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熱性痙攣

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熱性痙攣
熱性けいれんで入院されたお子様のご家族へ
このたびは、急な入院でご心配のことと思います。ここでは、けいれんとその原因・これ
からの治療方針について説明させて頂きます。
①
けいれんとは
けいれんとは、「不随意性(意識していない)の筋肉の収縮」のことです。持続的に筋肉が
収縮すると、ピーンと突っ張ったような状態になり、断続的だとガクガク、瞬間的だとピ
クッピクッとした動きになります。これらはすべてけいれんです。「ひきつけ」もけいれん
と同じ意味です。
けいれんは、全身の筋肉をコントロールする脳細胞が、自分の意思とは関係なく異常に興
奮して筋肉を収縮させるために起こります。また、けいれん後は脳細胞の働きが一時的に
低下するため、しばらく眠ったり、麻痺が出現したりすることもあります(Todd の麻痺)。
②
熱性けいれんとは
熱があるときにけいれんを起こしたものを総称して「熱性けいれん」と言います。従って、
「熱性けいれん」とは一つの病気の名前ではなく、その原因は様々です。
なお、熱性けいれんの発熱の原因も様々です。けいれんを起こしても、必ずしも重症の発
熱というわけではなく、ただの風邪のことがほとんどです。突発性発疹・インフルエンザ・
麻疹やロタウイルスによる嘔吐下痢症などはけいれんを誘発しやすい発熱です。中には髄
膜炎や脳炎による発熱もありますので、注意して診察して疑わしい場合は診断のための検
査をするとともに治療を開始します。
③
「単純型熱性けいれん」
と
「複合型熱性けいれん」
子供のけいれんの多くは熱性けいれんですが、大きく2つに分けられます。
1)単純型熱性けいれん
次頁の表の項目すべてが当てはまるものを、「単純型」と言います。単純型熱性けいれ
んは、怖い病気やすぐ治療しなければいけない病気が隠れている可能性が低く、多く
は良性です。
2)複合型熱性けいれん
単純型に当てはまらないもの全てを、「複合型」と言います。多くは単純型同様、心配
のないものなのですが、時々病気が潜んでいることがあり、詳しい検査が必要になっ
てきます。
<単純型熱性けいれんの定義>
1.てんかんの家族歴がない
2.分娩外傷など、脳障害の原因となり得る疾患の既往がない
3.発症年齢が生後 6 ヶ月
満 6 歳未満である
4.発作の持続時間が 20 分以内
5.けいれんは左右対称性
6.発作後、持続性の意識障害や麻痺がない
7.神経症状、知能や性格障害がない
8.発作が短時間に頻発することはない
④
入院中の検査と治療方針について
1)単純型熱性けいれんの場合
けいれんの再発がないか、意識障害や麻痺などの神経症状がでないか、経過観察します。
もしこうした症状があれば、けいれんを止める治療とともに、次に挙げるような複合型
熱性けいれんの検査を進めていきます。
2)複合型熱性けいれんの場合
けいれんを起こす病気が隠れていないか、検査をします。
血液検査:低血糖や電解質、アンモニアの異常を調べます。
頭部 CT:脳出血や脳腫瘍、先天的な形態異常、脳炎による脳浮腫の有無を調べます。
髄液検査:髄膜炎や脳炎の診断に役立ちます。
脳波検査:てんかんなどの、けいれんを起こしやすい素因の有無を調べます。
通常、特別な場合を除いて1
2週間してから検査します。
頭部 MRI:脳の形態について、CT 検査よりも詳しい情報が得られます。
特殊検査:血液や尿を使って、代謝異常症などのスクリーニングをします。
上記のうち、必要と思われる検査を組み合わせて行います。
髄膜炎や脳炎が疑われる場合、検査と同時に抗生物質や抗ウイルス薬の治療を開始します。
○ヘルペス脳炎について
複合型熱性けいれんの原因の一つに、ヘルペスウイルスによる脳炎があります。全国で
年間 100 例と比較的まれですが、死亡したり、重症後遺症が残ることが多い病気です。
幸い治療薬(アシクロビル)があり、早期治療によって後遺症を減らすことができます。当院
では、ヘルペス脳炎を疑った患者様にはアシクロビルの投与を疑い、診断が確定する(違うと
判明する)まで使用するようにしています。診断は髄液のヘルペスウイルスを PCR という方法
で検出しますが、結果が出るまで数日かかります。
*生命に差し迫った危険がない場合、けいれんの原因をどこまで調べるかはご家族と相談
して決定します。
⑤
退院後の生活について
熱性けいれんは、日本では 5-10%の子供が経験する比較的多いもので、半分以上のお子さ
んは
一生の間一回しか起こしません。従って、単純型熱性けいれんで初発の場合、日常生活を
制限したり特別な配慮を必要とすることはありません。
しかし、3 回以上繰り返す場合や、けいれんの持続時間が長い複合型の場合は、発熱時にダ
イアップ座薬という抗けいれん薬を使って予防する方法があります。これは長期間(通常
5-6 歳まで)に渡る場合もあり、始めるかどうかはご家族と話し合って決定します。
熱性けいれんの既往があっても、原則として予防接種はすべて受けることができます。そ
の場合、最後のけいれんから 2-3 ヶ月間隔を空けるようにしましょう。また、小児神経専
門医に通院しているお子さんは、予防接種について医師と相談して下さい。
別紙「けいれんが起こったら」もぜひご一読下さい。
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