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大画面シネマの動向 昨年末の新聞発表で、「シネマサンシャイン池袋」
デジタルシネマ Now! 大画面シネマの動向 昨年末の新聞発表で、「シネマサンシャイン池袋」を運営する佐々木興行株式会社が高さ 18メートル・幅26メートルのフルスペック相当の600席IMAXシアターを含む「東 池袋1丁目新シネマコンプレックスプロジェクト(仮称) 」総座席数2,600席12スク リーンの構想が報じられた。このIMAXシアターには、IMAXがコダックから買い取 ったレーザー光源特許を使用したBARCO4Kプロジェクターが導入され、次世代IM AXで、かつ視野全体が画面となる巨大スクリーンによる上映が2017年から楽しめる こととなる。 欧米の映画興行業界でも、競合映画館との差別化をはかるために、立体音響や4Dライ ドシート等を含むプレミア大画面システム導入の動きが活発化しており、最新の動向とI MAXの現状について紹介する。図1は、世界の映画興行関連情報サイトであるセルロイ ドジャンキー (http://celluloidjunkie.com/ Posted by Patrick von Sychowski | October 31, 2014 1:28 am)に掲載された様々なプレミア大画面上映システム例である。情報解析大手の HIS テクノロジーが The market f or Premium Large Format (PLF) cinema”と題して発刊したレポート( Charlotte Jones 著) では実に72ものプライベートブランドプレミア大画面上映システムが最近開発され、IMAX に 対抗する新 市 場 を 形成しようとしていることが報告されている。 この大画面上映シス テムは、科学技術関連施設での40∼50分程 度のドキュメンタリー作品上映用と して存在していた市場(図6 ーンを改造する形で Giant Screen 参照)ではあるが、2009年以降に既設シネコンのスクリ Lie-MAX”( 米国の映画ファンサイトではフェイク IMAX としてこの呼称が定着して いる。)が大量に出現し、 Av atar の3D 上映で一挙に認知されたことが背景にある。ただし IMAX の ライセンス料と、上映 料金への加算もあり、中国でのライセンスフリ ー 巨幕電影 システムに代表され る よ う なシネコンチェーン独自の大画面上映システム開発が加速した背景がある。 2010 年度で は PLF が370スクリーンに対し て IMAX が 180スクリーンであったのに、 2014 年前半 にはプライベートブランド PLF が374スクリーンに達して、 IMAX の360スクリーンを超える普及率 となってきている。全世界で1,400スクリーンの大画面上映システム(含む IMAX)の54.3%がプ ライベートブランドの PLF システムになっていると報告されており、中国での の成長が著しくなっており、最近ドルビーが発表した Dolby Cinema 巨幕電影 や、中南米で System”等も、この新規市場拡大 を 睨 ん だ動きである。 米国の大手興行チェーン第3位である Cinemark 社は自社ブランド 照)を108スクリーン展開しており、第一位の Regal は 位の Carmike は XD 仕様の PLF システム(図4参 PRX を76スクリーン(図3参照)、第4 Big D を26スクリーン、そして第二位の AMC は ETX を13スクリーンと特別仕 様の6スクリーンをすでに展開している。Cinemark 社はアルゼンチン、 Brazil にも展開している。また、 ロシアでは、RealD 社が大画面3 D 上映システムとして XL システムを2台上映対応としたシステムをさら に PLF 対応とした Luxe” の展開を始めている。そして、中国独自開発の大画面上映システムと称して いる 巨幕電影 のスクリーンを展開している中国巨幕(China Film Giant Screen CFGS China Film Co. の子会社)はハリウッド映画の大画面上映向け変換および字幕制作、3D 変換に関する業務提携をデラッ クスと締結しており、 今後の中国国内 巨幕電影 で、いわば身内で あるデラックスが関与することでセ キュリティー面での心配無くハリウッド映画の配給を受け入れる体制ができたことになる。デラックスは、 3D 変換で現在世界最大規模となっている StereoD 社を子会社化しており、バーバンクのデラックスデジ タルスタジオのセキュ リティー完備の環境で中国市場向け大画面変換 ・字幕・3D変換も一括受託するこ と に な る。 ハリウッドの人材を 輩出している南カリフォルニア大学フィルムス クールの産学連携施設であるエンタ ーテインメントテクノロジーセンター( http://www.etcentric.org/)の April 17,2014 付けの記事では、ニュ ーヨークタイムスの記事を引用して IMAX の 競合相手出現 とする記事を掲載している。前述の映画興行 チェーンによるプライベートブランド PLF が325スクリーンに達しており、31%の興行収入増加で総 計237ミリオン$( 284億円:1ドル120円換算にて)を売り 上げたことを報じており、世界の映 画 興 行 市場上位2か国での PLF 市場動向は注目されるところである。 また、AMC経営陣 の Y onge & Dundas はインタビューに答えて、AMC のプライベート PLF である ETX は、通常のスクリーン に対して最前列とスクリーン間の距離を20% 離しており、11チャンネル5.7 KW デジタルサラウンド音響システムに加えて4 K 映像による上映である と話している。映画館の客席 稼働率(客席稼働率= 観客動員数÷(上映回数×総座席数))が15 ∼18%である映画興行の現実の中 で 、 3 1%の興行収入増加をもたらした PLF の集客効果は大きなインパクトであることは間違いない。 米国の映画興行について PLF スクリーンが発達した背景について考察を行ってみる。表1∼表4は、米 国を主体に した映画館情報サイト: シネマトレジャー( http://cinematreasures.org/) による集計結果であ る。表1は映画館の総 座席数別集計であり、千席未満の映画館が20 ,357館と米国の映画館の6割を 占めている。千席から 二千席未満の映画館が6,368館、二千席か ら三千席未満の映画館が1,302 館となり米国の映画館 の大半を占めていることになる。表2は、スク リーン数別の映画館数を示している が、いわゆる単館映画館は29,390 館となり、2スクリーン( Twin)が2,676館、3スクリーン (Triplex)が1,360館、4スクリーンのマルチプレックスが1,071館となっており、30スクリーン を超えるメガプレック スが12館となっている。20スクリーン以上 の巨大シネコンは193館となって いるが、いずれも10 0店舗以上の巨大ショッピングセンター内に立 地するビジネスモデルである。表3 は総座席数5,000 席以上の巨大シネコンを示しているが、スクリ ーン構成は16∼30スクリーンと なっている。表4には、3,000席以上の単館映画館を示しているが、ハバナの Teatro Karl Marx が 6,730席、そしてロサンゼルスの南カリフォルニア大学のキャンバスに隣接する Shrine Auditorium が6,308席、旧コダックシアター(現 Dolby Theatre)が3,300席となっている。いずれの大規 模単館映画館も常時映画興行を行っているわけではないので、 PLF のターゲットとなる映画館では無いと いえる。 プライベートブランド PLF スクリーンを設置する必要があるのは、都市部の20スクリーン程度のシネ コンで、車社会の米国 では駐車場の割引有無を含めたエリア内に競合 チェーンの同規模シネコンが存在す るか否かであり、これまでの連載でも紹介した AMC チェーンでのダイニング型スクリーンや、プレミアラ ウンジの展開も含めて都市型シネコンの生き残り戦略の一つとして PLF の展開が重要な意味を持ってくる ことになる。平日の客 席稼働率が5%を割り込んでいる現状で、集客 力の向上や、客単価の改善からもシ ネコンの旗艦スクリーン( 300 席以上で15メートル以上のスクリーンを設置し 、以前であれば THX 認定 のロゴが掲示してあるスクリーン)を改装して PLF 化していくことが必須となってくる。年末のスターウ ヲーズ新作公開や、 来年に予定されている AVATAR2 などの大型作 品公開スケジュールに併せてプラ イ ベ ー トブランド PLF スクリーン新設の動きは加速していくものと推定されている。 さて、初期の70mmフィルムによる IMAX とデジタル化され既設のスクリーンを変換 しただけのフェイクIMAXとも言われている”Lie-MAX”との差はどこにあるのであろうか。 図2には、いわゆる横走り1570IMAXフィルム(フィルム走行方向の15パーフ ォに映像が記録されている)、配給費用低減もあり1070(フィルム走行方向10パーフ ォに対して横方向に映像が記録されている)や870、570等の配給プリントフォーマ ットが存在していた。 初期のIMAXシアターでは、GTと称される仕様でスクリーン面積 4,990sq.ft(60.7× 82ft)であったが、その後 SR 仕様では GT に対して72%の面積となり、MPX では GT に対して50%、そして IMAX Digital では36%にまでスクリーン面積が縮小してきて おり、さらに既設のシネコン等でIMAXへ改装した最小のIMAXスクリーンでは1,103 sq.ft にまでなっていると大画面映画に関する専門情報サイト LF Examiner は IMAX Screens: Posted 4/22/10 Shrinking と題して報じている。初期の IMAX シアターでは図 2 に示しているように15パーフォを横長取って画面を構成するフィルムとなっており、1, 5000ワットの水冷キセノンランプを使用して上映を行っていた。 Lie−MAX と揶揄されているのはフィルム時代のIMAXとは異なり、既存の シネコンのスクリーンをIMAX用シルバースクリーンに張り替えて映写機を Digital IMAX にしただけのスクリーンであるために、フィルム時代の IMAX とは縦横アスペクト 比も異なることに加えて、スクリーンと観客席の位置関係も当初の IMAX 設計基準とは異 なってしまったことに起因している。 フィルム時代のIMAXは、70mmIMAXのネガとポジプリント費用が足かせとな っていたことは言うまでもない。映画撮影と配給のデジタル化移行により、フィルムコス トが大幅に低減されたことは確かであり、旧来の2KスキャンデータからのIMAXブロ ーアップやカラーグレーディングの作業が大幅に削減されている。ただし、IMAXの青 みがかったシルバースクリーンによる映写時の実効コントラスト比低下やカラーシフトの 問題は残っている。 冒頭の佐々木興行(株)による 次世代IMAX は、図7に示しているBARCOの レーザー光源搭載4K−DLPプロジェクター2台による上映システムであり、26メー トル幅スクリーンでも4K解像度と輝度を担保できる装置構成となっている。この次世代 IMAXで採用されているレーザー光源の技術はコダックの保有特許をIMAXが買い取 ったものであり以前の連載記事でも紹介しているが共有光軸プリズムを使用して、複数の レーザー光源を多重化することでスペックル(拡散反射されたレーザー光が干渉すること でランダムなドット状の光学ノイズが発生する現象)を大幅に低減できる技術である。 クリスティーも大画面上映用のシステムをすでに商品化しており、図8に示しているよ うに多重化した光ファイバーガイド方式での多重化レーザー光源とミラーを使用した4K プロジェクター2台によるシステムである。ロサンゼルス地下鉄のバイン駅から徒歩5分 のアークライトシネマにあるシネラマドームスクリーンにもこのシステムが導入されてい る。 また、次世代大画面上映システムとして一目置かれているのがBARCOによる ES CAPE システムである。図9に示しているように、スクリーンの左右にも補助スクリ ーンが設置されており、人間の視覚範囲外にも映像を提示することで没入感を感じさせる システム構成である。イリノイ大学が開発し、日本でも東京工業大学を皮切りにして東京 大学等に導入された CAVE システムを彷彿とさせるシステムである。 この三画面による没入感システムは、当然のことながら映像制作時から関与して左右の 補助画面に提示する映像を作りこむ必要があるが、座席に対して加速度感や振動・揺動を 与える4DXとは異なる臨場感や没入感を与える次世代シネマといえる。 映写機に対するレーザー光源使用の安全性問題が解決した現在、20メートルを超える 大画面映画館で、多チャンネル立体音響と合わせて今までにはない高臨場感かつ没入感を 味わえる次世代デジタルシネマの登場も身近に迫ってきている。ただし、配給される配給 パッケージが4K解像度かつ、高周波成分が圧縮(間引かれていない)されていない色信 号成分4:4:4フルサンプリングで無ければ、映画ファンの定着はあり得ない。衛星放 送を主体にして4Kテレビが家庭に届こうとしているが、放送で流れているのは色信号を 間引きまくって、かつ解像度感に最も影響する映像の高周波成分は間引きまくっている い わゆるペタペタの映像 とは一線を画した、映画の画質であることを希望してやまない。 そして、レーザー光源の登場によりシルバースクリーンに代表される高ゲイン(入射光 束に対する反射光束の強度比であり、ゲインが高ければ見た目のスクリーン輝度は上昇す るが、 黒浮き が発生する為にコントラスト比は低下してしまい、メリハリの無い映像と なってしまう)スクリーンを使用せずに、画面内でのコントラスト比500:1以上で上 映される高画質デジタルシネマを追求していただきたいものである。当然のことながら、 デジタル配給パッケージも4K で JPEG2000による圧縮率も必要最小限に抑えた Visually Lossless : 視覚的に劣化が関知できない水準 な認証の枠組みも必要な時期に来ているのではと感じている。 を担保した次世代 THX 的 –