛㼠㼛㼜㼑㻚㼓㼞㻚㼖㼜)をご覧ください~㻌 㻌 㻯㻿㻾推進企業とのコラボレート(協働)、学校支援等㻌 ◇第㻣回ホタルがすむ街づくり展㻞㻜㻝㻠㻌㻙自然・人・街が優しく調和する社会の実現に向けて㻙㻌 月日:㻞㻜㻝㻠年㻡月㻟㻝日(土)~㻝㻝月㻝㻠日(金)㻌 場所:横浜ビジネスパーク(㼅㻮㻼)(神奈川県)、他㻌 主催:野村不動産株式会社㻌 共催:横浜国立大学㻌 後援:横浜市環境創造局、保土ヶ谷区役所、㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 読売新聞横浜支局、㻺㻼㻻法人日本ビオトープ協会㻌 㻌 㻌 〈第㻣回環境を考えるシンポジウムを㻝㻞月㻠日に日本橋室町野村ビルで開催〉㻌 㻌 ◇小学校の総合学習にて木の授業㻌 㻌 㻌 日時:㻞㻜㻝㻠年㻝㻜月㻞㻥日(水)㻌 㻝㻜:㻝㻡~㻝㻞:㻝㻡㻌 㻌 㻌 対象:横浜市帷子小学校㻠年生㻌 㻌 㻌 講師:直木哲技術委員長(協会理事)、城石可奈子氏(法人会員)㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 (イビデングリーンテック株式会社、樹木医)㻌 㻌 㻌 内容:「木、林、森と人」 等についてパワーポイントを用い て説明後、イラストを用いて作成したわかりやすい 『樹木の健康診断調査票』を配布、皆で外の樹木を 実際に診断し、土壌改良を行った。㻌 -15- 㼅㻮㻼㻌 収穫祭、感謝状贈呈式㻌 総合学習・木の授業㻌 連載コラム 都市の虫たち 農学博士、元東京農業大学 認定NPO法人 自然環境復元協会理事 立川 周二 第1回 チョウ類 都市の昆虫を調べていると、生物の生活史における、基本的なことが理解できる。はじめに、都市の生物相の構 成が、他の環境とは異なることに気づかされる。都市下の生物は、人為的な影響を強く受け、強化された環境ストレ スに耐えた生物が、たくましく生き残っているのである。これはビオトープを新たに造成した際の空間にも似ている。 周囲からジワジワと浸透してくるのは、いわゆる普通種と呼ばれる、よく見かける個体数の多い種類である。これら は、ストレスに強い。次に、パイオニア等と呼ばれる移動性の種が移入して来る。ビオトープの初期における、種の数 は、増加の一途をたどるが、やがて増え方は鈍り、あるいは減少することもある。モニタリングでは、そのような生物相 と個体数の変化をとらえ、地域に調和した順応的な管理により、多様性を目指すことになる。 チョウ類はほどほどの大きさの昆虫で扱いやすい。また、よく解明されている昆虫群で、色彩斑紋の差が、種の相 違になるなど、モニタリングは比較的容易である。植生との結びつきが深く、チョウと食草の関係から、相対性が予測 できる。一方、チョウの訪花性は、庭園の楽しみの一つで、事例として個人の庭におけるバタフライガーデンが試み られている。草原と樹林を配置して、如何にハビタットをつなげるか、興味ある課題もある。 図1.ナガサキアゲハ♀:南方のチョウ で、以前は沖縄、九州、四国などに分布 していたが、現在は東京でもよく見られ る。栽培のミカン類を好む。雄はハネに 白色部がない。 図2.アゲハ:アゲハのうちでも,最も馴 染みの深いチョウである。 庭のサンショ ウやミカン類からも発生し、都市でも普 通に見られる。ツツジやヤブガラシから 吸蜜する。 図3.アオスジアゲハ:南方のチョウであ るが、分布を次第に北へ延ばしている。 幼虫はクスノキやタブノキの葉を食べ、 都会のまちなかでも、元気に飛びまわっ ている。みずみずしい色で人気がある。 図4.キタキチョウ:小形ではあるが、黄 色が目立つチョウである。ハギ類やネム ノキに幼虫がつく。本来、日当たりのよい 林縁や草地のチョウだが、都市部でも増 えて、よく見られるようになった。 図5.ツマキチョウ♂:春先に飛びまわ り、花に止まったときに、ハネの先端部 の特異な形や黄色に気づく。都市部で は一時、数を減らしたが、最近は河原な どで増えている。幼虫はアブラナ科の植 物を食べる。 図6.モンシロチョウ:最も普通なチョウ で、清楚な白い姿はなじみ深い。成虫は ほぼ周年見られ、幼虫はダイコンやキャ ベツなどのアブラナ科の植物を食べるア オムシで、畑の青虫として知られる。 図7.ベニシジミ:小形ながら、草原を活 発に飛びまわる、紅色が美しいチョウで ある。都市部でも見られるが、農村の環 境を代表するチョウである。幼虫は、スイ バやギシギシなどの葉を食べる。 図8.ヤマトシジミ:人為的な環境でも、最 も普通に見られる小形のチョウである。 かえって都市部で多く、モンシロチョウと 並んで、個体数を競う。幼虫は、路傍の カタバミで、たくましく生きる。 図9.ツマグロヒョウモン♀:分布が北方 に延びている代表的な種である。都市部 でも普通に見られるようになった。街中 では、幼虫が栽培のスミレ類を好み、路 傍や鉢植えのものまで食べる。 -16- 編集後記 東日本大震災を機に、人と人とが支えあう「地域コミュニティ」の重要性がクローズアップされ ました。一方、都市部においてはその関係性が希薄になっていることが問題視されています。 近年、ビオトープは、この地域コミュニティを活性化させるのに、きわめて有効な役割を果た してきました。それはビオトープの創出、維持管理において、人、地域、企業等が、世代や職 能を超えて平等に地域自然環境に向き合い、活動に関わることができる、そんな魅力があるか らでしょう。 更にビオトープはネットワークを構築することにより、その効能も価値も無限大に向上してい きます。これはまさにコミュニティにも共通する概念です。 人々が、生き物たちのコミュニティ空間である「ビオトープ」に想いを寄せ、その活動を通して 自身のコミュニティを再生、活性化することが出来るならば、ビオトープ人としてこんなにうれし い事はありません。 本号を通して、改めてビオトープの可能性を感じていただければ幸いです。 最後になりましたが本誌発行にあたり、ご多忙中にも関わらずご執筆下さいました先生方、 執筆者の皆様に心よりお礼申し上げます。 編集委員 若月 学 砂押 一成 他協力関係者 日本ビオトープ協会誌「ビオトープ」No.35 2015年(平成27年)1月31日発行 発 行 所 発行責任者 編 集 本部事務局 特定非営利活動法人 日本ビオトープ協会 櫻井 淳 (日本ビオトープ協会 会長) 協会 情報委員会・正副会長・本部事務局 〒170-0005 東京都豊島区南大塚2-6-7-101 TEL 03-6304-1650 FAX 03-6304-1651 E-Mail [email protected] URL http://www.biotope.gr.jp 会員、ビオトープアドバイザーからの投稿歓迎 ビオトープの研究、実践事例等、会員・ビオトープアドバイザーの投稿を 募集しています。投稿頂く場合は本部事務局までご一報下さい。 緑のカーテンプロジェクト (岩手県釜石市) 写真 釜石市立鵜住居幼稚園 提供 http://www.biotope.gr.jp NPO法人 日本ビオトープ協会