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フランスにおける破綻主義について

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フランスにおける破綻主義について
明治大学大学院紀要第31集94・2
美
には、裁判官は離婚請求を棄却することができるとして、裁判官に裁量
婚することが子供及び配偶者にとって例外的に苛酷であるとされた場合
なわち、離婚原因が第二三七条及び第二三八条に該当する場合でも、離
麻
フランスにおける破綻主義について
ー苛酷条項を中心としてー
第一章 新法制定の経緯
杉
新たに規定された離婚事由は、離婚の方式を多様化し、協議離婚・認諾
一9。く凶Φoo∋∋一旨Φ︶とを導入して、離婚の大幅な ﹁自由化﹂を図ろうと
∋⊆ε9と﹁共同生活の破綻による離婚﹂ 曾くo﹁oΦ℃o霞﹁二只≒o︵δ
過した夫婦について、破綻を理由とする離婚を請求する権利を認め、第
れた。まず第一に、第二三七条において、事実上の別居期間が六年を経
を導入した。破綻主義に基づく離婚原因としては、三つの条文が制定さ
ハ ヨ 事由を規定したイギリスと同様の規定である破綻主義に基づく離婚事由
たアメリカのカリフォルニア州及び同年に破綻主義の理念に基づく離婚
いて導入されている、例えば、一九六九年にノーフォルト離婚を採用し
②旧二三一条に定める体刑及び名誉刑の宣告89益塁。∋量θ剛9’ユo一ゴコ
二三〇条に定める姦通⑤匹三βαお︶、すなわち婚姻から生じる義務違反、
ところで、一九七五年以前の離婚法は離婚原因として①旧二二九条、
る たことが、大きな特徴であった。
に対する﹁救済﹂と見る考え方⑤ぞo﹁8・﹁①ヨ㊦鼠︶への転換を実現し
裁﹂とみる考え方曾くo﹃8−ω四口ざユoεから、むしろそれを不幸な婚姻
することにあった。すなわち、旧来の、離婚をコ有責配偶者に対する制
離婚・精神病離婚・一方的、双方的有責離婚の他に、現在多くの国にお
の改正を定める法律﹄第六一七号によって従前と同一の﹁離婚﹂θ⊆
権を認めたものである。この改正は、旧法の伝統的な有責主義の観念か
り
9<o﹁8︶の標題のもとに全面的に改正され、新規定と置き換えられた。 ら離れて、新たにコ相互の同意による離婚﹂包凶くo﹁oΦ℃母oo=ω①コけ㊦一50葺
離婚に関する民法典第一編第六章は、一九七五年七月=日の﹃離婚
大
二に、第二三入条において精神病離婚を認め、第三に﹁苛酷条項﹂、す
一103一
●
を新設したのはどういう理由からなのであろうか。僅か三〇年足らずで
五年草案申請の段階で意図されていなかった破綻主義に基づく離婚原因
らかに破綻主義の理念を導入した離婚原因を規定した。しかし、一九四
鎚①ω90二×讐﹄コΦ℃Φ凶コ①巴hぎぼくΦ9ぎ富ヨ国三Φ︶、すなわち身体の自由 ところが今回の改正は、六年に渉る事実上の別居及び精神病という明
を剥奪する刑、③旧二三二条に定める暴行、虐待または侮辱δ×8ρ
ω①≦oΦωo⊆圃aξ①ω︶、の三つを規定していた。基本的には有責主義的な
破綻主義の導入を決めたフランスに、それを促進させるどのような状況
考え方に沿った規定であったが、③に定める離婚原因は①.②に定める
離婚原因と異なり、相対的離婚原因と解され、裁判官が離婚を命ずるか
が存していたのであろうか。
め、他方では婚姻・離婚に関する世論調査を行った。この調査は、司法
る。フランス政府は、離婚法改正を目して、一方では比較法的研究を進
その理由として、第一にフランスにおける社会情勢の変化が挙げられ
否かを判断する余地が認められていた。さらに、ヴィシー体制下の一九
ハら 四一年四月二日の法律及び一九四五年四月一二日のオルドナンスにおい
ても部分的な改正がなされた。
ハ ね
その後、一九四五年六月五日のデクレによって司法省に設置された民
法典改正委員会60∋∋凶ω゜・δコユ①み︷o﹁∋盛ロOoユΦΩ≦議長ジュリ 省、国立人口統計学研究所ρZ°国.O.︶、パリ第二大学法社会学研究
室によって一九七二年に実施された。それは二種の調査に分かれ、一は、
フランス国民全体を対象とする調査であり、他は、離婚経験者のみを対
オ・ド・ラ・モランディエル ﹄三=働αΦすζo﹁9コ臼臼Φを含め二人、破
殿部長二人、コンセイユ・デタ顧問官三人、パリ大学法学部教授三人、
象とする調査であった。その分析結果は﹃離婚とフランス人﹄と題する
合意離婚を許容するための手続の簡易化には八九%が、長期の別居を離
反対五二%のうち二〇%も離婚の拡大ないし容易化を承認した。さらに、
自由﹄へと原則を転換することについて賛成が四入%であり、しかも、
報告書として公刊された。それによれば、 婚姻不解消﹄から 離婚の
ね
破殿院及びコンセイユ・デタ名誉弁護士一人、元パリ控訴院管轄弁護士
会会長弁護士一人、公証人一人、控訴院部長一人、から成る︶は、第一
編第六章︵二二九条∼三一〇条︶に規定されていた﹁離婚U⊆臼くo﹁oΦ﹂
を、第︸編第二章﹁婚姻・離婚及び別居﹂に移して改正草案を作成し、
一九五三年一二月二〇日に司法大臣に報告した。この改正案は第三二八
フね
な又は常習的な虐待、四、婚姻より生ずる義務の夫婦の他方による重大
婦の他方が自由・名誉刑に処せられたこと、三、夫婦の他方による重大
ことができるとして、一、夫婦の他方の姦通、二、普通法の罪により夫
に於てであった。そこから、離婚の自由化は、それなりの将来性を持つ
の愛着が最も強かったのは、成長速度を失いつつある社会階層、農民層
とは、世代の効果として理解され得るものであった。逆に、現状維持へ
三十歳未満の被調査者の下では、それ以上の年齢層よりも高く、そのこ
婚事由とすることには九〇%が賛意を示した。改革を是とする割合は、
な違反、とし、離婚は、右の事実が共同生活の存続を堪え難いものとす
ものと合理的に帰納することができるとされたのである。
条において、離婚は、左の原因により夫婦の一方の請求により言い渡す
ると立証された場合でなければ言い渡すことができないとした。
一104一
ルーーデスタンをはじめとするすべての候補者や党派が離婚法改正の必要
統領の死亡により行われた一九七四年五月新大統領選挙では、ジスカー
経て法改正の機運が一層強まることが予想され、さらに、ポンピドウ大
の問題を回避し得ず、その結果次の全国的選挙におけるキャンペーンを
て広く社会的関心を呼ぴ、政治的性格を帯びるため、政治的諸党派はこ
②離婚法の改正は、婚姻の意義、婦人の地位、性の自由などの諸面に於
子関係法の改正が実現した後はこの課題を延引する理由が失われたこと、
て取り組まれるべきものと考えられてきたが、一九七二年一月三日に親
に入ると、①離婚法の改正は一般に家庭法諸領域の改革の最終課題とし
第二の理由としては政治的な動きが挙げられる。すなわち一九七二年
政府に余儀なくさせることとなったと考えられる。
以上のような事情により、破綻主義の理念に基づく婚姻原因の導入を
︵13︶
るという主張が強くなったのである。
は望ましくないという理由から、破綻主義による離婚を認めるべきであ
とに加えて、事実上の別居、内縁関係、非嫡出子の出生を増加させるの
も制限的ではないが、このような民法典と離れた離婚実務は司法に対す
︵12V
る不信感を生ぜしめ、立法の実効性を疑わせるものであった。以上のこ
二に、離婚原因のうち﹁侮辱﹂は、裁判所で広く解されていて、必ずし
のことは、結局当事者の合意による協議離婚を認めているに等しい。第
に対して侮辱となる手紙を出すなどして︶が少なくないことである。こ
離婚事由を共謀して作り出している場合︵例えば、夫婦の双方が相手方
︵10︶
︵注︶
j=﹀¢ω男q.︶卑=⊂零−≦一巴=﹂﹂発θ゜︶”↓鑓ま自㊦警o諄o凶く算卜。。巴;
ρ目ロ自。﹁Oゴ①ω鉱コ9︶層勺鋤二ω層[O°Oこ゜唱お㊤一一コ8㎝もbOこ野村豊弘
︵二︶フランス民法典研究会﹁フランスの新離婚法﹂法律時報四八巻三号
﹁フランスにおける最近の民法典改正﹂日仏法学一〇号七九頁以下
︵一九七六年︶九六頁
︵三︶黒木三郎編﹃世界の家族法﹄敬文堂︵一九九一年︶参照
︵五︶冨σ把ωω①・勾一〇⊆6°γO﹁o一け色①一鋤♂∋≡ρ一゜︿〇一゜一℃費凶ρζ﹀ωωOZ−
︵四︶フランス民法典研究会 前掲︵二︶九六頁
一105一
を説き、その﹁公約﹂を喧伝した、という事情によって加速されたので
ある。
第三の理由としては、実際の判例上の動きが挙げられる。離婚判決件
数は、一九七四年には、年間婚姻件数の=二%に当たる五五一四五件を
記録し、 一九六九年O二七四八五件︶、一九七二年︵四六七九五件︶と
比較して、増大が認められた。また、 一九七〇年の離婚判決三六〇〇〇
件︵概数︶のうち、離婚事由についてみると、︵一︶姦通二八・五%、
︵二︶暴行・虐待・侮辱が三七・四%、O二︶一方による同居の放棄が
一㊤゜。心も﹁ω一ご野村前掲︵一︶九五頁
@勾9ρロロO﹁一血Φζ.UO55ΦN噸﹀’Zこユ一ωけ﹁凶σ⊆ほOコω−幽も一①QO一−︵一︶−O眉゜心Φけ伊
正草案︵二︶﹂﹃比較法雑誌﹄四巻、三・四号合併号︵一九五九年﹀
については、フランス民法典改正草案翻訳委員会﹁フランス民法典改
Ω︿闘rOおヨδおロ9。﹁甑ρQD凶﹁㊦ざ一㊤㎝㎝として刊行された。草案と理由書
判夕 四一〇号五二頁 草案及び理由書は、﹀く曽コけ・℃δ冨け自①Ooα①
︵七︶久貴忠彦11小幡由子﹁フランスにおける破綻主義離婚法の誕生︵上︶﹂
n)
二二・八%であり、ここでは︵三︶が定型的な離婚事由となって二割以
け 上を占めるに至ったこと︵有責主義下の破綻主義的傾向︶が、注目され
る。そして、離婚事由は必ずしも裁判所によって制限的に解釈されず、
破綻主義的な傾向が見られた。それは以下のようである。すなわち、第
一に、離婚判決の中には、夫婦間に離婚の実質的な合意があり、夫婦が
(一
(⊥
ωo律℃o¢﹁δωΦ鳶蝉算ωα①ωooコωΦρ①器コ8ωヨ讐騨曲①=Φω〇ニヨo﹁巴Φω
菖℃8∋讐①8言8富∋∋Φ三9ω8鋤αqΦΦ什9δ身﹁σ㊦含∋鋤ユ鋤ひqρ
﹀﹃げ昏。お.望一げロqΦ98×0冨巨評曾①δ臼く98鋤二﹁巴戸ωo律℃8﹁
婚請求を棄却する
質的又は精神的結果をもたらすことが立証された場合には、裁判官は離
︵入︶O﹁oω一δ﹁Φ qしーい自。﹁駄o﹁∋㊦ユ⊆∪凶くo﹁oρω一﹁①ざ一﹃。⑩鼻一㊤刈◎コ。ドO°
㎝‘<〇三Φけ︵ご噌∪凶<98簿一簿゜。9自。田ユoコユ①86ρ一﹃。⑪負℃帥ユρ一゜
︵九︶福島正夫編﹃家族政策と法 四、欧米資本主義国﹄東京大学出版会
U国ピ言﹀ρP心゜。°久貴11小幡前掲︵七︶五三頁
︵一九九 年︶二六九頁
Z︶稲本洋之助﹃フランスの家族法﹄東京大学出版会︵一九入五年︶三
四頁以下
ルδ℃oω繭二〇コユΦ一〇凶−Oみω曾80髪ζ]≦°︿一=・♪﹀°Z‘コ。這b。い。℃℃. 血ゴ器①×8冥凶oコ器=①α=お融﹂Φ甘σqΦ8﹂①9ΦすαΦ∋讐己Φ’
第二三七条を文言通りに解釈すれば、六年間事実上別居していれば、
一方配偶者は当然に離婚を請求することができるわけである。これは、
夫婦生活が実質上回復し難い程度に破綻しているならば、その理由を問
わず、離婚を認めるべきであるという破綻主義の理念を導入したもので
あると考えられる。これに対して、第二四〇条は、夫婦関係が破綻して
第二三七条[破綻離婚]夫婦が六年以上に渉って、事実上別居して生
れている。
精神病離婚を除く共同生活の破綻による離婚事由は以下のように規定さ
一九七五年の新法により導入された破綻主義に基づく離婚事由のうち、
義はどのような意図から導入され、②なぜ破綻主義の理念と相矛盾する
ではこのような規定がなされるには、①一体、フランスにおいて破綻主
認められるという破綻主義の理念とは対立する考え方であるといえる。
のである。このような規定は、婚姻生活が破綻しているときには離婚が
に苛酷であると裁判官が認めた場合には、離婚請求を棄却するというも
いるとしても、離婚を請求された配偶者及び子供にとって離婚が例外的
活しているときは、共同生活の継続的破綻を理由として、離婚を請求す
ような苛酷条項が規定され、③以上の条文は、フランスの離婚訴訟にお
考察することによってどのような方向に向かっているのか、またどのよ
試み、さらに次章では、新法適用後の実際の判例の適用状況及び学説を
第二四〇条冨求棄却事由]離婚が、︵︸方︶当事者に対しては、特
うな方向に向かうべきであるのかについて考察を加えたい。
ω9鋤みω9雷詳血9三ωω凶×四拐。
歪讐霞Φ蔑oδ=σqOΦ9一p<凶Φ8∋ヨ⊆づρδ﹁ωρ器δω伽Ooロ×<ぞΦコ議
叶会及び元老院で議論された資料を基に立法者意思から疑問点の解明を
﹀﹁e Nω刈 ⊂=90二×OΦ耳血Φヨ四ロユ①﹃δ9<o﹁∩Φ−Φ⇒茜凶ωoコ匹、⊆器 いてどのような影響を及ー1したのだろうか。本章では、立法の際の国民
ることができる
第二章 離婚事由の規定の構造について
O臼ω8器ω︶冨﹁℃.勾﹀ノ、z>⊆ンω凶﹁Φざ一〇刈ρコ。㎝コ.
O︶竃≧へ門く ︵ρ︶2力≧zきo︵℃°︶vUδ胃Ω<帥一︼ω。0鼻げ一︵言ω
竃>Q∩ωOZ−おOρ℃.°。O簿ωご野村前掲︵一︶九七頁
︶ごま圃⊂z[男︵閃シO﹁o詳Ω<=℃﹁ぎoぢ①ω卑ロ轟二ρ=⑦噂㊤①伽9勺自。﹁同ρ
N卑ω゜
黶j
にその年齢及び婚姻の期間を考慮し、子に対しても、例外的に苛酷な物
一106一
(一
(一
(一
(一
する権利を認め、﹃制裁離婚eコ臼くo﹃8・ω9ρ昌〇二8︶の概念﹄を終了さ
まず第一に共産党は、﹁配偶者が共同の決定により婚姻共同体を解体
及び急進社会党左派グループ共同の法案が国民議会に提出された。
一九七五年一〇月入日に共産党の法案が、同年一一月一五日に社会党
一 提案理由魯
コメディー﹄を演じてしまう可能性があることを挙げる。第二に、制裁
こと、配偶者と子供を害するにすぎない ﹃ドラマ﹄を伴い、﹃裁判上の
効果に関する示談の合意を困難にし、夫婦間の闘争を苛酷なものにする
また、双方の弁護士による見せかけの理由書の取引を企てさせ、離婚の
てまず第一に、従来の 制裁離婚﹄のシステムは、カップルを追いつめ、
他方配偶者が離婚を拒否している場合として二つの場合を想定した。そ
たって 〇二年以上︶事実上別居している場合、夫婦が破綻していること
’離婚は、二人の人間の愛情に本質的に依存しているのであるという婚姻
の本質的な概念とは相容れないことを挙げる。第三に、夫婦が長期にわ
ハむ
せる﹂ことを提案した。そして同意離婚の他に、不同意離婚、すなわち
れは婚姻がもはや存在しない場合−夫婦が数年に渉って別居している
承認することによって離婚の改革を促進させることが必要であると考え
は明白であることを挙げる。従って夫婦が共同体に終止符を打つ権利を
場合と夫婦関係が回復し難いほどに破綻している場Aローには過失や不
ヨ
法行為を問うことなく婚姻の解消の可能性を予定することである。その
られる、とした。
︹18︶
以上の二つの案共に破綻主義を導入する意図を表していることは明確
理由として、二つ挙げている。第一には、制裁離婚に関する現行法は多
くの人々によって承認されている婚姻・家族の近代的な概念と矛盾して
議員院提出法案が現れるに及んで、一九七五年四月一七日に国民議会
である。
︵19︶
いること、第二には、夫婦が数年に渉って事実上別居している場合は、
新しい家庭を築いている可能性があることを挙げている。従って過失離
の請求による離婚を認容すべきであると主張した。そして第二三〇条
されれば離婚を宣告する権限を裁判官に与えることにより、一方配偶者
関係の破綻が存在している﹂のであるから、そのことがギ分に証明﹂
第二に社会党は、﹁夫婦が長期に渉り別居していた場合﹂には、﹁夫婦
制されること、第二に、請求棄却の場A口は、しばしば配偶者以外の者と
化させ、子供にショックを与えるような裁判上の戦いを始めることを強
の理由を挙げている。第一に、現行の離婚訴訟では、夫婦間の闘争を激
の改革が必要である理由として、主査委員会報告者ζ゜bo26Nは四つ
あるいは、共同生活の破綻による離婚を導入することが提唱された。こ
に政府法案が提出された。政府法案では、制裁離婚のほかに、同意離婚
︵20︶
﹂二年以上に渉り事実上の別居が証明された場合には一方配偶者の請求
の同棲を伴う長期にわたる事実上の別居に至ること、第三に、夫婦が離
婚を完全に排除し破綻主義の理念を徹底させたものとなっている。
に基づいて離婚が宣言されなければならないL及び第二三一条﹁婚姻破
表面的な苦情を申し立てるためのシナリオを準備しなければならないこ
婚に合意している場合、第三者に様々な別居の事由を開示しないために、
綻が理由を問わず回復不可能であると見られる場合には一方配偶者の請
ゼ
求に基づいて離婚が宣言され得る﹂を起草したのである。その理由とし
一107一
と、第四にこのような状況は、裁判官の面前で演じられる裁判上のコメ
共同生活の破綻による離婚を削除すべしという強力な反対があった。破
的特徴たらしめた重要な改革であった。国民議会主査委員会審議では、
とができるという解約権付きの合意契約である﹂と主張した。すなわち
六年間の予告期間の後、一方配偶者が一方的に婚姻共同体を解消するこ
まず、ζ゜ζ霞oい9ξ互a.∪.即共和国民主連合︶は、﹁婚姻は、
︵24︶
という危惧をその理由としている。
綻離婚は、実際には、妻に対する追い出し離婚として機能するだろう、
ディーに関して目をつぶることを裁判官に強制しており、司法の信用を
失墜させること、を挙げる。そして、それに対する可能な解決策として、
ユ 第一の方法は、一九六九年にイギリス法が採用したように、列挙された
事実から、婚姻の決定的破綻を認定すること、第二の方法は、ある一定
の期間、夫婦が別居していたという事実から生じた破綻を推定すること
皇張捻・第二三七条実婦が六年間に渉・て別居している場合には、
本質を変化させることが重要なのであり、政府法案は共同生活が六年に
婚姻とは解消不可能の終身の共同体であるが、本改正においては婚姻の
﹁離婚が、その者にとってはその年齢、婚姻期間を考慮して、子供にと
共同生活の長期に渉る破綻を理由として離婚ができるL及び第二四〇条
っては精神的物質的に例外的苛酷となると他方配偶者が証明した場合に
渉って破綻した後には、一方的に他方配偶者を遺棄した配偶者に離婚を
請求する権利を認める点で画期的である、と評したのである。その後民
︵23︶
は、裁判官は請求を棄却することができる﹂と起草した。
法典第二三七条に規定された条文を削除すべしとする、三つの修正案、
ζ゜しUoδ︵qU°閑゜︶による第七一号案、ζ.鳴o﹁Φコω分゜O°∪°ψ︶に
共産党案・社会党案共に破綻主義の理念を積極的に取り入れ、徹底し
た離婚事由として別居のみを挙げている。これに対し、政府法案は、い
よる第八一号案及びζ゜×9︿一Φ﹁UΦ三鋤⊆︵﹀署゜C’O°菊゜フランス民主連
五〇歳を越えた子供のない女性等の場合には離婚を認めるべきではない
−追い出し離婚1を導入するものであることを挙げ、そして例えば
と生活することを望む男性に対して利益となる一方的追い出しの形態
A口︶による第二三九号案がだされた。その理由としては、より若い女性
わゆる一九六九年にイギリス法において採用されたような﹁苛酷条項﹂
の導入を併せて主張している。しかし離婚をより緩やかに認めようとす
る破綻主義と離婚請求を拒否することができる苛酷条項とはまったく対
入れられることになったのだろうか。以下に考察を試みたいと考える。
と主張した。これに対して政府蜜﹂①ひq費α①血①ωω8餌⊆×︶は、﹁六年
立する概念である。それでば、なぜ以上のような相矛盾する概念が取り
二 議会における政府法案
間に渉る長期の事実上の別居による離婚を認めることは、改革
空虚な実体を生み出すのである。従って、実体が耐え難いものであるな
神的物質的な生活共同体である婚姻は、事実上の別居により法的擬制の
︵み︷O∋①︶の根本的な刷新である。愛情に基づいた、物質的、知的、精
︵一︶民法第二一二七条についての議論
新法の最大の眼目は、破綻主義に基づく離婚原因を導入したことにあ
った。これは、政府が﹃この法案の最も革新的な規定﹄と強調したよう
に、破綻主義への原理的転換を明確化し、それをもって新法全体の基本
一108一
第七一、八一、二三九号法案は採択されなかった。
なければならないと主張した。その結果、第二三七条の各修正案である
︵29︶
しば不義の子と生活しているような状態を維持することは社会的道徳的
ところで、別居と破綻は同一の意味をもたない。別居とは、客観的に
らば、実体を直視することが大切である。新たな家族が確立され、しば
に見ても望ましい事ではない。Lと述べた。この議論は引き続き一九七
︵26︶
五年六月三日の国民議会においても続行され、政府は以下のように主張
ピニ8⋮Φけ︵法務大臣︶によれば﹁事実上の別居は、離婚する意図から
一方配偶者、あるいは双方配偶者の意思を含むものである。ζ.
認められる一つの状態を意味するのに対し、破綻は、別居を生じさせる
︵鉛︶
渉る事実上の別居から生じる離婚と追い出し離婚を同一視する事にある。
故意に配偶者に無関心になるという要素が加わった、共同生活の停止
した。﹁共同生活の破綻による離婚の導入に際しての問題点は、長期に
以上の同一視は不当なものであると考えられる。追い出しとは何であろ
ている。女性は男性の行動を理由として離婚を請求するのである。統計
完結される行為なのである。しかし、離婚請求の多くは女性からなされ
フランスの議会においては、ひとまず破綻という概念から離れて、とに
ている夫婦でも実際に破綻しているということも考えられる。しかし、
別居が必ずしも破綻の原因ということにはならないはずである。同居し
⑤四ω゜。9。二〇コ︶という物理的な一事象﹂であると述べている。さらに、
︵31︶
で言えば、六三%の離婚の請求が女性によってなされているのである。
かく別居しているという事実を以て婚姻を解消するという目的に奉仕せ
うか。これは︸方的な行為であり、より明確に述べれば、男性によって
従って追い出しは男性が女性を追い出す一方的な行動なのである﹂から、
恣意的でもない、なぜなら六年間が経過しているからである。六年間に
なぜであろうか。フランスにおいて破綻による離婚とはどのような意味
しかし、破綻を証明する要素を六年間の別居期間ひとつに限ったのは
しめるということで結論をみたということができる。
渉って婚姻が破綻している場合に、それを再生する真のチャンスがある
を持っていたのであろうか。これが破綻離婚認定の際の要素の問題とし
﹁長期に渉る共同生活の破綻による離婚は当然に行われるのでもないし
だろうか﹂と述べた。すなわち破綻主義の理念に基づいて離婚を認める
て以下に議論されたところである。この点についてはζ゜○φo﹁σqΦω
︵η︶
ことの目的は、離婚が非現実的な空虚なものとなる場合には新たな家族
UoヨΦN富暑〇二Φ貫、委員会報告者、閑゜OO.Qり.︶は、﹁委員会は共
同生活の破綻が六年に渉る場合には決定的破綻の徴表があると考えてい
を確立することを認めるという目的のみを有しているということなので
ある。
︹2B︶
ζ]≦°コ①冥①一〇×ρ閃03一”=〇二3Φ5U螢︸6ゴい讐訂冥①﹁ρ09口益Φ3轟05
なければならない﹂ど述べている。そして以下のような修正案、①
ヨ り
た後はもはや共同体は存在せず、結果として婚姻が破綻していると認め
そして何を以て破綻とするかについては、ζ.>a⑦﹁’Oゴきα①∋2。σQo﹁ る﹂すなわち、ζ゜>5費ρ07碧ユ①3四αqo﹁が述べたように﹁六年経過し
㊥゜ψ菊゜O°急進社会党︶は﹁六年経過した後は、もはや共同体は存
在せず、結果として婚姻が破綻していると認めなければならない﹂とし
て、とにかく事実上の別居が六年間に渉って継続していれば離婚を認め
一109一
上事実上の別居をしている場合、共同生活が回復することを期待するこ
案﹁別居期間を十年にする﹂、が出された。提案理由としては、三年以
三年にする﹂②ζ゜Ω霊臼⊆ω℃Φ葺分゜O°∪°ψ︶の修正第三〇八号法
内鋤一凶ロ゜。評︽卑ζ∋①Oげ曽轟くΦ一6°共産党︶の第八号法案 ﹁別居期間を
らない。とすれば別居が最も有効な手段ということなのではないだろう
られるとはいってもそれは客観的に認められるような状態でなければな
ような徴表が現れるということなのである。破綻していれば離婚が認め
夫婦がある一定の年月に渉って別居すれば、客観的に破綻と認められる
すなわち別居は必ずしも破綻認定の要素になるとは限らない。しかし
﹀ゑOコ①㊥.ω゜閑゜O.急進社会党︶の第二〇八号法案、ζζ゜Ω費9P 主張したのである。
とが不可能であること、法律上認められた別居の場合には三年後に離婚
て離婚しない配偶者を十分に保護するには三年は非常に短いということ、
という期間が妥当であると主張したのである。第一の理由として、敢え
げられた。しかし政府2︻°σq碧αΦ島①ωω8=×︶は以下の理由から六年
至るまでの過程︶はより少ない期間が望まれるべきであること、等が挙
導入されなければならないかについてはζ.ζ胃oい①⊆ユ2から以下のよ
まず、なぜ共同生活の破綻による離婚の際に、﹁苛酷﹂という概念が
︵二︶第二四〇条について
討したいと考える。
ないような苛酷条項を条文として規定したのはなぜだろうか。以下に検
か。それでは、破綻主義を導入しておきながら、その反面、離婚を認め
第二の理由として、すでに採択された条文との一貫性である。第三〇六
うな説明がなされた。﹁離婚は共同生活の破綻とは違って、例外的苛酷
への転換が可能であること、共同生活を中断させるために期間︵離婚に
条が、別居から離婚への転換は三年の満了によって初めてなし得ると規
の性質を帯び得る﹂、すなわち、夫婦の従来の関係が壊れ、法律上の婚姻
︵お︶
定していることを考慮すれば、三年の事実上の別居が法律上の別居と同
関係を解消しようと欲する場合、非常に厳しい性質を帯びるということ
苛酷が特に重大であると考えられるならば、最も良いのは、遺棄された
一に、配偶者が一定の年齢、例えば、四〇歳を越えて遺棄された場合に
である。そして、苛酷の範囲として代表的なものを二つ挙げた。まず第
︵銘︶
︵餌︶
一の効果を生じさせると考える事は無理があるということである。そし
て、賛成八〇、反対三四入によって政府法案が可決された。
︵あ︶
離婚を認めないことは夫婦を和解させることにはつながらないと主張し
配偶者が依然としてある一定の年齢に達していない場合以外には離婚を
この点については引き続き議論された。元老院においても、政府は、
た。すなわち実際、破綻した共同体を回復させることはできないこと、
認めないこと、第二に、共同体から生まれた未成年の子供がいない場合
う破綻主義の理念が曲げられる恐れはないのであろうか。裁判官はどの
酷条項の導入により、婚姻生活が破綻している場合は離婚を認めるとい
以外には、離婚を認めるべきではない、ということである。しかし、苛
︵お︶
不義の子を産むことは社会的・道徳的にみても望まれるべきではないこ
醸単なる妻上の別居が法的別居より多くの効果を生むことは合理的
ではないこと、以上の理由から離婚に必要とされる事実上の別居の期間
︵琶
は法律上認められる別居に関する期間よりも長くなければならない、と
一110一
ような判例あるいはどの法的基準、法原理に従って苛酷条項を適用する
のだろうか。そもそも苛酷条項が導入された趣旨は国民議会において
︵40︶
と説明している。これは起草者の一人である、ジャンーカルポニエ・パ
︵42︶
社会の変動と法政策との融合の結果であり理想主義と現実主義との妥協
であると述べていることからも明らかである。それはまさしくフランス
リ大学名誉教授が、同法が[客観主義者は有責主義者との妥協の産物﹄
︵娼︶
主義の採用により、仮に離婚の結果、被告配偶者にとって非常に困難な
︵ぢ
の産物であったといえよう。
政府冒﹂Φ讐ぴ①$妻Φρ㈹費αΦユ①ωωo$¢×︶が説明した通り、﹁破綻
状況になると考えられる場合には、離婚を押し付けられる配偶者を保護
する方法を維持することが必要﹂というものである。すなわち、﹁過去
︵注︶
l︶勺﹁80ω三〇コ血①竃ζ゜<F;もみo剛け0もb象ω.
オ︶勺﹁oロoω凶ユ9日ユ①一〇碁℃みωΦ暮0忌﹁竃.U雪”勇≡㌢閃薯z一”ま×﹃U>三zeゴ
j ℃﹁OOOω凶甑OコαΦ7臼ζ’<一rr>層弓﹁⑩O謬0︾娼◆ω゜
ワ︶℃﹁oOo°。帥島oコ色①ζζ゜<Fr≧Oみo詳ρ℃.°。°
(一
について取り上げ、過失を承認する事が問題なのではなく、離婚から生
じる物質的精神的結果を客観的に承認する事﹂が苛酷であるとして、明
らかに、有責性を考慮するものではないとして破綻主義のための規定で
あるとしているのである。そして、霜可酷条項は将来を指向するもので
あり、過去を指向するものではない。破綻や遺棄の状況を考慮して離婚
を拒否すること、それはすなわち過失の概念を再導入することになるの
であるが、それが問題なのではなくて、仮に将来にわたって、離婚から
生じる結果が被告配偶者あるいは子供にとって非常に厳しいものになる
と証明された場合には離婚を認めないとする権限を裁判官に認めること
が問題なのである。苛酷条項は破綻の主導権を取った原告と破綻の状況
を余儀なく受け入れなければならない被告配偶者との矛盾した利益のバ
ランスを取ることを裁判官に認めるような衡平条項であるということな
のである。それは離婚が当然に認容されることを避けるものである。そ
れは一種の追い出し離婚であるところの共同生活の破綻による離婚とは
区別されることに貢献するものである。苛酷条項はしたがって共同生活
の破綻による離婚を認容する我々の数多くの隣国に於ても見いだされる
客観的原因による離婚を認定する上で欠かせない妥協策なのである。﹂
?j℃﹁oOoω剛口oコ鳥①]≦”∪︸⋮﹁毒奏﹃Oみo潔⑩P“。﹁
﹀°Z‘=。一望ω’P卜⊇°
縺jしかしいずれも新法には対応するものがない
︵二一︶勾口。署〇二自Φζ﹂︶oコ①Nも﹁Oo藏もヒ゜
︵二〇︶稲本前掲︵一〇︶四〇頁
︵二二︶勾岩Oo詳ユΦ竃゜Uo器Nもみo羅も゜一ト。﹁
︵二三︶勺﹁9簿鮎Φ互Oo﹁β一詳﹁蹴o﹁∋①αニユぞo﹁o①、コ。一㎝⑦O
︵二四︶福島前掲︵九︶三三頁
Hハ︶ 旨Oこα伽σ餌一ω”︾°ZこO’ωω刈㊤.
︵二五︶一゜○.−α0σ馨ρ﹀’Zこω仙9。=o①低F歯㊤∋巴一㊤誤も㊦oqo鱗ω刈゜。°
︵二七︶旨ρ”00σ簿ω−﹀°Z°−写ω畠①.
︵二八︶旨ρーユ0σ讐ρ﹀’2°−℃°ω心㊤メ
︵二九︶旨○二α0σp。けρ﹀’Z‘O°ω轟ON
︵三〇︶ダ。°z︵刃.︶簿じ。麟兀↓≡︵勺゜︶二︶凶<。﹁8刈①=。貫頴ユρ[=菱瓦二“°嘔
=j一゜O二濠σ9ω−ω‘ω〇四コo①血二一゜。U二酬コお誤”℃﹂㎝ON°
↓国Ω妄るこ量一㊤圃O﹂日。圃G。−℃bQ。°
︵三二︶旨○;ユ①げ自。けρ﹀°Zニロ.ω轟㊤c。.
︵三三︶ト○‘ユ0げ9。けω−﹀°2.も゜ωおO.
︵三四︶旨O‘α0σg。β﹀°2.も.ω㎝Oρ
一111一
ロハ
(一
(一
(一
(一
(一
(一
(=
︵三五︶旨O二亀σ讐゜・−ω゜一PH㎝0ω゜
︵硲V
ているのか検討する必要がある。本章においては裁判例を中心に運用状
︵47︶
況を概観し、必要に応じて学説についても言及したいと考える。
的な苛酷﹂という概念をどのように捉えていたのであろうか。
か或いは子供であるかは問題にしていない。しかし特に、配偶者の年齢
︵娼V
と婚姻期間を考慮すべきことを明らかにしている。では裁判所は﹁例外
できるとしている。そしてそれが影響を及ぼすのが、被告配偶者である
酷﹂を、それが物質的であるか精神的であるかを問わず援用することが
第二四〇条第一項は、被告配偶者は、離婚により生じるすべての﹁苛
一 ﹁例外的な苛酷﹂の概念
第六四号法案を提出した竃竃゜ζ剛508>﹁σ霞ユoコや≦αq凶①び轟二〇コ巴①oけ
円ω8<㊦は三年の別居期間で十分とする
⊥ハ︶ 一゜O二α0げ舜0けρQりこO﹄OもQ㎝゜
︵三七︶旨Oニユ0 び 讐 ρ Q D 二 〇 ﹂ ㎝ O ㎝ ゜
︵三九︶90.−α0ぴ9。けρ﹀.Z‘戸ωω刈Q。°
︵三入︶旨○二匹0げ讐ρ﹀°Zこω0鋤50Φ島賃ω冒ぎ6朗℃Pωお①゜
︵四〇︶旨○こロ0σ讐ρω‘ω雷コo①二⊆一ト。﹂三ロ一㊤刈㎝も゜一αω9
︵四一︶旨O°ーユ曾讐ρ﹀°Z°も゜ω幽零゜
︵四二︶いO二α⑩げ讐ρQ∩.P扇①ω゜
︵四三︶滝沢章代﹁現代フランス家族法﹂一五六三頁﹃現代家族法第一巻﹄
所収日本評論社︵一九九二年︶二︸五頁
︵五五歳︶、妻の宗教的信条を理由として例外的苛酷を援用した事案で、
裁判所は一九七七年四月一日に、妻が、夫の年齢︵六〇歳︶、妻の年齢
れなければならない﹂と判示した[判例二]。そしてブローニュ大審院
︵50︶
所は一九七七年三月一七日に、﹁例外的苛酷の概念は厳格に受け入れら
解釈されるべきであるとした[判例一]。続いてナンテール大審院裁判
︵49︶
いう意義に解釈されねばならない﹂、すなわち、苛酷の範囲は制限的に
﹃例外的﹄という語は﹃非常に重大な苛酷︵gωoq曇己Φ含﹁Φ叡︶﹄と
リール大審院裁判所は一九七七年一月二〇日に、﹁立法過程の結果
︵四四︶O費σoコ三費︵ご℃い蝉O⊆①ω賦oコO⊆臼くo容ρζ①∋o一おooo拐巳85P
一〇誤◆oξ05﹂一㎝二短報﹁最近のフランス離婚法﹂レファレンス 一一
五頁
第三章離婚事由に関する判例の適用状況
前章において、フランスは破綻主義を導入する際の妥協の産物として
苛酷条項の規定を新設したということがわかった。しかし、第二三七条
が真に破綻主義の理念に基づいた規定であるとすれば、究極的には、客
語より、より制限的かつ限定的なやり方で理解されなければならない、
﹁立法者によって採用されたこ⊆﹁Φ叡﹄という語は、げ惹く凶菰﹄という
関係を解消させるべきである。そして苛酷条項は、立法過程においては、
観的に夫婦関係がうまく行かないという状態のみにより、法律上の婚姻
共同生活の破綻による離婚に不可欠の衡平条項とされた。しかし、それ
︵52︶
とされるとしたのである。
﹁平凡で一般的﹂な意味である﹁苦痛や困難﹂という意味において問題
すなわち﹃例外的﹄という形容詞はぐ⑪ωσq轟コαΦ﹄という意味におい
む
て解釈されなければならない﹂とした[判例三]。すなわち、霜可酷﹂は、
は同時に裁判官に裁量権を認めるという点において、破綻主義に基づく
︵45︶
離婚原因と矛盾した規定となっているのである。従ってフランスにおい
て裁判所が、以上の相矛盾する概念を有する規定をどのように適用させ
一112一
(一
婚請求において、﹁先行する事実上の別居の効果でなく、﹃離婚﹄から生
姻期間︵四七年︶、例外的苛酷かどうかは、本案裁判官の裁量権に委ね
院は、妻が苛酷条項を援用した事案において、妻の年齢︵七〇歳︶、婚
るとして請求を棄却した[判例六]。次に一九七九年七月一一日、破棄
︵55︶
じる結果のみが考慮されなければならない。結果の苛酷が認識され、精
られている事を考慮して、請求を棄却した原審の判断は正当であるとし
さらに、二ース大審院裁判所は一九七入年一月二五日に、夫からの離
神的かつ物質的な面に関して苛酷が例外的である場合﹂にのみ、請求は
︵56︶
ることによって立法者意思を認容するものもある。それは裁判官の主体
︵国︶
的な判断に委ねられている﹂[判例五]。本判決においては苛酷条項を破
には自発的に例外的苛酷を認容するものもある。また、制限的に適用す
どうかを審理するのは裁判官の最高の権限に属している﹂ ﹁裁判所の中
﹁離婚が被告である女性にとって精神的物質的に例外的苛酷であるか
て、以下のことを明らかにした。
流れを受けて、破殿院の民事第二部は一九七九年三月七日の判決におい
外的苛酷とはならない。何故なら、離婚の当然の結果であり、そのこと
請求において、﹁いかなる場合であっても、﹃離婚した女性﹄の地位は例
的損害となる﹂として請求を棄却した[判例八]。これに反してトール
の感情を抱いており、このことは離婚を請求された相手方にとって精神
れた離婚請求において、﹁離婚女性の地位に対して、人々は不信と恥辱
コンピエーニュ大審院裁判所は一九七六年一〇月二六日、夫からなさ
②侮辱を感じる妻の感情
た[判例七]。
︵53︶
綻主義の例外として捉え、制限的に適用されるべきであるとしたもので
は、共同生活の破綻による離婚に決着をつけることになる﹂こと、また、
棄却されるべきであるとして離婚を認容した[判例四]。以上のような
あり、その後多くの同様の判決が続くこととなった。それでは具体的に
﹁夫が離婚後、新たな共同体を創設し子供を設けたとしても、妻にとっ
ては精神的に例外的苛酷とはならない﹂として、離婚を認容した[判例
ーズ大審院裁判所は、︸九七六年一一月一八日に、夫からなされた離婚
︵57︶
はどのように適用されたのだろうか。以下、個々の要件についての検討
を試みたい。
九]。本判決は、家庭不和の原因は夫が他の女性と暮らし始めたことで
あるがそのことは苛酷とはならないとしたものである。その後モンペリ
︵弱︶
︵駆︶
二 苛酷条項の効力要件
A 精神的結果として評価されるもの
エ大審裁判所は一九七七年一月二六日に、﹁制裁離婚しか認めず離婚を
非難してきた古い法制度の下で長い間暮らしてきた妻にとって離婚女性
①年齢・同居期間について
一九七七年二月一九日、リール大審院裁判所は夫からなされた離婚請
のレッテルと地位はつらいものである﹂として苛酷条項の適用を認めた
おいて、﹁現在の習俗に於ては離婚者は社会的に見て特別な存在とは考
[判例一〇]。しかしグラス大審院裁判所は一九七七年一月五日判決に
︵60︶
求について、同居期間︵二四年︶、別居期聞︵六年︶、妻には欝病の可能
性があること、離婚を押しつけることは現在の状態を悪化させるにしか
すぎないことを挙げ、離婚の宣告は一方配偶者にとって例外的苛酷とな
一113一
えられていないLとして苛酷条項の適用を否定した[判例一=。同様
に宣告されない場合には、妻は離婚の宣告により非難を受ける犠牲者と
お に、苛酷条項の適用を否定して離婚を認容したものとして、他にパリ控
なること、を考慮すれば、離婚が女性にとって精神的に例外的苛酷な結
︵69︶
果となると考えられる﹂としながらも離婚を認めた[判例一九]。
︵62︶
訴院一九七九年二月一六日判決[判例一二]、パリ控訴院一九七九年六
四]が挙げられる。
月二八日判決[判例一三]、破殿院一九入八年六月二九日判決[判例一
の健康状態︵皮膚ガンに罹患している︶、その他、妻が夫からの転換年
一九七六年一〇月二五日、アクサンプロヴェンス大審院裁判所は、妻
④健康上の理由として
︵63︶
③信教上の理由として
ても、離婚に伴う当然の結果であるのであるから、さらに特別な条件を
︵66︶
援用しかつ証明することが必要とされる。﹂と述べた[判例一六]。同様
して離婚を拒否する配偶者にとって、たとえ離婚することが苛酷であっ
月一六日にレーヌ大審院裁判所は、﹁精神的または宗教的な信条に執着
して、夫の離婚請求を認容した[判例一六]。続いて、一九七六年一二
にとって例外的苛酷になるということを証明することにはならない﹂と
を理由に離婚を拒む六三歳になる妻に対し、﹁以上の事実は、離婚が妻
七六年一一月一二日にパリ大審院裁判所において、個人的信条票教︶
クの信条のもとに生活しているので、離婚により精神的損害を被るとし
︵65︶
ながらも、宗教的信条を考慮せず、離婚を認容した[判例一五]。一九
対して、九〇〇フラン ︵現在を給付している︶及び代わりの住居、転換
一九七六年一〇月二六日、コンピエーニュ大審院裁判所は、夫は妻に
B物質︵財産︶的結果として評価されるもの
見て特徴的な要素があるとしたものである。
本判例は女性にとって離婚から生じる結果が例外的苛酷という観点から
ることが困難であり、また子供達と折り合いが悪いこと﹂等を考慮して、
む
離婚が例外的苛酷をもたらすとして離婚を認めなかった[判例二一]。
案について、﹁被告たる配偶者は家事の負担に関する夫の寄与を獲得す
病気であり、職に就くことができず、自由になる資産が僅少しかない事
ヴァンス大審院裁判所は、一九七六年=月一八日に、配偶者たる妻は
︵彰
一九七六年一〇月二三日パリ大審院裁判所は被告配偶者が、カトリッ
金の権利を受け取る可能性がなくなること、妻の年齢︵六九歳︶等を考
︵四
慮して、離婚請求を棄却した[判例二〇]。また、エクス・アン・プロ
に離婚を認めた判決として、ブローニュ大審院裁判裁判所一九七七年四
︵68︶
︵65︶
月一日判決﹁[判例︸八]が挙げられる。そしてこの傾向は、パルピニ
年金の提供を申し出ているが、年老いた資産のない女性を現在の住居か
︵72︶
ら追い出すことは例外的苛酷に当たるとして請求棄却した[判例二二]。
き上げたこと、また、妻はω巴葺−冨oρ器ωの小教区において信仰教育を
者とも婚姻不解消を予定しているカトリック教の教義に従って生活を築
と、妻が新しく住居を捜すことは困難であること、等から妻にとって離
月に三〇〇フランと扶養定期金を取得する以外自由になる財産がないこ
また、マルセイユ大審院裁判所は、一九七八年二月二四日に、﹁妻は一
ョン大審院裁判所一九入四年二月二九日においても踏襲され、﹁両配偶
受け、盟巽ω○﹁曾Φα二〇費∋色の一員となったこと、離婚が過失を理由
一114一
、
サ例二三]。さらに、一九七入年三月二三日パリ控訴院は、夫婦の財
婚は明らかに精神的物質的に例外的苛酷になるとして請求を棄却した
て、気力が弱ったりまた精神的に不安定な状況にある被告配偶者は、離畑
︵招V
孤立といった精神面の苛酷がしばしば援用されそして考慮される。そし
︵73︶
的偏見についても同様であり、今日、もはや離婚は社会の行動から逸脱
すれば更に悪化する事が考慮される。また、グラス大審院裁判所は社会
︵四︶
週末を過ごすため妻が訪れる郊外の住宅からなること、から﹁離婚は妻
︵80︶
したものとして知覚されるものではないとした。
産が、夫によって建てられた三部屋のアパートと、子供たちと定期的に
にとって結果として物質的精神的に非常に苛酷になる﹂として、離婚の
︵74︶
︵81︶ ︵彰
宗教については、被告配偶者の宗教的信条が傷つけられることだけで
の問題については判例においても、苛酷であると認められる事例は少な
は 苛 酷 と は認
。 学者の中には否定しているものもある。信教
定
さ
れ
な
い 三 小括
く[判例一九]、厳格な解釈を行うものが多いようである。
請求を棄却した[判例二四]。住居については、同様の判決として、一
︵拓︶
九七九年七月五日パリ控訴院判決が挙げられる[判例二五]。
第二三七条は破綻主義の理念に基づいた規定を導入した。しかし、第
健康については、精神面では、特に欝状態等の場合については厳格に
苛酷の意味を解している。この点のみが精神的に苛酷な結果として苛酷
二四〇条おいて、離婚を認めないとすることができるという、破綻主義
の理念と相矛盾する概念を有する規定が新設されたため、この条文をど
条項の適用を正当化するものだとする学説もあるが、精神的安定や健康
係を証明するのは困難である。
︵83︶
かの判断は微妙な点を含むと思われる。しかし、病気と離婚との因果関
への影響は経済的安定や社会的安定とも絡み、苛酷な結果となるかどう
のように適用させるかについては、判例に委ねられることとなった。
年齢.婚姻期間については、離婚の結果よりもむしろ離婚自体が相手
方にとって辛いものであること、あるいはまた、離婚の諸事情を考慮し
て相手方に何ら非難される点がなかったこと、など追い出し離婚とな
妻が専業主婦の場合、再就職が困難であること、高齢者の健康状態は必
婚姻期間が長期に渉るため相手方配偶者に長く貢献してきていること、
︵國︶
を失うことになる場合についても苛酷条項の適用を認めた判決もあるが、
苛酷条項が適用された。離婚により生存配偶者のための転換年金の権利
追い出しを余儀なくされる場合[判例二二][判例二五][判例二六]に
財産的結果に関しては、離婚により相手方が住んでいた住民の売却と
ずしも良好とは言えないことがある。しかしこの点は制裁離婚の観念が
これとは逆に、転換年金の権利は年金の権利者が先に死ぬことを前提と
るような状況の下で広く苛酷条項を適用していた。特に高齢者の場合、
︵77︶
根強く残っているとして学説の非難をうけている。
する不確実な権利であり扶養定期金が認められることによってその損失
︵76︶
女性の地位については、これらの判決が、離婚が妻にもたらすであろ
は補われ得るとして、苛酷条項の適用を認めなかった判決があり、これ
に賛成するものも多い。学説においても、自己の自由のみを目的として
︵85︶
う精神的社会的不安定を指摘していることに注意しなければならない。
例えば一五年間別居していたケースにおいても、離婚後に起こる孤独や
一115一
[
離婚請求がされた場合には、離婚することによって他方配偶者や子供が
姻関係が破綻しているにもかかわらず、苛酷であるという事情のみで離
婚できないのは不公正である。とすれば、苛酷条項は破綻主義の例外と
して厳格に解釈されるべきであり、将来的には、ほとんど適用されなく
例外的に苛酷な状況になることが想定されるのであれば、離婚は避けら
︵86︶
れねばならないとするものもある。
なるのではないかと考えられるのである。
︵五五︶↓二σ゜σq﹁ぎωρピ≡Φ一〇hO<﹁一〇ミこ゜O.℃.一㊤。。O﹂一一・一逡O一・
︵五四VO蝉ωω.N偽O﹃o凶く為ヨ鷲ω一鶏PO鋤斜勺巴.一㊤謬.卜。.㎝設゜
いぎ匹oコ
︵五三V↓二σ.αq﹁°ぎω戸Z一〇①Nα一讐く一㊤刈。。”一゜○℃.一〇お・目H㊤一鼻988
①什ρ℃O°N一一①戸ω゜
︵五二︶9°.F=両塁︵一シ冨み︷o﹁ヨΦ含虫くo﹁oρ℃蜂。﹁凶ρω一﹁Φざ一㊤刈①b。防ω一㎝
一Q。o。O﹃°
︵五一︶↓﹁一σ゜σq﹁.ぎω戸udo巳oσqコ①・ω霞・ヨΦびH・=﹃g。<﹁=一〇罵こ・ρ勺﹂O刈。。ロ
︵五〇︶日話げ゜σq﹁﹂島fZ讐8﹁﹁①嵩ヨ巴一㊤謡こ゜○勺・一㊤ミ﹄一。。象①・
︵四九︶↓ユσ.αq﹃﹂コω戸い=一Φb。O一鋤コ<一㊤刈メO自。N°℃餌一・一㊤ミ・一bOP
ユΦ嘗一σ¢コ鋤二〆Uこ一㊤刈o。噛ロ゜Q。一.
N°。°。㎝‘ζ﹀ω鶏︵﹄シぴ①9<o﹁8℃oξω9餌錘菖8α①富淳Φ二曽O﹁四岱ρ器
﹁二喜霞①匹Φ冨≦①oo∋∋①こ゜○男一雪NH﹄。。昭Φけω.こ゜O°℃﹂箋。。﹂・
︵四入︶ピ︻z8z︵即︶−いげoo⊆Φ=hΩ。詳O費一Φωけ二σ⊆轟⊆×ωロ﹁9<o﹁o①Oo長
富ヨ≡ρ肉①<’﹁二∋°ロΦ069∩剛<=口㊤刈メ℃°ω=°
QDこお謡も.°。ω−菊﹀歪﹀⊆“︵勺シ言﹁冨只⊆ユΦ50⑦ヰ餌[お巴ωΦ①コ∋2。け︻Φ3α①一餌
︵四七︶﹁昆塁r︵閃シい四色窪゜・①匹①山霞①菰①ω7Φ=①二昌∋巴コΦo①ωωp。蹄①四∪・
四頁
婚﹄所収︶有斐閣︵一九八〇年︶一五四頁、久貴11小幡前掲︵七︶四
てーフランスを中心としてi﹂︵﹃現代家族法大系二、婚姻・離
℃b一簿ω‘野村豊弘﹁欧米諸国における破綻主義立法の新展開につい
刃゜Ω由︵ω〇二ωδωg。⊆ω且8ωO㊦︶’ぴΦ9︿o﹁oρ勺震凶ωし≦﹀ωoDOZお刈メ
︵四六︶ζ>N琵ω︵旨シピoωσq轟一乱①ω一一器ωα①冨み8﹁∋①α庫血圃⊆o﹁oρ色9。コωピ・
q凶∋°伍ΦO﹁o津O一く=−一㊤○。ρO°卜⊃o◎㊤卑ω.
︵四五︶ζ゜zu’≡﹂勇︵ゆシい①9くo﹁oΦOoξ歪喜ロお二Φ冨く凶①oo∋ヨρ閑Φ<°
︵注︶
総括すれば、事実上の別居状態が六年以上に及ぶ事案が多いようであ
り、この点立法者が意図していた﹃回復し難いほどに破綻﹄した状況に
対応しているといえるであろう。また請求は夫婦双方からなされている
が、夫に遺棄された妻が破綻離婚請求を行うという本来法が予定してい
なかった事例が数件あったことが注目される。判決の中には、法律によ
って規定された﹃例外的﹄の範囲を超えて苛酷条項を適用するものもあ
る。一九七九年迄に出された判決のうち二一の判決が苛酷条項の適用を
認めているがそれは全体の四六%に当たる。しかし判決によって適用は
さまざまであり、例えば、パリ破棄院は例外的な場合にのみにしか苛酷
条項を適用しないと公言している。ところで、その利用件数はきわめて
︵留︶
○年後の一九入五年には、わずか一・一%にすぎない。新離婚法の起草
少なく、一九七六年、七九年においても、二%、三・五%にすぎず、一
︵88︶
者であるカルボニエ q°O震σoコ三臼︶は、破綻離婚があまり利用され
ていない理由として、そのひとつは要件があまりにも厳格なことをあげ、
総体的理由は、国民心理のなかにあるとして、共同生活の破綻を理由と
する請求は一方的な追い出しだと考えられてしまい、おそらく感情ぬき
の破綻という考えをフランスに根づかせることは困難であると指摘して
いる。
︵89︶
しかし、第二三七条との関係で考えるならば、例え苛酷な状況になる
としても、破綻という事実のみで離婚が認められるべきである。真実婚
一116一
︵五六︶O鋤ωω﹂、⑩O﹃o一く.一一一三一一Φρ一〇刈P旨○勺゜一㊤゜。O﹂一﹂逡O一゜
冨㎝ωbo.
︵八一︶精神面からみれば、被告配偶者の宗教的信条を傷つけられたことだ
いぎ血OPピ、四〇〇=Φ凶嗣賦凶帥℃鋤﹁δωq幽げニコ帥二×国⊆9<O﹁oOOo二﹁”,二喜二﹁㊥
けでは認定されない︵日﹁凶σ.αq﹃°ヨωけカ①≡日Φωδ濫〇一雪9ユ鋤諺ヨ.
︵五七︶↓二9ひq﹁ぎωeOoヨO猷ひq昌Φ卜⊃①09一零909δN°勺田一.一㊤刈¶.一゜一〇P
︵五八︶目二σ.σq﹃ぎωρ日〇三〇¢ωΦ一゜。コo︿一零9い○勺﹂O刈刈゜一﹃一゜。雪㊤゜
@℃聾﹁冨卜000一二一コ。一㊤刈O鴇一︶°一㊤刈㊤゜㎝刈一
︵六四︶O鋤ωω﹄鳴O﹃o凶く﹄㊤一三5一〇°。°。圃しd二一ご9<◆口﹄。観N
︵六五︶日ユσ゜αq﹁﹂コωρ勺霞δ旨昌o<6♂こ゜○勺﹂O刈9目゜蜀臼ω゜
@↓ユげ噸σq﹁°凶コωけ勾げOコ①一①島伽O一㊤刈①”旨゜O’℃.一㊤刈刈゜目.NO◎O﹃°
n)
一〇。㎝認.
︵八四︶目ユσ゜αq﹁﹂コωe≧×−Φコー℃δ<ΩざΦ一゜。一6<°一竃◎一゜○勺.一一’一りお.
自.一㊤一心①゜
︵八山ハ︶ 目﹁凶σ’σq﹁°凶コoゆけOo∋O曲0αq㊦コト⊃①ooけ一㊤刈0’○節N°℃自o一゜一㊤刈刈゜一﹂りO.
︵八五︶↓﹃凶σ9αq﹁﹂コω戸竃碧ω①幽一一Φ卜。軽融く﹁一㊤刈゜。︾﹄90勺゜一㊤刈㊤﹂一.一〇一A9
︵七五︶勺鷲凶ω㎝甘≡①け一〇刈PU﹁一〇お゜宅一゜
︵七四︶℃碧一ω卜。°。∋費ω﹂㊤刈゜。℃∪﹂㊤刈゜。°①b。°。こ゜ρ℃﹂㊤刈゜。.H戸一゜。°。罐.
︵七三︶日ユげ゜ひq﹁﹂コω叶﹂≦費ωΦ≡Φb。軽隷く﹁一㊤刈゜。こ。○℃°一〇お.自.一㊤一心①゜
σq鑓≦芯が用いられる︶、これは、ドイツ語の=警8匹聾⊆ωo一コの直訳であ
までフランスの法律には見られない用語であり︵ふつう・重大さ
ては次のように説明される。即ち、β篤Φ菰孚可酷な︶という語はこれ
この﹃例外的に苛酷な㊦×oΦ〇二〇コΦ=①ユ⊆お臨︶という文言につい
O°お.︶
︵七六︶﹁舅ス年︵﹁。︶”ロ誌o謬ρO°○。ω゜
理由について、立法者は、下院で、それはげ鑓≦融という語よりもよ
る。語法のはっきりしているαq轟≦菰を用いないで外国の用語を用いた
資料として寺田恕子﹃フランスにおける女性のための再就職教育の調査と研
︵八〇︶↓﹁圃σ゜σq﹁.ぎωρ≧×・Φ昌・勺﹁o<Φコo①b。α8<.一㊤刈9旨ρ℃°目﹂㊤謡゜
︵八八︶]≦°Z勇8z︵勾.︶−言ユω℃﹁二α①=oΦ閃﹁讐お自。凶ωρ勾①︿.三コノニΦ費o諄
α﹁o剛け血=α凶くo﹁oρ一、恥⑪負勺費凶ω、一8◎コ。駆o。押P卜⊃①ご。
ることのない意味をもっていると説明した︵bdζN勇︵ζシいΦ=o’ミΦ聾二
た理由については、この形容詞はより強く且つ余りその価値を失わせ
匹霞簿父大いに苛酷な︶Lとしないで♂×o①℃甑9①=⑦︵例外的な︶Lとし
り制限的でより厳格な性格を持っている﹂と説明し、また、侭屋&o
︵七九︶↓ユσ.αq﹃°冒ωρご=Φb。OU凶コくち刈メOp。N°勺餌ピ這謡゜ピb。OO二〇﹂㊤刈゜。°
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︵七入︶勺口。﹁凶ωb。O一三昌簿卜⊃ω口o<一〇刈○。一P一㊤刈㊤.圏b。.”旨○℃°一〇刈㊤゜目゜
究 わが国における再就職教育の実現をめざしてー﹄クロダタイプ社
︵七七︶短報前掲︵四四︶一一三頁、高齢者︵特に女性︶の再就職に関する
︵七二︶6ユげ゜αq﹁.一コωρOo∋OδひqコΦ卜。①09一㊤刈①−O鋤N.勺餌一゜一㊤謡゜一゜一㊤ρ
︵U塁§ω︵旨︶ΦけO繭ρいΦ島くo﹁oΦΦけ冨ω0ロ費四二〇[日α①oo﹁弓ρ一bσ馳伽鼻
︵七一︶↓﹁圃ヴゆq﹁°ぎωe≧×−Φ昌−O﹁oくΦゴoo一Q。コo<°一㊤刈◎旨ρ℃.Hり刈N目. ︵八七︶このことはむしろ立法者意思に沿うものであったと考えられる。
一〇。認卜。°
︵七〇︶↓﹁一σ﹁ひqづ冒ωρ≧×あコ・℃﹁o︿Φ9Φ卜。O=o<°一㊤刈9い0°℃°一〇謡゜日゜
︵六九︶目ユげ゜αq﹁.ぎωけ◆℃①﹁嘗σq50コNO欲く﹃おo。合U﹂㊤o。膳.㎝卜⊇O.
目﹄o◎ooOメ
︵六八︶目﹁凶σ゜ぴq﹁°ぎωけuuo巳oαq5Φ−ω⊆学∋臼一恥、蝉く﹁δ刈S旨○℃°お刈゜。. 閃四∋∋=Φ︶−℃◎ユo。矯℃°⊂°喝゜”一㊤㊤﹃づ。卜。一−P恥①.︶
全く問題とならない ︵9器゜zz=罠︵ご”O﹁O置O凶く=−=馳邸α゜−ρ一一︵[餌
た︶配偶者の病気が回復不可能であるという医師の診断書に関しては
︵八三︶勺費凶゜。ωO宣コく゜一㊤刈PO虫み8凶ω一㊤お﹂一゜。°−被告︵離婚を請求され
コ。ω一ρP卜⊃心㊤゜
︵八二︶一WOコ鋤σΦ暮︵﹀’¥Oδ潔o凶く一[鋤閃餌ヨ≡ρ轟鳥0α層℃曇。﹁凶ρい評①P一〇〇ど
一〇〇ヨ巴一〇刈OQ思U°一〇刈㊤゜一①’
却の理由とはならないと判示したものとして、↓ユぴ゜ゆq﹁°ヨωけ゜Uo二巴
コo<﹂零①こ゜○℃﹂O刈①﹂﹁一゜。田ω゜︶さらに、被告の宗教的信条は棄
自①一〇<凶Φoo∋∋ロコρ旨ρ勺゜一㊤謡’目.NQ。㎝ご↓﹁回9鵬﹁﹂コωけ.勺昂三ω一N
︵五九︶被告配偶者が破る侮辱については、↓﹁ま゜ひq﹃°冒ωけ勾Φ弓Φω一㎝
n○︶目ユσ゜ひqド一つODけζOコけ02一δ畦卜0①一⇔コく目㊤刈80曽N°℃巴゜一㊤﹃﹃°bの゜幽刈幽゜
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︵入九︶O費σo=三Φス︸シ嘆仙o凶叶ρP=伊
び精神病等によっても夫婦の実質的な関係が失われ、婚姻関係が破壊さ
れることも考えられる。しかし、これを有責・王義的な規定のもとで解決
しようとすれば、婚姻義務違反による婚姻破綻を離婚原因として離婚を
失った婚姻を解消することにあると考えられる。すなわち破綻している
ということができる。そもそも、離婚の目的は、実質的に婚姻の目的を
的に奉仕せしめるという趣旨の説明がされ、破綻主義の導入が行われた
があるとみて、婚姻によって生じた一切の法律関係を解消するという目
についても、六年間事実上別居しているということにより、破綻の徴表
別居しているとしても、実際は破綻していないと考えられるような夫婦
婦が破綻していると主張する状態を実質的に判断するとすれば、たとえ
離婚を認めることが重要なのであると説明した。すなわち、例えば、夫
のと判断し、婚姻が破綻に至った原因、当事者の有責性を問うことなく、
婦が六年間に渉って事実上別居しているときは、破綻の状態に至ったも
し離婚につながる恐れがあるということであった。しかし、政府は、夫
請求することができるとすることは、夫婦の一方による恣意的な追い出
会において批判されたのは、六年間に渉る事実上の別居をすれば離婚を
民議会及び元老院において削除すべしとの強力な反対があった。国民議
しかし、理念としての破綻主義を反映した条文を新設するに当たり、国
り、離婚をすることができるといった点で、破綻主義的な規定であった。
一九七五年フランスにおいて新設された離婚事由は事実上の別居によ
とは、婚姻中、当事者に要求される義務を履行しなければならないとい
されるべきではないとされた。確かに、法的に夫婦関係にあるというこ
酷のみが考慮されなければならず、事実上の別居から生じる苛酷は考慮
基準が曖昧なものとなっている。そして’可酷Lとは離婚から生じる苛
についての解釈が非常にさまざまであり、実際の適用についても、その
とを望んでいた。しかし、その後の判例の適用状況をみると、甲可酷L
る。立法者の意図したところによれば、苛酷条項は制限的に適用するこ
るという立場で解釈するかどうかによって、その適用方法が非常に異な
あるいは形式的な破綻主義への歯止め、すなわち、離婚の自由を制限す
酷条項は、破綻主義の﹁例外﹂と捉えて、より制限的に解釈する立場で、
離婚事由の導入に反対する野党を抑えるため、妥協の結果成立した。苛
め、削除すべしという反対もあった。しかし、破綻主義の理念に基づく
綻主義の貫徹をめぐる攻防点であった。破綻主義の原則を一貫させるた
した規定となっている。民法典制定の過程においても、苛酷条項は、破
二四〇条で規定された霜可酷条項Lは、純粋な破綻主義にとっては矛盾
としても、離婚が不可能な場合が出てくるのである。これに対して、第
認めないということになり、たとえ実質的に婚姻関係が破壊されている
み離婚請求権を認め、自ら婚姻義務に違反した配偶者には離婚請求権を
請求するしかない。しかもこれは、義務違反を犯していない配偶者にの
婚姻関係ということである。そして、破綻した状態は、常に一方配偶者
うことである。これに対して、離婚は婚姻によって生じた一切の法律関
第四章 結びに代えて
の有責行為により生じるとは言えず、例えば、一方配偶者の行方不明及
一118一
係を消滅させることである。以上のことは、離婚を望まない一方配偶者
あるいは子供にとっては﹁苛酷﹂なものとなるかもしれない。第二三七
条が破綻主義の理念に沿って導入されたものであるならば、苛酷条項は、
破綻主義の﹁例外﹂として捉えてより制限的に解釈されるべきであろう。
苛酷であるという事情のみで離婚できないことは不当である。しかし、
﹁苛酷条項﹂は、裁判官に離婚請求を棄却するか否かの自由裁量権を与
えたため、運用次第では旦ハ体的妥当性のある判断が期待できなくもない。
今後の学説・判例を注目したい。
一119一
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