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平成27年度 1学期始業式の学校長あいさつ

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平成27年度 1学期始業式の学校長あいさつ
平成27年度
一学期始業式校長あいさつ
みなさん、おはようございます。
いよいよ新しい年度が始まりますね。
3年生は、私と一緒に本校に入学してきました。もう3年生ですね。いよいよ延高のリ
ーダーです。心理学では役割効果といいますが、人はその立場にふさわしい人になろうと
努力することによって、そのような人になるということがあります。歴代の3年生がそう
であったように、3年生としてのリーダーシップを発揮して欲しいと思います。
2年生はつい先日入学したばかりのように感じますが、もう中堅学年になります。部活
動でも後輩が入って来ます。どうかいい先輩になって下さい。
先程、校長室の掃除に来た人が 、「新しいクラスが不安で涙が出そう 。」と語っていま
した。もうひとりは 、「新しい友達ができるのが楽しみで、ドキドキする 。」と語ってい
ました。みなさんは、どちらですか。人は新たに出会うためには、一度別れなければなり
ません。これまでの友達は大切にしながら、新たな出会いをして欲しいと思います。
先日の離任式で、私は今春の卒業生の大学合格状況を挙げて、今まさに「延高の黄金時
代」だと、少し臆面のない大げさな表現をしました。実は、それは大学合格状況だけのこ
とではありません。県の教育委員会が毎年卒業前の高校3年生を対象に、無記名で高校生
活を振り返っての意識調査を行っています。いろいろな項目がありますが、うれしいこと
にそのほとんど全ての項目で、本校の卒業生は、3年間の高校生活についてかなり高い割
合で肯定的に答えてくれました。少し、差し障りのない範囲で紹介します。
「学校の校風・教育方針についてどう思いますか?」という質問に対して、9割近い生
徒が「満足している」と答えてくれました。また 、「学校・学科の学習内容について学ん
だことを誇りに思っていますか?」という質問に対しては、87.7%の卒業生がイエス
と答えてくれました 。これは 、調査の対象になった全ての学校の中で最も高い割合でした。
そのアンケートの最後の質問は 、「学校生活全体の充実度はどうでしたか?」と、3年
間の全体を振り返る質問なのですが、それについては93.2%の人が「満足している」
と肯定的に捉えてくれました。私たち延高の先生たちが願っていることは 、「延高に来て
よかった 。」と皆さんに思ってもらうことです。そういう意味では、本当にうれしい数字
です。今年も皆さんと一緒に、素晴らしい学校を作っていきましょう。
さて、今年の春はマスコミで「男気」という言葉が踊りました。いうまでもなく、広島
カープの黒田投手に冠せられた言葉です。みなさんも知っていると思いますが、アメリカ
大リーグのヤンキースが提示した20億というお金を蹴って、古巣の広島カープに4億円
で帰ってきたという話題です。でも、女性にもこんな心意気の人はいるでしょうから、
「男
気」というのは失礼な言い方ですね。敢えていうなら 、「人間気」とでも言うべきでしょ
うか。
皆さんならどうするでしょう。いずれにしても、われわれ庶民からすると、気の遠くな
るような別世界の話ではありますが、ちょっと聞いてみましょうか。自分なら20億円を
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選択する、という人は挙手してみて下さい。じゃ、4億円の広島カープを選ぶだろうとい
う人。そうですか。広島カープを選ぶという人が少し多かったような気がします。
この話題は、人間にとって幸せとは何か、ということを私に考えさせてくれました。た
くさんのお金があれば、人は幸せになれるのか、という問題ですね。皆さんはなんのため
に勉強しますか?
お金持ちになるためですか?
それとも偉くなるためですか?
世界
一のお金持ちは、果たして世界一の幸せ者なんでしょうか。
ここに、お金と権力を求めた若者の話があります。芥川龍之介の『杜子春』という短編
小説です。
杜子春という若者が、洛陽の町に寝る場所もなくひとり佇んでいます。そこに通りかか
った老人が「お前は何を考えているのだ 。」と聞きます。杜子春が事情を話すと、老人は
夕日に照らされたお前の影の腹の部分を掘ってみろ、と言います。老人の言うとおりにし
て黄金を掘り当てて杜子春は、洛陽一の大金持ちになります。すると、彼の周りにはこれ
まで縁もゆかりもなかった多くの人が、お金目当てに集まってきたのです。毎日盛大な宴
会を開いた末に、杜子春は3年間でお金を使い果たします。無一文になった杜子春の元か
ら、人々は蜘蛛の子を散らすように去っていきます。
杜子春は、また洛陽の町にひとり茫然と佇みます。すると、また老人が現れて 、「お前
は何を考えているのだ 。」と言います。そして同じことが繰り返され、3年が過ぎて杜子
春は無一文で洛陽の町に立っています。
また、老人が現れて同じことを繰り返そうとします。それを制した杜子春は 、「お金持
ちになるのはもう懲りたから、今度はあなたのその力が欲しい 。」と言います。お金にウ
ンザリした杜子春は、今度は権力を求めたのです。
老人は、その力が欲しいなら 、「峨眉山上に座って、何があってもひと言も発してはな
らない 。」と命じます。杜子春に次々に魑魅魍魎が襲いかかり、様々に問いかけますが、
彼はひと言も発しません。とうとう彼は刺し殺されて、地獄の閻魔大王の尋問を受けるこ
とになるのですが、それでも杜子春はひと言も発しません。
ついに、彼の両親が引き出されます。両親は来世で馬になっていました、二頭の馬は杜
子春の前でむち打たれます。それでも彼は口を開きません。そのとき、母親の目が彼に語
りかけます 。「私たちはどうなっても、お前さえ幸せになればいいんだからね 。」と。そ
の瞬間に、杜子春は思わず、「お母さん」と呼びかけるのです。
そして、彼は夢から覚めます。夢から覚めた杜子春はどこにいたと思いますか。峨眉山
上ではなくて、洛陽にいるのです。つまり、最初から全て夢だったのですね。老人は 、
「も
しお前が最後までひと言も発しなかったら、俺はお前の命を絶ってしまおうと思ってい
た。」と言います。
この話は、人間にとって幸せとは何かを考えさせてくれます。
皆さんはまだよくわからないでしょうが、実は人間というのは、お金持ちなればなるほ
ど、偉くなればなるほど、孤独になり不幸になっていくもののようです。もちろん、例外
もあるでしょうが、一般的にはそうです。
かつて、世界最強の男と呼ばれたマイク・タイソンというボクサーは、リングで敵に倒
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されたのではありません。彼の周りにお金目当てに群がる人々に倒されたのです。
世界で最も愛されて、最も傷ついたと言われるイギリスの故ダイアナ妃。先日、息子の
ウイリアムズ王子が来日しましたね。誰もが彼女の境遇に憧れ、彼女の美貌を賛美し、世
界で最も注目を集めた女性でした。最後はパパラッチと呼ばれるマスコミに追い回され、
非業の死を遂げました。そんな人たちは枚挙に暇がありません。
皆さんは今それぞれの志望大学を目指して、勉学に励んでいます。でも、人も羨むよう
ないわゆる「いい大学」に入れば、幸せになれるというわけではありません。いわゆる「い
い大学」から、いわゆる「いい会社」に入社すれば、幸せが約束されるわけでもありませ
ん。それらは全て手段でしかないのです。
では、何が目標か。私たちは、一度しかない限りある人生を、生まれてよかった、生き
てよかった、というために生きているのだと思います 。つまり、それは自分の「心の王国 」
はどこにあるかということ。自分の「心の王国」を探すために、私たちは生きているのだ
と思います。学校で勉強をするのはその為だということを、いつも意識して欲しいと思い
ます。
それでは今年一年が、みなさんにとって成長の年であることを願って、始業式の挨拶と
します。
平成27年4月8日
校長
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段正一郎
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